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資料3 審議経過報告(素案たたき台)

  • 1.教育をめぐる検討課題
    • (1)学校教育の目的
    • (2)学校教育に対する国民の意識
    • (3)子どもへの教育の在り方についての検討課題
      • 子どもの学力
      • 子どもの心と体
      • 社会の変化
    • (4)学校や教育行政の在り方についての検討課題
  • 2.「人間力」の育成<学習指導要領全体の見直しの視点1>
    • (1)基本的な考え方
      • 確かな学力の育成
      • 子どもの社会的自立の推進
      • 社会の変化への対応
    • (2)「人間力」向上のための教育内容の改善充実
      • 国家・社会の形成者としての資質の育成
      • 豊かな人間性と感性の育成
      • 健やかな体の育成
      • 国語力の育成
      • 理数教育の改善充実
      • 外国語教育の改善充実
      • 総合的な学習の時間の改善充実
      • 中学校における選択教科
      • 部活動の取扱い
      • 授業時数の見直し
    • (3)発達や学年の段階に応じた教育課程編成や指導の工夫
    • (4)学校週5日制の下での学習機会の拡充
      • 学校の役割と家庭の役割
      • 学校週5日制の下での学校と家庭・地域との具体的連携策
  • 3.学校教育の質の保証<学習指導要領全体の見直しの視点2>
    • (1)基本的な考え方
    • (2)学校教育の質の保証
      • 学習指導要領における到達目標の明確化
      • 教育課程編成に関する現場主義の重視
      • 情報提供その他の基盤整備の充実
      • 教育成果の適切な評価
    • (3)教育行政の在り方の改善

1.教育をめぐる検討課題

(1)学校教育の目的

  • 平成17年10月の中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」(以下「答申」という。)は、義務教育の目的は、一人一人の国民の人格形成、国家・社会の形成者の育成であり、このことはいかに時代が変わろうとも普遍的なものであると指摘した。このことは、義務教育を含む教育全体の目的でもある。
  • このような学校教育の目的を踏まえ、義務教育については、国民が質の高い教育をひとしく受けることができるよう、憲法に定められた機会均等、水準確保、無償制という義務教育の根幹は、国がその責務として保障する必要がある。特に、現代社会では、すべての国民に地域格差なく一定水準以上の教育を保障する義務教育制度の充実は、格差の拡大や階層化の進行を防ぐセーフティ・ネットとして、社会の存立にとって不可欠なものとなっている。
  • また、高等学校教育については、中学校における教育の成果をさらに発展充実させて、国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うことなどが目標とされている。現在進学率は約97パーセントとなり、生徒の興味・関心、能力・適性、進路等は多様化している。このように国民的な教育機関となっている高等学校の卒業生たちは、これからの我が国の社会・経済・文化の水準の維持・向上に極めて大きな役割を果たすものである。
  • グローバル化が進展する今日、教育をめぐる様々な課題を克服し、21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指すため、国家戦略として世界最高水準の教育の実現に向けて学校教育の改革と充実に取り組むことが求められている。

(2)学校教育に対する国民の意識

  • 学校教育の改革と充実が求められている。国民も学校教育に対して大きな期待を寄せる一方で、問題点を指摘する声も少なくない。
  • 文部科学省が中央教育審議会の審議の検討資料とするために民間の機関に委嘱して平成17年3月から4月にかけて実施した「義務教育に関する意識調査」では、保護者の学校に対する総合的な満足度は70パーセント(「とても満足している」、「まあ満足している」の計)に達している。
  • 他方で、特に、肯定・賛成(「とてもそう思う(賛成)」、「まあそう思う(まあ賛成)」の計)が60パーセントを越える意見としては、「総合的な学習の時間は、教師の力量や熱意に差があり指導にばらつきが出る」(肯定65.3パーセント)、「年間の授業時間を増やす」(賛成66.7パーセント)、「放課後や土曜日、夏休みなどに補習授業を行う」(同61.4パーセント)、「小学校から英語活動を必修にする」(同66.8パーセント)、「将来の職業や生き方についての指導を行う」(同62.7パーセント)、「地域での体験活動やボランティア活動を行う」(同63.7パーセント)、「複数担任制や少人数による指導を行う」(同80.9パーセント)などがあった。
  • また、文部科学省が実施したスクールミーティングでも、学習内容や授業時数の減少、基礎学力の低下や塾通いが一般化している状況が気になるといった意見があった。その一方で、子どもが外で遊ばなくなり発達に応じた遊びや体験がない、コミュニケーションが取れなくなったといった子どもの変化を指摘する声も多く、子ども同士の「群れ遊び」などの交流、あいさつ運動、マナーアップ運動が有効との意見があった。
  • このように学校教育に対する国民の意識は多様であるが、学校において個に応じた丁寧な指導をすることにより確かな学力を確実に定着させることや将来の職業や生き方について見通しを与えることを期待するとともに、学校と家庭が連携しながら発達の状況に応じた遊びや体験をさせたり、コミュニケーション能力を育成することを重視する声が多い。

(3)子どもへの教育の在り方についての検討課題

子どもの学力

  • 子どもの学力の現状については、平成16年12月に公表された国際的な学力調査の結果から、成績中位層が減り、低位層が増加していることや、読解力、記述式問題に課題があることなど低下傾向が見られたところである。また、平成17年4月に公表された国立教育政策研究所の教育課程実施状況調査の結果からは、国語の記述式の問題について通過率(いわゆる正答率(以下「正答率」という。))が低下するなどの課題が見られた。こうした調査で問われている、知識・技能を活用し、考えたり、表現したりする力を育成することは、平成14年4月から順次実施されている現行学習指導要領がねらいとするものであるが、必ずしも十分実現していない状況にある。
  • 一方、上記調査からは、学校における基礎的事項を徹底する努力等により、学力向上に向けた取組による一定の成果も現われ始めている。また、学習意欲、学習習慣・生活習慣などは、若干の改善は見られるが、引き続きの課題である。
  • 答申でも指摘されているとおり、工業化社会から知識基盤社会へと大きく変化する21世紀においては、単に学校で知識・技能を習得するだけではなく、知識・技能を生かして社会で生きて働く力、生涯にわたって学び続ける力を育成することが重要である。
  • これからの社会においては、主体的・積極的に考え、頭の中で総合化して判断し、表現し、行動できる力を備えた自立した社会人を育成することがますます重要となることを踏まえれば、基礎的・基本的な知識・技能を徹底して身に付けさせ、自ら学び自ら考える力などの「確かな学力」を育成し、「生きる力」をはぐくむという現行学習指導要領の基本的な考え方は今後も維持することが適切である。
  • 先述の子どもの学力の状況を踏まえると、答申が指摘するように、現行学習指導要領については、基本的な理念に誤りはないものの、それを実現するための手立てに関し、課題があると考えられる。教育課程部会では、このような考え方に立って、「確かな学力」を確立するための具体的な手立てについて検討を行っている。
  • 「確かな学力」の確立については、現行学習指導要領に至るまでのある一時期において、子どもの自主性を強調するあまり教師が指導を躊躇する状況があったのではないかという意見などが出された。
    既に述べたとおり、近時、各学校における基礎的な事項を徹底する努力等により一定の改善が見られるところであるが、学習指導要領の見直しに当たっては、改めて、子どもに対して、
    • 徹底して身に付けさせるべき基礎的・基本的な知識・技能とは何か、
    • 基礎的・基本的な知識・技能を活用するために必要な能力とは何か、
    について各教科等の専門部会における審議を踏まえて具体的に明らかにすべく検討を進めている。

子どもの心と体

  • 一部の子どもの学ぶ意欲や生活習慣の未確立、後を絶たない問題行動など教育や、教育をめぐる社会状況には深刻なものがある。
  • 例えば、生活習慣については、義務教育に関する意識調査では、1.平日の24時以降に就寝する割合は小学校第6学年で約1割、中学校第2学年で約5割、同第3学年で約6割、2.毎日朝食を食べている子どもは学年をあがるにつれて低下し、小学校第4学年で約9割なのが、中学校第1学年で約8割、同第3学年で7割に低下、3.休日にテレビやビデオ・DVDを3時間以上視聴する子どもは小学生で約4割、中学生で約5割となっている。
  • 自分に自信がある子どもが国際的に見て少ないなど、自尊感情が乏しく、学習や職業に対して無気力な子どもが増えている。また、人間関係をつくる力が十分でないとの指摘もある。このような子どもの意識や状況が、ニートの増加の一つの背景になっていると考えられる。
  • 平成16年度の子どもの問題行動等の現状については、不登校児童生徒数、暴力行為の発生件数、いじめの発生件数が全体的には減少しているものの、小学校の暴力行為などが増加し、不登校児童生徒も依然として約12万人という相当数に上っている。また、平成17年度においても子どもによる重大な問題行動が続くなど、憂慮すべき状況にある。
  • 社会環境や生活様式の変化は、子どもの心身の発達に様々な影響を与えている。具体的には、積極的に運動する子どもとそうでない子どもの二極化への対応、子どもの体力低下への対応などが深刻な問題となっている。
  • 学力の向上をはじめ子どもの健全な育成のためには、睡眠時間の確保、食生活の改善、家族の触れ合いの時間の確保など、生活習慣の改善が不可欠である。子どもの育成の第一義的責任は家庭にあり、教育における保護者の責任を明確化することが必要である。
  • 今日、朝食をとってこない子どもの問題など、家庭や地域の教育力が依然として不十分な現状、あるいは今後更にそれらの教育力が低下する懸念、格差拡大の懸念などを背景として、学校と家庭、地域との役割分担の在り方が改めて議論されている。
  • 部会では、このような現状を踏まえつつ、子どもが社会的に自立し、社会に参画するための力をはぐくむための具体的な方策について検討している。その際、学校と社会が子どもの社会的自立のための新しい協力関係を築くことが重要であるとの観点から人間力の育成のために必要な考え方の整理を行っている。

社会の変化

  • 現在、我々の社会は、環境問題への対処、少子・高齢社会における福祉の在り方など、持続可能性のある社会の発展のために、国民が参加・協力して対処すべき大きな課題に直面している。また、金融の自由化など、各分野での規制緩和の進展に伴い、国民が自己責任を負うべき場面が増加したり、司法制度改革の一環としての裁判員制度の導入のように国民の政府機能への参加も拡大している。
  • こうした社会経済システムの高度化・複雑化が顕著な現代において、将来の社会を担う子どもには、よりよい社会の形成に向け、主体性をもって社会に積極的に参加するために必要な力を身に付けることが求められる。
    また、国際化、情報化、科学技術の発展の中で、社会や経済のグローバル化が急速に進展し、人材育成面での国際競争も加速しており、学校教育においても国家戦略として取り組むべき課題の存在が指摘されている。
  • 教育課程部会においては、社会的・経済的に自立した個人を育成するため、情報教育、環境教育、法教育、経済教育・金融教育、消費者教育など充実を図ることが要請されている分野を学校教育でどのように取り扱うかについて検討している。
    また、グローバル化進展の中で重視することが求められる科学技術教育、小学校段階の英語教育などについても検討を行っている。

(4)学校や教育行政の在り方についての検討課題

  • 既に述べたとおり、学力低下への懸念や塾通い等、特に公立学校に対する不満も少なくない。それらは時代や社会の変化に起因するものもあるが、学校教育、教育行政が十分対応できなかったことも否めない。
  • 学校の問題としては、これまで、学校教育において子どもが身に付けるべき力やその力を具体的にどのようにしてはぐくむかという道筋について、子どもや保護者、地域との間で必ずしも共通の認識がなされず、教育の成果や課題が不透明で見えにくいといった点を挙げることができる。
  • その一方で、子どもや保護者も変化しており、教師の仕事もこれまで以上に多岐にわたっているとの現状も指摘されている。教師が子どもと向き合って教育活動を展開するためには、学校における組織的な対応や教師を支える仕組みの必要性も指摘されている。
  • また、学校教育を支え、その成果に対して責任を負う教育行政についても、学校教育の現状や課題について十分にその現実を把握できているか、保護者をはじめとする国民や住民に対して十分に説明責任を果たしているか、学校を支えるための条件整備は十分に行われているかなど、改善すべき課題を抱えている。
  • こうした中、答申においては、学校の教育力(学校力)を強化し、教師の力量(教師力)を強化し、それを通じて、子どもの「人間力」の豊かな育成を図ることを改革の目標としている。
  • 答申では、特に義務教育システムについて、1.目標設定とその実現のための基盤整備を国の責任で行うこと、その上で、2.市区町村・学校の権限と責任を拡大する分権改革を進めるとともに、3.教育の結果の検証を国の責任で行い、義務教育の質を保証する構造に改革すべきである。すなわち、国の責任によるインプット(目標設定とその実現のための基盤整備)を土台にして、プロセス(実施過程)は市区町村や学校が担い、アウトカム(教育の結果)を国の責任で検証し、質を保障する教育システムへの転換を図ることが求められているとしている。
  • また、教育の中心的な担い手は学校であり、国、都道府県、市区町村の協力で、学校を支えなければならないことを踏まえ、国は教育の根幹保障の責任を、また、都道府県、市区町村、学校が教育の実施主体として、より大きな権限と責任を担うシステムに改革する必要があるとしている。
  • このように国が教育の根幹保障の責任を果たす上では、全国的な教育に関する状況の把握や情報収集、効果的な指導方法の在り方に関する科学的な分析や蓄積、教育課程に関する国際的な動向や科学的な専門性を踏まえた確かな国家戦略のもと、教育機会の確保や水準の向上を図ることが必要である。
  • 教育課程部会では、このような観点から、社会や経済のグローバル化が急速に進展し、知識基盤社会へと移行する中で、国際的に質の高い教育水準を実現するために、国としての目標を明確に示し、各学校の創意工夫を支援するための手立てについて検討している。

2.「人間力」の育成<学習指導要領全体の見直しの視点1>

(1)基本的な考え方

  • 現行学習指導要領の総則では、「生きる力をはぐくむことを目指し、創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開する中で、自ら学び自ら考える力の育成を図るとともに、基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り、個性を生かす教育の充実に努めなければならない」とされている。
  • 教育に求められているのは、子どもに基礎的・基本的な内容を確実に身に付けさせ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力などの「生きる力」をはぐくむことである。
  • 既に1の(3)で示したとおり、「確かな学力」を育成し、「生きる力」をはぐくむという現行学習指導要領の基本的な考え方は維持される必要がある。
  • 問題は、こうした理念を実現するための手立てである。教育課程部会においては、教育課程の構造を体系化・明確化することが、この理念を実現する基本的な手立てとなるのではないかとの考えの下、「確かな学力」や「生きる力」の育成に関する議論を整理し、その実現のための道筋を示そうと取り組んでいる。
  • 答申においては、学習指導要領全体の見直しについて、次のような点を重視する必要があるとの考え方が示されている。
  • 第一は、確かな学力の確立、即ち、「読み・書き・計算」などの基礎・基本を確実に定着させ、教えて考えさせる教育を基本として、自ら学び自ら考え行動する力を育成するということである。
  • 第二は、子どもたちの社会的自立を図るため、将来の職業や生活への見通しを与えるなど、学ぶことや働くこと、生きることの尊さを実感させる教育を充実し、学ぶ意欲を高めること、家庭と連携し、基本的な生活習慣、学習習慣を確立し、自尊感情や他とかかわる力を育てること、国際社会に生きる日本人としての自覚を育てることである。
  • 教育課程部会及び専門部会においては、この第一と第二の点は互いに密接に関連しており、一体となった体系的な指導がなされてこそ効果があがるとの意見が出されている。豊かな心と健やかな体をはぐくむことは学習への意欲を生み出す源であり、確かな学力の育成は、将来の職業や人生の基礎を培うものである。
  • 学校教育の在り方を教育内容及び教育方法の両面にわたって、社会と一層意識的に関係付ける必要がある。具体的には、子どもが社会とのかかわりの中で、知的好奇心を生かしながら、実感をもって知識や技能を習得できるようにすることが重要である。また、その知識や技能を社会において生かしていくという視点をもたせることが重要である。学習に積極的に取り組めない子どもに対しては、特に前者の視点に留意して指導の工夫が求められるし、学習が進んだ子どもに対しては、特に後者の視点から学習を発展させていくことが考えられる。
  • 教育と社会との連携は学校教育の側からのみ語られるべきものではない。家庭や社会において、子どもに身近な人々とのかかわりを実感させ豊かな経験を得させる必要がある。そのためには、「早寝・早起き・朝ご飯」といった提案を出発点として家庭教育の充実を図っていくことや学校外の人材(地域の人材や専門家など)が学校教育に参画することが重視されなければならない。

「人間力」の育成

  • 現行学習指導要領が目標としている「生きる力」を実社会や実生活との関係でより具体化し、社会との関係で学校教育に求められているものは何かについて、学校と社会との間の共通認識を形成することが重要である。
  • 平成15年の中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」においては、21世紀の教育が目指すものとして、知性や心と体に関する目標のほか、「自己実現を目指す自立した人間の育成」、「新しい『公共』を創造し,21世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成」、「日本の伝統・文化を基盤として国際社会を生きる教養ある日本人の育成」を目標として示している。
  • 教育課程部会では、例えば、「将来的に国民として自立し、納税や勤労の義務を果たせるようになることが義務教育の最大の到達目標」といった意見に見られるように、学校教育の目指すべきものとして、子どもの社会的自立、職業的自立を重視することが求められているとの意見が示されている。
  • こうした考え方を踏まえて、社会の側からの視点、国際的な通用性の視点も参考としつつ、目標を整理する作業を行っている。
  • 社会の側からの視点としては、内閣府人間力戦略研究会の「人間力戦略研究会報告書」(平成15年4月10日)を基にした「人間力」という考え方、文部科学省の「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書(児童生徒一人一人の勤労観、職業観を育てるために)」(平成16年1月28日)で示されている「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例)」などが参考として考えられる。
  • 国際的な通用性という視点からは、OECD生徒の学習到達度調査(PISA調査)の概念的な枠組みの基本であるOECDの「主要能力(キー・コンピテンシー)」という考え方がある。
  • 学校教育において目指している「生きる力」について、現在及び将来において子どもが自立して参画することが求められる社会の側の視点に立って、「人間力」としてこれを改めて整理しようとするこの試みは、学校外の視点から学校教育を見ることによってその足らざるところを補い、より充実したものに改善していこうとするものである。
  • これまでのところ、例えば、
    • 主体性・自律性
      (例)自己理解(自尊)・自己責任(自律)、健康増進、意思決定、将来設計
    • 自己と他者との関係
      (例)協調性・責任感、感性・表現、人間関係形成
    • 個人と社会との関係
      (例)責任・権利・勤労、社会・文化・自然理解、言語・情報活用、知識・技術活用、課題発見・解決
    などの要素に整理することができるのではないかとの検討が行われている。
  • この場合において、「個人と社会との関係」ということをとらえるに当たっては、政治経済や産業という観点に偏ることなく、文化や生活という観点も重要である。また、グローバル化が進展する中で、社会・国家のみならず国際社会に積極的に参加し、その発展に貢献していくとの視点も重要である。自国の社会、文化、伝統への理解を図り、国際社会に生きる日本人としての自覚を育てることが重要であるという意見も数多く示されている。

確かな学力の育成

  • 確かな学力を育成する、すなわち、「読み・書き・計算」などの基礎・基本を確実に定着させ、教えて考えさせる教育を基本として、自ら学び自ら考え行動する力を育成するためには、1.徹底して身に付けさせるべき基礎的・基本的な知識・技能とは何か、2.知識・技能を活用するために必要な能力とは何かを整理した上で、それをはぐくむ道筋(手立て)を明らかにすることが求められる。
  • 現行学習指導要領の学力観をめぐっては様々な議論が提起されているが、答申でも指摘されているとおり、基礎的・基本的な知識・技能の育成(いわゆる習得型の教育)と、自ら学び自ら考える力の育成(いわゆる探究型の教育)とは、対立的あるいは二者択一的にとらえるべきものではなく、この両方を総合的に育成することが必要である。
  • このため、1.知識・技能を確実に定着させることを基本とし、その際、知的好奇心をもって実感を伴って理解することを重視する、2.考える力の育成に当たっては、知識・技能を実際に活用する力の育成を重視することが必要である。習得と探究との間に、活用のプロセスを介在させることで、習得から活用へ、活用から探究への流れを円滑にし、これらを総合的に育成することができるよう検討を進めている。
基礎的・基本的な知識・技能を確実に定着させる
  • 知識・技能の定着については、国際教育到達度評価学会(IEA)の「国際数学・理科教育調査2003(平成15年)」(TIMSS調査)においては、小学校の理科、中学校の数学に課題が見られたが、平成16年に実施した教育課程実施状況調査では、小学校の国語、算数、理科、社会、中学校の国語、数学、理科、社会、英語を通じて、基礎的・基本的な事項については一定の改善が図られていることが明らかになった。
  • 教育課程部会や教育課程企画特別部会においては、例えば、「一定のことは暗記し反復により定着させるべきである」との意見に見られるように、「読み・書き・計算」などの知識・技能の面については、発達の段階に応じて徹底していくことが大切との意見があった。
  • 知識・技能のうちでも、特に、乗法九九や都道府県の位置と名称などは、基本的な意味を押さえた上で、反復学習などのていねいな繰り返し指導が有効である。
  • 知識・技能の確実な定着に当たっては、教師は、子どもの主体性を大切にしつつ、必要かつ適切な指導を行わなければならない。
  • 子どもの知的好奇心や疑問を大切することは、学ぶ意欲を高めたり、実生活とかかわりをもって知識・技能を体験的に理解させる上で、重要なことであり積極的に推進する必要があるが、同時に、これらは、適切な工夫のもと、教師の指導の一環として行われることが必要である。広い意味で、教えるということの大切さに留意したい。
  • 知識・技能の確実な定着に当たっては、知識・技能を実際に活用する力の育成を視野に入れることが重要である。ものごとを考えるということは、現実の問題に対して、既得の知識・技能を結び付け活用することで行われる。また、活用を通して新たな知識・技能を獲得することも考えられる。こうして、知識・技能を生きて働くようにすること、すなわち実生活等で活用することを目指すからこそ、その習得に当たっても、知的好奇心に支えられ実感を伴って理解するなど、生きた形で理解することが重要となる。
  • 生命や粒子、民主主義や法といった概念や原理、法則などは、個々の知識を体系化することを可能とし、個々の知識を活用する上での助けとなるものであり、教育内容として重視し、適切に位置付けていくことが必要である。
  • 形式知のみでなく、暗黙知も重視すべきであるとの意見がある。こうした観点からも、家庭や地域社会とも連携しつつ、体験的な活動や知識・技能の体験的、身体的な理解ということに十分配意する必要がある。
  • このような知識・技能の様々な特性を踏まえて、子どもの発達や学年の段階に応じた教育内容の整理や指導方法の工夫が必要である。基礎的・基本的な内容については、小・中・高等学校において、あえて教育内容を重複させることが重要であるとの意見も数多く示されている。
  • 各教科等の専門部会においては、それぞれ、義務教育修了段階において子どもに身に付けさせたい基礎的・基本的な知識・技能とは何かについて議論が行われている。習得だけでなく、活用や探究を視野に入れて教育内容を組み立てるためには、子どもが、社会・文化や自然などを理解するため習得すべき知識・技能の範囲を合理的に確定し、その確実な定着を図り、活用や探究への道筋をつけることが必要である。
  • 基礎的・基本的な知識・技能については、これまでの審議においては、1.社会的に自立していくために実生活において不可欠であり常に活用できるようになっていることが望ましい知識・技能と、2.義務教育及びそれ以降の様々な専門分野の学習を進めていく上で共通の基盤として習得しておくことが望ましい知識・技能とに区分して整理するという検討を行っている。
  • 具体的には、各教科等を通じて、
    1. 実生活において不可欠な知識・技能
      例えば、整数、小数、分数の意味がわかり四則計算ができること、ヒトや動物のつくり、酸素や二酸化炭素の性質について知ることなど。
    2. 学習を進めていく上で共通の基盤となる知識・技能
      例えば、関数y=ax2の特徴や三平方の定理について理解すること、物質は粒子からできていることについて理解することなど。
    といった類型を設けて、整理を進めてきている。)
知識・技能を活用し、考え行動する力の重視
  • 現行学習指導要領は、自ら学び自ら考える力の育成を目指して、具体的には、思考力・判断力・表現力等をはぐくみ、知識・技能等を学習や生活において生かし、総合的に働かせることを目標としている。
  • こうした方向性は国際的にも模索されており、例えば、PISA調査は、知識・技能を実生活において活用する力を測定することを目指している。我が国は、その結果において、読解力に低下傾向が見られ、数学的活用能力や科学的活用能力においても、解釈や論述形式の設問に課題があることが示された。
  • また、教育課程実施状況調査の国語においても、記述式の設問において正答率が低下するなどの課題が見られた。
  • こうした調査結果からは、上記に示したような現行学習指導要領のねらいが必ずしも十分実現されていない状況にあるといえる。
  • 教育課程部会及び教育課程企画特別部会においては、「コミュニケーション力」を重視すべきである、「知識・技能を活用する力」が重要であるなどといった、教育を通じて育てるべき「力」を教科横断的に明確にしていく必要があるとの意見が示されている。
  • 特に、学校教育が子どもの社会的自立を目指すものである以上、将来実社会において必要とされる力やこうした力を育てていくために必要な道筋について、学習指導要領において具体的に示していくことが課題として指摘されている。
  • 教育課程部会では、このような観点から、各教科等ごとに義務教育修了段階において子どもに身に付けさせたい能力を比較検討した。その結果、各教科等を横断してはぐくむべき能力として、例えば、
    1. 体験から感じ取ったことを表現する力(感性や想像力を生かす)
      例えば、日常生活や体験的な学習活動の中で感じ取ったことを言葉や歌、絵、身体などを用いて表現する、自国や他国の歴史・文化・社会などから自分たちとは違う世界を想像し、共感したり分析したりしたことを表現するなど
    2. 情報を獲得し、思考し、表現する力(言語や情報を活用する)
      例えば、文章や資料を読んだ上で、自分の考えをA4・一枚(1000字程度)で表現する、自然事象や社会的事象に関する様々な情報や意見を分類整理し、比較したり関連付けたりしながら、グラフや図表などを用いてわかりやすく表現するなど
    3. 知識・技能を実生活で活用する力(知識や技能を活用する)
      例えば、需要、供給などの概念で価格の変動をとらえて生産活動や消費生活に生かす、衣食住や健康・安全に関する知識を生かして自分の生活を管理する、など
    4. 構想を立て、実践し、評価・改善する力(課題を発見し解決する)
      例えば、理科の調査研究において、仮説を立て、実験・観察を行い、その結果を整理し、考察をまとめ、表現したり改善したりする、芸術表現等において、構想を練り、創作活動を行い、その結果を評価し、工夫・改善するなど
    が考えられるのではないかという議論がなされている。
  • このように、1.感性に基づいて情報を処理する力や、2.理性に基づいて情報を処理する力などを通じて、知識・技能を獲得し、深め、活用するための基盤となる力を養うとともに、3.知識・技能を実際の生活や学習において活用する力、4.課題探究や創意工夫をすることで、課題自体を発見したり、課題を解決したりする力を育成することが重要である。
  • こうした1.~4.の力は、現行学習指導要領においても、各教科等において、それぞれ位置付けられているが、今後は、各教科等を横断して、学校教育活動全体で力を伸ばしていくことが合理的であり、また有効であると考えられる。
  • なお、1.及び2.の力については、文化審議会答申(「これからの時代に求められる国語力について」平成16年2月3日)において、考える力、感じる力、想像する力、表す力の育成として提起されている力と関連していると考えられる。
  • 教育課程部会では、今後、こうした力を育成するために、指導内容との結び付け、活動例の設定などについて、具体的に整理しようとする試みを行っている。(別添資料(試作版)において具体例を示している。)
指導方法の改善充実
  • 確かな学力を育成するためには、基礎的・基本的な知識・技能を確実に定着させるため、その基本的な意味を押さえた上で、反復学習などのていねいな繰り返し指導、個に応じた指導としての補充的な学習を行うことが重要である。
  • また、知識・技能の活用力を定着させるためには、個に応じた指導としての発展的な学習、問題解決型の学習(ここでは、既得の知識・技能を活用することで所定の問題を解決する学習をいう)などを行うことが重要である。
  • さらに、個々の子どもの学習状況を十分に勘案しながら、課題探究型の学習(ここでは、調べ学習や実験・観察、調査研究などにより課題を発見したり、解決したりする学習のことをいう)などを行うことが重要である。
  • こうした指導を充実するために、学校において、少人数指導や習熟度別指導をさらに推進していくことが重要である。
  • 学習意欲や学習習慣を高めるため、家庭での学習課題(宿題)を適切に与え、家庭での学習習慣を確立することが必要である。
  • また、こうしたきめ細かな学習を支える仕組みとして、ICT技術などの活用も十分考慮されなければならない。

子どもの社会的自立の推進

  • 子どもの社会的自立を推進するに当たっては、上記で記した確かな学力の育成とともに、豊かな心と健やかな体をはぐくみ、社会的自立の基礎を培うことが、その基盤となる。学力の低下傾向の一つの原因として、子どもの学習意欲の低下が指摘されている。
  • 答申では、将来の職業や生活への見通しを与えるなど、学ぶことや働くこと、生きることの尊さを実感させる教育を充実し、学ぶ意欲を高めること、家庭と連携し、基本的な生活習慣、学習習慣を確立し、自尊感情や他とかかわる力を育てること、国際社会に生きる日本人としての自覚を育てることが重要であると指摘している。
  • 教育課程部会及び教育課程企画特別部会においては、学習や職業に対して無気力な子どもが増えており、規範意識の低下や一部の子どもの問題行動の増加が指摘されている現状の中で、基本的な生活習慣や規範意識の確立、生涯にわたってスポーツや芸術に親しむ態度の育成、体験活動の機会の充実が必要であるとの検討を行っている。
  • 今日、子どもは、社会と豊かにかかわる機会をもてなくなりつつある。子どもが、大人とかかわる機会は、本来、家庭や地域において、自然に恵まれるものであるが、今日、学校教育がそのきっかけづくりをすることが求められている。人と人との交流の様々な場面、家庭、地域社会、国家、ひいては国際社会にまで、その一員としての自覚(具体的には、協調性、責任感、権利、勤労など)をもつとともに、科学的な知識を身に付けることが求められる。
  • 子どもに対して、「早寝・早起き・朝ご飯」など正しい生活リズムをもたせるなど、基本的な生活習慣を確立するとともに、社会生活を送る上で人間としてもつべき最低限の規範意識を青少年期に確実に身に付けさせることが重要である。その際、道徳性を養い、それを基盤として、主体的に判断し、適切に行動できる人間を育てることが大切である。また、感性や想像力、表現力の育成も重要な課題である。
  • 人間の心の発達・成長を支え、人として創造的な活動をするために、生涯にわたって積極的にスポーツや芸術に親しむ習慣や意欲、能力を育成するとともに、心身の健康の保持増進のために必要な知識、習慣や生活を改善する力を身に付けさせることが求められる。また、子どもの生活の安全・安心に対する懸念が広まっており、安全教育の充実も課題である。
  • なお、以上述べた事柄には、本来、家庭が一義的な責任を負うべき問題が多く含まれている。学校が、やむなくその補完的な機能を果たしていること、また、果たさざるを得ないという現状があることを直視し、学校が本来の機能を損なうことがないよう、協力や支援が求められる。
  • 我が国の子どもは、国際的に見て自尊感情に乏しいとの指摘がある。同時に、規範意識の低下やいわゆる切れる子どもの存在など自己指導の面での課題も指摘されており、自己実現を目指す自立的な人間の育成が課題である。
  • 主体性や自律性の育成は、人格の形成や自己実現を目指す上で核となるものであり、人間関係や社会参画の基盤となる重要な要素でもある。
  • この場合において、自己理解(自尊・自己肯定)の考え方と自己責任(自律・自己指導)の考え方を調和の取れた形で総合的に身に付けさせていくことが課題である。
  • 例えば、学習を進める上では、知的好奇心を働かせることや学ぶことの楽しさを味わうことが基本となるが、同時に、学習目標を設定してその実現のために忍耐力をもって粘り強く取り組むことも必要である。
  • 知的好奇心や夢を大切にしながら、学校生活や家庭生活・社会生活全体を通じて、子どもが実体験を重ね達成感を得ていく中で、人生や生活を前向きにとらえる姿勢や目標の実現に向けて努力を重ねる態度を身に付けさせたい。
  • 夢と現実とを結ぶためには、夢を目標に、目標を計画に具体化してそれを現実のものとする、そういう機会を学校の教育活動全体を通じて数多く経験させることが重要であるとの指摘がある。
  • また、夢と現実とが異なる場合に、現実を忌避するのではなく、自らがやるべきこと、やれることを誠実に行い、夢や目標に近づくために計画を立て少しずつでも前進する気持ちが大切である。

社会の変化への対応

  • 現在、我々の社会が直面している問題については、上記1(3)ウにおいて記したとおりである。情報教育、環境教育、法教育、経済教育・金融教育、消費者教育など様々な専門分野から学校教育においてその内容を充実するよう求められている。
  • このような様々な分野の教育内容について比較検討してみると、分野の違いはあれ、社会の変化の中で、自らの責任ということを十分自覚した上で、情報を獲得し、判断して、行動できる人材の育成を目指しているという点で変わりはない。こうした考え方は、確かな学力の育成や子どもの社会的自立で目指している学校教育改革の方向性と合致するものである。
  • したがって、各分野の基礎的・基本的な知識・技能は、必要性に応じて各教科の教育内容の中に位置づけることを検討する必要があるが、力の育成の面については、ねらいとするところは共通であり、どの分野のどのようなプログラムを用いるかは、各学校の判断に任せることが適当である。
  • また、学校教育の現状を考慮したときに、教育内容を増加させる方向だけでなく、時代の変化等によりそのことを共通に指導する意義が乏しくなった内容については、見直しをする必要がある。
  • 国際化、情報化、科学技術の発展のなかで社会経済のグローバル化が急速に進展し、人材育成面での国際競争も加速しており、学校教育においても国家戦略として取り組むべき課題の存在が指摘されている。
  • 情報教育については、ICTのメディアとしての特性について、十分留意しながら発達の段階に応じた教育を推進することが必要である。特に、小・中学校段階における教育については、総合的な学習の時間の情報に関する学習、中学校の技術・家庭科、高等学校の情報科との関連を整理しつつ体系化し、その充実を図ることが必要である。
  • 科学技術教育、小学校段階の英語教育などについては、国際的な教育課程比較なども参考にしながら、その充実を図っていく必要がある。これまでの審議の内容については、次項で、改めて整理する。

(2)「人間力」向上のための教育内容の改善充実

国家・社会の形成者としての資質の育成

資質・能力の育成
  • 自分たちの力でよりよい国づくり、社会づくりに取り組むことは、民主主義社会における国民の責務である。また、大人の世代から子どもの世代へと文化や伝統を継承していくことは教育の重要な役割である。さらに、現代社会のグローバル化の進展を考えると、世界の地域的枠組みを踏まえて異文化を理解し国際貢献をすることのできる国際社会に生きる日本人としての自覚を育てることも重要である。
  • 日本人あるいは社会人としての素養を身に付ける必要がある。そのためには、日本の伝統や文化、歴史に関する教育が必要である。
  • 21世紀を生きる子どもには、例えば、自他の権利を尊重して義務を果たす、社会・国家・国際社会に積極的に参加し、その発展に貢献するなどの資質・能力を身に付けることが期待される。
  • 社会科や家庭科などの教科においては、社会や家庭生活を客観的な視点から理解するための具体的な資質・能力を育成することが求められる。例えば、家庭の一員として衣食住や消費などの生活を自分で管理・工夫できること、身近な人々と協調性をもって責任ある行動をとることができること、社会的な見方や考え方を身に付けること、各種の資料や新聞記事などから必要な情報を読み取ること、社会的な事象について調べたり発表したりすること、自分の考えやその根拠を具体的・論理的に説明できること、などが重要である。
  • このような教育を通して、民主社会、経済社会、あるいは家庭、地域や学校の一員として主体的・文化的な生活を送るとともに、職業生活についての前向きな見通しをもち、社会、国家、ひいては国際社会を理解し、そこに積極的に参加し貢献していく意欲を育てることが求められる。
  • 近年、ニートの問題など若者たちの社会と関わろうとする意欲に低下が見られる中で、働くことに対する実感的な理解を深めることが大切であり、各教科等を通じて、協調性や責任感など他者とかかわる力の育成、社会生活の中での責任や勤労などの観念の理解・定着を図る必要がある。
  • 具体的には、小・中・高等学校を通じて、奉仕体験、長期宿泊体験、自然体験、文化芸術体験、職場体験、就業体験(インターンシップ、デュアルシステム)などの体験活動を計画的・体系的に推進することが必要である。特に、ニートの問題が指摘される中、キャリア教育の推進が求められている。例えば、中学校において5日間以上の職場体験を行う「キャリア・スタート・ウィーク」など)を通じて社会や職業を体験させ、生活や人生の実感をもたせることが重要であり、このことが学習意欲の喚起や自尊感情の形成につながるといった意見が出されている。
  • 今日、情報教育、環境教育、法教育、経済教育・金融教育、消費者教育などの充実が求められている。また、科学技術教育については、理数教育の改善充実(後述)を図るととともに、科学が発達し様々な技術が使用される社会において、ものづくりなどを通して適切に評価し、管理できる力を育てることが重要である。これらの点については、社会の変化への対応の項(先述)で記した基本的な考え方に基づき、引き続き具体的に検討を行うこととする。
知識・技能の定着
  • 知識・技能の側面では、社会や家庭生活を客観的な視点から理解するための基礎的・基本的な知識・技能を身に付けることが必要である。
  • 国家・社会の成り立ちや機能、地域構成などを理解させるために必要な基本的な事項、例えば、都道府県の位置と名称や我が国の領土など国土の地域構成、主な国々の名称や世界の地域構成、我が国の産業や歴史の年代の表し方や時代区分、日本国憲法の基本的な原則などを確実に定着させることが重要である。また、衣食住の基礎的・基本的な知識、例えば、栄養素の基本的な働きなどを確実に定着させることや、技術を理解するために必要となる社会や環境との関係や技術の価値(知的財産)などについて知ることも重要である。
  • また、例えば、地図帳を用いて地名を検索できること、相手に応じた接し方ができること、社会のルールやマナーの基本を理解し身に付けていること、日常の衣食住、情報機器や道具の適切な活用、家庭生活・経済生活に関する基本的な技能、特に食育の充実が求められる中で、食の重要性を理解し基本的な調理の技能を身に付けることなどが期待される。
  • 民主主義、公正さといった基本的な概念について体験的に理解することが、実生活への活用を視野に入れた場合、特に重要であると考えられる。例えば、学校や学級での集団生活の中で、正義や公正さを重んじて身近なトラブルを解決していく態度や実践などが期待される。
  • 情報教育、環境教育、法教育、経済教育・金融教育、消費者教育など社会の変化に伴って国家・社会の形成者として新たに必要とされる知識・技能の定着のための教育については、学校外の人材や学習機会を有効に活用し、各教科等の関係部分を相互に関連付けながら理解させることが重要である。

豊かな人間性と感性の育成

資質・能力の育成
  • 社会の激しい変化の中で、子どもが、豊かな人間性をもち感性を高めながら主体的に生きていくことができるようにすることが重要である。そのためには、社会の中で主体的に生きるための基本となる価値観や自主的・実践的態度を形成する必要がある。子どもの実情を踏まえると、自他の生命を尊重し、学習や生活などに前向きに取り組む力を育てることを重視し、その前提となる健全な自尊感情や人間関係を築く力などを高めることが求められる。
  • 具体的には、人生や身近な人々との生活をより豊かなものとするために、集団活動を通して自分自身のよさや個性を見出すこと、学びや生活の目標を立てたり、その実現に向けて粘り強く取り組んだりすること、弱いものいじめをしないなど他者を思いやる気持ちをもったり、他者に感謝したり、協力したりする態度や実践が重要である。
  • 学校と家庭との連携を密にして、子どもに対して、「早寝・早起き・朝ご飯」など正しい生活リズムをもたせるなど、基本的な生活習慣を確立するとともに、社会生活を送る上で人間としてもつべき最低限の規範意識を青少年期に確実に身に付けさせることが重要である。
  • あいさつや社会的マナー、他者の痛みを理解する心、感情を適切な方法で表現する力など人間関係を形成するために必要な力を育てるとともに、将来を見通して主体的に判断し、適切に行動できる能力を育てることが必要である。
  • また、自然や芸術作品、人間の気高い行動などの美しさを子どもが感じとること、感じ取ったことを基に、自分の思いや意図をもって言葉や歌、絵、身体などで表現したり創作したりすることなどが求められる。
  • このような教育を通して、人生についての前向きな見通しや他者への思いやりをもって、身近な人々との豊かなかかわりを築くことができるようにすることが求められる。また、自然や美しいものなど人間の力を超えた崇高なものに対する畏敬の念をもつことも重要である。
  • 道徳においては、専門部会では、例えば、「自尊感情をもって自分自身を大切にする自助、社会の中で助け合って生きる共助、そして充実した人生を実現するといった順序立てが必要である」などの意見に見られるように、人間の尊厳と自尊感情を基盤にして、主体的に自己実現をすることを重視したいとの考えが示されている。
  • 一方で、「自尊感情を肥大化させないようバランスが必要である」、「人のものを盗んではいけない、人に迷惑をかけてはいけないなど基本的な内容は、教え込むことが大切である」などの意見も示されている。健全な倫理観などの育成について発達の段階等を踏まえて、適切に指導内容を設定する必要がある。
  • 発達段階に応じた指導に関しては、「心身の急激な変化の中でストレスを感じることの多い中学校期において、例えば、道徳の時間の取組と体験活動(特別活動等)とをより関連付けた指導などの充実が重要ではないか」などの指摘があった。
  • 特別活動については、生活を改善する話し合い活動や異年齢の集団活動や社会体験活動の重要性が指摘されるとともに、「発達の段階に応じて内容を系統的に示すことが必要ではないか」、「キャリア教育で、好きなことを探すだけでは働く意欲に結び付かない面があるので、生きる力、働く力に結び付ける取組が必要である」などの意見が示されている。
  • 音楽や図画工作、美術においては、感性を高め、思考・判断し、表現するという一連のプロセスを働かせる力、主題を発想し、構想を立て、創意工夫をしながら創作活動を行ったり、作品を評価したりする力が重要である。
  • 一人一人の子どもが一個の人間として成長・発達していく過程を大切にしながら、豊かな人生を形成していくために、自分の思いを形にしていくことが必要である。
  • また、芸術文化のよさを味わったり、生活や社会に生かしたり豊かにしたりする態度や実践も重要である。特に、鑑賞は創造行為であり、自分なりの意味、新しい美、自分を発見するなどを大切にする必要がある。
知識・技能の定着
  • 人間や文化・芸術の美しさや尊さ、生命のかけがえのなさなどについては、単に事柄としての知識だけではなく、実体験を通して実感的な理解をもつ必要がある。
  • このため、例えば、乳幼児や人生の先輩たちと触れ合ったり、医師や看護師などから生命に関する話を聞く機会をもったりすることが重要である。また、小さい頃から国民が広く親しんでいる文章や詩歌を音読したり暗唱したり長い間親しまれてきたうたを歌うなどして、自然や芸術作品の音、形、色の美しさなどについて実感をもって理解することなどが重要である。

健やかな体の育成

資質・能力の育成
  • 体育の分野においては、身に付けた身体能力や知識をもとに、生涯にわたり運動やスポーツに親しむことができるようにすることが重要である。
  • 運動やスポーツに取り組もうとする意志などの態度、運動やスポーツにおける様々な動きや健康・安全に関すること、ルールや練習方法に関する工夫など、運動やスポーツに関する思考・判断を身に付けることが必要である。
  • 保健の分野においては、健康や安全に関する情報を正しく判断し、知識を健康管理のための行動に結び付けるようにすることが重要である。
  • 健康の保持増進や生活習慣に関する手立てを考え、状況に応じた対処方法や病気の予防手段を探し、医薬品等について知ろうとする心身の健康に関する関心・意欲・態度,環境悪化予防・改善活動に取り組もうとする環境と健康に関する関心・意欲・態度、危険予測・危険回避や自他の安全への配慮など安全に関する関心・意欲・態度を身に付けることが必要である。
  • このような教育を通して、生涯を通じて自らの健康を管理し改善していくことや、運動やスポーツに親しむこと、体力の向上に取り組むことなどが重要である。
知識・技能の定着
  • 体育の分野においては、基礎的な身体能力や知識を身に付け、生涯を通じて運動やスポーツに親しむことができるようにすることが重要である。
  • 例えば、瞬間的又は持続的に力を発揮したり、柔軟に体を動かしたり、巧みに体を動かしたりする身体能力、生涯にわたって運動やスポーツに親しむための基礎となる技能、運動やスポーツの意義や動き方・学び方などに関する知識、健康に生活するために必要な体力や安全に運動することに関する知識などを身に付けることが必要である。
  • 保健の分野においては、自他の命や健康を大切にし、生涯を通じてまた親として必要となる健康管理や安全に関する内容を理解することが重要である。
  • 例えば、身体機能や生活習慣、病気の発生要因と症状、喫煙・飲酒・薬物乱用の心身への影響等の心身の健康に関する知識・理解,環境や食品等の衛生的管理などの環境と健康に関する知識・理解、事件・事故等の発生要因や危険予測、避難方法や応急手当などの安全に関する知識・理解を身に付ける必要がある。
性教育
  • 学校における性教育については、子どもは社会的責任を十分には取れない存在であり、また、性感染症等を防ぐという観点から、子どもの性行為については適切でないという基本的スタンスに立ち、人間関係の理解やコミュニケーション能力を前提として、心身の機能の発達などの科学的知識、理性により行動を制御する力、自分や他者の尊重の心をはぐくむことなどが重要である。
  • 性教育は、体育・保健体育をはじめとする各教科等の指導の関連を図りながら学校教育活動全体を通じて取り組む必要がある。また、発達段階を踏まえた指導内容の体系化を図ることが必要である。
食育
  • 社会環境や食生活の変化の中で、子どもが望ましい食習慣を身に付け、食品の安全性等に関する判断力を身に付けるよう、食育に取り組む必要がある。
  • 食育については、望ましい栄養・食事の摂り方、食品の安全性、食事を通じた人間関係、各地の食文化の歴史等への理解を総合的にはぐくむ観点から、給食の時間や各教科等における指導内容等の明確化・体系化等について検討することが必要である。
  • 家庭・地域との連携、保護者や地域の理解、給食の時間の活用、栄養教諭等の関与が必要である。

国語力の育成

知識・技能の定着
  • 国語力の育成には発達段階に応じた指導が求められる。例えば、幼児期や小学校低中学年期において身体的・情緒的な活動と関連しつつ獲得するという特質があるので、そうした特質に適う指導が必要である。
  • 小学校段階においては、読むことの力について体験的に身に付けるために、音読や朗読・暗唱が指導上有効であると考えられる。子どもが古典や漢文、名作に触れ我が国の言語文化に親しむ機会とすることも重要である。
  • 国語に関する知識を実生活において活用するために必要な技能として、描写、要約、紹介、説明、記録、報告、対話、討論などの基礎的な言語活動を行う力を確実に身に付けさせる指導の充実が望まれる。
  • 漢字の読み書きなどの基礎的な事項についても、その活用を視野に入れながら、反復学習などていねいな繰り返し指導を通じて定着を図るとともに辞書を日常的に活用する習慣を身に付けることが重要である。
  • その際、例えば、義務教育修了段階までに常用漢字の大体が読め、そのうち1000字程度の漢字が書けることなど、具体的な指標を設定することも考えられる。
思考力・表現力等の育成
  • PISA調査の読解力において低下傾向が見られる。具体的には、文章や資料の解釈・熟考・評価や、論述の設問形式に課題がある。
  • 教育課程実施状況調査についても、全体として正答率は高くなっているが、国語の記述式については低下するなどの課題が見られる。より詳細に分析すると、比較的自由に自分の気持ちを表現する設問については正答率が上昇しているのに対して、文章を深く読んで分析的に理解してその上で記述するという設問では正答率が下がっているとの傾向が見られる。
  • こうした結果を受けて、昨年12月には、文部科学省において、「読解力向上プログラム」が取りまとめられた。このプログラムでは、PISA型の読解力を向上させるために、1.テキストを理解・評価しながら「読む力」を高める取組の充実、2.テキストに基づいて自分の考えを「書く力」を高める取組の充実、3.様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会の充実が求められている。
  • 子どもの社会的自立のために必要な力として、国語力について考えると、「読むこと」と関連付けた形で、「書くこと」を充実していく必要がある。このため、例えば、文章や資料を読んだ上で、A4・一枚(1000字程度)で自分の考えをまとめて表現することができる力を身に付けさせることなどが重要である。
  • こうした力を国語科を中核としながら、国語科以外の教科等と連携して、すべての教育活動を通じて育成していくプロセスを明確にした指導が求められる。例えば、各専門分野での調査研究ができるよう、自分で課題を設定したり課題を追究したりできること、読んだり聞いたりしたことを評価したり応用したりできること、などが考えられる。
  • 都市化や核家族化、情報メディアの発達の中で、子どもが集中力をもって相手の話を聞く機会が乏しくなっていることから、相手の気持ちを理解しながら「聞く力」を育てる指導や、それを 生かした「話す力」を育てる指導が重要である。
  • 国語教育は、我が国の文学や言語文化を継承・発展させるという大きな使命がある。文学や言語文化に親しみ、創造したり演じたりするのに必要とされる、読書、鑑賞、創作などの言語活動ができることが重要である。
学習意欲・学習習慣
  • PISA調査によれば、趣味として読書をする子どもが諸外国に比べて少ないとの結果になっているところであるが、上記の力の基礎を育てるためには、幼少期からの読書習慣を確立し、様々な文章や資料を読む機会を充実することが求められる。そのため、朝の読書など読書活動の推進を図るとともに学校図書館の充実を図ることなどが必要である。
メディア・リテラシー
  • 携帯電話・パソコン・インターネットなどメディアの普及・多様化が急速に進む中で、これらが言葉、コミュニケーション、マスコミュニケーションに大きな影響を与えていることから、メディア・リテラシーの育成の観点から国語科を中心に、各教科等との関連を図りつつ、学校教育活動全体の中で指導の充実を図る。
  • その際、例えば、小学校段階では、通常の話し言葉や書き言葉との違いを理解すること、使用に当たって自他を傷つけることのないよう十分注意させることなどについて指導すること、中学校段階では、抽象的思考、科学的理解ができるようになるので、各教科において、学習内容の進展に伴い、活用のための基礎を習得させることなどについて指導することが考えられる。

理数教育の改善充実

知識・技能の定着
  • 算数・数学については、TIMSS調査の中学校数学で前回よりも平均点が低く、教育課程実施状況調査の中学校数学で前々回の同一問題との比較で正答率が低い問題が多い。
  • 算数・数学における数や計算、図形などの基礎的・基本的な知識・技能は、国語力と同様、生活や学習の基盤となるものであることから、具体物を用いた実感的な理解、実生活への活用を考慮に入れつつ、反復学習などていねいな繰り返し指導により確実に定着させることが必要である。
  • 図形についての直観的な理解については、適切な段階で適切な題材を取り上げる。また、実生活との結び付きが深い統計などについては、指導を充実する必要があるのではないかとの指摘があった。
  • 理科については、TIMSS調査の小学校理科において実体験が裏付けとなっている設問において正答率が低いものが見られる。
  • 我が国の子どもが、自然事象に接する機会が乏しくなっている状況を踏まえて、自然事象についての体験的な理解を重視する必要がある。
  • 小学校低学年の生活科は、体験的・実感的な理解を重視しており、子どもの自然現象への興味・関心を高めることにつながっているとの意見がある。今後は、中学年以降の理科の学習を視野に入れて、子どもが自然事象について、知的好奇心を高め科学的な認識の基礎を養うことができるよう必要な指導を充実することについて検討する必要がある。
  • 国民の科学に対する関心が低いことを踏まえ、理科教育については生涯にわたって、科学に関心をもち続けられるようにするという観点から、見直す必要があるのではないかとの意見があった。その際、物理・化学・生物・地学の基礎、とりわけ共通の基礎となる内容の設定を含め、引き続き検討する。
  • 理科に対する国民的な理解を高めるためには、子どもの知的好奇心を駆り立てる内容、実生活に密着した内容で組み立てることができないか、科学史上の著名な発見や原理などについて理解させることが必要ではないか、などの意見があった。
  • 理科の内容については、例えば、生命科学などの近年急速に進展した内容を考慮して教育内容を見直す必要があるのではないかとの意見があった。
  • 算数・数学や理科については、教育内容が積み上げ型になっているが、小・中・高等学校を通じての内容面・能力面での系統性を重視する必要がある。その際、学問的な系統性だけでなく、発達や学年の段階に応じた反復(スパイラル)の中で確実に定着させることができるよう教育内容の工夫を行うことが必要である。また、算数・数学と理科相互の内容的な関連性についても考慮する必要がある。
思考力・表現力等の育成
  • PISA調査の科学的活用能力、数学的活用能力は国際的に見て上位水準にあるが、数学的活用能力は低下傾向にある。数学、理科のいずれも、解釈を要する設問、自分の考えや根拠を明らかにして論述する設問に課題があるとされている。
  • 現行学習指導要領においても、算数・数学の学習で身に付けた知識・技能を活用することは目標として設定しているが、PISA調査の数学的活用能力の結果に見られるように、身に付けた知識や技能を実生活に活用する力は十分に育っているとはいえない。
  • 算数・数学においては、作業的・体験的な活動を通じて、事象の中に潜む関係を探り規則性を見いだしたり、これを分かりやすく説明したり一般化したりするなどの算数的活動・数学的活動をより一層充実する必要がある。
  • 理科においては、見通しや目的意識をもった観察、実験を通して探究的な活動を一層充実する必要がある。
  • 算数・数学においては、小数や分数の計算の意味、関数や確率について、理科においては、粒子やエネルギーなどの基本的な概念について、実生活と関連付けたり、体験したりして理解することが重要である。また、、様々な数量的なデータを分類整理し比較したり、グラフ化したりすること、仮説を立てて実験し評価し改善することなど、実感を伴って理解し、論理的に思考し適切に表現する力を、国語力の育成とも関連させながら確実に育成することが重要である。
学習意欲・学習習慣
  • PISA調査では、数学で学ぶ内容に興味がある生徒が国際平均値より低く、TIMSS調査では、数学や理科の勉強を楽しいと思う生徒の割合が国際平均値より低かった。実生活と関連付けた指導の充実を図るなどして、算数・数学や理科を学ぶことの意義や有用性を実感する機会をもたせることが重要である。

外国語教育の改善充実

知識の定着
  • 教育課程実施状況調査において、英語を理解するための基本的な語彙や構文などが一部定着していないとの結果が示されている。
  • 今後は、発信力が重視されるので、基本的な語、連語及び慣用表現の意味と使い方がわかることなどといった基礎的・基本的な知識を定着させることが必要である。
技能の定着
  • 教育課程実施状況調査では、全体として聞くことは良好である。一方、話すことについては、全体として抵抗感はなくなってきているが、英語が使えるというレベルでは必ずしも十分でないとの意見がある。
  • 簡単な表現を用いて外国語によるコミュニケーションを図れることなど、外国語の習得という観点から、基本的な英語の音声の特徴をとらえ、正しく聞きとり発音することができることなどの技能を確実に定着させる必要がある。
  • また、教育課程実施状況調査では、書くことが良好ではない。特に内容的にまとまりのある一貫した文章を書く力が十分身についていない。文字や符号を識別し、正しく読み、書くことができることを確実に定着させることはもとより、文レベルでなく文章レベルの訓練が必要ではないかとの意見がある。
理解力・表現力等の育成
  • 事実関係の伝達、物事についての判断、様々な意見等についてコミュニケーションを図れることが重要であり、コミュニケーションのツールとしての英語を使った発信力が重要である。
  • 例えば、1分間150語程度の速さの標準的な英語を聞き取ることができること、与えられたテーマについて1分間程度のスピーチができること、300語程度の英語を読んで概要をとらえることができること、与えられたテーマについて、短時間で5文程度のまとまりのある英文を書くことができることなど、具体的な到達水準を設定して、理解力・表現力等の育成を進めていくことが考えられるのではないか。
関心・意欲・態度等
  • 教育課程実施状況調査においては、英語が大切だ、普段の生活や社会に出て役立つと考えている生徒は、他の教科に比べて多いのに対して、授業がわからなくなる生徒の割合が他の教科より高い傾向にある。
  • 学ぶ意欲を高めるためには、例えば、自分の考え方や文化・生活を相手に伝える言葉としての英語との位置付けを明確にしてはどうか。また、ディベートなどで生徒の問題意識を掘り起こすことが、読んだり書いたりすることの意欲を引き出すことにつながったり、英語は手段だという体験になったりするとの意見もあった。
  • 英語の学習に当たっては、世界や我が国の生活や文化についての理解、言語や文化に対する関心、国際社会に生きる日本人としての自覚を養うことが重要である。
小学校段階における英語教育の充実
  • 国際コミュニケーションの観点から、英語の必要性はますます高まることが予想されるが、国民の英語運用能力は国際的に見て十分でなく、英語教育の充実が必要である。その際、例えば英語を聞く力や話す力を高める上で、英語活動を通じて小学校段階の子どもの柔軟な適応力を生かすことが有効であるとの意見がある。
  • 現在、総合的な学習の時間などを活用した小学校段階の英語活動は約9割の学校で実施されており、例えば第6学年では年間約13単位時間(1単位時間は45分)程度の教育活動が行われているものの、必ずしも十分な成果が上がってないとの意見も出されている。
    また、構想改革特別区域等において、教科として英語教育を実施している公立小学校もある。
  • 義務教育に関する意識調査等においても保護者や自治体関係者から充実を求める声が強い。国際的にも、EUにおけるフランスや、中国・韓国など近隣アジア諸国を含めて、国家戦略として、小学校段階における英語教育を実施する国が急速に増加している。
  • このような状況の中で、国としては、答申で既に提言しているとおり、「小学校段階における英語教育を充実する」必要がある。
  • このため、外国語専門部会において、義務教育として教育の機会均等を確保するため、仮にすべての学校で共通に指導するとした場合の指導内容を明らかにするため必要な検討を進めている。
  • 検討に当たっては、小学校英語を実施するに当たって指摘されている課題、例えば、国語力の育成との関係、中学校・高等学校の英語教育との関係はどう整理するのか、条件整備の面での課題などを念頭において、検討を進めている。)
  • これまでの審議では、小学校における英語に関する教育の内容として、
    1. 小学校段階では、音声やリズムを柔軟に受け止めるのに適していることなどから、音声を中心とした英語のコミュニケーション活動や、ALTを中心とした外国人との交流を通してスキル面を中心に英語力の向上を図ることを重視する考え方(英語のスキルをより重視する考え方)
    2. 小学校段階では、言語や文化に対する関心や意欲を高めるのに適していることなどから、英語や国語を通じて言語や文化に対する理解を深めるとともに、ALTや留学生等の外国人との交流を通して、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、国際理解を深めることを重視する考え方(国際コミュニケーションをより重視する考え方)が示されている。
  • 1.の考え方については、例えば、スキル面の高まりはある程度期待できるが、小学生にとっては実際にスキルを活用できる場面は限られていることから、多くの子どもにとって、中学校に入学するまで英語に関する興味・関心を持続することができにくいのではないかといった懸念がある。
  • 2.の考え方については、中学校・高等学校における英語教育を視野に入れた英語教育の基盤となる力を養うことができること、グローバル化社会の中で求められる国際コミュニケーション能力の育成や学習意欲の継続、国語力との調和という点では優れているが、コミュニケーションを図ろうとする態度や国際理解は、客観的に測定したり検証したりすることが難しく、その成果が見えにくいという懸念がある。
  • また、教材や指導者等の確保等の条件整備については、中・高等学校教育との連携を含めて、具体的な教育目標や内容、教育課程上の位置付け(教科とするか、総合的な学習の時間の一環とするかなど)、開始学年とも関連する事項である。

総合的な学習の時間の改善・充実

創設の趣旨及び現状
  • 「総合的な学習の時間」を創設した趣旨については、平成10年の教育課程審議会の答申において、「各学校が地域や学校の実態等に応じて創意工夫を生かして特色ある教育活動を展開できるような時間を確保すること」であり、また、「自ら学び自ら考える力などの[生きる力]は全人的な力であることを踏まえ、国際化や情報化をはじめ社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成するために教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習をより円滑に実施するための時間を確保すること」であるとしている。
  • 「総合的な学習の時間」のねらいについては、同答申では、「各学校の創意工夫を生かした横断的・総合的な学習や児童生徒の興味・関心等に基づく学習などを通じて、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることである。」としている。また、「情報の集め方、調べ方、まとめ方、報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身に付けること、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育成すること、自己の生き方についての自覚を深めることも大きなねらいの一つ」としている。これらを通じて、「各教科等それぞれで身に付けられた知識や技能などが相互に関連付けられ、深められ児童生徒の中で総合的に働くようになる」ことを目指している。
  • 総合的な学習の時間については、先般の義務教育改革に関する答申では、「大きな成果を上げている学校がある一方、当初の趣旨・理念が必ずしも十分に達成されていない状況も見られる。また、義務教育に関する意識調査の結果によると、総合的な学習の時間については、全体として評価が高いが、小学校と中学校では教師、保護者、子どもの意識や評価に差があることが明らかになった。」と分析している。
  • その上で、「思考力、表現力、知的好奇心や自分で考える力などを育成する上で総合的な学習の時間の役割は今後とも重要であるが、同時に、授業時数や具体的な在り方については、各教科等との関係を明確化するなど改善を図ることが適当である。その際、全国的に一律に定めるのか、学校の裁量による弾力的な取扱いができるようにするのかなどを考慮する必要がある。」としている。
  • さらに、「学習が効果的に行われるよう、学校に対する支援策を充実することが必要である。さらに、総合的な学習の時間の充実のためには、学校外の人材の協力と地域との連携が重要である。」と指摘している。
  • 教育課程部会及び専門部会においては、例えば、「課題発見能力や課題解決能力など見えない学力をはぐくむためにも重要である」「自分の生き方を見つめさせることが重要である」などの意見が数多く示され、総合的な学習の時間の必要性や重要性については、共通理解が得られている。
支援策等
  • 一方で、義務教育に関する意識調査の結果やスクールミーティングでの意見等を踏まえ、準備・計画の負担が重い、教科の時間とのバランスを考慮すべきとの意見が目立った。現状のままでは、そのねらいとするところを達成することが必ずしも容易でないことから、講ずるべき所要の手立てについて議論を行っている。
  • 専門部会においては、例えば、各学校における実態に差があるとの状況を改善するためには、子どもに身に付けさせたい具体的な力を明らかにするため、各学校における実践を踏まえつつ、総合的な学習の時間のねらいの明確化や学習活動等の示し方について検討する必要があるとの意見が出されている。
  • 総合的な学習の時間については、各学校において、例えば、
    1. 国際理解、情報、環境、福祉・健康等の教科横断的な学習
    2. 子どもによる課題設定と調査研究、作品製作、学習成果の発表会等の学習
    3. 自然体験、職場体験、奉仕体験等の学習
    などが行われている。
  • 上記1.については、国際理解、情報、環境、福祉・健康など特定の領域の教育について、関連する教科の内容との関係を整理する必要がある。
  • 上記2.については、中学校の選択教科の学習との関係を整理、検討することが必要である。
  • 上記3.については、子どもの個性を伸ばし、夢や目標に挑戦する力を育てていく上で重要な役割を果たすものである。特に、学習面では、課題探究型の学習と結び付くことで、学習意欲の向上にも資するものと考えられる。
    その一方、特別活動との関係を整理することが必要である。
  • 総合的な学習の時間は、本来、学校の裁量を拡大するとのねらいがあるのであり、授業の準備を含めて現場での実践が容易ではないことは理解するが、徐々に定着しせっかく良い芽が育ち始めているということもあり、各学校や教員にもう一段の創意工夫を求めたいとの意見も強く示されている。
  • しかし、その場合であっても、優れた先進事例の情報提供やコーディネートの役割を果たす人材を育成・確保する、地域や教育委員会の支援システムを構築するなどの支援策を講じることが必要である。
  • 平成18年度政府予算案でも、学校におけるコーディネーターを育成するための研修会の開催経費その他が盛り込まれているが、国及び自治体のそれぞれの段階において、具体的な支援策を積極的に進めていく必要がある。
  • また、小・中・高等学校の連携を求める意見も多く指摘された。小学校においては、どちらかといえば、体験的に理解することに中心が置かれ、中高等学校と発達段階が上がるにしたがって、主体性を重視することとなるが、地域によっては、同じ題材が繰り返されることがあることから、連携の必要性について意見が出されている。
  • なお、子どもの主体性を重視するという観点から、総合的な学習の時間における学びの足跡を学習ファイルや作品、卒業論文として残していくことを心がけなければならないといった意見もあった。
  • 総合的な学習の時間の授業時数については、教科等との関係の整理、具体的な支援策の動向等も踏まえつつ、総授業時数及び各教科等の授業時数について全体として見直す中で検討することが必要である。

中学校における選択教科

  • 中学校における選択教科は、各学校の主体的な判断により生徒の特性等に基づく多様な学習活動を幅広く展開できる時間として、総合的な学習の時間と並んで、例えば第3学年においては105から165単位時間(週当りで3から4.7単位時間)位置付けられている。
  • 選択教科については、創意工夫により生徒に対してその興味・関心、能力・適性等に即した多様な学習機会を提供している学校も見られるが、義務教育に関する意識調査においても、中学校の教員で選択教科などで学習内容の選択幅を広げることに賛成(「賛成」、「まあ賛成」の計)なのは24.3パーセントに過ぎないなど選択幅を広げることに消極的である。
  • 教育課程部会においては、限られた時間数の中で教育課程が複雑になるとそれぞれが薄くなってしまうので、必修教科を重視し、時間をかけて徹底すべきなど、時間数の在り方を工夫すべきとの意見があった。他方で、選択教科の子どもの選択能力の育成という趣旨を踏まえる必要があるとの意見が出されている。

部活動の取扱い

  • 部活動は、主として放課後に、特に希望する生徒によって行われる活動であり、学校において計画する教育活動として位置付けられている。
  • 部活動については、全日本中学校長会から「部活動がこれまで中学校教育において果たしてきた意義や役割を踏まえ、部活動を学習指導要領に位置付ける方向で検討」すべきとの意見が出されている。これについては、今後引き続き検討を行うこととしている。

授業時数の見直し

  • これまで教育内容の改善について教育課程部会の意見の状況を紹介したが、文部科学大臣からは「授業時数等の見直し」について審議することが求められている。
  • 我が国の小・中学校等の授業日数は約200日間であり、諸外国と同様に、学校週5日制を実施していることから国際的な状況と同水準である。また、在校時間は、小学校4年と中学校2年との比較では国際的に遜色ないが、授業時数については、国際平均より短い状況にある。
  • 授業時数の在り方については、各教科等の教育内容について、子どもに求められる教育内容をどのように設定するかが、議論の前提となる。
  • また、後述するように、各教科等の授業時数の量的な問題とは別に、現在は標準として定められているその扱い、学年ごと教科ごとに示されているその示し方について、柔軟化することも検討する必要がある。
  • 各教科等の授業時数の在り方については、専門部会の議論を踏まえつつ、教育課程部会において、学校の実態や社会の要請も考慮した上で、各教科等を見渡した立場で総括的に審議を行うこととする。
  • 総授業時数については、教育内容の見直しと併せて、検討することとする。その際、特に、小学校低学年については、幼児教育における預かり保育等の実態を考慮して、在校時間や授業時数の在り方を検討することが必要であるとの指摘がある。

(3)発達や学年の段階に応じた教育課程編成や指導の工夫

  • それぞれの学校段階の役割の基本については、平成10年7月の教育課程審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について(答申)」において次のように整理されている。
    • 幼稚園においては、幼児の欲求や自発性、好奇心などを重視した遊びや体験を通した総合的な指導を行うことを基本とし、人間形成の基礎となる豊かな心情や想像力、ものごとに自分からかかわろうとする意欲、健全な生活を営むための必要な態度の基礎を培い、小学校以降の生活や学習の基盤を養うことが求められていること。
    • 小学校においては、個人として、また国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識・技能・態度の基礎を身に付け、豊かな人間性を育成するとともに、自然や社会、人、文化など様々な対象とのかかわりを通じて自分のよさ・個性を発見する素地を養い、自立心を培うことが求められていること。
    • 中学校においては、義務教育の最終段階として、また、中等教育の前期として、個人として、また、国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識・技能・態度を確実に身に付け、豊かな人間性を育成するとともに、自分の個性の発見・伸長を図り、自立心を更に育成していくことが求められていること。
    • 高等学校においては、義務教育の基礎の上に立って、自らの在り方生き方を考えさせ、将来の進路を選択する能力や態度を育成するとともに、社会についての認識を深め、興味・関心等に応じ将来の学問や職業の専門分野の基礎・基本の学習によって、個性の一層の伸長と自立を図ることが求められていること。
  • このようなそれぞれの学校段階の役割の基本は変らないものと考えられるが、例えば、いわゆる小1プロブレムが指摘される中で、幼児教育と小学校の具体的な連携方策を教育課程上明確に示すべきとの意見が出されている。就学前の段階で子どもに育つことが期待される力は何か、また、それが十分でない場合には、小学校はどのように指導に当たるべきか、あるいは接続を円滑にするためにどのように指導に当たるべきか具体的に議論を進める必要がある。
  • また、例えば、小学校と中学校との接続については、例えば、不登校や暴力行為などの発生件数が小学校第6学年と比べ、中学校第1学年で飛躍的に増加するなどの問題がある。また、研究開発学校の調査によれば、小学校の中学年から高学年にかけて、子どもの自己理解や人間関係に関する考え方が大きく変化するとの結果も示されている。
  • 教育課程部会や教育課程企画特別部会では、子どもの発達や学年の段階については、個人差や性差はあるものの、一般的に小学校の低学年までは主として具体的な活動を通して認識し、中学年から高学年にかけて徐々に物事を対象として抽象的に認識可能になるといった意見が多く出された。
  • このような観点からは、様々な事情や背景を抱えている子どもがおり、発達段階の違いがあることも十分配慮した上で、個々の子どもの状況も踏まえながら、例えば、小学校低学年から中学年までは、体験的な理解や具体物を活用した思考や理解、反復学習などの繰り返し学習といった工夫による読み・書き・計算の能力の育成を重視し、中学年から高学年にかけて以降は、体験と理論の往復による概念や方法の獲得や討論・実験・観察による思考や理解を重視するという指導上の工夫が一層可能なように教育課程を編成することを検討する必要がある。

(4)学校週5日制の下での学習機会の拡充

学校の役割と家庭の役割

  • 答申では、学校の役割と家庭の役割について、以下のように指摘している。
    • 学校は、子どもたちが集団生活をする中で、義務教育の目標が実現されるよう、発達段階に応じて、教育内容を体系的に編成して提供し、組織的、計画的な教育を行うことを、その基本的な役割としている。また、学校がその役割を果たす上で、家庭や地域との連携・協力が大変重要である。
    • 特に、平成8年7月の中央教育審議会答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)」以来、学校の役割を巡っては、学校、家庭、地域の連携、とりわけ家庭、地域の教育力の充実が必要であるとの基本的な方向がとられ、それに沿って、学校週5日制が導入され、子どもの居場所づくりなどの施策が推進されている。
    • 学力の向上をはじめ子どもたちの健全な育成のためには、家庭と連携して、睡眠時間の確保、食生活の改善、家族のふれあいの時間の確保など、生活習慣の改善が不可欠である。子どもの育成の第一義的責任は家庭にあり、教育における保護者の責任を明確化することが必要である。
    • また、学校外の多様な学習活動について、情報提供や支援を行い振興を図っていくことも有効である。
      さらに、大人が家庭や地域で子どもの教育に十分役割を果たせるようにするためには、大人の働き方の問題がかかわっており、企業の協力も必要である。男女共同参画社会において、職業をもつ母親が増えており、子育てと職業が両立できるようにするための行政や企業の取組、父親の子育てへの参画のための環境作りも求められる。
    • 他方、今日、朝食をとっていない子どもの問題など、家庭や地域の教育力が依然として不十分な現状、あるいは今後更にそれらの教育力が低下する懸念、格差拡大の懸念などを背景として、学校と家庭、地域との役割分担の在り方が改めて議論されている。
    • 本審議会でも、家庭や地域の教育力を取り戻すことは難しく、学校への期待は大きいとの意見、一方で、本来家庭や地域が果たすべき機能を学校に持ち込むのではなく、家庭や地域がその責任を果たすことが必要であるとの意見、家庭の教育力が低下しているからといって学校の役割を拡大しても、子どもの心の満足は得られず、家庭の教育力は学校で代替できる性質のものではないとの意見などが出された。学校週5日制についても、両方の立場から様々な意見が出された。
    • このほか、家庭の支援のための福祉行政との連携の必要性、ゲーム・テレビの影響などマスメディアを含め大人社会の在り方の問題なども意見として出された。また、学校と、家庭・地域とが共同し、両方が教育力を高めるべきとの意見も出された。
    • このような観点から、学校週5日制についても、学校、家庭、地域の三者が互いに連携し、適切に役割を分担し合うという基本的な考え方は今後も重要であり、それを基本にしつつ、地方や学校の創意工夫を生かすことについて、今後さらに検討する必要がある。その際、特に、学校、家庭、地域の協力・共同の取組をこれまで以上に強化するための方策、土曜日や長期休業日の有効な活用方策等を更に検討する必要がある。

学校週5日制の下での学校と家庭・地域の具体的連携策

  • 教育課程部会では、学校週5日制については、学校、家庭、地域の三者が互いに連携し、役割分担しながら社会全体で子どもを育てるという基本理念の下、社会全体の週休2日制の導入とともに、長い時間をかけて段階的に導入された社会システムであることを前提として議論が行われた。
  • 家庭や地域の教育力の現状にかんがみ、隔週で土曜日を活用したり、高等学校は区別してはどうかとの意見もあったが、「学校週5日制のねらいとするところを大切にすべきである」、「地域や自治体の取組が実を結び始めている」などの意見が示され、学校週5日制は、国の仕組みとしてこれを維持すべきとの意見が大勢であった。
  • 各地域においては、学校、家庭、地域の三者の連携・協力を進めることにより、体験的な学習や地域の人材の活用が様々な形で進められている。
  • 家庭や地域におけるこうした主体的な取組を全国的なものとして広げていくことが必要であり、その際、例えば、保護者(特に、父親)の参加、地域の大学との連携、実業団のスポーツ選手との交流などの重要性が指摘する意見が示されている。
  • 学校週5日制の下での土曜日に行われる児童生徒の自主的・自発的な学習活動(探究的な学習、体験活動、発展的な学習、補充的な学習など)については、学校教育活動と同等の成果があると判断されるものについては、学校の学習評価においても、積極的に評価することも考えられるとの意見もある。
  • 学校週5日制の下での土曜日や長期休業日については、家庭や地域社会との連携を促進する方向で、活用方策を検討することが必要である。
  • 学校週5日制の下での長期休業日の取扱いについては、確かな学力を定着させるための授業時間の確保という観点から、一部の地域において、夏休みなど長期休業期間を授業日に充てる取組が行われている。
  • 今後は、例えば、サマースクールなどの形式で補充的な学習や発展的な学習などを選択的に行うことができるような柔軟な授業形態を導入することも考えられるのではないかとの意見もある。

3.学校教育の質の保証<学習指導要領全体の見直しの視点2>

(1)基本的な考え方

  • 答申では、義務教育の構造改革において、義務教育システムを国の責任によるインプット(目標設定とその実現のための基盤整備)→実施の責任を有する自治体や学校が担うプロセス(実施過程)→国の責任によるアウトカム(教育の結果)の検証という構造で捉えている。
  • こうした基本的な考え方を教育内容や方法の改善に当てはめてみると、まず、目標の設定については、義務教育の目標を明確化することも踏まえて、国が各教科の到達目標を明確に示すことが必要である。そして、こうした目標を実現するために優れた実践事例に関する情報提供などの基盤整備も国の役割である。
  • また、各学校が、子どもの状況等を踏まえて生き生きとした教育活動を行うためには、その実施プロセスを柔軟で弾力的なものとする必要がある。学習指導要領は、すべての子どもに対して指導すべき内容を示す基準であり、学校においては、必要がある場合には、これに加えて指導することができる。国民として共通に学ぶべき学習内容を明確に定めた上で、学校ができるだけ創意工夫を生かして教育課程を編成できるようにすることが求められる。
  • 教育の結果の検証については、到達目標の明確化とも関連するが、子どもが学習を進めるに当たって具体的な指針となるよう、具体的な評価の在り方や規準について引き続き検討することが必要である。また、国においては、子どもの学習到達度の把握・検証のため、全国的な学力調査を実施することが適当である。
  • こうした義務教育の構造改革という観点を踏まえ、学校教育の質を保証するため、学習指導要領の見直しについては、
    1. 学習指導要領における到達目標の明確化
    2. 教育課程編成実施に関する現場主義の重視
    3. 情報提供その他の基盤整備の充実
    4. 教育成果の適切な評価
    という視点に立って検討を進めることが必要である。

(2)学校教育の質の保証

学習指導要領における到達目標の明確化

  • 学校教育の目標を明確化するため、特に義務教育については、国が各教科の到達目標を明確に示すことが必要である。
  • 各教科の到達目標については、まず、到達目標をどのようなものとして設定するかという問題がある。基礎的・基本的な内容で、すべての子どもが到達を目指すものとして考えるべきではないかとの意見、現在学校で用いられている学習の評価規準との整合性を踏まえるべきであるなどの意見が示された。
  • また、到達目標に達しない子どもの扱いについては、補充的な指導を十全に行うべきであるとの意見が多かった。
    さらに、基本的な生活習慣についても、家庭教育で取り組むべき目標として示していくことが必要ではないかとの意見もあった。
  • 学習指導要領に示されている教育内容は、いわゆる基礎・基本であり、特にその内容が精選されている以上、そのすべてを確実に修得させることを目指すとの考え方が基本となるが、その一方で、義務教育を修了しても四則計算の基本が十分に身に付いていない子どもがいることも指摘された。
  • 教育の機会均等を目標とする義務教育において必要な水準を確保するためには、知識・技能の面では、「読み・書き・計算」のような、基礎・基本の中でも特に実生活に直接に関わるような内容について、反復学習や補充的な学習等を通じて確実に定着させることが求められる。
  • 思考力や表現力などの能力の面の目標については、例えば、PISA調査において知識・技能を実生活に活用する力を問うて計測しようという試みを行っているので、こうしたことを参考としながら、検討を行っている。
  • その際、できるだけ具体的なものとするため、例えば、「A4・一枚(1000字程度)で自分の考えを表現する」などの例示を示すことについて検討を行っている。

教育課程編成に関する現場主義の重視

  • 上記アで示したように、到達目標を明確にするための検討が進められているが、同時に、その到達目標を達成するための各学校の具体的な取組については、可能な限りそれぞれの創意工夫を生かす仕組みとすることが求められる。
  • 学習指導要領はすべての子どもに共通に教える内容を示している(学習指導要領の「基準性」)。このことを前提としながら、今後の学習指導要領の在り方を考えるに当たっては、国として全国的な教育の機会均等や教育水準の維持向上のために必要な役割を果たしつつ、同時に、地方自治体や学校の自由度をいかに高めるかという観点が重要である。
  • 教育内容の設定については、現行学習指導要領で定められた共通の指導内容について、「(○○(まるまる)の)事項は扱わないものとする」等と定める、いわゆる「はどめ規定」は、もとよりこれらの発展的な内容を教えてはならないという趣旨ではないが、この点の周知が不十分であることにかんがみ、その在り方を見直すべきとの意見が出された。
  • 授業時数については、現在、総授業時数及び各教科等ごとの授業時数について、学校教育法施行規則で「標準」として規定されているが、各学校において年度当初の計画段階から標準を下回って教育課程を編成することは通常考えられないとされている。
  • 教育課程部会においては、各学校の創意工夫を生かすという観点から、各教科等ごとの授業時数については、柔軟に扱えるようにすべきではないかとの意見があった。その際、各教科等ごとではなく、複数の教科等の授業時数をまとめて示すことも一つの方法ではないかという意見があったが、一方で、入学試験等の内容に影響を受けるので、引き続き教科等ごとの時間設定を基本とすべきとの意見もあった。
  • このことについては、諸外国では、1.各学年・各教科ごとの授業時数の設定を学校に任せている例、2.複数の学年・教科をまとめて年間の授業時数を定めている例などがあるので、議論を深めるため、例えば、合科的な指導をより柔軟に行うためには、どのような教科等の組み合わせが考えられるかなど、各学校の教育課程編成に当たっての柔軟性を高めるための仕組みや、その際の学校の説明と公表の在り方などについて、さらに検討を行うことが必要である。
  • 学習指導要領によらない教育課程編成が可能な仕組みとしては、研究開発学校制度と構造改革特別区域研究開発学校設置事業)があるが、学校教育の目標や各教科の到達目標を明確にすることを踏まえ、義務教育の共通性の確保などにについて国が責任を果たしつつ、一定の教育成果を上げている学校が学習指導要領の特例措置を講じようとする場合にはより弾力的に対応することを今後検討する必要がある。

情報提供その他の基盤整備の充実

  • 学習指導要領における目標や内容の示し方については、現実には、教師にも個性があり、能力の違いもあるので、教育の機会均等を確保する観点から、学習指導要領がそういった差を埋めるためのマニュアルであることが重要であるとの意見があった。また、学習指導要領の理念や目標は素晴らしいが、それを実現するための手立ての部分が明確でないのではないかとの意見が示された。
  • 学習指導要領が大綱化・弾力化したことによって、その記述自体が薄くなっているが、このために、学習指導要領の趣旨が、学校に伝達されるまでの過程において、解釈の余地を生み、例えば、子どもの主体性や興味・関心を重視するあまり、教師が子どもに対して必要かつ適切な指導を実施せず教育的な効果が十分上がっていない取組など、教育実践に影響を与える結果となったのではないかとの意見もあった。
  • このため、教育課程に関する情報提供について、これをより積極的に行うことによって、各学校における教育課程に関する裁量を実質的に拡大することが必要である。学習指導要領の記述の在り方を含め、検討する必要がある。
  • その際、教師だけでなく、保護者をはじめとする国民や社会に対して、学校教育の目標やそれを実現するための学校教育活動の構造をわかりやすく示ことが必要である。例えば、総則と各教科等との関係や各教科等相互の指導内容の関連性について、図表などを用いてなどをよりわかりやすい形で明確に示していくなどの工夫を凝らすことが考えられる。
  • 指導方法については、従来の一斉指導の方法を重視することに加えて、習熟度別指導や少人数指導、発展的な学習や補充的な学習などの個に応じた指導を積極的かつ適切に実施する必要がある。これらの指導形態における指導方法の確立が望まれる。
  • 子どもの学習意欲を高めることが課題となっていることから、年間の読書冊数や各種検定への取組など具体的な目標設定の工夫が重要であると考えられる。指導方法の事例蓄積や分析によって、優れた授業方法を教師の間で共有化したり、子どもがどこでつまづくのかなどについての研究成果を示すなど、学校、教職員と行政が情報を共有することは教師への支援として重要であるとの意見があった。
  • 教科書、教材の質、量両面での充実も必要である。特に、教科書については、義務教育の質の向上を図る上で主たる教材として重要な役割を果たすものであり、子どもが学習内容について十分に理解を深め、基礎・基本を確実に身に付けられるよう工夫され、かつ、特色ある教科書が提供されることが必要である。
  • 子どもの状況の変化や保護者や社会からの要請の多様化・高度化する中で、教師の仕事はこれまで以上に多岐にわたっている。社会全体の価値観が多様化するなかで、子どもの教育をめぐって学校の指導の在り方について、説明を求められる場面が多くなり、教師が相当のエネルギーを傾けているとの指摘もある。教育委員会に学校に対する意見申し立てのための第三者機関を設けているとの取組も紹介された。
  • 学校が作成する事務的な調査資料等の量が増加しているとの指摘がある。文部科学省を含め、教育行政においては、調査の必要性について見直し、ICTの活用、調査の実施時期・調査期間などの実施方法を工夫することによって、学校の事務負担の軽減を図ることが望まれる。
  • 基盤整備という観点からは、教育成果を高めるとともに情報活用能力など社会の変化に対応するための子どもの力をはぐくむため、ICT環境の整備、教員のICT指導力の向上、校務のICT化等の教育の情報化が重要である。
  • 政府においても、2005年度までに世界最先端のIT国家を目指して策定したe-Japan戦略において、教育の情報化についての目標が定められたが、文部科学省が行った「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によれば本年9月末現在における目標達成は極めて厳しい状況となっている。
  • 文部科学省としても、次期IT戦略において教育の情報化に関する新たな目標を策定するなど一層の推進を図ることとしており、今後、各地方公共団体においても積極的に教育の情報化に取り組むことが期待される。
  • 答申においては、子どもたちの「人間力」を豊かに育てることが改革の目標であるとしつつ、学校の教育力、すなわち「学校力」を強化し、「教師力」を強化することを通じて、これを育てるとしている。
  • また、同答申では「確固とした教育条件を整備する」ため、「国と地方が協力して」、教職員配置、設備、教材、学校の施設など教育を支える条件整備を確固たるものとする必要がある。」としている。
  • この答申に基づき、義務教育の基礎をしっかりと保障し、義務教育の質の向上のための構造改革を進めていく必要がある。

教育成果の適切な評価

  • 各学校における教育の質の保証のためには、その成果の適切な評価が重要である。
  • 子どもの学習の評価については、到達目標に照らしてより確実な習得に資するようにすること、学習発表会や各種検定など学習の進捗状況や知識技能等の獲得が目に見えて実感できるような評価の工夫など、具体的な評価の在り方について今後検討が必要である。また、子どもの学習機会をより豊富なものとする観点から、家庭での学習課題(宿題)や学校外の学習活動の評価の在り方についても検討することが必要である。
  • 全国的な学力調査については、答申において次のように提言されている。
    • 各教科の到達目標を明確にし、その確実な習得のための指導を充実していく上で、子どもたちの学習の到達度・理解度を把握し検証することは極めて重要である。客観的なデータを得ることにより、指導方法の改善に向けた手がかりを得ることが可能となり、子どもたちの学習に還元できることとなる。このような観点から、子どもたちの学習到達度・理解度についての全国的な学力調査を実施することが適当である。
    • なお、実施に当たっては、子どもたちに学習意欲の向上に向けた動機付けを与える観点も考慮しながら、学校間の序列化や過度な競争等につながらないよう十分な配慮が必要である。
    • 具体的な実施の方法、実施体制、結果の扱い等について更に検討する必要がある。その際には、自治体や学校が全国的な学力状況との関係でそれぞれの学力状況を把握することにより、教育の充実への取組の動機付けとなることが重要な視点であると考えられる。
    • また、併せて、収集・把握する調査データの取扱いに慎重な配慮をしつつ地域性、指導方法・指導形態などによる学力状況との関係が分析可能となる方法を検討する必要がある。なお、学力調査の調査内容に関しては、知識・技能を実生活の様々な場面などに活用するために必要な思考力・判断力・表現力などを含めた幅広い学力を対象とすることが重要である。
  • 全国的な学力調査については、こうした考え方を踏まえて、小学校6年生、中学校3年生の国語、算数・数学について、全児童生徒が参加できる規模で平成19年度に調査が実施することとし、文部科学省において準備を進めている。その際、ここで指摘されているような調査の具体的実施方法、実施体制、結果の扱いなどについては、既に文部科学省に専門家会議が設置され、具体的な検討が進められているところである。
  • なお、学校や地方自治体の裁量を拡大し主体性を高めていく場合、それぞれの学校や地方自治体の取組の成果を評価していくことが、教育の質を保証する上で重要となる。また、近年の学校教育の質に対する保護者・国民の関心の高まりに応えるためにも、学校評価を充実することが必要になっている。
  • さらに、先述した到達目標の設定や子どもの学習評価においては、例えば、情意面などについては具体性や明確性をもたせにくい。こうした点については学校教育のプログラムも併せて評価するという考え方もあり得るのではないか。必要である。また、全体として、定量的な評価と定性的な評価のバランスを確保するという意味からも、学校評価の一層の推進が必要である。
  • 教育成果の適切な評価は、教育活動にフィードバックされ、教育の質の向上が図られることに重要な意味がある。評価が教師の資質能力の向上や学校運営の改善に活用されることが必要である。

(3)教育行政の在り方の改善

  • 教育行政については、総論で指摘したとおり、学校教育の現場をどの程度把握しているか、地域や保護者をはじめ国民や住民に対して十分な説明責任を果たしているか、学校を支えるための条件整備は十分に行われているかなどの課題を抱えており、その改善が必要である。
  • 特に、学校教育の現場の把握や国民や住民に対する説明責任は極めて重要である。文部科学省が行ったスクールミーティングは、例えば、教育課程の在り方についても、子どもや保護者、教師などの率直な意見を直接聞き、意見交換を重ねるなど、教育の現状把握という観点から一定の成果を上げたものと考えられる。
  • 教育課程の在り方は国民の大きな関心事項でもあることから、文部科学省においては、本審議経過報告を活用して、より積極的に子ども、保護者、教師など多くの国民の意見を聞き、政策形成に反映することに努めるべきである。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

(初等中等教育局教育課程課教育課程企画室)

-- 登録:平成21年以前 --