中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」に対する意見

平成19年11月吉日

全国連合退職校長会会長 土橋荘司

要旨

1.教育理念に基づく学習指導要領の改訂。

  • 「生きる力」の教育理念による一貫性のある学習指導要領の改訂は、重要。
  • 教育改革の柱として、言語活動、理数教育、道徳教育のそれぞれの充実と授業時間の増加に併せ、教科科目の整理、学習構造の明確化、教科間の横断等の提言は評価する。

2.教育課程の枠組みについて。

1 義務教育の授業日数。

授業日数の増加は、「審議のまとめ」の線が限度。
年間授業日数は、200日から220日とすべきである。

2 総合的な学習の時間について。

具体的な目標・内容・方法を明確にされたい。

3 外国語(英語)活動について。

各小学校における外国語活動の諸条件が整備されない段階での実施は避けられたい。

4 高等学校の必履修教科について。

科目の単位数は指定しても、科目の選定は各学校の自由選択にすべきである。

5 社会の変化への対応の視点から教科等を横断して改善すべき事柄。

横断しての指導内容については、本来の教科指導に支障をきたさないよう配慮すべきである。

3.共通する諸課題並びに教育条件の整備。

1 道徳教育について。

義務教育における道徳の時間は、現行の教育課程上の位置付けとすべきである。
道徳教育の充実のため、各学校への道徳主任の必置、道徳教育専門の指導主事の各市町村教育委員会への配置も進めるべきである。

2 キャリア教育の推進について。

子どもたちが自分の人生を考える教育としての指導目標・内容を具体化されたい。

3 部活動について。

部活動の教育的意義・役割・目標を学習指導要領に記述されたい。

4 教職員定数の改善について。

子どもたちと向き合う時間を確保するためにも、教職員定数の増加を図られたい。

5 教科書・教具等の充実について。

教科書の質・量両面の充実をはじめ、学校図書館の整備、教具の充実を図られたい。

4.家庭・地域等の教育力の低下への対応。

学校に対する、家庭・地域からの不当な要求が多い。これが学校本来のなすべき教育に支障となる。教育基本法第10条、第13条について、より具体的に内容を示す方策を検討し、学校、家庭、地域住民の責任を明確にすることが必要である。


全国連合退職校長会
会長 土橋 荘司

全国連合退職校長会では、主体性のある日本人の育成を重要な視点として、様々な提言・意見具申をしてきました。改正された教育基本法・学校教育法により規定された教育の目的・目標の達成に向け、また、学校や子どもたちが抱える諸課題の分析や解決策を柱に、学校教育の根幹である学習指導要領の改訂に向け審議されていることに敬意を表し意見具申します。

1.教育理念に基づく学習指導要領の改訂

 生きることを意識し、よりよく生きたいと願い、その目標の実現に努力するのは人間のみである。この営みの中で人間は様々な文化を創造し、文明を発達させ今日に至っている。また、それは、まさに一人一人の自己の創造であり、そこに人格の完成もある。
 このような観点からも、今次「まとめ」に示された「生きる力」の教育理念による一貫性のある学習指導要領の改訂は極めて重要である。更に、「創造性の育成」も含め、学習指導要領を改訂すべきである。
 今次教育改革の柱は、「言語活動の充実」、「理数教育の充実」、「道徳教育の充実」である。授業時間の増加に併せ教科科目の整理、目標やねらい、学習構造の明確化、教科間の横断等について、新たな提言がなされたことを評価する。
 学習指導要領の理念や内容が各学校の教育課程の編成に生かされ、計画・実践され成果を挙げるためには、学習指導要領の解説書等によって一層の充実と活用を図る必要がある。

2.教育課程の枠組みについて

1 義務教育の授業時数

 学校週5日制の下では、各学年「週1コマ」の増加が限度である。各学校の創意工夫を期待する前提として、授業日数の規定がなされることが必要があり、年間の授業日数を、200日から220日とすべきである。

2 総合的な学習の時間

 体験的な学習活動、教科等を横断した問題解決的学習や探求活動が重要な教育活動であり、その位置づけは章として位置づけされたが、具体的な目標・内容・方法を明確にする必要がある。

3 外国語(英語)活動

 小学校の高学年より外国語(英語)活動が導入されることになるが、実施される前に解決すべき諸課題として、指導のねらいや内容の明示、教員の指導力の養成、外部人材(ALT)の確保等の条件整備が絶対に必要である。条件整備がなされない段階での実施は避けるべきである。

4 高等学校の必履修教科

 現行と変わらないことはやむを得ない。しかし、中卒者の高校全入に等しい状況下にあって、学力差による高校教育の多様化が生じている。その現実に配慮し、科目の単位数は指定しても、科目の選定は各学校の自由選択にすべきである。

5 社会の変化への対応の視点から教科等を横断して改善すべき事項

 横断しての指導内容については、本来の教科指導に支障をきたさないよう配慮すべきである。

3.共通する諸課題並びに教育条件の整備

1 道徳教育

 義務教育における道徳の時間は、現行の教育課程上の位置づけとすべきであり、道徳教育の充実のためには、指導体制の充実が喫緊の課題である。各学校への道徳主任の必置は勿論、地区教育委員会(市町村も含め)に道徳教育を専門とする指導主事の配置、それらの者の研修・研究にも国としての施策が必要である。
 高等学校における道徳教育の在り方については十分に検討され、実効性のある施策を講じられたい。
 なお、指導内容の発達段階による重点化や使用する資料の開発や精選が必要であ。

2 キャリア教育の推進

 進路指導は、中学校の学級活動の内容の一つとして位置づけられているが、キャリア教育として、小・中・高を通して実施されていくべきものである。進学・就職という狭義の進路指導ではなく、一人一人が自分の人生を考える教育としての指導目標・内容を具体的に示すべきである。

3 部活動の在り方

 教員の教育課程以外の活動として行われている部活動の教育的な意義・役割・目標を学習指導要領に具体的に記述されたい。また、部活動を担当する教員の勤務の在り方や処遇の改善を計画的に推進すべきである。

4 教職員定数の改善

 教員は日常的に子どもたちと向き合うことにより、子どもたちの成長を促す使命を担っている。現状の窮状を認識され、行政優先の学校教育の改善や教職員定数の増加を図られたい。
 特に、特別支援教育に関しては、専門的知識・資格を有する教員の配置が必要である。

5 教科書・教具等の充実

 現状の教科書は、基礎的・基本的な内容の理解・習得に不十分であり、発展的な内容の記述も子どもたちの学習意欲を引き出すものとなってない。興味・関心を持たせる教科書の工夫・充実が必要である。また、理科実験に要する施設や教具、図書館の蔵書の充実と司書教諭の全校配置、情報機器の充実などの条件整備を図られたい。

4.家庭・地域等の教育力の低下への対応

 学習指導要領の内容等に直接かかわりはないが、家庭や地域の教育力が低下し、不当な要求が学校に求められることも多く、それが学校が本来なすべき教育活動に支障をきたしている。教育基本法第10条(家庭教育)・第13条(学校及び地域住民等の相互の連携協力)について、より具体的に内容を示すような方策を検討し、学校、家庭、地域住民等のそれぞれの果たすべき役割と責任を明確にすることが必要である。