資料2 小・中学校の適正配置に関するこれまでの主な意見等

1.現在、適正配置を検討する背景・意義をどのように考えるか。

● 今後、少子化がさらに進むことが予想される中、子どもが「生きる力」を培うことができる学校教育を将来にわたり保障する観点から、学校の適正配置について検討することが必要。
● 公立小・中学校の設置主体は市町村であり、適正配置の進め方については、最終的には市町村が教育的な観点から判断をしなければならないものである。本作業部会は、教育的な観点から、適正配置を進める際の考え方、考慮すべき要素、留意点等を提示する。
● 適正配置について検討するにあたっては、施設の老朽化や、交通環境の整備、市町村合併の進展、地域により人口動態が大きく異なることなど、昭和31年当時とは学校を取り巻く社会状況が変わってきていることも踏まえることが必要。
● 学校の統合は、子どもの教育条件をよりよいものにするということを前提に行われるべきであり、統合後の学校における教育環境の整備が十分に図られる必要がある。
● 国は、適正配置を進める際の拠り所となる考え方、考慮すべき要素、留意点等を提示し、これを踏まえて市町村に対する支援策を講じることが考えられる。
● ある程度地域の特性に配慮できる立場である都道府県教育委員会が、一定の方針に基づく支援策を講じることにより、市町村の取組を行いやすくすることが考えられる。

○ 現在における適正配置の在り方については、今後、少子化がさらに急激に進むことが予想される中で、子どもが「生きる力」を培うことができる学校教育を保障する観点から検討することが必要。
○ 公立小・中学校の設置主体は市町村であり、適正配置の進め方については、最終的には市町村が教育的な観点から判断をしなければならないものである。中央教育審議会は、教育的な観点から、適正配置を進める際の考え方、考慮すべき要素、留意点等を提示することが必要。
○ 児童生徒の急増期に建てられた施設が老朽化を迎えていたり、交通環境の整備、市町村合併が進み、人口動態の地域間格差が拡大し、地域の特性によって学校の設置・運営の在り方が大きく異なるなど、学校の適正配置について中央教育審議会が答申を行った昭和31年当時とは、学校を取り巻く状況が変わってきている。
○ 校舎の耐震化に合わせて学習環境の改善も取り組むため、集中的な財政投資を行って適正配置を進めようとしている例もある。
○ 市町村合併成立後の新しいまちづくりの動きの一環として学校の適正配置を検討する動きもある。
○ 全国の教育長の意識調査では、小・中学校の規模縮小への対応策について、「困難はあっても小中学校の適正規模の維持を基本として統合方策を検討する」という回答が約4割弱である。
 (※第2回作業部会 葉養国立教育政策研究所部長説明資料より)
○ 市町村としては様々な事情の中で、地域のしがらみや財政問題の中で身動きがとれなくなってきているところがある。そのような市町村に対し、都道府県教育委員会が、当該都道府県の事情を踏まえた適正配置の指針等を示したり、それに基づく支援策や指導・助言をしていくことなどが、適正配置を進めようとする市町村の後押しとなるのではないか。
○ 国は、ナショナルミニマムとしての義務教育の質の維持や向上の観点から、適正配置を進める際の拠り所となる考え方、考慮すべき要素、留意点等を提示し、それに基づく支援策等を講じたり、指導・助言等を行うことにより、都道府県や市町村における検討を進めやすくすることが必要である。
○ ある程度地域の特性に配慮できる立場である都道府県教育委員会が、一定の方針に基づく支援策を講じることにより、市町村の取組を行いやすくすることが考えられる。

2.適正規模・通学に関する現在の標準についてどのように考えるか。

(1)学校の規模の標準について

● 学校の標準規模を12~18学級とすることは、子どもの多様な活動、社会性の涵養という観点や教員組織の観点、実際の市町村の学校規模についての考え方等から考えて、現在においても概ね妥当な標準であると考えられるのではないか。
● 設置者が学校の適正配置を考えるに当たっては、標準規模を下回ることによるデメリットを具体的にどのようにして克服していくかという点から検討を進めるべきである。

<現在の基準について>

○ 現在の規定は、小・中学校ともに12学級以上18学級以下を標準とし、地域の実態その他により特別の事情があるときは、この限りではないとされている。(※学校教育法施行規則)
○ 全国の教育長の意識調査では、学校規模の標準について現在の標準が適正であると考えている割合が約半数。都市部と郡部で学校規模の標準を分けて設けるべきだと考えている割合が約4分の1である。(※第2回作業部会 葉養国立教育政策研究所部長説明資料より)
○ 適正規模の判断理由については、小学校では「クラス替えのできる規模」「運動会や学芸会等である程度の活性化が図れる規模」、中学校では、「主要教科について各学年それぞれの担任教員を用意できる規模」「部活動やクラブ活動等の種目数を一定数維持できる規模」という回答が多い。(※第2回作業部会 葉養国立教育政策研究所部長説明資料より)
○ クラス替えなど教育的な配慮という観点からは、12学級以上18学級以下という標準は、現在も概ね妥当であると考えられる。
○ 現状の12学級以上ということはそのままとしつつ、それを下回る場合の扱いをもっと弾力的に考えるようにすべきではないか。
○ 都道府県・市町村によっては、適正配置の検討に当たり、地域の実態に鑑み、国が定める標準と異なる標準(例:12学級以上24学級未満、9学級以上18学級未満など)を設定している場合もある。(※横浜市、和歌山県ヒアリングより)
○ 小・中学校の適正配置に際して、標準規模とは別に、一学年の学級数や人数、連続する学年の人数の下限など、小・中学校の配置を見直す具体的な基準を定めている自治体もある。(※東京都北区、横浜市ヒアリングより)
○ 各地域によって様々な状況があるので、事例やデータに基づいて、客観的に検討することが必要。
○ 質的・定性的な要素であっても、各地域の適正配置の審議会等で結論を出す際に用いたデータを集めれば、各地域の現場の意見を集約したものとして、検討の裏付けになるのではないか。
○ 現在の標準を変えないこととしたとしても、今回の中央教育審議会での審議を機に大きく学校統合に舵を切る市町村が出てくることが予想される。その影響についても想定しておく必要があるのではないか。

<基準の考え方>

○ 一定の規模があることにより、子どもが集団の中で、多様な考えに触れ、認め合い、協力し合い、切磋琢磨することを通じて、一人一人の資質や能力をさらに伸ばしやすい。
○ 各学年2学級以上とすると、人間関係に配慮したクラス編制ができる、習熟度別指導等多様な指導形態をとることができる、スポーツでクラスの対抗戦ができる、部活動がより多くの種目、多くの人数でできるため、生徒のモチベーションがあがるなどの利点がある。
○ 教員配置に関しても、学年複数学級とすることで、教員同士が指導方法について協議ができるようになったり、組織的な校務分掌をすることもやりやすくなる。教員が互いに切磋琢磨するために必要な教員数を確保するという観点は重要である。
○ 特に中学校の場合は教科担任制であり、同じ教科を担当する教員を複数配置できると組織的な教科経営や、多様な指導方法の工夫がしやすくなる。
○ 同一県内でも都市部、または、郡部の中でも中核的な町に人口が集中している実態があり、都市部と郡部を一律に考えることにはかなり無理があるのではないかという意見もある。
○ 適正配置を考える際に、都市部か郡部かという二分法ではなく、個々の学校の置かれている地域の条件を整理していくべきではないか。
○ 都市部、郡部と基準を分けるよりも、基本となる基準を参考にしつつ、市町村ごとに判断できるようにすることが適当ではないか。
○ 統合等により適正配置を進めるに当たっては、標準規模に満たないことによる教育上の具体的なデメリットについて、どのように克服していくかという観点から検討すべきである。
○ 子どものことを考えると、義務教育において、小規模校のデメリットに対して何ら対応しないことは問題である。

(2)通学距離について

● 小学校4キロメートル/中学校6キロメートルを通学距離の上限とすることについて、児童生徒の心身に与える影響という観点からは、現在においても、その負担が明らかに大きいというデータはないが、スクールバスなどの通学手段や、通学の安全確保などの観点からは、距離の基準だけでは実態に合わない面があるのではないか。
● 地域によっては、学校規模を大きくするために、通学距離・時間が過大にならざるを得ない場合がある。学校規模と通学距離・時間のどちらをより優先すべきということは、一概にはいえない問題である。
● 通学については、子どもの発達段階、通学の安全確保、交通手段などを総合的に勘案して、各地域の事情を踏まえて市町村において適切な在り方を検討すべきである。
● その際、例えばバスの場合には概ね1時間程度を上限とし、徒歩の場合には概ね30分から1時間程度を上限とするなど、距離だけでなく時間を基準に定めることも考えられる。

<通学距離と通学時間>

○ 現在の規定では、通学距離については小学校でおおむね4キロメートル以内、中学校でおおむね6キロメートル以内であることが適正とされている。(※「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律施行令」)
○ 通学できる地域を考える際には、交通機関の発達などにより、生活圏が拡大していることなども含めて考えるべき。
○ インフラの整備に伴い、バス、電車等により、通学距離が4キロメートル、6キロメートルを超えても通学できる場合があるため、通学に関する基準について柔軟に考えることが必要。
○ 現在の法令上では適正基準は距離で示されているが、通学と心身の負担に関する調査を統計学的に分析すると、時間で定めていくことの方が適当ではないか。
○ 学校規模を維持するためには現行の4キロメートル、6キロメートルという基準に収まりきらなくなったり、4キロメートル、6キロメートルという距離の基準にこだわると学校規模が小さくなるという状況が生まれているのではないか。学校規模と通学距離・時間のどちらをより優先すべきということは、一概にはいえない問題である。
○ 通学に関する基準については、従来の距離に関する基準だけではなく、時間と距離を併用するとともに、交通手段にも考慮した形で工夫していくということも考えられるのではないか。

<通学距離等の児童生徒への影響>

○ 小学校5年生の通学と心身の負担に関する調査によると、徒歩の場合、4キロメートルまでは特に顕著な問題はみられないが、4キロメートルを過ぎると少しストレスがかかってくる可能性がある。(ただし、気象等に関する特異な考慮要素が比較的少ない場合におけるデータであることに注意が必要)(※第2回作業部会 朝倉東京学芸大学教授説明資料より)
○ また、バスの場合、長時間通学でのストレスは確認されていないが、脳が活性化していないことも懸念され、学習に入っていくまでには、学校に到着後、体を動かす時間を設けるなどの工夫が必要ではないか。(※第2回作業部会朝倉東京学芸大学教授説明資料より)
○ 中学校2年生の通学と心身の負担に関する調査によると、徒歩の場合、不明な部分もあるが、距離が長くなるにつれ、ストレスが増大してくる可能性がある。自転車の場合、6キロメートルを超えるとストレスを感じている生徒が増えるので、これを一つの目安として設定することも考えられる。バスの場合は小学校と同様の傾向である。(ただし、気象等に関する特異な考慮要素が比較的少ない場合におけるデータであることに注意が必要)(※第2回作業部会 朝倉東京学芸大学教授説明資料より)
○ 単なる距離だけではなく、安全などの観点、地理的な事情や降雪などの気候についても考慮することが必要。
○ バス通学については、部活動や放課後の教育活動が行いにくくなるなどの課題があることに留意が必要。
○ バス通学については、歩かなくなることによる体力低下の懸念への対応も必要。学校での活動内容を工夫したり、遊具や運動場の整備などの対策をとることも必要である。
○ 統合によって、通学時間、通学距離が伸びることで安全面が課題になる。

3.小規模の学校において、教育条件の向上を図る観点から、特に克服が求められる課題は何か。

● 小学校において、

  • 標準規模(12学級)に満たない場合には、1.1学年1学級が常態化するため、クラス替えができず人間関係が固定化しやすい、2.教員数が限られるため、習熟度別指導、教科担任制等多様な指導方法をとることが困難、3.行事の幅が狭くなるなど、教育上のデメリットがある。
  • さらに、学級規模が小規模化した場合には、4.授業の中で児童から多様な発言が引き出しにくく、授業の組み立てが難しくなる、5.男女の偏りが生じやすい、という問題も生じる。
  • 特に、6.1学年1学級を維持できず、複式学級となる場合のデメリットは大きい。

● 中学校において、

  • 標準規模(12学級)に満たない場合には、1.各教科に複数の教員を配置することが困難となりやすく、習熟度別指導等を円滑に行いにくい、2.教員数や生徒数が限られるため、部活動の種類が限られるなどのデメリットがある。
  • さらに、6学級に満たない場合には、3.1学年1学級が常態化するため、クラス替えができず人間関係が固定化しやすい、4.免許外担任が発生しやすくなるというデメリットがある。
  • さらに、学級規模が小規模化した場合には、前述の小学校の場合と同様、5.授業の組み立てが難しくなる、6.男女比に偏りが生じやすいという問題が生じる。
  • 特に、7.1学年1学級を維持できず、複式学級となる場合のデメリットは大きい。

● 小・中学校に共通して、学校規模が小さくなるのにしたがって教職員数が少なくなるため、1.教職員一人当たりの校務の負担が重くなり、2.授業研究など校内研修の時間が確保できないことがあるなどの問題がある。

● 以上のように、標準規模を維持できない場合、学校規模が小さくなるに従って多くのデメリットが生じてくるため、将来的にもこのような状況が不可避である場合には、子どもの教育環境のため、早期に適正配置の検討を行うことが望まれる。

○ 学校統合等により適正配置を進めるに当たっては、標準規模に満たないことによる教育上の具体的なデメリットについて、どのように克服していくかという観点から検討すべきである。
○ 子どものことを考えると、義務教育において、小規模校のデメリットに対して何ら対応しないことは問題である。
○ 校長を対象とした調査では、小規模学校の問題点として、「良い意味での競い合いや切磋琢磨の機会が少ない」「組織的・機能的な子どもの集団づくりができにくい」という回答が多い。(※第2回作業部会葉養国立教育政策研究所部長説明資料より)
○ 子どもが少人数であると、人間関係が固定化し、9年間その集団で過ごさなければならないことがある、高校に進学した際に急に大きな集団の中に入ることになり、その中で自分を発揮できないことがあるなどの問題もある。
○ 人間関係が固定化すると、争いを避けてディスカッションができないなど、コミュニケーション能力が育ちにくい。教員の努力だけでは解決が難しい問題である。
○ 児童・生徒数の減少で部活動やクラブ活動の数などが少なくなると、子どもが自分を発揮できる機会が少なくなるという見方もある。
○ 少人数指導等を実施している現状を踏まえると、学校の規模を考える際には、1学級あたりの人数についても留意することが必要。
○ 学級の人数を引き下げると、学級内で切磋琢磨する環境ができなかったり、学校行事が盛り上がらなかったりする場合がある。活力のある学校をどう作っていくのかという観点から、一定程度の人数を確保していくことは必要。
○ 学校の適正配置に関して都道府県・市町村が作成している計画等によると、小規模の学校では「集団の中で多様な考え方に触れる機会や学び合いの機会、切磋琢磨する機会が少なくなりやすい」「単学級で学級間の相互啓発がなされにくい」「グループ学習や習熟度別学習など多様な学習・指導形態を取りにくい」「男女比に偏りが生じやすい」などの指摘もある。(※第8回作業部会資料3「学校規模によるメリット・デメリット(例)」)
○ 学校行事の数は大規模校でも小規模校でも概ね同じである。小規模校で一定の教員数がいない場合、特別活動などにおける役割分担が十分にできず、役割が集中した教員は、教材研究などに十分な時間が割けないことがある。
○ 特に、複式学級における指導効果は、教師の力量によるところが大きいため、安定的に学習効果を維持できるのかを保護者が懸念しているという指摘もある。
○ 教職員の配置という点では、規模が小さくなると教職員数が少なくなり、経験、教科、特性などのバランスのとれた配置が行いにくい。
○ 特に、小規模の中学校では、各教科の免許状を有する教員を配置することが困難であり、免許外指導の解消が困難である。
○ 小規模の学校では、子ども一人一人に目が行き届きやすいというメリットもある。しかし、こういったメリットについては、小規模校でなくても、少人数指導等により可能になる。一方で、人数が少ないことによりスポーツのチームが組めないなどのデメリットは、小規模校では解消が困難である。小規模のメリットを損なわず統合を進めることもできるのではないか。

4.小規模校において、適正配置を進めることが困難な状況として、どのような場合が考えられるか。その場合、どのように取り組むべきか。

(1)適正配置を進めることが困難な状況とその対応

● 同一市町村内において、すでに小学校もしくは中学校が1つしかない場合には、複数の市町村で学校を共同設置すること、あるいは、ある市町村から他の市町村へ境を超えて通学させるという方法も考えられる。
● 特に離島や山間部等の場合、また、豪雪地帯の場合等には、バス通学等であっても、他の学校まで、安定して安全に通学を続けることが困難な場合もある。そのような場合、統合ができない小規模の学校をどのように支援していくかということについても考えることが必要である。
● 小・中学校は、地域の精神的支柱とも言うべき側面も持つが、子どもの学習の場としての機能を高めていくという教育論を第一に考えていかなければならない。その際、跡地利用を検討するにあたり、学校に代わる新たな地域コミュニティのための施設として活用することも検討すべきである。

<同一市町村内に一校しかない場合>

○ 同一市町村内に一つしか小学校・中学校がない場合には、統合対象となる学校がないことになる。
○ 通学の関係で難しい場合もあるが、事務委託等により、他の市町村内にある学校へ、市町村の境を越えて通学するということも考えられる。また、複数の市町村で協力して学校を設置するということも考えられるのではないか。都道府県としても、適宜、後押しすることも考えられるのではないか。
○ 小学校同士、中学校同士の統合ができない場合でも、小学校と中学校の「縦」の統合により、集団性、社会性を涵養する機会を確保することも一つの方法であると考えられる。

<再開発等による人口変動が繰り返される可能性がある場合>

○ 主に都心部では、同じ市内に、人口が急増している地域と急減している地域があることがある。また、再開発によるマンション建設や宅地造成により、一時的に子どもが急増した後、減少に転じるということもある。
○ 学校の規模が大きくなった場合、分離新築によらず、近隣学校との通学区域の変更によって調整を図るという方法もある。

<地理上・気象上、安定して安全に通学可能な範囲に他の学校がない場合>

○ 小規模化が進んでも、特に離島や山間部等の場合、バス通学等であっても、他の学校まで、安定して安全に通学を続けることが困難なため、他の学校と統合できず、小規模のまま残らざるを得ない学校が必ずある。
○ 豪雪地帯の場合、バス通学であっても通学が困難な場合もある。
○ 統合後も標準規模に満たない場合や、統合を行った後に、またさらに少子化で児童生徒数が減少する場合もあり、安定して安全に通学可能な範囲でこれ以上の統合が難しい場合もある。
○ 統合が難しい地域では、小規模の学校をどのように支援していくかという仕組みについても考えることが必要。

<通学距離・時間・負担感>

○ 保護者から、教育条件がさほど変わらないのに通学距離が長くなる、という理由で統合に反対する意見が出た例もある。
○ 地域によっては、4キロメートル、6キロメートルといった補助の基準に満たない場合でも、通学路の安全確保などの観点からバス通学を望む声もある。
○ 都市部の場合、保護者の感覚では2キロメートル、3キロメートルでも長く感じるという地域もある。
○ 特に小学校の場合、低学年と高学年の体力の違いも考慮する必要がある。低学年については分校に通い、高学年になったら本校に通うということも一つの対応策として考えられる。

<統合に必要な施設、費用等が不足している場合>

○ 都市部においては、学校施設の収容規模による制約で統合が困難な場合があると考えられる。建築基準等の関係で、校舎の増築に制約がある場合もあり、一定規模以上への統合が困難な場合も考えられる。
○ 既存の校舎を活用した統合の場合には費用面での負担は比較的小さいが、増改築を伴う場合には市町村の財政上の負担が大きい。統合に伴う改築にかかる国の施設整備補助の活用などが必要。

<教育条件があまり変わらない場合>

○ 6学級の小学校同士が統合しても学級数が6学級のままである場合には、学級数以外の付加価値がないと、統合のメリットが見えにくい場合がある。
○ 現時点で標準的な規模である学校や、デメリットが実感されていないような学校であっても、将来的に児童・生徒数の減少が不可避である場合には、先を見越した適正配置を検討すべきではないか。
○ 統合により教育条件がよくなったと実感できるようにするためにも、市町村教育委員会は、統合後の学校に対して、統合したら後はすべて学校に任せてしまうのではなく、統合後の学校が、新しい目標を持って学校づくりができるよう、理念を持って学校に対する支援を行う必要がある。
○ 統合してもなお標準規模に至らず、規模によるデメリットがある学校に対しても、市町村教育委員会が、教育環境の維持・向上の観点から学校を支援することが必要ではないか。

<学校が持つ、地域の文化の拠点としての性格から、統合について地域の理解を得られていない場合>

○ 学校は、防災の拠点だったり、文化・スポーツの活動拠点だったりと、様々な意味で地域の拠点である。
○ 地域によっては、合併前の旧町村内のつながりが強く、旧町村内から学校がなくなるような統合への反対が強い場合がある。
○ 保護者は子どもに適度な競争を経験させたい、多くの友人関係の中で育てたいという意向から統合に賛成している一方、地域住民が、地域の中に学校を残してほしいという意向から統合に反対し、ずれを生じている場合もある。
○ 小・中学校は地域の精神的支柱、文化施設の側面も持つが、小・中学校は義務教育のための施設であるから、適正配置を考えていく上で、最終的には、子どもの学習の場としての機能を高めていくという教育論で考えていかなければならない。

<跡地利用>

○ 都市部等では、廃校となった学校の跡地の利用方法を決めることが大きな問題となる場合もある。
○ 廃校となった施設をそのまま維持するだけでも多額の予算がかかるという例もある。
○ 学校がなくなることは、地域コミュニティに一定の「痛み」を与えるため、跡地利用を地域コミュニティのための施設としての役割を持つようなものとして活用するという観点から検討することが重要ではないか。
○ 地域住民自らの取組で廃校施設の利活用を行っている地域もある。
○ 統合による校舎の跡地利用について具体例を示していくことは、市町村教育委員会の役に立つのではないか。
○ 地域づくりの観点からも、首長部局と教育委員会の連携が重要ではないか。

(2)特に取り組むべきこと

● 学校の設置者である市町村は、適正配置を円滑に進めるため、保護者や地域住民に対し、財政論だけではなく、1.今後の子どもの減少見込みなども示しつつ、学校の実情をよく説明し、小規模校が子どもの教育にとってよいのかどうか問題提起すること、2.通学の条件整備や跡地利用、地域とのつながりの確保を含め、統合後の学校をどのような学校としていくのか等の具体的な計画を十分に説明することなどが必要である。
● 小規模校で機会が不足しがちな、社会性の涵養や、様々な体験を積ませるという観点から、学校同士の交流活動や学校と地域との交流を進めるべきである。複式学級での指導の充実のための工夫も望まれる。

<保護者や地域住民への説明>

○ 地域住民は学校の現状を目にする機会がなかなかない。地域の理解を得ていくために、学校が置かれている状況を保護者や地域住民にも十分に説明し、このまま小規模校のままにしておくことが、地域で子どもを育てていくということにプラスになるのかどうかということを問題提起することが重要である。
○ 市町村は、保護者や地域住民に対して、財政面の説明だけではなく、統合によってよりよい学校になる、夢のある学校づくりにつながっていくという道筋を見せることが必要。
○ 保護者や地域が新設校に何を望むのか、十分に対話を行って要望を受け止め、新しい学校づくり、教育の目標づくりを行い、地域と学校が両輪で新しい学校をつくるような価値観の共有ができれば、再編統合が円滑になる。
○ 統合で単に学校を一つにまとめるということだけでなく、小中一貫教育や、学校運営協議会を積極的に導入するなどして、これを機に地域と学校の関係をつくっていくという道筋を示すべきである。

<統合できない小規模校への対応>

○ 標準規模に達しないものの統合ができない学校の、それぞれの教育条件について、どのように支援し、改善していくかが重要である。
○ 小規模の学校では、小規模校で機会が不足しがちな、社会性の涵養や、様々な体験を積ませるという観点から、学校同士の交流活動を積極的に行うことにより、教育活動の充実を図っている例もある。
○ 複式学級での指導の充実のため、教員養成大学と教育委員会が連携して、複式学級での指導を視野に入れたトレーニングを行うなど、教員養成段階での工夫を行っている例もある。

5.小・中学校の適正配置に向けた市町村の取組に対し、国、都道府県はどのように関与したらよいか。

● 市町村が教育的観点から適正配置を進めようとすることに対し、国や都道府県が、具体的な支援策を講じたり指導・助言を行うべきである。
● 学校統合を進めることにより教育投資を減らすという発想ではなく、次世代を担う子どもたちをどのように育てていくかという観点から、財政面も含めて教育条件の向上を進めていくべきである。
● 都道府県教育委員会と市町村教育委員会が十分に相談して、新しい学校づくりのために必要な教員の配置等について手厚い配慮が行われるようにすべきである。

○ 市町村としては様々な事情の中で、地域のしがらみや財政問題の中で身動きがとれなくなってきているところがある。そのような市町村に対し、都道府県教育委員会が、当該都道府県の事情を踏まえた適正配置の指針等を示したり、それに基づく支援策や指導・助言をしていくことなどが、適正配置を進めようとする市町村の後押しとなるのではないか。
○ 国は、ナショナルミニマムとしての義務教育の質の維持や向上の観点から、適正配置を進める際の拠り所となる考え方、考慮すべき要素、留意点等を提示し、それに基づく支援策等を講じたり、指導・助言等を行うことにより、都道府県や市町村における検討を進めやすくすることが必要である。
○ 当部会として、適正配置を財政論で進めることをどう考えるべきか。
○ 適正配置を考えるのは、次世代を担う子どもたちをどのように育てていくかという教育論で考えるべき。一方、子どもたちの教育をよくしていく上で、財政は現実の制約として存在しているのも事実である。
○ 市町村の小中学校の教員の任命権者は都道府県教育委員会である。統合前と統合後の教員配置について、都道府県教育委員会と市町村教育委員会が連携して、新たな学校づくりを進めることができるような人事上の配慮を行うことが求められる。
○ 小規模校の教員の中には大規模校での指導に慣れていない場合もあるため、統合後の人事配置に配慮が必要。
○ 新たな学校づくりを進めるための支援として、統合直後の児童生徒の環境が急激に変わらないようた手厚い人事配置を行うことが必要。

6.上記のほか、適正配置の検討に当たり積極的に進めるべきことや、留意すべきことは何か。

● 小・中学校それぞれの規模を確保するための「横」の統合だけではなく、義務教育の9年間全体を見通して、小学校と中学校の連携・接続を改善することで、一定の集団規模を確保し、教育効果を高める「縦」の統合を進めることも、一つの方策である。
● 適正配置の検討にあたり、大規模校をどう調整するかといったことや、特別支援学級、高等学校との連携・接続等についても考慮すべきである。

<小学校と中学校の連携等>

○ 適正規模については、小・中学校それぞれの規模を確保するための横の統合だけではなく、義務教育の9年間全体で一定の規模を確保する縦の統合という考え方もあり得る。
○ 地域によっては、学校の統合によって小中一貫教育を推進しているところもあり、適正配置と小中一貫教育を併せて検討することも必要。
○ 小中一貫教育という視点や、コミュニティ・スクールという視点も取り入れながら、学校の在り方というものを検討していくことが必要。
○ 広域的な区域内の小学校・中学校間のネットワークを形成することにより、教育効果を補完していくという考え方もある。
○ 統合や通学区域を再編する際、小学校と中学校の連携という点からは、同じ小学校の卒業生が同じ中学校へ進学できるよう、通学区域の設定を行うことも望ましい。

<大規模校の問題>

○ 世界的な学校の規模についての検討をみると、教育的観点からは小さな学校が望ましいという見方もあり、大きな規模の学校の上限をどうするのかという視点もある。
○ 大規模な学校については、学級数が多くなることにより、特別教室や屋内運動場などの施設の使用に支障を生じてくることがある。
○ 災害が起きた際の校舎からの避難に時間がかかる、屋内運動場に全校児童生徒が集まれないといったことが生じることがある点にも配慮が必要である。
○ 新たに学校を設置する以外にも、学校の状況を丁寧に説明した上で通学区域を変更することにより、学校規模を調整するという方法もある。

<その他>

○ 特に都市部において適正配置を考えるためには、私立学校の影響も考える必要がある。
○ 子どもの数は減少しているが、特別な支援を必要とする子どもの数は過疎地域でも増えている。学校の適正配置を考えていく上で、特別支援学級の取扱いについても留意する必要がある。
○ 過疎地域では高等学校の存続も問題となっており、小・中学校の配置、特に中学校と高等学校との連携という観点から、高等学校との関連にも留意する必要がある。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)