・小中学校の設置者は市町村であり、市町村が主体となって望ましい教育環境を創り出すために地域住民の意向を反映した計画的な学校配置を進めることが原則である。市町村合併が進んだ結果、旧町村では統合できなかった小規模な学校を適正規模にすることが市町村にとっては重要な課題となっているが、地域住民の理解を得ることが難しく政治問題になる懸念もあるため、適正配置についての検討が進んでいない。国や都道府県は市町村が方針を明確にするよう促していく必要がある。
・都道府県が学校の適正配置についての基本方針を明らかにした指針を作成し、市町村が適正配置を進める際の拠り所とする。
・小中学校の適正配置は市町村にとって共通する問題が多いにもかかわらず、都道府県と市町村、市町村間の情報交流が十分に行われていない。市町村が十分な情報や事例をもとに適正配置を検討できるように、都道府県が情報交換の場を設定したり情報提供に努める必要がある。
・学校統合の場合には、教育計画や年間指導計画の作成、学校環境の整備など、適切な学習指導や生活指導を充実させるため、加配教員を統合前後に配置する。また、適正配置検討後も学校統合ができない小規模校には、優秀な教員を配置をしたり、複式授業を解消したりすることができるよう教員配置について配慮する。
・現行の適正規模としている12学級以上について、過疎地域を多く抱える都道府県では実現することが困難である。岐阜県においても、12学級を下限とすれば通学区域が大きくなりすぎたり、統合しても12学級以上にならない地域があったりして実情に即していない。 また、 都道府県の中には独自に適正規模を示しているところもある。国が改めて適正規模を示す必要はなく、都道府県が実情に即した適正規模を示す方が市町村の適正規模化は促進される。
・通学距離の小学生4キロメートル、中学生6キロメートル以内は妥当だと考えられるが、スクールバスやコミュニティーバス、電車等の通学手段が多様化しており、地域によって実情が異なる。 国が基準等を示すことが学校統合の支障となる場合も想定される。 したがって、適正規模とあわせて都道府県が通学距離等の基準を示した方がよいと考える。
・統合できない小規模校の最大の課題は複式学級である。人数の多少にかかわらず学年相応の教育ができるように教育条件を改善すべきであり、後述するように義務教育標準法の複式学級の規定を廃止してはどうか。
・複式学級では授業の仕方などを工夫しているが、授業の中で自習する場面が必然的にあり、単一学年での指導に比べて教育条件が不十分である。このため、小規模校では複式学級を解消してほしいという要望が強い。国として小規模校における教育条件を改善すべきであり、複式学級の解消を法律改正で明確にする。
・少子化に伴う学校の適正配置は全国的な問題である。市町村に事業を委嘱することによって、全国的な動きを作ることができる。小規模な市町村では、適正配置を検討する際の予算、スタッフ、情報が十分ではない。調査研究事業の実施は、課題の多い市町村を積極的に支援することとなる。
・学校教育に対する考え方として、一般的に「教育は学校がするもの」で学校に任せておけばよいとか、学校でしっかりとするべきものであり、その中で少しでも良い学校や教師に教えてもらおうとする傾向がある。 学校運営協議会制度はそうした意識を 「教育は自分たちがかかわり創っていくもの」という主体的な意識に高め、国や地方公共団体、学校だけでなく保護者や地域住民が子どもの教育に責任を持つという自覚を広く形成するところに意義があると考える。
・学校運営協議会制度ができたことにより学校運営が多様化し、市町村は地域の実情に応じて学校運営の在り方を選択できるようになった。それは、市町村が意図をもって学校運営の在り方(学校運営協議会制度にするか、これまでの校長による学校運営にするか)を決めるとともに、保護者や地域住民に対して説明する責任が生じたことになる。コミュニティ・スクールだけでなく、全ての学校が地域の実態に応じた特色ある教育を推進することにつながる。
・岐阜市立岐阜小学校(平成20年4月導入)では、学校統合に伴う金華地区と京町地区の対立が懸念されたが学校運営協議会制度によって新しい学校を支える地域としてのまとまりができつつあり、地域との連携・協働教育プログラムを作成するなどして授業や教育活動が充実してきている。
・市町村や校長には制度が理解されているが、保護者や地域住民にはほとんど理解されていない。したがって、市町村や学校へ制度の導入を求めるような意見もない。保護者や地域住民が地域の学校の在り方について考える選択肢の一つとして理解を広めるべきである。国が全国的な取組事例等をもとに啓発パンフレットを広く保護者等に配布するなど、国や都道府県で啓発活動を推進すべきである。
・岐阜市の「学校運営協議会設置等に関する規則」では、教職員の任用に関することを規定していない。コミュニティ・スクールだけが人事で優遇され市内全体のバランスを損うことになったり、保護者等が人事に不当に介入したりするなどの懸念があるためである。岐阜市のように、地域の実情に応じて市町村が学校運営協議会の権限を弾力的に決められるようにすれば、コミュニティ・スクールの一層の広がりが期待できると考える。
・教職員が多忙化している中で、学校職員が運営協議会にかかわる事務や活動に取り組むことは困難である。また、運営協議会がパンフレット作成などの活動をしたり研修をしたりするには予算措置が必要である。こうした予算や人的な支援を教育委員会で行う必要がある。
・学校運営協議会を充実させるためには委員の教育や制度に対する知見を高める必要がある。全国や都道府県で実践事例を交流したり、学校運営に対する基本的な認識をもつことができるように委員に対する研修を実施することが重要である。
・各学校には、学校評議員会、学校関係者評価委員会、学校地域支援本部など、学校と地域との間に様々な組織がある。学校運営協議会がこれらの機能をもつことは可能であると考えられる。 学校組織をスリム化し効率的な学校運営ができるようにするため、学校の判断で学校運営協議会に学校評価等の機能を持たせてもよいと考える。
・市町村は学校設置者として、学校選択の必要がないように機会均等の原則に基づいて小中学校の教育環境の整備に努めている。また、市町村は通学区域の弾力化についての地域や保護者の意向を最も反映することができる基礎単位である。したがって、学校選択制の導入については市町村の判断と責任で行うべきものである。
・学校選択制の導入について、児童生徒が一部の学校に集中したり、学校と地域のつながりが弱くなったり、通学時の安全確保が困難になったりするなどの懸念から、多くの市町村では慎重な対応をしており、 積極的に保護者等に啓発をしていない。 しかし、市町村は保護者等から要望があれば検討しなければならなくなる。国や都道府県が保護者等に対して学校選択制についての啓発を行い関心を高めることで、市町村における検討を促す必要がある。
・学校選択制の導入について全国的に多様な地域で実施されており、市町村はその事例等をもとに保護者や地域住民の意見を聞くなどして、地域の実情に即した検討をすべき時期にきていると考える。
初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室