資料3-2 平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方について(中間まとめ)概要

平成22年8月27日
全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議

1.調査目的

  平成22年度全国学力・学習状況調査の実施要領において定められた調査目的は、今後も極めて重要であり、このような調査目的を実現するための全国的な学力調査の実施は、今後も継続すべきであると考えられる。多くの教育委員会や教育関係団体等がこのことを期待している。

2.対象学年・実施時期

  対象とする学年については、義務教育における各学校段階の最終学年における到達度を把握するため、当面、小学校第6学年及び中学校第3学年の児童生徒とすることが適当である。
  実施時期については、児童生徒に対する学習改善に役立てるため、年度の早い時期に調査を実施し、できるだけ早い時期に学校等へ結果が返却されることが必要である。過去4回の調査で、定着してきた4月下旬の実施を基本とすることが適当と考えられる。

3.対象教科

  義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立すること、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てることという調査の目的を踏まえれば、対象教科は、これまでの「国語」、「算数・数学」に加えて、
  ・小学校では、「社会」、「理科」、
  ・中学校では、「社会」、「理科」、「英語」
を追加することを検討していくことが適当。
  あらかじめ、文部科学省(国立教育政策研究所)において、問題作成の体制づくりを行うことが必要となること、通常、問題作成に1年以上かかること等を考慮すれば、教科の追加は早くても、平成24年度調査からということになる。
  また、問題作成の体制づくりは段階的に行うことが考えられるため、追加年度をずらして段階的に追加していくことも考慮する必要がある。
  追加教科の実施頻度は、学校の負担増を懸念する意見に配慮し、例えば、3年に一度とし、毎年度、実施教科を入れ替えて、実施することも考えられる。

4.調査方式

(1)調査方式については、平成19~21年度において、悉皆調査で行われ、平成22年度においては、抽出調査(国全体、国公私別、公立の都道府県別が把握できる抽出率)及び希望利用方式(抽出対象外となった学校が、学校設置者の希望により抽出調査と同一の問題の提供を受け、調査を利用することができる方式)に、調査方式を切り替えて実施された。

(2)抽出率については、都道府県が教職員の給与費を負担すると共に広域での人事を行うなどの役割と責任を有していることなどにかんがみ、公立の都道府県別の結果までを統計上有意なレベルで把握できる約30%の抽出率で全国的な抽出調査を実施し、あわせて希望利用調査を実施することで、本調査の目的を実現することができると考えられる。対象学年の全児童生徒を対象とした悉皆調査でなくとも、必要なデータを得ることは可能である。

(3)抽出調査では、市町村別や全学校別の結果を統計上得ることは困難である。平成22年度調査において、調査方式を切り替えた時点では、市町村や学校によっては、過去3年間の調査に引き続き、児童生徒の学力等をより詳細に把握、検証したいとの声があった。
  この点については、過去3年間の調査結果や地方独自の調査を、抽出調査にあわせて活用していただくとともに、さらに必要があれば、学校設置者の希望に応じて本調査を活用できるようにしたところである。実際に学校設置者からの希望を受け付けたところ、抽出対象外となった学校の約6割が、希望利用方式の利用を希望したところである。このことは、市町村や学校におけるニーズを反映しており、これを踏まえれば、当面、抽出調査を調査方式とするのであれば、希望利用方式を併用することが必要であると考えられる。

(4)今後の在り方としては、平成22年度の調査方式を継続する意見、抽出調査のみとし抽出率を縮減する意見、さらには、少なくとも数年に一度は悉皆調査を実施するという意見等に、分かれているところである。また、異なる調査方式を組み合わせて全体の目的を実現する方式等も提起されている。

(5)これらの意見を踏まえ、それぞれの意見で提起された案についての制度設計の検討、これらの案のメリット、デメリットや実現可能性についての分析・検討、児童生徒、保護者の観点や学校、教育委員会、教育関係者等の意見の集約などを、引き続き重ねる必要がある。

(6)このため、当面は、平成22年度調査で用いた調査方式により、現在求められている調査目的の実現を図るとともに、毎年度の調査実施後に、事業評価に基づいた継続的な見直しを行う。
  あわせて、調査方式について提起されている様々な意見について、具体的な検討を継続し、よりよい調査方式を目指すことが必要である。

5.実施頻度

(1)実施頻度については、毎年度実施という意見と隔年又は数年に一度実施という意見がある。
  実施頻度については、調査目的や調査方式の在り方と関連させながら、引き続き調査検討を継続する必要がある。
  当面、平成22年度調査の調査目的や調査方式を継続する限りにおいては、「国語」、「算数・数学」について、毎年度本調査の実施を続けることが適当である

(2)「国語」、「算数・数学」以外の教科を、今後本調査に追加する場合は、当該追加教科については、学校の負担増を懸念する意見に配慮し、実施頻度は、例えば、3年に一度とし、毎年度実施教科を入れ替えて実施することも考えられる。

6.教育課程実施状況調査との関係等

  教育課程実施状況調査については、学習指導要領の目標・内容に照らした教育内容全般にわたる全国的な状況の把握を通じて、学習指導要領や指導の改善のための基礎データを得るという意義・目的を明確にすることにより、全国学力・学習状況調査との役割分担を図ることが適当と考えられる。

7.経年変化の分析等を重視した新しいタイプの調査方式の開発や、地方独自の調査との役割分担について

(1)今後、調査目的の検討と関連させながら、経年変化の分析等を重視した新しいタイプの調査方式の開発を進める必要があると考えられる。

(2)また、全国的な学力調査に求められてきた調査目的の要素の一部を、今後は、地方独自の調査が担っていくシステムを構築することができないか、今後、検討を行う必要があると考えられる。

(参考)全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議について

1.設置の趣旨

  文部科学省における今後の全国的な学力調査の在り方等についての調査検討に資するよう、専門家による専門的な観点からの意見交換等を行うため、「全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議(以下「専門家会議」とする。)」を設置する。

2.専門家会議において取扱う事項

(1)平成23年度以降の全国的な学力調査の目的について
(2)対象教科・学年、調査方式、実施頻度等について
(3)その他

3.実施期間

平成22年6月4日から平成23年3月31日とする。

4.委員

 

相川 敬

日本PTA全国協議会長

 

天笠 茂

千葉大学教育学部教授

座長代理

荒井 克弘

独立行政法人大学入試センター入学者選抜研究機構長

 

有馬 守一

千代田区立番町小学校長

 

岩田 一彦

兵庫教育大学大学院特任教授

 

小川 正賢

東京理科大学大学院科学教育研究科教授

座長

梶田 叡一

環太平洋大学長

 

小宮 賢治

世田谷区立芦花中学校長

 

柴山 直

東北大学大学院教育学研究科教授

 

志水 宏吉

大阪大学大学院人間科学研究科教授

 

清水 静海

帝京大学文学部教育学科教授

 

清水 哲雄

鷗友学園常務理事

 

高木 まさき

横浜国立大学教育人間科学部教授

 

田中 博之 

早稲田大学大学院教職研究科教授 

 

土屋 隆裕 

統計数理研究所データ科学研究系准教授 

 

根岸 均 

秋田県教育委員会教育長 

 

耳塚 寛明 

お茶の水女子大学理事・副学長 

 

渡部 良典 

上智大学外国語学部教授 

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)

-- 登録:平成22年09月 --