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資料1 教育課程企画特別部会 論点整理のイメージ(たたき台)(案)

平成27年7月28日
教育課程部会

  1. 2030年の社会と子供たちの未来
    • (1)社会の質的変化等と学校教育の課題
    • (2)前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題
  2. 新しい学習指導要領等が目指す姿
    • (1)新しい学習指導要領等の在り方について
    • (2)育成すべき資質・能力について
      • 育成すべき資質・能力についての基本的な考え方等
      • 特にこれからの時代に求められる資質・能力等
      • 発達の段階や成長過程のつながり
    • (3)育成すべき資質・能力と、学習指導要領等の構造化の方向性について
      • 学習指導要領等の構造化の在り方
      • 学習活動の示し方や「アクティブ・ラーニング」の意義等
  3. 学習評価の在り方について
  4. 学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策
    • (1)「カリキュラム・マネジメント」の重要性
    • (2)学習指導要領等の理念の実現に向けて必要な支援方策等
  5. 各学校種、各教科等における改訂の具体的な方向性
      • (1)各学校種の教育課程の基本的な枠組みと、学校段階間の接続
      • (2)各教科・科目等の内容の見直し
  6. 今後の検討スケジュール等

1.2030年の社会と子供たちの未来

(1)社会の質的変化等と学校教育の課題

  • 今年、学校教育の入り口に立った子供たちが、幼児教育から高等学校教育までの初等中等教育を修了し、社会や高等教育機関等に羽ばたく頃、社会はどのような変化を遂げているだろうか。
     15年後の2030年には、少子高齢化が更に進行し、65歳以上の割合は総人口の3分の1に達する一方、生産年齢人口は総人口の約58%にまで減少すると見込まれている。同年には、世界のGDPに占める日本の割合は、現在の5.8%から3.4%にまで低下するとの予測もあり、日本の国際的な存在感の低下も懸念されている。
     また、グローバル化や情報化が進展する社会の中では、多様な主体が速いスピードで相互に影響し合い、一つの出来事が広範囲かつ複雑に伝播し、先を見通すことがますます難しくなってきている。子供たちが将来就くことになる職業の在り方についても、技術革新等の影響により大きく変化することになると予測されている(※1)。
  • このように、将来の変化を予測することが困難な時代を前に、子供たちには、学校教育を通じてどのような準備をしておくことが求められるのだろうか。
     予測できない未来に対応する最善の方法は、社会の変化に受け身で対処するのではなく、未来を担う子供たち一人一人が、その可能性を最大限に発揮し、よりよい社会と幸福な人生を自ら創り出していくことである(※2)。
  • そのためには、教育の場において、解き方があらかじめ定まった問題を効率的に解ける力を育むだけでは不十分である。世界が加速度的に変化する中でも、社会的・職業的に自立した人間として、伝統や文化に立脚した高い志や意欲を持って、蓄積された知識を礎としながら、膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し、自ら問いを立ててその解決を目指し、他者と協働しながら新たな価値を生み出していくことができるよう、そのために必要な資質・能力を身に付けることが重要である。
  • こうした資質・能力を育成していくため、学校教育にはどのような役割が求められるのであろうか。それを考えるためには、世界の変化や社会の変化を視野に入れつつ、教育の姿全体を描きながら、「学校」の意義についても今一度捉え直していく必要がある。
  • 学校とは、社会への準備段階であると同時に、学校そのものが、幼児・児童・生徒や教職員、保護者、地域の関係者などから構成される一つの社会でもある。子供たちは、学校も含めた社会とのつながりの中で、障害の有無にかかわらず、様々な人と関わりながら学ぶことを通じて、自分の活動によって何かを変えることができること、自分の存在が認められたり、社会をよりよくしていくことができたりすることなどの実感を持つことができる。そうした実感を持つことが、人間一人一人の活動が身近な地域や社会生活に大きな影響を与えるという認識につながり、これを積み重ねることにより、地球規模の問題に関わり、持続可能な社会づくりを担う子供たちの育成につながっていくのである。このように考えると、新しい時代に求められる資質・能力を育むためには、学校が社会や世界と接点を持ちつつ、多様な人々とつながりを保ちながら学ぶことのできる、開かれた環境となることが不可欠である。
  • こうした社会とのつながりの中で学校教育を展開していくことは、我が国が社会的な課題を乗り越え、未来を切り拓いていくための大きな原動力ともなる。未曾有の大災害となった東日本大震災における困難を克服する中でも、子供たちが現実の課題と向き合いながら学び、国内外の多様な人々と協力し、被災地や日本の未来を考えていく姿が、復興に向けての大きな希望となった。人口減少下での様々な地域課題の解決に向けても、社会に開かれた学校での学びが、子供たち自身の生き方や地域貢献につながっていくとともに、地域が総がかりで子供の成長を応援し、そこで生まれる絆を地域活性化の基盤としていくという好循環につながっていく。
  • 我が国の近代学校制度は、明治期に公布された学制に始まり、およそ70年を経て、1947年には現代学校制度の根幹を定める学校教育法が制定された。今また、それから更に70年が経とうとしている。この140年間、我が国の教育は大きな成果をあげ、蓄積を積み上げてきた。この節目の時期に、この大きな蓄積を踏まえつつ、しかしそれに安住することなく、上述のような新しい時代にふさわしい学校観に立ち、新たな学校文化を形成していく必要がある。
  • その中心となるのは、学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を子供の心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した教育計画となる教育課程である。これからの教育課程は、従来の教科等の目標や内容に加え、教育課程全体の中で「子供たちがどのような力を身に付けていくか」という理念を持ち、学校内に閉じずに、学校教育を社会と共有しながら実現させる場でなければならない。教育課程の基準となる学習指導要領及び幼稚園教育要領(以下「学習指導要領等」という。)も、そうした「社会に開かれた教育課程」を各学校が編成していくことに資するものでなければならない。
  • また、こうした教育課程の理念を具体化するためには、学習・指導方法や評価の改善の在り方と一貫性を持った議論が必要である。本「論点整理」はこうした問題意識の下、学習指導要領等の在り方に留まらず、これからの教育の在り方全体を視野に入れて、教員の在り方や教育インフラ等についても取りまとめている。
  • こうした総合的なカリキュラム改革等の視点は、国際的な注目を集めているところである。例えばOECDとの間で実施された政策対話(※3)の中では、学力向上を着実に図りつつ、新しい時代に求められる資質・能力の向上という次の段階に進もうとしている日本の改革が高く評価されるとともに、その政策対話等の成果をもとに、国際的に2030年の教育の在り方を議論していくための新しいプロジェクトが立ち上げられたところである。こうした国際的な枠組みの中でも、日本の改革は、もはや諸外国へのキャッチアップではなく、世界をリードする役割を期待されている。
  • 現在検討されている次期学習指導要領等は、過去のスケジュールを踏まえて実施されれば、例えば小学校では、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年から、その10年後の2030年頃までの間、子供たちの学びを支える重要な役割を担うことになる。
  • このように、教育の将来像を描くに当たって一つの目標となる2030年の社会の在り方を見据えながら、その先も見通した初等中等教育の在り方を示し、日本の子供たちの学びを支えるとともに、世界の子供たちの学びを後押しするものとすることが、今回の改訂に課せられた使命である。

  • ※1 子供たちの65%は将来、今は存在していない職業に就く(キャシー・デビッドソン)との予測や、今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い(オズボーン)などの予測がある。また、2045年には人工知能が人類を越える「シンギュラリティ」に到達するという指摘もある。
  • ※2 アラン・ケイ「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」
  • ※3 これまでに2回実施。

(2)前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題

  • 学習指導要領等については、これまでも、時代の変化や子供たちの実態、社会の要請等を踏まえ、数次にわたり改訂されてきた。平成20年及び平成21年に行われた前回の改訂では、教育基本法の改正により明確になった教育の目的や目標を踏まえ、子供たちの「生きる力」の育成をより一層重視する観点から見直しが行われた。
  • 特に学力については、学校教育法第30条第2項に示された「基礎的な知識及び技能」、「これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力」及び「主体的に学習に取り組む態度」の、いわゆる学力の三要素から構成される「確かな学力」をバランス良く育むことを目指し、教育目標や内容が見直されるとともに、習得・活用・探究という学習過程の中で、学級やグループで話し合い発表し合うなどの言語活動や、各教科等における探究的な学習活動等を重視することとされたところである。
  • これを踏まえて、各学校では真摯な取組が重ねられており、その成果の一端は、近年改善傾向にある国内外の学力調査の結果にも表れていると考えられる。
  • また、幼児教育についても、教育基本法の改正によりその基本的な考え方が明確にされ、義務教育の基礎を培うものとして、子供の主体性を大事にしつつ、一人一人に向き合い、総合的な指導を通じて、学校教育の一翼を担ってきている。
  • こうした真摯な取組の一方で、我が国の子供たちについては、判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べることについて課題が指摘されることや、自己肯定感や学習意欲、社会参画の意識等が国際的に見て低いことなど、子供の自信を育み能力を引き出すことは必ずしも十分にできていない。
  • 加えて、成熟社会において新たな価値を創造していくためには、一人一人が互いの異なる背景を尊重し、それぞれが多様な経験を重ねながら、様々な得意分野の能力を伸ばしていくことが、これまで以上に強く求められる。
  • 新しい時代に求められる資質・能力を子供たちが身に付けていくためには、教育課程を通じてどのような力を身に付けるのかを明らかにしていくことが必要である。これまでの学習指導要領は、学問的な体系に沿って教科等ごとには体系化されているが、今後はさらに、教育課程全体で子供にどういった力を育むのかという観点から、教科等を越えた視点を持ちつつ、それぞれの教科等を学ぶことによってどういった力が身に付き、それが教育課程全体の中でどのような意義を持つのかを整理し、教育課程全体の構造を明らかにしていくことが特に重要となってくる。
  • 前回改訂の成果を着実に受け継ぎながら、上記のような観点から学習指導要領等を構造化していくとともに、その構造を各学校が十分に理解した上で教育課程を編成できるようにすることが、次期改訂に向けた大きな課題である。

2.新しい学習指導要領等が目指す姿

(1)新しい学習指導要領等の在り方について

  • 学習指導要領等は、学校教育法に基づき国が定める教育課程の基準であり、教育の目標や指導すべき内容等を体系的に示している。各学校は、学習指導要領等に基づき、その記述の意味や解釈などの詳細について説明した教科等別の解説を踏まえ、教育課程を編成し、年間指導計画等や授業ごとの学習指導案等を計画し、実施することになる。
  • 各学校が今後、教育課程を通じて子供たちにどのような力を育むのかという理念を明確にし、それを広く社会と共有していけるようにするためには、教育課程の基準となる学習指導要領等が、社会に開かれた視点に立ち、学習指導要領等に基づく指導を通じて子供たちに何を身に付けるのかを明確に示していく必要がある。
  • そのためには、指導すべき個別の内容項目の検討に入る前に、まずは学習する子供の視点に立ち、教育課程全体や各教科等の学びを通じて「何ができるようになるのか」という観点から、育成すべき資質・能力を整理する必要がある。その上で、整理された資質・能力を育成するためには「何を学ぶのか」という、必要な指導内容等を検討し、その内容を「どのように学ぶのか」という、子供たちの具体的な学びの姿を考えながら構成していく必要がある。
  • こうした検討の方向性を底支えするのは、「学ぶとはどのようなことか」「知識とは何か」といったことに関する科学的な知見の蓄積である。学びを通じた子供たちの真の理解、深い理解を促すためには、主題に対する興味を喚起して学習への動機付けを行い、目の前の問題に対してこれまでに獲得した知識や技能だけでは対応できないという問題意識を生じさせ、必要となる知識や技能を更に獲得し、試行錯誤しながら問題の解決に向けた学習活動を行い、自らの学習活動を振り返って次の学びにつなげるという、深い学習のプロセス(※4)が重要である。また、その中で、対話を通じて他者の考え方を取り込み、自分の考え方の適用範囲を広げ、人間性を豊かなものへと育むことが極めて重要である。
  • 身に付けるべき知識に関しても、個別の事実的な知識と、社会の中で汎用的に使うことのできる概念的な知識等とに構造化される(※5)という視点が重要である。個々の事実的な知識を網羅することが学習の最終的な目的ではなく、様々な場面で活用される概念的な知識を身に付けていく過程の中で、事実的な知識を獲得していくことが必要であるという点を明確にする必要がある。技能についても同様に、様々な場面で活用される複雑な方法を身に付ける過程の中で、個別の技能を獲得していくことが必要であり、こうした視点に立てば、長期的な視野で学習を組み立てていくことが極めて重要となる。
  • こうした「学び」や「知識」等に関する知見は、芸術やスポーツ等の分野における学びについても当てはまるものであり、これらの分野における学習のプロセスやそれを通じて身に付く力の在り方も含めて、教育課程全体の姿の中で構造化していくことが必要である。
  • また、子供たちに職業や社会で必要となる資質・能力を育むためには、学校と社会との接続を意識し、一人一人の社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育み、キャリア発達を促す「キャリア教育」(※6)の視点が重要である、教育に「外の風」を取り込み、世の中と結び付いた授業を通じて子供たちにこれからの人生を前向きに考えさせることが、主体的な学びの鍵となる。
  • 子供たち一人一人は、多様な可能性を持った存在であり、多様な教育ニーズを持っている。未来に向かって成長しようとしている子供たちが、学びに関して持っている潜在的な力を、教育を通じて洗練させ、教員自らもその力を発揮し、教室や社会でともに生き生きと活躍できるようにするために、学習指導要領等の在り方を検討していかなければならない。

  • ※4 補足資料P○参照。
  • ※5 補足資料P○参照。
  • ※6 補足資料P○参照。

(2)育成すべき資質・能力について

育成すべき資質・能力についての基本的な考え方等

  • 学習指導要領等がどのような資質・能力の育成を目指すのかについては、教育法令が定める教育の目的・目標等を踏まえて検討する必要がある。教育基本法に定める教育の目的を踏まえれば、育成すべき資質・能力の上位には、常に個人一人一人の「人格の完成」と、「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」を備えた心身ともに健康な国民の育成があるべきである。
  • こうした教育基本法が目指す教育の目的を踏まえつつ、社会の質的変化等を踏まえた現代的な課題に即して、これからの時代に求められる人間像を描くとすれば、それは、社会的・職業的に自立した人間として、郷土や我が国が育んできた伝統や文化に立脚した広い視野と深い知識を持ち、理想を実現しようとする高い志や意欲を持って、個性や能力を生かしながら、社会の激しい変化の中でも何が重要かを主体的に判断できる人間であること、他者に対して自分の考え等を根拠とともに明確に説明しながら、相手の考えも受け入れ、多様な人々と協働していくことができる人間であること、社会の中で自ら問いを立て、解決方法を探索して計画を実行し、問題を解決に導き新たな価値を創造していくとともに新たな問題の発見・解決につなげていくことのできる人間であることなどが考えられる。
  • こうした人間であるために必要とされる具体的な資質・能力を、教育課程の在り方につなげていくためには、資質・能力の要素についてその構造を整理しておく必要がある。海外の事例や、カリキュラムに関する先行研究等に関する分析(※7)によれば、育成すべき資質・能力の要素が、知識に関するもの、スキルに関するもの、情意(人間性や関心・意欲・態度など)に関するものの三つに大きく構造化されている。
  • 上記の三要素を、学校教育法第30条第2項が定める学校教育において重視すべき三要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」)に照らし合わせると、これらの考え方は大きく共通するものであることがわかる。
  • これら三要素を議論の出発点としながら、学習する子供の視点に立ち、育成すべき資質・能力を以下のような三つの柱で整理することが考えられる。教育課程には、発達に応じて、これら三つのそれぞれをバランスよくふくらませながら、子供たちが大きく成長していけるようにする役割が期待されており、各教科の文脈の中で身に付く力と、それらを教科横断的に活用できる力との双方を往還させながら育成していく必要がある。
    1. 「何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)」
       各教科等に関する個別の知識や技能など。一般的に基礎的・基本的な知識・技能と呼ばれるものであり、身体的技能や芸術表現のための技能等も含む。
    2. 「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」
       問題を発見し、その問題を定義し解決の方向性を決定し、解決方法を探して計画を立て、結果を予測しながら実行し、プロセスを振り返って次の問題発見・解決につなげていくこと(問題発見・解決)や、情報を他者と共有しながら、互いの考え方の共通点や相違点を理解し、相手の考えに共感したり多様な考えを統合したりして、協力しながら問題を解決していくこと(協働的問題解決)のために必要な思考力・判断力・表現力等。
       特に、問題発見・解決のプロセスの中で、以下のような思考・判断・表現を行うことができることが重要である。
      • 問題発見・解決に必要な情報を収集・蓄積するとともに、必要となる新たな知識・技能を獲得し、必要な知識・技能を組み合わせて構造化し、それらを活用しながら問題を解決していくために必要となる思考。
      • 必要な情報を選択し、解決の方向性や方法を比較・選択し、結論を決定していくために必要な判断や意思決定。
      • 伝える相手や状況に応じた表現。
    3. 「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(人間性や学びに向かう力等)」
       1.や2.の力が働く方向性を決定付ける情意や態度等に関わるものであり、主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する能力、多様性を尊重する態度と互いの良さを生かして協働する力、持続可能な社会作りに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなど。
  • こうした資質・能力については、学習指導要領等を踏まえつつ、各学校が編成する教育課程の中で、各学校の教育目標とともに、育成する資質・能力のより具体的な姿を明らかにしていくことが重要である。その際、子供一人一人の個性に応じた資質・能力をどのように高めていくかという視点も重要になる。

  • ※7 補足資料P○参照。

特にこれからの時代に求められる資質・能力等

  • 複雑で変化の激しい社会の中では、固有の組織の中でどのように生きるかではなく、様々な情報や出来事を受け止め、主体的に判断しながら、自分をどのように社会の中で位置付け、社会をどう描くかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していくための力が必要となる。選挙権年齢が18歳に引き下げられたことにより、子供にとって政治や社会が一層身近なものとなってくる。国家・社会の形成者や、生産や消費などの経済的主体等として求められる力や、安全な生活や社会づくりに必要な資質・能力(※8)、情報活用能力(※9)、思考するために必要なスキルなどを、各学校段階を通じて育んでいく必要性が高まっている。併せて、社会的要請を踏まえた職業教育の充実も重要である。
  • また、グローバル化する中で世界と向き合うことが求められている我が国においては、日本人としての美徳や良さを備えつつグローバルな視野で活躍できる人材が求められる。母語である日本語で思考を形成したり、日本語やさらには外国語も使って考えを表現したりできるようにしていくことや、日本文化を理解して自国の文化を語り継承することができるようにするとともに、異文化を理解し多様な人々と協働していけるようにすることが重要である。加えて、自国とグローバル双方における歴史の展開を広い視野から考える力や、持続可能な社会作りにつながる地理的な素養についても身に付けていく必要がある。また、芸術を通じて感性等を育む教育も重要である。
  • 2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を契機に、スポーツへの関心を高め、「する、みる、支える」などの多様なスポーツとの関わりを楽しめるようにしていくことが重要である。スポーツを通じて、他者との関わりを学んだり、ルールを守り競い合っていく力を身に付けたりすることができる。
  • また、情意面や態度面について、自己の感情や行動を統制する能力や、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度等を教育課程全体で育むことも重要である。こうした力は、将来の社会不適応を予防し保護要因を高め、社会を生き抜く力につながる。
  • そのほか、個別のいわゆる現代的な課題やテーマに焦点化した教育については、これらが教科等横断的なテーマであることを踏まえ、それを通じてどのような資質・能力の育成を目指すのかを整理し、下記(3)の学習指導要領等の構造化の考え方の中で検討していくことが必要である。

  • ※8 補足資料P○参照。
  • ※9 補足資料P○参照。

発達の段階や成長過程のつながり

  • 育成すべき資質・能力については、幼児教育から高等学校までを通じた見通しを持って、各学校段階の教育課程全体及び各教科等においてどのように伸ばしていくのかということが、系統的に示されなければならない。
  • 選挙権年齢が18歳に引き下げられたことなども踏まえ、高等学校を卒業する段階で身に付けておくべき力は何か、という観点を共有しながら、幼児教育、小学校教育、中学校教育、高等学校教育それぞれの在り方を考えていく必要がある。また、子供たち一人一人の個々の発達課題や教育的ニーズを踏まえた対応も重要である。
  • また、近年は全ての学校において、発達障害を含めた障害のある子供たちが学んでおり、その人数は増加傾向にある。障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの理念を踏まえ、子供たちの自立と社会参加を一層推進していくため、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある「多様な学びの場」において、子供たちの十分な学びを確保していく必要がある。その際は、合理的配慮の提供や、個別の指導計画や教育支援計画を活用するなど、一人一人の子供の障害の状況や発達の段階に応じた指導を一層充実させていく必要がある。
  • そうした発達の段階に応じて積み重ねていく学びの中で、地域や社会と関わり、様々な職業に出会い、社会的・職業的自立に向けた学びを積み重ねていくことが重要である。
  • 加えて、幼小、小中、中高の学びの連携・接続についても、学校段階ごとの特徴を踏まえつつ、学びの連続性が確保されることが重要である。

(3)育成すべき資質・能力と、学習指導要領等の構造化の方向性について

学習指導要領等の構造化の在り方

  • 次期学習指導要領等については、上記(2)に示した1.~3.の資質・能力全体を、教育課程を通じていかに育成していくかという観点からの構造的な見直しを意図している。これは、教育課程について、「何を知っているか」という知識の内容を体系的に示した計画にとどまらず、「それを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」までを視野に入れたものとして議論するということであり、我が国が、工業化という共通の社会的目標に向けて、教育を含めた様々な社会システムを構想し構築していくことが求められる中で示された昭和33年の学習指導要領告示以降、これまでにない大きな変化となる。
  • これらの資質・能力と学習指導要領等との構造を整理するには、学習指導要領を構成する各教科等をなぜ学ぶのか、それを通じてどういった力が身に付くのかという、教科等の本質的な意義に立ち返って検討する必要がある。
  • 教科における学習は、知識・技能のみならず、それぞれの体系に応じた思考力・判断力・表現力等や情意・態度等を、それぞれの教科の文脈に応じて育む役割を有している。
  • 例えば、思考力は、国語や外国語において様々な資料から必要な情報を整理して自分の考えをまとめる過程や、社会科において社会的な事象から見出した課題を多面的・多角的に考察して自分の考えをまとめていく過程、数学において事象を数学的に捉えて問題を設定し、解決の構想を立てて考察していく過程、理科において自然の事象を目的意識を持って観察・実験し、科学的に探究する過程、音楽や美術において自分の意図や発想に基づき表現を工夫していく過程、保健体育において自己や仲間の運動課題や健康課題に気付き、その解決策を考える過程、技術・家庭科において生活の課題を見出し、最適な解決策を追究する過程、道徳において人間としての生き方についての考えを深める過程などを通じて育まれていく(※10)。判断力や表現力等も同様に、各教科の中でその内容に応じ育まれる。
  • 情意や態度等についても同様であり、各教科等を通じて育まれた社会観や自然観、人間観などが、「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」を決定する構成要素となっていく。
  • このように、思考力・判断力・表現力等や情意・態度等は、各教科の文脈の中で指導される内容事項と関連づけられながら育まれていく。ただし、各教科等で育まれた力を、当該教科等以外の、実社会の様々な場面で活用できる汎用的な能力に更に育てていくためには、教育課程の構造上の工夫が必要になってくる。まさにその工夫が、教科横断的な学びを行う「総合的な学習の時間」や、社会参画につながる取組などを行う「特別活動」の設定などに当たる。
  • このような、資質・能力と各教科等との関係を踏まえれば、学習指導要領の全体構造を検討するに当たっては、必要な資質・能力を定義し、そこから各教科等の在り方を見定めるというやり方よりも、むしろ各教科等を学ぶ意義を改めて明確化するとともにこの力はこの教科等でこそ身に付くのだといった各教科等の本質を捉え直し、そうした資質・能力の間の関連付けや体系化を各教科等の内容事項を通じて図っていく中で、資質・能力の全体像を整理していくという方法が考えられる。
  • 一方で、特に「義務教育修了の段階で身に付けておくべき力は何か」や「選挙権を有する18歳の段階で身に付けておくべき力は何か」という観点から、初等中等教育の出口のところで身に付けておくべき力を明確にしながら、幼・小・中・高の教育を、見通しを持って系統的に組織していくことも重要である。各教科等で学校や学年段階に応じて学ぶことを明確にして単に積み上げるのではなく、義務教育や高等学校教育修了段階で身に付けておくべき力を踏まえつつ、各学校・学年段階で学ぶべき内容を見直すなど、発達の段階に応じた縦のつながりと、各教科等の横のつながりを行き来しながら、学習指導要領の全体像を構築していくことが必要である。
  • 幼稚園教育要領においては、指導のねらいや内容を「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の領域別に示しつつ、これらは幼稚園における生活の全体を通じて総合的に指導することとされている。こうした幼児教育の特性を大事にしつつ、幼児期において育みたい資質・能力を明確にし、幼児教育と小学校の各教科等における教育との接続の充実や関係性の整理を図る必要がある。
  • 次期改訂においては、こうした教育課程の総体的な構造を可視化していくことが求められる。そのためには、教科等を束ねる総則の意義が極めて重要になる。次期学習指導要領等の総則においては、各学校が、教育課程全体の構造や教科等相互の関係等を捉えながら教育課程を編成することができるよう、構造の意義を可能な限り分かりやすく提示していくべきである。こうしたことにより、教育課程を介して学校が社会や世界との接点となり、さらには、現在と未来をつなぐ役割を果たしていくことが期待される。

  • ※10 中学校の教科構成を元に例示。

学習活動の示し方や「アクティブ・ラーニング」の意義等

  • 次期改訂の視点は、子供たちが「何を知っているか」だけではなく、「知っていることを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」ということであり、知識・技能、思考力・判断力・表現力等、人間性や学びに向かう力など情意・態度等に関わるものの全てを、いかに総合的に育んでいくかということである。
  • 思考力・判断力・表現力等は、学習の中で、(2)2.に示したような思考・判断・表現が発揮される主体的・協働的な問題解決の場面を経験することによって磨かれていく(※11)。身に付けた個別の知識や技能も、そうした学習経験の中で活用することにより構造化されていき、生涯にわたり活用できる物事の深い理解や方法の熟達に至ることができる。また、こうした学びを推進するエンジンとなるのは、子供たちが学びに向かう力であり、実社会や実生活に関連した課題などを通じて、学習への動機付けを行い、子供たちの学びへの興味と努力し続ける意志を喚起する必要がある(※12)。
  • このように、次期改訂が目指す育成すべき資質・能力を育むためには、学びの量とともに、質や深まりが重要であり、子供たちが「どのように学ぶか」についても光を当てる必要があるとの認識のもと、「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)」(※13)について議論を重ねてきた。
  • 昨年11月の諮問以降、学習指導要領等の改訂に関する議論において、こうした指導方法を焦点の一つとすることについては、育成すべき資質・能力を総合的に育むという意義を踏まえた積極的な取組が広がる上で重要との指摘がある一方で、指導法を一定の型にはめ、教育の質の改善のための取組が単なる手法や手練手管に終始するのではないかといった懸念なども示されているところである。特に後者については、我が国の教育界は極めて真摯に教育技術の改善を模索する教員の意欲や姿勢に支えられている一方で、ともすればこれらの工夫や改善が、時折何のためかという目的を見失い、特定の学習や指導の「型」に過度に拘泥することもあるのではないかとの指摘を踏まえているものと考えられる。
  • 変化を見通せないこれからの時代において、新しい社会の在り方を自ら創造することができる資質・能力を子供たちに育むためには、教員自身が習得・活用・探究といった学習過程全体を見渡し、個々の内容事項を指導することによって育まれる思考力や判断力、表現力等を自覚的に認識しながら、子供たちの変化等を踏まえつつ自ら学習・指導方法を不断に見直し、改善していくことが求められる。
  • このような中で次期改訂が学習・指導方法について目指すのは、特定の型を普及させることではなく、下記のような視点に立って学び全体を改善し、子供の学びへの積極的関与と深い理解を促すような指導や学習環境を設定することであり、それを教員一人一人が工夫して実践できるようにすることである。
    1. 習得・活用・探究という学習プロセスのなかで、問題発見・解決を念頭に置きつつ、深い学びの過程が実現できているかどうか
       新しい知識や技能を習得したり、それを実際に活用して、問題解決に向けた探究活動を行ったりする中で、(2)1.~3.に示す力が総合的に活用・発揮される場面が設定されることが重要である。教員はこのプロセスの中で、教える場面と、子供たちに思考・判断・表現させる場面を効果的に設計し関連させながら指導していくことが求められる。
    2. 他者との協働や外界の情報との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現できているかどうか
       身に付けた知識や技能を定着させるとともに、物事の多面的で深い理解に至るためには、多様な表現を通じて、教師と生徒、生徒と生徒が対話し、それによって思考を広げ深めていくことが求められる。こうした観点から、前回改訂における各教科等を貫く改善の視点である「言語活動」の充実も、引き続き重要である。
    3. 子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学びの過程が実現できているかどうか
       子供自身が興味を持って積極的に取り組むとともに、学習活動を自ら振り返り意味づけたり、獲得された知識・技能や育成された資質・能力を自覚したり、共有したりすることが重要である。子供の学びに向かう力を刺激するためには、実社会や実生活に関わる主題に関する学習を積極的に取り入れていくことや、前回改訂で重視された「体験活動」の充実を図ることも引き続き重要である。
  • こうした、必要な資質・能力を総合的に育むための学びは、特に小・中学校では、全国学力・学習状況調査において、主として「活用」に関する問題(いわゆるB問題)が出題され、関係者の意識改革や授業改善に大きな影響を与えたことなどもあり、多くの関係者による実践が重ねられてきている。「アクティブ・ラーニング」を重視する流れは、こうした優れた実践を踏まえた成果であり、また、今後は特に高等学校において、義務教育までの成果を確実につなぎ、一人一人に育まれた力を更に発展・向上させることが求められる。
  • なお、こうした質の高い深い学びを目指す中で、教員の役割は、教えずに子供たちの活動を単に見守り、支援に徹することではない。必要な知識・技能はしっかりと教授しながら、それに加えて、子供たちの発言を促したり、気付いていない視点を提示したりするなど、学びに必要な指導や環境を積極的に設定していくことが求められる。
  • 次期学習指導要領等は、そうした実践を支える理念を提供するため、各教科等共通に重視すべき学習過程の在り方や、各教科等の特性に応じて重視すべき学習過程の在り方に関する基本的な考え方を示すものである。加えて、学習指導要領等の解説や指導事例集も含めた全体の姿の中で、指導の参考となる解説や事例を示すとともに、下記4.に示す方策等を通じて、さらなる支援を図っていく必要がある。

  • ※11 補足資料P○参照。
  • ※12 補足資料P○参照。
  • ※13 補足資料P○参照(「アクティブ・ラーニング」に関するこれまでの議論を整理)。

3.学習評価の在り方について

  • 学習評価は、学校における教育活動に関し、子供たちの学習状況を評価するものである。「子供たちに何が身に付いたか」という学習の成果を的確に捉え、教員が指導の改善を図るとともに、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには、この学習評価の在り方が極めて重要であり、教育課程や学習・指導方法の改善と一貫性を持った形で改善を進めることが求められる。
  • 現在、各教科について、学習状況を分析的にとらえる観点別学習状況の評価と、総括的にとらえる評定とを、学習指導要領に定める目標に準拠した評価として実施することが明確にされている。評価の観点については、従来からの4観点の枠組みを踏まえつつ、学校教育法第30条第2項が定める学校教育において重視すべき三要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」)を踏まえて再整理され、現在、「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の4つの観点が設定されているところである。
  • 今後、小・中学校を中心に定着してきたこれまでの学習評価の成果を踏まえつつ、目標に準拠した評価を更に進めていくためには、学校教育法が規定する三要素との関係を更に明確にし、上記2.(2)に示した育成すべき資質・能力の柱に沿って各教科の指導改善等が図られるよう、評価の観点については、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に沿った整理を検討していく必要があると考える。
  • これらの評価の観点は、各教科における教育の目標と表裏一体の関係にあることから、今後、各教科において、育成すべき資質・能力を踏まえて教育の目標を検討する際には、評価の観点の在り方と一貫性を持った形で検討を進めていくことが必要である。その際、上記2.(2)3.に示された育成すべき資質・能力には、感性や思いやりなど幅広いものが含まれるが、これらは観点別学習状況の評価になじむものではないことから、評価の対象としては学校教育法に示された「主体的に学習に取り組む態度」に絞って設定すべきである。
  • なお、現在の「関心・意欲・態度」の評価に関しては、例えば、正しいノートの取り方や挙手の回数をもって評価するなど、本来の趣旨とは異なる表面的な評価が行われているとの指摘もあるところである。「主体的に学習に取り組む態度」については、このような表面的な形式を評価するのではなく、上記2.(3)3.に示した「学びに向かう力」の意義も踏まえつつ、子供たちが学びの見通しを持って、粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学びの過程の実現に向かっているかどうかを評価していくことが必要である。
  • こうした観点別学習状況の評価については、小・中学校と高等学校とでは取組に差があり、高等学校では、知識量のみを問うペーパーテストの結果や、特定の活動の結果などのみに偏重した評価が行われているのではないかとの懸念も示されているところである。義務教育までにバランスよく培われた資質・能力を、高等学校教育を通じて更に発展・向上させることができるよう、高等学校教育においても、指導要録の様式の改善などを通じて評価の観点を明確にし、観点別学習状況の評価を普及させていく必要がある。
  • また、三要素のバランスのとれた学習評価を行っていくためには、指導と評価の一体化を図る中で、論述やレポートの作成、発表、グループでの話合い、作品の制作等といった多様な活動に取組ませ、ペーパーテストの結果にとどまらない、多面的な評価を行っていくことが必要である。さらには、一人一人の学びの多様性に応じて、子供たちの資質・能力がどのように伸びているかを、例えば、日々の記録やポートフォリオなどを通じて把握していくことも考えられる。
  • このような評価の在り方については、本論点整理を踏まえ、審議まとめに向けて引き続き専門的な検討を行うことが求められる。

4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策

(1)「カリキュラム・マネジメント」の重要性

  • 教育課程の編成主体は各学校であり、各学校には、学習指導要領等を受け止めつつ、子供たちや地域等の実状を踏まえて、各学校が教育目標を実現するために、学習指導要領等に基づきどのような教育課程を編成し、どのようにそれを実施・評価し改善していくのかという「カリキュラム・マネジメント」の確立が求められる。特に、今回の改訂が目指す理念を実現するためには、教育内容の改善のみならず、学習・指導方法や学習評価の改善が必要であり、各学校が編成する教育課程を核に、どのように教育活動全体を主体的に改善していくのかが重要な鍵となる。
  • こうした「カリキュラム・マネジメント」については、これまで、教育課程の在り方を不断に見直すという下記2.の側面から重視されてきているところであるが、「子供たちにどのような力を身に付けていくか」という新しい学習指導要領等の理念を踏まえ、これからの「カリキュラム・マネジメント」については、以下の3つの側面から捉えていくべきである。
    1. 各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。
    2. 教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。
    3. 教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等とを、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。
  • 「カリキュラム・マネジメント」については、学校長を中心としつつ、教科の縦割りや学年を越えて、学校全体で取り組んでいく必要がある。そのためには、管理職のみならず全ての教員がその必要性を理解し、日々の授業等についても、教育課程全体の中での位置付けを意識しながら取り組む必要がある。また、学習指導要領等を豊かに読み取りながら、各学校の子供たちの姿や地域の実状と指導内容を照らし合わせ、効果的な年間指導計画等の在り方や、授業時間や週時程の在り方(※14)等について、校内研修等を通じて研究を重ねていくことも考えられる。
  • また、「社会に開かれた教育課程」の観点からは、学校内だけではなく、保護者や地域の関係者等を巻き込んだ「カリキュラム・マネジメント」を確立していくことも重要である。
  • こうした「カリキュラム・マネジメント」に必要な力を、下記(2)に示す支援方策等を通じて、管理職のみならず、教員一人一人が身に付けられるようにしていくことが必要である。

  • ※14 補足資料P○参照(週時程の工夫や短時間学習等について整理)。

(2)学習指導要領等の理念の実現に向けて必要な支援方策等

  • 先を見通すことが難しい社会の中で、新しい社会の在り方を創造することができる資質・能力を子供たちに育むためには、教員一人一人の力量を高めていく必要がある。
  • 我が国の教員に対する国際的な評価はもともと高く、特に、各教科等における授業改善に向けて行われる多様な研究に関しては、海外からも極めて高い関心が寄せられている。
  • こうした従来からの強みを生かしつつ、これからの教員には、教科等を越えた「カリキュラム・マネジメント」のために必要な力や、「アクティブ・ラーニング」の視点から学習・指導方法を改善していくために必要な力、学習評価の改善に必要な力等が求められる。こうした新たな課題に対しては、子供たちの主体的な学びを引き出すことに関する自信が低いという結果が出ていることなど、課題も見られるところである。教員一人一人が社会の変化を見据えながら、これからの時代の必要な資質・能力を子供たちに育むことができるよう、教員の養成・採用・研修を通じて改善を図っていくことが必要である。
  • 教員養成・採用・研修の改善のために必要な改革等の方向性については、中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会が取りまとめた「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について(中間まとめ)」においても示されているところである。この中では、国、教育委員会、学校、大学等が目標を共有して互いに連携しながら、次期学習指導要領等に向けて教員に求められる力を効果的に育成できるよう、教員に求められる能力を明確化する教員育成指標や、それを踏まえた研修指針の策定などが提言されているところである。教員研修自体を、主体的・協働的な学び要素を一層含んだものに転換していこうとする提言なども含まれており、今後とも、教育課程の改善に向けた議論と歩調を合わせて具体化していくことが求められる。
  • こうした取組を通じて、教員一人一人が校内研修、校外研修などの様々な研修の機会を活用したり、自主的な学習を積み重ねたりしながらその力量を向上させていくとともに、教員一人一人の力量が発揮されるよう、必要な環境を整備していくことも必要である。
  • 上述のような教員の研修機会を確保するとともに、新たな学習指導要領等を踏まえた「カリキュラム・マネジメント」の実現や、「アクティブ・ラーニング」の視点に立った学びを推進するための少人数によるきめ細かな指導の充実など、新たな学習・指導方法等に対応するため、必要な教職員定数の拡充を図ることが求められる。また、学校を取り巻く新たな課題に対応していくためには、初等中等教育分科会に置かれた「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会」が取りまとめた「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(中間まとめ)」が示すように、教員以外の専門スタッフも参画した「チームとしての学校」の実現を通じて、複雑化・多様化した課題を解決に導いたり、教員が子供と向き合う時間的・精神的な余裕を確保したりしていくことが重要である。加えて、様々な地域人材との連携も重要である。
  • また、教科書を含めて必要な教材についても、上記2.(3)1.~3.の視点を踏まえて改善を図り、新たな学びに対応したものとしていく必要がある。また、ICTも含めた必要なインフラ環境の整備を図ることも重要である。
  • 国や各教育委員会等においても、教科別の学習指導に関する改善のみならず、教科を横断した教育課程全体の改善について助言を行うことができるような体制を整えていくことが求められる。加えて、学習・指導方法の改善について、モデル校の先進事例等を動画も含めて参照できるようなアーカイブを整備していくことも考えられる。
  • こうした取組を進めるに当たっては、新しい教育課程が目指す理念を、学校や教育関係者のみならず、保護者や地域の関係者、産業界等を含め広く共有し、子供の成長に社会ぐるみで協働的に関わっていくことが必要である。国には、本論点整理を広く広報し、その成果を今後の審議まとめ等に生かしていくことが求められる。

5.各学校種、各教科等における改訂の具体的な方向性

※本章については、以下の項目に沿って論点を整理し、次回ご議論いただく予定。

(1)各学校種の教育課程の基本的な枠組みと、学校段階間の接続

  1. 幼児教育
  2. 小学校
  3. 中学校
  4. 高等学校(高等学校基礎学力テスト(仮称)や、大学入学者選抜改革、大学教育改革等との検討の方向性も踏まえつつ)
  5. 特別支援学校
  6. 学校段階間の円滑な接続
    ※各学校種の枠組みには、特別支援教育の観点も含む

(2)各教科・科目等の内容の見直し

  1. 総則
  2. 国語
  3. 社会、地理歴史、公民
  4. 算数、数学
  5. 理科
  6. 生活
  7. 音楽、芸術(音楽)
  8. 図画工作、美術、芸術(美術、工芸)
  9. 芸術(書道)
  10. 家庭、技術・家庭
  11. 体育、保健体育
  12. 外国語
  13. 情報
  14. 専門教育に関する各教科・科目
  15. 道徳教育
  16. 特別活動
  17. 総合的な学習の時間

6.今後の検討スケジュール等

  • 教育課程企画特別部会における論点整理取りまとめの後は、各学校種・教科別の検討を行い、審議まとめを経た上で、平成28年度中を目途に中央教育審議会として答申が取りまとめられるよう、検討を進めていく予定。
  • 各学校種・教科別の検討においては、教育課程企画特別部会の議論を踏まえつつ、各教科等に閉じた議論ではなく、カリキュラム全体としてどのような資質・能力を育成すべきか、その中で各教科等が果たすべき意義とは何かといった点を踏まえた上で検討を行うことが求められる。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課

-- 登録:平成27年09月 --