教育課程部会(第110回) 議事録

1.日時

令和元年6月10日(月曜日)10時00分~12時30分

2.場所

東海大学校友会館「望星の間」
東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビル35階

3.議題

  1. 教育課程部会長の選任等について
  2. 教育課程部会運営規則について
  3. 新学習指導要領の円滑な実施に関する取組について
  4. 理科教育設備基準及び教材整備指針の改訂について
  5. 報告事項について
  6. Society5.0時代を見据えた芸術教育の在り方について
  7. その他

4.議事録

※冒頭非公開


【天笠部会長】  それでは,議題3に移りたいと思います。御承知のとおり,来年の4月から小学校において新学習指導要領が全面実施されます。このため,今後全面実施のための1年弱の期間において,新学習指導要領の円滑な実施に向けて必要な取組を確実に行うことが大変重要ではないかと思っております。
 そこで,本議題については,新学習指導要領の円滑な実施に関する取組の現状について,事務局に報告をお願いしたいと思います。なお,その件を含めまして本日のおよその時間的な段取りとしましては,既に御案内のとおり,会議の終了を12時半というふうに御案内させていただきたいと思います。そういうことで,これから恐れ入りますけれども,この件を含めまして,しばらく報告の時間が続くと御認識いただければと思います。時間にしまして,大体60分から70分前後ぐらい報告が続きます。そしてその後,それらに関しまして御質問,御意見,一括してということと,それから,本日初めてですので,皆さんに一言ずつ御挨拶を頂くような段取りで進めさせていただきたいと思います。大体,今申し上げたような形で進めさせていただきたいと思いますので,どうぞお含みいただければと思います。
 それでは改めまして,本年2月に特別支援学校高等部学習指導要領の告示がされましたので,その御報告からお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【俵特別支援教育課長】  ありがとうございます。特別支援教育課の課長をしています俵です。説明させていただきたいと思います。
 資料3-1を確認いただけますでしょうか。大部になっていますが,最初の1枚が概要になっていまして,この概要に基づいて説明させていただきたいと思います。この資料自体は今回の改訂の基本的な考え方と,教育内容の改善事項,それと,実施時期という形で整理させていただきました。
 最初に実施時期ですが,一部の教科については先行実施をしていますが,2022年度の入学生から年次進行で実施していくということにしています。
 1番の改訂の基本的な考え方ですが,社会に開かれた教育課程の実現や主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善等,初等中等教育全体の改善・充実の方向性を重視して考え方を整理しています。具体的には小・中・高等学校の教育課程との連続性の重視。それと,自立と社会参加に向けた教育の充実ということを中心に考え方を整理しています。
 具体的な改善事項として,学びの連続性の重視と自立と社会参加に向けた教育の充実の内容について2番で整理をさせていただきました。学びの連続性について言うと,重複障害のある生徒についての教育課程の取り扱いということで,この視点については基本的な考え方を規定しています。知的障害のある生徒に対する教育を行う特別支援学校については次の点を充実ということで,目標や内容を育成を目指す資質・能力の3つの柱に基づき整理しました。これはほかの指導要領でも同じ考え方だと思いますが,1つは,学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性の涵養。もう1点としては,生きて働く知識・技能の習得。3つ目として,未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成,この3つの柱に基づいて整理をしています。
 もう1点,各教科の内容を既に習得した生徒など,特に必要がある場合には小・中学校の学習指導要領の各教科の目標や内容の一部を取り入れることができるということについても規定しています。
 自立と社会参加に向けた教育の充実については,卒業後の視点を大切にしたカリキュラム・マネジメントを計画的・組織的に行うことを規定しています。その観点からも,関係機関と連携を図りながらキャリア教育の充実を図るということを規定しています。
 視覚障害,聴覚障害,肢体不自由,病弱のある生徒については,この教育を行う特別支援学校について,高等学校の学習指導要領に示す各教科や科目の目標等,内容に準じることとして,その上で障害の特性に応じた指導上の配慮を充実する規定としています。その充実の内容については,一部,視覚障害,聴覚障害の方々等の例示を下に書かせていただいています。そのほか,ICT機器の活用についても規定をしています。
 知的障害である生徒のための各教科について,これも内容を充実させていただいて,それぞれここに例示をしております。
 そのほか,総合的な学習の時間を,これはほかも同じだと思いますが,総合的な探究の時間に改めて,探究の過程を重視するということにしています。もう1点,生涯学習への意欲を高めること,あるいは生涯を通じてスポーツや文化芸術活動に親しみ,豊かな生活を営むことができるように配慮すること,これについても規定をして,生涯学習についても取り組むということを規定しています。
 駆け足になりましたが,以上になります。よろしくお願いします。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは続きまして,本年1月に本部会で取りまとめました報告,「児童生徒の学習評価の在り方について」を受けて,3月に学習評価及び指導要録の改善等に関する通知文が文部科学省から発出されました。このことについて御報告をお願いしたいと思います。また,新しい学習指導要領の広報・周知の取組についても,この際併せて御報告頂ければと思いますので,簡潔によろしくお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】  ありがとうございます。お手元の資料4-1,平成31年3月29日付局長通知,「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」について御説明いたします。
 学習評価についての基本的な考え方でございますが,学習指導と学習評価はカリキュラム・マネジメントの中核的な役割を担っていると。その上で,主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を通した資質・能力の育成にも学習評価が重要な役割を担っております。評価の結果が児童生徒の具体的な学習改善につながっていない,挙手の回数や毎時間ノートをとっているかなどのみで「関心・意欲・態度」の評価がなされる,教師によって評価の方針が異なる,評価のための「記録」に労力を割かれるなどの課題が指摘されております。こういった課題に応えまして,喫緊の課題であります学校における働き方改革も踏まえまして,児童生徒の学習改善につながるものにしていくこと,教師の指導改善につながるものにしていくこと,慣行として行われてきたことでも必要性・妥当性が認められないものは見直していくことの3点を基本的な考え方としまして,学習評価を真に意味のあるものに改善していく方向性を示されたところでございます。
 また,学習評価及び指導要録の主な改善点でございます。全ての教科等の目標・内容を資質・能力の3つの柱で整理した学習指導要領を踏まえまして,観点別学習状況評価の観点も3観点に改めるということでございます。具体的には,「知識・技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」の3点で評価でございます。また,「指導と評価の一体化」を推進するために,高校における観点別学習状況評価を充実しております。また,指導要録を大幅に簡素化したところでございます。
 学習評価の円滑な実施に向けた取組としましては,まず,妥当性や信頼性が高まるように学校全体としての組織的かつ計画的な取組が重要であること。「記録」に用いる評価の場面は毎回の十分長ではなく単元や題材等のまとまりの中で精選することが重要であること。また,評価の妥当性や信頼性を高めるために,児童生徒に学習の見通しを持たせるため,必要に応じ評価の方針等の児童生徒との共有。あるいは,外部試験や検定等(全国学力調査や高校生のための学びの基礎診断認定を受けた測定ツール)の学習評価への利用。「統合型校務支援システム」の整備・活用を進めまして,指導要録と通知表のデータの連動を図ることは非常に大事であること。また,国立政策研究所におきまして「学習評価の参考資料」を作成すること等でございます。
 また,最後に,学習評価の改善を受けた高等学校入学者選抜,大学入学者選抜の改善についても言及してございます。
 駆け足になって申し訳ございませんが,続きまして,資料5-1を御覧いただければと思います。資料5-1の1枚目の概要に基づいて御説明申し上げます。こちらも同じく3月29日に出された通知でございまして,この通知に関しましては,初等中等教育局長のみならず,総合教育政策局長の連名で出してございます。この背景には,今回の学習指導要領改訂が,よりよい学校教育がよりよい社会を作るという理念を,学校,家庭,地域が共有し,学校教育と社会教育との連携・協働により,社会に開かれた教育課程を実現することを目指すという政策の方向性を踏まえたものでございます。
 中身といたしましては,まず,実社会や実生活との関わりを重視した学習指導要領の趣旨を実現し,地域の教育資源の活用による個々の児童生徒に応じた多様な学習活動の充実を図ることが必要としております。このために,長期休業日や土日等の休業日等に学校の外部において総合的な学習の時間を行う際,総合的な学習の時間の探究的な学習の過程を踏まえて,その位置付けを年間指導計画などに明確にする場合に,各学校の判断により,総合的な学習の時間の年間授業時数の4分の1程度,約70時間のうち18時間まで教師の立ち合いや引率を伴わずに学習活動を展開する際の留意事項を示すものでございます。こちらに関しましては,必ずやらなければいけないということではなくて,この通知に関しましては,総合的な学習の時間の学校外活動を行うこととした場合の考え方や留意点を示すものということでございます。想定される学習活動としましては,公民館や図書館等を利用したもの,あるいは,社会教育関係団体,NPO等との連携した学習活動,地域の教育資源を活用した学習活動。また,家庭を中心にする学習活動も,指導計画等に事前・事後指導を適切に位置付けることということでございます。また,探究の過程を踏まえて作成する指導計画等への記載事項や,家庭や地域等との連携,安全管理の確保といったことを書いてございます。
 この開始時期でございますが,2020年度からの実施を基本としますが,通知に対する準備が整っている学校については2019年度中の実施も可能としているところでございます。
 続きまして,資料6でございますが,今後の学習指導要領の改訂に関するスケジュールということでございまして,先ほど部会長からもお話がありましたが,まず,幼稚園に関しましては昨年度から全面実施ということでございます。そして,小学校に関しましては,今年度は今,教科書の採択・供給の時期でございまして,令和2年度から全面実施,中学校は令和3年度から全面実施,高等学校につきましては令和4年度から年次進行で実施するということでございます。
 裏をめくっていただきまして,次に,学習指導要領の周知・広報について御説明申し上げます。平成28年12月答申におきまして,新しい教育過程が目指す理念の共有と広報活動の充実について求められていることから,文部科学省においては,これまで学校の教職員に加え,保護者や地域の方々,産業界等に対する周知・広報活動や,教科書・教材会社等への説明を行ってきました。この中でも本日は特に一般の方に対して新しい学習指導要領の趣旨・内容を周知するために作成しました資料等について御紹介いたします。
 まず,文部科学省において作成しました3分程度の動画を御覧ください。スクリーンに御注目ください。
(映像上映)
【板倉教育課程企画室長】  ありがとうございました。説明を続けます。
 動画にもありましたが,資料6の3ページ,「生きる力 学びの,その先へ」というキーメッセージや,4羽の黄色い鳥のモチーフを用いながら,動画,リーフレット,ポスター,新しいウェブサイトを作成しているところでございます。
 まず,リーフレット,ポスターについてでございますが,本年2月から3月に掛けまして,全小・中学校や特別支援学校等に送付いたしました。また,リーフレットについてはダイジェスト版も作成し,小中学校等の全ての保護者に学校を通じて配布しております。ダイジェスト版はこの資料の後ろに付けておりますので,御覧いただければと思います。
 また,裏面,4ページを御覧いただければと思います。動画につきましては先ほど御覧いただいたものに加えまして,内閣府が運営する政府インターネットテレビでも8分程度の番組を配信していただいております。この動画では新学習指導要領のポイントについて,保護者からの質問にお答えする形で説明したり,主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善について,実際の学校の授業をお見せする形で紹介したりしています。
 最後にウェブサイトです。本年2月に文部科学省学習指導要領ウェブサイトをリニューアルオープンしました。学習指導要領に関する資料を整理して掲載するとともに,著名人へのインタビューを掲載するなど,広く一般の方々にも周知・広報できるようコンテンツも用意しているところでございます。
 私からの説明は以上でございます。
【天笠部会長】  今のそれぞれについても,御意見等々お願いしたいところでもあるんですけれども,冒頭申し上げたように,少し前に進めさせていただきたいと思います。
 続きましても,今のことと関わりまして,新しい学習指導要領の全面実施に関係するものでございます。議題4でございます。新しい学習指導要領の全面実施に向けた理科教育設備基準及び教材整備指針の改訂についてでございます。その改訂の内容について,事務局より説明をお願いいたします。
【滝波教育課程課長】  それでは,私から説明いたします。私は,この5月から教育課程課長の任につきました滝波と申します。どうぞよろしくお願いします。
 資料7-1を御覧いただければと思います。資料は,1枚目が省令改正の概要になっておりまして,2枚目以降に省令改正案,最後のページには,今回の省令改正に当たりまして検討会を開いておりましたけれども,その検討会の報告書の概要を付けてございます。先生方の机の上には資料7-1の後ろに検討会報告書の資料そのものを参考資料という形でお配りしてございます。
 まず,1枚目でございますけれども,文部科学省では,理科教育振興法に基づきまして,公立又は私立の小・中・高等学校等における理科教育のための設備の整備を支援してございます。この法律の中で理科教育といいますのは,理科,算数又は数学に関する教育ということになってございます。
 支援の対象となります理科教育のための設備でございますけれども,これについては政令でその基準を定めておりまして,さらに,その基準に関しての細目につきまして,中央教育審議会の議論を経まして,文部科学省令で定めるという体系になってございます。この省令に定めます設備の基準に関する細目でございますけれども,これまでも学習指導要領の改訂などに伴いまして改訂を行ってきたところです。今回,来年度から小学校等,それから,再来年度からは中学校等の新学習指導要領の全面実施に伴いまして,この設備の基準の見直しを行うものでございます。
 基準の改訂に当たりましては,常葉大学の田代教授を会長といたします検討会を組織して検討を行いました。昨年の12月から4回にわたりまして検討会を開催しまして,その間,検討会の下に小学校,中学校,それから特別支援学校のそれぞれの理科,算数・数学に関する作業部会も設けまして,御検討頂いたところでございます。そして,本年4月に小中学校等分につきましてとりまとめたところでございます。
 この検討会ですけれども,理科教育等設備の整備費補助の運用面も含めまして幅広い御検討を頂いたところでございます。今回お諮りをしております省令改正に関する内容としましては,新学習指導要領の趣旨,あるいは内容に沿った指導を各学校の方で適切に実施する上で必要な設備につきまして,具体的な器具というものを想定しながら,省令で規定することとなる品目と数量,この点について御検討頂いたわけでございます。詳細についてはこの資料7-1とは別に参考資料をお配りしておりまして, 16ページ以降に別紙1という形で付けてありますので御覧いただければと思います。
 さて,この検討会の報告書を踏まえまして,設備の基準につきまして省令の別表に規定しました品目と数量の見直しを行うこととしております。改正省令案につきましては,新学習指導要領に対応した品目の例として,例えば,小学校の理科でございますけれども,第3学年の内容としまして,「音の性質」というものが追加されることになりました。これに伴いまして,品目の中に「音の学習用具」というものを追加しております。これは改正省令案の3ページにございますけれども,別表第1,小学校理科の改正後の欄に二重線で引いているところになります。同様に小学校の算数でございますけれども,1ページ目の右側の表に,領域構成の見直しを行っているのを図示してございますけれども,これに伴いまして,品目の削除・追加・変更などを行っております。改正省令案におきましては,8ページから9ページのところに別表第5というのがございます。この中で小学校算数の表の中にアンダーラインを引いている箇所がございます。この部分になります。
 1ページ目にお戻りいただきまして,今後のスケジュールでございますけれども,本日の部会で御審議を頂いた後に,所定のパブリックコメントの手続を経まして,夏以降に省令改正を施してまいりたいと考えております。
 具体的な補助金の適用につきましては,小学校等については令和2年度分の国庫補助金から,中学校等については令和3年度分の国庫補助金から適用してまいりたいと考えております。なお,高等学校等分につきましては,令和4年度から新学習指導要領が実施されてまいりますので,今後検討を行っていくことにしています。
 理科教育設備基準の改訂につきましては以上でございます。
【天笠部会長】  続きまして,お願いします。
【坂本財務課教育財政室長】  続きまして,資料7-2に沿いまして,教育整備指針の一部改定について御説明させていただきます。財務課教育財政室長をしております坂本と申します。どうぞよろしくお願いします。
 それでは資料7-2の1ページ目の概要に沿って御説明をいたします。まず,右側の表を御覧いただければと思いますけれども,この教材の指針につきましては,昭和42年度に教材基準という形で策定して以降,若干時期はずれますけれども,累次の学習指導要領の改訂におおむね平仄を合わせる形で見直しを行ってきているところでございまして,現行の基準につきましては,平成23年度に作成したものでございます。
 今回,来年度の小学校の学習指導要領の全面実施に合わせる形で指針の見直しを行うということでございますが,この指針につきましては,義務教育諸学校に備える教材の品目の例示,それから,整備目標の目安を参考資料としてお示しするということでございまして,その例示をもって,教材整備の必要性について現場での御理解を求めるという性格のものでございます。
 今回の主な改訂内容といたしましては,そちらの概要にございますように,新たな学習指導要領に合わせて,小学校でプログラミング教育用ソフトウエア及びハードウエアを新たに追加したほか,学校における働き方改革を見据えて,これはあくまでも教材の指針ではございますけれども,教員の負担軽減という観点から,複合機等の教材について学校環境改善をしていただく意味で追加をしているところでございまして,近年の学校の課題に対応するような形で幾つかの新規事項を盛り込んでいるところでございます。
 3ページ以降が各学校段階別の整備指針そのものになってございます。右側に新規という欄がございますが,そこに丸を伏してあるところが,今回新たに追加した品目,それから三角が,少し中身を見直した品目,無印のところは現行の指針から変更のない品目でございます。
 それから,教材整備指針に例示している教材を整備するのに必要な経費,これを見積もりまして,現在,平成24年度から10か年の計画で地方交付税措置が講じられているところでございます。これによって,計画的・安定的な教材整備のための財源的な裏付けとして,地方自治体に予算化をしていただくための後押しをしているところでございます。今回,新たな整備指針を作成いたしましたので,この次の新しい計画につきましても,引き続き整理を行って,関係省庁との間で協議をしながら,必要な財政要望を行っていきたいと考えているところでございます。
 それから,今後のスケジュールにつきましては,先ほど教育課程課長からも説明しましたとおり,理科教育設備基準につきましては省令改正を伴うという事項でございますので,本部会の付議を得た後,パブリックコメントを付すということが義務付けられているわけでございますけれども,今御説明させていただいております教材整備指針につきましては,あくまでも文部科学省が一般的な指導・助言の一環として作成する参考資料という形で位置付けておりまして,必ずしもパブリックコメントが義務付けられているものではございません。しかしながら,この教材整備指針は参考資料とはいえ,今後,教材整備に,先ほどの財政措置も含めて影響力を与えるということでございますので,任意の意見募集という形で,理科教材と同様の形で一定期間設けまして,広く国民の方々から御意見を頂戴した上で,内容を固めてまいりたいということでございます。
 私からは以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。先ほど申し上げましたように,議題3については後ほど皆さんにまとめて御意見頂くというふうに申し上げましたけれども,今の資料7-1あるいは7-2,ここを中心については御意見を,この整備指針につきましては御意見,あるいは御質問等々がありましたらお願いしたいと思いますけれども,この件についていかがでしょうか。
 なければ,これで御承認いただくということにさせていただきます。この内容で改訂を進めてよろしいかどうか,委員の皆さんから御質問,御意見等々,ありますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【天笠部会長】  それでは,このことで進めていただければというふうに思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。議題4につきましては,こういう形でとりあえずくくらせていただきまして,続いて,再び報告に移らせていただきたいと思います。
 続きまして,学校における働き方改革についてという,この件も昨年,大変関心が持たれた事案かと思いますけれども,この点についてまた説明をお願いいたします。
【常盤木企画官】  失礼いたします。初等中等教育局企画官をしております常盤木と申します。資料8に基づきまして,学校における働き方改革の取組状況について御説明申し上げます。
 天笠部会長をはじめといたしまして,第9期の中教審の先生方には大変御熱心に御審議を賜りまして,本年1月25日に中教審の答申をおまとめいただいたところでございます。まずもって,心より感謝申し上げたいと思っております。ありがとうございました。
 資料の1ページでございます。改めまして,小学校であれば夏休みをならして月59時間,中学校であれば月81時間という学校の先生方の厳しい勤務実態の中,2ページでございますけれども,学校の先生方の年齢構成につきまして,大変ベテランと若手が多いという状況があるところでございます。この調査,2ページの上でございますけれども,今回の調査の対象におきましても,若手の教員の方が前回10年前の調査に比べまして,約10%ほど伸びているという実態もあったところでございます。このような観点も踏まえまして,2ページの下側にございますように,今般1月25日に答申をおまとめいただいたところでございます。その内容といたしまして,3ページを御覧いただきたいと思います。私ども,中教審の答申で御指摘頂きましたとおり,学校における働き方改革,これはとにかく子供たちに対して効果的な教育活動を行うためのものだと,こういった原点を明確にし,また,心ある教師の過労死等の事態は決してあってはならないとの思いから取組を進めさせていただいているところでございます。こうしたことから,3ページの下の枠でございますけれども,今回の働き方改革のいわば始点といたしまして,勤務時間の上限に関するガイドライン,こうしたものを文部科学省として定めたところでございます。超勤4項目以外の時間も含めまして,在校等時間,こういった概念を作りまして,これをしっかりと管理していくというところでございます。
 4ページでございます。働き方改革を実現するためには,徹底した業務の明確化,あるいは適正化が必要でございます。上の方に3つほど枠囲いがございますけれども,現在,学校で行われている業務について,そもそも学校が行うべき業務なのか,学校が行うべき業務であっても,教職の専門職たる先生が行うべき業務なのか,それから,先生が行う業務ではあるけれども,ほかの専門職と連携することなどによりまして効率化ができないか,そういった3つのカテゴリーを作りまして,徹底的に業務の明確化,適正化を図っていくということが大事と思っております。同じページの下にございますように,具体的に日々の先生方の勤務の在り方というものを変えることが,年間で見れば100時間単位,200時間単位の時間外勤務の削減につながってくる,こういった御議論を賜ったところでございます。
 5ページを御覧いただきたく思います。答申を頂きまして,答申の後文部科学省として,上の丸の1つ目でございますが,マル1にございますとおり,働き方改革の趣旨を皆様に分かりやすくまとめた明確で力強いメッセージを発出するということで,5ページの下で囲っておりますけれども,学校の働き方改革の映像を作らせていただきました。これは本部会の若江委員にもお加わりいただきまして,プロモーション動画を作らせていただいたところでございます。本日現在,2.9万回程度再生されているという記録になってございまして,政府のこのようなプロモーション動画としては珍しく,かなり多くの方に御覧いただいている状況でございます。
 東川委員のPTA組織とも連携させていただきまして,保護者の方々にも同じようなメッセージを情報発信させていただいているところでございます。引き続き取組を進めていきたいと思っております。
 6ページでございます。これは初中分科会の方にも御報告を申し上げているところでございますが,働き方改革のために極めて重要な,教職員定数をはじめとする人的な支援につきまして,令和元年度予算にも,学校をしっかり支える条件整備の予算を組ませていただいているところでございます。
 7ページを御覧ください。本年1月の答申の中でも,教育課程の在り方,あるいは教員免許制度の改善といったことが,今後,働き方改革をより進めていくためにも検討課題として検討することが必要だという御議論を頂いているところでございます。こうした中で,7ページの下の囲いにございますように,今般4月17日に,中央教育審議会に対しまして新たな諮問を申し上げたところでございます。こちらの内容につきましては,後ほどの説明の中で別の担当者から御報告申し上げたいと思っております。
 8ページを御覧ください。今後,働き方改革の取組状況を市区町村ごとに把握し,公表することとしてございます。それから,前回は10年前,10年間隔でございましたけれども,3年後をめどに勤務実態の調査を行うということで,私ども,準備を始めているところでございます。こうした取組を進めまして,皆様,自治体における働き方改革の取組の可視化,そして,自走する仕組みの確立,こういったことに取り組んでまいりたいと思ってございます。また,その下にございますように,給特法の今後の在り方,特に教職調整額が4%であるという水準をどう考えていくのか。あるいは,1年間の変形労働時間制というものの導入,こうしたことにつきましても,皆様から頂きました答申を踏まえまして取り組んでいるところ,また,今後取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
 8ページ目,御覧いただいている一番下の囲みの中にございますように,第9期の答申おきましては,我々の社会が,子供たちを最前線で支える教師たちがこれからも自らの時間を犠牲にして長時間勤務を続けていくことを望むのか,又は心身ともに健康にその専門性を十二分に発揮して質の高い授業や教育活動を行っていくことを望むのか,その選択が問われている,こういったことを社会に対して中教審の皆様から問いかけていただいたところでございます。私ども文部科学省といたしましては,教師の皆様が誇りを持って専門職として全力投球できるよう,今後とも全力で取り組んでまいりたいと考えているところでございますので,中教審の先生方におかれましても,引き続き御指導賜れればと存じております。
 説明は以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして,本年3月の末に発しました通知及び本年の5月に発表されました教育再生実行会議第11次提言,そして,4月17日に諮問されました中央教育審議会の諮問について,これらを併せまして説明をお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】  それでは,資料9-1を御覧いただければと思います。資料9-1は3月29日付の初中局長通知「平成30年度公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査の結果及び平成31年度以降の教育課程の編成・実施について」の概要でございます。
 まず,その調査に基づきまして,その結果から,多くの公立小・中学校が標準授業時数を超えて授業を実施していることが明らかになったところでございます。全国平均値を御覧いただければと思いますが,小学校5年生で見ましても約60単位時間以上,それから,中学校1学年にしましても46単位時間,かなり多くの時間が超過しているというところでございます。例示でございますが,小5の年間総授業時数の計画で御覧いただきましても,年間総授業時数,1,086単位時間以上というのが25.7%となっていると。この通知に関しましては,学校における働き方改革に関する答申におきまして,標準授業時数を大きく上回った授業時数と指摘された授業時数の例示でございますが,しかしながら,かなり多くの学校が相当程度上回っているところ現状が明らかになったところでございます。
 一方で,小学校指導要領の下で,小3から小6まで,英語の関係がございまして,小3から小6の標準授業時数が増加することが予定されているところでございます。そういった動きがある中,また,一方で先ほど財務課企画官から説明申し上げましたように,学校における働き方改革を進める上で1つの方策としまして,授業時数の取り扱い等の教育課程の編成・実施についても対応が必要であるという指摘がなされているところでございます。
 そういった動きを受けまして,今回,通知を出したところでございまして,まず留意点としましては,まず,指導体制に見合った授業時数を設定すること。それから,不測の事態,災害や流行性疾患を過剰に意識した授業時数の確保は不要。従来からこの点に関しましては,学習指導要領解説総則編に置いて記載しておりますが,改めて周知を図ったところでございます。また,この上記のマル1,マル2のような状況を踏まえまして,学校における働き方改革に配慮しました教育課程を編成・実施することが大事でございます。
 その上で,学校におきまして,年間授業計画等を精査し,授業時数の見直しなどの措置を,特に標準授業時数大きく上回っている場合には取り組んでいただければと思っておりまして,この措置の具体例に関しましては,例えばこれはどういうことを念頭に置いているかと申し上げれば,年度途中でも教育課程の実施状況を踏まえ必要があれば修正。あるいは,学習指導要領の全面実施が小学校であれば2020年度からでございますけれども,そのタイミングに合わせて学力の定着と働き方改革が両立するような年間授業計画を編成するために余裕を持って検討するようなこと。あるいは,放課後の補充指導等の全員が参加する授業以外による方法の検討といったことも考えていただければと思っております。また設置者におきましても,学校における働き方改革に配慮しました教育課程の編成・実施に向けた,各学校の指導,条件整備等の検討を行っていただければと考えております。それが資料9-1でございます。
 続きまして,資料10-1でございます。2019年4月17日の中央教育審議会の諮問概要でございます。こちらも概要紙に従いまして御説明申し上げます。
 まず,現在の学校教育の成果の例としまして,国際学力調査で全力を挙げてというトップレベルの学力水準ということが言われております。また,全国学力・学習状況調査におきまして,成績下位の都道府県の平均正答率と全国の平均正答率との差が縮小ということで,学力の全体的な底上げが確実に進展。また,高校の多様化が進みまして,大学や産業界との連携の下での様々な教育や地域社会の課題解決に大きく貢献する活動が展開されているというところでございます。知・徳・体を一体で育む日本型学校教育というものは,学力水準を高め,社会性を育んできた,それを支えてきたのは,子供たちの教育に志を持った教師の献身的な取組であるということでございます。
 そして,社会の状況の変化としまして,児童生徒の語彙力や読解力への課題。あるいは高校生の学習時間減少や学習意欲の希薄化。大学受験に最低限必要な科目以外を真剣に学ぶ動機の低下。いじめの重大事態や児童虐待相談対応件数が過去最多。障害のある児童生徒,不登校児童生徒,外国人児童生徒等の増加。また,小学校は月約59時間,中学校は月約80時間の教員の時間外勤務というものも明らかになっております。教師の採用選考試験の競争率の減少,とりわけ小学校採用試験の倍率の急落。学校のICT環境が脆弱であって地域格差も大きいという状況。人口減少,少子高齢化の進展により,一市町村一小学校一中学校等の自治体が増加しているところでございます。こうした,今後迎えるSociety5.0時代の教育・学校・教師の在り方としまして,読解力や情報活用能力,教科固有の見方・考え方を働かせて自分の頭で考えて表現する力,対話や協働を通じて知識やアイデアを共有し,新しい解や納得解を生み出す力が必要であること。教師を支援するツールとして先端技術を活用し,地理的制約を超えた多様な他者との協働的な学び,一人一人の能力適性等に応じた学び,子供たちの意欲を高め,やりたいことを深められる学びを実現すること。子供達の学びの変化に応じた資質・能力を有する教師,多様性があり,変化にも柔軟に対応できる教師集団,「チームとしての学校の推進」といったことでございます。こうした前提でSociety5.0時代の到来を見据えて初等中等教育の現状及び課題を踏まえ,これからの初等中等教育の在り方について総合的に御検討頂くということを考えてございます。
 ページをめくりまして,中央教育審議会において審議をお願いしたい事項を申し上げます。
 まず1ポツでございますが,新時代に対応した義務教育の在り方でございます。基礎的読解力などの基盤的な学力の確実な定着に向けた方策。義務教育9年間を見通した児童生徒の発達の段階に応じた学級担任制と教科担任制の在り方や,習熟度別指導の在り方など今後の指導体制の在り方。年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方を含む教育課程の在り方。障害のある者を含む特別な配慮を要する児童生徒に対する指導及び支援の在り方など,児童生徒一人一人の能力,適性等に応じた指導の在り方。
 2,新時代に対応した高等学校の在り方についてでございますが,普通科改革など各学科の在り方。文系・理系にかかわらず様々な科目で学ぶことや,STEAM教育の推進。時代の変化・役割の変化に応じた定時制・通信制課程の在り方。地域社会や高等教育機関との協働による教育の在り方。
 増加する学術児童生徒等への教育の在り方。外国人児童生徒等の就学機会の確保,教育相談等の包括的支援の在り方。公立学校における外国人児童生徒等に対する指導体制の確保。日本の生活や文化に関する教育,母語の指導,異文化理解や多文化共生の考え方に基づく教育の在り方等でございます。
 また,これからの時代に応じた教師の在り方や教育環境の整備等でございます。児童生徒等に求められる資質・能力を育成することができる教師の在り方。義務教育9年間を学級担任制を重視する段階と教科担任制を重視する段階に捉え直すことができる教職員配置や教員免許制度の在り方。教員養成・免許・採用・研修・勤務環境・人事計画等の在り方。免許更新制講習と研修等の位置付けの在り方など教員免許更新制の実質化。多様な背景を持つ人材によって教職員組織を構成できるようにするための免許制度や教員の養成・採用・研修・勤務環境の在り方。特別な配慮を要する児童生徒等への指導など特定の課題に関する教師の専門性向上のための仕組みの構築。幼児教育の無償化を踏まえた幼児教育の質の向上。義務教育を全ての児童生徒等に実質的に保障するための方策。いじめの重大事態,虐待事案に適切に対応するための方策。学校の小規模化を踏まえた自治体間の連携等を含めた学校運営の在り方。教職員や専門的人材の配置,ICT環境や先端技術の活用を含む条件整備の在り方でございます。
 こちらは,今これからどういう審議で行うかと申し上げますと,先日の初等中等教育分科会におきまして特別部会の設置がなされたところでございまして,今後,特別部会,あるいは教員養成部会等の関係部会と連携しながら教育課程部会において審議を深めることとしております。
 続きまして,教育再生実行会議の提言でございます。資料11-1を御覧いただけますでしょうか。5月17日に開催されました第45回教育再生実行会議におきまして,第11次提言「技術の進展に応じた教育の革新,新時代に対応した高等学校改革について」が取りまとめられました。本提言では人生100年時代の到来,技術の急速な進展などの社会の変化に対応し,活躍できる資質・能力を育成する観点から,技術が進展する新しい時代における教育の姿や,Society5.0を生き抜くことができる人材を育成するための高等学校改革について幅広い観点から総合的な方向性が示されたところでございます。
 まず資料を御覧いただきますと,1ポツところで主な提言事項というのがございますが,まず(1)で,Society5.0で求められる力と教育の在り方で,教育課程部会に関係ありそうなところをかいつまんで御説明いたしますと,基礎的読解力や数学的思考力をはじめ,データサイエンス等に関する教育等も含めた基盤的な学力や情報活用能力の育成。STEAM教育の推進。学習指導要領の一部改訂など,教育課程の不断の見直しを進め,中長期的な観点から教科書の弾力的見直しについても検討。
 (2)教師の在り方や外部人材の活用。社会の変化や技術の急速な進展を踏まえた養成・採用・研修の全体を通じた教師の資質・能力の向上。
 (3)新たな学びとそれに対応した教材の充実。全ての小・中学校等で遠隔教育を活用できるよう,大学・民間企業等と協働したプラットフォームの構築や,特例校制度による指導法研究。スタディ・ログ等を活用した個別最適化された学び等の実現に向け実証研究。
 (4)働き方改革。
 (5)AI時代を担う人材育成としての高等教育の在り方。全ての大学生がAI,数理,データサイエンスの基礎的な素養を身に付けられるよう,標準カリキュラムの作成。高等専門学校において大学等と連携した高度な専門教育によるハイブリッド型の連携教育プログラムの導入を推進。
 (6)が特別な配慮が必要な児童生徒の状況に応じた支援の充実ということでございます。通学が困難な児童生徒や帰国・外国人児童生徒等への支援の観点から,全ての小中高特別支援学校等で遠隔教育を利活用できるよう推進。
 (7)新たな学びの基盤となる環境整備,EBPMの推進でございまして,地方財政措置が講じられている学校のICT環境整備について,自治体における要員等の分析と必要な対応の実施でございます。この中には,世界最高速級の学術通信ネットワークSINETを初等中等教育段階に開放。全国学力・学習状況調査の改善の検討が指摘されております。
 また,生涯を通じた学びの機会の整備の推進,教育現場と企業等の連携・協働についても指摘されているところでございます。
 私からの説明は以上とさせていただきます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。多々御説明いただいたそれぞれでありましたけれども,ここで一区切りで,恐れ入りますけど,もう1つ,これからある意味で大きな塊の御説明になるかと思うんですけれども,次は芸術教育に関わってということをなんですが,Society5.0時代を見据えた芸術教育の在り方についてということなんですけど,これなぜこの場で御説明いただくのかどうなのかということについてはちょっと御説明を頂いた方がよろしいかと思いますので,お願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】  ありがとうございます。本日,学校における芸術教育の充実に向けて文化庁から御説明いただきますが,この背景といたしましては,昨年10月に文化庁に,初等中等教育局にあった芸術教育の部分が,学校芸術教育室が文化庁に新設されたということでございまして,また,このことについてまだ御報告できていなかったので,この際御報告申し上げたいのが1点でございます。
 もう1点は,Society5.0の時代におきまして,より感性や創造性の育成というのが重要になってきておりまして,そういった観点から本日文化庁から御説明いただければと考えております。よろしくお願いいたします。
【天笠部会長】  それでは,この件につきまして説明等々をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。
【根来文化戦略官】  よろしくお願いいたします。文化庁で学校芸術教育室長を務めております根来と申します。私からは芸術教育の文化庁への移管について御説明させていただきます。
 資料12の1枚目でございます。文化庁では,文化に関する施策の総合的な推進を図るため,2018年10月,文化庁に新たに学校芸術教育室を設置し,これまで文部科学省本省が所管しておりました学校における芸術教育に関する事務,すなわち音楽,図画工作,美術,工芸,書道といった芸術系教科に関する事務を文化庁に移管いたしました。これによりまして,従前より取り組んでおりました文化振興施策に加えまして,学校教育における全ての子供たちへの芸術に関する教育の充実を図ることといたしました。
 また,博物館に関する事務も文部科学省本省から文化庁に移管しております。従前より文化庁が所管しておりました美術館や歴史博物館に加えまして,水族館や動物園,科学博物館と全ての類型の博物館を文化庁が一括して所管することによりまして,博物館のさらなる振興と行政の効率化を図ることといたしました。
 なお,文化庁の一部は遅くとも2021年度中に京都に移転いたしますが,学校芸術教育室は引き続き東京において事務を行います。
 以上でございます。
【東良視学官】  私は初等中等教育局の視学官をしております東良と言います。どうぞよろしくお願いいたします。それでは,最初に本日のSociety5.0時代を見据えた芸術教育の在り方についての全般についてお話をさせていただきます。そして,このあと,4人の先生方の御発表を聞いていただき,御意見を頂ければと思います。
 配付資料の2ページは,これからの社会を生きる全ての子供たちに求められる資質・能力の育成における芸術教育の意義として,1つ目の枠組みの中は,人格の完成を目指す豊かな感性や創造性の涵養と,そしてSociety5.0時代に向けた社会の創造に資する芸術教育の在り方として,これまでの平成28年答申や,そしてSociety5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会,また,先ほど説明がありました新しい時代の初等中等教育の在り方についての諮問等の中で,これからの社会に必要な資質・能力の育成という観点と,そして心豊かな社会を形成する我が国の文化芸術活動の一層の充実という2つの観点からまとめたものでございます。
 平成28年の答申におきましては,豊かな感性や創造力等を育むことはあらゆる創造の源泉となるものであり,芸術系教科等における学習を充実させていくこと,こういったことが求められております。
 また,中教審の諮問におきましても,対話や協働を通じて知識やアイデアを共有し,新しい解や納得解を生み出す力などが必要であること。また,Society5.0に向けた人材育成におきましては,教育におけるSTEAMやデザイン思考の必要性,また,多くのアイデアを生み出す思考の流れや,感性や知性に基づく独創性と対話を通じた,さらに世界を広げる創造力,苦心して物を作り上げる力が重要と示されております。また,特定分野に特異な才能を持つ者や障害のある者を含む特別な配慮を要する児童生徒の一人一人の能力,適性に応じた指導の在り方についても求められているところであります。
 Society5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会では,心豊かな社会を形成する我が国の文化芸術活動の一層の充実におきましては,文化芸術は人々の創造性を育み,その表現力を高めるとともに,人々の心のつながりや相互理解,多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成するものであること,そして,世界の平和に寄与するなど,本質的及び社会的経済価値を有しているというようなことが示されております。
 加えて,中教審の28年答申におきましては,本物の芸術に触れる鑑賞活動等を充実させる観点からは,博物館や美術館,劇場等の連携を積極的に図っていくことも重要であるというふうにお示しいただいております。
 詳細につきましては,後の5ページから8ページに関連する内容の記載に関する資料を付けておりますので,併せて御覧いただければと思います。
 また,9ページからは参考資料として,新しい学習指導要領の改訂に際して御議論いただきました中央教育審議会の芸術ワーキンググループの報告を載せておりますので,併せて御参考にしていただければと思います。
 表の方の,ページの方に戻りまして,下の枠組みの説明でございます。全ての子供たちに必要な資質・能力の育成を目指す芸術系教科等の新しい学習指導要領において,今回の芸術教育に関する新しい学習指導要領では,芸術系教科等を学ぶ意味の明確化を一層重視しております。特に教科の目標の柱書きに生活や社会の中の芸術や芸術文化等と豊かに関わる資質・能力の育成を目指すことを一層重視するという観点から明示しております。
 枠内の下に「生活や社会の中の」という冒頭の後,各教科等がこういった目標を今回示したということで,特に一人一人の子供たち,全ての子供たちが生活や社会の中の芸術や芸術文化と豊かに関われる,そういった資質・能力の育成を今回の新しい学習指導要領では目指しております。
 また,右側の方に行きまして,豊かな感性や創造性を育み,特に実社会で課題解決につながる資質・能力の育成を目指していくことを重視しております。今回,学習指導要領が3つの柱で整理されてございますが,芸術系教科等におきましても,3つの柱で資質・能力を整備し,それを育成するとともに,特に芸術系教科等として豊かな感性や新しい意味や価値をつくりだす創造性を育む学びを展開していく,こういったことを新しい学習指導要領では目指しております。
 資料の方の次のページ,3ページをおめくりいただけますでしょうか。例えば,図画工作,美術科,芸術科(美術,工芸)における学習過程のイメージ図がございます。これは芸術ワーキンググループの部会のときに御議論されて,報告された図でございますが,こういった資質・能力を相互に関連させて働かしながら子供たちを育んでいく,それぞれの教科等の特質に応じて子供たちに創造性や感性を育んでいこうというような,こういう学習過程,いわゆるプロセスを非常に重視した教育の充実を図っております。
 もう1枚おめくりいただきますと,そういった日々の学習活動を小学校,中学校,高等学校と積み重ねていきながら,一番下のところにあるのが先ほどのプロセスの図ですが,このプロセスを積み重ねることによって,様々な芸術の本質に触れながら,自己や他者や社会,文化,生活との関係性の中から学びを深めていき,そして創造性や感性,文化理解を高め,豊かな情操を育むような様々な資質・能力の育成を小中高との連続性の中で育んでいく,こういった教科等の中での学びというものを一層重視しております。
 最後の方のページに音楽や書道についてもそのプロセスを載せておりますので,是非また後で御覧いただければというふうに思います。
 最後になりますが,ページがあちこち行って大変恐縮ですけども,先ほどの2ページにお戻りいただきまして,こういったことを目指しながら,先ほど根来の方から説明がありましたように,昨年度の10月1日に学校における芸術に関する事務を文化庁に移管することにより,学習指導要領に趣旨やねらいに基づいた,学校教育における全ての子供たちに芸術に関する教育及び文化芸術の振興をこれから一層充実したものにすることを目指しております。
 特に現段階では,一番下の段のところにありますとおり,1つ目は芸術系教科等の担当教員等を対象とした研修事業により教師の専門性を一層向上させていくという取組,それから2つ目は美術館・博物館,社会教育施設との連携をこれまで以上に一層充実していくということ,そして芸術文化等の活動充実のための環境整備等もこれまで以上に充実させていくことであります。こういった施策の充実とともに,冒頭に述べましたこれからの社会を生きる全ての子供たちに求められる資質・能力の育成を一層重視するとともに,人格の完成を目指す豊かな感性や創造性の涵養,そしてSociety5.0に向けた社会の創造に資する芸術教育の在り方というものを,この後の,4人の先生方の発表の後に各委員の先生方には御意見を頂ければと思います。
 私の方の説明は以上でございます。
【天笠部会長】  それでは,御説明をお願いしたいというふうに思いますけども,私ども後で御意見等々申し上げさせていただきたいと思いますので,できるだけその時間についても御配慮いただきながら御発表をお願いできればと思いますので,よろしくお願いいたします。
【福本兵庫教育大学名誉教授】  兵庫教育大学の福本でございます。本日は,こうして美術教育の存在意義についてお話しする機会を与えていただきまして本当にありがとうございます。私の方からは「美術教育の社会的役割期待の拡大」というタイトルで,ここに示した5つの観点から簡単にお話ししたいと思っています。
 先ほど来説明の中にもありましたけれども,教育関連のキーワードが際限なく広がっておりますけれども,その中でSociety5.0というようなものが提唱されています。こうしたどちらかというと,科学技術志向型の社会においては,芸術教育がもたらす感性や創造力,あるいは創造性の育成が看過されるべきではないというふうに考えております。
 御存じのように,欧米,アジアで複数の理系教科を融合した教育課程,いわゆるSTEM教育というのが普及をしておりましたけれども,理数教育の限界が指摘され始めたために,芸術系科目を加えたSTEAM教育が広がりを見せています。こうしたところにも芸術教育に対する役割期待が隠れているのではないでしょうか。
 まず最初に,テクノロジーと芸術という観点でお話しさせていただきます。社会の様々な場面で目にするメディアアートとか,東京駅なんかでも見られるようなプロジェクションマッピングをはじめとする造形的表現というのは,テクノロジーと芸術が遊離したものではなく,非常に親和性の高い関係性を持つことの証というふうになっています。
 コンピューターグラフィックスの世界では,1980年代の初期に,現東大の名誉教授である河口洋一郎氏が数理的なフラクタル理論とアートを結び付けて自己増殖する生物的な形態モデル,彼はGROWTHというふうに名付けていますけれども,これを開発して,米国のコンピューター学会で日本人として初めて論文が採用されました。彼はテクノロジーを基本としながらも,芸術表現にまで昇華することをコンピューターの重要な役割というふうに見なしておりました。
 こうした動きはさらに加速されてきており,教育においては美術,音楽といった芸術教科と科学技術系の教科がクロスオーバーして,テクノロジーの美的応用や芸術のテクノロジーとの融合に柔軟に対応できる資質・能力の育成が不可欠だと思います。そうした資質・能力を可能にするのが芸術教育であると言っても過言ではないと思います。
 次に,文化芸術における芸術教育の役割についてですけれども,皆さん御存じのように,教育基本法で「我が国の伝統と文化を基盤として国際社会を生きる日本人の育成」という教育目標が明記され,初等中等教育において我が国の伝統と文化が重要事項の1つとされています。
 これと連動して,文化芸術振興基本法が観光やまちづくり,国際交流等,幅広い関連分野との連携を視野に入れた総合的な文化芸術政策の必要性から,昨年には文化芸術基本法に改正をされました。
 諸外国でも文化芸術に関する教育が強化されており,フランスでは全ての国民が文化的感受性や理解力を土台とした,より創造的な文化現象への参画を企図する教育を展開しつつあることや,ドイツにおいても文化教育のキーコンピテンシー・プロジェクトを通じて,文化的アイデンティティーの形成,文化的な生への参画などを目標として文化教育が実践されています。
 美術教育においては,伝統文化と若者文化の親和性をどう確保するのか,創造性の触媒としての文化認識をどう育てていくのかというようなことは国際的な学会でも検討されてきました。伝統文化学習については芸術教育との接点も多く,伝統文化をただ継承する方向だけではなく,子供の視点で生活との関わりを考え,文化を創造する意識を高める取組を考えることが重要であり,そこに芸術教育の創造的な機能が発揮されると考えます。
 次に,芸術文化が地方創生に果たす役割についてですが,芸術が持つ社会的機能を通して,地域における人的あるいは物的ネットワークを形成し,コミュニティーのボンドというか,絆を強化する働きがあります。
 欧州文化首都事業等の影響もあって,我が国では創造都市と呼ばれる文化庁主導のプロジェクトがグローバリゼーションと知識情報経済化が急速に進む中で,都市のオルタナティブなありようを志向するものになっていますが,地域に関して文化芸術が持つ創造的な役割機能が認知されて開始されたものには,民間の瀬戸内国際芸術祭,あるいは大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレなど多様な試みが実践されています。こうしたことを踏まえれば,文化芸術を発展させる基盤として学校教育における芸術教育の重要性が容易に理解されます。
 芸術教育普及への国際的な動きの一例としては,ユネスコの活動があります。20世紀の終わりから21世紀型スキルなどのコンピテンシーの育成に着目した教育改革が各国で進行する中で,芸術教育を学校教育の重要なコアとして位置付けるべく,ユネスコは芸術教育世界会議をポルトガルあるいは韓国で開催し,2010年のソウル大会ではソウル・アジェンダという成果報告書をまとめています。
 これを受けて,翌年の2011年にはユネスコ総会において,毎年5月の第4週を芸術教育週間とする決定がなされ,加盟国で芸術教育振興を一層進めることが了承され,各国の学校教育における芸術教育の充実を働きかけています。
 5点目,芸術教育における資質・能力の育成に関してですけれども,芸術教育には様々な機能があります。例えば,美的空間を形成し,ネットワークを構築する社会的な効果。あるいは個々の子供たちの癒やし,あるいは物語化をもたらすような心理的効果,そして新学習指導要領に示された感性や創造性などの資質・能力を育成する教育的な効果があります。
 美術教育はこうした機能を表現活動や鑑賞活動を通じて発揮することになるわけですけれども,新学習指導要領に明示されているように,子供たちには造形的な見方,考え方を働かせること,すなわち感性や創造力を働かせ,対象や事象,形や色などの造形的な視点で捉え,自分のイメージを持ちながら,意味や価値を作り出す資質・能力を身に付けることが求められています。そのためには教師の役割が非常に重要になってきます。
 ここに「不思議な眼鏡」という題材における子供の作品を示していますが,子供たちがそれなりにユニークな眼鏡のフレームをデザインしている点は評価できます。しかし,造形的な見方,考え方を最大化するような主体的,対話的で深い学びをデザインするためには,この2つのレンズを持つ眼鏡という既成概念にとらわれることなく,子供たちがこんな眼鏡があるともっと楽しいなというふうな発想を引き出すような教師側の工夫も必要です。
 これは段ボールに幾つも穴をあけて,それを頭にすっぽりかぶって,くるくる回して,いろいろな視覚を楽しむことができるようになった眼鏡です。その穴には望遠鏡になる目,万華鏡になる目,あるいは色眼鏡になる目などがあります。
 美術教育を通して子供の創造性を培うということは業界内ではよく言われておりますし,また,そういうことを言うことはたやすいのですけれども,一方で子供の創造力の翼をより広げるための教師側の実践努力というものが求められています。
 最後になりますが,学校教育における資質・能力ベースの教育課程の中で図画工作や美術科は子供たちに創造性を涵養し,創造力や美的感性を発揮させる機会提供を可能とする教科です。また,カリキュラムバランスを保持して,教育課程の全体性と健全性を維持し,創造的な社会発展に貢献する資質・能力を備えた人材養成や市民形成につながる芸術教育の存在意義を強調して終わりたいというふうに思います。
 御清聴ありがとうれました。
【田中茨城大学名誉教授】  田中です。資料として13-2を準備しています。なお資料には芸術教育と記していますが,私の担当は音楽ですので,ここでいう芸術教育は音楽教育を意味しているとお考えください。
 本日は,「芸術の力を考える」というタイトルのもと,三つのことをお話します。最初に「MITとハーバード大学での私の経験」,次に「日本の芸術教育の特徴」,最後に「芸術教育を喪失すると?」という枠組みです。
 MITにはメディアラボという研究組織があります。メディアラボの中には,かつてのフランスの同種の研究組織イルカム(IRCAM)と同じように,芸術の未来研究と科学技術とのイノベーションをつくりだそうという研究室が多数あります。MITは,今日本でいわれている,プログラミング学習の教育やSTEM,当時はまだArtの「A」がなく,そのためSTEAMとはいわずSTEMといわれていましたが,それらの教育のひな形をつくったところです。そして,STEMの教育手段としてのアクティブ・ラーニングを考え出した研究機関でもあります。またMITが発表した最近の成果として,日本でも盛んになりつつあるプログラミング学習の「Scratch」が有名です。
 メディアラボにはかつて,LOGOというプログラミング言語を開発したシーモア・パパート教授の研究室がありました。また画期的な音楽系のプログラミング言語を開発した,作曲家トッド・マコーバー教授もメディアラボにいました。おふたりの研究室は,在籍する学生が相互に交流しやすいよう,意図的な配置をしていました。また,MITのこのおふたりの研究室は,ハーバード大学音楽学部の教授で,作曲家として有名なロバート・コーガンさんの研究室と密接に学生交流をさせています。
 アメリカの大学はリベラルアーツ教育が手厚いので,今も,学生たちは,様々な音楽演奏や芸術活動ができるようになっていますが,マコーバー教授のところの学生はコーガン教授の授業履修が義務づけられているように,理系の学生に音楽を学ばせるシステムになっていました。これはMITとハーバード大学との関係だけでなく,他の大学間でもよく見られることです。皆様への配布資料にも載せていますが,これはロバート・コーガン教授が2012年に理系の留学生たちに話した内容です。読み上げます。
「なぜ芸術教育が必要か? 偉大な科学者たちはそう考え実行してきた。また,私たちもそう考えるから。そもそも芸術が人間にもたらす効果がわかるとすれば,それは人間の脳についてほとんどがわかったときであり,科学研究の課題の半分が終わったときである。だから,そのようなことを考えるべきでない。芸術教育が必要な理由をつくればつくるほど,芸術の意味と価値をさげることになる。あえてその必要性を私流に言うならば,科学研究は芸術と同じ研ぎ澄まされた直観の世界である。」
 私は,コーガン先生はこの話のなかで,「科学研究に必要なバーバルな論理力は,ノンバーバルな直観力が支えているのだ」ということを伝えたかったのだ,と理解しています。
 次に「日本の芸術教育の特徴」についてお話します。欧米の芸術教育は「芸術を味わう」ことを主にしています。その理由は,校種を問わず多様な芸術系のリベラルアーツ科目の開講があること,また社会教育の場で児童から学生までが演奏経験ができるからです。だから学校教育の場では「味わう」ことを中心においています。
 日本の音楽科の授業は,「味わい方」を教えています。これは非常に興味深いことです。ひとつの例ですが,今,日本食が世界的なブームですが,「この料理のおいしさの秘密は?」「隠し味は?」「この料理はいつごろからつくられるようになった?」などど,料理の裏にある秘密や歴史を知っていたほうが,日本料理をより楽しく,深く味わうことができるようになります。ひとつの名曲を聴きその曲の歴史やメロディを知るだけではなく,子どもが音楽の様式や構造を理解する,つまり音楽の「味わい方」を教え学ぶことは,結果的に他の曲の鑑賞や演奏への応用,理解につながります。こういった「味わい方」の学習を可能にしているのは,お手元の資料にも書いていますが,日本の音楽科教育では表現領域三分野(歌唱,器楽,音楽づくり・創作)と鑑賞領域を学ぶことができるからです。MENC(全米音楽教育者会議)が出したレポートによりますと,欧米もこのような多様な音楽学習を目指しているようですが,うまく実施できていません。その理由は,日本のようにこれらの領域を教えることのできる音楽教師と教科書が不在だからです。現在,社会教育での音楽教育が充実しているとはいえない台湾や韓国が今,日本の音楽教育システムを参考にしています。それ以外にもカンボジア,マレーシア,タイなども,目的については,それぞれの国の事情があり日本と異なっていますが,音楽科教育については日本を参考にしています。
 デザイン教育と音楽との関係についても少しふれておきます。今パワーポイントの画面で見ていただいている教師の発問は,音楽教育の授業でよくみられるものです。読みます。「前回の授業で歌った合唱を聴きましょう。それぞれのグループはさらによい表現になるようにアイデアを出し合いましょう」
 「合唱を聴き直し」は「現状把握」の学習,「グループで」は「問題定義や共感を得るための協議」の学習,「よい表現になるようアイデアを出し合い」は「問題解決」の学習,「歌ってみましょう」は「プロトタイプを創出する」ための学習に対応します。これらの学習はまさしくデザイン思考を取り入れた活動なのです。今,デザイン思考が盛んに言われていますが,芸術教育ではあたりまえのようにやっていました。これを可能にしているのは音楽科学習には正解はひとつではなく,多様な正解があるからです。
 資料には書いていませんが,プログラミング学習と音楽科教育の関係についてもお話します。皆様もご存じのとおり,北九州に小倉祇園太鼓という伝統芸能があります。小倉祇園太鼓は,いくつかのリズムパターンをもとにそれらを即興的に組みあわせて演奏します。そのリズムパターンの組み合わせの妙が,この伝統芸能を面白くしています。では,事前にいくつかのリズムパターンを子どもたちが練習しておき,演奏の際,子どもたちひとりひとりが小倉祇園太鼓らしい音楽を創作するとしましょう。この創作過程はいわゆる「アンプラグドなプログラミング教育」そのものです。これは小倉祇園太鼓に限らず,さまざまな郷土の音楽でも同様のことがいえます。こういった学習を可能にするのは,音楽にはどれが正解でどれが不正解というものがなく,まさしく「回答の多様性」があるからです。もっとも音楽教師は「アンプラグド」などと思って,この学習をやってはいませんが。
 私は決して芸術教育を金科玉条のごとく,「ただ大切だ」などという言う気はさらさらありません。STEM,そこにAが加わってSTEMAとなって,Aの位置が変わってSTEAM,理系教育のあり方もどんどん変わろうとしていますが,世界に伍してしていくためには,日本の教育制度もどんどん変えていかなければならないはずです。
 今からある音楽を聴いていただきます。これはパラオの伝統音楽をロック風に演奏しているものです。 (音楽再生) この音楽の曲名わかりますよね。日本の童謡で,「もしもしカメよ」です。この曲は,パラオでは伝統音楽となって伝承されています。かつて日本が南洋諸島を植民地化していた時期,日本の音楽科教育もその地で実施していました。第二次大戦後,そのことが忘れられて「もしもしカメよ」という音楽だけが残り,それが伝承されているうちに,パラオの人々はこれを自国の伝統音楽だと思うようになったのです。伝統というものは,伝播,伝承されていく過程でどんどん変化しているものなのです。その意味でも,日本の「よき伝統にもとづく教育制度」を保持発展させるためには,必要があればどんどん変化させるべきですし,現在の音楽科教育もそうしなければならないでしょう。私は日本でつくられた音楽が世界でどのように受容され,どのように変化しているのかを研究のひとつにしていました。その研究から言えることは,「伝統とは常に変化し,変化しているからこそ伝統が守られるのだ」ということです。
 では,新しい教育制度をつくりだす過程において,芸術科教育をやめましょう,あるいは授業時間を減らしましょう,ということになりますと,2つの問題が出てきます。
 皆様,加賀乙彦さんという,精神科医で作家の方をご存じでしょうか。彼は『錨のない船』という小説を発表しています。この小説では,外交官の話を題材にしています。外交官の子どもたちは父親の仕事の関係で,様々な国に住むことになるため,母国を見失いないがちになります。母国を喪失した人は,自分のアイデンティティとなる自国の文化,伝統,芸術をもたない人になる可能性がある,そういう人を「錨のない船」つまり「母港のない船に乗っている」と,加賀乙彦さんは小説のなかで語っているのです。自国の文化芸術を知らない人は,まさしく「錨のない船」に乗っているのと同じです。そんな船に日本の子どもたちを乗せてもよいのでしょうか。
 もう一点です。最近,精神科医で作家の帚木蓬生さんが「ネガティブ・ケイパビリティ」について発表しています。お手元の資料にも書きましたが,ネガティブ・ケイパビリティとは,「答えのない状況下で,その状況に耐えうる力」という意味です。今,まさにそういう時代です。また理系に限らず,学問の世界においても「答えの出ない状況下」というのは常に付きまとうものです。ひたすらその状況に耐えて,考え続ける中で新しい知見がうまれるものです。帚木さんは答えの出ない状況を耐えうる力をつけるのは,「芸術と共感」しかないと明断しています。その理由について,芸術は多様な思考を生み出す源であり,そもそも芸術は共感があるから成立するものである,と述べています。詳細は,帚木さんが書かれた『ネガティブ・ケイパビリティ』という本をお読みください。
 最後に私の個人的意見を述べます。私は,現在こども園や保育園を10園ほどもっている社会福祉法人の理事長をやっています。その関係で,時々園をまわるのですが,4月に入園して,「ママ,ママ」と泣いている子供が,歌を歌うときやお絵かきのとき,ほんとうにうれしそうにそれに参加しています。子どもたちが明るくなります。私は今,芸術が子どもたちに与える影響,そこから育つものを実感しています。是非,委員の先生方も,そういった幼児教育の現場,小学校,中学校の現場に足を運んでいただき,芸術教育の力を実感していただきたいものです。以上です。
【佐藤埼玉大学教育学部附属中学校副校長】  失礼いたします。埼玉大学教育学部附属中学校の副校長の佐藤太一と申します。どうぞよろしくお願いいたします。着座にて失礼いたします。
 皆様におかれましては,資料13-3を御覧いただきながらお聞きいただければ幸いです。この4月より副校長を務めておりますが,昨年度まで授業をしておりましたので,中学校音楽科の授業の様子や生徒の学びを中心に,この5つの点についてお話しさせていただきます。
 本校は御覧のような学校教育目標の下,日々教育活動に取り組んでおります。そのような中,音楽科が学校教育目標を実現するために担う役割として,主に創造的な思考力,判断力,表現力等を育てること。形のないものに向き合い,自分なりに考え,価値を見出すこと。一人一人の感性や豊かな情操を培うことを掲げ,授業実践に取り組んでいます。これは中教審答申で芸術系教科等に求められるものとして指摘されているこれらのこととも密接に関わっているものと思っております。
 それでは,第1学年の器楽と鑑賞の題材,「雅楽の特徴を感じ取って表現し,よさや魅力を味わおう」の実践から,自分なりの価値を見出す生徒として,生徒の学びの様子を紹介させていただきます。雅楽を聴き,生徒は「何か変だな。これってずれてる?」というふうにつぶやきました。これは西洋音楽に多く接して育ってきている生徒にとっては,ある意味自然な反応の1つになります。西洋音楽には拍を合わせること,つまり,音の出るタイミングをぴったりそろえることによって生まれる響きによさや魅力があります。一方,雅楽ではそれとは異なる音の合わせ方によさや魅力があります。生徒は器楽合奏の際,拍を合わせた演奏を試したり,拍を合わせた演奏を聴いたりする中で違和感を覚えます。
 そのような過程を経て,実際に演奏したり,雅楽本来の演奏を鑑賞したりすることを通して,次第に雅楽特有の合わせ方に気付き,自分なりの価値を見出していきました。ここでは生徒が感性と知性の両面を働かせて,それぞれを往還させながら思考や理解を深めていく様子が見られました。
 次に,第2学年の創作と鑑賞の題材,「アドリブにチャレンジし,ジャズ音楽の魅力を味わおう」の実践から,協働し創造する生徒として生徒の学びの様子を紹介させていただきます。前方を御覧ください。それでは,実際に生徒がソロの旋律を創作し,即興的にアドリブで演奏をつないでいく様子を御覧ください。(映像上映)
 今のような場面を経まして,今ここにあるこれらの発言は,決まった旋律に続けて自由に即興的にアドリブで旋律をつなげていくビバップ形式のソロをアドリブで表現することを実際に演奏して試し,試行錯誤しながら構成を工夫して音楽を作っていく過程での生徒のやりとりです。自分の前後の旋律との比較も含めて,ジャズ本来のソロの腕比べ的な要素も含まれており,協働し創造する生徒の様子が見て取れます。これを本校では互いにアイデアを出し合い,広がったり,まとまったりしながら新たな音楽を創造していく生徒の姿の1つであると捉えております。
 音楽科では表現領域の歌唱,器楽,創作の3分野と鑑賞領域の学習を行っていますが,カリキュラム・マネジメントの充実の視点から,音楽科の学びと他教科の学びとをつなげていくことができるようにすることも意識して指導を行っています。そこで,ここではそのような学びをつなげている生徒の言葉の一部を御紹介します。
 一番上は,先ほど御紹介した雅楽を教材とした題材の学びと国語科,社会科の学びをつなげている生徒の言葉です。そのほかに,「勧進帳」と「花」を用いた歌唱と鑑賞の学びと社会科の学び。ギターを用いた器楽の学びと理科の学び。バレエ音楽を用いた鑑賞の学びと保健体育科の学びなど,様々に学びをつなげる生徒の姿が見て取れます。
 それでは,本校の学校教育目標を実現するために音楽科が担う役割の3つに対応させ,卒業時の生徒の意識調査の言葉を御紹介します。附属中学校で3年間音楽を学習して何を一番学びましたかという問いに対して,これらの言葉が見られました。
 試行錯誤の楽しさやおもしろさについては,「頭の中だけで考えるのではなく,実際に音を出していろいろと表現を試しながら音楽表現を工夫することは楽しいし,考えや思いが深まる」というような意見がありました。また,協働の喜びという視点では,「一人で表現するよりも複数で表現する方が楽しいし,喜びも大きい」というような生徒の言葉がありました。「時空を超える感覚」というのは男子生徒の言葉です。「雅楽を聴いて,平安時代にタイムスリップすることができた」と言っていました。彼が抱いていた平安時代の生活や雰囲気のイメージと雅楽の曲想がぴったりと合致したようです。このように,平安時代の人々が聴いていた音楽と同じ音楽を現代の私たちが聴き,共有,共感できることは奇跡とも言えることであり,音楽ならではのよさだと思っています。
 また,あなたにとって音楽とは何ですかという問いに対して,これらの言葉が見られました。ある生徒は,「私にとって音楽とは私の心そのものです。同じ音楽でもそのときの気持ち次第で表現の仕方や聴こえ方が変わります。音楽は常に私の心に寄り添ってくれています。私の心の充実のために音楽は不可欠なものです」と言っています。また,「音楽は人間の感情に大きな影響を与えるもの,同じ環境や場面でもそのときその瞬間に存在する音楽によって,印象やイメージががらりと変わる」と答えた生徒もいました。
 中学校3年間は全ての子供が学校で音楽を学ぶ最後の機会となります。私は常に限られた時間の中で音や音楽と真剣に向き合い,自分を表現する楽しさを生徒とともに追求し続けてきました。私には音楽の教師として最も大切にしていて,いつも生徒に語る言葉があります。それは「音楽は時間芸術である。その瞬間で自分を精いっぱい表現するという意味では人生と同じ」という言葉です。音楽教育の最終的な目的は,生徒一人一人が音楽と豊かに関わり合いながら豊かな人生を送ることだと思っています。一人でも多くの生徒が義務教育9年間の音楽科の学びの中で感じたり,考えたりしたことを基に,自分から音楽と関わり合う姿や機会を求め続け,幸せで豊かな人生を送ることができることを願ってやみません。
 以上で私の発表を終わります。御清聴いただきどうもありがとうございました。
【中下京都市立西京極西小学校校長】  失礼します。京都市立西京極西小学校校長,中下と申します。どうぞよろしくお願いいたします。資料13-4を御覧ください。座って失礼いたします。
 本校では学校教育目標実現のため,子供の実態を踏まえ,子供の学びの基盤とも言える創造性を育むことを重視して,図画工作科を研究教科に据えて学校教育に取り組んでおります。これまでの取組から図画工作科を通してどのような資質・能力が育成されるのか,どのような学びの過程を経るのか,そして子供や学校はどのように変容したのかという3つの視点からお話しいたします。
 図画工作の時間,子供は「いいこと考えた」とつぶやいて,考えたことを試そうとします。いろいろな材料を見ると,どんなものなのか探ろうとして手に取ります。のこぎりや金づちなどの用具にも興味津々,何度もやり直しをしながら自分で考えてつくります。友達の表し方の工夫を見付けて,「すごいな,それどうやってつくったの?」と活動に取り入れようとします。作品が出来上がったときにはうれしそうに「見て,見て」と先生や友達に見せています。子供は自分で考えたことを形や色にしてつくりだしたい思いや願いを持っています。その思いや願いを大切にしながら,本校では生活や社会の形や色などと豊かに関わる資質・能力を育成しています。
 では,具体的にどのように資質・能力が育成されているのか,子供の学びの過程を通してお話しします。これは6年生の造形遊びの活動です。高学年の造形遊びでは材料や場所,空間の特徴と関わりながら造形的な活動を展開していきます。子供たちは材料の傘と出会い,校庭でどんなことができるだろうと考えます。まず,傘を開いて,木の周りに置いたり立てたりしていました。ある子供が傘を逆さにしてぶら下げました。それを見て,ほかの子供も色の組み合わせを考えながら,ぶら下げ始めました。そして,逆さになった傘の中に何かを入れることを思い付いた子供が水を入れ始めました。子供の会話に耳をすませてみると,「傘は水をよけるもんやのに,逆さにすると水が入るもんになるんや。意味も反対になっておもしろ」と聞こえてきました。子供たちは自分にとって新しいものやことをつくりだしているときにこんなことを考えているのかと,はっとする瞬間でした。
 まず1つのことをやってみて,友達の活動を見て,また造形的な活動を思い付き,だんだんとみんなで考えをまとめながら,また思い付いたことをやっていく。工夫してつくっていく,つくりながら考え,またつくるという連続した活動の中で子供は創造性を発揮していきます。
 これは5年生の木版画の刷りの場面です。1つの版にいろいろな色をのせて刷っています。この子は一度刷ったのですが,かすれてしまって思うように刷れず,もう一度インクを付けて刷ってみました。こつをつかんだのか,色も変えながら刷っていきます。紙をめくってみて笑顔がこぼれます。
 図画工作科の時間,思いどおりにできることもあれば,なかなかうまくいかないこともあります。そんなときこそ子供はどうしたらうまくいくんだろうと考えます。そこがおもしろいところなのです。試行錯誤して,その子なりの新たな方法を見出していきます。形や色に関わり,つくり,つくりかえ,またつくる中で子供はつくりだす喜びを味わいます。
 作品や活動を鑑賞することも大切な学びです。これは3年生の粘土で立体に表す活動の様子です。用具や手を使いながら形のおもしろさを自分で感じ取ります。近くの友達の様子も見て,よさや工夫を共有します。隣の友達と「ここ,もうちょっと奥までいけるんとちがう? 手入れてみて」など会話が弾みます。会話がグループに広がり,またそれぞれにつくります。子供は感じたり考えたりしたことを言葉にして,友達と共有することで学びが明確になります。自分の考えのよさや工夫などを自覚することができるからです。また,話したり聞いたりすることによって新しい発見もします。多様な価値観を認め合うことで新たな自分の価値を見出していくことになります。そして,また自分の表現に生かしていきます。子供はともに学び合うことで資質・能力が一体的に働き,学びが深まるのです。
 指導の効果を高めるためにICTを活用することもあります。これは6年生の鑑賞の授業です。子供たちはまず屏風の形や色などを見てじっくり向き合い,「色が自分たちの絵とは違う」「動きがあるな」など,様々なことを感性を働かせて感じ取ります。
 次に,風神と雷神がここにかかれているのはどうしてやろ,位置を変えたらどんな感じになるだろうなど友達と話し合いながら,タブレットの中で絵を動かしました。大きな屏風と見比べながら,作者の表し方の意図にまで思いを馳せて考えていました。
 ここからは教職員が実感している子供や学校の変容についてお話しします。まず,子供の変容についてです。それは何といっても自己肯定感の高まりです。様々な学習場面で自分で考えて活動する姿が多く見られるようになり,少し難しそうなことでも失敗を気にせず,自分でやってみようとする主体性が育ってきたと感じています。
 友達同士で互いの見方や感じ方,思いなどを尊重して認め合い,学習する関係性ができてきました。子供が互いに考えをよく聞き,自分の活動に生かす場面も見られるようになりました。個々の子供の自己肯定感が高まっているからこそ,友達のことも尊重できるのだと捉えています。
 また,全国学力・学習状況調査などにおいても上昇傾向が見られるようになりました。本の貸し出し数も一昨年に比べ昨年は倍増しており,思わぬところで学習効果が波及していることも分かりました。
 子供たちに1年間の図画工作科の学習のまとめとして,自分にどんな力が付きましたか,将来どのように役立ちそうですかと尋ねてみたところ,「ほかの人のを見て,次はもっとこうしようと思うようになった」「会社に入ってポスターやプレゼンをつくるときに役立ちそう」「自分で想像して,全部考えてものをつくる力が付いた」などとありました。
 教師の授業に対する姿勢も変わってきました。研究授業の後の研修では,何の力を付けるための授業なのかを考えることが欠かせない,1時間1時間の授業を大切にしなくてはというような意見が聞かれます。また,自分たちの授業を考える際に子供の姿をじっくり見取ることが大事,そこから子供に届く指導の改善の手だてを考えなくてはならないという意識も持ててきたように思います。
 他教科等においても,ねらいを明確にした授業づくりをすること,子供の学習する姿から指導に生かすための手だてを考えること,子供が感性や想像力を働かせ,創造性を育成することを重視した指導をするよう,それぞれの教師が授業改善に取り組んでいます。
 そうすることによって,例えば2年生の国語科では,「お話を想像しながら読もう『スーホの白い馬』」で子供たちは挿絵から感じ取ったイメージに浸りながら,場面の様子を想像して読みを深め,読み声に表していました。
 6年生の総合的な学習の時間「伝えよう京都の誇り」では,子供たちが外国の人に京都のよさを視覚的にどのように伝えようかと考えて,形や色を工夫して,プレゼンテーションをグループでつくっていました。
 図画工作科と他教科との関連についても意識して指導するようになってきました。これは生活科の学習で2年生が1年生を学校探検に案内し,楽しかったことを一緒に絵にかく活動をしている様子です。6年生では,国語科「町のよさを伝えるパンフレットを作ろう」の単元で,自分の町のよいところや特徴を話し合う活動を生かし,図画工作科では「ドリームプラン」として身辺材を使って町並みをつくりました。
 このように子供たちが創造性を発揮することを大切にしながら,教科等横断的な視点を持って図画工作科と他教科等との関連を図ることは,カリキュラム・マネジメントの視点から大変重要であると考えています。
 最後に,学校評価などで外部の方から頂いておりますお声の一部を御紹介いたします。保護者から,「うまいとか下手とか本物らしくとかではなく,その子なりに考えてかいたりつくったりしていることに意味があるんですね」。地域の方から,「子供たちは作品を通して外国とつながったり,日本の伝統文化に触れたりできるんですね。私たちも一緒に楽しませてもらっています」。指導主事の先生からは,「子供の学ぶ様子,教員の指導の様子がどんどん変わってきましたね」などとおっしゃっていただいております。
 令和元年を迎え,これからも子供を学校運営の真ん中に置いて,保護者や地域の方とともに西京極西小学校教育を充実させていきたいと考えております。御清聴ありがとうございました。
【天笠部会長】  大変貴重な,また示唆に富む御発表を頂いたことについて心からお礼を申し上げたいというふうに思います。どうもありがとうございました。
 それでは,委員の皆様,お待たせしましたと言うべきなんでしょうか。それぞれいろんな報告と今大変示唆に富んだ発表を頂いたわけですけども,これから,冒頭申し上げましたように,こういう形で御意見御質問等々含めてお願いできればと思います。初回ですので,お一人一言ずつは頂こうかというふうに思っています。
 片や,現在12時少し前ぐらいで,残り30分ということで,私ども委員は私を含めましてここに18人おります。30分で,そして18人の方それぞれが大体お一人当たりそのぐらいの時間のカウントでお願いできればというふうに思います。何か御質問等々あったときに後で一括してお答えいただくというような形を取らせていただきたいと思います。
 恐れ入りますけども,若江委員から順次こちらの方にという形でマイクをお渡しいただき,最後に秋田委員というところまでということで,どうぞそれぞれお願いできればと思います。じゃ,恐れ入ります。若江委員からお願いいたします。
【若江委員】  承知しました。では,1~2分で。資料10-1のところでありました社会の急激な変化に伴う次のような課題の顕在化というリストがあるんですが,その中の一番上に語彙力,読解力,ICTのことなど書いてあるんですけれども,産業界の立場から,今,最後の芸術教育の話をお聞きして,プログラミング的思考,プログラミング教育と同時に,芸術教育はすごく重要だと実感しております。
 特に資料3-2で御提示いただきました鑑賞から言論活動に置き替えて,それを表現にという,そこの活動が今までの日本の教育の中に欠けていた視点ですし,この芸術教育の見直しをすることによって教員の資質・能力育成に取り組む姿勢が少し変わるんじゃないかなという気がいたしました。
 それともう1つ,産業界では,イノベーションを起こすにはテクノロジーとともにデザインの重要性も言われています。ちょっと思い出したんですが,30年前にロサンゼルスの郊外にあるアートセンターオブカレッジというところに行ったんですが,そこでは車のメーカーが30年先の未来を想像しながら30年後の車のデザインをしていました。車のデザインには,流体力学とか何だとか,要するにいろんな工学的・化学的な要素が組み込まれていて,それがインダストリアル・デザインとして経済発展につながっていくということを聞いたのを思い出しました。
 今,子供たちはゲームもそうですが,使う立場のみで関わっているので,プログラミング教育というのが非常に有効でしょうし,J-POPとかK-POPとか,音楽とか芸術も単に観たり,聞いたりする立場ではなく,自分が主体者になっていく,そういう学びがすごく重要だなというふうに感じました。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。じゃ,続きまして,山中委員,お願いいたします。
【山中委員】  山中です。私,小学校の校長ですけれども,全国の特別支援学級や通級指導教室を設置している学校の校長の協会の会長をしております。その立場で特別な支援を要する子供たちのことについて,いろいろこの会でも意見を述べさせていただければなというふうに思っております。
 諮問の中でも特別な配慮を要する子供のことについては,指導内容の方法ですとか教員の養成のこととかというのがいろいろ出てきていますけれども,特に今の芸術教育のところに関しましては,障害のある子供もそれなりに配慮していただいたり,それなりに自分が持っている感性だとか,そういったものを自分たちなりの方法ですごくいろいろ発揮できる部分ではないかなというふうに思っております。そういった意味でも芸術教育というものが寄与するところは大きいのかなというふうに思っております。私の方は以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。山口委員,お願いします。
【山口委員】  ありがとうございました。すごい情報の量で,最初に何を御説明されたかもう記憶にないような状態ですが,つまり,新しい指導要領と,そしてそれを伝えていくという,いろいろ検討をこれからしていくと思うんですが,多分現場は今私が感じているような状態に陥る可能性があると思うんですね。全てのことに意味があるし,なんですけど,それがどっと降ってきたときに,どうしていったらいいんだろうかということを考えてしまうので,そこをどういうふうにつなぐかというのがこの部会の役目でもあるというふうに実感をいたしました。
 また,一方で働き方改革ということが進んでいくわけで,どんどん新しいことが積み重なっていく上で,捨てることが余りなくて,とにかくやることばかり増えていくので,そこをどういうふうに整理して伝えていくかというのは難しいなと思いました。
 また,そういった中で,地域あるいは産業界とかいろんなところから人材を御協力いただくということなんですが,そこのところの人材をどういうふうに登用してくるかというのも難しいなと思います。より専門的な能力が求められる,恐らく教育の中でも,そういった中で実際どういう人が協力してくれるんだろうか。
 私,筑波大学にいますけれども,教員を目指す若者が非常に減っております。そういったところも観点に入れながら,学校教育の在り方というところを検討していかなければいけないなというふうに思いました。
【天笠部会長】  どうありがとうございます。松本委員,お願いします。
【松本委員】  私も本日の御報告を聞いて,たくさんの情報と,それから意気込みを感じました。これまでの日本型学校教育は大きな成果を上げてきたという理解の下,Society5.0時代の教育,あるいは教員の働き方改革などを考えると,教育の在り方を抜本的に変えなければいけないという宣言になっていると理解しました。
 特に知識だけでなくて,どのように学ぶかというプロセスと,どのように使えるかというコンピテンシーの観点から,設計図としてはすばらしいと思います。ただし,山口委員がおっしゃったように,現場としては「もっと忙しくなるのか」という気持ち,保護者に関しては,「うちの先生で本当にできるのかしら」といった声が聞こえてくるような気がします。
 福本先生も「実践努力が求められる」とおっしゃっておりました。先生方の御努力が絶対必要なのですが,それに向かってスイッチを入れる時間的余裕をどうやってつくれるのかということが課題ですね。資料にあったように「校務としての教員研修」というのは18年度から増えていません。小学校,中学校両方ともです。ですから,どういうふうに先生方に「これは私たちでもできるのだ」と思っていただき,中下校長先生の学校のように展開できるようにもっていけるのかということを検討するのが,この部会のこれからの課題なのかなと理解いたしました。以上です。
【天笠部会長】  東川委員,お願いいたします。
【東川委員】  日本PTAの東川と申します。初回ということもあり,大変情報量が多い中で,非常にインパクトとして残ったのは,最後の芸術教育の在り方について4名の先生方のプレゼンテーション,大変すばらしく聞かせていただきました。
 中でも田中先生がおっしゃったバーバルな論理力やノンバーバルな直観力に支えられているというのは大変,教育部会の志向でありましたし,特に,ただ歌うにしても,現状把握,問題解決,プロトタイプ,テストというのは,実際やっているけども,教員が意識しているかどうかというのは別問題かなということは,確かに示唆に富むお話かなというふうに受け止めさせていただきました。こういったこと取り組むことによって自己有用感であるとか自己肯定感が高まっていく芸術教育の在り方というのは非常に重要だなというふうに感じました。
 もう1点,私どもは保護者と先生方で作る団体でありますけども,約800万人の会員を擁しておりまして,柴山大臣の働き方改革のメッセージの中で,先ほど常盤木企画官からありましたけども,保護者向けのメッセージを出されたものを後押しをする形で,いろんな働き方改革の施策等についても,学校教育だけでは難しいところを社会教育や家庭教育で下支えするといった観点から,保護者ももう少し積極的に関わりましょうというような文章を先週の月曜日に全国の私ども公立の小中学校ですけども,発出をさせていただいて,その後押ししようというような活動をさせていただいております。以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。萩原委員,お願いします。
【萩原委員】  私,都立西高等学校の校長やっております。本日は,全国高等学校長協会の会長という職で,高等学校長の代表ということでお話をさせていただきます。
 本日お話を伺わせていただいている芸術教育に関しては,高等学校における芸術教育をどういうふうにしていくのかということで多分STEAM教育との関係も今後出てくるだろうと思います。
 私どもが一番懸念している部分は,高大連携,三位一体の改革と言われております大学それから高校,その間をつなぐ大学入試ということで,今回こちらの会は初中局が中心になっておりますけれども,できれば文部科学省内でも初中局,高等局とうまく連携を取っていただいて,実際に高校生の指導までは初中局になるかと思いますけれども,それを受け入れる大学はどのようになっているのかなど,いろいろな部分で高大がうまくつながっていかないと,この会でのお話がその先,子供たちにもつながっていかないと考えておりますので,今後とも高校の立場からいろんな形で発言をさせていただければ思います。よろしくお願いいたします。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。根津委員,お願いします。
【根津委員】  根津と申します。カリキュラムの開発とカリキュラムの評価を専門としておりまして,教員養成,そして研修の方のお手伝いをさせていただいております。
 本日のお話の中で印象に残ったこととしましては,学習指導要領,学びの地図というお話ありましたけど,その際の縮尺をどういうふうに考えればいいのかなということと,もう1つは,再三出ておりますように,休み方ですとか,あるいは働き方もそうですけれども,どうやって脱力できるのかなというところをカリキュラム・マネジメントを通じて何か少し考えていければなというふうに思っております。今後ともよろしくお願いいたします。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。西橋委員,お願いします。
【西橋委員】  鹿児島県甲南高等学校の校長をしております西橋と申します。よろしくお願いします。
 本当に世の中が大きく変わってきて,しかもすごいスピードで変わってきているなというのは毎日毎日実感しているところでございまして,そういった中で解決していかなければならない課題が本当にたくさんあって,それを解決するのを学校に非常に期待されているなと,それが非常に大きいなというのは本当に実感をしているところです。
 しかし,先ほどからありますように,現場は,これをどうやってスピード感を持って解決していけるんだろうかと思います。これは簡単なことではないなというふうに思っています。まずは教員が変わらないといけないし,教員を変えるためにはまた校長も変わらないといけない。それがうまくいけばいいなというふうに思っております。でも,そういった中で働き方改革も言われておりますので,非常に難しいことだなという気持ちがあります。
 例えば,プログラミング教育なんかを考えても,誰が教えるんだろうか,これは民間だろうか。でも,これ予算はどうなるのか。措置があるとしても,あとは地方にそういった人材がいるんだろうか。そう不安に思ってしまうのが現実ではないかと思います。鹿児島県は小さな離島が幾つもあります。そういった地域はどういうふうになっていくのか。そして,ICT環境の整備,これはSTEAM教育の中では非常に大切だというふうに思っていますけれども,これもなかなかそういうふうになっていないという実感を持っています。
 例えば,パソコンの1台当たりの人数が示されていましたけれども,各県,本当にこうなのかしらというふうな気持ちがしています。それは小規模校が多い県においては,どうしても数のマジックみたいなのが起こって,大きな学校では全然そうじゃないじゃないかというようなことがあるというふうに思っています。
 全国津々浦々の全ての学校がどういうふうにしたらこの世の中の大きな動きに追い付いていくのかということ,そこに,いろんな学校があるんだということに思いをはせつつ議論していくことが大事なんじゃないかなというふうに思っています。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。髙木委員,お願いします。
【髙木委員】  髙木でございます。よろしくお願いいたします。
 本日御報告いただきました先ほどの省庁の芸術の実践をお伺いしていてもそうだったんですけども,今回の学習指導要領ではカリキュラム・マネジメントによって各学校のグランドデザイン等の作成を通しまして,各学校での教育課程全体を通した学習指導,それに対しての学習評価,本日の実践の中ではちょっと学習評価が伺えなかったのがとても残念ですが,さらには学校の教育活動全体を対象とした今度は学校評価,学習評価だけではなくて学校評価をこれまで以上に意識して各学校で取り組んでいくことが今後の課題であるというふうに私は考えておりますし,その点を新学習指導要領の展開とともに見届けていかなくてはいけないなというふうに考えております。以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。杉江委員,お願いします。
【杉江委員】  芸術教育の4例を聞きまして,テンプレートになるすばらしい取組だというふうに感じていまして,少し安心しているんですが,今回の在り方の設計に当たりまして,目標・目的である育成すべき資質・能力に対しまして,学び方とか教え方は方法・手段でありますし,一方で教育環境はインフラでありますので,目的,手段,インフラは並列ではなくて,縦軸・横軸のマトリックスで是非捉えていただきたいと思います。
 何のために制度を変え,又は新しい施策というのは何のために取ろうとしているのかということが分かるようにし,将来の評価におきましても,目的が達成されているかどうかを測れるような表示に工夫していただきたいということをお願いしたいと思います。以上です。
【天笠部会長】  ありがとうございます。続きまして篠原委員,お願いいたします。
【篠原委員】  篠原でございます。私は教育の専門家ではございません。えてして教育というのは教育村の議論に閉じこもってしまうところがありますけれど,世間とのずれが起きると国民の理解を得られないと思うので,そういうずれが起きないように私はこれからも議論に参加させていただき,発信をさせていただきたい。それが私の役割だというふうに思っています。
 その立場で1つだけ。資料5-1の中に,想定される学習活動,休日等による総合的な学習の時間の学校外の部分,家庭の部分が何でこんなに小さく下にちょこっと入っているんですか。もっと大きく,私は学校教育と家庭教育というのは2つ大きな柱だと思うので,特にここがコラボしなきゃ意味がないと思います,連携しなければと。そういうところが余り入っていない。そういう面ではPTA800万人の力がすごく大きいと思うので,さっき東川さんから話がありましたけど,PTAにも大いにここで役割を果たしていただく,そういう流れをきちんとここに入れるべきではないかなと思います。
 それから,資料6のところです。私は今たまたま文部科学省の主権者教育推進会議という会議の座長も仰せつかっています。下にずっと,プログラミング教育だ主権者教育だ消費者教育だと書いてあるんですけども,このたてつけはおかしいと思います。主権者教育というのは消費者教育も防災教育も金融教育も,あらゆるそういう社会と関わる教育が全部包括されたのが主権者教育だと。ここに書いてあるのは,いかにも主権者教育というのは選挙教育という部分に特化した表の作り方になっているように私には見えます。だから,この作り方をもう少し包括的に捉えるような作りにしてもらいたいなと思います。
 主権者教育というのは,社会の動きにまず子供たちの頃から関心を持ってもらって,そして自分が社会にどう関わっていくかというパブリックマインドを養っていくことが最大の眼目ですから,そういう面ではこういう切り離し方はあまり賛成ではありません。以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。続きまして,貞広委員,お願いします。
【貞広委員】  2点申し上げたいと思います。
 1点目は新しい学習指導要領に関してでございますけれども,私が改めて言うまでもなく,今回の特に総則の部分はいろんな方々の知恵が集積されて,大変すばらしいものになっていると思います。御案内の方も多いかと思いますけれども,OECDも非常にこそばゆいほどの高レビューをされていまして,PISAのハイパフォーマーである日本が2030年に向かって本気で学習指導要領をカリキュラムを改善しようとしているというようなレビューをしています。
 ただ,その一方で,本当にこれが円滑な実施,達成できるかというのは条件整備次第だよねということも書いてありますので,先生方のすぐれた教育をサポートするという意味で,その部分は譲れないというふうに思います。少なくとも地方交付税措置,教育費として積算されて地方交付税措置されている部分はしっかり教育費に使っていただけるように,この学習指導要領の意義というものを各地方公共団体の首長さんにもしっかり御理解を頂ければなというふうに思います。
 2点目は,本日,音楽と美術の教育についての御発表を頂きました。大変それぞれ印象深い御発表だったんですけれども,印象深かったからこそ,私は福本先生と田中先生の資料の中で使われている美術教育ではなく芸術教育というタームの方がすごくしっくりきたんですよね。音楽教育でもなく,図工美術教育でもなく,総合芸術としての美術教育,音楽と美術も不可分ですし,テクノロジーとの組み合わせということも考えてもそういうふうになると思いますので,高等学校の芸術分野の選択の問題をどう考えるのかということだけではなく,小中学校も先ほどカリキュラム・マネジメントの話で,音楽が美術ではなく他教科とのつながり,図工も社会とのつながりというふうにしていらっしゃいましたけど,その以前に芸術領域でのカリキュラム連動で総合芸術を目指していくという方が,何となくテクノロジーとの関わりということも考えてもしっくり行くような感想を持ちました。こちらは感想でございます。すばらしいプレゼンテーションありがとうございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。今野委員,お願いします。
【今野委員】  新しい学習指導要領の周知につきましては,29年度から段階を経てこうしていただいています。令和2年と令和3年に全面実施ということで,地区の教育課程説明会が,本地区ですと8月上旬に行われます。そして,県の教育課程説明会が7月下旬,そして県の代表の方が文部科学省の方においでになって説明を受けるものがあるものと思われます。
 その説明会の方に向かわせる現場としても,きちんとそれを理解するようにアプローチさせたいと思いますし,この地区教育課程説明会が大変大切なものになってくるかなというふうに感じました。
 2点目です。音楽で何を学んだかといったようなところを自分の言葉で表現させる,大変すばらしい事例を頂きました。そのためには他教科との関連や自分の体験を自分の言葉で話すというようなことが必要だと思いますので,そのためのカリキュラム・マネジメントの必要性というものを大変感じました。そのためには,芸術,それから音楽,美術の専門性を高め,先生が専門性を高めると同時に研修が必要だと思いました。それから,教員の配置も含めまして,専門の先生がいらっしゃらない学校,非常勤でやっているところとか様々ございました。実践努力という言葉もありましたので,この専門性を高めると研修の関係といったようなところも関係があるのではないかなというふうに感じております。以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。桑山委員,お願いします。
【桑山委員】  全国の特別支援学校校長会会長の立場で参加させていただいております桑山です。
 まず,お礼という意味では,今回の学習指導要領の中を全部見ていきますと,目の前にいる子供たち,障害を含む配慮を要する子供たちがいるという前提で作られておりまして,どの校種,どの年齢であっても配慮が必要である,そういう枠組みになっている。義務教育の就学の人たちというのは毎年10万人ずつ減ってきている中で,特別支援教育を望む人たちは1万人くらいの人数が毎年増えてきているという状況の中で,これは当然であるべきということで組まれてある学習指導要領だと思っております。
 その組み方も,こういう障害の場合にはこんな点が大切ですというような書き方をしていただいている。となると,どの校種,どの教育機関にあっても配慮を要する子供たちの教育環境が整うということはとてもありがたいと思っております。それを裏付けるように,本日御説明がありました高等部の学習指導要領,それから特別支援学校の教材整備指針,枠組みができた。これはとてもありがたいことであります。
 では,その中身を実施する教員の例えば資質に関しては,学校でももちろん研修していきます。ただ,養成の段階でも是非バックアップをお願いしたいというのが私のお伝えしたい中身であります。
 最後に芸術のことが話題になりましたので,現在,世界的に有名な書家の金澤翔子さんは東京都の特別支援学校の高等部を卒業しておりますし,音楽家ピアニストの辻井伸行さんは盲学校に在籍していた時期もあります。そのほか,たくさんの方がいることをまたアピールしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。秋田委員,お願いします。
【秋田委員】  秋田でございます。2点お話をさせていただきたいと思います。
 1点目は,芸術教育について文化庁への移管というところでございます。本日の御発表大変すばらしいものでした。私は幼児教育を専門の一つにしております。そうしますと,幼児教育ではいわゆる幼稚園教育要領では総合的な芸術を領域「表現」という形で扱っております。学校教育の始まりは幼稚園でありまして,幼小中とつながっていきます。そうしますと,この文化庁の移管によって小中高の管轄と,それから幼児教育が分割されることのないように是非,幼児教育についても射程に入れていただきたいと思います。また,先ほどからお話があり,また貞広委員も言われておられましたが,芸術教育が効果的にいろいろな科目とつながっていくということがございます。
 私はこの5年間,大分県県立美術館,大分県教育委員会,それからNPO「自分の色地域の色」実行委員会と一緒に,『色から始まる探求学習』ということに取り組み,ちょうど今月本が出ました。アートによる授業作り,学校作りということをずっと主張してきています。アートを中心にすると,点数で測られる教科と違って,教員が生徒一人一人の個性と創造性を見出すような学校作りが可能になるというのは実際に関わった学校の先生方が言われるところであります。そういう内容の場合には,色というのは国語にも続きますし,科学にもつながりまし,歴史や社会科などに多様な形で理解がつながってまいります。そうしたことを考えると,文化庁とそれから今後教育課程課がどのような形で連携をして,より質の高い教育に取り組んでいかれるのかということも是非お考えいただきたいと思います。
 芸術教育は,例えば大分県の場合は新任2年目の教員が美術館で絵画を見る鑑賞教育の教員研修が夏に行われています。あと認定こども園の保育教諭も参加されています。実は,絵をどう見たらいいのかという,物を見るということに射程を置いた教員研修を行うことが,図工と言う特定の教科だけではなく,幅広く物事を見るということはどういうことかを教師が学ぶというようなことにつながったりもしております。そうした意味で是非今後も芸術教育に力を入れていっていただきたいし,合科的な発想も重要ではないか,アート的な発想も重要だろうというのが1点目です。
 2点目は,今回御報告がありました教育課程の実施で,標準授業時数よりも増加して行われている学校が多いという問題であります。これはいわゆるカリキュラムオーバーロードというふうにOECD等が呼んでいる課題でもあります。そのカリキュラムオーバーロードをどういうふうに実践でスリム化していくかというときに出てくるアイデアが,やはり合科的に行っていくとか,それから内容の精選をしていくというような幾つかの代案が,そのためのストラテジーとして出されています。
 今後,若手の教員が増えてくる。そうした中で標準授業時数を基軸にしながら,どのようにして新しい学習指導要領を実現していくのかについて,いま一歩,実施のところでの御検討や審議ができるとよいのではないかと思っております。以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
【市川副部会長】  本日のお話を伺っていて,改めて前回の指導要領改訂,これ私も関わったんですけれども,ずっとちょっと心苦しく思っていたことがあるんですね。それはそのときの課題が学力向上であるとか外国語教育とか,あるいは道徳教育,このあたりにかなり議論が集中して,結果的に前の改訂,現行の指導要領ですが,芸術教育的なことが時数的にもそれから内容的にもやや薄くなってしまった。現状維持くらいで我慢していただいたような,そういう雰囲気がありまして,私はそれは非常に残念だったと思っています。
 だから,本日のお話を伺っていると,芸術教育の方からこれだけアピールがあって,しかも単にそれぞれの〇〇教育という伝統的なものを復活させるという話だけではなくて,むしろ今,秋田先生もおっしゃった合科的なもの,例えば美術と音楽とさらに身体運動,ダンスとか,さらに言葉,科学技術というようなことと連携しながら進めていく新しい形の芸術教育というのをアピールしていただいたのは非常に大事なことだと思っています。
 ところがなんですが,学校教育の方の問題は,既にパンク状態だということです。こういう研修をやって,各学校で独立にこういう教育を進めていくことができるかというと,それは非常に難しい。じゃ,どうするかということになるんですが,1つの道は,やはり地域教育や社会教育との連携を図るということかと思っています。
 学校だけではなくて,もう少し大きな単位で,自治体単位であるとか,あるいは博物館とか美術館とか科学館とか,そういうところに専門のスタッフもいて,学校の先生も協力していただく。子供たちも特に興味のある子はそういう場でかなり進んだ活動もできるというような形になっていくというのが1つの方向かなと思いますので,もし今そういう方向での実践とか地域とかいうのがあれば,是非紹介していただきたいと思いました。
 それから,最後に1つ,これは質問なんですけれども,最後の中下先生の発表,私は非常にすばらしいと思いました。ただ,タイトルを見たときに,むしろ今回のこの教育ができていくプロセスを知りたいと思ったんですね。図画工作科で始めたので,ほかの教科にも波及していったということなのか,学校全体でいろんな教科であるコンセプトに基づいた教育を進めていく中で,図画工作科でもこういうことが起こったという話なのか,これはどちらなのかなということはちょっと伺いたいなと思いました。
【天笠部会長】  時間的な関係もありますので,今の応答についてはまた個人的にでもお願いしたいと思います。
 じゃ,荒瀬先生。短く。
【荒瀬副部会長】  はい,短く行きます。2点あります。
 1点は,賛成意見です。根津先生がおっしゃった「学びの地図の縮尺」という言葉ですが,大変すてきな言葉だなと思いました。それで触発されて,読み方も非常に大事ではないかなということを思いました。コンパスを持っているのかどうかというのが非常に大事かなと思いました。
 理振に関する貞広先生の,地方交付税の使い方についてのアピールをどうするのかということとか,篠原委員がおっしゃった主権者教育の重みのこと,あるいは今,市川先生がおっしゃいました芸術教育について,学校外とのコラボをどうしていくのか,いずれのご意見も非常に大事なことだと思って聞いておりました。
 もう1点申し上げます。小学校や中学校で発揮されている学習意欲が高等学校になると非常に減退していくというのが,教育再生実行会議の第11次提言の中にも示されています。これをどうしていくのかというのが今後の初等中等教育を考える上で非常に大事ではないかなということを思った次第です。以上です。
【天笠部会長】  それぞれの委員の方には大分御無理を申し上げました。それぞれ時間をもう少しということも十分に分かりましてということですが,今回はこういう形でお許しいただければというふうに思います。
 私としましては,今回のこの学習指導要領,これをどう成果があるものにしていくかどうかという,そういうことについてやはり現場とともにという我々の立場も,基本的に寄り添う,そしてそこに支援してくという,そういう立場,スタンスを取らせてもらえるといいかなというふうに思っております。
 ということで,今回はここまでというふうにさせていただきたいと思いますけども,次回以降の予定につきまして事務局からお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】  長時間にわたる御審議まことにありがとうございました。
 次回以降の予定につきましては,また部会長と相談の上,改めて御連絡いたします。
【天笠部会長】  それでは,本日は予定いたしました議題は全てここで終了したいと思いますので,閉会したいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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