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資料1

フィンランド共和国教育事情調査報告(速報)


 義務教育に関する経費負担の在り方など義務教育における教育条件整備の在り方について、専門的な調査審議を行うため、教育行財政部会に本作業部会を設置する。


1.  調査のねらい
 現在、文部科学省においては、小中学校の教職員給与費に係る義務教育費国庫負担制度のあり方をめぐり、中央教育審議会の作業部会の中で今後の検討を進めている。
 義務教育費国庫負担金は、政府全体で進める行財政改革(三位一体の改革)の中で全額一般財源化を含めた大幅な見直しを迫られているが、昨年6月に決定されたいわゆる骨太の方針2003において、その必要性を単なる財政論ではなく、教育的な観点からきちんと検証していくという前提の下、今後、中央教育審議会の中で種々の議論を行うこととしている。
 その中で、諸外国の実態についても調査することとし、特にOECDの学習到達度調査(PISA)における2000年調査国際結果において、「読解力」において世界一の水準を示すとともに、「数学的リテラシー」や「科学的リテラシー」についても高水準を示すなど、フィンランドの学力水準は国際的にトップクラスであることから、そのフィンランドにおける教員給与制度や教育行財政、優秀教員の確保策など参考とすべき点について、調査することとしたところである。

2.  フィンランドの概況について
 フィンランドは、12世紀半ばより600年にわたり、スウェーデンの統治下にあったこともあり、スウェーデン語系市民が総人口の約6パーセントを占めており、フィンランド語(フィンランド語系市民は約94パーセント)とスウェーデン語が公用語とされている。
 フィンランドの自治体は、主に都市部に「市」、地方に「クンタ」の単位があり、その単位で運営されている。そのため、公立学校の運営についても、市またはクンタの単位で設置されており、近年、国から市またはクンタ(全国で440ある自治体。コミューン)にかなりの権限が移譲されてきている。
 フィンランドの学校は、全体の99パーセントの学校が公立(大学は全て国立)であり、ごくまれに私立学校が存在する。
 1998年以前は、小学校6年間、中学校3年間を初等中等教育課程として位置づけいていたが、1998年の法律改正により、小学校6年間と中学校3年間を一貫して教育を行い、この9年間を義務教育課程として位置づけることとされた。実際には、6年間の小学校と3年間の中学校が別々に存在している場合がまだ大多数ではあるが、9年間の一貫した学校として設置することも可能とされている。
 今回は、フィンランドにおける小学校から中学校までの9年間の一般教育(General Education)をテーマに調査を行った。

3.  調査結果の概要
 フィンランドにおける教育実情調査については、フィンランド教育省(約330名のスタッフ。教育と文化を担当しており、それぞれに大臣が置かれている。)へ訪問し、同省の担当者及び国家教育委員会の担当者とのヒヤリングを実施した。
 また、フィンランド語系小学校及びスウェーデン語系小学校へ訪問し、学校視察を行うとともに、意見交換を行った。
 主な調査結果の概要は以下のとおりである。
 
1    義務教育制度の概要について
  (1)  義務教育制度に関する主な法令の名称とその概要について

からフィンランドの基本理念として、学校に行くことが義務ではなく、学ぶ行為そのものが義務という考え方である。そのため、親は子どもが学習することを管理し、学習する環境を整える義務がある。併せて、自治体に対しても学習環境を整える義務がある。
なお、英語による法令集は存在しないことから、後日、フィンランド語による法令集を入手したのち、分析の予定。

  (2) 学校の設置者に関する法令の名称とその概要について

からフィンランドの学校は、99パーセントが公立であり、わずかに私立学校が存在する。公立の学校は小学校から高等学校までは、市又はクンタが設置者となっており、大学は全て国の設置となっている(国立大学は20大学)。
 なお、英語による法令集は存在しないことから、後日、フィンランド語による法令集を入手したのち、分析の予定。

2    義務教育に関わる教育財政制度について
  (1)  学校に勤務する教職員の身分(公務員・非公務員)、教職員の給与費の国の負担について

から教職員の身分は、地方公務員であり、市またはクンタごとに採用を行っている。給与の負担は、全額地方(市またはクンタ)が負担を行っている。ただし、市またはクンタ間の財政力に大きな差があるので、その財政力に応じ国が教育費にかかる調整交付金を交付することにより、実質的に給与負担を支えている。
 給与水準は、地方によって差はほとんどない。

  (2)  学校の規模について一般的な標準又は基準の有無。その名称、内容及び決定権者について

から各学校の規模については、地域の実情や施設のキャパシティ等に応じて市またはクンタによって決めている。

  (3)  1学級当たりの子どもの数について、一般的な標準又は基準、また、その名称、内容及び決定権者について

から 市またはクンタによって扱いは様々であるが、28〜32人が理想的な人数として運用している。おおむね35人になると、2クラスに分けている。

  (4)  教職員の配置数について、一般的な標準又は基準、また、その名称、内容及び決定権者。

から 基本的な配置基準は存在しないが、子どもが学習するべき時間数と、教員が受け持つ時間数とを勘案し、市またはクンタが各学校の教員数を配分している。

  (5)  1学級当たりの子どもの数を減らしていくなど、国としての学級編制の改善計画があればその概要。

から 国としての全体計画は特段ない、市またはクンタの地域事情によりクラスのサイズが決定される。ある南部の島では、児童1人に対して1学級、1名の教員となっている学校も存在する。

  (6)  義務教育諸学校の運営経費について、どこまでを国が負担しているか。

から 市またはクンタの財政事情は様々であるため、教育費にかかる調整交付金により、国としては全体のバランスを考慮して調整機能を果たしている。

  (7)  学校で使用する教科書の無償配布の有無、また、学校の運営経費の中で保護者の負担としている部分について

から 小学校から大学(小中高は公立、大学は国立)まで、授業料は無償である。また、小・中学校の場合、教科書などの主たる教材は、学校に備え付けのものを使用している。それ以外の教材については、一部、親が負担している場合はある。

  (8)  子ども1人当たり、教員1人当たりに係る義務教育費について

から 大多数の地域の平均は、児童生徒1人当たり3,748EUR(約52万円)。

3    義務教育に関わる教職員について
  (1)  教員には、例えば主任教員、一般教員、養護教員など、どのような種類があるか。それぞれの種類毎の職務内容についてはどうか。

から一般化された詳細データなし

  (2)  教員以外の職員配置について。その職名とそれぞれの職務内容。

から子どもの家庭環境や、日常生活上の悩みや問題点などについて、いろいろと相談にのったり、関係機関へ調整したり、家庭との連絡をとったりなどの役割を行う職の者があり、学校に常駐している。(日本のスクールカウンセラーと学級担任の一部の機能や児童相談所職員、アメリカのスクールサイコロジストの機能をあわせた役割)

  (3)  教員の1日当たり、1週間当たりの勤務時間について

から1時間が45分単位で、週当たり24時間に加えて、週当たり2時間の教師同士のミーティング、研究などの時間がある。このほかに、学校事故等に対処する時間もある。

  (4)  常勤教員の平均的な担当授業時間数について、(小学校、中学校別)

から平均的な担当授業時間数のデータはない。給与の基準のためにミニマムとして、週当たり24時間+2時間(ミーティング、研究)としている。

  (5)  現職教員の資質向上策や研修制度などの有無について

から特にない

  (6)  教職員の定年制度について

から以前は、63歳が定年制であったが、法律改正により65歳に変わった。実際の定年制の平均は63・64歳となっているところが多い。55歳で退職することは可能であるが、年金受給年齢は65歳のため、退職者はあまり多くない。退職者の平均年齢は59歳となっている。

4    義務教育に関わる教員の給与について
  (1)  教員の給与や諸手当について、その種類、対象者、支給額、根拠法令について、また、定期昇給などの給与の昇給方法

から公務員の場合、毎年昇給するほか、初任から、2,5,8,13年目ごとに昇給することとなっている。

  (2)  学校の管理職(校長、教頭など)について、また、手当の支給の有無。

から校長は置かれるが、規模によっては教頭のいない学校もある。教員の基本給100に対して、校長の基本給は150が目安である。ただし、授業の持ち時間数でも給与が上下するため、最終的な受取額は様々である。

  (3)  教員給与の改善勧告は、誰がどのように行うのか

から一般の公務員と同じで、国が物価等を勘案し行い、教員についての特段の制度はない。

  (4)  教員給与の改善計画(過去、現在、未来)の有無について

から特段の計画はない。

  (5)  教員給与の決定について、個人の能力や資格などはどのように給与に反映されているか。

から能力給のような制度は特段ない。

  (6)  教員給与は一般の公務員、民間企業と比較して、どの程度の水準なのか。また、学校種別の間で給与水準の格差について

から詳細なデータはないが、民間との給与格差は存在する(民間の方が高い)。小学校と中学校は基本的に同じであるが、高等学校は職務の特殊性からやや高い給与水準となっている。

  (7)  優れた人材を確保するために、教員の給与水準を他の一般公務員より高く設定するなど、教員給与の優遇策の有無について

から公務員の場合、初任より、2,5,8,13年目ごとに昇給することとなっているが、これに加えて、教員の場合は、教員勤務年数が5,10,20年目ごとに、一般職の公務員に加えて、昇給することとなっている。

5    義務教育の教育課程(カリキュラム編成)について
  (1)  学習内容の大綱的な基準や到達目標を国として定めているか。

から国としては、必修科目の種類や選択科目について定めている。また、科目の種類ごとに、6年間の最低時間数及び年間の最低時間数についても定めている。

  (2)  学校で使用する教科書の内容について、国の関与の有無。

から国として特段の関与はない。

  (3)  子ども達の数学や理科の学力調査結果が世界でトップレベルにあるが、担当教員の資質向上方策など、国としての施策の有無。

から教員の専門性の確保の観点から、95年以降から、マスターの学位を取得しないと教員になれないこととなった。またそれ以前に教員になっている者についても、その学位を取得するための措置を施しており、教員全体の資質の向上策を図っている。

6    その他
  (1)  教育全体に関する予算はどれくらいか。また、国家予算に占める割合。

から2003年では、371億61百万EUR(約5兆2千億円)のうち60億54百万EUR(約8,470億円)となっている。このうち、20国立大学に12億88百万EUR(約1,800億円)を支出。また、国家予算に占める教育費の割合は、16パーセントとなっている。

  (2)  義務教育諸学校の教職員給与費の総額はどれくらいか。また、教育費全体に占める割合。

から教育費の使途を細かく分けているわけではないので、給与費に占める額を算出することはできないが、教育費全体に占める一般教育に係る経費の割合は、約31.4パーセントとなっている。このほぼ全額がクンタのバランス調整のための補助金となっている。
  (3)  国税などの税金の種類や租税負担率の概要。

から 国税 28,451百万EUR, (50.2パーセント)
  クンタ税 12,123百万EUR (21.3パーセント)
  年金保険 10,205百万EUR (18.0パーセント)
     

  (4)  将来的な教育制度の改革について、その基本的内容や方向性を教えてください。

から1995年に「情報社会における教育訓練と調査研究に関する国家戦略」が示され、1999年に「2002〜2004」版として、改訂が行われ、具体的なアクションプランに沿って改革が進められている。




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