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2.教育目標、内容と指導方法

(1)開始学年
 前掲の「指導意見」、「基本要求」によれば、中国における小学校での英語教育の公式開始学年は第3学年である。ただし、国内各地の多様な現状をふまえ、一部の先進地域(北京市、上海市、天津市など)が小学1年から開始することも妨げないし、遠隔地域の農村・少数民族地区などで実際には第4学年、第5学年からの実施になる場合、まだ実施に手のとどかない場合も、それを容認しながら徐々に実施可能となるような措置をとることになっている。
 開始学年に関わって、2005年9月現在の英語教育の全国的な導入状況は教育部によれば、
 小学校1年生から基本的に100パーセント導入しているのが北京市、上海市、天津市の各市。
 小学校3年生から基本的に100パーセント導入しているのが、沿海部(発展地域)の諸省。
 全国31の省都(省・自治区・直轄市)では、小3から100パーセント実施。
 全国の県の県庁所在地(農村部の中心都市)では、小学校3年以上から80パーセントが実施。
 但し、かなりの農村部の小学校では条件が整わず英語教育の実施に至っていない。農村部での実施状況を把握するのは困難で、時間割に載せ報告されていてもそのとおり実施されていない状況も少なくない。
 また、中央教育科学研究所の小学校英語教育研究調査の専門家、張志遠教授によれば、非公式の推計データでは全国の約50パーセントの小学校で英語教育が導入されているということであった。

(2)授業形態及び授業時数

 「指導意見」ならびに「基本要求」によれば、授業形態は、教員と教科書中心の一斉教授と試験で知識定着をはかる伝統的な方式を改め、児童に英語学習への興味を湧かせ、英語を用いたコミュニケーションを楽しむ多彩な活動方式(ゲームや歌、ロールプレイなど)を採ることを推奨している。特に豊富な音声映像教材を使って、授業を効果的に進めることが奨励され、遠隔の農村部でもこうした視聴覚教材によって教員の人材不足、力量不足を補いつつ児童に学習への興味を持たせ、所定の学習を進めることが計画されている(教育部は、国家発展・改革委員会、財政部とともに2003年から「農村の小学校及び初級・高級中学現代遠隔教育プロジェクト」を進め、条件整備にあたっている(注1))。
 英語の学習時間に関しては、外国語学習の原則をふまえ、「1回の時間を短く、(英語に接する)頻度を高める」ことが重視され、毎週少なくとも4回以上の英語の学習活動を保証することになっている。このために、1コマ40分の授業時間を分割して、3、4年生ではショート・タイムを主とし、5、6年生ではロング・タイムとショート・タイムの組み合わせること、および正規の授業時間と課外の時間の双方を組み合わせることが推奨されている。
 課外の時間としては、朝の自習時間や放課後を利用した英語の諸活動や補習、学校行事枠を利用した大型活動(フェスティバル、コンテスト)の展開など各校の裁量で多彩かつ柔軟に行うことができることになっている。
 授業時間の確保については、従来の「言語・文学」(原語:語文。中国語のこと)の時間を1時間削ることが「指導意見」には記されている。さらに一部の先進校では、他の教科の学習を英語によるイマージョン方式で行うこと(音楽、体育、数学など)も試みられている(注2)。

(注1) 教育部「農村中小学現代遠程教育工程状況介紹」(http://www.moe.edu.cn/edoas/website18/info7671.htm)。(※農村中小学現代遠程教育工程状況介紹のホームページへリンク)、2004年12月21日。
(注2) 例えば、天津市和平区逸陽小学(2005年9月訪問)での授業参観より。

(3)指導方法

 小学校の入門段階では、「見る」「聞く」「話す」のオーラル・コミュニケーションを中心とした学習活動を展開させることになっている。このために絵やアニメーション・英語教育番組などの視覚・視聴覚教材が活用され、歌・ゲーム・踊り・会話劇などが行われることになっている。高学年では中学年での学習活動を基礎に初歩的な読み・書きも導入するが、それはあくまでも前期中等段階での学習への基礎固めのためである。
 ちなみに英語の入門段階では、標準中国語(原語:普通語)が補助的に用いられるが、徐々に中国語の使用を減らして、高学年では英語だけによる指導を行うことが理想となっている。そのためにも最低限使用されるべき教室英語(Class Room English)が、課程標準に示されている。反面、農村部などで英語を流暢に話せない教員が、英語を担当することになったとしても子どもたちが自然なオーラル・コミュニケーションを習得できるように、利用可能で質のすぐれた視聴覚教材の開発普及に力が入れられている。ここで特徴的なことは、視聴覚教材の利用が広大な国土に巨大な人口の存在する中国の状況に適合しているという考え方で、国費・公費を使って、ネイティブ教員を教室に直接配置することは、政府の責任として全く想定されていないことである(後述の「3−1.教科書、教材」、「3−2.教員、指導体制」の項目を参照)。

(4)小学校英語の教育目標
 2001年度からの新課程では、英語教育を初等教育から後期中等教育にいたる(小学校・中学校・高等学校)12年間の一貫した指導体系として組み立てている点に大きな特徴がある。
 新課程では、「資質教育」という大きな教育理念の下に英語教育が占める位置と任務が明確に記されている。「全日制義務教育 普通高級中学英語課程標準(実験稿)」(2001)(以下「課程標準」と略)によれば、初等中等教育段階の英語教育の任務は以下のとおりである(注3)。

 児童・生徒の英語学習への興味を引き出し、育て、児童・生徒が自己信頼感を確立させて、のぞましい学習習慣と有効な学習ストラテジーを身につけるようにし、自主的学習能力と協力精神を発達させるようにする。
 児童・生徒が英語についての一定の基礎知識と聞き・話し・読み・書く技能をマスターし、一定の総合的な言語運用能力を形成するようにする。
 児童・生徒の観察・記憶・思考・想像力と創造刷新の精神を育てる。
 児童・生徒が世界を理解し、中国文化と西欧文化の差異を理解し、視野を広げ、愛国主義精神を育て、健康な人生観を形成し、自分たちの生涯学習のための望ましい基礎を固めるようにする。

同課程標準によれば、英語教育の課程目標は、以下のようにさらに構造化されている(注4)。

全体の目標
  総合的な言語運用能力の育成。
  以下は、総合的な言語運用能力を構成し、支える5つの要素である。
言語技能
 聞く・話す・読む・書くの基本4技能。
言語知識
 英語という言語についての基礎知識、すなわち発音・語彙・文(語)法・功能・話題。
情感態度
 興味・動機・自信・意志・協力精神から祖国意識・国際視野にまで及ぶもの。
学習ストラテジー
 認知・自制(律)・コミュニケーション・資源利用に関するストラテジー。
文化意識
 異文化に関する知識・理解・異文化間の交流意識と能力。

 なお、以上の5つの要素の学習目標や学習の具体的な内容については、入門から高級中学卒業までの各段階を1級から8級までの等級に分けて管理している。標準的な学習の目安としては、小学校の段階が1級から2級(2級が小学校6年生卒業時のレベル)、初級中学の段階が3級から5級(5級が第9学年イコール初級中学卒業時のレベル)、高級中学の段階が6級から8級(8級が高級中学卒業時のレベル)と設定されている。(ちなみに9級までが等級として示され、9級は高級中学卒業後の、およそ大学での達成レベルに相当する。)
 以上のような、小学校・中学校・高等学校12年間の一貫した枠組みの中で、小学校英語は、入門段階として「英語に対する好奇心や興味を養い、英語学習を楽しく好ましいものであると感じることから入り、簡単な英語による遊び・動作・作業、歌やロールプレイに楽しく積極的に参加し、初歩的なコミュニケーション技能を身につけるとともに、外国の文化や生活習慣に対する興味と理解を培うこと」が目標(1、2級レベルの目標の執筆者による要約)とされる。



(注3) 中華人民共和国教育部制訂『全日制義務教育 普通高級中学 英語課程標準(実験稿)』北京師範大学出版社、2001年、1頁。
(注4) 中華人民共和国教育部制訂『全日制義務教育 普通高級中学 英語課程標準(実験稿)』北京師範大学出版社、2001年、6〜27頁。

(5)小学校英語の教育内容(語彙数、読み書き、中学校との接続を含む)
 小学校英語における、1級と2級の言語機能に関する学習内容は、報告の末尾に附した附1の資料2の「基本要求」内の表に示されたとおりである。4技能は、児童の発達段階に応じて、1級で「聞く・行う」、「話す・歌う」「演じる・遊ぶ」「読む・書く」「視聴する」、2級で「聞く」「話す」「読む」「書く」「遊ぶ・演じる・視聴する」に分けられ、具体的な到達目標が示されている。2級レベルの語彙数の総量は、日常の話題(数字、色、時間、天気、食べ物、服装、玩具、動植物、身体、個人の状況、家庭、友人、文化体育活動、祝祭日)に関する600から700単語でこれを超えないことになっている。また、2級レベルではさらに、簡単なチャンツ30〜40個を唱えることができ、英語の歌30〜40曲を歌うことができるようになるなど、リズムやメロディに乗せた無理のない記憶学習が重視されていることがわかる。
 また、読み書きについては、初等段階では副次的な位置付けになっているものの、既習の単語を読むこと(発音すること)ができ、簡単な指示文や依頼文、挨拶文を読解でき、意味のまとまりのある物語も絵などの助けを借りて理解可能であり、学習した物語や文章は正しく朗読でき、絵や実物のタイトルを書くか説明文が書け、挨拶文その他の文を正しく表記できることまでが最低限含まれる。
 なお、以上の内容は、小学校3年次から開始した場合の学習内容であるが、小学校1年生から学習を開始した場合の扱いについては、小学校卒業時の到達度を2級レベルで足踏みさせる必要はないものとされている。つまり先に進むことができる場合には、目標を繰り上げて達成してよいことになっている(注5)。
 ただし、以上のような状況により、初級中学進学時における生徒の英語学習到達度のばらつきがあり、初等英語教育と中等英語教育の接続について問題が生じている。したがって、極端な場合には中学入学時に英語を全く学習していない生徒、学習しているが2級レベルをクリアできていない生徒、4〜5級以上の実力ある生徒までが存在することになる。このため、対策として補習教材の編集開発にも教育部では力を入れているとの説明であった(注6)。なお、初級中学段階では、学習到達度別の指導が必要であることが複数の専門家から指摘されている。

(6)子どもの能力、態度の評価方法
 学習評価については、「指導意見」・「基本要求」では、課程目標に照らして、学習プロセスや学習への参加意欲・態度・コミュニケーション能力などを見る形成的評価を主とすることが強調されている。このため、試験の点数だけで評価を行わない、点数で序列をつけない、3、4年生では筆記試験を基本的に行わない。5、6年生も口頭試験と筆記試験を結合させた方法を行う。最終的な評価も100点法を用いず、段階別評価あるいは目標到達度を記述する評価を行うことになっている。
 以下は、「課程標準」において示された小学校段階の学習評価例である。

  評価事例1:小学3年〜6年次の英語「遊ぶ・演じる・見る・聞く」の評価表
項目 内容 目的 評価基準 評価方式 注意事項
遊ぶ ゲーム 児童の英語学習への興味を湧かせる
A. 積極的に参加し、よく協力でき、応用能力に富んでいる。
B. 自分から参加し、協力でき、一定の応用能力がある。
C. 参加でき、一定の協力意識がある。
グループ評価、教員による評価 1.ゲームの前に児童にルールとねらいをはっきりわからせること。
2.ゲームをするとき、教員は一定の調整・制御能力が必要で、児童の状況を注意深く観察し、その積極性を即座に動員したり引きつけたりすること。
演じる チャンツ 児童の言語感覚、リズム感を育てる。
A. 発音・イントネーションが正確で、リズム感・韻律感覚にすぐれ、熟練している。
B. 比較的発音・イントネーションが正確かつリズム感・韻律感覚にもすぐれ熟練している。
C. 基本的に発音・イントネーションが正確で、一定のリズム感・韻律感覚がある。
児童の自己評価、グループ評価、教員による評価 適時に、一部の児童には元来の韻律をもとに語彙を入れ替えてみるように促す。
  歌曲 児童の興味および美的感覚を育てる。
A. 発音・イントネーションが正確で、はっきりと発声でき、感情豊かに楽しく表現できる。
B. 比較的発音・イントネーションが正確で、感情表情がよい。
C. 基本的に発音・イントネーションが正確で、一定の感情表現ができる。
児童の自己評価、グループ評価、教員による評価 1. 児童に過度に音楽的な正確さを強調しない。
2. 児童に過度に発音・イントネーションの正確さを強調しない。
ロールプレイ 児童の言語運用能力と協働能力を育てる。
A. 言語材料を活き活きと柔軟に運用してバーチャルな設定の中で本物の交流ができ、言語は流暢で、一定の創造力と感化力がある。
B. 言語材料を適宜に運用しバーチャルな設定の中で本物の交流ができ、言語が流暢である。
C. 言語材料にもとづいて基本的な交流ができる。
児童の自己評価、グループ評価、教員による評価 1. 教員は相手に応じた客観的な評価をすることによって、各児童が成功できるように援助する。
2. 過度に児童の表現の中のことばの間違えを指摘せず、児童の自由な表現を大胆に干渉しないで認めること。
視聴する・話す 英語のアニメーショ映画、英語教育番組を視聴する 児童が特定の環境の中で言語の使用法をはっきりつかむ能力を育て、視野を広げ、学ぶ楽しさと達成感を獲得できるようにする。
A. 視聴した内容を言葉で簡単に再現できる。
B. 教員の質問に回答することができる。
C. 教員の質問についてYesNoの判断ができる。
児童の自己評価、評価、教員による評価、保護者による評価 1. 教員は生徒がのぞましい視聴習慣を身につけるような誘導に留意し、アニメーションを見るときには集中して聞くように注意する。
2. 保護者は子どもと一緒に家でテレビを見て、その場で評価をする(例えば視聴時間と真剣度についてのチェックなど)。

評価事例2:小学3〜6年の英語2級のヒアリング形成的評価
評価活動 評価方法 評価基準
聞いて書く 録音または教員・生徒が音読するのを聞いて、要求にしたがい以下のような練習題を完成させる:
1. 音を聞いて数字を書く。
2. 音を聞いて○かけるをつける。
3. 音を聞いて絵を選ぶ。
4. 音を聞いて番号をふったり順番をつける。
ほしみっつ 1〜2回聞いて、熟練し、すべての内容を正確に完成させる。
ほしふたつ 2〜3回聞いて、規定の時間内に比較的正確にすべての内容を完成させることができる。
ほしひとつ 2〜3回聞いて、内容の一部を完成させることができる。
聞いてあてる
1. 聞きながらあてる:教員は児童Aを選んで目隠しさせる。児童Bをさらに選んで英語で自分の特徴を自己紹介させる。児童Bは声を変えるなど難度を高めていく。生徒Aは聞き取った内容からBの姓名をあてる。
2. 描写をきいてなぞなぞをあてる:教員または児童が英語でなぞなぞを出し、ひとりまたはグループの児童にあてさせる。
ほしみっつ 1〜2回聞いて正解が出せる。
ほしふたつ 2〜3回聞いて正解が出せる。
ほしひとつ 3回以上聞いてヒントにもとづいて正解が出せる。
聞いて行う 聞き取った言語材料にもとづいて、要求にふさわしい反応、動作・手ぶり・表情などをする(全クラス、グループ内、同じ机の隣同士などのいずれで行ってもよい)。
ほしみっつ 聞いてただちに理解し正しい応答ができ、参加意識が強く、積極性が高い。
ほしふたつ 言語材料から自分で正確な応答ができ、参加意識が比較的強い。
ほしひとつ 3回以上聞いてヒントにもとづいて答えを出すことができる。
聞いて描く 聞き取った言語材料にもとづいて、あてはまる内容(例えば、人物、動物、植物、生活用品、路線など)を絵に描く。あるいは指定の位置に正確な色を塗る(個人、グループ内、同じ机の隣同士などのいずれで行ってもよい)。
ほしみっつ 聞き取った言語材料を正確に理解し、迅速に要求にもとづいて内容を正しい形と色で描くことができる。
ほしふたつ 聞き取った言語材料を正確に理解し、比較的よく課題を完成させることができる。
ほしひとつ まじめに言語材料を聞き、教員あるいはクラスメイトの援助のもとで課題を完成させることができる。
  注1: ヒアリングの言語材料は録音教材でも、教員または児童の話し言葉あるいは指令でもよい。
注2: 評価方法は児童の年齢特徴と個性の特徴にあったもので、多様性があり子どもを励ます内容にする。
注3: 評価方式は学生の活動の実際状況にもとづき、教員の評価、児童の自己評価、児童の相互評価などの方式を採用する。

評価事例3.ポートフォリオ〔訳注:小中共通〕
 〔ポートフォリオとは何かについての一般的な説明…省略〕
ポートフォリオでは以下の内容を含むことができる:
  (1) 新課程の開始期には、児童・生徒に返却される学業に関する基礎的文献あるいは測定結果。
(2) 児童・生徒の学習行動記録(例えば授業中の朗読、朗詠、ロールプレイなどの参加状況)。
(3) 書面作業のサンプル(通常は児童・生徒が最も満足している作品を自分で選んで入れる)。
(4) 教員と保護者の児童・生徒の学習状況についての観察にもとづくコメント。
(5) 平常のテストの、教員による評点・評語あるいは教員の指導のもとでのクラスメイトからの評点・評語または自己採点・評語。
(6) 児童・生徒自身による学習態度、方法と効果についての反省と評価。
ポートフォリオを使って形成的評価をするときには、各種のサンプルが一定量に達するように注意し、最終評価が説得力を持つようにする。通常は学期の開始期に各サンプルの数量を確定しておき、データが児童・生徒の学習が進歩する過程を反映するようにする。ポートフォリオは児童・生徒が随時閲覧できるところに置く。

評価事例4.口頭試問の操作形式、採点方法とその基準〔訳注;小中共通〕
 学期末、学年末の口頭試問では、児童・生徒の実際の口語表現能力を評価する。児童・生徒は二人一組で、教員の与える条件(文字または絵で示す)または話題について、その場でディスカションまたはコミュニケーションを行う(児童・生徒数は3人あるいは4人一組でもかまわない。ただし少なくとも2人の教員が評価に参加する)。教員は児童・生徒の口語表現、コミュニケーション能力とその有効性などの面から評価を進める。
  (1) 情報を論理的に構成できているか、表現とコミュニケーションが流暢かどうか。児童・生徒は言語表現上文法や語彙のミスによって表現の正確さをそこねたとしても、基本的な情報を有効に伝達することができるかどうか。
(2) 発音、イントネーションとリズムが自然かどうか、相手が聞いて理解できるかどうか。
(3) 適切な交際上のテクニックを使用できるかどうか。口語表現のうち、児童・生徒は簡単な交際上のテクニック(例えば、繰り返し言う、意味をはっきりさせる、表情や手振りを使うなど)を使うことができ、コミュニケーション活動を円滑に終らせることができるかどうか。
出典:中華人民共和国教育部制訂『全日制義務教育 普通高級中学 英語課程標準(実験稿)』、北京師範大学出版社、2001年7月初版、41〜45頁。

(注5) 例えば、天津市全体では小学卒業時に「3級のBレベル」にまで到達することを目標にしている(2005年9月の天津市教育委員会でのインタビューによる)。また北京市内の英語教育の特色公立校の場合は、全員が2級をクリアし、なるべく4級から5級(初級中学卒業レベル)まで進むことを目標にしていた(2005年8月の北京市東城区東交民巷小学でのインタビューによる)。
(注6) 例えば、教育部基礎教育課程教材発展中心編著『英語銜接小学・初中初歩学生用書(供六、七年級選用)』、朝華出版社、2005年6月。同書は、小学校での英語教育を受けなかった生徒のための補習用教材である。

(7)母国語習得との関係、言語技術向上についての措置
 前述のように、早期の外国語学習が母国語の習得を干渉する、という見解が長らく小学校英語教育の積極的推進をはばんできた。中国の場合は、学校では各地で母語として話される方言・少数民族言語と異なる標準中国語(原語:普通話)をまず何よりも習得しなければならない。そのための学習負担のあるところに、更に外国語を学習することは、条件が完備しない限り困難が大きく、憂慮の声が出るのは当然といえる。
 さらに、標準中国語の発音表記法であるピンイン(原語:ホウ音)はアルファベット文字を使用するので、ピンインと英語の綴り字と児童が混同しないかどうかも、当初指摘された問題点であった。
 また、中国語やその他の教科学習の授業時間を削減して英語に回すことについても、担当教員等からの抵抗があったという。
 第1の問題については、今回の調査では「6歳までの就学前教育段階で、特に口語の標準中国語の基礎をしっかり固めておくことが、小学校での英語の導入を可能にする」という見解が北京と天津の専門家から披瀝された。また、諸外国とくに英語を公用語としている非英語圏のバイリンガルまたはマルチリンガル教育のあり方と、EUでの英語教育の導入実施状況を調査し、外国語教育の開始期は児童期に設定することが可能、というよりもむしろ望ましいという結論を得たことが、各専門家から指摘された(ただしその開始期を何歳にするのがよいかについての見解・判断基準は一致していなかった)。また北京・上海・天津など一部の大都市での20年または30年近くにわたる初等英語教育のパイロット実験からも、児童期の英語教育についての肯定的な結論が導かれていたことが、根強い母国語習得干渉説を乗り越えさせた大きな要因であった。
 第2のアルファベット文字学習上の問題点については、小学校の2年生までに中国語のピンインをマスターさせるので、実際には混乱することなく英語の文字教育を開始することができるということであった。小1からの英語導入地域でも、1、2年の段階では英語の綴り字を書かせることは基本的に要求しないことになっており、ピンイン学習との相互干渉を避けることができるとのことであった。
 第3の問題点の中国語教育との兼ね合いについては、教育部においてこのような説明があった。
  「小学校の中国語教育は、英語教育導入のために削減された後も、授業時間全体に占める比率は圧倒的に多く(外国語が6〜8パーセントなのに対して、中国語は20パーセント〜22パーセント)、大きな問題はない。とくにカリキュラム全体で標準中国語の使用に留意し、民族文化を重視する方針をとり、英語学習によるマイナスの影響が出ないようにしている。」
 言語技術向上の措置については、学習目標・内容・評価の基準(めやす)としての等級を、技術向上のための測定評価手段、例えば検定試験として用いるかどうかについて、今後、教育部・中央教育科学研究所などが共同で、評価尺度、方法その他に関する開発実験研究プロジェクトを進め、検討していくとのことであった。現段階では、学校英語教育に対応する検定制度は存在していない。

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