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資料1
算数・数学専門部会(第1回)における主な意見(論点ごとに整理)

1.算数・数学教育の現状についての認識と課題

 小・中学校では、習熟度別の少人数指導が進められているが、一部に安易な取組や、テストの点数を上げることのみに力が注がれる傾向もみられる。算数的活動を大事するなど、子どもたちが算数・数学を好きになるよう工夫していくことが重要である。

 子どもたちは算数・数学について豊かに学んでいるにもかかわらず、ともすればその能力を点数のみで見ることに陥っていないか。

 4つの観点ごとに評価規準を設け目標に準拠した評価が進められる中で、以前より算数への関心・意欲・態度や数学的な考え方を目標に掲げた授業が増えてきた印象がある。

 中学校は選択教科や課題学習による指導の工夫など、個別の対応ができる仕組みが整備されているが、それでもまだ十分に子どもたちの学習状況に応じ切れていないのではないか。

 個に応じた指導については、補充的な学習が多くみられるが、発展的な学習にも目を向ける必要がある。

 算数・数学で体験を重視し、積極的に取り組んでいる学校もある。

 現在の高等学校は多様化が進んでおり、その対応が課題である。また、高等学校でも、考える力や体験を重視した授業がよいことは分かっているが、大学入試があり、多くの問題を解いていく授業になりがちである。

 各種調査では、国際的に見ても算数・数学の達成度は高いが、算数・数学が大切だと思う者の減少といった情意面について課題がある。また、生徒の勉強時間の少なさは、算数・数学教育にとっても大きな課題ではないか。

 大学のアドミッション・オフィス(AO)入試で、数学の分野で会ってみたいと思う学生がいない。数学については、一般的に、自分の発想を発展させる能力をみるのではなく、ここまで到達しているといった見方をしがちだからではないか。

 数学を大学まで学んだ者でも、その本当の面白さが分かっていない者がいる。役に立つことの実感が湧かないところに課題があるのではないか。


2.今後重視すべき算数・数学教育のねらいと育てたい力等

 算数・数学教育の目的や目標は何か、学校教育の中で算数・数学教育が担うべき役割は何か、社会全体が何を期待しているか、算数・数学教育の中でどのようなことが求められているか、他教科との関連でどのような位置付けにあるのかなどについて、きちんと議論しておく必要がある。

 どういう子どもたちになってほしいのか、どういうありようが望ましいのかについて考えてはどうか。

 算数・数学が大切だと思う者の減少といった情意面の課題について、目標や内容、指導法にわたってその克服のための方策を検討する必要がある。

 数学は、自然科学や社会科学を含め、ものを理論的に言い表すための言葉としての性質をもつとともに、他の教科とも密接に関連しそれらをつなぐものであるという認識に立つことが大事である。

 算数・数学教育で共通に求めたい資質として、例えば、計算や統計などのような日常生活に結びついた数学的リテラシー、物事を論理的に考え合理的に表現するための基礎力の形成、探究心や創造性豊かな人間形成などが考えられる。

 社会では答えは一つではない。対象について、自分としてはどこを問題としてとらえるのかを明確にし、自分の考えを説明することができる力を育てることが大切ではないか。

 数学の知識をもつことは大事であるが、それをいつ、どのように使えばいいかということとうまく結びつけば、もっと数学のおもしろさを味わうことができ、自分の学んだ知識を効果的に生かすことができる。

 社会においては、数学の能力を発揮しようと思うと、それ以外の数多くの能力が求められるところがある。

 算数・数学教育の意義や重要性を社会にアピールする方策についても検討する必要があるのではないか。


3.算数・数学の教育内容の系統性及び適時性等

 義務教育段階か、高等学校第一学年までかは検討の余地があるが、国民として共通に学ぶべき算数・数学の内容を明確にする必要がある。

 前期中等教育や後期中等教育の前半の時期であっても、学年をあまり意識し過ぎると多様性や学習状況に応じ切れないことがあるので、内容の示し方をどのように工夫するかということと、その趣旨を実現するための方策を考えたい。

 算数・数学の場合、年齢など発達段階に応じた指導が重要である。例えば、小学校低学年では、習熟的な作業などは大事である。また、学年が進むにつれ、本来の算数・数学的な考え方が必要となる。

 専門性が特に高い仕事を除き、技術職の場合で大学までの数学があれば十分であり、それ以外は高等学校までの数学があれば大体十分である。そして、日常は、中学校までの数学で十分というところで生活しているのではないか。

 高等学校までの教育では、基礎的なところをきちんと指導する必要があるが、単に知識として知っているのではなく、学習したことを自分で使いこなせること、思い出して少し勉強すれば使えるようになることが大切である。

 小・中学校にも、高校の「数学基礎」の精神を取り入れ、不思議さや役に立つ実感などが得られる、楽しい算数・数学の学習をさせる必要がある。

 高等学校の場合、目標に沿って内容をどう考えるか。例えば文系と理系で指導すべき内容を変えるほうがよいのか、それとももっと多様な構成にすべきなのか。

 高等学校でも実生活との関連を持たせて学ぶことが大事であり、数学的活動をもっと導入した内容を検討する必要があるのではないか。

 歯どめ規定にかかる部分について、少し膨らませて考えてみることはどうか。


4.算数・数学の指導方法の工夫・改善と指導力の向上等

 算数・数学を大切だという子どもたちの思いや、あきらめずに問題解決に取り組む姿勢に応えるためにも、指導方法の改善とそれが実現しやすい仕組まで視野に入れて検討していく必要がある。

 数学が論理的な思考を表す言葉であり、数学の中で記述式の訓練をきちんと行うことが重要である。

 具体的に、関心・意欲・態度や数学的な考え方を育てる授業にすること、また体験活動の後や考えさせた後の指導の充実が課題である。

 高等学校でも、教育課程実施状況調査の報告にあるように、生徒が自分の考えを表現し合い、お互いの考えを比較したり検討したりする指導の工夫に取り組む必要がある。

 高等学校段階で、抽象度の高い理論を数学の範囲内で実感させることは、教材的に難しい。理科などの中で数学が使われており、理論的に解決すると確かに現実と合うというようなところで数学的な考え方のすばらしさが実感として理解できる。

 公式は習っているが、どの場面で使うのかを体で実感できていない。そういう意味では繰り返し体験することでよい教育効果が期待できると思う。

 算数・数学教育と総合的な学習の時間との関連を一層密接なものにしていくことが必要ではないか。

 社会では、解がない問題を扱う場合には、能力が同等の者だけを集めるのではなく、様々な者が組み合わさった方が効果的に解決できる場合が多い。習熟度別の指導もあるが、それとはまた違った方法も研究してみてはどうか。

 数式を使わないで、例えば身体を使って数学的な考え方を体感させることは考えられないか。

 コンピュータやインターネットなどを学習指導や教師への支援に一層活用できないか。

 博物館など学校以外の施設を教育の場として活用することができないか。

 少人数指導や補充的な学習など指導法の改善や、目標に準拠した評価が進められつつあるが、指導に当たる教員の力量を高めることが必要である。



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