1.指導力不足教員の人事管理に関する取組等について

1.調査の趣旨

 学校教育の成否は、学校教育の直接の担い手である教員の資質能力に負うところが大きいことから、教員として適格な人材を確保することは重要な課題である。このような中、児童生徒との適切な関係を築くことができないなどの指導力が不足している教員の存在は、児童生徒に大きな影響を与えるのみならず、保護者等の公立学校への信頼を大きく損なうものである。
 このため、都道府県・指定都市教育委員会(以下、「教育委員会」という。)においては、いわゆる指導力不足教員に対し継続的な指導・研修を行う体制を整えるとともに、必要に応じて免職するなどの分限制度を的確に運用することが必要である。
 文部科学省においては、各教育委員会におけるこのような人事管理システムのより一層の運用を促進するため、その取組状況についてとりまとめるとともに、併せて希望降任制度及び条件附採用制度の実施状況についても調査したものである。

2.調査対象・調査時点

 47都道府県教育委員会及び13指定都市教育委員会を対象として、平成17年4月1日現在の状況について調査した。

3.調査結果の概要

1.指導力不足教員の認定者数等について

(1)指導力不足教員の認定者数(表1‐1 指導力不足教員に対する措置等の状況(平成16年度)図1‐1 平成16年度における指導力不足教員認定者の状況図1‐2 指導力不足教員(認定前を含む)のうち退職等した者表1‐1 指導力不足教員に対する措置等の状況(平成12年度)表1‐2 指導力不足教員に対する措置等の状況(平成13年度)表1‐3 指導力不足教員に対する措置等の状況(平成14年度)表1‐4 指導力不足教員に対する措置等の状況(平成15年度)

  平成16年度における指導力不足教員の認定者は566名であり、その内訳は次のとおり。

認定者総数(1+2+3) 1.16年度に研修を受けた者 2.その他(研修を受講することなく別の措置等がなされた者)
分限免職4
懲戒免職1
依願退職6
死亡退職1
分限休職10
病気休暇1
3.17年度から研修
合計 うち、16年度新規認定者 合計 現場復帰 依願退職 分限免職 分限休職 転任 研修継続 その他
定年退職1
死亡退職1
病気休暇5
566 282 377 127 93 7 11 1 131 7 23 166

 (参考)過去の認定者数(平成12年)65名、(平成13年)149名、(平成14年)289名、(平成15年)481名

 指導力不足教員の状況について調査したところ、認定者566名の状況は次のとおり。

  • 年代…40代(50パーセント)、50代(34パーセント)、30代(15パーセント)、20代(1パーセント)
  • 在職年数 …20年以上(61パーセント)、10~20年未満(35パーセント)、6~10年未満(3パーセント)、5年以下(1パーセント)
  • 性別…男性(72パーセント)、女性(28パーセント)
  • 学校種…小学校(49パーセント)、中学校(28パーセント)、高等学校(15パーセント)、特殊教育諸学校(8パーセント)

 (参考)指導力不足教員(認定前を含む)のうち退職等した者の推移

(単位:人)
  平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年
認定前退職 1 11 30 56 78
依願退職 22 38 56 88 99
転任       3 1
分限免職     3 5 11
懲戒免職         1
合計 23 49 89 152 190

(2)指導力不足教員に関する人事管理システムの概要(表1‐2 指導力不足教員に関する人事管理システムの概要

1.指導力不足教員の定義について

 指導力不足教員の定義については、全ての教育委員会において定められている。

2.判定委員会の構成員について

 指導力不足教員を認定するための判定委員会については、全ての教育委員会が設けている。そのうち、51教育委員会で、外部委員として医師(48教委)、弁護士(47教委)、保護者(20教委)などが構成員となっているが、4教育委員会においては教育委員会事務局関係者のみで構成されている。また、5教育委員会については、構成員を非公表としている。

3.判定基準について

 判定基準を設けている教育委員会が54、今後、判定基準を設ける予定の教育委員会が2となっている。なお、判定基準を設ける予定がないとしている4教育委員会も、一定の期間をかけて詳細に教員の状況を把握するなど、慎重な手続きを経て判断を行うこととしている。

4.本人からの意見聴取について

 指導力不足教員の対象となる教員本人からの意見聴取の手続きについては、全ての教育委員会において設けられている。

5.教員等への周知について

 指導力不足教員に関する人事管理システムについて、校長や教員等に対する周知を行っている教育委員会が59、今後、周知を行う予定の教育委員会が1となっている。

6.研修期間について

 全ての教育委員会において基本的な研修期間は1年以内に設定されている。
 研修期間の上限については、次のとおり。

  • 1年間 11教育委員会
  • 1年6ヶ月間 2教育委員会
  • 2年間 18教育委員会
  • 3年間 12教育委員会
  • 規定なし 17教育委員会

2.希望降任制度について(表2 希望降任制度について図2 希望降任の理由

 平成12年度から16年度における希望降任制度の実施状況の推移は次のとおりである。

(単位:人)
  平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年
校長から教頭 0 0 0 3 2
校長から教諭 0 2 2 3 3
教頭から教諭 3 24 44 60 71
部主事から教諭 0 0 3 0 5
合計 3 26 49 66 81
制度実施教委数 4 6 19 39 44

 なお、平成16年度降任を希望した81名について、その主な理由を調査したところ、一番多いのは、健康上の問題44名(55パーセント)であり、続いて職務上の問題27名(33パーセント)、家庭の事情8名(10パーセント)、その他2名(2パーセント)となっている。

3.条件附採用について(表3 条件附採用について 平成16年度(平成16年4月1日~6月1日)に採用された者

 地方公務員の採用については条件附採用制度がとられており(地方公務員法第22条)、一般の地方公務員の条件附採用期間は通常6ヶ月間であるが、児童生徒の教育に直接携わる教諭・助教諭・講師については、その職務の専門性から6ヶ月間での能力実証では不十分として、教育公務員特例法第12条により条件附採用期間が1年間とされており、かつその間に初任者研修を受けることとなっている。
 平成16年度(平成16年4月1日から6月1日)に採用された公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教諭、助教諭、講師(非常勤講師、臨時的任用職員、期限を付して任用した職員を除く)のうち、1年間の条件附採用期間を経て正式採用とならなかった者の状況について調査したところ、191名が該当しており、その内訳及び平成9年度からの推移は次のとおりである。

(単位:人)
  平成9年 平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年
不採用 0 0 0 1 1 4 1 7
依願退職 合計 36 34 48 33 52 94 107 172
うち不採用決定者 (13) (10) (15)
うち病気による者 (6) (5) (11) (5) (14) (15) (10) (61)
死亡 2 1 3 2 1 2 1 5
分限免職 1 1 0 0 0 0 0 3
懲戒免職 2 1 0 3 1 2 2 4
合計 41 37 51 39 55 102 111 191
全採用者数 15,957 13,594 11,310 10,517 12,106 15,980 18,107 19,565

 ※ 平成13年度以前においては、不採用の決定を受けて依願退職した者の数は調査していない。

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