資料2 |
公立学校の管理運営の包括的な委託の在り方について(検討メモ)
1.管理運営の委託の在り方に関する基本的な検討事項 |
○ 制度導入の目的・意義等
<これまでの審議やヒアリング等において指摘されたメリット>
<これまでの審議やヒアリング等において指摘された課題・懸念等>
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◇ | 包括的な民間委託については、現存の教員では対応できないような特別な教育を行おうとした場合、高校などにおいて導入することも考えられるのではないか。 |
◇ | 公立幼稚園については、コストが高くついているという指摘もあり、委託するニーズがあるかも知れない。 |
◇ | 新たな試みについては、構造改革特区制度を活用して、限定的にやってみることも考えられるのではないか。 |
◇ | 公立学校を私立学校の経営者に委ねるようなことによって、公立学校で多様な教育が可能になるのではないか。 |
◇ | 公立学校に新しい経営形態が導入されることによって、既存の公立学校に対する刺激となりうるのではないか。 |
◇ | 市町村の合併に伴い、統廃合の問題が大きな課題となっているが、公私協力方式の活用は有効な手段。 |
◇ | 公設民営については、すでに保育所で始められているが、経営的観点から、人件費の安い、経験の浅い人材を登用することにより、保育の質が低下しているのではないかと懸念されている。 |
◇ | 教員の資質・能力の向上のための研修等が不十分となる懸念がある。 |
◇ | 教職員の身分が保障されず、短期間での教員の交代が想定され、教員との信頼関係に基づく教育が難しくなる懸念がある。 |
◇ | 保育所の運営を委託することによって、保育の質が落ちたという話があるが、教育活動を外部に委託した結果として、教育の質が落ちた場合、誰が責任を持つのか、ということがはっきりしない。 |
◇ | 教育の成果等について訴訟が発生した場合、誰が責任をとるのか。 |
◇ | 公設民営が行われている他の分野を参考にすれば、公が最終的な責任を取るということでやったところは失敗している。最後は、「我々は知らない。」ということになる。 |
◇ | 公立の学校を委託して、受託者側の校長が教育についての責任をとることは不可能ではないか。 |
◇ | 学校教育法において設置者管理主義が明示的に示されていることは、そのことに相当の意味があるものと思われる。 |
◇ | 教育委員会等による監督・指導がどの程度徹底するのか不安がある。 |
◇ | 民間委託については、権限が委譲されることとなるので、結果責任の取り方を明確にする必要がある。 |
◇ | 米国のチャータースクールにおいて、学校事故が発生した場合の責任の所在について、十分に整理されておらず、問題となっている事例がある。 |
◇ | 学校の管理運営を第3者に委託を可能とする場合、その学校において行われている教育活動をいかに実効的にモニタリングするかということが重要。 |
◇ | 学校の公設民営の検討においては、教育の質、教員の質が維持されるような枠組みをしっかりつくることが必要。 |
◇ | 外部の専門家によるモニタリング、抜き打ちで検査するような仕組みが必要。 |
◇ | 民間委託については、子どもたちの学力向上を含めた教育活動の成果、目標の達成を客観的に評価するシステムが確立されていることが重要。 |
◇ | 米国におけるチャータースクール制度については、既に米国において現に発生しているが、参加者が限定的となり、閉鎖的になってしまう危険性がある。 |
◇ | 米国においては、在籍生徒一人当たりの定額で経費が支給されるチャータースクール制度を悪用することにより、通学実態がない生徒の経費を詐取する事例が発生している。 |
◇ | 学校は一定の年限学ぶことが前提になっており、子どもたちにとっては、学校はゴーイングコンサーン(潰れないで存続し続ける存在)であることが重要。 |
◇ | 予め、委託が上手くいかなかった場合の、子どもたちの受け入れなどの処理の手続きを決めておく必要がある。 |
◇ | 受託者がやりたいことだけやって、それでいて最終的な責任を取れないということであれば、そのツケはその学校で学ぶ子どもたちに回ることになる。そのような制度設計は慎重であるべきであり、米国の経験を参考にすべき。 |
◇ | 公立学校を民間委託した場合の教職員の労働条件、団結権の保障や団体交渉の在り方等についても明確にしておく必要があるのではないか。 |
◇ | 公が施設設備を整備し、民間が公のお金をもらって既存の私立学校と競争することになれば、既存の私立学校との関係において不公平ではないか。 |
◇ | 公立学校の委託を行う場合は、既存の私立学校との調整が必要。委託が行われることによって、その地域で特色ある教育を行っている私学の教育活動が圧迫されることになってはならない。 |
◇ | 委託費については、既存の私立学校への助成金とのバランスを考える必要がある。 |
◇ | 公立学校の管理運営の委託については、何を改善し、どのような課題に対応するための委託であるのか、目的や意義が明確でない。 |
◇ | 学校は、地域や家庭の教育力が衰退している中で、多種多様な役割を抱え込んでおり、この状況を改善しなければ、管理運営を民間委託しても大きな成果は期待できないと思われる。 |
◇ | 学校運営の民間委託については、外国の事例等もあるが、成果や課題、是非を論じるには時期尚早ではないか。 |
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◇ | どこの国においても、義務教育は、その社会の中で生きるために最低限の共通のものとしてきちんと身につけなければならない教育を行う場として非常に大切にされている。よって、義務教育である小・中学校と、幼・高を同列に扱うべきでない。 |
◇ | 公立学校であっても、全員が必ず教育を受けなければならない義務教育と、選択に基づくそれ以外の段階の教育とでは、法的な仕組みが異なっており、また、公的な責任の果たし方について、分けて考えなければならない。 |
◇ | 管理運営の委託について、義務教育段階は非常に難しい。 |
◇ | 管理運営の委託を考えた場合、設置が義務的ではないものと、義務であるものでは、考え方に差があるのではないか。 |
◇ | 義務教育段階では、安定性・継続性・中立性が特に不可欠であり、委託はなじまない。 |
◇ | 不登校児童生徒への対応をどう考えるか。 |
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◇ | 英国においては、株式会社は営利目的にしてはならないという前提で、学校設置が認められている。公立学校の管理運営を委託する場合についても、営利目的にならないような仕組みが必要ではないか。 |
◇ | 民間委託ということであれば、学校法人も民間である。 |
◇ | 授業料や補助金などを全て子どもたちの教育のために使うのが学校法人であり、その点で、資源を子どもたち以外の外部に配分する株式会社等とは異なる。 |
◇ | 管理運営を民間委託する場合、委託先の主体としては、学校法人とすべき。 |
◇ | 米国のチャータースクールについては、その組織基盤が脆弱であった場合、予算の不適切の執行等が原因で、閉鎖に追い込まれる事例が発生している。また、閉鎖に伴う混乱のため、子どもたちの学ぶ権利が侵害されているような事例もある。 |
2.委託の仕組みに関する検討事項 |
○ | 委託の手続き | ||||||
委託を行うことを決定する場合、設置者の意思及び責任を明確にする観点等から、「指定管理者制度」では、業務の範囲を含め、条例を根拠に管理者の指定を行うこととされ、その決定に際しては、議会の議決を必要としている。これらの条例・規則等に基づき、地方公共団体は、受託者との間で委託に関する具体的な取り決めを結ぶことになる。 |
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○ | 受託者の教職員の身分 | ||||||
教職員は受託者により雇用され、非公務員となるものと考えられる。この場合、教職員の服務管理については、一般の私立学校と同様、就業規則によって決定される。 |
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○ | 学校運営に必要な経費 | ||||||
学校運営に必要な経費負担については、地方公共団体と受託者の取り決めにより決定されるものと考えられる。 |
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○ | 委託者と受託者の責任分担の在り方 | ||||||
委託された学校については、設置者が直接の管理を行うものではないが、そこで行われる教育は、当該地方公共団体が設置する公立学校の教育として行われることになる。このため、委託者(=設置者)と受託者の責任分担に関し、例えば、以下のような点について、整理が必要と考える。
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○ | 教育委員会による指導監督の在り方 | ||||||
適正な学校運営と教育の質を担保するため、以下のような点について配慮が必要と考える。
なお、「指定管理者制度」では、地方公共団体は、指定管理者に対して業務等に関する報告を求め、実地調査を行い、必要な指示ができることとされている。 |
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○ | 情報公開及び評価の在り方 | ||||||
教育活動が適切に行われることを担保するため、設置者たる地方公共団体は、教育活動の実施状況のモニタリングや評価を行うために必要な基準や手続きを定める必要がある。 なお、指定管理者制度においては、指定管理者となった者は、年度終了後の事業報告書の提出が義務づけられているが、学校教育という観点から、どのような頻度でどのような評価が行われるべきか。(例えば、米国のチャーター・スクールについては、州統一試験の悉皆受験が義務づけられているが、生徒指導のように、数値化が困難な教育成果の評価を含め、多面的な評価が必要と考えられる。) |
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○ | セーフティーネットの在り方 | ||||||
委託された学校における子どもたちの教育機会の確保のため、委託者である地方公共団体は、以下のような点についてセーフティーネットを構築する必要があると考えられる。
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〔経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(骨太の方針2003) H15.6〕 | |
○ 公立学校の管理・運営の民間委託等 | |
公立学校の民間への包括的な管理・運営委託について、早急に中央教育審議会で検討を開始する。特に高等学校中退者を含めた社会人の再教育、実務・教育連結型人材育成などの特別なニーズに応える等の観点から、通信制、定時制等の高等学校の公設民営方式について平成15年度中に結論を得る。 |
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〔構造改革特区の第3次提案に対する政府の対応方針 H15.9〕 | |
○ 公立学校の民間への包括的な管理・運営委託の容認 | |
公立学校の民間への包括的な管理・運営委託については、高等学校及び幼稚園を対象として検討し、今年中に結論を得た上で、必要な措置を講ずる。 |
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【構造改革特区におけるセーフティーネットに関する規定】 | |
「認定地方公共団体は、学校設置会社(学校設置非営利法人)の経営の状況の悪化等によりその設置する学校の経営に現に著しい支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる場合においては、当該学校に在学する者が適切な修学を維持することができるよう、転学のあっせんその他の必要な措置を講じなければならない。」 |
参考 | 公立学校の管理運営の包括的な委託の仕組み(イメージ図) | (PDF:30KB) |