資料4‐2 教職調整額の経緯等について

1.戦後の教員給与と超勤問題

  • 戦後の公務員の給与制度改革(昭和23年)により、教員の勤務時間は単純に測定することは困難であること等を踏まえ、教員給与については一般の公務員より一割程度有利に切り替えられたことに伴い教員に対しては超過勤務手当は支給されないこととされた。
  • しかしながら、毎年の給与改定の結果、教員給与の優位性が失われた上に、当時の文部省からの超過勤務を命じないとの指示にもかかわらず、超過勤務が行われている実態が多くなり多くの都道府県で時間外勤務手当の支給を求める訴訟が提起され、いわゆる「超勤問題」として大きな社会問題となった。

2.教員の勤務状況調査の実施

  • このような状況を踏まえ、文部省は教育界の混乱を収拾するとともに、教員の勤務状況を把握するため、昭和41年度に1年間をかけて全国的な勤務状況調査を実施

3.教育公務員特例法の一部改正法案の提出と廃案

  • 教員の勤務状況調査の結果を踏まえ、昭和43年4月に、義務教育諸学校の教員に対して、その勤務の態様の特殊性に鑑み、当分の間、俸給の月額の4パーセントに相当する教職特別手当を支給することなどを内容とする「教育公務員特例法の一部を改正する法律」案が閣議決定され、国会に提出されたが、結局廃案となった。

4.給特法の成立

  • 昭和46年2月、人事院は「義務教育諸学校等の教員に対する教職調整額の支給等に関する法律の制定についての意見の申し出」を行い、義務教育諸学校等の教員について、その職務と勤務態様の特殊性に基づき、新たに教職調整額を支給する制度を設け、超過勤務手当を支給しないこととすることを提言。
  • 人事院の申し出を踏まえ、政府は、「国立の義務教育諸学校等の教諭等に対する教職調整額の支給等に関する特別措置法(以下「給特法」という。)」案を国会に提出し、同年5月に制定され昭和47年1月より施行された。

5.給特法の趣旨・概要

教員の勤務態様の特殊性

  • 教員は、勤務態様の特殊性があり、一般行政職と同じような勤務時間管理はなじまない。
    • 修学旅行や遠足など、学校外の教育活動
    • 家庭訪問や学校外の自己研修など、教員個人での活動
    • 夏休み等の長期の学校休業期間
    このような教員固有の勤務態様により勤務時間の管理が困難

勤務態様の特殊性を踏まえた処遇

  • 教員の勤務態様の特殊性を踏まえ、教員については、勤務時間の内外を問わず包括的に評価した処遇として、
    1. 時間外勤務手当を支給しないこととし、
      • 教員については原則として時間外勤務を命じないこととし、命じる場合は、(1)生徒の実習に関する業務、(2)学校行事に関する業務、(3)教職員会議に関する業務、(4)非常災害等のやむを得ない場合の業務の4項目に限定(いわゆる超勤4項目)
    2. その代わりに、給料月額の4パーセントに相当する教職調整額を支給。
      • 教職調整額を本給と見なして、本給を基礎とする手当等(期末・勤勉手当、地域手当、へき地手当、退職手当等)の算定の基礎となる。
      • 「4パーセント」は昭和41年の勤務状況調査の結果を踏まえて、超過勤務時間相当分として算定(別紙参照)。

参考

  • 昭和43年に国会に提出され廃案となった「教育公務員特例法の一部を改正する法律」案
    (抄)
    • 第二十五条の四を次のように改める
      (国立学校の教員の教職特別手当)
    • 第二十五条の四 国立の小学校、中学校、高等学校並びに盲学校、聾学校及び養護学校の小学部、中学部及び高等部(第二十五条の七において「義務教育諸学校」と総称する。)の教員(俸給の特別調整額を受ける者を除く。)には、当分の間、その勤務の態様の特殊性に基づき、その者の俸給の月額並びにこれに対する調整手当及び暫定手当の月額の合計額の百分の四に相当する額の教職特別手当を支給する。
      • 2 前項の教職特別手当に関し必要な事項は、人事院規則で定める。
      • 3 第一項の教職特別手当の支給を受ける者については、一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)第十六条及び第十七条第二項の規定は、適用しない。
  • 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(昭和四十六年五月二十八日法律第七十七号)
    (抄)
    • (教育職員の教職調整額の支給等)
    • 第三条 教育職員(校長及び教頭を除く。以下この条において同じ。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。
      • 2 教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。
      • 3 第一項の教職調整額の支給を受ける者の給与に関し、次の各号に掲げる場合においては、当該各号に定める内容を条例で定めるものとする。
        • 一 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四条第二項に規定する地域手当、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)、期末手当、勤勉手当、定時制通信教育手当、産業教育手当又は退職手当について給料をその算定の基礎とする場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を算定の基礎とすること。
        • 二 休職の期間中に給料が支給される場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を支給すること。
        • 三 外国の地方公共団体の機関等に派遣される一般職の地方公務員の処遇等に関する法律(昭和六十二年法律第七十八号)第二条第一項の規定により派遣された者に給料が支給される場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を支給すること。
        • 四 公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平成十二年法律第五十号)第二条第一項の規定により派遣された者に給料が支給される場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を支給すること。

教職調整額(給料の4パーセント)について

 勤務時間の長短にかかわらず、教員の勤務時間の内外を問わず包括的に評価するものとして、給料の4パーセントの教職調整額を支給。

 矢印

 現在においても引き続き4パーセントの教職調整額を支給

 制度導入時の積算は以下の通り。

昭和41年度 文部省が実施した「教員勤務状況調査」の結果

超過勤務時間

 1週間平均

  • 小学校 1時間20分
  • 中学校 2時間30分
  • 平均 1時間48分

 1週間平均の超過勤務時間が年間44週にわたって行われた場合の超過勤務手当に要する金額が、超過勤務手当算定の基礎となる給与に対し、約4パーセントに相当。

 ※ 年間44週(年間52週から、夏休み4週、年末年始2週、学年末始2週の計8週を除外)

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