教育条件整備に関する作業部会(第12回) 議事録

1.日時

平成16年5月13日(木曜日) 10時30分~13時

2.場所

虎ノ門パストラル 新館4階 ミスト

3.議題

  1. 県費負担教職員制度の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 天笠委員、石原委員、伊藤委員、小川委員(主査)、矢野委員、横山委員、吉野委員

文部科学省

 樋口審議官、前川財務課長、大山教育財政室長、勝山視学官、松浦課長補佐その他関係官

5.議事録

(1)議事に入る前に、小川主査より今後の当作業部会中間報告(案)の取扱い等について協議があり、了承された。

委員
 先日来、この作業部会の中間報告(案)について意見交換を進めてきた。特に、この1カ月の間については、文書ないしはメール等により、やりとりをさせていただいたところである。現在、皆さんからいただいた意見を反映させる形で最後の修正を行っており、まとまり次第、委員にお送りする。それをもとに、今後開催される教育行財政部会並びに初等中等教育分科会において、主査のほうからこの作業部会の中間報告という形で報告させていただきたい。今後の中間報告の取扱い、ないしは修正等については、主査に一任いただきたい。

(2)事務局より配付資料の確認と説明の後、配付資料についての質疑応答・自由討議が行われた。その概要は以下のとおり。<○委員、●事務局>

委員
 市町村費教職員任用事業で採用された教員がどういう教育を行っていて、それが県費負担の教員よりも本当に良いのかどうか、調査を是非実施していただきたい。こういう新しい制度により、子どもたちが違ったクオリティーで教育されているかどうかが一番重要である。

委員
 全ての特区事業については、全国化が前提であるという報道があったが、その動向はどうなっているのか。

委員
 基本的に報道のとおりで、構造改革特区の評価委員会では特段の弊害がない限り全国化する方向である。挙証責任は各省庁にあり、特段の弊害を示す必要がある。短期間では、成果や問題、課題が明らかにするのは難しいが、文部科学省関係では、研究開発特区をはじめ、様々な特区事業があるので、各々について全国化できない場合は理由を明らかにしていきたい。その意味で、この市町村単費教職員任用事業についても、この作業部会の御意見をいただいた上で、さらに精査しながら取り組んでまいりたい。

委員
 保護者や子どもから見れば、市町村費や県費という区分をすること自体がおかしいと思う。既に、市費で任用した多数の非常勤講師が授業を実施しており、県費負担教職員だけが教育をやっているというのは、ある意味の思い込みではないか。任用の仕方が問題ではなくて、教員の資質とモチベーションが問題である。
 それから、市町村費で任用している教員は、地元のニーズや親のニーズを直接受ける市町村教育委員会が、ある意味でやむを得ず、県費負担で配置される教職員を補完する意味で措置しているという面もあり、そういうものをトータルに考えていったほうが良いのではないか。

委員
 「資料2」で各都道府県の認定状況があるが、例えば研究開発特区とか、特区の全体像がどういうものであって、その中で市町村費負担教職員任用事業がどんな位置づけになっているのか。

事務局
 市町村費教職員任用事業の中には、例えば、小中学校の英語教育など教育過程の基準によらない研究開発特区や特別免許状を市町村が授与する特区とリンクしているものもある。市町村が自前で特別免許状を授与して、そして自前で任用し、そして学習指導要領によらない自前の教育課程を編成して特色ある教育を実施するというように、特区事業をいろいろな重ね合わせで活用しているものもある。

委員
 そうすると、この事業を評価する場合にどこの変化を見ていくかが重要である。教育課程開発の事業が進んだから良しとするのか、任用した教員の活用のあり方等を見た場合に、組織運営とか、学校運営にもたらした効果がどうであったかなど評価事項が幾つかあり、捉え方が複雑にならざるを得ない。

委員
 今の話は非常に重要な問題であり、都道府県から見ると「資料4」にあるように「否定しない」と答えているが、市町村費による教職員任用の問題が学習指導要領の弾力化とリンクしたら全く答えは逆になる。あくまで通常の教育課程を実施する中で、例えば不登校対応などの取組みに対する市町村費の教員任用について答えているだけであって、そこは整理していないと混乱することになる。

委員
 「資料3」の市町村教育委員会の意見であるが、350万の政令市から百十数人の村まで一緒にしたものである。市町村教育委員会は、事務局体制が500人、600人のところから教育長を含めて3人のところまである。層別の状況はどうなっているか。そこをきちんと押さえていただきたい。

事務局
 この特区事業の全国化であるが、3,200の市町村が一律に市町村単費でやるということではなくて、地域独自の特色ある教育を市町村の責任と判断においてやりたいというところがあれば全国的に可能にするということである。教育内容や財源など共通の部分はきちんと担保した上で、地域が創意工夫を発揮して独自の教育をやりたい、そのための教職員を市町村単独で任用したいという市町村があれば、全国的にできるようにする。やらない市町村があってもいい。それは格差ではなく、地域間の切磋琢磨であると考えている。

委員
 福祉に力を入れる首長もいれば、教育に力を入れる首長もいる。ナショナル・ミニマムとしての義務教育は保障した上で、その上にどうやって付加していくかというのは首長の判断であり、そういうことで区市町村段階で義務教育のレベルに格差が出るのは当然だと思う。

委員
 特区は、いろいろな重ね合わせでやれるようにすべきである。また、それらの実施状況については、データをしっかりと把握して分析すべきである。地域格差の問題が出てくるが、実際、水道料金や国民健康保険は地域によって全然違うので、そういう格差が生じることに過敏にならなくてよい。
 また、市町村では、この市町村費教職員任用事業以外にも、さまざまな形で非常勤講師を任用しているという話があったが、そういうことも含めて実態を理解しなければならない。

委員
 教科書の採択は市町村に権限があるが、地域の特色に応じた特色ある教育を実施するため、学習指導要領を超えた発展的学習などが入っている教科書を採択した場合、県はある地域の教科書に合わせて、必要な県費負担教職員を配置することはないので、全県下画一的な基準で配置する。そうなると、どの教科書を選ぶかというときに、それを教える先生の数は足りるのかという問題が出るが、県からすれば、教科書を選んだ市町村で責任を持ってくださいということになる。それで結局、市町部局の判断でやむを得えず市費負担の教員を配置しようという話にしかならない。もう少しわかりやすい制度設計が必要ではないか。

事務局
 今の義務標準法に基づく教員の定数については、40人学級を基礎にして配分をしているが、それだけではなく、少人数指導等のきめ細かい学習指導が可能となるような教員の加配措置についても改善を進めているところである。ただ、さらにその上に市町村が市町村独自の特色ある教育、ふるさと学習や体験学習の充実しようとか、少人数指導を市独自に進めようというときには、特区により市の判断でしていただくということが可能になったということでご理解いただきたい。

委員
 現在、市町村費負担教職員事業については特区で実施されているが、これをなぜ特区でやる必要があるのか。これは、あくまでも市町村教育委員会、あるいは首長が、我が市、我が町は教育に力を入れる、教育に財源投入をして教職員を採用すると判断したものであり、それに反対は誰もできない。したがって、この事業の全国化については、都道府県が反対するということはあり得ない。ただ問題は、あくまでもそのベースに、ナショナル・ミニマムとしての義務教育があるので、教育課程を弾力化する話とは全然別であり、それを一般化するというのは義務教育の本体内容そのものを崩すことになるので、やるなら特区であるというのが都道府県教育委員会の結論である。

委員
 基本的にはより学校に近いところでということで、市町村教育委員会が教職員の任用をするということについては、基本的にだめだということではないと理解している。

委員
 市町村で採用された教職員の質がどうなのかがわからないと進まない。まだ任用されて1年未満が多いが、不登校対策や国際理解教育、ふるさとの学習等、それぞれの目的があるので、ぜひ調べてほしい。

事務局
 補足だが、教育課程の特区については、全国化できるかどうか別途検証しているところであり、これは市町村費教職員任用事業とは全く別の問題である。
 また、地方分権改革推進会議等で、「市町村が県費負担教職員の費用を一部負担できるよう検討する」と指摘されているが、この場合、「主な論点整理」の「論点1」にあるように、都道府県から市町村への負担転嫁とならない仕組みを検討することが必要である。要は、県から市町村へ負担のつけ回しになると、事業本来の意味を失うことになるり、きちんと歯どめを講じなければならない。

委員
 現在、特区ではなくても独自の予算で非常勤講師等を任用し、TT、少人数指導等を実施している市もあるが、先ほどの地方分権改革推進会議の指摘については、県から市町村へ負担のつけ回しにならないよう、何か歯どめをかけるロジックが必要である。

委員
 指導力不足教員の問題もあり、この制度で市町村が教員を任用する場合、任期制により、例えば3年の間に資質を見るということも必要ではないか。

委員
 「資料6」の「2」の「2」の県費負担教職員と市費負担教職員の円滑な人事交流であるが、県と市町村で予めきちんと協議しておくことが必要である。
 それか同「3」の研修の機会については、市町村がお金を出しあって、自市の職員の研修をすれば良い。ただ、お金をかけて教員の研修を実施しても、人事権がないから教員が他市町村へ異動してしまうとなると難しい。例えば、5年間は当該地域の学校で勤務できるとか、そういうことを担保しておく必要がある。

委員
 市町村費負担教職員の人事、研修の機会などについてほとんど検討されずに、今の特区が動いているように思えてならない。市町村費負担教職員の将来的な人事管理に関するシステムとセットで評価する必要があるのではないか。

委員
 この問題は財政上の問題が一番のメインになると思うので、市町村の教育委員会だけでなく、市町村の首長ともきちんとした議論する必要がある。また、特区の認証は首長に対して行われており、首長が責任を持つという仕組みである。市町村費による教職員任用の問題や人事権等の権限委譲の問題については、首長が非常に強い思いを持っている。

事務局
 特区で市町村費任用事業をやっている市町村は、首長のイニシアチブが強い。この事業は、首長の教育施策を実施することができるので、特区だけではなく支障がなければ全国的にやってもいいではないかというのは、一般的な首長の意向であると思う。
 実はこの問題に限らず、都道府県から市町村への人事権等の権限委譲については、教育委員会制度の見直しの議論の中で検討しているところであり、折に触れて市町村費による教職員任用の問題や人事権等の権限委譲の問題について、首長の意見を聞いてまいりたい。

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初等中等教育局財務課義務教育改革PT室

(初等中等教育局財務課義務教育改革PT室)