小・中学校の設置・運営の在り方等に関する作業部会(第5回) 議事録

1.日時

平成20年8月21日(木曜日)10時~12時

2.場所

KKRホテル東京 11階「孔雀の間」

3.議題

  1. 有識者・地方自治体からのヒアリング・質疑応答  (コミュニティ・スクールについて)・佐藤晴雄氏(日本大学教授) (学校選択制について)・富田祥子氏(品川区教育委員会事務局学務課長)
  2. その他

4.議事録

【小川主査】
 では、定刻になりましたので、第5回小・中学校の設置・運営の在り方等に関する作業部会を開催いたしたいと思います。
 もう1人、出席予定の柳澤委員が、地下鉄か何かの人身事故があったみたいで、少し遅れて出席するということですので、よろしくお願いいたします。
 では、きょうの審議に関係する配付資料の確認をお願いしたいと思いますけれども、文科省のほうで担当室長の人事異動があったそうですので、その件も含めてよろしくお願いいたします。

【佐藤教育制度改革室長】
 失礼いたします。今、座長のほうからご紹介がありましたけれども、7月31日付で淵上の後任でまいりました佐藤と申します。児童生徒課のほうからこちらの初等中等教育企画課に異動してまいりました。よろしくご指導のほどお願い申し上げます。
 あと、資料の説明の前に、本日、この会議のセットに当たりまして、一旦日程をセットさせていただいた後で変更ということで、委員の先生方、それからヒアリングのお願いをしておりました先生方に大変ご迷惑をおかけいたしました。この場をお借りいたしまして改めておわび申し上げます。申し訳ございませんでした。
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第1枚目の資料の4番「配付資料」のほうをご参照いただければと存じます。資料1として委員の名簿、それから資料2といたしまして、本日、コミュニティ・スクールの関係でプレゼンをしていただきます佐藤先生の資料を入れてございます。それから資料3といたしまして、こちら、学校選択制の関係で品川区の富田課長のプレゼンの資料でございます。それから、資料4といたしまして各都道府県が抽出して行いました学校選択制に関するアンケートでございますけれども、こういったものを取りまとめたものがございますので、そういった資料を資料4として入れてございます。それから資料5といたしまして今後の開催予定でございます。
 以上でございます。何か不備等ございましたら、事務局のほうまでお申しつけくださいませ。よろしくお願いいたします。

【小川主査】
 ありがとうございました。資料の不足等がございましたら、事務局のほうに申し出ていただければと思います。よろしいでしょうか。
 では、早速、今日の議題に入りたいと思います。今日は、前回から引き続いて有識者、また地方自治体からのヒアリングを進めたいと思います。今日は2つ用意しております。まず最初に日本大学の佐藤晴雄教授より、コミュニティ・スクールの実態と成果について、佐藤先生の実施された調査に基づいて報告をいただきます。
 その後に、品川区教育委員会のほうから、学校選択制の品川区における取り組みにかかわってのご報告をいただきたいと思います。
 では、最初に日本大学の佐藤教授のほうから発表をお願いしたいと思います。大体20分程度、発表いただきまして、その後、30分程度、質疑応答をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【佐藤教授】
 おはようございます。「コミュニティ・スクールの実態と成果」という資料をごらんいただきたいのですが、これは昨年の10月から11月にかけまして、全国のコミュニティ・スクールの指定校全校に対して──全校と申しますのは213校で、これは昨年7月1日現在の数値でございます。この213校全校に対して行った調査結果の概要だとご理解いただければと思います。回収率は約87%で、185校からご回答いただきました。
 5番目を見ていただきますと、「調査結果の要約」がございます。そのうちの(1)「コミュニティ・スクールの現況」を見て頂きたいと思います。平成16年に足立区の五反野小学校が指定を受けて以降、数は徐々に増えてきているわけなのですが、まず設置年度をそれぞれ見ておきますと、16年度は非常に数が少ないということもありまして、16、17年度を合計してございます。その数が割合で出ておりまして、約20%。平成18年度が52.4%。これは一部の自治体で集中的に指定したということが影響しております。19年度は27.6%という割合になっております。
 1が学校運営協議会を置くときの準備状況を示しています。その結果、大体準備期間1年未満のところが7割ぐらいと多い。「6か月未満」と、「6か月~1年未満」を足していただくと大体7割ということになります。中には2年以上かかっているところもありました。 
(2)「コミュニティ・スクールにおける教職員・保護者・地域住民の実態」ということでございます。申し遅れましたが、この調査はすべて当該校の校長にお願いしております。そういうことから、あくまでも校長の意識が相当反映されている、そういう数字というふうに見ていただければと思います。この教職員・保護者・地域住民の実態に関しましても、校長から見た実態というふうになっております。
 1番目の「教職員の様子」ですが、大体、教職員は何事もお互い協力しながら取り組むという協働性があるという回答は約97.8%です。ただし、「教職員はコミュニティ・スクールについて十分理解している」の質問に、イエスと答えたのが76.7%で、どうも少ないようです。自分の学校に学校運営協議会が置かれていながらも、まだまだ教職員がその運営協議会を理解していないというふうに思っている校長さんが4人に1人ぐらいいるということです。おそらくこれは一部の教職員に役割が集中していることも考えられると思います。
 2番目が「保護者の様子」です。コミュニティ・スクールについての理解に関しまして、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」という回答を足すと大体半分になります。ただし、中学校などでは、保護者の理解度が35.5%と、3校に1校の割合になり、数字が他に比べて低くなります。
 そして3番目が地域です。地域からの苦情は少ないと回答した校長さんが約9割。コミュニティ・スクールの影響なのかどうかはわかりませんが、校長はそう認識しています。ただし、2行目ですが、「地域住民はコミュニティ・スクールについて十分理解している」と回答した校長さんは39%です。だんだんとコミュニティ・スクールに対する理解度は上がっているのだろうけれども、やはり保護者あるいは地域の理解度はまだ十分じゃないということが課題だと指摘できるかと思います。
 ページをめくっていただきまして2ページ目です。この調査の中で3番目に「コミュニティ・スクール制度への期待とその成果」とありますが、(1)「コミュニティ・スクール指定の経緯」について、選択肢として、「教育委員会の意向」「首長の意向」「学校自身の意向」「保護者・地域の意向」と4つを示し、択一式で回答していただいております。ただ、実態として、学校によっては首長の意向なのか教育委員会の意向なのかはっきりしないところもありますが、何らかの形で択一で答えていただいております。その辺を前提にご理解いただきたいのですが、「教育委員会の意向」が46.5%という数字で、全体的に高くなっています。学校自身に関しましては37.3%。この2つの数字にほぼ二分されています。これを「教育委員会の意向」と「首長の意向」を足して、いわゆるトップダウン型というふうにしまして、もう一つの「学校自身の意向」プラス「保護者・地域の意向」、これを合わせてボトムアップ型の学校というふうにまとめて、データ分析いたしております。この点は後ほどに申し上げます。
 2番目、「コミュニティ・スクール制度への期待」についてです。一番、数字が高かったのが「地域が学校に協力的になる」。そのほか「学校が活性化する」「特色ある学校づくりが進む」など。ただし、人事に関しては、「適切な教員人事がなされる」という回答が48.1%と低くなっています。ここで示した質問項目14項目を4つのカテゴリーに分けた結果、3の下の表(3)-1のようになります。これを見ていただきますと、「学校経営(校内経営)」については、「特色ある学校づくり」から「教員人事」までの4項目を含んでいます。「学校経営(対外経営)」ですが、これは「地域が学校に協力的」から「保護者・地域の学校理解」が深まるという3項目からなります。「教育指導」に関しては「教育課程の改善」から「生徒指導課題の解決」4項目で、一番右側の「校外環境」は、「地域が活性化」から「家庭教育力の向上」という3項目からなります。この数値は「はい」の回答を平均値で示してあります。その結果、「学校経営(校内経営)」に関しては82.3%の校長さんが期待しています。ただし、人事に関しては数字が低くなります。そこで、便宜的にこの人事を除外した数値が93.7%になります。「学校経営(対外経営)」に関しても93.7%と高い数字になっています。ただし、「教育指導」に関しては、期待値がの項目に比べると低い傾向にあり、68.5%になります。
 次に、同じ項目を示して、今度は制度の成果を尋ねてみました。その結果が4です。学校が「地域に情報提供を積極的に行うようになった」という項目では95.9%が「はい」と答えております。「地域が協力的になった」というのが87%、「学校が活性化した」は82.1%。人事に関しては期待もあまり高くなかったけれども、成果としても31.0%と低めの数字になっております。
 ただ、ちょっとおもしろい結果が出ました。「校外環境」に関しては、やや期待が高いにもかかわらず、実態としては──実態というか、校長さんの成果観というんでしょうか、それに関しては比較的低めになっております。それが右側の3ページの上の表になります。差異を数字であらわしてありますが、「対外経営」や「校内経営」に関してもそんなに差がないのですが、「校外環境」では、マイナス26.2ポイントという数字になります。おそらくこれは、学校運営協議会を置いたから地域がいきなり活性化するというわけではないということが考えられます。おそらく成果を上げるには一定の年数が必要なことを表している思います。
 図(3)-3「コミュニティ・スクール制度への期待とその成果」を見ると、もちろん期待のほうは高くて、全体的に成果は低くはなっております。これを見ていただくと、ギャップの大きいのが左から5番目の「地域の教育力が向上」、さらに3つ飛びまして「地域が活性化」、1つ飛んで「家庭の教育力が向上」などです。これらが先ほど申し上げた「校外環境」というカテゴリーにしております。ですから、全体的に「対外経営」や人事を除いた「校内経営」に関して、校長先生たちは成果があるというふうに意識している傾向が見られたということです。
 ページをめくっていただきまして4ページをごらんください。調査の中では、具体的に学校運営協議会の実態についても尋ねております。(4)の1学校運営協議会の委員数ですが、委員数が全体的に「11~15人」という選択肢に集中しておりまして、63.2%の学校が大体この範囲に入ります。次いで「10人以下」というところが17.3%になっています。ほとんどが「11人~15人」のようです。
 教職員が委員に含まれているかどうかを尋ねた結果が次のデータです。「1割から2割」と回答したのが3校に1校の、34.8%です。教職員が含まれていない場合は23.4%、すなわち4校に1校です。多くは教職員を委員に位置づけているのです。
 運営協議会の代表ですが、「地域代表」の枠で位置づけているところが約7割(69.9%)で一番多くなります。次いで「学識経験者」が23.4%になっております。代表は、ほとんどの学校が「地域」から選出しているようです。調査で聞いていないのですが、いろいろな学校に聞いた結果、「地域代表」が主流を占めている実態は謝礼の問題も絡む可能性があると思われます。地域の方だと、謝礼がなしでも依頼しやすいけれど、「学識経験者」だとそうはいかないということだと思われます。
 「校内の担当者」ですが、圧倒的に教頭職が多いということです。この業務そのものが教頭に集中しているという実態がおわかりになるかと思います。中にはコミュニティ・スクール担当等を置いている地域もありますが少数に過ぎません。
 「会議の開催数」については、「月1回以上」が28.6%でした。「隔月」と合計すると、約50%になります。中には「年3~4回程度」というのが、数字としては高くなります。45.4%でした。しかし、「年3~4回程度」だと、学校評議員の会議数とあまり変わらないと思います。ここではデータを示しておりませんが、大規模校ほど会議の開催数は多いという結果も出ました。
 「教育委員会のかかわり」はどうでしょうか。教育委員会職員が学校運営協議会に委員以外の立場で出席しているのが53%と、半分ぐらいでした。出席していない学校は47%となり、これは「出席」よりも数値が低いものの、比較的多いように思います。これは一つの自治体でコミュニティ・スクールを多く指定しているところには多分、職員が対応しきれないということと関係していると思います。
 それでは、実際にどういう議題が取り上げられているのかを示したのが5番目です。議題として多く取り上げられているのが「地域人材の活用」「学校評価」「学校行事」等です。特に中学校の場合には、学校行事が多い傾向にあります。右側に図4-2がございまして、赤が中学で、三角の青いものが小学校です。中学の場合には学校行事と教育課程が小学校に比べると高い数字を示しております。
 そして、指定年度別で見ますと、「学校評価」については「平成16年度・平成17年度」指定の学校に多いんです。「学校行事」も比較的古い学校に多くなっています。
 (5)の1を見ていただきますと、まず「教職員の人事」に関する意見の有無のデータがあります。学校運営協議会で教職員の人事に関する意見が出た学校が17.8%と、低くなっています。その意見の内容を見ると、若い先生が欲しい、体育の先生が欲しいというような人事に関する一般的な要望が7割以上。ですから、特定の教員を欲しいという意見よりも、一般的な要望をしているところが多いようです。特定の教員を転出させないでくれというのが27.3%という数字で、これは多いと見るか少ないと見るか、ちょっと判断は分かれるところです。ただし、人事に関する意見が「反映されなかった」というのは約3割でして、これは比較的多い数値だと見てもよいかもしれません。。
 今度は、学校が提示した方針等の「承認」ですが、修正意見が出たというのは16.8%です。ほとんど修正意見が出ていないということです。
 委員の研修への参加状況ですが、これは関係研修に委員さんが出ている学校の割合は75.7%で、つまり4校に3校は委員が研修に参加しているようです。逆にいうと研修に出ていないというのが4校に1校あるのをどう見るかという問題があるかと思います。
 「学校運営協議会の審議結果の公開」についてですが、公開しているところが80%です。逆にいうと2割が公開していないということになりまして、これも今後の課題の一つになろうかと思います。
 あと、「学校運営協議会における『意見』の実態と運営上の課題」についてですが、このうち学校運営協議会で議題に上がった意見が実際に実現されたのかどうかということを示しています。その結果、「希望した教員が赴任」、これは13%ということになっております。最も実現率の高いのが「地域人材が活用されるようになった」の87.0%です。
 調査では、「学校運営協議会の運営上の苦労」についてです。まず、「委員謝礼や活動費などの資金」の不足というところですが、この質問項目に対して65.4%の校長さんが「はい」というふうに答えております。次いで「管理職や担当教職員の勤務負担が大きい」53.5%で、この数字はもうちょっと高いかなというふうに考えていたのですが、意外に低い数字だったということです。あと「学校運営協議会について理解されていない」というのがやっぱり半分ぐらいになります。
 「コミュニティ・スクールに関する制度及び教育委員会のサポート」の項目に移ります。権限のとらえ方についてです。ご承知のとおり学校運営協議会に3つの権限がございます。その3つの権限のうち、どれが最も大切かというふうに順位をつけていただいたんです。その第1位に上がった数字だけ見ておきますと、例えば「校長が作成した基本的な方針を承認する」、これが一番大事だとしたのが、最も多い約60%です。次いで「学校の運営に関して校長に意見を述べる」が33.7%、3校に1校ということです。「教職員の採用等の任用に意見を述べる」、これは非常に少ない数字で6.6%でした。全体的に教職員の任用に関しては、あまり全面に出したがらないというんでしょうか、そんな意識もあるようです。
 小・中別で見ると、中学校では「基本的な方針の承認」よりも、「学校運営に関して校長に意見を述べる」というところが多くて、こちらが第1位の回答になります。右側、7ページ上にあるのがその結果です。教職員の任用に関しては小中共に最下位でした。ただし、他の地域の学校の校区で住民の意識調査を行い、保護者、教職員、住民に回答をいただいたのですが、その場合、保護者の意識としては、教職員の任用に関するものが非常に重要だというのが第1位になってくるんです。地域の方は中間的な回答。そこでも教職員は、教職員の任用に関しては一番低い数字になっていました。
 次に、コミュニティ・スクールに対する評価。これは校長さんの満足度で見ております。そうしましたら、「満足」13%、「ある程度満足」69.7%、これらを合計すると、8割以上の校長先生が満足ということになっております。小学校のほうが満足度が高くなっています。
 また、「今後のゆくえ」のところなのですが、「コミュニティ・スクールが今後どうなりますか」と質問しました。「期待どおりに機能を発揮していく」というのが大体半分です。「形骸化」は10.3%と、非常に少ない数字になっております。
 教育委員会のサポートについてですが、「予算措置」を求める学校がほとんどで、95.7%に達しました。圧倒的に予算を求める学校が多いということです。
 最後に、一部、クロス分析したものがございまして、時間の関係であまり細かくご説明できないのですが、簡単に申し上げます。8ページを見ていただきますと、これは「平成16~17年度」に指定された学校は全体的に成果に関しては非常に高い数字を示しています。ですから、これはある程度実績を重ねた結果、成果は上がっているのではないかということを予想させるわけです。これははっきり数字として出ます。青い丸のところですね。全体的に上に位置しています。
 指定の経緯を見ていただきます。下の図ですが、これも結果的に申し上げますと、学校と保護者、地域の意向で指定された、いわゆるボトムアップ型の学校のほうが数字が全部高くなっているんです。反対に、「教育委員会の意向」と「首長の意向」を足した、いわゆるトップダウン型は数字が低めです。つまり、ボトムアップ型のほうが成果が上がりやすいということがいえるようです。
 9ページの右側ですが、今度は学校評議員制との設置状況を見ますと、これを廃止しているほうが成果の数字が高くなっています。これは調査データからははっきり読み取れませんが、おそらく学校評議員制度と併設すると学校の負担増につながっているのではないかと考えられます。
 あと、学校規模別はそれほど差がございません。ただし、標準規模校は若干数字が高い傾向にあります。
 時間になりましたので、このデータに関する説明は終わらせていただきたいと思います。

【小川主査】
 ありがとうございました。限られた時間の中で報告をまとめて頂き、ありがとうございました。
 それでは、あと30分ほど、今の佐藤先生からの報告についての質問ないしは意見交換をしていきたいと思います。ご自由にどなたからでも。あと、11時に退席せざるを得ないという中西委員のほうからも何かあれば、優先的に発言して構いませんので、どうぞ。

【中西委員】
 すみません、ご配慮ありがとうございます。
 2点ほど伺いたいのですが、一つは、「教職員が十分理解している」という1ページ目ですけれども、76.7%、少なめであるとか、「地域住民は十分理解している」は39%、低めであるという、この「十分理解」というのはどういう観点で判断されているのか、何かその辺がわかれば伺いたいのと、あと、人事についてが期待も低いし、結果もそうだしという部分が目立つと思うのですけれども、これ、特定の自治体はかなり数を指定されていて、コミュニティ・スクールが1つの自治体で増えていけば、それだけ人事も反映しづらくなるということもあると思うのですが、そんな状況も関係するのかどうか、その2点を伺えますでしょうか。

【小川主査】
 よろしいですか。じゃあ、お願いします。

【佐藤教授】
 まず最初のご質問なのですが、十分理解かどうかということですけれども、簡単に申し上げますと、例えば「教職員はコミュニティ・スクールについて十分理解している」、それに関して「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の4択で回答いただいておりまして、この「理解」に関しても「名前は聞いたことがある」あるいは「名前も知っていて、その役割も知っている」か、理解度によって大分違ってくるとは思います。ですから、教職員の場合には、多分、コミュニティ・スクールという名前は聞いたことがあるけど、どういう権限を持ったものか、ちょっと理解の足りない方が二十数%いるのだろうと解釈できるのですが、逆に地域の方からだと、名前も知らないというような方も大分いらっしゃると思うので、若干回答の結果に偏りはあるとは思っています。
 あと2つ目の問題、人事に関してです。これに関しては確かに出雲市が49校全部指定しておりますが、それぞれの学校で人事に関して意見を申し出ると、多分、調整が難しくなるということは当然予想されます。しかし、どちらかというと、今回のこの数字の低さというのは、人事に関してはあえて前面に出さないという自治体や学校が結構あることの表れだと解しています。これに関しては、教職員の任用に関する誤解がございまして、例えば、教職員がどこかに転出させられてしまうとか、免職になるなど、そういう誤解も少しあるような気がします。
 そこで、自治体や学校の学校運営協議会規則についてよく見ますと、人事に関して権限の中に入っていないところが結構あります。あえて入れていないんです。あるいは人事に関してふわっとした感じで規則を置いているところは「その他学校教育に関して校長に意見を述べること」と、その中に人事が含まれていますよという規則をつくっているところもありまして、人事をあまり前面に出したがらないということが数字の低さに影響していると考えております。

【小川主査】
 中西委員、よろしいでしょうか。
 では、他にどうぞ。西川委員、どうぞ。

【西川委員】
 一つは佐藤先生に、一つは退席なされる中西委員にお尋ねしたいことがあるのですが、佐藤先生、この学校運営協議会の委員なんですけど、教育委員会が任命するとなっているのですが、その委員の選任方法は、ほとんどが校長が推薦したものを教育委員会がそのまま任命しているというふうに判断していいのでしょうか。他のバリエーションもあるのでしょうか。ちょっと教えてください。
 それから、中西委員には、たしか前回のこの会議の最後のほうで、コミュニティ・スクールというのは、その制度も実態も非常に多様なんだと。それをごっちゃに論議してはいけないというふうな発言があったと記憶しているんです。私の記憶違いでしょうか。その多様な実態があって、それをごっちゃに論議してはいけないというご発言だったと思うのですが、それをもう少し詳しく言っていただけたらありがたいのですが。
 コミュニティ・スクールといっても、多分、あれもコミュニティ・スクール、みんんなコミュニティ・スクールになっちゃいますよという発言を僕はしたと思うんですけどね、中西委員に少し補足していただければありがたいのですが。ご記憶があれば。

【小川主査】
 じゃあ、佐藤先生のほうからまずよろしくお願いします。

【佐藤教授】
 委員の任命方法なのですが、調査の中では特に質問を設けなかったんです。いくつかの学校に、訪問して調査をしましたところ、ほとんどの学校が校長が事実上、委員を選んでいて、それを教育委員会に上げるというスタイルをとっておりました。教育委員会が学校の意向と別に任命したという例は、訪問した学校の中では聞きませんでした。ですから、大半が校長さんのほうで事実上、人選されているというふうに見てよろしいかなと思います。

【小川主査】
 よろしいですか、今の件では。佐藤先生の回答でよろしいですか。

【西川委員】
 結構です。

【小川主査】
 じゃあ、中西委員。

【中西委員】
 前に申し上げたのは、コミュニティ・スクールとして制度的にできているものを指定しているところというのは、自治体の数でいえばかなり限られているけれども、それ以外でもコミュニティ・スクール的な運営をされているようなところというのは、以前からあちこちにあるんじゃないかというお話を申し上げたと思うんです。ですので、その点で制度的にできていることと、以前からコミュニティ・スクール的に運営されていることとは、どこかで線を引いて考えたほうがいいんじゃないかという意味で言ったんですけれども。

【小川主査】
 西川委員、どうぞ。

【西川委員】
 じゃあ、制度的にできているというのは、教育委員会がコミュニティ・スクールだというふうにちゃんと申請して認定している、それを制度的とおっしゃるんですね。それに近い形態というのは、具体的にどんなものがあるんですか。

【中西委員】
 今ちょっとすぐ。例えば千葉県のどちらでしたっけ。

【小川主査】
 習志野?

【中西委員】
 習志野のほうの小学校。

【小川主査】
 秋津?

【中西委員】
 秋津の小学校だとか、あるいは福島県のちょっと今、自治体名が思い出せませんけれども。

【西川委員】
 ここで議論するのは、やっぱり指定を受けているコミュニティ・スクールとして議論したほうがいいんでしょうか。それとも、そういう広範なものをすべて対象とすべきでしょうか。

【中西委員】
 ですから、それは、こういう学校もあるけれども、コミュニティ・スクールとして、制度として運営されているものと、そうじゃないところというのは、やっぱり分けて考えたほうがいいんじゃないかと思うんですけれども。

【小川主査】
 おそらくその辺も今後議論していく場合の一つの議論のテーマにはなるかと思いますけれども、今日は。

【中西委員】
 福島の三春ですね。三春町とかそういうところです。

【小川主査】
 今の回答でよろしいですか。西川委員。
 今の議論にちょっと関係するのですけれども、佐藤先生に僕のほうから。いわゆる学校運営協議会を設置している学校というのは、自治体によってかなりばらつきがありますよね。それと、法律では規定していますけれども、先ほど言ったように、人事等々については、この協議会の権限として明記していないような学校運営協議会もありますよね。例えば京都なんかはまさにそうだと思いますけれども。同じ学校運営協議会といっても、権限や運営形態が大きく異なったり、また、地域によってかなり重視して学校運営協議会に力を入れて設置しているところと、全然設置していないところと二分されているといったように、かなり地域的なアンバランスがあると思うんです。今日ご報告頂いた調査で対象となった185校の地域的な傾向やその地域的類型の違いで何か見えてくるものというのは、アンケートの結果からわかりますか。

【佐藤教授】
 実はこの185校のうち、出雲市と京都市の数が相当占めているんですね。これが実は設置年度のほうにも影響をしておりまして、出雲市が平成18年度で49校一斉に指定した関係もございまして、その辺の影響があるということを前提として申し上げなければいけないんですね。
 ちなみに、今日の資料で8ページのところで指定年度別の成果のグラフがございますが、これによると、平成18年度では、数字が下がっているところがあります。これはそうした地域的偏在の影響があるかもしれません。
 ですので、そういった地域的な偏りがこの185校にはあるというふうにご理解いただければと思います。

【小川主査】
 その辺のところを少し考慮していただきながら、データの読み方を考えていただければと思いますけれども。
 他にどうでしょうか。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 議論を促進するために発言させていただきますが、私自身、学校運営協議会の会長を今やっておりまして、一つの学校は杉並区の中学校、3年目ですけれども、それから新宿区の中学校でも会長をやってくれとこの前言われて、ことわりきれなくなってやっているんですけれども、で、この学校運営協議会の問題を考える場合に、学校推進本部が動き出しているんですね。これとの関係とか、あと、学校関係者評価が制度化されまして、法改正を通じてですね、文部科学省の学校評価ガイドラインの中には、評価委員会を立ち上げる構想が入り込んでいるわけです。
 佐藤先生の調査で支援的な要素に対する期待とか成果がかなり高く出ている。そうすると、この支援本部を設置した場合に、支援本部と学校運営協議会との関係がどうなっていくのかと。私が今、会長をやっている杉並区の杉並中学ですけれども、そこはもう学校支援本部があるんですね。昨年度設置しています。区のプロジェクトで設置しています。で、学校運営協議会を4年前に設置している。それで、その支援本部と運営協議会の関係との問題というのは実は、学校運営協議会って一体何かという話にやっぱりなっているんですね。
 もう一つ、学校評価の項目が出ているんですけど、これは制度化された学校関係者評価の一環として評価委員会を立ち上げるということになっていると、そっちのほうに吸い取られる可能性がある。そうすると、学校運営協議会というのは一体何なのかと。しかも人事的な対するところへの期待って非常に弱いんですね。杉並区の場合は、区の学校運営協議会設置規定の中で、人事に関する権限を付与している構造を持っている、非常に特色のある区なものですから、だから会長名で、東京都人事部長殿宛で、来年度の職員の処遇について意見を出さなければいけないんですね。11月ごろになると区教委から来ますから。だから、それを持っているところは学校運営協議会がやる固有の領域って残っていきますけれども、結局、支援とか評価というところにかなりウエートがあるとすると、支援は支援で仕組みが動き出していて、評価は評価でまた動き出す流れがあって、そうすると、学校運営協議会というのは、結局何が残るのかという、そこら辺の課題があるんじゃないかと思うんです。
 それとの関係で、これはここで議論していただきたいということで申し上げたいのですけれども、佐藤先生にちょっとお聞きしたいのは、8ページ以降のところに指定年度別で見ると、16年度、17年度の指定校はすべての成果項目について高い数値を示しているというふうに書いてあるんですけど、これは結局、例えば習志野の秋津小にしても、足立区の五反野小にしても、コミュニティ・スクールに指定される前からかなり取り組みを行っているわけですね。だから、取り組みがあるという地域と学校との信頼関係とか協同関係が相当深くあって、そういうところが16年度、17年度という早い時期に指定というところに移っていったから、だから成果が非常に高く出ているというふうに読めるのかどうかですね。
 つまり、杉並区なんかでも、区のプロジェクトで学校支援本部をまず設けていて、その後、学校運営協議会を設置した。その後の年度にですね。そういう学校の場合に、割合スムーズに学校運営協議会の体制が固まっているというケースもあるんですね。ですから、支援から入り込んでいって、協同関係がある程度醸成されたところで指定というケースだから、この16年度、17年度の指定校は高い数値を示しているというふうに、私なんかは読んじゃうんですけれども、そういう見方でいいのかどうかというあたりを、ちょっと佐藤先生の調査を通じてお聞きしたいんですけれども。

【小川主査】
 じゃあ、佐藤先生、1点目については、佐藤先生に対する直接の質問というよりも、この作業部会で今後本格的に議論していく際に重要だと思われる論点を1つ、葉養先生のほうから提起してもらいましたけれども、それについても何かアンケート等の結果を見てとか、また佐藤先生ご自身、いろいろなコミュニティ・スクールに事例調査等に入られていると思いますので、そうしたこれまでの調査を踏まえて、第1点、つまり学校運営協議会と支援本部とか、学校評価等のいろいろな機能を持った委員会との役割分担等々についてどう考えればいいのかということについて、何かお考えがあれば少しお聞かせいただきたいというのと、2点目については先ほどの8ページの表の上のほうの読み方について何かあればというご質問2つだと思いますけれども。よろしくお願いします。

【佐藤教授】
 ありがとうございます。まず2点目のほうを先にお答え申し上げたいと思います。
 葉養先生がご指摘いただいたような読み方もできるというふうに考えております。実は、自治体によっては、例えば市の教育委員会としてはコミュニティ・スクール制度を導入しているけれども、ある学校が新たに手を挙げた場合に、教育委員会が指定しない場合も出てくるんですね。なぜかというと、まだ地域と学校の関係が十分できていないから、もう少し待てということだからです。さっきのご指摘のように、ある程度の地域との関係性ができて、そこに乗っかるという、そのことによって、より地域との関係がよくなっていくという例もあるわけです。
 もう一つは、指定を受けた学校が、それ以後、この指定を受けたことを契機に地域との関係性をうまくつくっていこうと努力するという、そういう側面もあると思っておりまして、要するに2つの側面を持っているというふうに考えております。
 最初のご質問の点ですが、比較的多くの学校では、学校運営協議会の専門部会あるいは分科会みたいなものを置いています。いわゆる実働組織です。その中に、例えば評価部会や評価委員会、あるいは学校支援委員会や学校支援部などがあり、運営協議会で協議をして、その結果を踏まえて実際に動くのはそうした専門部会等にするという組み合わせで活動を進めている学校があります。そういう学校のほうが比較的成果が高いような感じがします。これははっきりと数字に出ているわけではありませんが。
 そうじゃなくて、単に協議会として会議を年数回やっているところでは、どうも成果があまり上がっていないようです。そういう意味で申し上げますと、例えば学校支援本部が置かれる場合に、学校運営協議会の実動的な組織として位置づくということが十分現実的だと思います。ですから、協議会があって、その下に実働組織として学校支援本部が入ってくると。そして、学校評価に関しても、その1部門として運営協議会の下の実働組織として入っていくという、そんな形で取り組みを進めることが大事ではと考えます。
 自治体によっては、例えば学校運営協議会が置かれていて、学校評議員制度が残っていて、第三者評価の組織があって、関係者の組織もあるという、非常に複雑になっているところも一部あるんですね。これを今後もう少しすっきりさせるというのが、これから運営協議会をうまく機能させるための一つの課題になると考えています。その整理の仕方として、学校運営協議会の下に地域本部、あるいは評価の部門を置くということが考えられます。

【小川主査】
 よろしいでしょうか。今日の段階では、葉養先生、今の回答でよろしいですか。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 はい。

【小川主査】
 今後またヒアリングが終わった段階で議論を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 他にどうでしょうか。じゃあ、松川委員、どうぞ。

【松川委員】
 佐藤先生のほうに1点質問をしたいのですけれども、コミュニティ・スクール指定の経緯ということで2ページのところで、教育委員会の意向と首長の意向というのを合わせてトップダウンと、学校自身と保護者・地域の意向というのをボトムアップというふうにまとめられてご説明されたのですけれども、例えば教育委員会の意向といっても、どういう意向なのかと。そこら辺をもう少し掘り下げたというのはないのでしょうか。
 例えば、岐阜県の場合ですと、都市部の伝統的な2つの小学校がことし統合されたのですけれども、前回までの議題であった学校統合のときに、やっぱりコミュニティ・スクールをつくるというようなことを旗印にしてやっているということがあるんですね。だから、そういう、トップダウン、ボトムアップという大くくりではなくて、なぜそこの学校をコミュニティ・スクールにするという戦略をとったのかという、そこの細かいところは、同じく教育委員会の意向といってもいろいろあるでしょうし、学校自身あるいは地域の意向といってもいろいろあると思うんですよね。その辺のところというのは、いかがなものなのでしょうか。

【小川主査】
 じゃあ、佐藤先生、よろしくお願いします。

【佐藤教授】
 この調査の質問の回答なんですが、事実を聞いているというよりも、校長先生の意識を聞いている形になるんですね。ですから、校長先生として、早い話が、上から押しつけられたという意識を持っているのか、あるいは自発的に手を挙げてコミュニティ・スクールにすると捉えているのかという、そういう読み方になろうかと思うんです。ですから、意向はどういうふうに解釈できるかというよりも、要するに校長先生の指定に際しての認識と見ていただければと思います。
 中には、うちの学校は指定したい、したくないにかかわらず、教育委員会がコミュニティ・スクールにするという方針で指定していく例もあるわけです。そうした場合、教育委員会の意向というふうに多分回答していると解されます。
 今おっしゃったように、統合によってコミュニティ・スクールにするということは、その校長さんは、コミュニティ・スクールになることを自発的に結構受け入れている要素もあると思うんです。学校を統合して、これから新しい学校をつくるという場合、ここには含まれているかどうかわかりませんけれども、その場合は多分、地域の意向かあるいは学校の意向というふうに解釈して回答していると思いますので、そういうふうに読んでいただければと思います。

【小川主査】
 何かございますか。

【松川委員】
 それに関連して、先生、このアンケートの回答者を校長先生だというように指定されてアンケートされているわけですよね。

【佐藤教授】
 はい、指定しております。

【松川委員】
 私、コミュニティ・スクールの校長人事というのがどういうふうにされているのかということも関係していると思うのですが。コミュニティ・スクールをつくるがゆえにこういう校長人事をするということはあるわけですよね。だから、そういうふうな人事をされてきた校長とか、もとからそこの校長で、そのままなったとか、いろいろあると思うんですけど、私は、その校長の意識というのは、それはコミュニティ・スクールをつくるので、そこに人事異動させられてきた校長であるとかないとかということはかなり大きくきくと思うんですね。コミュニティ・スクールに関しては校長とか管理職の人事というのもやっぱり大きな要素であって、だから校長先生に聞いているということをどういうふうに解釈するのかなということが、少しその点で引っかかるなというふうに思いました。
 それから、人事についてのやり取りがあまり運営協議会の中でなかったというお話で、一般的なものしか上がっていないということだったのですけれども、つまり管理職人事に関して話題にされているというようなことというのはあまりないわけですか。その中で。そういう聞き方はあまりしていなかった?

【佐藤教授】
 管理職人事に関しては特に調査では聞いておりません。

【松川委員】
 そうですか。わかりました。

【小川主査】
 じゃあ、よろしいですね。今のはご意見ということで。

【松川委員】
 はい。

【小川主査】
 じゃあ、他にどうぞ。時間がないんですけれども、あとご質問されたいという方、何人いらっしゃるでしょうか。じゃあ、髙岡委員、貞広委員、國定委員、大嶺委員でよろしいでしょうか。じゃあ、その4人の方、よろしくお願いします。

【髙岡委員】
 すみません。先ほどの葉養先生の、ある意味で補足的な説明も伺って、なるほどなというふうに思ったのですが、これ、やっぱりコミュニティ・スクールというのは、ある種の、日本にはもともとなかったものではあるんだけれども、昭和の終わりごろから、学社連携とか融合とか、あるいは地域と学校の関係の変化というものをどうつくっていくかというところで、それは国主導というところもあったかもしれませんけれども、実際は地域社会の中ででき上がってきた部分がある部分があるんですね。それが16年以降の指定という制度化されたものになったときに、まずはやっぱりボトムアップ型の学校とここで佐藤先生がおっしゃっている学校が指定に乗り出してくると。あとは、制度ができたので、そこにかぶってくるような、ある意味で政策的といいますか行政的というか、そういう行動が出てきて、そこにちょっと質の断絶が起こるような気がするんですよ。先ほど松川委員がおっしゃったことも、私、そういうふうにちょっと伺ったんです。
 そういう意味でなるほどなというふうに伺ったんですが、その点でいうと、出雲市というのは、私、近くにいるものですから、何となく言いにくいところもあるんですけれども、やはりここでおっしゃっているトップダウン型というところが何を目指してこれをやろうとしたかということが、学校にも地域にも十分に伝わっていかない。しかもそれが制度化されているというところの問題で、やっぱりデータ化されてくると、18年以降の指定というのが、少しデータが下がってくるというのは、現実にそういうことは起こるだろうなと思うんですね。
 そういう意味で1点だけ質問なんですけれども、16年、18年という指定年度ではなくて、トップダウンとボトムアップのこのパターンで整理したときに、トップダウンの代表出雲市というのは変ですけれども、そういう見え方をしたときに、このデータ、例えばどこか、こういう顕著な差が出てくるというところはありませんでしょうか。

【小川主査】
 佐藤先生、よろしくお願いします。

【佐藤教授】
 出雲の例をお出しいただいたのですが、出雲市が合併前と合併後でちょっとまた違ってきておりまして、合併以前は出雲市でなかった地域では、指定の経緯をよく把握できていない場合があると聞きます。合併後、全校指定するということになり、戸惑いみたいなものが多分あったのだろうと思います。それが例えばここでいうと、学校としてまだ環境が熟成されていないけれども指定されるというケース、つまり教育委員会ないしは首長の意向というケースになるのだろうと考えられます。
 さっきもお話にありましたように、実は秋津小学校、あれは指定年度はそんな古くないんです。あそこは地域との活動をずっと続けていて、結構準備期間が長いところだったんです。あのようなケースは土壌が熟成していて、そして指定を受けたことになります。したがって、この調査では、「地域・保護者の意向」だと回答していると推測できます。そうした場合、それなりの成果が出てくるだろうと考えられます。

【小川主査】
 よろしいですか。じゃあ、貞広委員、どうぞ。

【貞広委員】
 ご丁寧なご説明をありがとうございました。葉養先生と髙岡委員がおっしゃったこととも関連するのですけれども、何度か先生のご発表の中に、一定の年数を経ることによって一定の成果を上げていっているというようなご発言があったのですけれども、今までのご説明を聞いている限り、一定の年数というよりも、一定の年数をかけて失敗を重ね、傷を重ね、それを修正しつつ、やっと今の段階まで来たというような印象があて、むしろコミュニティ・スクールを成功させるかどうかというのは、その傷をどういうふうに修正してきたかというところにかかっているのかなというふうに伺ったのですが、具体的に分かる範囲で結構ですので、どの点がポイントであったのかというようなこと、そしてどういうふうにそれを修正して改良して成功裏に結びつけてきているのかということを1点伺いたいということ。
 もう1点は、今回のこのアンケート調査からご指摘いただけるかどうかということはちょっと難しかろうと思うのですけれども、1ページ目のところに教職員として、コミュニティ・スクール設置校の97.8%は「教職員は何事にもお互いに協力しながら取り組んでいる」と、非常に良好な学校であるということがわかるわけですが、これは通常のコミュニティ・スクールではない学校と相対的に比べて、良好であるのかどうかということなんです。とても難しいとは思うのですけれども、非常に重要な点でもあろうかと思いますので、先生の印象的なご意見でも結構ですから、お聞かせいただければと思います。
 以上です。

【小川主査】
 じゃあ、質問を最初に全部聞いた上でまとめてやったほうがいいのかなと思いますので、じゃあ、國定委員、どうぞ。

【國定委員】
 貴重なご発表をありがとうございました。私どもの市では、学校運営協議会も学校支援地域本部もまだ制度上立ち上げた段階ではないので、あまりおこがましいことは言えないのですけれども、個人的には、放課後子どもプランとかの実際の状況を聞いていますと、まさに葉養先生がおっしゃられたご意見とか、それを受けての佐藤先生のご意見に私自身は個人的にかなりシンパシーを感じています。つまり、1回目の資料で配られたコミュニティ・スクールを仮にここで学校運営協議会というものと、学校支援地域本部というものにきちんと制度上分けたというような仮定でいうと、学校支援地域本部なくして学校運営協議会というのはそもそも成り立たないのではないかというのが、私の個人的な意見です。
 そうしたことを踏まえたときに、この6ページのところに、学校運営協議会の意見によって実現した具体的事項、これはおそらく学校運営協議会という制度上の単体としての役割として、意見によって実現した具体的事項というアンケート調査だと思うのですが、ここで最も多い事項は、「地域人材が活用されるようになった」が87.0%、それから「新しい教育活動の時間が生まれた」、36.8%という結果が出ているのですが、これは先ほど佐藤先生がおっしゃられた、実は協議会の下には事実上の学校支援地域本部が付随している組織として生まれたというふうにとらえたほうがいいのか、もしくは全く切り離された、まさに学校運営協議会という審議機関だけの意見によって、何らかの全然違う予算措置が実現したとか、そういうような形で、こういうような形が実現されたのかといったところが、もしより詳細にくみ取っていただけるのであれば、ご教示いただければと思います。

【小川主査】
 ありがとうございました。
 じゃあ、最後、大嶺委員、どうぞ。

【大嶺委員】
 佐藤先生、ありがとうございました。私の学校もコミュニティ・スクールで先生にはいろいろとご指導いただいているのですけれども、まず1ページ目の、地域住民の実態の1「教職員の様子」ということで、教職員がコミュニティ・スクールについて十分理解している学校が76.7%と少な目であると。私の感覚からいうと多いなと。76.7%も理解してくれているんだと、そういう思いがあるんですが、先生、日本全国あちこち回っていらして、教員のコミュニティ・スクールに関しての理解の高い学校というのは、具体的にどんなところに学校として──学校としてというのは変ですけれども、これは校長が答えているわけですけれども、どういう取り組みをしていらっしゃるのか。
 例えばうちなんかの場合は、3校で、小中一貫という形でやっておりますので、3つの学校運営協議会を一体化してコミュニティ・スクール委員会というふうに言っているんですね。そのコミュニティ・スクール委員会のメンバーと、それぞれ学校の先生方とが懇談していく場、これは時間設定がとても難しいものですけれども、ですからそう頻繁にできないのですが、そういう形を持って、全員との話し合いの場を持っていくなんていうことをやっておりますが、他ではどういうような形を持つことによって教職員の意識を高めているのか、もしありましたら教えていただけたらありがたいなと思います。
 それから、人事に関してですけれども、これは5ページのほうで、(5)の1で「教職員の人事」ということで、人事に関して学校運営協議会で話し合いをしていくというのは、なかなか厳しい部分というのもありますね、現実に。それは、やっぱり委員の方たちが学校の様子、先生方の様子というのをほんとうによくご存じでないと、人事のところまではなかなか話に絡んでこないというところがあるんです。それぞれ学校運営協議会が何回開かれていますかという設問もございましたけれども、その中で、月1回というのが大体ですよね。その程度開いているような形で、果たして人事にまでうまく絡んでいけるのかなという。
 実際に先生が先ほどおっしゃられたように、学校運営協議会の下部組織、うちも3つの部会がありまして、その部会が実働部隊として動いていますから、頻繁に学校においでいただいているんですね。ですから、学校の教員の動きとか、そういう様子がよくわかっております。そういうところでは絡んでくるんです。ですから、うちは昨年度は人事に関しては100%とれました。
 というようなことがありまして、開いている回数とか活動状況と人事との関係がどうなっているのかということ。
 それから、もう一つは、とても細かいことなんですけれども、やはり5ページのところのグラフで、ファンドというのが出ていますね。私は、これからコミュニティファンドの問題が大きな問題になってくるのではないかと思っています。それは学校運営協議会の活動が盛んになればなるほど、軍資金が必要になってくるんですね。ですから、やはり早く設置された学校は議題として取り上げているのがやっぱりちょっと上になっていますよね。その辺のところ、ファンドの議題の中身ですね。先生、もしその辺のところが、まあ、アンケートからはわからないと思うのですけれども、中身をおわかりになるようであればお教えいただけたらありがたいなと思います。
 以上です。

【小川主査】
 ありがとうございました。今、3人の委員のほうから大体6点ぐらいの質問があったのですけれども、ちょっとオーバーラップする質問もあるかと思いますので、その辺は少し佐藤先生のほうでうまく調整しながら、回答をいただければと思いますけれども。よろしくお願いいたします。

【佐藤教授】
 6点それぞれというのではなくて、組み合わせながらお答えを申し上げたいと思います。
 最初のご指摘の点なのですが、設置年度が長いほうが成果が高いと。その間に紆余曲折があったり、失敗もあったり、「傷」という言葉がありましたけれども、多分そういうのもあっただろうということなのですが、私の感触から申し上げますと、指定年度当初はそもそも学校の中で教職員の共通理解が十分でない場合がある。ところが、2年目になると、今度はある程度要領を得てきて、そして前年度の積み重ねの上に、その活動の充実というのが多分出てくるのだろう。ここでやっぱり「傷」というより、教職員にいかに制度が理解されているかというのがポイントになってくると思うんですね。ですから、教職員への理解の広がりと協力というのが年数と関係があるのかなと考えております。そんなことから、教職員の協力というものも数字として比較的高く出ているのではないかと。
 ただ、さっきの97.数%というのは、教職員がお互いに協力しあうというのは、多分、ほかの調査からすると数字が高いと思うんです。ただ、校長先生ですから、ここのところで「ノー」と答えにくいというのもあるかとは思います。
 あと、本部なくして協議会はあり得ないということですが、どちらというと、本部の上のほうに協議会があるのが適切だと考えています。つまり、意思決定を行うのが協議会で、その意思決定に基づいて学校支援あるいは評価、そういうものが実際の活動として具体化されていくというんでしょうか、そういうような位置づけで一応イメージはしております。そういう意味で、本部なくして協議会はあり得ないと言うことができます。
 そして、協議会で出された議題等が実現されたかどうかということについては、単に年数回会議をやって実現したというのではないと思います。そのときに鍵になってくるのが、さっきの教員の理解や人事が関係してくるのですが、先生方が制度を理解している学校、具体的にいうと、例えば学校支援ボランティアの活動が盛んである学校では教員が地域や制度をより理解し、地域の方も学校のことをよく理解しているわけです。そうした学校では多くの議題が具体的に実現しているようです。
 例えば、三鷹の四小のようなイメージの学校です。実は、人事に関してその学校で、私が前任校で顧問をしていたサークルに属する学生が、ボランティア活動を2年やっておりまして、4年生のときに教員採用試験に受かったんです。そのとき、学校はその学生をそのまま教諭として採用されたんです。それはこの制度(学校運営協議会)をうまく活用した例だと言えます。本人もそのまま残れるんでうれしいし、子どもも、「今度は本当の先生になったね」という形で迎えてくれて、先生方も、あるいは校長先生も、その学生のことをよく理解しているので、うまくいった感じなんです。これは、人事など議題が実現した例になります。
 そのほか、会議の回数ですが、やはり大嶺先生ご指摘のように、年数回あるいは月1回とか、そういうのではなかなか具体的な議題が出にくいだろうと思います。おっしゃるように、学校のことをよく理解していないと、特に人事に関しては言いにくい。まあ、言えないというのでしょうか、そういうことが関係しております。
 あと、ファンドに関しては、特に質問に関して教育ファンドという言い方だけにとどめ、あまり具体的には聞かなかったんですね。ただ、三鷹の四小のように、NPO化した団体を持っていて、あそこはお金を扱えますね。そうしたスタイルがイメージされていると考えております。
 全体的に申し上げますと、この制度をうまく運営させるかどうかというのは、頭から人事に入るのではなくて、最初は学校の支援活動から進めて、それからだんだん「承認」とか、あるいは「人事」に関して議題を取り上げていくというように、段階を追って活動に取り組むというのがポイントになると考えます。ですから、3つの権限をいきなり使うというと、どうもうまくいかなくなる可能性があるのではないでしょうか。
 以上です。

【小川主査】
 ありがとうございました。質問された委員の方、また何かあるかと思うのですけれども、予定の時間を10分ぐらいオーバーしていますので、この辺で佐藤先生のご報告と意見交換を終わらせていただきたいと思います。佐藤先生、ありがとうございました。

【佐藤教授】
 どうもありがとうございました。

【小川主査】
 じゃあ、続けて、次に学校選択にかかわるヒアリングを進めたいと思います。まず最初に学校選択制については、品川区の教育委員会の富田学務課長と和氣小中一貫教育担当課長のほうからご報告いただきたいと思います。大体15分から20分程度でよろしくお願いいたします。

【富田学務課長】
 失礼いたします。品川区教育委員会事務局学務課長の富田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、私から資料に沿いましてご説明させていただきました後、和氣小中一貫教育担当課長より追加という形で説明をさせていただきたいと思います。まずお手元の資料をごらんいただきたいと思います。
 品川区の教育改革、平成11年度の途中よりスタートいたしまして9年目、まもなく10年を迎えようとしております。そういった教育改革の一つの柱として、学校選択制を実施してきております。
 おめくりいただきまして1ページでございます。本日の説明の流れはごらんのとおりでございます。
 まず、学校選択制のねらいについてでございますけれども、学校選択制はこれは指定校変更制度が大変浸透してくるという中で、かなり多くの保護者の方々が学校を選びたいという、希望する学校に子どもを行かせたいという、そういった高まりの中で、保護者がある一定の範囲の中で学校を選ぶシステムを提供することが必要であるということをもとに始まったものでございます。保護者、児童、生徒には、「選ぶ自由」とともに「選んだ責任」、権利と責任というものは両面相まってくるものでございまして、学校教育の質を高めようという学校の取り組みに、それまでの学校任せでなく、参加していくことが求められるということで始まっております。
 それともう一方、選ばれる学校の側についてでございますが、黙っていても子どもが入ってくるということでなく、学校は選ばれる必要があるということで、選ばれる学校になるために、学校がみずから変わっていこうとする状況を積極的に生み出す必要があるという2つの面がございます。
 この2つのコンセプトが相まって初めて学校選択制が有効に機能し、新しい学校づくりの大きな原動力となるということでございます。品川区の教育改革プラン21は、この学校選択制と特色ある学校づくり、この2つを両輪として進めてきております。特色ある学校づくりの内容としましては、習熟度別の学習であるとか、小学校における教科担任制、英語学習等々、それぞれ学校の教育内容に力を入れながら両方で進めてきたというところでございます。
 おめくりいただいて3ページ、学校選択の流れについて簡単に示しております。学校選択制につきましては、従前の通学区域の制度でありますとか、指定校変更の制度を残している中での就学指定の前に保護者の意向、希望を聞いて実施するということで、このような流れで実施をしております。小学校につきましては、平成12年度の入学者から区内を4ブロックに分け、ブロック内で選択をできるということでやってきております。また、中学校につきましては、平成13年度、1年遅れで実施しておりますが、当時18校中学校がございましたが、区内全域から希望できるということで自由選択で実施をしてきております。
 おめくりいただきまして4ページでございますが、それではこの間、希望申請はどのように推移してきたかということでございます。学校選択が始まる前の指定校変更の動きというのは10%近くあったというように聞いておりますけれども、希望申請が始まりました平成12年度の小学校はごらんのとおり、住基人口に対し希望申請、これは従来の通学区域の学校を希望される場合には、希望申請を出さなくてよいということになっておりますので、希望申請を出してきた方の数ということでございます。赤字で示しておりますのが、その割合でございます。従来の通学区域の学校であっても保護者の方は選んでいらっしゃるということなので、実際には皆さんがお子さんの入られる学校を希望したということでありますが、ここでは従来の学校以外を希望された方の割合ということで示させていただいております。
 小学校につきましては、平成12年度の11.7%から、暫時増加傾向にありまして、平成18年度、29.2%、19年度、32.2%ということでございます。この平成18年度から品川区は全区立小中学校で、小中一貫教育を実施してきておりまして、この牽引役としての施設一体型の小中一貫校日野学園が平成18年度にスタートをしております。この年から、小学校につきましてもかなり一貫校への希望が増えておりますので、このような割合になってきているということでございます。
 下段が中学校でございます。中学校は、平成13年度から始まっておりますが、初年度、17.4%ということで、小学校よりも若干希望の割合が高いということでございますが、こちらにつきましても、18年度、19年度がピークの32.2%ということでございまして、今年度、20年度に入りまして、従来の学区域の学校以外を希望された方が若干割合としては減少しているということでございます。地元回帰、学校を選択できるんだけれども、結果として近い学校が選ばれた、学校を見た結果選ばれたという保護者の方の割合が若干多くなったというふうに受けとめをしております。
 おめくりいただきまして5ページでございます。学校選択制の成果というものを簡単にまとめさせていただきました。1点目はまず「保護者の変化」でございます。保護者の方々は、学校を選ぶという行為を通して学んでいるということが書いてございますが、学校選択に当たっては、できるだけ学校を訪れて実際に見てほしい、ふだんの学校の様子を見て選択をしてほしいということをお願いをしております。さまざま、学校案内等、情報提供にも努めておりますが、実際に見た中で決めていただくというような方が大変多いということでございます。
 そして、先ほどの「ねらい」のところで、受け身ではなく、ぜひ学校の教育活動にも参加してほしいということで、選択した学校に協力的な保護者が大変多いということが、学校から届いております。
 「学校の変化」でございます。学校を変えるために実施した学校選択制でございます。学校選択制は目的ではなく手段だというふうに考えておりますので、学校選択制とあわせ、外部評価者制度、学力定着度調査、そして小中一貫教育を展開してきている中で、校長の経営能力や、教員の資質向上が図られ、学校が活性化し、よい意味での切磋琢磨を通して新しい学校のとびらが開かれてきたというふうに受けとめをしております。
 校長の姿勢として、実際の教育活動の成果に責任を持つ、成果基盤型の学校経営を進めるようになってきた。教員が緊張感を持って臨むようになってきた。もう一つ、地域とのかかわりという点では、地域の学校であると意識して、保護者や地域に対し、課題も含め積極的に情報提供するとともに、一緒に教育活動を行うようになってきた点が挙げられます。
 最後になりますが、児童・生徒の学力が向上してきたと。学力調査等々の結果を見ましても、こういったことがいえるかと思います。
 これは、教育委員会としての成果の受けとめでありますが、それでは区民の皆さんは学校選択制に対してどのような評価をされているのかということを6ページからお示しをさせていただいております。学校選択を実施した毎年度、学校選択制についての選択した保護者へのアンケートは実施してきておりますが、これまでは区民の皆さん、保護者の方々全般に対してのこういった学校選択制の評価についてのアンケート調査というのはあまり行ってまいりませんでした。まず一つには、本年2月に区立小中学校に関する区民アンケートというものを実施をいたしまして、これは20歳以上の区民2,200人対象ということで、小中学生がいる方1,100人、いない方1,100人をサンプリングいたしまして、郵送で調査をしたものでございます。学校選択制に対する満足度をこの中での一つの項目として聞いておりますが、それに対しまして全体として「とても満足」という方が18.5、「やや満足」という方が26.3ということで、満足群に当たる方々は44.8%という数でございます。これに対しまして「やや不満」「とても不満」という不満群の方々が13.5%となっております。ということで、3倍強の方々が学校選択制に対する満足を表明していただいているということでございます。
 先ほど申し上げましたように、小中学生の子どもがいる方、いない方、いらっしゃいますので、その内訳ごとに見てみますと、小中学生がいる方の満足群は50%を超えていると。いない方は、35.4%ということでございますが、黄色い「わからない」という方が20%いらっしゃいますので、やはり満足群、不満足群というものを比べますと、3割強の方々が満足のほうの方々が多いということで評価を多くいただいているということでございます。
 それともう一つおめくりいただいて7ページでございます。こちらも本年の3月実施でございますが、区立小中学校の保護者3人に1人の方を対象に実施した調査でございまして、こちらは学校を通し、児童・生徒を通して配付をした調査でございます。こちら、いろいろございますが、その中で1つの設問の中に「学校選択制を今後も継続してほしいと思いますか」という項目に対する回答でございます。こちらにつきましては「そう思う」という方が28%、「ややそう思う」という方合わせて60.8%の方がそのように評価をしていただいているということで、「あまりそう思わない」「そう思わない」方を合わせて35.5%ということで、こちらについては「わからない」という中間の選択肢がございませんので、このような6割を超える方々が評価をしていただいていると考えております。
 最後に、品川区の簡単な数字、データを示させていただいております。品川区は大変交通の便がいいところでありまして、こういった児童・生徒数の状況でありますが、中学校につきましても、自転車通学は禁止ということでやっておりますが、電車等を利用してかなりの移動ができるということで、このような状況があるかと思います。
 本区はただいま、当初申しましたように、学校選択、教育改革を始めまして間もなく10年目に入ってまいりますけれども、こういった学校選択と特色ある学校づくり、さまざまな教育施策を合わせて公立学校教育の改善、前進にさらに努めていきたいと考えているところでございます。
 私からは以上です。続きまして。

【和氣担当課長】
 失礼いたします。小中一貫教育担当課長の和氣と申します。よろしくお願いいたします。
 富田のほうから概要を説明してもらったので、私のほうからは少し追加で、誤解をされていることが非常に多いものですから、その点についてお話をちょっとさせていただきたいと思います。
 学校選択制については、私どもは品川だからできたという部分もあると思っております。どこでも、この学校選択制を入れればいいというふうには全く考えておりませんので、その点は冒頭申し上げたいと思います。品川の場合ですと、さっきの統計にもありましたが、非常に学校の密度が高いということですね。すぐ近くにあります。それもありますし、交通の便もいい。さらに、品川という区自体が大きな地域間格差がない区だということも一つの大きくやれた理由だろうと思ってございます。
 そのことを前提にしまして、よくいろいろ言われる中で、私どもは別に学校を選択させて、学校が自由に競争して、それで勝手にやればいいというような形で学校選択制を引いているわけではないので、あくまでも学校支援とセットで、基本的に私どもはすべての学校の質をアップしたい。ある意味では、既に存在している学校間の格差を埋めていきたいというのが一番大きな思いでございます。ですから、競争させて何か序列化をしたりとかいう意図は全くございませんし、選ばれた学校だからいい学校というふうにイコールにはなかなかならないものがございます。学校が選ばれるということによって、学校自身が緊張感を持って、もう一度、学校の教育を見直していく一つの大きな原動力、動機づけになるということと、一番大きいのは、今まで非常に閉鎖的であった学校が開かざるを得ない、何でも情報を出さざるを得ない、そんな状況になっていくということで、学校自身が変わっていける大きな契機になるということですね。長い間、私どもも教育改革というのをやってきたわけですが、やはり学校の閉鎖的な体質をなかなか打ち破れなかったという意味でいいますと、この学校選択制を行うことによって学校が開かれ、もしくは外から評価をされるということで、学校自身が改めてみずからを見直していく、そういう動機づけが大きくできたということでございます。
 私どもはこうやって学校選択制をやりながら、特に、なかなか選ばれないという学校もあるのですが、この選ばれないという理由は、別にその学校が悪いというわけではなくて、例えば、近くに新築校ができてしまって、新しい施設ができてしまったとか、まだまだ保護者の方自体が成熟していませんから、「どこどこのだれだれちゃんが行ったから行かない」とか、そんな要素も実はあるわけで、これは別に学校の責任ではないわけですね。そのことも踏まえながら、私どもは学校それぞれが抱えている課題というのが、逆に選択制をやることによって浮き彫りになったりしていきますので、その部分で思い切り学校を支援していくというふうに私どもは考えております。ですから、逆に言うと、あまり選ばれなかった学校ほど私どもは支援をしていくということになるわけで、先ほど冒頭にも申しましたが、学校選択制を通じて、現にある学校間の格差を埋めていきたい、これがが私どもの一番大きな目的であるということでございます。
 以上でございます。

【小川主査】
 ありがとうございました。今、品川の例を説明いただきましたけれども、全国的な学校選択の状況について、文科省のほうでアンケート調査をされているようですので、その説明を聞いた上で品川区の質疑応答に入っていきたいと思います。では、佐藤教育制度改革室長、よろしくお願いします。

【佐藤教育制度改革室長】
 失礼いたします。資料4でございます。お時間の関係もございますので、ポイントだけ簡単にご説明させていただければと存じます。
 まず、学校選択制の状況につきまして、今回、各都道府県が抽出をいたしました市区町村教育委員会と政令都市の教育委員会、このアンケートを実施したところでございます。調査の時期につきましては、5月の半ばから6月にかけてということで、ご記入をいただく時点としては平成20年4月1日現在の実態をご記入いただくということでお願いしてございます。そこにございますとおり、学校選択制を導入している自治体、それから導入していない自治体からそれぞれ3市区町村程度、各都道府県に抽出をお願いいたしまして、この抽出はそれぞれ各都道府県にお任せをしてございます。そういった視点で選んでお答えをいただいたところ、全体の数字としては市区町村教育委員会262、そのうち選択制を導入しているものが119、半分を若干下回っている数字でございます。それから、政令都市教育委員会のほうでございますが、これは17すべてのうち、これは若干半分より多うございますが、9教育委員会ということになってございます。
 大きく分けて、選択制を導入している市区町村に対するご質問と、導入していない市区町村に対する質問という形で2つ分けてございます。まず、導入している自治体に対しての状況でございますけれども、質問1でございますが、導入の検討を始めるに当たっての課題や背景というものをお聞きしましたところ、以下の4点ほどに大きく集約されているところでございます。「保護者や地域住民からの学校選択に関するニーズ」があった、そういったものに基づくものであるという点、それから「市町村合併や学校の再編」の観点からそういったものの検討に着手したという点。それから2ページ目のほうをお目通しいただきますと「地域内の住宅事情や交通事情の変化」に伴うもの、それから「少子化や学校・地域の活性化」を背景としている、こういったものを挙げてございます。
 それから実際、選択制の導入によってどういった成果があったかということも、これは選択制でお答えをいただき、若干、選択をした具体的な内容についての記述も以下書いてございますが、一番多うございましたのがBのところでございますが、「保護者の学校教育への関心が高まった」、それからCでございます。「子どもが自分の個性にあった学校で学ぶことができるようになった」それから、「選択を通じて特色ある学校づくりが推進できた」といったあたりがございます。
 次でございますけれども、1枚おめくりいただいて4ページのほうでございます。その他に関しても少しここで記述をいただいた中で、例えば3つ目でございますが、「各学校が学校説明会を実施するなど、学校の方針等を積極的に発信するようになった」ということでございますとか、下から3つ目でございますけれども、これはメリット、デメリット両方を書いてございますが、「保護者の意向を反映できるようなった一方、学校間で偏りが生じ、増加した学校では教室の確保が、減少した学校では減少に歯止めをかける努力が必要となった」、こういったご記述も自由記述の中で、その他の中でございました。
 今度、逆に、導入による課題という点でございますが、3番目、これも選択でご記入をいただきましたところ、「課題は特にない」といったところが一番数としては多うございました。そのほかでございますが、Aのところでございますが「通学距離が長くなり、安全の確保が難しくなった」、それから「学校と地域の連携が希薄になった」「入学者が大幅に減少した学校ができ、適正な学校規模が維持できない学校が生じた」、こういったものがございます。これも「その他」としてどんなものがほかにあるかということを自由記述で、次のページでございますが、5ページにございます。
 大きく分けて、学校の受け入れ体制の問題でございますとか、地域との関係、それから実際、選択をするに当たっての判断基準、保護者や児童・生徒の意識といったものがございますけれども、例えば受け入れ体制のほうですと、「中学校の生徒指導において、情報収集が困難となった」というようなお話もございます。それから、選択基準のほうでございますが、これは既に先ほどお話がちょっと出ておりましたけれども、「学校の個性よりも通学の利便性や学校の立地条件などで判断される傾向がある」でございますとか、「学校選択制の目的と保護者・児童生徒との希望理由との差異を検討し、改善していくことが必要である」、こういったご意見が自由記述の中でございました。
 さらに1枚おめくりいただいて6ページでございますが、導入したことによる課題に対する具体的な改善の工夫、そういった内容について、これもご記入をお願いしましたところ、例えば学校の受け入れ体制のほうでございますが「各学校規模を定め、学区外からの受入可能人数を決定し、これを超えた場合は抽選を実施している」といったところでございますとか、安全対策という点で「通学路の補修、整備等、通学路の安全対策」「スクールガード組織等を強化し、登下校時における子どもの見守り等、安全・安心の体制づくりについて工夫をしている」。それから「地域との関係」でございますと、「保護者に地域との連携意識がなくなったため、地域の育成会活動等に協力するようにお願いしている」、こういったご意見がございました。
 これが導入している自治体側に聞いた答えでございまして、次、ちょっと細かい数字は飛ばしまして8ページ、大きく分けて2つ目でございますが、選択制を導入していない教育委員会のほうにお聞きした数字でございます。まず未導入の理由についてというところでございますが、一番多うございましたのがBのところでございます。「学校と地域との連携が希薄になるおそれがある」、それからDの「入学者が減少し、適正な学校規模が維持できない学校が生じるおそれがある」、それからAに戻りまして「通学距離が長くなり、安全の確保が難しい」、こういった点が多うございました。
 「その他」というのもご記入いただのですが、それが10ページの「その他」というところをごらんいただきますと、例えばこれも「交通機関の地域による利便性の差を考えると、地域によって選択して通学できる児童生徒とできない児童生徒の格差が生じ、教育機会均等の面から不公平感が生じると考える」「最近は学年が違うだけでも一緒に遊ばない傾向があるが、学校が違うことによって、近所に同級生がいても遊ばないなど、子どもたちのコミュニケーションがますますとれなくなることが懸念される」と、こういったご意見などがございましたのと、あと、下から4つ目あたりで「素行に問題のある生徒が相談して1校に集まろうとするなど、生徒指導面でも問題がある」、こんなこともご記入をいただいたところでございました。
 簡単でございますが、以上、今回、抽出でございますけれども、幾つかお聞きをしてデータとして集まったものをご紹介させていただきました。よろしくお願いいたします。

【小川主査】
 ありがとうございました。これ、また後で詳細に分析、整理したものはまた提出いただけるのでしょうか。もう今回限りですか。

【佐藤教育制度改革室長】
 今回は、改めて悉皆等ではございませんので、このデータでとりあえずご紹介させていただくということで考えております。

【小川主査】
 そうですか。ありがとうございました。
 じゃあ、ちょっと時間が押し迫っているのですけれども、あと30分ぐらい、品川区の富田課長、和氣課長からご報告いただいた内容について、質疑応答、ご意見の交換をしたいと思います。最初に、草野委員が11時45分に退席せざるを得ないということですので、まず草野委員のほうから何かご質問等がありましたらよろしくお願いします。

【草野委員】
 どうもありがとうございました。集まらなかった学校に対して支援をいただくということは大変ほっとした次第でございます。ありがとうございます。
 幾つか質問がありますけれども、品川区の場合は極めて精力的に教育改革を進めていることは重々承知しております。それから、日野学園または伊藤学園のように小中一貫校。逆にいうと、あれだけすばらしい設備を持った学校というのは、ちょっとほかには見られないと思うのですけれども、小中一貫校があることによって、それが選択制についてかなり一貫校に集中する傾向があるのかないのかということが一つと、それから、これは文科省の調査のほうで、学校選択導入の成果についてということで、「選択制を通じて特色ある学校づくりが推進できた」というふうにお答えしている学校も結構あるようなんですけれども、品川区のほうは選択制を通じて特色ある学校づくりが推進できたとお考えかどうかということをお教えいただきたいと思います。
 それから、学校評価のことで、外部評価制度というふうに冒頭でございましたけれども、この外部評価は第三者評価まで品川区の場合は導入されているどうか。あるいは関係者評価どまりなのか、そこら辺もお教えいただきたいと思います。
 以上でございます。

【小川主査】
 では、3点、よろしくお願いいたします。

【和氣担当課長】
 では、私のほうから3点お答えしたいと思います。
 まず1点目ですが、集中傾向はあります。かなり周辺校に影響が出ていまして、両一貫校とも抽選になってしまっております。私どもとしましては、急ぎ施設一体型の一貫校を今つくっておりまして、もう既に6校目まで全部着手しましたので、あと4校できます。
 それからあと、学校改築も並行して進めていますので、小学校、中学校の設備も変わってきておりまして、一貫校以外の改築校もすばらしい設備がありますので、ぜひごらんいただければと思うのですが、そういう形でどんどん、なるべく施設面でも差もなくすようにということで進めているところでございます。
 影響がありますので、施設一体型一貫校を早く立ち上げていきたいと考えているということで、6校できれば、大体、抽選なしで行けるかなというように考えております。
 それから、特色ある教育活動ですが、なかなか学校自身で考えきれないというところがありましたので、最初は私どもで、こんな特色がある活動がありますよという例を提示しながら学校に取り組んでいただきました。それが定着をして、今は各学校で、特色あるといっても、例えば私のところは英語に力を入れますよとか、国語に、読書活動に力を入れますよとか、これも特色になります。何かすごく目立つものということではなくて、地味なものも含めまして、それぞれの学校の地域との関係であったり、立地条件であったり、その学校の施設の条件であったりを含めまして、それぞれ特色をかなり持っているというふうに私どもは今、評価をしてございます。
 それから、外部評価制度ですが、これは各学校に学識経験者の方と地域の方、それからPTAの方、大体8名ぐらいで外部評価をやっていただいております。さらに、これが定着をしましたので、今度はさらに専門外部評価ということで、専門家による評価を3年に1回、校区それぞれの外部評価とあわせてやっておりまして、そういう意味でかなり客観的な評価をさせていただいて、これは学校改革には非常に大きな力を及ぼしているというふうに私も考えております。
 以上です。

【小川主査】
 ありがとうございました。草野委員、よろしいですか。

【草野委員】
 特色ある教育活動のため、後押ししてご支援いただいて、具体的に予算はつけておられるのでしょうか。

【和氣担当課長】
 今ちょうどヒアリングをやっているのですが、各学校に計画を出していただきまして、ヒアリングをして効果的と思われるものについてお金をつけるというふうにやっています。ですから、逆にそれをやることによって、学校自身がいろいろ考える、長期的な学校のビジョンを考えるとかいう、そういう一つの契機にも考えておりますので、別に予算をとって、通常学校に配付している予算とは別枠で2,000万から、多いときには8,000万ぐらい予算をとって、それを各学校に、それぞれの計画に応じて配分をするというふうにしてございます。

【草野委員】
 ありがとうございました。

【小川主査】
 品川の場合には、もう学校選択を導入して10年目を迎えつつあるということで、今、大規模な検証作業をしているようです。きょう出た2つのアンケート以外にも、かなり客観的なデータに基づいた検証作業を今進めているようですので、そうしたいろいろなものを今、準備しているようですので、そうしたことも含めてご質問があれば積極的によろしくお願いします。
 まず、柳澤委員からどうぞ。

【柳澤委員】
 3点ほど教えていただけたらと思います。まず1点目です。申請を出された方の数はわかったのですが、理由といいますか、どういう意図で申請をされたのか。それとまた、10年近くやってきて中身の変化があったのかということです。
 それから2点目が、区民全体の満足度というのはわかったのですが、変更して実際にかわった方々の満足度はデータがあるのかどうか。実際に学校選択でかわった方々の満足度はどうなのか。同じ傾向なのかということです。
 それから3点目に、メリットはわかったのですが、多かれ少なかれ課題があろうかと思います。まだ何か課題があるのか。この10年間で、課題が変化してきたのか。そのあたりを教えていただけたらと思います。

【小川主査】
 2点目の質問をもう一度確認したいのですけれども、どういう質問でしょうか。

【柳澤委員】
 区民アンケートの学校選択制の満足度はわかったのですが、実際、選択をして学校に通っている、あるいは通われた方の意見です。

【小川主査】
 なるほど。わかりました。

【柳澤委員】
 まだ今在籍していらっしゃる方もいると思うのですが、過去10年の中で何かデータがあればということで。

【小川主査】
 はい、わかりました。じゃあ、これも3点ですが、よろしくお願いいたします。

【富田学務課長】
 まず、希望申請をした理由ということでございますが、希望申請自体は理由を問うていませんので、どこの学校を希望しますという申請票を出していただくだけなのですが、全部行かれる学校が決まった後で保護者の方、また中学校に進学される方については、児童ご本人にアンケート調査を実施しています。それは毎年やっていますので、その傾向から見てみますと、ずっと変わらずにあるのが、学校の近さや通学のしやすさということでもって選んだという方が一番多いという、この傾向は変わっていないのですけれども、その割合が、例えば小学校1年生ですと、最初は78%近くそういう理由だったのが、そういった理由が今の1年生ですと62%。そういうことではやはり変わってきていると。
 それと、やはり私ども、学校の教育活動の内容を見て、それで選んでほしいということを強く学校でも願っているわけですが、その辺が当初ですと小学校でも教育活動の内容で選んだという方が比較的少なかったのが、やはり特色ある学校づくりを踏まえて、それで選んだという方の割合が、当初11番目に教育活動の理由というのがあったのですが、現在ではずっとここのところ4番目に選ばれているということで、2割ぐらいの数でそういった理由が増えてきていると。こういった傾向はやはり当初ねらったところが果たされてきているかなと思っています。
 それと、2点目の満足度ということでございますけれども、選んだ方々は、要するに受け身でなく、選んだ責任、そういったものを保護者の方も持ってほしいと思っているところなんです。やはり選んだ以上、一緒に学校教育をともに進めてほしいということでやってきていただいており、そういった満足度はより高いのではないかなと思っています。
 あと、課題ということでございますが、先ほどから出ていますが、やはり小中一貫校への希望の方々というのが多いというのがございます。施設一体型小中一貫校ができて以来増えている傾向がありますので、そういったところでは、計画的な配置というものが望まれる。または、計画的な学校改築をバランスよく進めていく必要があるというふうに思っています。

【和氣担当課長】
 選んだ人の満足度ということではないのですが、別個に保護者の3分の1の方を抽出しましてとったアンケートでいいますと、「この学校に子どもを通わせてよかったと思う」方が「そう思う」という方で44%、「ややそう思う」という人を合わせると84%です。「そう思わない」もしくは「あまりそう思わない」という人は合わせても10%いきませんので、かなり満足度は高いというふうに私どもは判断しております。
 それから課題でございますが、特に町会のお祭りとの絡みがあります。実は地域と関係が希薄になるというのですが、もともと学校は地域に出ていかなかったのが、学校選択をやることによって、逆に地域との連携をしないと来ていただけないというのもあるので、学校は積極的に地域に出るようにはなったんですね。ただ、今度、お祭りのときに、自分の町会じゃない子たちが学校に来ているわけで、町会費払っていない子たちに何かあげるのか、どうだとか、そういう不満が若干出ていまして、そこの支援は少し考えないといけないなというので、考えてございますけれども。

【小川主査】
 柳澤さん、よろしいですか。

【柳澤委員】
 はい。

【小川主査】
 じゃあ、荒瀬委員、どうぞ。

【荒瀬委員】
 柳澤委員のお尋ねの2番目とよく似ている部分もあるのですけれども、いただいた資料の6ページとか7ページで、満足度とか、今後も継続してほしいという、その中身ですね。先ほどちょっとお答えの中でおっしゃいました、学校の特色ある活動については、実は増えてきて2割ぐらいになったと。じゃあ、残りの8割は、先ほどもおっしゃったように、交通の便という点でいえば、品川区は大変交通の便がいいということですから、一体どういう理由でもって満足していらっしゃるのか、あるいは逆に、不満足という方まあ、何をやっても満足する人もいれば、不満を持つ人というのは、どういうことをやってもあるとは思うのですけれども、この不満に思っている人が多いのか少ないのかというのは、これはまたいろいろと見方によっては変わってくるのでしょうが、不満であるという方の理由ですね。あるいは継続すべきでないという方の理由というのがわかれば教えていただきたいなと。これが1点目です。
 2点目は、選ばれない学校に対しては支援をしているとおっしゃいましたが、それは具体的に、先ほど施設面でいろいろと、小中一貫校はもちろんのこと、中学校、小学校の単独校についても大変立派な施設をおつくりになるということなのですが、それ以外にどういった支援ないしはご指導をなさっているのかということを教えていただきたいと思います。

【小川主査】
 2点、よろしいですね。じゃあ、和氣課長のほうからよろしくお願いします。

【和氣担当課長】
 支援のほうでございますけれども、予算面での支援というのもあります。特に、その学校が自分のところの学校の弱い部分を克服するためにということで、別個に、例えば子どもたちの分析をしたいのでこういう試験をやりたいとか、こういう調査をやりたいとかいう部分で予算を特別につけたりとか、あと、人事面での配慮もしています。優先的に欲しい人材をそこに張りつけたりという形での人事面での支援とか、総合的に、先ほど言ったように、学校全体の質をレベルアップしたいということを考えておりますので、どの学校を選んでも品川の学校は同じようなサービスといいますか、質の教育を受けられるというふうにしていきたいというものが大きいものですから、そういう支援をしてございます。

【小川主査】
 じゃあ、1の点について富田課長のほうから。

【富田学務課長】
 すみません、不満足の群の方々の理由というところなのですが、ちょっとすべての調査の資料を持ってきていないので一部分になりますけれども、満足度の理由の最初のほうのアンケートの中では、理由も問うておりまして、その中では全体の数値として通学区域の学校に入学すればいいというのを理由にしている方が全体として24%ということで、不満群の方々としては52%の方がこれを挙げているということで。
 あと、満足の理由としましては、「本人の希望する小中学校に入学できる」というのが一番多くて42%です。続いて「子どもに適した教育を受けさせたいという保護者の願いに沿って選べるというのが35.5%で、「各学校で個性的な学校づくりが進展する」、26.4%といったような、これは全体の評価ですけれども、こういった割合になっています。

【小川主査】
 荒瀬委員、よろしいですか。

【荒瀬委員】
 すみません、京都市の高等学校に勤めているのですが、高等学校というのは、もともと選ばれるということで、選ばれる学校になるということが非常に強くどの学校にも求められているんですね。小・中学校の場合、京都市は選択制をとっておりませんが、やはり特色ある教育活動をやっているところ、特に先ほどのテーマになっていましたコミュニティ・スクールなんてやっているところというのは、ほんとうにその地域にたくさんの小学生の保護者の方が移り住みたがるという傾向があるんですね。品川区全体がそうしてどんどんといい学校になっていくと、周りからたくさんお入りになってきたりするのかなということを単純に思ったりするんですけれども、それはいかがでしょうか。

【富田学務課長】
 現在、都内でも大きな傾向としては、少子化傾向で就学人口の減ということがあろうかと思いますが、都心区の一部、また品川区もそうですけれども、やはり子育て世代の増というのが出ておりまして、ここ5年、10年の間は、就学人口の増加傾向というのが、その一つのあらわれとして出ています。また、私ども教育委員会のほうの問い合わせでも、品川の学校に入りたいというお問い合わせ、他の自治体に住んでいる方でも多くいらっしゃるということでございます。

【小川主査】
 よろしいですか。じゃあ、岩﨑委員、どうぞ。

【岩﨑委員】
 ありがとうございます。私は、3つばかりお尋ねしたいなと思いました。
 1点目は、富田課長が冒頭で、学校は選ばれるためにみずから変わろうとしていると、変わっていこうという考えでこの学校選択制に臨んでいるということでございましたが、もし具体的にどのように変わろうとしているのかという例がありましたら、2~3お示しいただけるとありがたいなと思います。
 2点目は、荒瀬委員がもうお尋ねになりましたけれども、学校を支援していくために、先ほど予算面と人事面とおっしゃいましたけれども、学校というのはいろいろな課題を抱えているだろうと思うのですが、学校経営面での支援はないのかということでございます。
 それから3点目でございますけれども、学校選択制の成果として5ページに、児童・生徒の学力が向上したということを挙げていらっしゃるわけですけれども、この小学校1年生の場合は近距離、通学距離の問題が大きくウエートを占めるのでしょうけれども、中学校になりますと高校入試という問題がありまして、その学力が向上したということと、高校入試の関係はどのようになっているのかなと思います。
 以上3点につきまして、ご説明いただけましたらありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

【小川主査】
 じゃあ、これもよろしくお願いいたします。

【和氣担当課長】
 1点目の、学校がみずから変わるというところで言いますと、卑近な例でいいますと、教員の服装が変わります。言葉遣いも変わります。教員があいさつをするようになります。一番最初、トップがそれでした。残念ながらです。それぐらいの状況だったわけですね。今まで、保護者が来ても知らん顔していた教員たちがちゃんとあいさつをするようになる。みずからが変わっていくということになりますが、これは一番最初、ほんとうに出だしのころの話です。そこに始まりまして、学校自身が自分たちをほんとうに見直すようになってきますので、きちんともう一度改めて自分たちの教育目標を含めまして、実際どうできているのかとか、学校は組織としてちゃんと対応できているのかとか、そういうことをしっかり考えるようにはなりました。
 ですから、一般的に「頑張っているからいいよね」では済まされない。ちゃんと説明責任を果たさなければいけない。もしくは、学校を選んでもらうためには、自分たちでどんな活動をしているかというのを示さなければいけないということでいいますと、改めて自分たちを見直して、そこで改善をしていくというふうになっていきますので、随分変わりますし、あとは情報を隠さないようになりました。これは私ども指導しているのですが、例えばいじめなんかも、あるのだったら積極的にちゃんと出せと。で、こういういじめがあって、しかし、こういう対策をとっていますということをあわせて、一切隠すなというのが私どもの考えです。どうも学校は隠したがって、いいことしか言わない。こういう体質をまず変えなければいけないというのがあるのですが、学校選択をやることによって、かなりそこの体質は変わっていっただろうという意味では、かなり学校がみずからの情報を公開していくようになったというのが非常に大きい変化だと思います。
 それから2点目の学校支援の経営面ですが、もちろんこれは私どもが全力を挙げて経営面についてもアドバイスをしたり、もしくは校長先生の退職者が私どもの教育委員会におりますので、そういう先生を張りつけて、いろいろアドバイスしてもらったり、実際に私どもが学校を年じゅう見にいって、いろいろアドバイスをしていくとか、校長先生とご相談をするという形で行っております。特に、重点支援校制度というのを持っていまして、教育委員会が指定する学校もありますが、学校が自分で手を挙げて、重点的に支援してくださいといういうふうに手を挙げていただくんです。そこには特に力を入れますので、そういうところは定期的に報告をいただいたり、こっちが見にいったりして、どういうふうに課題が改善されたのかという形をずっと追いかけて見ていますが。そういう中でかなり校長先生も経営力というのが非常に学校を変えていくことを自覚しますし、学校で課題を解決していく上では大きいウエートを占めますので、そこにかなり私どもは力を入れているところでございます。
 それから3点目の高校入試の件ですが、そこはちょっと統計はとっていないのですけれども、私どもとしましても、高校入試にちゃんとつながるような学習はしっかりしていきたいと考えていまして、そこは、そこそこ効果が上がっているだろうと思っております。学力が向上していくというのは、学校選択制が間接的な力になるといいますか、学校が変わっていくことによって、やっぱり教員自身のモチベーションも上がったりとか、教員自身がきちんとやっていかないとならないというような状況に追い込まれますので、自由気ままにやっていられないという状況になりますので、そういうところで学校はきちんと学力を上げなければ、やっぱり保護者の期待にこたえられないことになりますので、全体にそういう方向に向いていくということで、全体で学力は上がっているということになっていると思います。
 以上でございます。

【小川主査】
 岩﨑委員、よろしいですか。

【岩﨑委員】
 はい。

【小川主査】
 時間ももう残りないのですが、どうしてもこの場で質問したいという方が。いいですか、10分程度オーバーになるかと思いますけれども。じゃあ、松川委員、髙岡委員、西川委員の順でよろしくお願いします。できれば手短によろしくお願いします。

【松川委員】
 1点だけお伺いしたいのですが、この学校選択制の導入ということは都市部においては、私立の中学校ないし私立の小学校への進学ということと非常に関係があると思うんです。この導入については、小中一貫教育というのがかなりきいていると思うんですけれども、この数年、私立の小・中学校への進学率というのにどのように影響を与えているのか、あるいは与えていないのかということについてお尋ねしたいと思います。

【富田学務課長】
 まず、住民登録の人数の中で区立中学校へどれほど入学したか、ちょっと入学者は住民登録外の方も含めて入っていますので、正確な数字ではありませんけれども、小学校については当初、90%程度でありましたけれども、本年度は95.5%ということで、大変、区立小学校への入学率は上がってきているということがございます。
 一方、中学校でございますけれども、中学校につきましては、品川では大体23区の中ほどで、私立、国立への進学は25%程度、区立中学校は従来75%程度なんですけれども、72%前後ということで、大きな差異は実は見られない。というか、区立中学以外の方々の数が一定程度なので、それほどの差は見られないというのが実際出ています。

【小川主査】
 よろしいですか。髙岡委員、どうぞ。

【髙岡委員】
 1点目は、実は松川先生と全く同じことを伺おうと思っていました。
 もう一つですけれども、小学校で700人ぐらい、30%前後の希望申請が出る。これは各学校でいうと、質問の意図は省いて、学校ごとの収支決算というんですか、来る、出るというものを、やっぱり大きな学区間で差異がありますか。それとも、そこそこに入れ子が起こるのか、それを教えていただけますか。

【小川主査】
 はい。じゃあ、よろしくお願いします。

【富田学務課長】
 これは学校によりましてかなり違いがございます。希望して増になる方が一方的に多い学校というのもあれば、出る方も入ってくる方もかなりいる学校というところから、やはり減になる方が多い学校と、3つぐらいあるかと思います。

【小川主査】
 最後は西川委員、どうぞ。

【西川委員】
 端的に申します。中学校で、いわゆる選択権を行使したといいますか、31.5%、この数字を教育委員会はどう評価しておられますか。今後の見通しとあわせて教えてほしいのですが。その理由。例えば、30%前後で推移するだろうと思われるのでありましたら、その理由を教えてください。
 2点目は、冒頭申されました、品川は16中学校区で比較的地域性が均質であるというのが特徴であるとおっしゃった。では、仮に、16中学校区ある地域で、複数の中学校区で保護者の例えば年収が非常に低い、土地の評価額も低いという中学校区が複数あるような地域では、学校選択制を導入することは難しいと一般には言われるのですが、当事者としてどうですか。工夫次第できますか。やはり難しいですか。感想でいいから教えてください。
 2点です。

【富田学務課長】
 まず1点目についてでございますけれども、6割ぐらいのお子さんが従来の学区域、つまり、私学、国立に行く方を除いた6割ぐらいが従来の学区域に進まれる傾向というのは、これは変わらないかなというふうに思っています。従来の学校に行く方も、選んで行かれたというふうに思っていますので、地元の学校でもやっぱりこういうところを頑張っていていいよねと。友達関係、近隣関係を含めてそういった学校を選ばれるという方の割合が、やはりある程度いるものと思われますので、この希望申請の割合が30%を超え、4割、5割いくかというと、今のところ、それはいかがかなというふうに思っています。

【和氣担当課長】
 感想としましては、30%というのはいい数字かなと思っております。逆に、先ほど言ったように、私どもとしましては、基本的にどの学校を、地元の学校を最終的に選んでいただいても、全く遜色がないというふうにしたいと思っていますので、逆に下がってもいいのかなと。選択率といいますかね、自分の校区以外の学校を選ぶという率が下がっても、それは別にいいのかなという気がしていますが、その上で特色で学校を選んでいただくというふうに考えたいと思っていますので、みんなが自分の地元と違う学校を選ぶことがすばらしいというふうには全然思っていません。そういう感覚を持っております。
 それから、先ほどの地域間格差の問題に関しては、やっぱり当事者としても難しいかなという気がします。といいますのは、その地域の方の意識がどういうものかということにもよると思うのですが、かなり激しく地域の意識が強いところでは、非常に混乱が起きてしまう可能性があるかなというように個人的には感じております。

【小川主査】
 西川委員、よろしいですね。
 まだまだ質問はあるかと思いますけれども、予定時間をオーバーしていますので、きょうはこのあたりで終了したいと思います。
 次回以降の日程をよろしくお願いいたします。

【佐藤教育制度改革室長】
 資料5でございますけれども、次回につきましては、8月27日、水曜日、10時から12時までということで予定してございます。場所等については、また追ってご連絡をさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上です。

【小川主査】
 8月27日ですね。場所はまた、今のお話のとおり、決まり次第お知らせするということです。またヒアリングの継続ですので、よろしくお願いします。
 今日はこれですべて終わりましたので、これで閉会とします。ありがとうございました。

─ 了 ─

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