小・中学校の設置・運営の在り方等に関する作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成20年7月15日(火曜日)10時~12時

2.場所

KKRホテル東京 11階「孔雀の間」

3.議題

  1. 有識者からのヒアリング・質疑応答 ・葉養正明氏(国立教育政策研究所教育政策・評価研究部長) ・朝倉隆司氏(東京学芸大学教授)
  2. その他

4.議事録

【小川主査】
 では、時間となりましたので、ただいまから第2回小・中学校の設置・運営の在り方等に関する作業部会を開催したいと思います。
 今日は非常にお暑い中、またお忙しい中、ご出席いただきましてありがとうございました。
 今日の議題に入る前に、前回ご欠席の委員が今日3人お見えになっておりますので、事務局のほうからまず最初にご紹介いただければと思います。

【淵上教育制度改革室長】
 私のほうからご紹介させていただきます。まず主査のお隣にお座りなのが聖徳大学児童学部教授の角田元良副主査でいらっしゃいます。

【角田副主査】
 角田でございます。よろしくどうぞお願いいたします。

【淵上教育制度改革室長】
 それから、その反対側のお隣が岐阜県教育委員会教育長の松川禮子委員でいらっしゃいます。

【松川委員】
 松川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 

【淵上教育制度改革室長】
 それから、スポーツコメンテーターの奥野史子委員でいらっしゃいます。

【奥野委員】
 奥野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【淵上教育制度改革室長】
 以上でございます。

【小川主査】
 ありがとうございました。
 では、今日の議題にかかわる配付資料の確認をまた事務局のほうからよろしくお願いいたします。

【淵上教育制度改革室長】
 それでは、配付資料を確認させていただきます。配付資料は、議事次第にございます1、2、3、4の資料となってございます。まず資料1が本日付のこの作業部会の皆様方の名簿でございます。それから資料2が葉養先生から発表いただきます資料、それから資料3が朝倉先生から発表いただきます資料、資料4が今後の開催予定ということでございます。以上でございます。
 

【小川主査】
 ありがとうございました。
 では、これから議事に入りたいと思います。前回の第1回目の作業部会では、ご承知のとおり、小・中学校の配置・運営の在り方について3つの事項、1つは学校の適正配置について、2つ目にはコミュニティ・スクールについて、3つ目には学校選択制について、この3点についてそれぞれの論点についてご意見いただきました。
 今日は、その中の第1の学校の適正配置についてお2人の有識者からご発表いただきまして、意見交換を行いたいと思います。今日は2本用意しております。まず最初は国立教育政策研究所の教育政策評価研究部長の葉養正明先生からご発表いただきまして、その後、質疑応答、意見交換を行いたいと思います。そして、2本目は、東京学芸大学教授の朝倉隆司先生からご発表いただきます。これも同じようにご発表いただいた後に質疑応答、意見交換を行いたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、まず最初に葉養先生からよろしくお願いいたします。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 おはようございます。葉養と申します。4月に国研のほうに参りまして、3月まで30年間大学に教員として勤めておりました。東京学芸大のほうに3月までおりました。
 私の発表させていただく中身は、表題にございますように、小・中学校の規模や配置に関する全国の市区町村教育委員会、教育長等の政策動向と意識、今後の小中学校の配置検討の視点についての調査、それから、小・中学校長、これも悉皆調査ですけれども、北海道を取り上げまして、後ほどご紹介いたします北海道教育大学の釧路校の玉井教授の手によって行われた調査の一部を説明させていただきます。最後に、今後の小・中学校の規模や配置を考える視点について資料が用意してあります。これは十数名で研究グループを組織しまして、2年間にわたって何本かの研究、幾つかのテーマについての研究を進めてまいりましたので、そういう知見を基礎にして、さてどういう観点で検討を進めたらいいかということについて、あくまでも専門的、専門家というか、研究を進めてきた立場で2枚ほど書かせていただいたということでございます。大体25分ぐらいで終わらせるような形で進めさせていただきたいと思います。
 配付資料の1ページからの前半の部分が、市区町村の教育長対象の調査でございまして、平成18年度の秋口に実施しました。平成18年5月1日現在の自治体数、1,842市区町村でございましたので、1,842の市区町村対象に悉皆の形でアンケートを郵送しまして、回収し、分析したものでございます。
 調査票1のほうは、教育長の意識傾向、政策意識とか、小・中学校の配置・規模についてどのようにお考えかということを知るために実施したものでございます。調査票2のほうは、むしろ実態をつかむ、市区町村教育委員会の事務局サイドで持っている実態についての情報を伺う。小・中学校規模とか配置についての基準等があるのかどうかとか、そういう実態を調べようとしたのが調査票2でございます。
 調査票1のほうから説明させていただきますと、1-1-1と書いてありますのは、市区町村教育長教育委員会対象調査を一番左の時計数字1にしてありまして、その次の1は調査票1の1という意味です。一番右の数字の1が第1表という意味です。小中学校配置の現状についてという箇所については、一番多い選択は、マル2の「課題はあるが、配置のあり方についてただちに検討を進める考えはない」。その次が、ほぼ同じような水準で、「課題はあるが、配置の検討組織等の在り方の検討はこれからである」。それから、「特に、課題はない」というのは19.1%しかない。その他は、もう既に検討を進めていたり、実施中であったりとか、実施を終わっていたり、となっています。
 それから、2ページのほうに移らせていただきまして、1-1-2ですけれども、小学校規模の現状を伺いますと、一番多いのがマル2「おおむね適正であるが、一部地域には規模縮小が憂慮される学校がある」、27.4%。その次が5番目の「規模縮小が全体に広がっており、小学校の配置を全体的に見直す必要が出てきている」、25%。こういう選択がされております。
 それから、1-1-3が、中学校の規模の現状。「おおむね適正」が36.1%で、一番多い。その次が「おおむね適正であるが、一部地域には規模縮小が憂慮される学校がある」。マル5が3番目の選択でして、「規模縮小が全体に広がっており、中学校の配置を全体的に見直す必要が出てきている」。
 それから、1-1-4は、小中学校の配置計画の見直しの方法を伺った項目でございまして、一番多いのがマル2の「教育委員会でどのような検討の進め方をするか審議検討し、検討組織を設置する方向で考える」というのが40.6%。その次に多いのが3番目の「首長と協議し、自治体行政全体の課題に位置づけ、審議検討の在り方を決める」、30.6%。こういう状況になっております。
 3ページで学校規模の標準ということで、規模等について意識を伺っています。小学校については、一番多いのがマル1で、「現在の標準が適正だと考える」、46.5%。その次に多いのがマル4で「都市部と郡部で学校規模の標準を分けて設けるべきだと考える」、25.4%。中学校についても同じような説物を用意してありまして、ほぼ同じ傾向になっています。マル1が一番多くて、その次がマル4という選択傾向になっています。
 それから、4ページのほうに移りまして、学校適正規模の判断理由について伺った結果です。(ア)のほうは小学校についてということで、一番多いのがマル5の「クラス替えのできる規模」、48.5%。次がマル4の「運動会や学芸会等である程度の活性化が図れる規模」、41%。それから3番目が「体育の集団的競技や音楽の合唱等に支障が生じない規模」、38.4%、こういう選択傾向になっております。
 それから、(イ)が中学校のほうでして、一番多いのがマル3、「国語、数学、理科、社会、英語等の主要教科について各学年それぞれの担任教員を用意できる規模」、54.7%、マル7が2番目の選択肢でありまして、「部活動やクラブ活動等の種目数を一定数維持できる規模」、52%。
 それから5ページのほうに移らせていただきまして、1-1-7は小中学校の規模縮小への対応策でして、一番多いのがマル1「困難はあっても小中学校の適正規模の維持を基本として統合方策を検討する」、36.1%。それから2番目に多いのがマル6でございまして、「小規模校という観念を転換し、不足しがちな交流学習の要素などを取り入れながら、学校規模が小さなことの良さをむしろ生かすよう、指導方法の工夫改善のための方策を検討する」、35.2%となっています。
 それから、1-1-8は、小中学校の配置についての基本的な考え方で、一番多いのがマル3、「基本的には子どもの教育条件を優先的に考え、今の標準学校規模(12~18学級)に基づいて考えるべきだと思うが、地域によっては、通学条件や文化拠点・防災拠点などの性格を考慮して、教育条件よりそれらを優先した学校配置となるのはやむを得ない」。2番目は、マル2でありまして、「子どもの通学負担は重視すべきだが、学校は一定水準の学力を保障し集団生活の基礎をつくる場である以上、バス通学や寄宿舎等の導入を図り、適正学校規模の維持を優先して考えるべきである」、25.7%。こういう意識傾向になっています。
 それから、6ページに移りまして、1-1-9は、学校配置の見直しの障壁について伺った質問項目です。一番多いのがマル2「小中学校の配置の見直しの必要性は一般論として認識されているが、地元の学校がなくなることへの懸念や抵抗が大きく、住民の合意を得るのが困難なこと」、55.3%。
 ここまでが教育長の意識についての箇所でございます。7ページからが事務局対象の教育委員会対象調査ということで、データができております。若干最初にコメントさせていただきたいのは、該当する自治体数が少ないケースが、特に適正規模の基準の有無等についてはかなりあるんですね。そういう意味で、中身に踏み込んだ選択肢がその後出てくるんですけど、読み取りは注意していただく必要があるかなと思います。回収率55~56%ですから、総数が1,000ぐらいの自治体数なんですね。基準等があると答えられているのが10%ぐらいですから、100ぐらいの自治体の中での意識傾向ということでお酌み取りいただければと思います。
 1-2-1が適正規模の基準の有無ということで、マル2「ない」自治体が63.5%で一番多い。その次がマル4で、「自治体独自の基準は定めておらず、学校教育法施行規則の規定を基準としている」、18.4%。こういう数字です。
 1-2-2は、1-2-1において適正規模基準を持っていると回答した9.9%の自治体の集計でして、これは数が少ないということがあって、あまり深く分析しなかったところもあるんですけれども、マル2については、学校全体の学級数で学級の上限を設定している場合が多くて、一番多いのが24クラスというのが23自治体で、多くなっています。それから、18クラスが16自治体となっています。1学年の学級数で上限を設定している場合は、一番多いのが3学級、11自治体、4学級、10自治体、3~4というあたりが1学年の学級数で上限を設定する場合には多くなっている。
 8ページに移りますと、1-2-3で、小学校の適正規模の下限について、これも適正規模基準を有する自治体だけを集計しておりまして、回答を見ると、1学年の学級数で下限を設定しているところが多い。これは2クラスが一番多いです。24自治体。で、1クラスが11自治体。
 それから、1-2-4、中学校の適正規模の上限、これも適正規模基準を有する自治体の集計でして、お答えになっている自治体だと、学校全体の学級数で学級の上限を設定している場合が多い、適正規模の上限を設定している場合が多くて、24学級が21自治体、18学級が17自治体。
 それから、1-2-5は中学校の適正規模の下限。この中で回答されているところでは、マル11学年の学級数で下限を設定している場合が多くて、4クラスというのが14自治体で、一番多くなっています。
 それから、1-2-6、小学校配置見直し基準。ここも非常に回答数少ないんですけれども、1学年、平均値でいうと1.4学級を存続の下限としているというのが10.4%。内訳を見ますと、1クラスが19自治体で一番多い。2クラスが6自治体という感じ。
 それから、中学校配置の見直し規模基準のほうも、実質的に回答されているところだと、マル1に対応する1学年の学級数で存続の下限を設定している場合が多い。これだと1クラスが12自治体で多い。
 それから、1-2-8は、小学校の通学距離の上限の有無で、ない場合が85.1%。
 次に、10ページのほうに移らせていただきます。1-2-9は、小学校の通学距離の上限、これは通学距離基準を有するところだけ集計したものですけれども、一番多いのがマル3で、「学校ごとに適正通学距離に該当する地域を地理的に定めている」、36.8%。次が、マル1「道なりで測定し4キロメートルを上限としている」、22.6%。
 それから、1-2-10の中学校の通学距離の上限の有無は、ない自治体が86%で、多い。それから、上限を設定している9.5%の自治体の中身を見ると、一番多いのが、中学校も小学校と同じ傾向で、最も多いのが「学校ごとに適正通学距離に該当する地域を地理的に定めている」、31.1%となっています。
 それから、11ページ、1-2-12がございますが、小学校の通学時間の上限の有無。ない自治体が圧倒的に多い。それから、通学時間の上限を設定している0.9%の内訳ですけれども、一番多いのが、マル3、「学校ごとに通学時間の上限を越えない地域を地理的に定めている」、29.5%。
 それから、中学校の通学時間の上限の有無については、持ってない自治体が97.2%という、ほとんどの自治体になっている。
 持っている自治体についてどうなっているかというのが12ページの1-2-15でございます。実質的にお答えになっている自治体だとマル3「学校ごとに通学時間の上限を越えない地域を地理的に定めている」、24.7%。
 それから1-2-16は、小学校の通学距離または通学時間の上限を超えた場合の措置を聞いている問いでございます。それに対する回答ということで、配置計画を持ってないマル7は除きまして、一番多いのがマル3「路線バスや鉄道の使用を奨励し、そのための経費を補助している」、19.9%。それからスクールバスがマル1とマル2でありまして、マル1のほうは会社委託の方式、マル2は買い上げ方式ということで、合わせますと27%ぐらいになりますから、路線バス等よりも多くなります。その次が路線バスや鉄道の使用。
 それから、13ページの1-2-17が中学校の上限を超えた場合の措置。上限を設定している自治体の集計で、これも同様の傾向ですので、時間の関係がございますので、省略させていただきます。
 1-2-18が、小・中学校通学区域の地域的基礎を聞いた質問でございます。マル1が一番多く、旧町村単位で通学区域を設定しているのが32.3%。それから、マル3の町内会・自治会単位で、32.0%。こういう傾向になっている。
 それから、14ページの1-2-19は、地域的な基礎との関係で適正配置をどういうふうに考えているかという問いに対する回答でございます。ここもマル7の「小中学校の配置計画を作っておらず、答えられない」は除きまして、それ以外のところだとマル3「町内会・自治会の区画を分断しないように考えている」、18.6%。それから、その次がマル6の「自治体内の地域の特性を考え、旧町村の区画を重視する地域と新しいコミュニティ形成の視点で考える地域との両者があり、地域ごとに柔軟に判断している」、11.8%。
 それから、1-2-20は、通学区域の弾力化関係のデータが欲しかったものですから、入れたものでありまして、学校選択制を議論するときにむしろこれをお使いいただければということで、今回は省略させていただきます。
 それから、15ページのほうは、1-2-21、配置計画の制約要因ということで、一番多いのがマル7「自治体内の地域的な歴史や文化を尊重する必要がある点」、45.2%。それから2番目が10.「資金不足」、32.4%、3番目がマル1「既存の学校の校地面積が狭隘な点」、13.0%。こういう状況になっております。
 それから16ページからが北海道における小中学校対象調査でありまして、これは北海道教育大学釧路校教授の玉井先生に責任者になっていただいて実施したものでございまして、実施時期は平成19年の2月から3月にかけて、悉皆調査でございます。回収率が大体56%から60%ぐらいの状況。
 その中のごく一部でございますけれども、17ページに2-1というのがございます。2のセクションの1番目の表ということで2-1と書いてあります。小学校小規模校の課題として一番言われているのが、1「良い意味での競い合いや切磋琢磨の機会が少ないこと」、「とてもそう思う」と「少しそう思う」を合わせると90%近くになる。それから、その次に多いのが5の「組織的・機能的な子どもの集団づくりができにくい」という選択肢。それから、2番目の「都市部の学校との交流学習や交流が少ないこと」。それから、10番目、「教師どうしが切磋琢磨できないこと」というのも、半分ぐらいの校長先生がそういうふうに思っておられる。
 2-2は、小学校の適正規模・適正配置を考える指標を伺った質問項目に対する状況ですけど、適正規模のほうで一番多いのが4番、「子どもの社会性を育てられるかどうかの指標」、2番目がマル6で「子どもの学力を向上できるかをとかの指標」という順番になっています。それから1番目の通学条件ですね。それから、適正配置のほうはちょっと傾向が違いまして、子どもの通学条件が適切であるかどうかというのが一番多い。それから、子どもの学力というのが2番目に来る。
 18ページは、中学校について同じように伺ったものの結果でございます。中学校小規模校の課題について聞いた質問項目では、一番選択肢が多いのが「良い意味での競い合いや切磋琢磨の機会が少ない」という、1の選択肢が90%ぐらいで、支持が高い。次に多いのが5番目「組織的・機能的な子どもの集団づくりができにくい」。それからあとは、10番目の「教師どうしが切磋琢磨できない」とか、2番目の「都市部の学校との交流学習や交流が少ない」というのが出ている。
 それから、2-4について、中学校の適正規模・適正配置を考える指標をどう考えるか。適正規模のほうは、4が一番多い。子どもの社会性についての項目です。これは小学校と同じ傾向でございます。それから、適正配置のほうも、小学校と同じで、1番目の通学条件がトップに来ている。
 19ページは、通学距離とかの通学時間の関連の実態とか意識を聞いた項目でありまして、2-5というのは、近隣約8割の児童・生徒の片道通学距離と片道通学時間ということで、近隣8割というのは、大多数の児童・生徒がどういう距離の中で通学しているかという、大きなトレンドをつかむために8割という縛りを、玉井先生の調査だといろんな質問項目でかけているということです。片道通学時間というのは、通学距離が伸びれば、伸びていく傾向があるというのが出ております。
 それから20ページに2-6として、片道通学時間と本来的に見る児童生徒の適切な通学時間。これは校長先生が通学時間としてどのぐらいがいいと考えているかということの質問に対する回答です。片道通学時間15分以内の子どもの場合は、本来的に見る児童・生徒の適切な通学時間は15分以内というのが一番多くて、30分以内もかなり多い。それから、30分以内の子どもの場合は、校長先生は30分以内をかなり支持している。60以内の子どもの場合は、できれば30分以内がいい。78.6%ですね。こういう傾向になっている。それから、80分未満の子どもの場合は、校長先生は45分。これは1つの学校しかありませんけれども、45分以内であればいいと思っている。こういうデータでございます。
 この通学距離とか時間に関連する発表は朝倉先生がされますので、それにつなげる意味もありまして、玉井先生のデータを紹介させていただいた。
 あと、21ページ、22ページは、今まで10名程度の研究者を組織して全国調査をやってきておりますので、そういう見地からするとどういう考え方で規模とか配置を考えていったらいいだろうかということで、これはあくまでも私の個人的な考え方ですけど、それを示させていただきました。
 まず、検討のフレームにつきましては、1つは通学距離とか時間とか地勢的な条件をどう考えていくか。もう一つは、学校規模の条件というのがあるだろう。つまり、教育指導条件の整備・保障という問題がある。それから、3つ目に出てくるのが、これは必ずしも教育の問題なのかどうかということはありますけれども、学校というものが、特に小学校とか中学校の場合は、町とか村の骨格に位置づいている。集落の文化センターであったり、精神的支柱になっている実態があって、この3つをどういう関係性で組み合わせていって、小・中学校の規模と配置を考えていくか。それは結局、義務教育拠点の整備・保障を日本としてどういうふうに進めていくかという問題なんだろうと思います。最終的には、義務教育、ナショナルスタンダードの維持とか、より質の高い義務教育の保障ということに、どういう配置とか規模のとらえ方をしていけば迫れるかという問題なのかなと思います。
 現実的な課題として出てくるのは、3つ書いてありますけれども、1つは、通学距離・時間等の就学条件と学校規模適正配置というのが同じベクトルにならない、という問題です。通学距離・時間を維持しようとすると、規模が小さくなってしまう。規模を適正範囲に入れようとすると、通学距離・時間が伸びるということもあり得るんですね。北海道は最も厳しい条件の下にある典型ですけど。
 課題2は、郡部とか離島等と都市の小・中学校配置密度の違いをどう考えるか。これはデータベースで見ますと、相当違います。
 それから、課題の3は、同じ自治体でも学校規模のばらつきはあるわけです。こういう問題は、地方自治問題であって国の問題ではないと考えればいいのか、それとも、何かしらの配慮が必要なのかということがあるのかなと思います。
 22ページは、小・中学校統合の内部効果と外部効果をとらえるフレームというのが出ていますけれども、結局私どものグループでやってきた中で一番重要だと思っているのが、学習拠点性の維持・充実をどう図るかという観点なんですね。日本は就学義務という方式で動いてきていますので、就学義務の制度からすると、小・中学校の配置を通じて義務教育保障をしているわけで、学校をどう配置するかという問題は、学習拠点性をどう高めるかとか、どうやって維持するか、充実するかという問題にとって鍵になる。その場合に、1つは外部効果と書いてありますけれども、地域社会に対する効果みたいなものも考えていく必要がある。ただ、しかし、学校というのは、教育目的施設ですから、内部効果ということも十分に勘案していかないといけない。統合すれば学習拠点性が強まるのかどうか。どのような条件を付加すれば学習拠点性がむしろ強まっていくか、充実していくかというあたりが、仮に統合ということになった場合にも、条件整備みたいなことを考えていかないといけないということなんじゃないかなと思います。
 地域社会効果というのは、学校、家庭、地域との信頼関係、連携というのが学校の在り方を考える場合のポイントになっていますので、純粋に教育目的施設だというだけで学習拠点性の充実とか維持とか高度化というのは図れるかということがあって、外部効果の面も十分考えていきながら、両面を満たすような戦略をどうするか。どういう仕組みで考えていけばそれが達成できるか。そういう問題かなと思っています。
 ちょっと時間をオーバーして失礼しました。終わります。

【小川主査】
 ありがとうございました。これから質疑応答とか意見交換をしたいんですけれども、その前に、今度新たにこの作業部会の委員として就任された方がいらっしゃいますので、事務局のほうからご紹介お願いしたいと思います。

【淵上教育制度改革室長】
 社団法人日本PTA全国協議会の専務理事でいらっしゃいます加藤秀次委員でいらっしゃいます。

【加藤委員】
 加藤でございます。よろしくお願いします。

【小川主査】
 ありがとうございました。じゃあ、今の葉養先生のご報告についての質疑及び意見交換を進めていきたいと思います。大体30分ほど時間がありますので、どうぞご自由に。じゃあ、西川委員、どうぞ。

【西川委員】
 すいません。私が理解がついていけなかったのでご確認をさせていただきたいんですが、2ページの表なんですが、2ページの1-1-2、1-1-3の2つの表なんですけれども、すいません、僕が理解できなくて、一番目が小中学校規模の現状、2つ目が中学校規模の現状となっていますが、上は小学校規模の現状が正しくて、1-1の3は中学校規模の現状のままで、選択肢のほうが、例えば5であれば、「小学校の配置を」のところ、これは中学校の間違いかなと思っていたんですが、そうではないんですか。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 この見出しのとおりに、修正したものをまたもとに戻すようで申しわけないですけど、受けとめていただければと思います。報告書の中身を転記するときにちょっと混乱が生じたんですけど、この表記で間違いはございません。小中学校規模の現状というのが1-1-2、配置の現状が1-1-1ということです。ごめんなさい。

【西川委員】
 1-1-1は小中学校配置の現状ですよね。1-1-2が小中学校規模の現状になっているんですが、これはこれでいいんですか。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 ごめんなさい。14.8%ですね。二転三転して申しわけないんですけど、小学校の規模の現状について伺いますが1-1-2ですね。これは小学校規模の現状というふうに直していただく必要がありますね。いろいろチェックはしたんですけれども、2ページの一番上のところが小学校規模の現状ということで、もう一度また訂正させていただきます。1-1-3のほうが中学校の規模の現状について伺いますという質問項目に対する回答です。「おおむね適正」が36.1%。申しわけございません。

【西川委員】
 すいません。1-1-3の選択肢は間違っていませんか。例えば「小学校の配置を全体的に見直す」とか、「小学校の配置全体」、これは「中」じゃないんですかね。もし合うとすれば、これは「中」のほうが話が合うと思うんですけれども。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 そうですね。

【小川主査】
 1-1-3の中学校の規模の現状の選択肢の文章が、マル5とか。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 そういうふうに直させていただきたいと思います。中学校ですね。大分見たんですが、ミスプリが入っておりまして、申しわけございません。

【小川主査】
 西川委員、その確認のみでよろしいでしょうか。

【西川委員】
 はい、ありがとうございます。

【小川主査】
 ほかにどうぞ。髙岡委員、どうぞ。

【髙岡委員】
 今まで我々も県の教育委員会などとお話をする機会があるときに出ていたような個別の話が全国データという形で非常にすっきり出されて、しかも、それぞれのところで重点の置きどころというのも明確に見えてくるような気がいたしました。貴重なデータだと思うんですが、これを踏まえて、例えば島根県や鳥取県の教育委員会と少しお話をすると、必ず出てくるのが、中学校の教科の教員の配置が危うくなっている。つまり、標準教員数との関係で、複数の教科で教員配置が難しいという現状がある。そこまでいっているということが1つあります。このことは、都市部と地方の少子高齢化の進捗のタイムラグがあって、それとの関係で、学校規模、あるいは子供の数が急激に減っている地域とそれほどでもないところ、そういう状況の中で、こういうデータも、1つは、この世の中に2つの仕組み、制度があるかのように見えるところがあるんじゃないかと思います。したがって、全国の市町村の悉皆調査というデータを見せていただきましたけれども、小規模校をたくさん抱えている地域とまだまだ標準学級数の前後で維持できている地域での意識のずれだとか、あるいは行政の考え方のずれだとか、そういうものを少し教えていただけるとありがたいと思います。

【小川主査】
 おそらく郡部、都市部のこのデータで違いがあるのかどうかということを含めてだと思います。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 実はクロス集計もやっているんですが、特に調査票1のほうは、教育長さんの意識を伺う項目なものですから、それでクロス集計を細かくやっていくと、回答者が特定されちゃう可能性があるんです。調査をやるときにも、かなりそこいら辺を心配いたしまして、匿名性を完全に保障しますからということでやっている経緯もあって、データとしてあることはあるんですけれども、どこまで出せるかということはあるんですけれども、ただ、そういうデータは十分承知しておりまして、例えばデータ的に通学距離が一番長いところは北海道なんです。小学校区の広がり、面積を全国47都道府県ごとに見ていくと、北海道が一番きついんですね。北海道なんかだと、複式をどうやって解消するかということで、むしろ行政課題は大きい。じゃあ、逆に例えば東京都内みたいなところは、4キロ、6キロと設定したら、半分でいいんじゃないかという話になっちゃう可能性もあるんですね。だけども、都市部は学校が多過ぎるから学校を抜けるのかという話になっていくと、例えば校地面積上限とか、施設的に設置基準がありますから、校地面積そのものが基盤として小さい自治体もあって、そこがこの問題の複雑さ、一方では通学距離とか適正規模という観念で考えればいいようなものの、しかし、統合したときに施設的に設置基準を満たせるような学校をつくれるのかというと、建ぺい率とか容積率の規制がかかっていたりとか、もともとキャンパスが非常に小さい、猫の額みたいなところにある場合もあるんです。だから、そういうファクターもちょっと入れていかないといけないということもあって、一概に都市だからいいんだ、地方だからまずいんだという二分法的な考え方はなかなかとれないのかなと。結局、私の個人的な考え方は、地域性、学校の置かれる地域の条件、地域条件を整理していって、迫っていく。都市か郡部かという二分法でいくのがいいのか。もっと地域条件的なものをファクターに入れていって、迫っていく方法があるのか。そこいら辺のことを考えています。

【小川主査】
 髙岡委員、今のご回答でどうでしょうか。

【髙岡委員】
 もう一言だけ、すみません。まさに研究的にはそうなんだろうと思うんですけれども、先ほど島根県のお話をしましたけれども、例えば市区町村のレベルまでおりれば、子供の数がぐっと減ってきたということは、学校の維持そのものが、例えば学級が複式化せざるを得ないような状況までになると、教育長さんの意識というのは、統廃合というものがまず出てくると思うんですよ。やるか、やらないかという議論ですね。やるかやらないかということを真剣に考えれば考えるほど財政問題が見えてくるから、そっちが気になる。その痛痒をあまり感じない。例えば適正規模で小学校で学級規模は20人程度で2クラスぐらいで維持できているというと、自分の代では関係ないなと思うわけです。ですから、出てきた意識というものとその自治体が抱えている実態は、地域性の問題だと思うんですけれども、しかし、それも時系列の中で、ここで切り取ったらこうだということだと思うんですね。

【小川主査】
 ありがとうございました。他にどうでしょうか。あと、いろんな統計の整理をしていただいた上で、21ページのところで、規模や配置を考える視点ということで、葉養先生のほうからこれから検討していくに当たっての1つの参考材料としてフレームワークみたいなものも添付されております。葉養先生は、ご存じの方も多いかと思いますけれども、全国のいろんな自治体の学校の適正配置計画の策定にかかわってきたご経験もありますので、21ページのフレームワークにかかわっても、これから作業部会で検討していくに当たって、何かそういうご経験からいろんなお考えをお持ちかと思いますので、そういうような点についてもご質問があれば、ご自由に出していただければと思います。じゃあ、池田委員。

【池田委員】
 1-1-1の小中学校配置の現状の中で、課題はないとか、ただちに検討を進める必要はないというのが大体40%ですよね。残りは検討が必要だとか、検討を済んだとかいうのが60%近いわけですね。この表から見ますとね。60%の市町村、市区町村については、教育長さんは何らかの検討の意識を持っていらっしゃるということですよね。そうすると、その意識は何に起因しているのかというところは、この表の、例えば5ページの対応策という中との関連が強いのか、ちょっと教えていただければありがたいんですが。

【小川主査】
 葉養先生、よろしいですか。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 それで4ページの判断理由とか、5ページの規模縮小の対応策というのを記しているところはあるんですけれども、結局規模をどう考えるか。やはり同じ自治体の中でも、規模のアンバランスが出てくると、やはり教育行政のトップとしては気になるというか、規模が片一方はものすごく小さくなって、片一方は少し大きめだというときに、どうしても規模平準化という意識が出てくるような傾向はあるんじゃないかなと。だから、教育長さんの意識としては、適正規模という、学校の児童・生徒数とか、あるいは学級数とか、そういう適正な水準に対する意識というのがかなり根底にはあるんじゃないかなという感じがします。ただ、現実問題として、北海道の既に複式になっている学校が自治体の中の半分以上だというときに、じゃあ、通学距離が10キロ、15キロになっても、それをなくすのかということになっていくと、非常にそこには悩みがあるという。それが、おそらく過疎地の課題なのかなと。実際に私も30カ所ぐらい実は回っているんです。稚内とか釧路とか函館とか、札幌ももちろん何回か行っていますし、長崎の対馬とか種子島も行きましたし、出雲市も行っています。出雲市の日御碕小学校とか、あるいは3人しか子供がいない分校とかに行っていますけれども、過疎地を中心に歩いていると、なかなか1つの物差しで処理するのは難しいなと。だけども、教育委員会とか校長先生は、もし仮にこんなに小さくなっちゃって、教育の質がほんとうに下がるということがあれば、本気で何かしらの対策を考えなきゃいけない。行政のほうは大体そういうことを考えている。校長先生は、ただ、じかに地域に向き合っていますから、子供と向き合っていますから、非常に悩んでいる校長先生が多い感じはしますけれども。ちょっとお答えになっているかどうか。

【小川主査】
 池田委員、どうですか。何か他に。

【池田委員】
 もうちょっとわからないのは、例えば今の規模の問題だけがクローズアップされてきているわけだけども、ほんとうにそれだけなのかなということがあったり、それから、同じように、全国の市区町村ですから、市区町村の人口だとか、そういう要素によって、自治体の大きさによって課題があるとか、ないとかいうような問題が当然起こってきているはずなんだと思うんですが、検討が必要だったというところが、少なくとも人口が少ないところだったとか、課題があまり考えられないというのは、比較的人口が多いところで集約度が高いとか、そのあたりの関係はどうなっているんでしょうか。

【小川主査】
 何か一般的な傾向というのは言えるんですか。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 何カ所か、30カ所ぐらい回っている中では、うちじゃあ必要がないという課長さんに出くわしたこともあるんですけれども、なぜ必要がないとおっしゃるかと考えると、結局難しいということがあるのではないかなと。つまり、統合問題というのは、地域の再編みたいな側面を持ちますので、政治問題化する可能性が相当あるんですね。だから、そういうことを考えていると、なかなかインタビューしても、うちは問題がないと回答としては言わざるを得ないのかなということを感じたこともあります。ただ、そういう意味でいうと、校長先生にお会いすると、子供を預かっていますから、教育論として相当見えているというか、だから、規模だけで果たして、じゃあ、規模が小さくなれば学力がほんとうに落ちるというのがデータベースで言えるのかとかですね。データベースで言えるとすれば、3人しか子供がいない小学校の分校なんていうのは劣悪な教育だと判断することになるわけで、でも、そういう学校に行っても非常に自信を持っているんですね。もちろん校長先生、教頭先生とお話しすると、可能なら20人、30人、子供欲しいですよと。だけど、現実は、本校まで5キロあるとか、隣の学校までの間は山あいで通学保障は簡単ではない。直線距離で5キロといっても、非常に細い道をくねくね、くねくね、あるいは上下しながら行かなきゃいけないようなこともあったりとか。それが日本の義務教育の1つの現実ではあるんですね。そういう問題をナショナルに考えていったときに、どういうふうに御していけばいいのかなというのが、結局問題意識としては私のほうも持っているということです。

【小川主査】
 池田委員、よろしいですか。

【池田委員】
 はい。

【小川主査】
 あと10分ぐらいございますけれども、他はどうでしょうか。じゃあ、貞広委員どうぞ。

【貞広委員】
 別の視点ということでご質問をさせていただきたいんですが、万が一ですけれども、例えば特に中学校に関して、規模をもう少し大きくしていきましょう、学校の数を減らしていきましょうということになった際に、今、小規模校の話にかなり焦点化されていますけれども、大きな規模の学校の上限をどうするかという問題も適正規模の視点として1つあると思います。これは世界的な規模の知見をそのまま教育スタイルの違う日本の学校に適用はできないとは思いますけれども、最近のデータを見ると、スモール・イズ・グッド、スモール・イズ・バッドというよりも、ラージ・イズ・バッドなんですね。小さな学校、中規模の学校ですごく学力格差があるというよりも、大きな学校がいけない。そこの部分にどうも線引きがあるんじゃないかというところがあるように思うんですが、今回も、1-2-4などで、適正規模の上限について質問されている部分がありますけれども、今回の調査でも、または別の先生のご経験でも結構ですので、これぐらいが上限で、もし万が一学校を大きくしていくにしても、ここら辺までじゃないと適正な教育条件が確保できないよというような情報をお持ちでしたら、ぜひご提供いただきたいなと思うんですが。

【小川主査】
 よろしいですか。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 今回は、ほとんどの自治体、上限の問題をあまり深刻な問題としては受けとめてない。ただ、例えば川崎市なんかだと1,000人超える学校があったりとか、学校分割して新校がすぐ1,200人ぐらいになっちゃったというケースもないことはない。だから、分割したということは、上限という観念もあるんだろうとは思うんですけれども、日本全国いろんなところをここ2年間回っていますけれども、上限が問題だとか、大き過ぎてというのはあまり聞いたことないですね。ほとんど聞いたことないです。首都圏近郊では、集合マンションがわっとできて、一時期子供の数が増え過ぎて、キャパシティーを超えそうになった。そういうところで学校分割しないといけないというのは出てくるんですけれども、ただ、行政サイドにしてみると、率直に言って、あと10年すればトレンドが変わるだろうと思っているので。学校施設というのは50年間が減価償却期間になっていますよね。そうすると、学校施設を例えば30億円かけてつくるとしても、10年たったら結局がらがらになっちゃうという懸念を持つとなると、今の時点は、少なくとも市長部局の観念としては、学校の規模の上限が云々かんぬんという議論はあまりしたくないというのが現実としてはあるんじゃないか。ただ、教育論としては、じゃあ、2,400人の規模の学校が小学校として適正なのかということはあるとは思います。それで、教育委員会のほうも相当苦労されるんでしょうけど、市長部局との関係をクリアしないと学校分割なりできませんから。しかし、学校分割しても、いきなり1,200人の学校が出てきてしまって。そういうラージの問題は問題としてあるんだけど、私どもの研究はどちらかというと、少子高齢化、地方財政悪化、そういうトレンドの中でどう考えていくかというようなことに焦点があったものですから、過大規模校問題というのはあまり意識はしなかったということでございます。

【小川主査】
 今のお答えでよろしいですか。

【貞広委員】
 ありがとうございます。

【小川主査】
 他にどうでしょうか。あと数分ありますけれども。じゃあ、柳澤委員、よろしくお願いします。

【柳澤委員】
 失礼いたします。2点ほどお伺いしたいと思います。1点目は、葉養先生がされた調査の5ページのところでございます。1-1-7で、高い数値3つがございます。マル1とマル6とマル9です。マル1のほうは、適正規模の維持として統合方策を検討しています。マル6とマル9は、むしろ「小規模という観念を転換し」とか、あるいはマル9のほうは、「まちづくり・むらづくりに果たしてきた」ということです。マル1とマル6、マル9というのは少し違う方向かと思います。これは二極化しているととらえていいのかというのが1つでございます。
 それから、もう一つ続けて言いますと、これは17ページ、18ページの玉井先生の調査の結果ですが、ここに出ている小規模の課題、あるいは適正規模・適正配置を考える指標です。これはこれでうなずけるといいますか、納得できます。確かに切磋琢磨であるとか、機能的・組織的なということ、あるいは教師同士の切磋琢磨ということはわかりますが、このことと、あるいは下の指標もそうですが、先ほどから出ている教育的な要因、財政的な要因、あるいは政治的な要因と、いろいろな要因を含めて考えたときに、実際にどうするのかということと小規模の課題、あるいは指標というのは別の次元の話ととらえられます。一般的なアンケートの答えと、実際に身近で起こってみたらどうするのかということとは、判断が変わってくると思います。先ほどのお話ですと、北海道は小規模な学校が多く、かなり身近に迫っている課題として、こういう回答をされているのか。そのところはどのようにとらえればよいのかということです。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 北海道のほうはかなりクロス集計やっておりまして、これは校長先生対象の調査ですから、クロス集計結果を外に出してもあまり支障がないということもあって、相当細かいクロス集計もやっているんですね。ただ、膨大な、CD1枚におさめないといけないぐらいの分量なものですから、それでかいつまんでしか出してないんですね。まだ2回目の部会ですから、ということもありますけれども。最終的には、しかし、学校というのは教育目的施設ですから、地域の精神的支柱、文化施設だとしても、教育目的ということを外しちゃったら、学校じゃなくなっちゃうわけで、だから、あくまでも最終的には教育論で最後は詰めていくしかないんだろうと思っている。そこで結局校長先生も、教育論が出てきて。ただ、学校を例えば廃止するとか統合するということになれば、条例の改正が必要になるんですね。条例改正というのは議会の権限ですから、政治プロセスに入り込んでいくわけです。政治プロセスに入る中では、首長さんの決断というのも、判断というのもかなり重要な問題になってきたりとかですね。だから、教育者としてはこう思うけどもというのが、やはり妥協せざるを得ないということが現実の中では出てくるというのが実際のプロセスだろうと思います。ただ、私自身も教育学の人間ですから、どこまでいっても拘泥しなきゃいけないと思うのは、教育目的施設だということを外しちゃったら、学校の問題というのは非常にまずい状態になるんじゃないかと。だから、あくまでも原理は原理として、それを学習拠点性なんていう言葉で呼んでいるんですけれども、学習拠点を強めるという、改善するという、この1点だけは、外してしまうと、義務教育を支える施設の議論でなくなるんじゃないかなというあたりは私は思います。ただ、それを実現するプロセスでは、最終的には条例を改正しなきゃいけない。制度のプロセスの中、政治プロセスの中をくぐり抜けていかないと現実には動かないですから。ということで、理念と現実というのは、完全に一致するとは正直言って思っておりません。思っておりませんけれども、教育学の人間としては、そこは外せない。学習拠点だということだけは最後まで言い続けたいというのがあります。柳澤先生も同門の士ですから、同じような考えだろうと思いますけれども、お答えになっているかどうか。

【小川主査】
 5ページの1-1-7の表の読み方の点で何かございますか。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 ここのマル1とマル6あたりが二極化しているんじゃないか。これは、クロス集計しているだけじゃ見えないところもあるんですけれども、私が過去25年ぐらい、こういう問題というのはひっきりなしに実務的には関与しておりますけれども、思うのは、必ずしもどういう方でも、極で走ればいいと思ってないと思うんですよね。だから、どちらかといえば、適正規模の維持を基本としてというんだけど、基本としてとなっているところが、これも人によってとり方が、幅がある言葉だととる場合もあるし、相当揺れている。揺れている中で決断しているという回答が、しかし、結果的にはこういうふうに出てきたという。だから、マル1とマル6が背反的という感じはしないんですね。うちは実際にはどっちに力点を置いて考えれば、学校の規模とか配置の実態からしたらいいのかということで、うちの場合はマル1のほうに力点を置いても何とかやっていけるなというとマル1になるし、だけど、完全にマル1を万々歳と思っているかというと、そういう回答ではないんじゃないかなという感じがちょっとしております。

【小川主査】
 ありがとうございました。よろしいですよね。
 時間が若干オーバーしてしまいましたけれども、これで葉養先生からのご報告と質疑応答を終わりたいと思います。ありがとうございました。
 では、引き続き朝倉先生からのご発表をいただきたいと思います。朝倉先生、よろしくお願いいたします。

【朝倉東京学芸大学教授】
 よろしくお願いします。私のほうは、限定したテーマでの発表になります。文科省の新教育システムというところから助成をいただきまして、「通学制限に係わる児童生徒の心身の負担に関する調査研究」というのを行いました。要するに、通学というものが子供たちの健康にどういうふうに影響するのかということを具体的に健康指標をとりながら明らかにするということです。
 お手元にある資料に沿って少しずつ説明をさせていただきたいと思います。目的のほうは、通学の距離、時間、方法、通学手段といったものや、今回はあまり発表いたしませんけれども、どういう経路で、どういう環境の中を子供たちは通学をしているのかといった、さまざまな通学にかかわる条件が子供たちの心身の健康、ストレスにどう影響しているのか。そのほか、体力だとか、自由時間だとか、幾つか調べているものはあるんですけれども、まだ何となくあまり結果がはっきりしませんので、今回は通学の負担という面で発表させていただきたいと思います。
 それから、健康指標ということで、できるだけ客観的な指標をとってほしいということでありましたので、生理学的な指標をとると同時に、生理学のものだけですと、子供たちが感じている意味がうまく浮かび上がらないことがありますので、意識、自覚という側面、主観と客観の両側面から子供たちの健康をとらえてみよう。それは、通学の条件とどういうふうにかかわっているのかということで発表していきます。
 次のページに移ります。対象と方法。私、出身が保健学なので、一応科学的な研究スタイルで報告をさせていただきたいと思います。今回、実際の本調査はごらんいただいているところで行ったんですけれども、その前に学芸大学の附属の竹早小中を使いまして、そこで予備調査、プリテストを行っています。そのときにはかなりたくさんの指標をとっておりますが、実際に大量に簡便にとれるという方法で少しずつ選択をしていきました。
 実際に対象、協力をいただいたのは、そこに挙げました富山県の氷見市とか、津市、宮古市、福岡県の北九州市、丸亀市というところです。後で説明しますけれども、生理指標をとりますし、かなりアンケートをやっていただくということで、かなり子供たちに負担がかかるということなので、協力をしていただける行政にお願いをして、そこの中から幾つか学校を選んでいただいて、協力していただいたということになっています。
 できるだけいろんな地域を幅広くとろうということでやっておりますけれども、まだ実際には、葉養先生の発表された北海道というのは実際には調査できておりませんし、すべていろんな条件の日本の状態を網羅しているかというと、やや疑問はありますけれども、できるだけいろんな多様な地域をとっているということです。
 特に氷見とか津市とか宮古市は、スクールバスを走らせているところで、比較的通学距離が長くなるようなところを選んでおります。通学距離が長くならないと、どうしても通学負担との関係というのは明らかになってきませんので、幅広く学区の大きいところを選んでいます。そういう面では、これから統廃合を考えるというところよりは、統廃合が一段落をして、かなり学区が広くなって、通学距離、時間が伸びているところが含まれている。あるいはそういう通学距離の長いところをスクールバスで補っているというところが入っているということになっています。もちろん東京などの密集地帯なんかも、また違った傾向があるのかもしれませんけれども、今回は対象にはなっておりません。
 唾液とか生理学的な指標をとりますので、同意の手続をきちんとするということで、同意書をつくりまして、保護者と本人から同意が得られたものだけを対象にするということで行っています。学年も、あまり複雑になりますので、今回は小学5年生と中学2年生ということで、学年を特定して、協力をしていただきました。
 大体9月からことしの2月にかけて、ある程度全国を歩きながら調査をしてまいりました。
 協力いただいたのが、小学校5年生が大体500名程度、中学校の2年生が500名強という程度で、男女半々という割合になっています。
 学校の協力状況は、地域によって随分違いまして、全面的に協力していただけたところと、若干都市部のようなところですと、なかなか協力が得られにくいというところもありまして、協力率の低いところもあります。大体75%、76%ぐらいの平均的な協力率になっております。
 実際にどんなことを調査をしたのかということですけれども、基本的な情報というのはまずアンケートで調査をいたしました。その中には、子供が通っている通学条件や生活や健康、体力に関する基本的な項目が含まれています。
 それから、健康指標は、自記式のアンケートの中に意識として健康に関する項目も入っておりますけれども、唾液という客観的な指標をとってみようということで、クロモグラニンとコルチゾール、それからアミラーゼという指標もとったんですけれども、唾液を採取して測定をしています。この唾液の採取も、採取して24時間以内に東京に持ち帰って分析をする。それが標準的な手続なので、あまり辺鄙なところだとか、ある分析の会社を通していますので、そういう資料がないところというのは、なかなか行きにくいという制約もありまして、限定されたというところがあります。
 唾液の採取は、登校後、大体8時半ぐらいにとっているということと、それからお昼前に、2度調査をしています。
 生理学的なストレス指標について少し説明をさせていただきます。ストレスという言葉は一般的になじみが深い言葉になって、日常的な言葉になっていると思いますけれども、おおよその生理的なメカニズムを説明いたしますと、ストレスの刺激というものがありまして、それを大脳皮質、要するに、認知というプロセスを通って脳下垂体副腎皮質系で反応が起こる場合と、自律神経を通してストレス反応が起こってくる。大まかに2つのプロセスがあると考えられています。ストレスというのは一般的に刺激があれば、よい面でも悪い面でもこういう反応が起こってくるとなっています。
 その中で、コルチゾールというのは、脳下垂体副腎皮質を通して分泌されるホルモンで、血中に放出されるものと唾液中に放出されるものがあります。唾液中に放出されるものと血中に放出されるものの相関が非常に強いというので、唾液でも大体大丈夫だろうと考えて、とっております。
 それから、クロモグラニンというのは、最近よく、新しく使われるようになった心理的なストレスに特化したようなストレスホルモンのようです。それは自律神経系を通して分泌されるような仕組みの中で唾液中にも放出されるというものです。
 コルチゾールは、一般的によく使われるんですけれども、ただ、日内変動があるということと、それから運動をしたり、身体負荷がかかってしまいますとちょっと下がってしまうという傾向があるので、通学という身体負荷がかかるものに関してはちょっとどうかなと思ってはいるんですけれども、医学領域の中では標準的に使われているので、それをとっております。それとクロモグラニンという、運動にあまり依存しないストレスホルモンを使っています。
 それから次にまいりますと、一応念のためにお話をしておきますと、ストレスというのは、すべてが悪いかのように言われておりますけれども、刺激のない生活というのもまた退屈なもので、あまりいい生活ではないと思います。そういう意味では、刺激というのは、よい意味もあり、悪い意味もあるということで、その意味づけをするというのは、本人がその現象に対してどういう意味を見出しているかということで反応の意味も違ってくるということで、単純にストレスの反応があるからよい、悪いというふうに一義的に言えるものではないということを一応お話ししておきます。
 分析の枠組みは、簡単に言いますと、通学手段と通学時間、距離、それから健康指標、その組み合わせでこれからお話ししたいと思います。健康指標はストレスの生理指標とか自覚的なストレス感や自覚症状、それからポジティブ感情というのは、抑鬱を評価する質問項目があるんですが、その中の元気であるとか、そういったポジティブな感情をとらえているものをとっております。そういったようなもので具体的に通学時間や距離によって通学手段別にどんな違いがあるのかということをお話をしていきたいと思います。
 小学5年生から中学2年生、別々に発表してまいります。通学手段は、ごらんいただけるとわかると思いますけれども、8割ぐらいが徒歩で、2割ぐらいがバス等。バス等というのは、スクールバスや自家用車、あるいはコミュニティ・バスなんかが含まれております。
 その次をめくっていただきますと、通学手段と通学距離ということで、徒歩のほうが当然通学距離が短いものが多いということですけれども、バスや自動車でも、1キロとか500メートルとか、非常に近いところでも送ってもらったり、バスに乗ったりしている子供たちもいるということです。それも学校のほうでもなかなかスクールバスに乗っちゃいけないというふうには断り切れないということがあって、近くても親の要望が強いと乗せているという現状があるようです。
 それから、通学手段と通学時間は、通学の距離ほど明確に2つが分かれていくわけではありませんけれども、10分未満というのは当然徒歩のほうが多いという形になって、バスのほうが少し長いものが割合的に多くなっているという形です。
 それから念のために、子供たちが回答していますので、距離のほうは学校に登録されている距離がありますので、ほぼ正確に評価できるんですけれども、時間のほうは、子供たちが朝出て学校に着くまで大体何分かかるかということで書いておりますので、正確さという面ではいろんな問題点が少しあるかもしれません。それを徒歩とバスという形で分けております。
 それから、次の通学18という図に移りますと、通学手段別にクロモグラニンという、心理的なストレスを評価するホルモンを手段別に見てみますと、有意ではないんですけれども、徒歩のほうがクロモグラニンの値が高くなっている。要するに心理的なストレスの曝露が高いということになる。これを単純に考えてみますと、徒歩のほうがストレスが高いというので、よくなさそうに見えるわけですけれども、果たしてそうかというのは、先ほどのよいストレス、悪いストレスというのを考えていただくと、また違った解釈があるのではないかと思います。
 それから、通学時間とクロモグラニンということで、通学時間が少し長くなってくると、徒歩もバスも若干下がってくるということですけれども、緑色の線が平均値をあらわしているものです。それほど明確に通学というものは、複雑な要素を含んでいるので、単純に時間とか距離ということだけで割り切れるものではないんですけれども、そのような傾向になっています。
 それから、通学距離で見てみますと、少しばらけてきまして、徒歩の場合には通学4キロを超えてくると、若干サンプルは少ないんですけれども、4キロから5キロのところでちょっとしたピークがあって、4キロを超えると、徒歩では少し心理的にきつくなっている。何らかの心理的なストレスを受けているということなんだろうということです。1名5キロを超えて歩いている子は非常に低いんですけれども、これは後から話しますけれども、非常に元気な子だろうと思っております。
 それから、通学手段別のコルチゾールで、もう一つの生理指標のほうは、バス、徒歩によってあまり差がございません。ひょっとすると、徒歩という運動ストレスというものが値を下げている可能性もあるのではないかと思っています。
 その次の通学時間とコルチゾールを見ていきますと、バス40分過ぎていくと、バスのほうがちょっと上がってくるということで、それほど大きな差ではありませんけれども、平均を超えて少し上がって、徒歩のほうが若干緩やかに下がっていくのに、バスでは少し長くなるとちょっと上がってくるという傾向を持っているかなというところです。
 通学距離とコルチゾールというところでも、はっきり急激に下がっていくわけではありませんけれども、徒歩のほうが緩やかに、距離が長くなるにつれて下がってくる。これはおそらく運動負担というのがストレスホルモンを少し下げているんだろうと思われます。
 それから、通学の24というスライドは、主観的な通学のストレスをどう評価するかということで、小学生もいるので、フェーススケールというのを使いまして、自分の気持ちにぴったり合った顔を選んでもらうという形で評価をしてもらおうという形にしています。左から右に1、2、3、4、5、6、7という得点を与えて、平均化をして、傾向を見てみようというところです。
 通学時間と通学のストレス感というのを見ていきますと、そんなに大きくストレス感自体は違ってはいないということです。
 その次の通学距離と通学のストレス感で、距離で見ていきますと、ややばらけてきまして、徒歩のほうは5キロを超えちゃうと、1人の子ですけれども、ストレスが高いというふうに、元気なんだけれども、あまり長いとストレスだというようなことなんだろうと思います。
 さらに自覚症状をとっています。通学というのは1日1日はスポットでの出来事ですけれども、それをずっと続けていくということは、ある程度慢性的なというか、ライフスタイルになるわけですね。長く通う子は、長く通うなりの生活スタイルをつくっていくということで、自覚症状というのは、いろんな意味がありますけれども、日常生活の送り方の中で出てくる問題だと考えていただければいいかと思います。身体的な要素もあるし、心理的な要素もあるし、あるいは生活への不満のような、さまざまな要素があらわれてくるものだと考えております。
 それを通学時間で見ていきますと、徒歩の場合には通学時間が長くなるに従って自覚症状は緩やかに多くなってくる。得点は高くなってくるということで、生理的にはそうではなくても、本人の生活だとかさまざまな面があると、多少の問題は緩やかに多くなってくるということなのかもしれない。バスのほうは、人数も少ない関係があって、波を打っていますけれども、平均をとっていくと若干緩やかに上がっているのかもしれません。通学距離と自覚症状の得点を見ていきますと、これはちょっと不思議な形になっているんですが、1.5キロから2キロのところに両方ともピークがあって、そこから緩やかにちょっと下がっていくという形になっています。そこに何らかの問題があるのか、その辺のあたりで地域的な特性がそこにあらわれているのか、そういうときの状態というものが何らか関係があるのか、ちょっとよくわかりませんけれども、こういうプロフィールを描いているということです。
 その次にまいりますと、通学時間とポジティブな感情得点ということで、ストレスというのは必ずしも悪い意味とは限らないので、では、どういう気持ちなのか。それが落ち込んで憂うつな気持ちであれば多分ネガティブなものなんだろうけれども、それで見てみますと、どちらかというと徒歩のほうがずっと高い水準を保っているということです。ですから、気持ちの上では結構元気だったり前向きだったりするということ。バスのほうは、生理的には刺激の少ない状態なんだけれども、むしろポジティブな感情からいうと、あまり起伏のないような、どちらかというと活力が下がっているような状況なのかもしれないし、刺激が乏しいということなんだろうということです。
 その次の通学距離との関係で見ていきますと、1人の子は元気だという話をしましたけれども、5キロ以上歩いている子は非常に元気になっているということで、それ以前はあまり大きな変化はないということです。
 それから、帰宅後のゆとりというのは不思議な経過を示しているんですけれども、バスの場合には通学時間が長くなると、家に帰ってゆとりが、自分の使える時間が増える、自由時間が増えるということで言っています。これは多分、10分以内で通っている子供と1時間バスに揺られて通っている子では生活圏が全然違っていて、帰宅後の生活の様子も全く違うのであろうと思っていますけれども。
 それから、通学距離で考えてみますと、徒歩の子は通学距離が長くなってくると、少し家でゆったり、ゆっくりしているということになっています。それは負担なのか、ほかの要因なのか、いろんな要素が入っているので一概に言えないところだろうと思います。
 小学5年生のまとめをざっと読ませていただきますと、通学制限を超える児童がもともと少なくて、長距離や長時間の通学影響について、決定的なデータをとったというふうには言えないけれども、また、子供たちが毎日そこに通っているわけですから、ある程度適応した状態である。したがって、あまり劇的な変化というものは、影響というのはとらえられないだろう。そういう中で幾つかのことを考えてみたということです。
 徒歩の児童というのは、とりあえず4キロまでは特に顕著な問題は見られないということで、4キロを過ぎた、4キロから5キロの児童というのは、クロモグラニンAのピークがあるということと、ポジティブな感情の得点が低下をしているということを考えると、この辺あたりで少しストレスがかかってくるのではないかと考えられる。この辺のデータはもう少しきちんととっていく必要があるだろうと思っています。
 バスは、逆に徒歩と比べて、有意ではないんですけれども、クロモグラニンの値が低い。心理的なストレスが低いというふうに見ることもできますけれども、人間の状態をどういうふうに考えるかということで、普通歩いたり活動的な状態を常態として考えるのであれば、バスはひょっとすると脳の活動を活性化していく刺激が乏しいということになっているのかもしれないということです。ですから、バスで長時間通うということも、著しくストレスが高くてどうのこうのということはないようですけれども、逆に活性化が起こらない。要するにぼーっとした状態で1時間バスに乗って、学校に来て、それで学習に入るという状況を考えていくと、何らかの学習に入っていくまでの工夫が必要なのかなということを指摘したいということです。
 続きまして、中学2年生の結果のほうを少し急いで説明してまいります。通学手段等はざっと見ていただければよいかと思います。通学の45の結果のほうから話をさせていただきますと、中学生の場合には、自転車が増えてきます。ある程度の距離になると自転車を使っていくということで、さらに長いとバスを使うということだろうと思います。この3つで比較をしていくということですけれども、徒歩のほうが全般的に、小学生と同じように心理的なストレスがかかっているような状況になっているということです。
 通学距離との関係を見ていきますと、1キロから4キロまで徒歩のほうが全般的にクロモグラニンの値は高くて、心理的なストレスがかかったような状態になっている。
 通学時間から見ていきますと、30分までは、手段によらずあまり差がないという状況になっているんですね。それを超えていくと、徒歩だと上がっていく。自転車は、ちょっと変動していますけれども、少し上がり気味になってくる。逆にバスは、長くなっていけばいくほど落ちていくという形で、両者が分かれていく。その辺が30分あたりぐらいにどうもなってきそうだということです。
 それから、コルチゾールは通学手段によってはあまり変化は認められていません。通学距離等を見ていきますと、あまり違いのないような状況なんだろうと思います。
 さらに見ていきますが、通学の51というところで、通学のストレス感を見ていきますと、徒歩の場合には距離が長くなるに従って緩やかに少し上がっていくということで、バスのほうはちょっと変動しているので何とも読みがたいんですけれども、自転車のほうも5キロあたりを過ぎてくると、少しストレス感が上がってくるという形で、自覚的に考えると、ひとつこの辺で子供たちの意識が変わるということ、負担が変わるということが考えられるんだろうと。
 それから、自覚症状と通学距離の関係で見ていきますと、同じように徒歩のほうは次第にゆっくりと上がっていく。自転車の場合も6キロを超えていくと上がっていくという形で、距離がある程度長くなっていくと、それぞれ少しずつ上がっていくということです。バスはあまりそういう傾向は顕著ではないということです。
 それから、その次の通学54の自覚症状、通学時間と自覚症状を見ていきますと、やはり自転車は緩やかに時間が長くなると上がっていくということです。徒歩の場合は、最後ちょっと下がってきますけれども、バスのほうも若干上がり気味の傾向にあるようです。
 それから、あと、ポジティブな感情というのを、通学の56を見ていただきますと、全般的に徒歩のほうが少し高めになっていて、活性化している。ですから、クロモグラニンの高さというのは、悪いストレスというよりは、ある程度活力みたいなものを示しているのかもしれないとちょっと考えております。
 いずれにしろ、ものすごく明確に大きな差があるというよりは、全般的にその傾向を見ていくという形でお話をさせていただきたいと思います。
 最後にまとめの話をしたいと思います。中学生のまとめですけれども、徒歩の通学はクロモグラニンAが有意に高くて、心理的ストレスと精神的な活性化の2通りの意味が考えられるということです。時間では40分以上がクロモグラニンAが高くて、心理的なストレスが大きくなる可能性がある。またポジティブな感情得点が他と比べれば全般的に高めであり、自覚症状が低いことと考えてみれば、どちらかといえばストレスが高まっているというよりは、ある程度精神的に活性化しているという意味合いのほうが強いのではないかなと考えています。ただ、4キロ以内のサンプルしか得られていないので、長い時間歩くとどうなるのかということはわからないということです。でも、現実的には、中学生は、おそらく時間が長くなれば自転車に移るんだろうということです。
 自転車通学では、今回調べた範囲の通学距離では、生理学指標はほぼ安定をしていた。通学のストレス感は、6キロ以上になるとストレスを感じている生徒が増えていって、自覚症状も少し高くなっているので、その辺から限度というか、設定できるとすると、その辺に何か1つの目安が設定できるかもしれないと思っています。
 バス等の通学では、サンプルが少ないためになかなか傾向を読みにくいということです。ですけれども、その中で幾つか指摘をするとすれば、クロモグラニンAが低くなっているので、生理的にはストレスがかかっているとは言えないんだけれども、ほかの意味合いで考えていくと、むしろ心理的な刺激の乏しさによる精神的な活動の低下ということが懸念されるということで、バスで40分、1時間寝ているというか、ぼーっとして過ごしてくるというのが、朝の状況として果たしていいのかどうかということは少し検討しなければいけないだろう。それは、それで健康問題が起こるというよりは、また別の学習に関する、つなげていくような課題なのかもしれない。
 それで、最後にですけれども、とりあえず今回の研究というのは、これだけ生理学的なデータを通学との関係で見たものというのは実際にはないものだと思います。幾つかの地域的なバランス等、限界はありますけれども、こういうことを参考にして、子供たちの通学条件や通学の負担と健康について配慮しながら通学距離、通学範囲を決めていただければいいかなと思っています。長くなりましたが。

【小川主査】
 ありがとうございました。大変興味深いいろいろなデータが報告されたと思いますけれども、残り20分程度しかございませんけれども、今の発表についてのご質問とかご意見があれば、自由にお出しいただければと思います。

【松川委員】
 経験的には感じていたことを生理学的なデータで示していただいて、大変興味深く聞かせていただきました。私のところ、岐阜県ですが、昭和の最後のあたりが児童数ピークでして、そのころは学校の統合ではなくて分離も進みました。その後、人口は減少の一途をたどっておりまして、平成9年からずっと引き続き学校の統廃合が行われおります。また、今後30年後の推計でも、小学生、中学生とも今の出生率でいけば半減するだろうということが予測されております。統廃合してよくなった点と、それから依然として残る課題というのが、統合した後の学校の調査でいろいろ出てきていますけれども、課題として特に挙げられていることは、通学の問題です。今先生のご発表があったように、通学時間、通学距離が非常に伸びたということなんですね。特に岐阜県の北部のほうの高山市とか飛弾市とか白川村というあたりは、もともとが通学距離が長いわけですが、今年度統合したところですと、片道30キロぐらいになるわけです。当然バスで行きますが、バスもかなり長時間乗るわけです。それから豪雪地帯ですので、先生も最後にご指摘になっていますけれども、冬場は、かなり安全面というのが、徒歩の子供についても、バスに乗っている子供についても大きな課題になっている。したがって、学校でも放課後の教育活動が行われなくて、さっさと帰るということになっていて、その辺のことが非常に問題です。
 それから、次回、このようなご研究をされるときは、ぜひまたデータをとっていただきたいと思うんですけれども、最終的に徒歩でも同じですけど、1人になるところがあるわけですよね。複数で帰っていくときと最終的に自分のうちまでの間というのは、どのくらいの距離、どういうところを1人で歩くのかということが、今、郡部でも大変安全上の問題から大きな課題になっていて、そういう意味で、単に距離とか通学時間が長いということ以外に、安全面でのストレスというものも課題になっているわけです。
 その他、先生のデータにもありますように、中学生ぐらいですと、かなりの時間を徒歩で通ってくるというのは、これまで、体力づくりの面である意味では成果を上げていたところもあるわけですけれども、ある時点で統合されて、片道1時間ぐらいバスで行くという生活に変わっていったときに、かなりライフスタイルが変わるわけで、そのことの影響というのはかなりあるのではないかということを感じております。今日示していただいたデータは大変興味深いですし、統合して通う距離が非常に長くなったときに、教育の機会均等をどういうふうに考えるか。もちろん統合のメリットも多々言われているんですが、課題として挙げられているかなり大きな点、これは市町村にとりましてもバスをかなり出さなくてはいけない。1台ではなくて、あちこちに複数出して、運転手も確保しなければならないということがかなり課題になっているということがありますので、一言コメントさせていただきました。

【小川主査】
 ありがとうございました。朝倉先生、今のコメントに何かご意見があれば。

【朝倉東京学芸大学教授】
 どうもありがとうございました。ご指摘のとおりです。今回は示していませんけれども、一応どういう通学路を歩いているのかということは調査をしています。1人で歩いていてとか、不審者だとか、暗い道で不安だとかという回答はかなりあります。ただ、今回、距離とかとの関係でデータをお示ししたので、具体的にそういう子供が何%いるとか、どこにどのくらいという詳しい集計は出していませんけれども、全体の報告書の中には、簡単な、どのぐらいの子供が不安を抱えながら通っているということは示してあります。
 それから、そういうネガティブな面ももちろんあるんですけれども、子供たちの中で、歩くことによって周りの人にいろいろあいさつをするという、すごくそういうポジティブな回答も8割ぐらいありまして、通学の複雑さみたいなものがあって、単純にいい悪いが言いにくいというところもあるんだなということ感じました。

【小川主査】
 ありがとうございました。じゃあ、山重委員、どうぞ。

【山重委員】
 ご報告ありがとうございました。大変興味深いデータ、あるいは検証のされ方をしていて、大変おもしろく思いました。ただ、これは非常に重要なデータだと思うんですけれども、私の直感的な印象、つまり統計学的に見ての印象は、基本的にはあまり距離とか時間ではストレスに差が生まれるとは言えないという結果だと思っているんですね。波があって、若干差はあるんですけれども、平均の周りに比較的ランダムに分布しているような印象がありますので、むしろこの結果は、通学時間あるいは通学距離と子供の生理的なストレスにはほぼ差がないという結果というふうに、私は統計学的に言えば読めるのではないかと思っています。
 ただ、その中で1点だけおもしろいと思ったのが、通学時間と自覚症状の得点のところで、通学の28と通学の52というのが、小学生と中学生の研究だと思うんですけれども、ここでは統計学的に見ても、比較的トレンドを持った形で、通学時間が長くなると、自覚症状が増えていくという関係が見られます。これはストレスを累積的なものとして見たときに、直感的にも納得するところがあって、統計学的に見たときも、ここでは有意な関係がありそうだなという印象を持っています。
 その意味では、通学距離よりは通学時間というものが子供たちにとっては大事なんじゃないかという印象があります。これは私たち大人もそうだと思うんですけれども、いくら遠くに勤めていても、すぐ行けるところかどうかが私たちにとってもストレス――どういう手段でというのもあるんでしょうけれども――と関係があるということですね。むしろ子供の健康、あるいは学習への集中力といった観点から言えば、距離ではなくて時間というのが大事になってくるのではないかという印象を持っています。その意味では、政策に関する議論として考えたときに、現在は法令上は適正基準というのが距離で示されているわけですけれども、むしろ方向としては、統計的に言えば、距離ではなくて時間、何分以内で行けるかというような時間による基準を法令上定めていくことが適正ではないかと思った次第です。
 ちょっと誤った判断があるような気がしますので、このような理解に関してコメントいただければと思います。
 それともう1点だけ。大変恐縮ですけれども、クロモグラニンAの解釈のところ、ちょっとわからなくなってしまいました。まとめのところでもおっしゃっていましたけれども、バスによる通学というのをやっている子は、クロモグラニンAというのが低いという結果がある。必ずしも統計的に有意とは言えないけれども、傾向としては低いということで、私はこれはいい結果ではないかと思うんですね。つまり、ストレスが低いという数値が出ているわけですから、バス通学というのはいいんじゃないかというような印象を持つんです。ただ、解釈をされるときに、いや、そうでもないんだ、脳の働きが活性化されてないんだという解釈もあり得るということをおっしゃられていたのですが、データだけ見ると、ストレスがなくていいということだと思うので、科学的にデータから脳が活性化しないのでバス通学はよくないということが言えるのかどうかについても教えていただければと思っています。すいません。長くなってしまいました。

【小川主査】
 朝倉先生、よろしいですか。何点かありますけれども、よろしくお願いします。

【朝倉東京学芸大学教授】
 答えられる範囲で答えたいと思います。確かに統計学的には非常にばらつきが大きいので、検定の方法もちょっと難しいので、厳密に言えば統計的にどれだけという話ではまとめられないものなので、プロフィールを読んでいくという形で読ませていただきました。幾つかは統計学的に有意なものもあるんですけれども、その有意差というのはずっと上がっているとかという単純なものでなくて、変動しているところに有意な関係が出たりしているので、一義的にはなかなか読みにくいなというので、ご指摘のとおりだと思います。その中でも幾つか、確かに自覚症状のようなものというのは、どんな研究をしてみてもわりとうまく合うんですね。そういう面では、自覚症状なんかで上昇傾向にあるというデータは、1つは重要な点なのかなということで、ご指摘のとおりだと思います。
 それから、クロモグラニンAの評価の仕方なんですけれども、確かに一般的には刺激があまりないほうがいいと。確かにそういうことで、問題があると言い切れるわけではないんですけれども、過ごし方のデータを見てみますと、徒歩とバス通学で明らかに違うのは、中で寝ているとか、ぼーっとしているという子が半分ぐらいいるんですね。徒歩だとぼーっとはあまりできないので、非常に少ないんですけれども、そういう面で、中で漫画を読んでいたり、ぼーっとしていたり、音楽を聞いていたりという形で過ごして、40分ぐらいいると、人間、半分寝ている、半覚醒ぐらいの状態ですから、そういうような状態に近いのではないかと、ほかのデータから考えて解釈をしていったということです。
 それをあえて指摘したのは、氷見等で学校の先生がそれをすごく心配されていて、体力が低下しているということと同時に、そういうふうに長くぼっーとして来てほんとうにいいだろうかという疑問をお持ちになっていた。その辺の経験と比較的うまく合っているのかなということなんですね。バスをこれから使ってはいけないということではないので、ストレスが少ないということでは、ある程度60分ぐらい乗っていける範囲の中では大丈夫なんでしょうけれども、学習に入っていくということを考えていったときに、何らか少し活性、頭というか、活動をそこの中に入れて、それで学習に入っていくというほうがいいのいかな。そんなところを提言していただければいいかなと思っています。氷見の学校では、そのために学校に来て1周ぐらいグラウンドを走るとか、そんなようなことを取り入れながら、体力づくりも含めてやっているようなので、そういうところで、現場の先生も随分気づいていらっしゃることなのかなと思います。

【小川主査】
 あと、通学にかかわって、距離よりもむしろ時間のほうが重要ではというご質問があったんですけれども。

【朝倉東京学芸大学教授】
 それは何ともなかなか言いがたいところですけれども、自転車だとかいろんな乗り物になってきますと、距離は違っていても、結局時間で集約してある範囲内におさまっていくので、時間のほうはばらつきが少なくて、傾向が見やすいというところで、データ的にはそういう形になっているんだろうと思いますけれども、徒歩だとか手段別に考えていくということも必要かなと。そういう面では、徒歩だとどのぐらいとか、幾つか時間と距離とを併用したような形で工夫できるものであれば、それらも考慮していかれたらどうかなと個人的には思っています。

【小川主査】
 ありがとうございました。残り、時間10分もないんですけれども、ご質問を希望されている方、お2人ですか。柳澤委員、大嶺委員ということで、よろしくお願いします。

【柳澤委員】
 ご報告ありがとうございました。1つ基本的なところで確認させていただきたいと思います。いろいろな数値の変化が、通学を要因として特定できるのかということです。例えば、中学生ぐらいになると、運動量の個人差はかなりあると思います。しっかり部活をやって鍛えている子とそうでない子がいます。あるいは、早寝早起き朝御飯と言われる一方で、夜遅くまでパソコンをやっているということもあります。そうした疲労感みたいなものは影響してないのか――これだけの人数ですので、影響してないということで受けとめていいのかということでございます。

【朝倉東京学芸大学教授】
 それははっきり申し上げると、通学が唯一の要因であるとは言えないということなんだろうと思います。ただ、通学が要因でなければ関係も出ないはずなので、何らか通学か、通学が何かに影響を及ぼしていきながら、ある程度の傾向が読み取れるとすると、系統的なものがあるんだろう。ですから、通学時間が長くなれば当然生活時間も圧迫しますし、睡眠だとか、いろんなスタイルも変わってきますし、そういう総合的な要因があらわれているんだろうということだと思います。それをあまり複雑にしてしまうと何が何やらわからないので、どちらかというと医学研では、要因を特定して、その関連を見ていくという形で、関連があれば、その中をさらに深くやっていくというスタイルをとっているので、今回、先ほどご指摘がありましたように、統計的にそれは全部有意かというと、そういうものではないんだろうと思いますけれども、何らか影響しながら起こっているということもあるんじゃないかなということを考えています。唯一の要因ではないと思います。

【小川主査】
 柳澤委員、よろしいですよね。

【柳澤委員】
 はい、ありがとうございました。

【小川主査】
 じゃあ、大嶺委員、どうぞ。

【大嶺委員】
 ありがとうございました。一番最後のところの「最後に」の丸の2つ目なんですけれども、地域的なバランスなど、可能な限り配慮なさっての処理ということですが、どういったようなバランスなのかということと、それがまずすべて一括されてしまっている。一括統計処理ですよね。その辺のところはどのように配慮されているのかなというのが1点です。
 それから、これは日本での研究ですからあれですけれども、スクールバスという言葉自体が外国から入ってきているわけですよね。ほかの国に行ってみてですけれども、結構スクールバスで通っているところはたくさんあるじゃないですか。その辺のところなんかはどんなふうにお考えなさいますか。

【朝倉東京学芸大学教授】
 最後のほうからお答えさせていただきますが、今、スクールバス、確かにアメリカなんかもスクールバスを使っているんですけれども、それは全く違う理由なんですね。1つは安全という面で、歩いてくるといろんな犯罪に遭うということで、多少距離とか関係なくてもスクールバスを使うということと、それから、アメリカの知人に聞いたのでは、黒人の住んでいる地域と白人の住んでいる地域、人種的に差があって、それらを別々、白人の学校、黒人の学校にしないために、変な話ですけれども、黒人の人が白人の学校の地域に、遠くの学校に通って、割合を同じくするためにスクールバスを使ったりということをしているということで、日本のように単純に距離が通えないからスクールバスを使っているということとは違った、もっと複雑な事情があってスクールバスを使っているので、日本の状況とアメリカとうまく比較はできませんよということを一つ言われました。
 それでもなおアメリカの公衆衛生なかんで話題になっているのは、子供が歩かなくなって健康にすごく影響が起きている。特に身体的な健康度が下がってきているということで、安全な通学路をつくって、日本の集団登校みたいなのがありますよね。そういうのを、ウォーキングバスというんですか、そういう集団登校みたいなものをむしろ進めていて、歩かせようというような動きがあるというのを幾つか報告されています。ですから、アメリカもバスだけではいけない。肥満の問題、すごく大きいですから、そういったものと兼ねあわせて、運動する機会を生活の中で少しずつでも見つけていくとなると、通学の歩くということは、非常に貴重な運動機会になると考えているようです。
 それから、地域的なバランスというのは、非常に痛いところなんですけれども、何とか配慮をしようということでしている。ある程度都市部分で、北九州のような集中しているところとか、あるいは山間部のようなところで、三重県の津市の、大分市町村の合併をしているので、かなり山奥側があるんですけれども、山奥のあたりだとか、宮古だとかというところで過疎地域のようなところをとってみたりとか、それから、日本海側と太平洋側とか、瀬戸内海、中国、四国でどこかというような形で、一応配慮は少ししているんですけれども、現実的に考えますと、まず協力をしていただくというところが一番第一だったので、いろいろ打診をして、協力をしていただけたところというのが現実的なところになっているかなと思います。
 実際には、先ほどご指摘あった岐阜の高山のあたりだとか、長野であるとか、北海道であるとか、幾つか予定はしていたんですけれども、プロジェクトが年度で打ち切りになってしまいましたので、2年計画で最初は考えていたんですが、1年間分だけしかできなかったというところで、それ以外の特徴のあるところは実際には調査には行けなかったという事情です。ですから、理想的に配慮されているかというふうになると、やはりまたいろんなところはあるのかもしれないということです。それを一緒くたにしているというのは、これだけのデータを集めても、通学という条件がそれほど劇的な、すごく大きなストレスではないのでは、サンプルが小さくなってしまうと、ばらつきが大きくなったりして、傾向が見にくくなるというところで、まず集団として少しまとめているということです。実際には地域差とか、いろんな条件によって少し違いがあるのかもしれませんけれども、そこまで検討できるサンプルサイズではないということなんじゃないかなと思います。

【小川主査】
 大嶺委員、よろしいですよね。
 じゃあ、時間がないんですけれども、どうしてもお聞きしたいという方がいらっしゃれば。じゃあ、角田委員、どうぞ。

【角田副主査】
 すいません。時間がないところで。こういうデータが出て、後で例えば通学時間だとか距離だとかということはあまり子供たちにストレスにはならないなんていうふうなことに使われてしまうとやっぱりいかがなものだろうかと思うものですから、2つ質問をさせてください。1つは、調査方法についての質問なんですが、調査期間が9月から2月と書かれているわけですけれども、これは9月から2月までずっと通して調査をされたということなのか。あるいはある時期、9月に調査したところもあれば、2月に調査したところもあるよと。こういうことでよろしいですか。

【朝倉東京学芸大学教授】
 はい。

【角田副主査】
 そうすると、季節による変化というのが考察のところに書かれてあるわけですけれども、この辺によっても随分子供によっては状況は違うだろうと。特に遠隔地の場合に、分校が今あるかないか。大分なくなってきていますけれども、やっぱり分校の必要性みたいなものというのか、もう少し経年の変化を追うことによって必要性というのは認識される可能性もあるのかなと思います。それが1つです。
 もう一つは、附属小学校で予備調査をされたとお話をされました。私も実は都心の学校にずっと勤めていたんですが、遠距離で通っている、電車で何回か乗りかえをするという子供の場合には、かなりストレスを感じているというケースがあるんですね。これは途中での危険の問題だとか、あるいは乗客からランドセルが邪魔っけだからとけっ飛ばされたとか、そういうふうなことがあるんですが、附属小学校の場合の予備調査のときと、それから、こういう山間部、地域の、そういったところでの調査との相関だとか、あるいは違いだとか、その辺がわかったらば教えていただけるとありがたいなと思いました。

【小川主査】
 じゃあ、よろしいでしょうか。お願いします。

【朝倉東京学芸大学教授】
 附属小学校の調査の件からお話ししますと、附属小学校の場合は非常に少人数で、実際に検査がうまくいくかどうかといったようなことを主に検討いたしましたので、サンプルとして小学生10名、中学生10名ぐらいのところで、その10名のうち、近い子、中ぐらい、遠いというふうに二、三名ずつぐらい分けていますので、実際にそこの中から傾向を読み取って、これと比較してというのは非常に困難な状況です。確かに不思議なことに、遠いからストレスが高い子もいるんですけれども、近いのでストレスが高い子が結構いるんですね。多分起きるのが間際になって慌てて学校に来るというタイプの、ほんとうに学校から二、三分ぐらいしか離れてない子が息せき切って来て、ストレスが高かったりというような形があるので、そういうので、非常に少数でやってしまうとなかなかわからないところがあります。でも、全般的な傾向としては、そういうのは集団の中でも今回もあらわれていて、近いからストレスが低いかというと、必ずしもそうではなくて、近い子は近い子の別の要因の問題を持っているようです。
 それから、調査の時期ですけれども、ご指摘のとおり、それぞれの地域で二、三日あたりかかりますので、行って、そこで調査をしてという形で、転々とやっていって、9月に始めて2月に終わりというような形になっています。
 2月に調査をしたところは、あまり条件が悪くなって雪が積もると私たちも行けなくなってしまうものですから、実際には福岡とか香川とか、雪が少なくて比較的温暖なところで調査をしています。11月に宮古で調査をしてときに雪が降ったぐらいで、あまり厳しい条件のときに調査をしたということではありません。そういう厳しい条件になってみますと、先ほど話しましたように、唾液を調査校から、宮古でしたら宮古から盛岡まで運んで、盛岡の宅急便に乗せて東京まで送って、分析を1日完成するということなので、そこが通れなくなってしまうと、データが全部だめになってしまうのでということで、実現できないところがありました。そういうことに関しては、氷見とか、そういう厳しい条件のところは、冬は全く違いますよと。もちろん歩いている子も、自動車の送り迎えになるし、自転車もそうだしというような形で、全く違うということは指摘されたので、そういう面では、長い目で見ていかないとわからないことが多いというのは、確かにご指摘のとおりだと思います。

【小川主査】
 よろしいですか。

【角田副主査】
 はい、ありがとうございました。

【小川主査】
 時間がないんですけれども、最後1点だけ確認ですけれども、体力の問題と通学の形態の相関関係を見る場合、小学校低学年のほうにすごく影響が出てくるのかなと思うんですけれども、今回小学校低学年を調査対象から外したというのは、何かお考えがあったんでしょうか。

【朝倉東京学芸大学教授】
 1つは、アンケートに答えていただかなければいけないので、アンケートの量がちょっとありますので、低学年には少し無理かなということでした。それから、唾液を収集したりするのに、小さい子だと、綿棒みたいなのを入れるんですけれども、口が小さいと入らなかったりするとか、方法がうまくインストラクションできないとかというようなこともあって、ある程度学年が高くて安定してデータがとれるところでまず無難にやってみようというところです。実際には5年生ですから、小学校というふうに考えていったときに、1年生はどうなのか、2年生はどうなのかというのは、また再び考えていただかなければいけない。これをそのままどこまで適用できるかというのは、やっぱり留意していただかなければいけないかなと思います。

【小川主査】
 ありがとうございました。時間がちょっとオーバーしましたけれども、これでお2人のご報告を終わりたいと思います。ほんとうにきょうはありがとうございました。
 次回以降も、自治体や有識者からのヒアリングを継続したいと思うんですけれども、次回は、学校の適正配置の計画作成を実際取り組まれてきた幾つかの自治体からのヒアリングを行いたいと思っております。よろしくお願いいたします。その点で、次回の会議の予定等、次回以降の開催日程について事務局のほうからご説明をお願いいたしたいと思います。

【淵上教育制度改革室長】
 資料4をごらんいただけたらと存じます。今後の開催予定でございます。7月29日に午前と午後と両方のセッションを予定しておりますけれども、これはそれぞれ、幾つかの自治体からの発表をお願いしたいと思っております。大都市圏の地域の状況、あるいは地方都市の状況、あるいは過疎地の状況、また、そういった複合的な要因を持っているような非常に大きな都市の状況、そういったものを幾つか発表をお願いして、ご審議を深めていただきたいと考えております。
 それから、8月5日、8月21日、それぞれ予定をさせていただいておりまして、学校選択制の課題といったようなことにつきましても、有識者の方々のご意見の発表などを含めまして、ご審議を深めていただきたいと考えております。
 以上が現時点の開催予定でございます。以上でございます。

【小川主査】
 ありがとうございました。では、これで今日の会議を終わりたいと思います。

― 了 ―

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