教員養成部会 専門職大学院ワーキンググループ(第3回) 配付資料

1.日時

平成17年4月21日(木曜日) 13時~16時

2.場所

東京會館 11階 エメラルドルーム

3.議題

  1. 教員養成における専門職大学院の在り方について
  2. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

 横須賀主査、小原副主査、岩田委員、上野委員、小関委員、古賀委員、佐々木委員、鈴木委員、野原委員、長谷川委員、畑井委員、平出委員

文部科学省

 徳永高等教育局担当審議官、板東大臣官房審議官、大西政策評価審議官、杉野専門教育課長、戸渡教職員課長、勝野初等中等教育局視学官 他

5.議事概要

(1)教員養成における専門職大学院の在り方について

 事務局からの配付資料の説明の後、自由討議が行われた。
 主な発言の概要は以下のとおり。(○:委員、△:事務局)

委員
 一般の専門職大学院以外は現在のところ法科大学院だけだとすると、今検討している教職の専門職大学院は、形式的には一般の専門職大学院とは区別されるという整理でいいのか。

事務局
 今ある一般の専門職大学院の基準に照らして特例的な扱いにする必要があるのかを整理していけば、おのずと一般の専門職大学院と違う整理をすることになるのではないか。それが法科大学院と同程度になるのか、一般の専門職大学院をベースに部分的に修正されるのか、その点を議論いただきたい。

委員
 一般の専門職大学院と教職に関する専門職学院との実質的な違いが十分理解できないところがある。この部分が違いになるということを具体的に説明できれば議論が進むのではないか。

事務局
 専門職大学院の目的や教員養成制度の中での位置付けと関連するが、あえていえば、入学資格を限定するかどうか、一定の要件を定めるのかどうかは議論の必要がある。特に教育課程については、一般の専門職大学院は当該分野の学会や関係者の議論により設けられているにすぎないが、法科大学院の場合は文科省告示で定められている。教員養成の中で専門職大学院を活用する場合の違いはこの点であり、どのような科目を設定し、共通の用件としてどう設定していくのかが基本的な問題である。
 また、専門職大学院における実務家教員はどのような扱いとするのか、専門職大学院を活用し理論と実践の架橋を目指す上で議論をいただきたい。

事務局
 また、修了要件について、設置基準上制限を課さないこととすると、一般規定により30単位以上との規定のみになるが、専門職大学院のカリキュラムをある程度目安を示すとすれば、それに伴って、どの程度の総単位数を念頭に置くのか、また、その場合、例えば実習部分を重視するとして終了要件的に入れるのかどうかを検討すると、場合によっては一般の専門職大学院の規定の枠組みからはみ出ることもあり得るかもしれない。
 関係機関との連携について、教員養成学部を設けるには設置基準上附属学校を置くこととしているが、教職に関する専門職大学院を設置する場合はそれに相当するものや地域の学校との連携等に関する規定が必要かどうかを検討する必要がある。

委員
 教育委員会との連携も大事だが、競争原理がある程度働くような仕掛けが必要ではないか。地域の教員研修センターとの連携も大事であるが、他方その地域の大学はそこに行かなければならないということでは、ある程度の護送船団的になってしまうのではないか。

委員
 実務家教員について、マネジメントやコミュニケーション能力、人間力に優れた様々な人たちがいると思うが、このような大学の専任教員でない、外部からの適任者、校長経験者や経営者なども入れることが重要だと思う。

委員
 履修形態の弾力化は重要な視点である。夜間や土曜の開講、また、現職の教員が自分のポケットマネーでもいけるようなものにすべき。その場合場所の配慮が重要。

事務局
 センターは現職教員の再教育の研修を行っているので、連携をとればよりよいのではないかということを念頭に書いたものである。実務家教員について、例えばカウンセリングに関する内容に対しての医師のように、多様な分野からの参画などのようにいろいろな工夫ができるのではないかと考えている。

委員
 国大協特別委員会でも教員養成の専門職大学院を議論しており、どういった人物像をイメージすべきが話題となった。そこでは既存の大学・学部で養成するのが難しいタイプの教員として、ファシリテーター、カリキュラムマネージャー、ケアワーカーという3つのイメージを中心として議論をして、軌道に乗りつつある。
 ファシリテイターとは、それぞれの子どもの実態を見据えながら適切なサポートができる人を意味する。何年生の何はこれ何年生はこれといったようにパッケージ的なものを教えればいいという在り方と今の教育はずいぶん変わってきている中で、教員は関心、意欲、態度をそれぞれの子に即して見ていく必要が出てくる。その学びをうまく構成し、リードできる教員は、学部段階でも養成され得るが、もう少し別のプログラムが必要なのではないかと考えている。
 マネージャーとは、細かく分けると2通りある。1つは組織マネジメントを担う人材、これは小・中・高校の管理者ということになるかもしれないが、学校の組織を切り回す人材である。現在、校長に求められるものは、教えることのリーダーシップとは限らない。学校支援ボランティアやTAなど、いろいろな労働力が入っている中での多様な労働力の切り回しなどは、できる校長もいるができない校長もいる。例えば、教員組織の内部の人間ではなく、外から危機管理等の専門家を呼んで来て、組織管理の実務についてトレーニングするという発想もあり得る。こうして養成されるのが組織マネージャーということになる。
 もう一方のカリキュラムマネージャーとは、スタッフの状況と、児童生徒の状況とを見極めながら、各学校の裁量幅の中で教育を具体的に作っていくリーダーである。カリキュラムを研究することとは別で、実際のカリキュラムを、生徒とスタッフとの関係の中で、あるいは地域との関係の中で作っていく。それを行うのがカリキュラムマネージャーである。
 ケアワーカーとは、様々な発達の「つまずき」を抱えている児童生徒に関して、個別に手当てをする者である。これは、生活面の問題もあるし、また教科指導面の問題もあり得る。従前の学部で養成される教員は、例えば理学部数学科を出ると数学のエキスパートかもしれないが、逆に数学の学習で「つまずき」を抱える子どものケアには難があるケースもある。そうした学びのプロセスでの「つまずき」をケアするなど、教科指導における側面もあり得る。

委員
 教育の問題が、社会的な問題であるのか、教育の問題であるのかが混在している面がある。地域のクレームが直接先生に行くようなことがあると、先生もいじけて何もできなくなってしまう。そういうものを一旦大学の相談室なるものが受けて、そこが教育委員会等に回すメカニズムがあっていいのではという議論がある。

委員
 地域や保護者のクレームの問題をどう処理するかについて、個々の担任や学校のレベルで対応するという問題は、これは危機管理として捉えられるのではないか。そうなると組織マネジメントの仕事の一つの形になるのではないか。そのあたりの教育プログラムを専門職大学院の枠の中で設けられてもいいのではないか。

委員
 一般の専門職大学院と教員養成に関する大学院がどう違うのか、まだ理解できない。違う前提がもう少し明確ではないといけないのではないか。

委員
 どういった人たちが対象となり得るのかについて、ストレートマスターにはかなり心配な要素がある。仮に教員免許状を取得していたとして、そのまま専門職大学院に入学できるのであれば、今までの教員養成学部にある教育研究科とあまり違わない。教職大学院が新たに課程認定を受けることになれば、その基準を高くしておかないと特別なものという感じは出てこない。

委員
 現実の学校はもっと地域との様々な幅広い連携協力、共同プログラムをたくさんやっている。生涯学習の一環という考え方があって、対症療法ではない前向きな関係、地域連携が行われていて効果を発揮している。こうした担当はマネジメントではなく、先程のケア的な要素が入ってくる。クリエイティブな教育活動のよさは、教職大学院の中の大きな柱になるのではと思う。これまでは学校はとかく中に閉じ込めておくということもあったが、時代がずいぶん変わっているということを考えれば、活動危機管理ではない地域との関わり方が内容として大きな位置付けであってもよいのではないか。

委員
 一般の専門職大学院との違いを強調するとすれば、出口の議論も重要である。学位を取得してその後どうなるかというその見通しについての議論が必要ではないか。教育委員会や学校サイドでは、今の学生が4年間学部で教職課程を取ったとしても、一人前とは到底思えないような実態がある。実質的に何年かしないと正規採用されないという実態がある中で、むしろこれからハードルが低くなっていく心配がある。そうなればなおさら学部4年でしっかりやってもらわなければ。そうした中で学部4年から専門職大学院に行き、それで出口でスペシャルポジションにつながるような処遇ができるかという、そこに一般の専門職大学院なのか特別な大学院なのかを議論する相当な部分があると思う。

委員
 教員の場合、学位を取得したからすぐ子どもと対応していい教育者になれるかといったときに大変難しいものがある。人間性だとか、子どもが好きでなくては。そういうところで卒業後の処遇をどうしたらいいのかの難しさがある。教科の専門性をさらに高めるのは一般大学院でもできるのではないか。
 家庭環境などが様々で、マニュアルがない状態の中で、学校内が協同体制をとりながら対応をしているが、特に障害児教育は専門でない教科出身の教員は対応が難しい。障害に応じた指導ができる能力も必要である。また家庭が壊れている子どもがいると、迎えにいったり電話連絡したり奔走しなければならない。そういうときにも様々な子どもに対応できるような能力を身に付けるのも、教員を経験してから入る大学院の価値があると思う。多様に入れるような形態は理想的だが、学校現場もじっくりと教材研究をする時間を取れなく、また会議をしたり、子どもの研究をしているわけで、時間がなくなっており、それで6時から大学院にいくようなことがあっても、校長が許すかどうか。しわ寄せの問題もあり、そのあたりの体制のところも議論となると思う。

委員
 既存の大学院に対する実践性の欠如は指摘されてきているが、法科大学院と同じとするのは事情が違う。法学部は実践性はあまりないが、教育学部は批判はあるが実践性が問われる学部であり、法学部の場合とは違うのではないか。

委員
 教員採用の年齢がだんだん上がってきているが、その中に専修免許状を優遇する実態はない。それはやはり既存の大学院の教育内容が非常にまずいのではないかと思う。専門職大学院を活用していくには、質的に異なる仕組み、スタッフでやっていくものなので、教育課程を編成する際に、様々な課題を踏まえ、場合によっては教育委員会サイドの意向も十分踏まえ、既存のものとは違うのだというものになれば、教育委員会サイドも専門職大学院に期待するだろう。ストレートマスターについても、従来型の大学院に行って研究指向の強いところを出た者ではなく、実務的な今日的なことも踏まえて2年間力を付けて出たヤングリーダーとしての機能を果たす人材を期待しているのではないかと思う。

委員
 通常の専門職大学院は2年以上在籍で30単位、法科大学院は3年以上在籍で93単位で1年間で30単位となっている。片方は2年間で30単位、一方は1年間で30単位となっている。同じ1単位のはずなのに計算の仕方が違うのか。学部の場合の1単位と大学院の場合の1単位の違いは明確にされているのか。教育学部で4年間で160単位で小・中・高3種類の免許状を取っている者がいる。設置基準では最低124単位といっているのに160単位修得している。通常の設置基準どおりやっている学部生よりも30数単位多いから単位数上は一般の大学院修士課程を修了した者と同じになる。1単位の定義はどうなっているのか。それにより一般の法科大学院のような特種な専門職大学院との区別がつけられるのではないかと思う。

事務局
 単位については学部と大学院で計算方法が違うわけではない。修士課程であれば30単位プラス論文作成といったワークが入って2年間の勉強をするとなっており、専門職大学院は30単位以上の修得その他の教育課程を修了するとなっている。通常の修士課程では修士論文作成をやることから2年間ということになっている。法科大学院は、3年間以上在籍し93単位以上となっており、単位の修得をもって3年分の勉強が終わるのだとなっているため、その違いが数の違いとなって表れている。

委員
 専門職大学院が定着した場合に、ここを修了したらここが違うということをはっきりしないといけない。今学校が求めている人材として、スクールリーダー、いわゆる学校の中で指導的・中心的な役割を担う人材を必要としている。この教職大学院を出ればスクールリーダーになれるというのがよいのではないか。ある程度お墨付き的なものがあればいい。そういう意味で、出たとき資格を与えるときの評価をしっかりとしたものとすべき。

委員
 現職教員を考えたとき、再教育としての既存の大学院があるが、それでは必ずしも応えられていないので専門職大学院の議論が出てきている。これまでの議論でファシリテイター、カリキュラムマネージャー、ケアワーカーと3つが出されていたが、現職教員が学校現場で中核的な役割を担う人材養成はあり得る。一方、新人教員については、現在の修士課程においても、かなりの程度真剣に取り組んで現在に至っており、これを専門職大学院でやるという意味では、現職教員とは違う教育内容・方法として考えていかなければならない。現職教員の教育と新人教育は何らかの区分けが必要ではないか。それを前提とするならば、一般の専門職大学院と教職に関する専門職大学院を分ける本質的な要素はカリキュラムしかないのではないか。カリキュラムとして何を具体的に求めていくのか、そこを大学として必ず履修の義務付けを課すかどうかしか違いはないのではないか。そのことを法科大学院のような特別な専門職大学院と同等とするのかどうか、そのことにかかってくると思う。
 注意しなければいけないのはストレートマスターだが、例えば法学部は基本的には法曹養成を目的としているわけではなく、様々な分野に進む学生を念頭において教育が行われている。それに対して教育学部は教員養成を目的として教育が行われているわけで、その学部の上に大学院が構想されている。その意味における教員養成における修士課程というものは当然のことながらより実践的指導力の高い教員を養成するというという目的で構想がされてきて、そのための努力も行われている。それについて特にストレートマスターについて特別な教育課程を作り上げて専門職大学院を構想するということまで求めるのかということについては慎重であるべきであり、一般の専門職大学院の制度の中で考えることもあり得るのではないか。そこはそれぞれの大学の工夫の中で考えていくということも場合によってはあり得るかもしれない。

委員
 実践的な修士課程のカリキュラムの検討を、福井大学、香川大学、宮城教育大学の3大学で行った。3大学少しずつスタンスの違いはあるが、その中では、今までのような教育現場と連携してというのではもう足りないのではないか、そうではなく学校現場そのものの中に大学院を作るということを考えないといけないのではないかと考えた。教員養成に関する専門職大学院ができるとすれば、地域の教育委員会との連携というより一緒に作る、あるいは、教育委員会が作るのを大学が援助するというものでなければ、今までと結局同じになってしまうのではないか。学校において共に研究をするほうがよいものができるのではないか。今の現職教員の大学院における教育の中で一番の難点は、なかなか来られないということであり、だからどうしても座学的なものが好きで研究論文が書きたい人が来るということである。派遣教員の場合でも同様の点が指摘されている。そうではなく、いくつかのモデルの学校に人事配置をし、そこに入っていきそこで大学と教育委員会が一緒になって研究をする。そこを終えた者が中核的な教員になっていく。当然処遇は前提として教育委員会のほうが考えているというところまでいかなくてはいけないのではないかという議論をした。

事務局
 法科大学院のようにここを出ないと教員になれないという制度を目的としているのではないため、法科大学院と同様に考えるのは難しい面はあるが、かといって、教員養成の重要性を考えた場合、一般の専門職大学院の仕組みの中で各大学ご自由にどうぞというのはいかがなものかと思う。学校現場サイドの意見を聞きながら、専門職大学院というものをある程度の中身のあるものとして作り上げていかなければいけないという議論があるとすれば、専門職大学院制度の中の大きなジャンルとして要件を整理していければと考えている。修士課程や一般の専門職大学院との相違は、今後、個別のカリキュラムの検討をはじめ中身のご議論を進めていただく中で整理をしていきたい。

委員
 個別分野についての専門職大学院の設置の適否は、どこで判断しているのか。

事務局
 通常の専門職大学院の姿は、認証評価団体に相当するような関係者と大学関係者との一致した意志があって、それに対応するモデル的なカリキュラム等が想定されて、そういったものがスタンダードとして確立された後に、それに従って審査を受けて認証を受けるのが原則である。

委員
 専門職大学院について、出口の品質保証がきちんとあってそれに対する処遇があることが前提と考えるが、今日提起されたことに一つ加えたいのは、カリキュラムが勝負とは思うが、これまでの教訓からいえば、例えば免許法に定めている科目はきちんとやってきたが、その中でどのような力が付いたかという、ある意味では内容が問われた部分があると思う。そうすると、きちんと法科大学院の例にならいながら告示で科目を設定していくというのは手厚くしながらも、もうひとつ、そこでどういう資質を付けるのかというところの議論に手を付けざるを得ないのではないか。カリキュラムの整備とともに、専門職大学院で付けるべき力を具体的に遡上に載せて議論していくということが必要だと思う。

委員
 教師ということであれば、教科の能力抜きに職場のマネジメントだけということはないわけだし、しかも説得を持ってマネジメントしようと思うのなら教員に対する実践的指導力がいるわけで、いろいろなデマンドサイドの要求というものをもう少し具体的に整理する必要がある。
 また、教育課程の要素に付随する形で、付けるべき資質能力を入れるべきではないか。現職教員とともにストレートマスターを入れるか否かについては、養成に求める資質能力の差ではっきりするのではないか。また教育方法にも入ってくると思う。従来の大学院と専門職大学院との違いは、教育方法のところだと思う。先程連携という緩やかなものではなくて、学校と共にとの意見があったが、学校に入り込んでのやり方になるだろうと思う。ただ、学校に1ヶ月とか3ヶ月いるだけで終わってしまっては付けるべき資質は保証されないわけであり、その実践に入りながらどういう分析ができるかなどもう少しつっこんでおかないといけないと思う。そこで実務家教員として求める力というのも箇条書きにするなど考えていかないといけないのではないか。

委員
 現状の教員養成の問題、例えば演習実習が不十分だとか、教職経験者による指導が少ないという問題をどう解決するかは、専門職大学院の制度化によりかなりの程度が望める。また大多数の既存の大学院も既にいろんな努力をしているが、この点を変えていくべき。

委員
 専門職大学院では、現職教員を中核教員として養成することはもちろんだが、新人教員を一緒に入れるべきではないか。クラスマネジメントも教科指導も、若い教員は専門職大学院で訓練すればよくなるのではないか。そういった人材が教職で出てくればいいのではないかと思う。

委員
 より実践的な指導力を持った教員を養成するのは大事である。現在、専修免許状では教職・教科どちらの単位又は両方を修得してもいいことになっている。そういう意味で教員の得意分野を育てるという制度としてはうまく機能するであろう。しかし、新人教育の中でより実践的な教員を育てるということになると、そういう履修の仕方でいいのかという問題があり、教科・教職それぞれについて、きちんと学ぶ必要があるのであればそれを義務付けるとするならば、専門職大学院を活用するのがよいのではないか。
 このような意味で、実践力の高い教員を養成する上で専門職大学院は十分機能すると思っており、またその必要性もあると認識している。
 次の問題は、そのような専門職大学院を構想したときに、カリキュラムとして具体的な内容をどの程度用意すべきかをきちんと明確化し、設置基準等において明確化するかどうかである。この点により、一般の専門職大学院とは別に特別な専門職大学院になるであろう。カリキュラムの明確化にあたり、ストレートマスター用の専門職大学院を考えるかどうかということについては少し議論があるかもしれない。特別な専門職大学院か一般の専門職大学院でかはおそらくストレートマスターの扱いの問題ではないか。それに対して現職教員の場合かなりの程度、どういう教員を中核的教員として考え、将来管理職や教務主事や管理主事などになり得るのか、そういう教員養成をするのかということについて、ある程度共通な特別なカリキュラムということも場合によっては考えられるのではないか。このためこの方面は、特別な専門職大学院という形で考えることもあると思う。

委員
 現行の大学院では修了要件が30単位であるが、現職教員の場合1年目に22単位でありそれに専念し、2年目に残りの8単位分を履修するが、これは相当難しい要素を持っている。主に夏休みや夜間、土曜などに取り組むことが想定されているが、現実的には相当本人の努力、学校の理解、大学院の専任教官の負担とある中で、どうしても修士論文を書くことにウェイトが置かれているきらいがある。一方でストレートマスターの学生は、2年間で30単位という緩やかなゆとりの中でやっているわけである。そういう現行の中では、ストレートマスターの学生はあまり戦力として期待できず、また現職教員の場合もメリットは少ない感じになる。修業年限について、現職教員については2年まるまるできるとすべきではないか。またあながち否定するものではないが、今のようなストレートマスターではありがたくないということで、実務経験なしの理論アカデミズムだけではどうかと思う。
 ただ、新人を全く排除してというのは考えにくい。専門職大学院では現職教員だけを対象とするということはどうかと思う。法科大学院の例も参考に、ストレートマスターについては少しハードルを上げて、教員になっていないがそれと同じような経験を踏ませることにより、修業年限を3年ということもあってよいのではないか。新人を含むことを支持したい。

委員
 教員養成の一般の専門職大学院とするのか、特例を設ける形の専門職大学院とするのかは、2つの点で違うものと考える。1つは入学資格の問題である。最低限基礎免許状を持つことが、教員養成の専門職大学院には必要ではないのか。それをストレートマスターとするか、教職経験のある者とするかは検討課題だと思う。免許更新性の議論とも関わるが、例えば更新後の教員を対象にするとか、入学資格に対して何らかの規定を設ける必要があるのではないかという点が既存の大学院とは違うのではないか。
 もう1つは履修形態の問題である。教員養成学部の附属学校のように、設置基準に実習フィールドを確保していることを盛り込むということになるのだろう。サテライトもあっていいが、学校現場は都市部だけでなく山奥にもある。そうした点から、学校現場を中心としてやるのがいいのではないか。ただ、学校ではどこでもいいというものではなく、それぞれの大学院生の抱える教育課題に応じたフィールドがあると思う。例えばある程度の大規模校の教務主任等について様々な経験を通じて学ぶこともあるであろう。

委員
 出口については、医学部に関しては以前、明治以来変わっていない医学部のカリキュラムを変えようという動きがあり、それによりコア・カリキュラムを作成し、それができたおかげで学生の評価にそれを使えるようになり、模擬患者を使って診察、教員数人が判定し、それに通らなければ臨床実習を受けさせないというようなことを多くの大学で始めたということがある。国大教は先程の3つのイメージを基に検討しているが、これを基にコア・カリキュラムができれば、それを基に学生に対して評価することができる。

委員
 次週以降で、カリキュラムの在り方と履修形態についていくつか提案して議論したい。

事務局
 最近初等中等教育サイドから問題意識としてあるのは、指導要領が新しくなる中で、各教科の内容というのは総則レベルでどんどん新しくなってきている。学校ではかなりの割合でチームティーチングや習熟度別学習が浸透しており、そういう意味では、教員養成学部では従来どおり黒板と教科書を使った一斉指導がモデルとなっているが、新しい教育形態、例えば総合学習のような新しい教育の内容に対応したものをやっていかなくてはいけない。そういうことについて学校現場では、小学校の規模が小さくなっていて、全国でおよそ6割近くの学校が1学年1学級しかなくなっており、教科主任や学年主任といったものが意味がなくなっている状況がある。その中で資料の中では地域全体における中核的な教員を強化するという位置付けを出しているが、専門職大学院における教育課程、教育方法に関する内容の在り方として、このような部分が従来の教員養成に加えてやってもらいたい部分だということを提示しながら、議論をしていただきたい。

委員
 現在の大学院では、現職教員は2年間続けて学校に通うのは難しいものがある。単に2年間を保証できたらいいものができるということだけでは、これまでと同じことになる。

委員
 現場では再教育の時間と金をどう保証するかは大事な問題である。

委員
 ストレートマスターと現職教員の相違について、教育方法についてはあまり心配しなくてもいいのではないか。例えば、学校に実習生が来たときの現職教員の意欲は変わり、学生への指導を通じて教員が育つということはたくさんある。専門職大学院でストレートマスターと現職教員が一緒に学ぶことによりいい成果が出るのではないか。

委員
 学校現場にかなり入り込むことになると一番いいのは勤務校であり、講義を受ける日数や時間は少なくてもすむ。また、大学で教育方法の授業を持っているが、現職教員とストレートマスター学生の両方いる方が学習成果が期待できる。教員養成に関する専門職大学院はオープンな形であった方がいいのではないか。学校が直面している課題がこれだけ多岐にわたってくると、今までの範疇で育った人だけではパワー不足である。その際、資質・能力、目的をクリアした人でないと卒業できないような仕組みは必要である。

委員
 現職教員を専門職大学院に派遣した場合の人材活用方法として、2年を有効に活用する意味で、複数の学校で中核的な指導を担当させ、広域的な人材活用を行うことが考えられる。その意味でも派遣期間は2年間保障してやりたいが、補充等定数を確保すればできる。人口100万人の県で100人ぐらいを派遣していてやれている。

委員
 指導主事等の養成コースについて、現在市町村合併が進み、市町村の教育行政がしっかりしてもらわないと困るので、指導主事を増やしているところであり、7割の市町村が自前で置くように進めてきている。そういった中で今後を見据えた場合、今は現職教員は仕事をしながら指導主事の勉強をしてもらっているが、専門職大学院の中のカリキュラムが設定されればそこで養成することも可能であるので、一つの枝分かれとして教育指導力と行政のエキスパートのそれぞれ養成することも可能なのではないか。

委員
 今の指導主事が管理職登用の一里塚である側面がある。これが本当の教育指導の専門家であると処遇されていくと、今のような問題につながると思う。派遣者数の減少は実際は現場が大学を信用していないからであり、大学院が信頼を取り戻すというより、一緒に作り出せれることができれば、派遣者も増えるのではないか。

委員
 教育課程について、現行の大学院のように専攻ごとに必要な科目を設定するのではなく、ある程度コア・カリキュラムを告示する形で持っていくべきと考えている。その中で、ストレートマスター向けのプログラムと現職教員向けのプログラムとをオーバーラップさせながら制度設計ができないか。

委員
 修了年限について、2年とあるが、修業年限1年ということも視野に入れて検討してもいいのではないか。修業年限が1年でも実りあると思う。送り出す側も1年ならば柔軟に対応できる。

委員
 科目等履修生の形ではどうか。これであれば3~4年間かけて長期履修することも可能となる。

委員
 30単位程度であれば、単位修得だけであれば1年でもある程度修得可能である。修士課程では修士論文等があるから2年間必要となっている。

委員
 専門職大学院を出たらひと味違うといわれる大学院を目指すために、教授陣も様々な分野から、特に教育界以外の分野からの人間も入れた方がいいのではないか。組織論でいけばマネジメントは他分野も同じだと思う。現職教員は大学院派遣から帰ってきてから変わるのが早く、教務主任や学年主任につくとか管理職をやらせてきたらなるほど違うということがあると思う。それがよりよく反映される大学院はどんどん伸びると思うし、そうでないところはもう少し教育課程を研究することとなるとよい。既存の大学院とは違ってどこが足りないから専門職大学院にこういうカリキュラムを入れたなど、人間的な面が新人教育の場合では必要だと思う。

委員
 教育の中身の問題について、在り方懇でも教員養成のコア・カリキュラムの検討が指摘され、教大協でプロジェクトを設けて検討したが具体的な中身は提示できなかった。免許種が多いなど、医師養成の場合と違った難しさがある。

お問合せ先

総合教育政策局教育人材政策課

(総合教育政策局教育人材政策課)