教育課程部会(第105回) 議事録

1.日時

平成30年4月11日(水曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

東海大学交友会館「阿蘇の間」

3.議題

  1. 高等学校学習指導要領の改訂について
  2. 学校教育法等の一部を改正する法律案について
  3. 学校におけるICT,データの活用について
  4. 学校における働き方改革について
  5. 幼稚園及び特別支援学校幼稚部における指導要録の改善について
  6. 「高校生のための学びの基礎診断」について
  7. 平成30年度予算について

4.議事録

【天笠部会長】  おはようございます。定刻となりましたので,ただいまから第105回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会を開催いたします。本日も大変御多忙の中,御参加いただきまして,誠にありがとうございます。また,本部会につきましては,報道関係者より会場の撮影及び録音の申出があり,これを許可しておりますので,御承知おきいただければと思います。
 それでは,本日の配布資料について,事務局から説明をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  本日の配布資料につきましては,お手元の議事次第にございます資料1-1から資料7-2までとなっております。不足等がございましたらお申し付けください。
【天笠部会長】  御覧のとおり,本日は議題7件がここにあります。順次一つ一つお願いしたいと思いますけども,それでは,本日の一つ目の議題であります高等学校学習指導要領の改訂についてを議題といたします。
 事務局より配布資料の説明をお願いいたします。
【淵上教育課程課長】  失礼いたします。教育課程課長の淵上でございます。本日お手元に資料1-1,1-2,それから1-3のマル1マル2ということでお届けさせていただいてございますけれども,1-3はちょっと大部でございますので,私からは資料1-1と1-2に基づきまして今回の学習指導要領のポイントについて御報告申し上げます。
 去る3月30日に高等学校の学習指導要領を公示させていただきましたけれども,これはこの本教育課程部会での御審議を経て取りまとめていただきました平成28年12月の中央教育審議会の答申に基づいて作成したものでございまして,昨年の小・中学校の学習指導要領に引き続いて取りまとめたものでございます。
 資料1-1の1ページ目にございますとおり,小・中学校の学習指導要領の改訂と同じく,社会に開かれた教育課程でありますとか,知識の理解の質を高めること,資質・能力を三つの柱で整理した上で,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善,カリキュラム・マネジメントの確立ということで,子供たちに知・徳・体にわたる生きる力をしっかりと育成していくということにしてございます。
 1ページ目の4にございます教科・科目構成の見直しにつきましては,後ほど御説明させていただきます。
 めくっていただきまして2ページ目から具体的な教育内容の改善事項でございます。まず2ページ目でございますけれども,高校生を取り巻く言語や情報に関する環境が大きく変化している中で,今回国語科では小学校から強化しております語彙の確実な習得,あるいは主張と論拠の関係や推論の仕方など,情報を正確に理解し,効果的に表現する力の育成など,全ての学習の基盤となります言語能力の確実な育成を図るということにしてございます。
 理数教育に関しましては,日常生活や社会との関連を重視いたしますととともに,観察,実験を通じて科学的に探究する学習活動の充実によって学習の質の向上を図るということにしてございます。加えてデータに関する統計教育の充実も図ることにしてございますし,また新たに新科目「理数探究」などを新設いたします。これは将来知の創出をもたらすことができる創造性豊かな人材育成を目指すということで,新たな探究科目としての「理数探究」の新設がございます。
 続きまして,伝統や文化に関する教育につきましては,国語科に必修科目「言語文化」を新設いたしますほか,武道の充実,あるいは和食や和服,和室など日本の伝統的な生活文化の継承・創造に関する内容を充実してございます。
 道徳教育につきましては,校長のリーダーシップの下で道徳教育推進教師を中心とした指導体制の充実を図るということを新たに明記しておりますほか,「公共」,「倫理」,「特別活動」が,人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面であるということを明確にして,道徳教育の充実を図ることにしてございます。
 外国語教育につきましては「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」といった力をバランスよく育成するための科目「英語コミュニケーション」の新設,また発信力の強化に特化した科目「論理・表現」の新設など,その充実を図ってございます。
 職業教育につきましては,持続可能な社会の構築,情報化の一層の進展,グローバル化など社会や産業の変化の状況などを踏まえて,各職業教科の教育内容の改善をしております。また,「船舶工学」,「観光ビジネス」などの科目を新設し,産業界で求められる人材の育成に努めてまいるということでございます。
 続きまして,3ページ目でございます。二つ目の丸でございますけれども,今回の改訂は選挙権年齢が18歳に引き下げられてから初めての高等学校の学習指導要領改訂でもございまして,主権者教育の充実ということを図っているところでございます。具体的には公民科におきまして政治参加と公正な世論の形成,主権者としての政治参加の在り方に関する考察に関する学習などの充実をいたします。また,財政,租税の役割,少子高齢化における社会保障,企業,労働保護立法,金融などに関する学習の充実も図ることとしてございます。
 また,成年年齢引き下げの議論などもあります中で,消費者被害の拡大の懸念などが指摘されております。この観点から消費者として主体的に判断し,責任を持って行動できるようにするということから,消費者の権利と責任,契約の重要性,消費者保護の仕組みに関する学習など,消費者教育の充実も図ることとしてございます。
 また,大規模な災害が頻発している中で,防災・安全に関する教育を充実するということで,例えば公民科で防災と安全・安心な社会の実現,家庭科で防災・安全や環境に配慮した住生活の工夫などについて指導するということにしてございます。
 オリンピック・パラリンピックに関する教育に関しては,オリンピックが国際親善や世界平和に大きな役割を果たしていることなど,スポーツの意義や役割の理解を図るということにしてございます。
 また,我が国の領土に関する指導につきましては,昨年公示いたしました小・中学校の学習指導要領と同様に指導の充実を図るということにしてございます。
 情報教育につきましては,情報科の科目を再編いたしまして,全ての生徒が履修いたします「情報Ⅰ」を新設した上で,そこにプログラミングあるいはネットワーク,データベースの基礎に関する内容を必修化することとしてございます。
 部活動につきましては,中学校と同様に学校教育活動として教育課程との関連の留意,あるいは社会教育関係団体などとの連携を充実するということを記述してございます。
 子供たちの発達の支援という観点から,障害に応じた指導,日本語の能力などに応じた指導,不登校などの生徒への対応など,教育課程との関連で留意すべき点を明確にしているところでございます。特に通級による指導を受ける生徒には個別の指導計画などを全員作成するなど,一人一人の実態に応じた指導を充実させてまいることとしてございます。
 めくっていただきまして4ページ目は,高等学校の共通教科・科目の構成を比較した表となります。左側が改訂でございまして,下線部分が新設科目となります。これと併せまして資料1-2の表も御覧いただければと思いますけれども,資料1-1の4ページにございますアンダーラインを引いております新設科目が27科目ございますけれども,資料1-2で御覧いただきますと黒い太線で枠を囲ってあるものが新設科目ということになります。また1-2の資料でいきますと黄色の部分が共通必履修科目,ブルーが選択必履修科目という構造でございます。
 今回の再編に関しましては幾つかの教科で大幅な見直し・再編を行っているところでございます。まず国語科でございますけれども,国語科の課題といたしましては指導の中心が教材の読み取りに偏りがちで,論述したり議論したりするという学習が十分に行われていないこと,また古典の学習について日本人として大切にしてきた言語文化を享受し,生かしていくという観点が弱くて学習意欲が高まらないといったようなことが指摘されてございまして,それぞれの課題に対応した「現代の国語」と「言語文化」,この2科目を新設した上で,必履修科目ということで構成してございます。その上に選択科目として「論理国語」,「文学国語」,「国語表現」,「古典探究」というものを新設しているという構造でございます。
 また,地理歴史科,公民科につきましては,資料1-1の4ページにございますように現行の地理歴史科では「世界史」が必修となってございます。「日本史」,「地理」のいずれかを選択必修ということでございます。現行の学習指導要領では中学校までの歴史教育が「日本史」を中心としていることを踏まえまして,高等学校では「世界史」を必修としておりましたけれども,この点につきましては高等学校でも「日本史」を必修とすべきという御意見が従来からありましたことに加えまして,歴史教育を通史で行った場合に近現代史がどうしても不十分となってしまうといった指摘もございました。こうしたことを踏まえて,今回の中央教育審議会の答申に基づきまして新たに近現代史について日本史と世界史を広く総合的に捉える新科目として「歴史総合」という科目を新設してございます。新しい地理歴史科ではこの「歴史総合」と「地理総合」ともに必履修科目ということになってございます。
 資料1-2の2ページ目以降は新たに新設いたします科目などについての資料を付けてございますけれども,時間の関係上,5ページ目と6ページ目の「歴史総合」と「公共」についてのみ御報告させていただきたいと思います。
 5ページ目が「歴史総合」でございますけれども,今申し上げましたとおり高等学校における日本史必履修化あるいは近現代までの授業が進まないといったような課題を踏まえまして新設いたしますけれども,この「歴史総合」では上にございますように近現代の歴史を理解するに当たって,世界とその中における日本を広く総合的な視野から捉えること,また課題の解決を視野に入れて,現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察すること、また,歴史の大きな変化に着目し,単元の基軸となる問いを設け,諸資料を活用しながら歴史の学び方を習得するといったことがこの科目の特徴となります。
 内容のところでございますけども,B,C,Dにございますように18世紀以降の近現代史につきまして,特に歴史の歴史的な変化に着目してB,C,Dの構成にしてございます。主に18世紀から1910年頃までを近代化という観点から捉えてございます。1910年頃から1950年代ぐらいまでを国際秩序の変化や大衆化という観点から捉えて,また1950年代以降をグローバル化という観点から捉えて,ここにございますような内容を学ぶということにしてございまして,これによりまして生徒が歴史を現代的な諸課題との関連で学ぶことができるようにしているところでございます。
 めくっていただきまして,6ページ目が新設科目の「公共」でございます。これまでの公民科における現代社会がどちらかというと現代の社会を科学的に分析するという視点で捉えるという科目でありましたことに対しまして,今回の「公共」につきましては公共的な社会に対して社会の一員としてその形成に積極的に参画するという視点を重視した科目となってございます。この「公共」につきましては,先ほど申し上げましたように高等学校における道徳教育の中核となる科目でございますし,自分自身と社会との関わりという視点から現代社会の諸課題を捉えて,その解決に向けて社会に参画する主体として自立すること,あるいは他者と協働してよりよい社会を形成することについて考察し,選択・判断する力を育むということにしてございます。
 内容につきましてはBのところにございますけれども,法的な内容,政治的な内容,経済的な内容などにつきまして幅広く学んでまいりますけれども,ここでは抽象的な内容を受動的に学ぶということではなくて,日常の社会生活と関連付けながら具体的な事柄を取り上げて,右下にございますディベート,模擬選挙,模擬裁判など体験的な学びにより生徒が実感を持って学んでいくと,こういうふうな構成にしているところでございます。
 以下の資料につきましては時間の関係上,御説明は割愛させていただきますけれども,後ほどお時間のあるときに御確認いただければと思います。
 今御説明申し上げました高等学校の学習指導要領につきましては,全面実施は2022年度からということを予定してございます。今後,移行措置につきまして検討を加えた上で,先行実施できる部分につきましては,可能であれば2019年度から実施した上で,全面実施は2022年度からということで学年進行で実施していく予定でございます。今後全面実施あるいは一部の先行実施に向けまして,各都道府県教育委員会あるいは私立学校の関係の方々,あるいは教科書関係者の方々などへの説明を十分行った上で,新学習指導要領がその趣旨をしっかりと実現されますよう,私どもとして準備して臨んでまいりたいと考えているところでございます。
 以上,私からの御報告でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして,御意見,御質問等がありましたら御発言いただければと思うんですけれども,いかがでしょうか。例によって御発言,御意見等々がありましたら名札を立てていただければと思います。
 それでは,米田委員,お願いいたします。
【米田委員】  高等学校の方が3月31日に公示されたということで,かなり中身が濃くて,また非常に新しい科目も多く登場して,一つ先生方にとって非常にこの後対応していくために大変時間を掛けて研修しなければいけないという気がいたします。この後より具体的なものが出るにつれて,先生方がどのように研修していくか,それから教科調査官の先生の方々のお力によるところも非常に大きくなるんじゃないかなと思いますが,その辺,教科調査官の方のいろいろな指導,そしてまたそれを受けて指導主事等がいかにまた研修していくか,さらに各学校で先生たちがいかに研修を深めていくかということは大変大きな問題になろうかと思います。その辺,何か国の方でもリードしていただいて,システマティックにやっていただければありがたいというのが一つです。
 それから,学習指導要領の改訂のポイント等がいろいろ出てくるわけなんですが,これはある意味では高校生自身も自分たちはどういうふうな力を付けていかなければいけないかということをみずから認識する必要もあるのかなと考えております。そういう意味では,例えば高校生向けに学習指導要領の狙いはどうなのかということをジュニア版みたいなもので伝えるということもあってもいいのかなという気がいたしまして,そういうようなことがもし可能であれば,していただければありがたいということです。
 以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 今名札が立っているのが若江委員とそれから杉江委員ですけども,そのほかの委員の方はよろしいでしょうか。本日はご覧のとおり議題が数多くあります。その先に進めさせていただきたいと思うんですけれども,ただ大変大切な案件であるということはもう御承知のとおりかと思いますので,ほかに御意見はよろしいでしょうか。
 それでは,今のお二方の委員の方でこの議題についてはとりあえずくくらせていただくということで,まず若江委員からお願いいたします。
【若江委員】  ありがとうございます。内容的には,産業界から見ますと非常に頼もしい中身だと思っております。何ができるようになるかということになりますと,やはり今御説明いただいたようなところでいうと一番下の総合的な探究の時間の活用というのが核になってくるかと思うんですが,それについて今まで現場ではなかなかここがうまく活用されていなかったように思います。頂いた資料1-2のところに総合的な探究の時間についての説明資料がないように思うんですが,これは何か意図がありますでしょうか。
【天笠部会長】  御質問ということでお答えいただきたいと思うんですけども,併せて御意見等々はよろしいですか。
【若江委員】  そこが重要だと思いますので。
【天笠部会長】  分かりました。今の件につきまして,事務方で何か御説明いただくことはありますでしょうか。
【淵上教育課程課長】  すみません,総合的な探究の時間の資料を付けていない特別の理由はございませんけれども,今御指摘いただきましたように総合的な探究の時間というのは非常に大切な時間というのは私どもも思っているところでございます。特に今回の高等学校におきましては中央教育審議会での御審議もいただきまして,小・中学校での総合的な学習の時間から,総合的な探究の時間と昇華させている,こういう構成にしてございます。これはやはり高校生ならではの認識の高まり,探究の深まりということを意識したものとして構成してございますので,私どもとして総合的な探究の時間の今回の改訂のねらい,こういったものもしっかり説明してまいりたいと思っております。
【天笠部会長】  若江委員,それでよろしいでしょうか。
【若江委員】  はい。
【天笠部会長】  それでは,杉江委員,お願いいたします。
【杉江委員】  質問じゃなくて感想でよろしいでしょうか。
【天笠部会長】  どうぞ。
【杉江委員】  全般的に見て育成する資質の目標・目的に向かい様々な視点から作成されていますので,私自身は高く評価しております。その中で生徒が学問を理解して能動的に学ぶ意識を持つことが大事だと思いますが,そのためには私自身は三つの要素が必要だと思っています。1点はどのような教科を設けるか,2点目は教員がどのように指導していくか,3番目はその結果をどのように評価するかということだと思います。評価については後からまた出てきますのでそのときに申し上げたいと思います。資質を育む新しい教科,特に「国語総合」,「地理総合」,「歴史総合」,「公民」,これらにつきましては世界から,又は環境や社会から各教科を位置付けていく新しい教科ですので,非常に適切な教科を設定されたと思っております。
 それから教員の指導方法,実習・実験,アクティブ・ラーニングなど,生徒が自ら学ぶ学習方法の採用に関し,実際には教育現場でどのような指導方法をとるかは,多分現場によって相当大きな差異が予想されますので,その辺のところをどのように平準化していくか,高くしていくかということが大きな課題ではないかなと思います。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。米田委員からもありましたように、これからはやはり,既に御説明がありましたように説明ということが大切になってくると思います。御意見等々にありましたように、どうもシステマティックに,またしっかりとその意図とか狙いとか趣旨が伝わるような説明の在り方ということを是非知恵を絞っていただければと思います。その際,できたら小・中・高が一体となってというところもまた一つその視点の中に加えていただけるとよろしいかなと思います。もちろん大学も含めてということですけれども。
 ということで,議題1については以上ということにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは,次の議題に移らせていただきますけども,初めに学校教育法等の一部を改正する法律案について,春田教科書課課長補佐より説明をお願いいたします。
【春田教科書課課長補佐】  教科書課課長補佐の春田でございます。議題2の学校教育法等の一部を改正する法律案について,お手元に資料2-1,学校教育法等の一部を改正する法律案の概要,そして資料2-2,デジタル教科書のイメージという二つの資料をお手元に御用意いただけますでしょうか。
 内容に入っていく前に,デジタル教科書の制度化に当たっての検討の経緯を簡単に御説明させていただきますと,教育の情報化全体については文部科学省としてもこれまで推進してきたところではございますが,デジタル教科書に特化してということであれば,平成27年に,デジタル教科書の位置付けに関する検討会議を設けさせていただきまして,天笠部会長には座長代理をお務めいただいて,御議論いただきました。その中で,一昨年12月に報告書がまとまり,それを基に文部科学省の中で法制度化に向けて検討を進めた中で,昨年10月,初等中等教育分科会で御議論いただき,その御議論を踏まえて今年2月23日に閣議決定,国会へ法律案として提出させていただきました。その後,今年3月末に初等中等教育分科会に御報告させていただいたという形でございます。
 この法律案の具体的な内容でございますけれども,資料2-2をまず御覧いただけますでしょうか。こちらは今回制度化するデジタル教科書のイメージを説明した資料になってございます。上の方を御覧いただきますと,デジタル教科書というタイトルの中の,紙の教科書,これを同一の学習内容を電磁的に記録したものをデジタル教科書として位置付けていくというものでございます。ですので,内容は紙の教科書と全く同じものでございます。これをデジタル化することで,タブレット端末等で使用していくということになります。
 これによって期待される効果として大きく二つございますけれども,一つ目の四角囲いの中で,デジタル化してタブレット端末上で操作することが可能となりますので,まず一つ目はデジタル機能の活用による教育活動の一層の充実ということで,例えば文字や図形の拡大・縮小であったりとか,ハイライトや書き込み等を自由に行えること。そしてそういった書き込んだりした画面を電子黒板とかタブレット同士で共有しながら議論を進めていきやすくなること,こういったことが考えられるところでございます。
 また,もう一つ,これはデジタル教科書そのものではないですけれども,今までも使われているデジタル教材,動画とかアニメーション,ドリル・ワーク等と一体的に使用しやすくなる,これで授業の幅が広がっていく,こういったことが期待されるところでございます。
 もう一つ,その下の四角囲みになりますけれども,特別支援教育等における活用例ということで,例えば視覚障害,発達障害をお持ちのお子さんに関しては,文字の拡大であったりとか音声読み上げ機能,若しくは色の反転であったりとか,こういった機能によって教科書の内容にアクセスしやすくなるといったことが期待されるところでございます。こういったデジタル教科書に関して,今回法律上で制度化していくといったものでございます。
 続きまして,資料を1枚お戻りいただいて,資料2-1を御覧いただけますでしょうか。こちらは具体的な法律案の内容について御説明させていただいている資料でございます。上の四角囲み,趣旨のところを御覧いただければと思いますけれども,今回の法案化の趣旨といたしましては,先ほど申し上げたところにもかぶってきますけれども,教育の情報化に対応し,平成32年度から小学校から随時,新学習指導要領が実施されますが,その中でもうたわれている主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善等に資すること,また障害等により教科書を使用して学習することが困難な児童生徒の学習上の支援,こういったことのために必要に応じてデジタル教科書を通常の紙の教科書に代えて使用することができる,こういったことを法制度化するものでございます。そこに併用制と米印付きで書かせていただいておりますけれども,あくまで今回の法制度化においては段階的に進めるという趣旨の下で,紙の教科書を基本としながら,デジタル教科書を必要に応じて必要な範囲で使っていくというものでございます。ですので,これまでどおり義務教育段階においては無償で紙の教科書を給付するという形でございます。
 具体的な法律案につきましては,その概要の中で1ポツ,2ポツ,3ポツと三つの法案を改正することになってございますけれども,主要な部分としては1ポツの学校教育法の一部改正でございます。具体的には,これまで学校教育法の中で紙の教科書を使用しなければならないという,学校においては教科書の使用義務というものがございましたけれども,これについてマル1でございますが,検定済教科書の内容を電磁的に記録した「デジタル教科書」がある場合には,教育課程の一部において,教科書の使用義務に関わらず,通常の紙の教科書に代えてデジタル関係者を使用できることとするということでございます。ただし,視覚障害,発達障害等のある児童生徒に関しては,教育課程の全部においても紙の教科書に代えて使用することができることとするといった法改正を考えてございます。
 マル2の部分でございますけれども,これは特別支援学校とか工業高校等の専門科目において,検定済教科書がない場合に一般の図書を教科書の代わりに使うという制度がございます。この場合にこういった一般図書においてもデジタル化されたものがあれば,同様に教育課程の一部において,若しくは全部において使用できることとするというものでございます。
 そして次の2ポツの著作権法の一部改正でございますけれども,今回こういったデジタル教科書を制度化することに伴いまして,著作権法上でも規定の整理をしたいと考えてございます。現在,著作権法においては紙の教科書に関して公表された著作物を著作権者の許可を得ることなく紙の教科書に掲載することができるという規定がございます。そしてその際には補償金をお支払いするというものがございます。これと同じ規定をデジタル教科書に関しても規定するということを考えてございます。
 続きまして,3ポツの文部科学省著作教科書の出版権等に関する法律でございます。民間による教科書の発行がない場合に,例外的に文部科学省が教科書を発行するというものがございます。これはこれまで紙の教科書に関して出版権の設定等の手続が定められていたわけでございますけれども,今後デジタル教科書を発行するという場合に備えて今回規定の整理を行うというものでございます。
 このように三つの法律案を一括して今回改正させていただくというものでございますが,施行期日に関しましては平成31年4月1日を考えてございます。具体的には32年度からの新学習指導要領を見据えたものではございますけれども,新しい教科書に対応したデジタル教科書を作るために著作権法の処理とかの関係で1年程度準備期間が必要だろうということも鑑みて,このような施行期日として考えてございます。
 以上,簡単ではございますけれども御説明でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 この件について何か御意見等々ありますでしょうか。次のICT,それからデータの活用等々の御説明を頂いてというところでお願いできればと思いますので,続きまして,学校教育におけるICT,データの活用について,白井教育課程企画室長より説明をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  失礼いたします。それでは,教育の情報化に関するテーマということで,続けて御説明させていただきます。資料3を御覧いただきたいと存じます。
 学校教育におけるICT,データの活用ということでございますけれども,こちらは政府の未来投資会議におきましてプレゼンテーションを行ったものでございます。なお,各省,文部科学省,経済産業省,総務省が合同で作ったものということでございますので,細かい用語等については各省の判断を尊重している部分がございますので,その点,御了承いただければと存じます。
 特に近年,教育に関する技術が日進月歩で進展しておりまして,例えば一般にEdTech,EducationとTechnologyの融合ということでEdTechの活用というようなことも指摘されてございます。そういったものが例えば学習の支援であるとか,評価であるとか,生徒指導であるとか,校務支援といったことに様々な影響を与えつつあるということでございます。
 それでは,資料の4ページから御説明させていただきたいと存じます。プログラミング教育に関してということが1点目の課題でございます。プログラミング教育につきましては,既にここの先生方は御案内と存じますけれども,今回小学校において必修化する,また情報活用能力については学習の基盤となる資質・能力と位置付けたところでございます。また昨年度末,この3月にプログラミング教育の手引きを公表させていただいたところでございます。またプログラミングに関する教材の開発等については,未来の学びコンソーシアムという官庁そして民間が協働したコンソーシアムを設立して,そこで進めているというところでございます。
 続きまして,7ページの2番からがICT活用の基盤となる環境整備の促進という点でございます。8ページにお進みいただきますと具体的な施策ということで,特にICT活用の基盤となる環境整備として地方財政措置,単年度で1,678億円というものを措置してきたところでございますけれども,さらにこの地方財政措置を拡充しまして,2018年度からは1,805億円ということで自治体のICT環境の整備を進めているというところでございます。この財政措置だけではなくて,例えばICTの整備状況についてグラフ化して公表して可視化していくということであるとか,またICT活用教育アドバイザーを教育委員会に対して派遣するといったようなきめ細かい支援を行っているというところでございます。
 隣の9ページになりますが,こういった措置を通じまして,従来教育用コンピュータについては何人当たり1台といったような目安を設けてきたところでございますけれども,例えば学習用コンピュータについては3クラスのうち1クラス分程度ということで,授業の展開において必要なときに1人1台を可能とする環境を実現するということで,1日1授業分程度のパソコンが行き渡るようにしていくということをこれから目指していくという,より実態に即した形の目標を立てているというところでございます。
 10ページは現在の整備状況の推移ということでございまして,従来から比べますと1人当たりコンピュータ,タブレット,無線LANの整備率,電子黒板,こういったものが伸びているところではございますけれども,まだまだこの先に進めていきたいと考えているところでございます。
 12ページを御覧いただきたいと存じます。学校のICT環境整備について,様々な課題もあるんではないかというお声を頂いております。地方財政措置は確かに予算としては措置されてございますけれども,必ずしも実際においてICT環境の整備に使われていない実態もあるんではないか,また地元の事業者からの調達ということが各自治体で推奨されてしまっているがために,なかなか高機能なICTインフラ,テクノロジーの導入ということに課題があるんではないかというようなこともございます。また自治体や教育委員会の側に十分なスペック,仕様書を適切な形で発注できるような技術がなかなか足りない部分もあるのではないか,あるいはクラウド,社会一般的にも使われるようになっておりますけれども,クラウドの活用についても情報漏えいに対するリスクの懸念ということから,なかなかハードルがあるんではないかというような様々な環境面での課題ということも指摘されておりまして,こういった点についても関係省庁が連携して検討していきたいと考えているところでございます。
 13ページからが3点目の論点でございまして,アダプティブ・ラーニングという言葉をここでは使っておりますけれども,次の14ページにございますが学習指導要領においては従来から個に応じた指導,個に応じた学習活動については規定しているところでございます。技術の進歩によって,例えば一人一人の理解度に応じた教材の提供が容易になったりとか,あるいは苦手な分野をより集中的に教材を,ドリル学習を提供するようなことであるとか,そういったこともこれから可能になってくる可能性もございます。現在,文部科学省におきましては,よりこのアダプティブ,個に応じた指導,学習指導,生徒指導を可能にするための実証研究というようなものを行っているところでございますけれども,その一つの例が渋谷区の例としまして15ページにございますけれども,スマートスクール・プラットフォームということで校務系のデータ,例えば成績情報であるとか,運動能力の値であるといったもの,また学習系のシステムということでドリル学習の結果,ICT活用状況,家庭での学習時間といったデータを入力し,こういったものをクロスで分析して,ここでは簡単なものではございますけれども,例えば家庭の学習時間と成績との相関関係といったようなことを一人一人で分析していくということもやっている自治体もあるということでございます。
 16ページからが4点目の論点,最後になりますけれどもEdTech,Education掛けるTechnologyに関する動向,政府の取組といったものでございます。こちらについて,特に経済産業省の方では昨年度の補正予算で25億円を取っていて,それについて活用していくということを考えているところでございますので,是非こういったものを活用するということが教育関係者にも望まれるところでございます。
 また19ページになりますけれども,EdTechに関する文部科学省の取組という資料がございます。こういったテクノロジーに関して様々な見方もあるかと思いますけれども,例えば子供一人一人の詳細な学習の履歴,成績や誤答の状況,解答に掛かった時間ということを分析することも可能になる,また先生方の指導案であるとか教材の共有もより容易になる,学校における生徒の様子の変化とかいじめの兆候なども見やすい部分が出てくる,出欠の管理,保健室の利用といったようなこともデータとして分かってくるというようなこともあるかと思います。
 一方で,様々な障壁もあると存じます。ICTの環境整備は,先ほど申し上げましたようにまだまだ課題があるところでございます。また個人情報,プライバシーに関するようなものをどうやって保護していくのか,教育委員会がテクノロジーを使っていく際にどういった契約していくのか,セキュリティ面も含めてどう考えていくのか,また規格,いろいろなデータを各教育委員会や業者が収集していくことになりますけれども,そういったものを相互に活用していくためにはどういった標準化であるとか,ひも付けの技術が必要になってくるのか,そういったこともございます。
 また,先生方が何よりも使いやすい技術といったものをどのように作っていくのかといったことも教育サイドから産業界に発信していかなければいけない部分かと考えておりまして,現在文部科学省においてはこういった点に対応していくために,こちらの白間審議官をヘッドとしましたEdTechのプロジェクトチームというものを立ち上げまして活動しているところでございます。
 一番最後に20ページから事例を四つだけ挙げております。これらはまだ現時点では試行的なものも多く,これからよりよいものに発展していくと思いますけれども,20ページのものがClassiという会社でございますけれども,いわゆるアダプティブ・ラーニングということでそれぞれの生徒の理解度に応じて,1回問題を解くと次に難易度が違う問題が提供されるというようなオンラインのソフトを提供しているものでございます。
 次の21ページがSENSEINOTEと言われるアプリケーションでございますけれども,先生の指導計画であるとか板書等を先生方が相互に交換,閲覧することができるようなものということでございます。将来的には指導の狙いとか生徒の学習状況に応じてリコメンド機能を使って自動的にこんなものが使えますよというようなことも可能になってくるんじゃないかということが検討されています。
 22ページがHylableという企業のものでございます。こちらに写真がございますけれども,生徒がディスカッションしている中に録音する機械がございまして,こちらの機械が,例えばどのようなタイミングで生徒の発話が増えているのか,先生の発問との関係なんかを分析することにも使えるということがございますし,また発話している生徒同士の関係,右下の方にございますけれども,例えば3番の子供,4番の子供はたくさん話しているけれども1番の子供の発話量は少ないとか,そういったことで生徒同士の関係であるとか,先生の授業の展開についても参考になるような情報が得られるというようなこともありそうなところでございます。
 最後です。23ページの一番最後ですけれども,こちらは匿名で生徒が学校に,例えばいじめなんかの相談をすることができるようなアプリケーションということでございます。生徒が先生に相談するときのハードルを下げるためにこういったアプリを作っていると,作って活用されている自治体もあるということでございます。
 限られた時間で大変駆け足になって恐縮でございますけれども,今こういった新しい議論がありまして,例えば教育課程部会の関係でいえば学習の支援,これからの教育課程の在り方,また評価の在り方にも関係する部分があるかなと思いましたので,本日御報告させていただきました。以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 委員の方から御意見,御質問を頂きたいと思うんですけども,先ほどのデジタル教科書の件と,御説明いただいたこの件につきましてということで,御意見,御質問等がありましたら先ほどと同じように名札を立てていただいてお願いできればと思いますけども,いかがでありましょうか。
 それでは,まず善本委員からお願いしましょう。善本委員,それから若江委員,渡瀬委員,この順ということでお願いいたします。
【善本委員】  ありがとうございます。中学校と高等学校の現場からこのような取組を進めていただいていることに,私は大変ありがたいという気持ちを持っております。最初にお話のありましたデジタル教科書についても,様々な御意見があろうかと思いますが,例えば理科の実験の動画などを見せるという点では圧倒的なアドバンテージがありますので,必ず学校現場で効果的に使っていくことができるように,今後様々な観点で費用の問題等も含めて整備していただくということをお願いしたいと思います。
 併せてICTデータの活用について,私はいつも時計の針を反対に回すような取組は大体うまくいかないと言っているので,これは絶対に進めていかなくてはいけないことだと思っています。その中で,先ほど御紹介のあったClassiを私どもの学校も今年度から導入するわけですけれども,一方で非常に難しいなと思っているのは,こういったものの活用に対して教職員も非常に前向きに取り組もうとしているんですが,一方で外部の業者がそういうような形でたくさん入ってこられることについて,自分たちの教育の手法とか教育の場所がある意味阻害されてしまうのではないかというような,多少の教職員としての自我とか自尊心の縮小みたいな場面があるのかなということを感じています。ただ,これはやっぱり教育そのものにとって意味があることなので積極的に活用していこうというふうに私自身も校長の立場としては教職員をエンカレッジしつつ,なおかつ彼らが自分たちの教育のスキルをこれらを使うことで生かしていくということがとても大事なことかなと思っています。そういう意味で今ちょっと現場が非常に難しい状況にある,新しいものがたくさん入ってくることに対して,教職員の年齢だけから見ても,今,私どもの学校でも再任用教員も入れれば22歳から65歳までいます。そういった年齢的な差とかICTに対する経験の差も含めて,教職員をうまく研修によってこれらを活用していけるようにしていくことが絶対必要だと思いますので,そこのあたりをどうやっていくかということが,実際に環境整備しても使われていなかったりするものがずっとこの間もあったんですね,機械だけを導入していっても。今私どもの学校ではかなりの教員がICTを活用して授業をやっておりますけれども,その部分でいえば教職員をいかに動かしていくかということが大変大事だと思いますので,その観点での環境整備を是非よろしくお願いいたします。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 続いて若江委員にお願いしたいと思いますけども,今名札が上がっている方で,その後を渡瀬委員にお願いしまして,その後に吉田委員,奈須委員,それから市川委員ということでお願いしたいと思います。名札を立てられていない方,ほかはよろしいでしょうか。とりあえず市川委員というところまでということにさせていただきたいと思いますけども,では,若江委員,続いてお願いいたします。
【若江委員】  私の方からは情報提供ということになりますが,今白井さんから御説明のありました18ページの経済産業省の連携促進事業ですが,私もここにワーキングメンバーで幾つかのものに入らせていただいているんですが,これのコーディネート団体が4月6日に決まって,多分再来週ぐらいにはそこからの事業募集が出るかと思います。ただ経済産業省の場合には教育産業振興活性化ということがメインですので,受託できるのが企業か団体ということになっていますので,ややもすれば企業,団体が中心でこういうことを使ってしまいますと教育の現場と掛け離れてしまう可能性が非常に危惧されますので,逆に言うと是非教育現場の方々は地元の企業さんとうまく連携をとられて,このせっかくの公募の機会ですので,多分4月から4月末ぐらいまでに思われますが,公募が出ますので,是非そこには注力していただきたいと思います。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 渡瀬委員,お願いいたします。
【渡瀬委員】  ICTの効果的な活用ということについてはとても賛成です。これによって教師が効率的に働くことができると思いますし,子供たちもICTを効果的に活用して学ぶということは必要だと思います。ただし特に子供たちがオンラインで学ぶ場合に,やはり常にデジタル・シチズンシップということがセットで語られる必要があると思うんです。今の御説明はこういう効果があるぞということのお話でしたから,それに触れていないんだと思いますし,先ほどの改訂のポイントでも情報ではこういうところが改訂されますということでありましたので,そこには情報倫理のことについては特に挙がっていなかったのだと思います。情報の目標の3番には情報と情報技術を適切に活用するということがあって,この適切に活用するという部分は一言でさらっと書いてありますけれども,とても難しいことだと思います。アナログで学んでいたときとは質の違う問題が必ず起こってくる中で,子供たちにどういうルールを守らせなければいけないのかを明確にする必要がありますし,学校が場合によっては子供たちときちっとしたルールの承諾書を交わすぐらいのことも必要になる場合があると思います。そういうことを常にセットでどこかにうたっておく必要があるんじゃないかなということを感じています。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして,吉田委員,お願いいたします。
【吉田委員】  ありがとうございます。まずデジタル教科書の件に関しましては,私はこれはすごく大事だと思うのですけれど,教科書の紙の問題とデジタルの問題というのは二通りあると思うのです。やはり紙教科書の重要性というのはしっかりとある。そういう中で,ただこのデジタル教科書ということで使用するのか,私はここはできればデジタル副教材という使い方をした方がかえって分かりやすいのではないかなと。これでいくと何か二重の経費が掛かるような形になっていくのではないでしょうか。ただ,例えば今,小学生のランドセルが重い云々の問題を考えたときに,タブレットに入るということはいいことなのかもしれませんけれども,それはあくまでも1人1台のパソコンというかタブレットというものが支給されてのお話だと思うのです。そこでICTの方なのですが,今いろいろお話があった中で私がすごく大事だと思っているのは,今の9ページですか,ICT機器の設置の考え方の中でようやく3クラスに1クラス分程度という言葉があります。これはあくまでもはっきり言って副教材としての利用しかないですよね。SNSの問題とかそういった難しい問題も出てくるので1人1台というのはいろいろな意味で問題があるのかもしれませんけれども,やはり我々私学の場合は,現在生徒1人1台を持たせるとなった場合に,保護者に負担していただきます。保護者に負担していただくということは,1日1時間ぐらいの授業に使うだけのために1人1台持ってもらうということは,逆に親にとっては負担感だけであって何の意義もなくなります。それとともにここの指導者用コンピュータが授業を担任する教師1人1台とあるのですけれど,学校の中でICTを使った授業を担当する先生が1人1台持っているだけでは,このICT教育が全然進みません。EdTechのことも含めてやはり全教員が持って,教員がまずいろいろなものをシェアすることから始まって,うちの場合はSharePointを使って生徒も先生方も全部運営していますし,会議等も全部ペーパーレスにしました。それはなぜやれたかというと,年齢とか何とか関係なしに,やはり生徒にやらせる以上,教員としてやらなくてはいけないという思いを持ってもらうためでした。ですから,生かしている先生も生かしていない先生もいるかもしれない。ただ授業ということでいうと,何らかの形で週のうちの半分以上のところで生徒たちが,与えられたというか自分たちのパソコンを使って,今うちの場合はタブレットではなくて全員キーボードを持たせています。それも将来のCBTに向けての準備という部分もあるわけですけれども,そういう中で例えば教科の宿題をやる,レポートを書くといえば,もうパソコンで書いてそれで出すとかそういうことにするとかいうことも含めていろいろな使い道はあると思うのですけれども,そういうことをやるためにはやはり環境整備をしっかりと国の方でしていただかないと,私学は個人負担若しくは2分の1,そうなるとうまく回っていかない。そしてあと先ほどの善本先生のClassiの話もそうなのですけれど,内容的にはみんなすばらしいのですけれど,どれをやるのでもみんなお金が掛かるのです。それも各業者がやはり自分たちのものを売り込むために物すごい動きがあります。実は今度の大学入試に絡みまして電子調査書に基づくeポートフォリオという言葉が出てきているわけですけれども,eポートフォリオ一つとっても,Classiはじめ何社かがeポートフォリオをやるために全生徒に入れてくださいというようなセールスに動いてきているというような状態で,eポートフォリオをやるのだったらどうしたらいいのか,そしてそれによって逆に本当にそれが大学入試等に生きてくるのかというところまで全部つなげて考えなくてはいけないわけだと思うのですけれども,やはり学校の教員が自分たちが自分たちの生徒を教えるために使うICT機器であるという自覚をさせるための環境整備というものを是非お願いしたいという思いがございます。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして,奈須委員,お願いいたします。
【奈須委員】  2点お願いします。デジタル技術の導入とかICTの導入,それからそれに伴っての民間活用の導入というのはもう避けられないし,意味のあることだと思っています。2点,ちょっと心配になることがあります。一つは,善本先生のお話にもありましたけども民間で作っていただくもの,それからデジタル技術を使っているものというのは教員にとってブラックボックスになってしまいがちで,そこの部分は分からないから自分の指導とか自分のカリキュラムとの連携接続をどう考えていいか分からないと,ある種のアウトソーシングになりがちかなと思います。ティーチャー・プルーフ・カリキュラムという言い方がかつてなされたこともあります。ウォーター・プルーフで防水ですので,ティーチャー・プルーフというのは防教師カリキュラム,質の低い教師の悪い影響が出ないようなカリキュラムということです。質の高い教材を持ち込めば授業がよくなるという考え方に基づくような教育に行きがちで,これは気をつけなければいけないかなと思っています。もちろん同時に今回はカリキュラム・マネジメントと言っていますけども,教師や学校が自分たちのカリキュラムを自分たちでコーディネートする力を高めていくということが大事ですし,それを中心に進めていく中でICTとか民間活用の導入というのをうまく位置付けるかなと思っています。
 もう一つはICTとかデジタルシステムというのはとても高度で新しく見えるんですけども,その中に載っている教材とか指導法とか学習論とか知識感がとっても古い場合があります。例えばドリルというのはとても古い行動理論の考え方ですので,正解を繰り返し,繰り返しやって,訳も分からなくても正解をとにかくなじませていくという古い理論に基づくものですから,今回深い学びと言っていますよね,子供たちが自分たちの意味として形成する学びというふうにしていますし,対話的ということも言っていますよね,あれは社会構成主義ですよね。みんなの中で知識が作られていく,知識がよいものに更新されていくという知識観や学習論をベースに今一部進んでいるわけですから,ICTやデジタルに技術的になったとしても,その中に載っている学習とか知識の質とかということを吟味していく必要があって,この辺は民間も今頑張っていると思いますけど,それに対する吟味というのは僕ら教育関係者の仕事だし,学校が主体となってやる必要があるのかなと思っています。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 市川委員,お願いいたします。
【市川委員】  質問的なことを二つなんですけれども,まず一つはデジタル教科書なんですが,これは多分学校でもきっといろいろなお考えのところがあって,例えばある学校である教科に関してはもう紙の教科書はうちは要らないと,デジタル教科書だけでやっていくというようなところも出れば,やっぱり紙をベースにして両方欲しいとかいろいろなところが出てくると思いますが,伺いたいのは,今紙の教科書は無償配布ですけれども,それとの関連で予算措置でどんな議論がなされているのかと。例えばうちはもう紙はある教科で,理科では要らないとか,だからその分の紙の教科書のお金をデジタル教科書に回してほしいのだというようなところが出てきた場合に,そういうことは認めようということなのか,もう紙は使おうが使うまいが必ず無償配布されますよということが大前提なのか,そこら辺のデジタル教科書と紙をどう使いこなしていくかというのは,恐らくかなり多様な学校が出ると思うので,それに応じて予算措置というのはどんなふうに議論されているかというのが一つです。
 それからもう一つのICTの活用なんですが,私は見ていると何か30年前の状況とすごく似ているなという気がします。やはりその頃もかなりこれからはコンピュータ技術が盛んになるということで,教育に関しても1,000本,2,000本というような教育ソフトがいっぱい出てきて,私の研究分野でもありましたので,学校の先生とどうやってそれらを授業に活用していくかというようなことを研究しては事例集にしていくというようなことをずっとやっていました。ただその頃のそうやって開発されたソフトの9割以上は今使われていないと思います。あれだけたくさんお金を掛けて,多分開発費も掛かって援助もされていると思いますが,それがとにかく入れないことには話にならないっていうんでとにかく環境整備といって入れていくと,でも結局は先生も結構かなり大変な思いをする,それから子供の方も大変な思いをして,結局二,三年たったらほとんど使われない状態で消えていくという,これは一種の教育界での苦い経験だろうと思います。同じ轍を踏まないようにするには,こういういろいろ出てくる中でどういうものは実際に使ってみてどんな効果があったのかということを一方ではモデル校などからどんどん発信していただいて,本当にかなりいい効果が出ると思われるものはもちろん普及していくといいと思うんですが,そういうプロセスなしにどんどん開発されて,どんどんそれに財政的な援助をしていって,結局使われないと,二,三年たったら使われない,あるいはもう使うのが大変で先生も苦しい思いをするというようなことになっては意味がありませんので,このあたりのソフトやシステムの評価と普及というようなことに関してどんな体制をこれからとっていくのかということを伺いたいと思いました。
【天笠部会長】  今1点目と2点目と一緒にしてお答えできるところについてお願いできればと思うんですが,いかがでしょうか。
【春田教科書課課長補佐】  では,私の方からまず,デジタル教科書に関して御説明させていただきます。少し説明が不足しておりまして申し訳ございませんでした。今回の法案の趣旨といたしましては,やはり紙の教科書をまずは基本として段階的に進めていくことにするということでございました。ですので,紙の教科書を無償給付すると。そしてデジタル教科書の使用に関しては,本当にデジタル教科書を使うことが児童生徒の教育の充実に必要であるという場合に,教育課程の一部に限ってまずは使用するというところでございます。ですので,今回の制度においてはデジタル教科書を無償配布するということではなく,紙の教科書を無償配布して基本とすると。その上で,こういったデジタル教科書を一部教科書に代えて使っていくその効果であったりとか影響を文部科学省としてもしっかり検証,把握して,実際の使用状況等も見ながらどういうふうな対応が必要かについては今後検討していくということを考えてございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 二つ目の件について何かありますか。お願いします。
【梅村情報教育課長】  頂いた質問全体につきましてコメントさせていただきます。情報教育課長の梅村でございます。よろしくお願いします。
 まずは渡瀬先生の方から情報倫理というお話がございまして,先ほどの資料の中では確かにこのとき頂いたお題がプログラミング教育でしたので,情報活用能力ということまでしか書いていなかったんですが,当然情報モラル教育についても引き続き力を入れて進めてまいりたいと思っております。特に最近携帯電話,スマートフォン,そしてSNSの利用というのは子供たちも急速に普及してございますので,こういったところへの対処というのもしっかりやっていきたいと思います。具体的には平成27年に情報モラル教育の指導資料というのを作っているんですけれども,そこら辺も改訂する予算も本年度確保しておりますので進めていきたいと思いますし,児童生徒向けの啓発資料,これも毎年作成しております,そういった座間の問題がありました,そういったところへの注意喚起も含めた資料を作って配布するとか,あるいは先生方への教員を対象としたセミナーといったものも実施して,引き続き力を入れて進めていく必要があると考えております。
 またICT環境の整備促進,推進につきましては資料3の11ページのところにございますが,まずは最低限必要なところと,新学習指導要領で情報活用能力が学習の基盤となる資質と位置付けられたということもございますし,そういったところでこの普通教室での活用ということに関しましても,Stage3,つまり授業展開に応じて必要な時に1人1台使えるといったところを目指してやっていこうというところを現実解として,これを根拠に地方財政措置を要求しているというところでございます。もちろんその先を進めることも大事でございまして,私ども,例えばStage4,常時の1人1台環境ということでございますが,こちらを先進校での実証事業とかそういった活用事例などはしっかり実証事業などを行いながら事例を蓄積して,周知もして進めていきたいと考えてございます。
 あと,最後に市川先生の方から教材等々のお話がございました。30年前と同じ轍を踏まないようにということでおっしゃっていただきましたとおり,モデル校などでのよい活用事例というのはしっかり発信していきたいと思いますし,教材等々も国が作り出すというよりは民間にあるいいものをしっかり活用してやっていただけるような指導事例を作る,例えばプログラミング教育につきましてはその指導事例というようなものを,先ほど申しましたプログラミングのコンソーシアムで発信していって,そういった中で民間の教材をうまく使っていただけるようなことを考えていきたいと考えてございます。そういった点に注意して進めてまいりたいと思います。ありがとうございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。続きまして,篠原委員,お願いします。
【篠原委員】   デジタル教科書の問題について言おうと思いましたが,もう大体説明がありましたので詳しいことは申し上げません。市川委員からも紙の教科書は不要だという学校があった場合どうするのかというような問題提起もありましたが,先ほど説明があったように学習指導要領が紙の教科書を基本とし,デジタル教科書と併用するということをしっかり踏まえれば,紙を使わないという選択は学校においてあり得ないのではないかと思っていますので,そこはしっかりと指導してほしいと思います。
 以上です。
【天笠部会長】    以上でこの件について終わりにしたいと思いますが,私もこの件については一つ,この国では読解力ということについての課題を抱えているというようなことが言えるんじゃないかと思いますので,今ここで取り上げたことと読解力ということを別立てにするんじゃなくて,常に複眼的にテーマを追求していくということとして,この位置付けとか在り方というのをまた検討を考えていただければと思います。
 それでは,議題4に移らせていただきたいと思いますけども,学校における働き方改革について,森初等中等教育企画課長より説明をお願いいたします。
【森初等中等教育企画課長】  失礼いたします。それでは,学校における働き方改革について御説明申し上げたいと存じます。資料といたしましては資料4-1から4-6というのを御用意させていただきましたので,そちらを御覧いただければと思います。
 この学校における働き方改革でございますけれども,御案内のように昨年6月に中央教育審議会に諮問いたしまして,特別部会において御審議いただいているところでございます。この教育課程部会でも昨年11月に開催されました前回の部会においてその審議状況を御説明させていただいたかと存じますけれども,その後中央教育審議会におきましては昨年12月にこれまでの審議を踏まえて働き方改革のための総合的な方策について中間まとめとして取りまとめをしていただいたところでございます。そしてこの中間まとめを踏まえまして,文部科学省といたしましては,同じく昨年12月でございますけれども,文部科学省として実施する事項を緊急対策として取りまとめを行い,さらに今年2月でございますが緊急対策を周知し,各教育委員会などにおける取組を呼び掛けるための通知を発出させていただいたところでございます。これらの概要について御説明申し上げたいと存じます。
 まず資料4-1,パワーポイントの資料を御覧いただければと思います。これは中央教育審議会において昨年12月22日に取りまとめていただきました中間まとめの概要をまとめさせていただいたものでございます。この中間まとめでは,この資料4-1でございますけれども,1ページ目の1ポツにございますように学校における働き方改革の背景・意義として,三つ目の白丸にございますような教師の勤務実態は看過できないほどの状況にあるということを踏まえまして,その下の丸にございますように日本型の学校教育を維持し,新しい学習指導要領を着実に実施するには,教師の業務負担の軽減が喫緊の課題であるという認識を示していただいているところでございます。
 そしてその下の丸でございますけれども,学校における働き方改革が目指すところといたしまして,ここにございますように学校における働き方改革によりまして教師が心身の健康を損なうことのないよう業務の質的転換を図ると,限られた時間の中で児童生徒に接する時間を十分に確保し,教師の日々の生活の質,教職人生を豊かにすることで人間性を高め,そして児童生徒に真に必要な総合的な指導を持続的に行うことのできる状況を作り出すと,これを目指すのだというふうに整理していただいているところでございます。
 その下,2点目にございます基本的な考え方ということで,長時間化の要因でございますとか検討の視点を示していただいた上で,次の2ページでございますけれども,大きな3点目といたしまして学校・教師が担う業務の明確化・適正化についての基本的な考え方や方策を示していただいているところでございます。
 この中間まとめでは,2ページの上から二つ目の黒いポツにございますようにこれまで学校・教師が担ってきた業務について,マル1にございますような本来は誰が担うべき業務であるのかということ,そしてマル2にございますように負担軽減のためにどのように適正化を図るべきかと,こうした二つの観点から必要な環境整備を行いながら学校・教師以外の主体に積極的に移行していくという視点,そして必要性が乏しい慣習的な業務については,思い切って廃止していくと,こうした視点に立って検討すべきであると,このように提言を頂いているところでございます。
 そして具体的には2ページの下の方に表がございますけれども,これまで学校・教師が担ってきたような代表的な業務,この14の類型を取り上げまして,三つの表に分かれておりますけれども,基本的には学校以外が担うべき業務,そして学校の業務だけれども,必ずしも教師が担う必要のない業務,そして教師の業務ではあるけれども,負担軽減が可能な業務というように様々な業務について役割分担,適正化を図るための考え方を整理していただいているところでございます。
 詳細は割愛させていただきますけれども,例えばマル1登下校ですとか,マル3学校徴収金といった業務については,必要に応じて地方公共団体であるとか,外部人材であるとか,そうした方々に担っていただくというようなことですとか,調査・統計への回答については事務職員の参画,部活動については部活動指導員等に参画していただくといったこと。また右端にございます授業準備であるとか学習評価,成績処理と,こうしたことの補助的な業務についてはサポートスタッフの参画を促していくといったことを検討すべきであるといったことが示されているところでございます。
 その上で,3ページに移っていただければと思いますけれども,この業務の適正化を着実に実施する,実行するための方策として,国,教育委員会等,そして各学校,それぞれが取り組むべき事項というものを示していただいているところでございます。このほか,この中間まとめでは3ページの下の方に4ポツがございますけれども,学校の組織運営体制の在り方を見直すといったこと,それから,駆け足で恐縮ですけれども,4ページにございます5ポツとして勤務時間に関する意識改革と制度面の検討ということで白丸が幾つか並んでおりますけれども,勤務時間管理の徹底をするということ,適切な勤務時間を設定するということ,さらには教職員全体の働き方に関する意識改革をすると,こうしたことが提言されています。
 さらに5ページでございますけれども,6ポツではこうした改革を実現するための環境整備をするといったことなど様々な提言を頂いているところでございます。
 続きまして,資料4-3でございます。文部科学省といたしましては,こうした中間まとめでの御提言を踏まえまして,昨年12月26日に文部科学省として取り組むべき事項,これを緊急対策として取りまとめをさせていただきました。その概要をまとめたものがこの資料4-3でございます。この緊急対策では,文部科学省みずから実施すべき事項と,教育委員会・学校等に対して取組を促していく事項が含まれておりますけれども,このうち文部科学省みずから実施する事項を中心に御説明させていただきますと,まず1ページ目,1ポツとして業務の役割分担・適正化を着実に実行するための方策とございますが,一つ目の丸にございますように中間まとめにおいて示された代表的な業務の在り方に関しての考え方。この下の方に表がございますけれども,これを踏まえて文部科学省において学校や教師,事務職員等の標準的な職務を明確化し,教育委員会における学校管理規則に位置付けていただけるよう学校管理規則のモデル案というものを作成し,提示してまいりたいということを盛り込んでおります。
 また,その下の丸にございますような全国の教育委員会・学校等で参考にしていただけるような優良事例の収集と周知を図っていくということ。また四つ目の丸にございますように文部科学省の中で教職員の業務量を俯瞰して,一元的に管理するための組織を整備すると。そして文部科学省が新たに学校に対して何らかの業務を付加するような制度改正などを行うような場合には,一元的な管理組織において調整を行うということを基本とするといったことを盛り込んでいるところでございます。
 それから,今度は1ページ飛ばして3ページ目を御覧いただければと思いますが,3ポツで勤務時間に関する意識改革と時間外勤務の抑制のための必要な措置ということで,(1)の四つ目の白丸に部活動についての記載がございます。部活動について,適切な活動時間や休養日の設定を行うためのガイドラインを示すと定めておりますが,これについては既に先月でございますけれども,スポーツ庁におきまして運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインというものが策定されているところでございます。
 それから同じページの(3)でございますが,時間外勤務抑制のための措置ということで,現在政府の中で議論が進められております働き方改革の議論も参考にしながら,教師の勤務時間に関して数値で示した上限の目安を含むガイドラインを検討し,提示するといったことも進めてまいりたいと考えているところでございます。
 さらに同じページの4ポツにございます働き方改革実現のための環境整備ということで,必要な予算の確保に努めていくとしておりますが,具体的には次のページ,最後の4ページ目でございますけれども,平成30年度予算におきまして新しい指導要領の円滑な実施,そして働き方改革のための環境整備ということで必要な予算を計上しているところでございます。
 それから,次に資料4-5を御覧いただければと思います。中間まとめにおきまして各学校や教育委員会において取り組んでいただきたいということが求められている事項につきまして,本年2月9日でございますけれども,文部科学省から各教育委員会に対して通知を発出いたしまして,取組の徹底を促したところでございます。この資料4-5はその概要をまとめたものでございます。なお,私立学校や国立大学附属学校につきましても,この内容について別途周知を行っているところでございます。
 この通知におきましては,1ページの1ポツにございますように学校における業務改善のために教育委員会が取り組むべき方策として,例えばマル2事務職員の参画でございますとか,マル3専門スタッフの確保,マル7にあるようなコミュニティ・スクール導入など学校,家庭,地域の連携の促進,さらにマル8にございますようなICTの活用推進,様々なことを教育委員会に対して求めているところでございます。
 その上で,2ページに移っていただきますと,(2)にございますけれども,先ほど中間まとめで示された14の個別の業務の在り方に関する考え方を踏まえまして,役割分担及び適正化を図るための留意事項をお示ししております。例えばマル3学校徴収金の徴収・管理については,教育委員会事務局ですとか首長部局において実施していただくといったことでございますとか,真ん中のところ,マル5にございます調査・統計については精査・精選していただくと。さらに右側マル10の授業準備ですとか,マル11学習評価や成績処理といったものについて,補助的な業務についてサポートスタッフの参画を図っていただくと,こうしたことを示しているところでございます。
 それから3ページに移っていただきまして(3)でございますけれども,学校が作成する計画でございますとか,学校の組織運営についての見直しをするという観点から,様々な計画であるとか委員会の統合など業務の適正化に向けた取組を促していくといったことを求めているものでございます。
 さらに真ん中の2ポツでございますけれども,勤務時間管理の徹底及び適正な勤務時間の設定ということで,例えばICTの活用,タイムカードなどによって勤務時間を客観的に把握・集計するシステムを構築していただくということ,登下校,部活動等について適切な勤務時間設定,休憩時間を確保していただくということ,留守番電話を設置するなど体制を整備していただくということ,さらには長期休業期間中などに年次休暇を取得できるように学校閉庁日の設定などの工夫していただくといったことを盛り込んでおります。
 3ポツの意識改革につきましては,管理職のマネジメント能力の養成のための研修の実施でございますとか,業務の改善という観点から人事評価,学校評価等を実施していただくということについて,教育委員会における取組を促しているところでございます。
 以上,中央教育審議会中間まとめの概要と,その提言を踏まえました文部科学省の対応状況について御説明させていただきましたけれども,現在,働き方改革特別部会におきましては,中央教育審議会の中間まとめにおいて引き続き議論すべきとされた課題などについて検討を進めていただいております。具体的には学校の組織運営体制の在り方,それから学校の労働安全衛生の在り方,そして給特法を含む教職員の勤務時間等に関する制度の在り方について議論を今後深めていくということが予定されておるところでございまして,文部科学省として今後の議論に十分しっかりと対応させていただくとともに,本日御説明させていただきましたような学校における働き方改革の取組について,学校,教育委員会など広く関係者の御理解を頂きながら着実に進めてまいりたいと,このように考えているところでございます。
 御説明は以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして,御意見,御質問等がありましたらお願いしたいと思います。今名札が上がっている方限りということにさせていただきますけども,よろしいでしょうか。そうしましたら渡瀬委員,寺本委員,大方委員,生重委員,それから時久委員ということで,この順にお願いしたいと思います。渡瀬委員からお願いいたします。
【渡瀬委員】  ありがとうございます。教師の働き方を改革しなくてはいけないというのはまさにそのとおりだと思います。もしこれが既に定義されているのでしたら申し訳ありません。資料4-1の1ポツの五つ目の丸にある日本型学校教育というのは具体的にどういうことを言うのでしょうか。この捉え方によっては結局働き方を改革する足かせにもなりかねないとも思うんですけれども,以上です。
【天笠部会長】  御説明等々については後で一括してお答えいただくということで,渡瀬委員,よろしいでしょうか。
 ということで,それでは,続きまして寺本委員,お願いいたします。
【寺本委員】  すみません,今御説明いただいた中のところで,学校の先生の勤務時間の関係で,文部科学省や各教育委員会も全国レベル,地域レベルのPTA連合会の協力も得るため必要な要請を行うという文言があちらこちらに書いてあるんですけども,私たちPTAも,私自身が各主要な県だとか,また政令市の教育長さんにお会いしながら,まさにこのことや,また今回の様々な連携協働の協働の在り方についてというようなことについて意見交換しながらこの働き方改革も前向きに進めていきたいという,そんな意見を交わしているところなんですが,そんな中で,またこれからもあちらこちらへお邪魔して,この書いてあるお言葉のとおり私たちも進めていきたいという思いがあるので,是非文部科学省さんからも各教育委員会,またそれぞれの部署のところへそういった話があったらどんどんと各地域のPTA,またその類する団体等へ人間関係を構築していただくという意味で様々な場面を設けていただければということの御要請をしていただけたら大変ありがたいと思っています。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして,大方委員,お願いいたします。
【大方委員】  資料4-5の2ページに当たるところですけれども,先ほどからの議論にも関係ありますが,新しいことをどんどん取り組んでいくとき,又は学習指導要領が変わってきたとき,当然ながら様々な研修の必要性が出てくると思います。資料の2ページのところで「教師の業務だが,負担軽減が可能な業務」マル10の授業準備というところで,サポートスタッフの積極的参画,ICTを活用した教材・指導案の共有化ですけれども,確かにそのとおりですが,今地方は特にそうですけれども,サポートスタッフどころか専任教員の確保すら難しいところが多くなっています。ICTを活用した教材の共有化をすれば負担軽減になるように一見こう読んだらそうなりますが,必ずしもそれが得てとする先生ばかりではなく,学校格差というのもあり,なかなかこのICTが充実している学校としていないところがあるのではないか。そしてその隣の「学校業務だが,必ずしも教師が担う必要のない業務」のマル6の児童生徒の休み時間における対応ということで,地域人材等の参画・協力というようなことが書いてありますけれども,この辺のところもセーフティネットの問題といじめの問題等を考えたときに,この休み時間にこそある意味担任が見ていなければいけないという部分であるのではないかと思って発言させていただきました。
 以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして,生重委員,お願いいたします。
【生重委員】  ありがとうございます。おおむね働き方改革の方向性には賛同で,書いてあることもきちんと整理されているなと思っております。ただ,この書いてあることのそれぞれが担うべきところのベースには,地域におけるコミュニケーションと,それから信頼関係がベースにない限り,これはシステマティックに全部そういうふうにしますといってもうまくはいかない。私が全国を回って行って,自分が関係しているいろいろな関係者のお話の中からもポロポロっと,地域ボランティアは基本無償で御協力しているところが多いかと思うんですが,先生たちが全員名刺を持つ時代だよねと,「ああ,申し訳ないけども私たちの名刺全部作っておいて」と,それはボランティアがやることなんでしょうかっていうような,今事例は一つしか出しませんがほかにもいろいろ聞こえてくる面がございまして,これってやっぱりもう徹底した信頼関係と,あっ,こういうことならやっていかなきゃいけないねというコミュニケーションをベースにしない限り,これは絶対にうまくいかない。それから,部活動の問題も日本型教育の中でどうしても学校教育外と言われながらも学校から切り離せない今の現状のことを考えたときに,そこも生徒の指導,今大方先生がおっしゃったように休み時間をきちんと視野に入れることも子供の関係の把握ではないかっておっしゃったんですが,部活動のところにもそういう部分が実は含まれている面がございます。学校からガンと切り離すんだったら外のこととしてきちんと,また場を改めた活動になっていくかと思うんですが,学校に置かれているということはやっぱり教師と外部指導員のコミュニケーションが不可欠であろうと思います。学校の敷地の中で学校管理下で行われているものに関しては,やっぱり徹底したコミュニケーションを今後も,この中でシステムをうたっていくことのベースには最低ここに信頼関係と常にコミュニケーションをとり続けるということが重要であるというのを忘れないでいただきたいなと思います。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 時久委員,お願いいたします。
【時久委員】  働き方改革につきましては,学校の先生方の意識改革がとても大事だと思っているところです。今まで段階を追っていろいろな提示がされてきていますので,それを受けて学校の感覚が随分変わってきたということは実感がありますので,どんどんこれは進めていかなければならないと思っています。
 それで,学校の先生方の意識改革の中で,地域の今までの長い歴史の中で地域のしつけ面だったり,家庭教育,それから地域での教育力というものを全部取り込んでしまっている経過があるので,そのあたりを整理していくところが先生方の意識改革と大きくつながっていると思っています。
 それで,あとちょっと別のことではありますけど,本日はICTのことと働き方改革とかテーマがあった部分をちょっとつなげてみると,働き方改革の中でスタッフを入れてくださいっているのは,これは学校にとっては本当に助かります。それで情報の担当がICTなんかを進めていくときにはサポートとして非常に必要だと思っているところです。これはいわゆる情報の教育をするということもありますけれど,ほかの機関とつなげてどういうものを学校に取り込んでいくのかというようなことなんかを考える,そういう連携の担当を含めたような情報の担当がいないと,学校の今の先生の状態の中で新たなものをどんどん入れていくというのがなかなか難しいと思っているところです。
 もう一つは学校の取組が市町村によって温度差が大変ありまして,新しいこういう動きをキャッチしてどんどん順番にやっていっているところと,それから例えばコミュニティ・スクールもない,それから情報もまだまだいろいろな整備もできていないとかいうようなこともあったりして温度差があるので,それぞれの市町村がどういう教育を進めていくかということをもう一度しっかり捉え直して,そして順番に早く進めていくということが必要なので,非常に課題は大きいと思っています。それと働き方改革が相まっていくものですから,サポートできるところはサポートしながら,各市町村の主体的な動きを進めていくようにしていかないといけないと思っています。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 委員からの質問,意見等々はここまでにさせていただきたいと思いますけども,今それぞれの委員の方から全体を通して,御質問等々も中にあったかと思うんですが,何かお答えできることについてお願いいたします。
【森初等中等教育企画課長】  失礼いたします。
 日本型学校教育についてお尋ねがございましたけれども,すみません,資料4-2,中間まとめの本体の方を御覧いただければと思いますが,この資料4-2の2ページのところでございます。(2)のところに日本型学校教育というくだりがございますけれども,諸外国と比較して日本の学校,教師が広範な役割を担っているということで,学習指導のみならず生徒指導,さらにはスポーツ,体育の指導とございますけれども,そうした様々な役割を担い,全人格的な完成を目指す教育を実施している,これをこの文脈では日本型学校教育と示してございます。こうしたことが国際的に見ても高く評価されていることから,こうした日本型のよさを今後も生かしていくことが必要であると。ただ,こうして学校が様々な役割を担っているということが,3ページにもございますけれども学校が抱える業務が肥大化し,そしてまた複雑化,困難化しているという要因になっているということから,学校の教師だけが抱え込むのではなくて,外部の人材も含めて適切な役割分担を図っていくということが方向性として示されているということでございます。
 それから,委員の先生方から様々御指摘いただきましたけれども,PTAの方で教育委員会と連携をとるときも進めていただいていると大変ありがたく思っております。文部科学省としても教育委員会に対してそうしたPTAとの連携を十分図るように促してまいりたいと思っておりますし,教員の意識改革が重要であるといったことですか,ベースとしてコミュニケーション,信頼関係が重要であるといった御指摘,またごもっともであると思っています。また,なかなかサポートスタッフだけでなくて教員の確保自体が難しいという御指摘もあろうかと思います。そうしたことについて文部科学省としてどういった支援ができるのかといったことについても今後しっかりと対応してまいりたいと考えているところでございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,残り三つの案件につきまして続けて御説明をお願いしたいと思います。続けてお願いして,その後,委員の方から御意見,御質問等々の時間を確保したいと思いますので,3件続けてそれぞれ御説明をお願いし,その後そういうことでお願いしたいと思います。まず幼稚園及び特別支援学校幼稚部における指導要録の改善についてということで,幼児教育課の本田子育て支援指導官から御説明をお願いいたします。
【本田子育て支援指導官】  失礼いたします。それでは,幼稚園及び特別支援学校幼稚部における指導要録の改善について御説明申し上げます。
 まず,幼稚園教育要領につきましては昨年3月に,また特別支援学校幼稚部教育要領につきましては昨年4月に告示いたしておりまして,それぞれ本年4月から実施しているところでございます。続いて指導要録につきましては,その作成や送付,保存などにつきまして学校教育法施行規則により定められているところでございます。今回の指導要録の改善につきましては,幼稚園教育要領等の改訂におきまして,例えば幼稚園教育において育みたい資質・能力の明確化,幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の明確化,幼児理解に基づいた評価の実施ですとか,あとは小学校教育との接続の推進などの改善の充実を図ったことを踏まえまして,また幼児理解に基づいた評価に関する検討会での御意見なども踏まえて整理させていただいたものでございます。
 それでは,お手元の資料5を御覧ください。この3月に発出いたしました幼稚園及び特別支援学校幼稚部における指導要録の改善についての通知でございます。1枚おめくりいただきまして2ページを御覧ください。この通知の中で幼稚園等における評価の基本的な考え方というものをお載せしております。幼児一人一人の発達の理解に基づいた評価の実施に当たっては,次の事項に配慮する,(1)といたしまして指導の過程を振り返りながら幼児の理解を進め,幼児一人一人のよさや可能性などを把握し,指導の改善に生かすようにすること。その際,他の幼児との比較や一定の基準に対する達成度についての評定によって捉えるものでないことに留意すること。
 (2)といたしまして評価の妥当性や信頼性が高められるよう創意工夫を行い,組織的かつ計画的な取組を推進するとともに,次年度又は小学校等にその内容が適切に引き継がれるようにすることとしております。
 後ほど様式の参考例を御覧いただきますが,2点目の指導要録の改善の要旨でございますけれども,指導上参考となる事項について,これまでの記入の考え方を引き継ぐとともに,最終学年の記入に当たっては,特に小学校等における児童の指導に生かされるように幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を活用して幼児に育まれている資質・能力を捉え,指導の過程と育ちつつある姿を分かりやすく記入することに留意するよう追記いたしまして,この点を踏まえて様式の参考例の見直しを行っております。
 それでは,11ページ,12ページを御覧ください。中ほどに「指導上参考となる事項」というのがございますが,この様式は今回2枚にわたっておりますけれども,11ページに三つ縦に欄がございまして,5歳児の欄の四つの欄が入ったもので1枚に収まっていたものがこれまでの様式でございました。それが今回の最終年度の記入についての改善点を踏まえまして,様式の参考例を変更して2枚にわたる形にしております。
 それでは,12ページを御覧ください。今回の改善点といたしまして追記しておりますが,字が小さくて恐縮でございます,このページの下の方に指導上参考となる事項,(1)マル3というところがございまして,このマル3というところが「最終年度の記入に当たっては特に小学校等における児童の指導に生かされるよう,幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を活用して」とございますので,この様式の右側の方に幼児期の終わりまでに育ってほしい姿というものをお載せしております。この幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を活用して,幼児に育まれている資質・能力を捉え,指導の過程と育ちつつある姿を分かりやすく記入するように留意すること。また幼児期の終わりまでに育ってほしい姿が到達すべき目標ではないことに留意し,右側の方で10の項目に分かれているんですけれども,この項目別に幼児の育ちつつある姿を記入するのではなく,全体的・総合的に捉えて記入するということを追記しております。あくまでも小学校等における指導に生かされるように分かりやすくという小学校とのつながりを重視いたしまして,幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を活用ということを改善点としております。もともと指導上参考となる事項につきましては,1年間の指導の過程と幼児の発達の姿について当該幼児の発達の実情から向上が著しいと思われるものを,幼稚園生活を通して全体的・総合的に捉えた幼児の発達の姿等々を記入することになっておりますので,それに加えて今回の改善をさせていただいているところでございます。
 なお,学籍に関する記録の様式の参考例に変更はございません。
 続きまして,資料14ページ,15ページを御覧いただければと思います。こちらは特別支援学校幼稚部幼児指導要録の指導に関する記録の様式の参考例でございますが,先ほど説明いたしました幼稚園幼児指導要録と同様の考え方によりまして改善を行ったところでございます。
 簡単ですが説明は以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして,「高校生のための学びの基礎診断」について,滝波高校教育改革プロジェクトチームリーダーから御説明をお願いいたします。
【滝波高校教育改革プロジェクトリーダー】  それでは,資料6を御覧ください。「高校生のための学びの診断」制度についてという資料でございます。高校生のための学びの基礎診断は,もともとは高大接続システム改革会議の最終報告の中で,高等学校基礎学力テスト(仮称)として高等学校への導入が提言されたものでございます。その後の検討を経まして,昨年7月に高大接続改革の実施方針を公表させていただいたところでございます。その中で基礎診断につきましては,高校生の基礎学力の確実な習得と学習意欲の喚起を図るため,文部科学省が一定の要件を示し,民間の試験等を認定する制度を創設し,学校における活用を通じて指導の充実を図り,PDCAサイクルを促進するという基本的な考え方が示されたところでございます。
 その後,具体的な認定基準等を検討するために,本日お越しいただいておりますけれども,荒瀬委員を主査といたしますワーキンググループを設けまして,6回にわたって御議論いただきました。その間,パブリックコメントの手続にも付した上で,去る3月6日付で取りまとめがなされまして,同日付で文部科学省として認定基準,手続等に関する規定ということで策定,公表させていただいたところでございます。
 各学校が教育目標を設定して,それを踏まえて教育課程を編成して日々の教育指導を行っていくと。その結果,生徒にどの程度基礎学力が身に付いているかを把握して,その結果に基づいて事後の指導の改善・充実を図っていくと。既に各学校におきましてはカリキュラム・マネジメントに基づきましてそういった教育指導のPDCAサイクルを回していただいているものと考えています。その際のチェックに当たる部分といたしまして様々な測定ツールがある中で,今回制度化しました基礎診断というものも御活用いただけるようにしていきたいと考えているものでございます。
 この認定基準ですけれども,民間事業者の創意工夫を最大限発揮できるような大綱的なものにしてございます。その上で,主な認定基準ですけれども,この資料の表紙の一番右側にブルーのところを囲った点線がございますけれども,まずは学習指導要領を踏まえた出題の基本方針に基づく問題設計となっているということ。それから対象教科は国語,数学,英語とし,共通している必修科目を中心とし,義務教育段階の学び直しの内容も含んでいるということにしてございます。
 それから主として知識,技能を問う問題に加えて,主として思考力,判断力,表現力等を問う問題も出題していくということ。
 それから,思考力,判断力,表現力を問う問題の形式として記述式問題の出題も求めていくということにしてございます。
 それから,英語につきましては原則読む・聞く・書く・話すの4技能が測定できるということを求めてございます。
 それから,結果提供,フィードバックでございますけれども,これにつきましては指導要領に示す目標に照らした定着度合いの測定を通じて学習成果や課題が確認できて,事後の学習改善あるいは教師による指導の工夫,充実に役立つ結果の提供をしていくといったことを求めてございます。
 今後の予定ですけれども,まず6月末までに民間事業者からの申請を受け付けまして,申請のあったツールの情報の概要につきまして文部科学省で公表していきたいと思っております。その上で,7月から9月にかけまして文部科学省内に設置します審査会で審査していく。それから10月から11月にかけて基準に適合するものについて認定し,文部科学省のホームページで情報提供していきたいと考えております。その上で,各学校で年間指導計画に適宜反映していただいた上で,2019年度から本格的な利用が進められるようにしていきたいと考えております。これらのサイクルを毎年度繰り返しまして,ツールの充実につなげていきたいと考えております。
 それから認定ツールですけれども,これは文部科学省のホームページで主な対象者ですとか対象となる教科,目的,概要などの基本情報,それから申請書の記載内容,あるいは審査会での指摘事項といった詳細情報などの掲載をしていく予定にしてございます。各教育委員会あるいは学校の方でこれらの情報を十分吟味していただいて,適切な測定ツールの選択,活用を進めていただきたいと考えております。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 まだありますか。短く,委員の皆さんからの意見をお願いしたいと思いますので,よろしくお願いします。
【滝波高校教育改革プロジェクトリーダー】  あと少しだけですけれども,今回の規定の策定を受けまして,各事業者の方に,あるいは地方公共団体に対しまして制度の説明,意見交換などを随時行っているところでございます。関連しまして学校における測定ツールの選択あるいは実施後の支援に際しまして,各教育委員会などの設置者の役割も大変重要だと考えております。設置者の一定の方針の下で目的,状況,ニーズに応じて各学校がふさわしい測定ツールを選択し,活用ができるようにしていくことが重要だと考えておりまして,そういう観点から各教育委員会には各学校に対する基礎診断の活用方針あるいは支援策などの検討をお願いしているところでございます。
 こういった仕組みとして今回策定させていただきましたけれども,今後この制度の定着を図りながら,より望ましい姿に近づくように継続的に改善していきたいと考えております。
 説明は以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 じゃあ,もう一つということで,平成30年度予算につきまして,林財務課課長補佐からお願いいたします。
【林財務課課長補佐】  それでは,資料7-1,7-2を御用意しておりますので御覧ください。説明は資料7-1で説明させていただきたいと思います。
 まず文部科学省全体の予算のでございますけれども,5兆3,000億円となってございます。このうち,文教関係では4兆400億円となっておりまして,初中関係の予算額につきましては,数字は書いてございませんけども2兆500億円と,文教予算の大体半分を占めるという構造になってございます。
 それから,おめくりいただいて2ページを御覧ください。先ほどのお話にも出ましたように新学習指導要領の円滑な実施や,働き方改革のための予算でございます。義務教育国庫負担金1兆5,200億円を計上しており,内容といたしましては教職員定数の改善,32年度からの小学校英語に対応する専科指導教員の充実として,初年度として1,000人の定数改善を盛り込んでいるところでございます。
 次に3ページでございます。専門スタッフ・外部人材の拡充ということで,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに加え,その下のマル2にございますスクール・サポート・スタッフの配置や,マル3にございます部活動指導員の配置についても今回予算に盛り込んでいるところでございます。
 その下,学校現場における業務適正化,これも先ほど話がありましたけども,こういった業務改善から実践研究ですとか,下のダイヤにございます統合型校務支援システムの実証事業などについても今回新たに盛り込んでいるところでございます。
 続きまして,4ページを御覧ください。済みません,駆け足で申し訳ないんですけども,特別支援教育の関係でございます。ここでは切れ目ない支援体制の充実ということで,下のポツにございますように医療的ケアが必要な児童生徒のための看護師配置1,500人を今回盛り込むなど,所要の経費を盛り込んでいるところでございます。
 また次の5ページでございますけども,下から二つ目のダイヤ,SNSを活用した相談体制の構築として,子供たちの間でよく使われているLINEなどのコミュニケーションツールを使った相談しやすい環境を作るといったことで,今回補正予算と併せまして当初予算についても予算を計上させていただいているところでございます。
 続きまして,ちょっと飛びまして9ページを御覧ください。9ページの上の丸でございます,グローバルな視点に立って活躍する人材の育成ということで,これも小学校英語の対応としまして新教材の整備ですとか,それから在外教育施設への教員の派遣に掛かる経費について所要の経費を計上しているところでございます。
 それから,おめくりいただきまして10ページでございます。幼児教育無償化の関係でございますけども,昨年12月に閣議決定いたしました新しい経済政策パッケージで32年度から全面的に無償化を行うとされているところでございますけども,それまでの間,段階的に無償化に向けた取組を進めるということで,このたび年収360万円以下の世帯について保護者負担の軽減を図るということとしております。
 その下,高校生等の修学支援でございますけども,上の就学支援金交付金につきましては高校生の授業料の関係,その下のダイヤ,奨学給付金については授業料以外の教科書であるとか教材費,学用品費に掛かる経費でございますけども,いずれにつきましても今回,30年度予算につきましては拡充させていただいたところでございます。
 それから11ページ,隣ですけども,これは初中等教育予算ではございませんけども,学校施設の関係で小・中学校の老朽化対策ですとか空調,トイレの改修などについても取り組ませていただくこととしております。
 それから最後,一番下,認定こども園等の施設設備でございますが,私立幼稚園から認定こども園に移行する際に必要となる施設整備について,補正予算と併せて当初予算でも所要の予算を計上させていただいているところでございます。
 説明は以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 ということで,また皆さんから御意見と御質問,今の三つの御報告につきましてということでお願いできればと思いますし,また本日の一つ目,全体からを通してでもよろしいかと思います。今名札が上がっている荒瀬委員,市川委員,大方委員,杉江委員,髙木委員というこの順でお願いしたいと思いますけども,ほかの委員の方はよろしいでしょうか。
 それでは,荒瀬委員からお願いいたします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。高等学校の学習指導要領が告示されまして,いよいよこれからの社会を生きていくために必要な力を高校生全てにどう付けていくかということが,今までもそうでしたけれども,これからもさらに具体化していくことになるというわけでありますが,その中で,先ほど資料6で滝波リーダーから御説明がありまして,なかなかマイクの加減なのか,あるいは社会全体の御理解がなかなか進まないのか分かりませんが,伝わりにくいという高校生のための学びの基礎診断でありますけれども,私,関わりを持たせていただきました関係で少し申し上げたいんですが,これは今回の学習指導要領のカリキュラム・マネジメント,PDCAサイクルを回して不断の見直しを教育活動に対して向けながら,具体的に高校生一人一人の力をどのように付けていって将来社会の一員として幸福に生きていく人に育てていくかという非常に重要な中で,これまでの取組ももちろんよかったわけですけれども,これをさらに充実させるためにどうすればいいのかということで,その基礎資料の一つとして是非各高等学校で使っていただきたいということで実施していこうとするものであります。なかなかこの点が残念ながら全ての高等学校で十分に浸透しているかどうかというのが,浸透した上で,うちは別の方法を使うんだというところはもちろんそれで結構なんですけれども,その点につきまして,これからいろいろと広報も重ねていかなければならないと考えているところであります。学校,教育委員会等はもちろんなんですけれども,それ以上に高校生や保護者の皆さんにも是非この取組については御理解を頂きたいということを切に願っておりますので,そのことをあえて重ねて申し上げておきたいと思いまして発言させていただきました。
 ありがとうございました。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 では,続きまして,市川委員,お願いいたします。
【市川委員】  この基礎診断制度なんですけれども,この前,初等中等教育分科会でもこの話が出たときに,天笠先生の方からなぜこの時期に民間のテストを認定するという話が出るのかということがあって,ちょっとそこで時間もなくて立ち消えになったと思うんです。私が伺いたいのは,これ,答えにくかったらすみません,いわゆる共通テストとの関係なんですね。共通テストとか,要するにセンターがやる試験を複数回行うという話が出ていて,これは実はセンターにとっても結構大変で,大学側もあれを複数やったら,今でも1回でも大変なのにたまらないなという話も結構出ていると。そこでこの話が,私は決して批判的に言っているのではなくて,センターが複数回やるとかそういうことは余り現実的でないと,むしろ民間でしっかりしたテストがあるならば,それにお墨付きを与える形にして,PDCAでもそうですし,学力の認定ということで使ってはどうかというのは一つの考え方かなと思いました。ですから,複数回というのを国とかセンターがやるのは一旦ちょっと棚上げにして,民間でいいものを使いましょうという話だと理解してよろしいのかどうかということです。
【天笠部会長】  後でお答えできることがありましたらお答えをお願いしたいと思います。
 では,続きまして,大方委員,お願いします。
【大方委員】  先ほど本田子育て支援指導官様が御説明いただきましたけれども,資料5に当たります幼稚園における要録の話といたしまして,今回の改訂の中で切れ目のない支援ということで「資質・能力」ということが社会的教育課程として就学前から18歳まで一貫している中で今回のこの要録という位置付けがあります。小学校の方でなかなかこの要録が読んでいただけないという議論がございましたので,今回はこの切れ目のないということと,初等教育における接続という意味も含めて,是非この要録を読んでいただけるようにお願いしたいと思っております。
 そして,資料5の12ページにありますように「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」というのは決して到達目標ではないということの理解も周知いただきたいということと,高等学校の方の学習指導要領改訂でより理数や言語ということの探究が進めば進むほど就学前に学びの種をまいておかなければ,高等学校ではより格差ということにつながると思います。就学前におけるこの「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の意味合い姿,遊び,活動を通してということが,保護者,家庭教育においても伝わることを願っております。
 以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございます。
 杉江委員,お願いいたします。
【杉江委員】  学びの基礎診断については,生徒の学力を測ると同時に教員の教育方法を評価するということにも使えるのではないかなと私は期待しています。この資料の中で右下の出題のところに国・数・英,別紙で地理・歴史・公民・理科と記載されていますが,人文社会科学系の科目は思考力や判断力の土台になりますので,是非むしろ数学等よりは優先して評価方法を開発していただきたいと思います。
 以上です。
【天笠部会長】  髙木委員,お願いいたします。
【髙木委員】  私も高校生のための基礎診断についての意見ですが,基礎診断といいますとどうしても基礎学力が定着しているかどうかというところへ行きまして,地域や学校ごとで下手をすると序列を付ける評価になりはしないかという危惧がございます。そのことは,例えば小・中で行われています全国学力学習状況調査も本来的な趣旨からずれて,県の順位とかそういったことのみが大きく取り扱われてきている,本来的な評価というのは子供たちをよりよくしていくために行うものですので,これまでの評価観で行いますと序列を付けるということ,ここには非常に注意しながら行っていただきたいなと。特にこの診断試験は,先ほどの杉江先生もおっしゃいましたが教える側の教師にこれは戻ってくることで,いかにきちんと教えるかというその授業の内容も問われてくるわけです。ですから,その基礎診断自体が高等教育の授業の見直しと改善になることを期待しております。特にそのことに関しても,この資料6の3枚目の別紙1の3,米印1にありますけれども,評価するということは序列を付けることではないということ,生徒をいかによりよくするか,そのための診断テストであるということを是非強調して,この実施を図っていただきたいと思います。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 今の委員からの意見,質問等々があったかと思うんですけども,これにつきましてお答えできることについてお願いできればと思うんですが,いかがでしょうか。
【滝波高校教育改革プロジェクトリーダー】  それでは,基礎診断の関係で幾つか御指摘というか御質問がございましたので,お答えしていきたいと思います。
 まず,市川先生からの民間のものを使うということでございますけれども,この点については様々な御議論がございましたけれども,最先端にやはり民間の様々な試験等が高等学校の現場の中で相当程度活用されている実態もあるということがございました。それから,私どもの方で試行調査ということで民間事業者の方に委託する形で各実践研究校に協力いただいてその試行調査問題を出題していく,で,解いていただいてその結果の分析までやっていくという事業を調査研究事業の形で行ってみましたけれども,その結果におきましても一通り民間事業者の力で成し遂げることができるということも確認できましたので,そういったことから民間のツールを認定していくという形にして今回の制度作りをしていったということでございます。まずその点が1点です。
 それから,杉江先生の教科の拡大のことにつきましては,これはワーキンググループの中でもかなり御議論がございましたけれども,やはりまずは現在の学習指導要領の中で国語・数学・英語の中に共通必履修科目というものが置かれておりますので,まずはここをしっかりと対応できるようなものとして構築していこう,その上でこの制度は一回作って終わりではなくて,3年後の見直し規定ということもあらかじめ書いてございますので,その実施状況を見ながらその他の教科について拡大できるかどうかということは検討していこうということにしてございます。それについても,また新しい指導要領が先ほどの説明の中にございましたように2024年度から全面実施されることになっておりますので,それに間に合うタイミングでできれば検討を進められればいいかなと考えています。
 それから,髙木先生から序列化につながるのではないかというような懸念があるということの御指摘がございましたけれども,まさにそのとおりでございまして,この基礎診断の仕組み自体は学習指導要領に示す目標に照らした定着度合いを測定するということをうたい,セールスポイントにしておりますので,他校との序列あるいは他者との序列を付けるための診断ではなくて,自分自身がどこまで学力が身に付いているかを自分で確認できる,そして教師の指導改善にも生かすことができる,そういうカリキュラム・マネジメントあるいはPDCAサイクルを回すためのツールとして構築しようというものになりますので,序列化のためのものではないということはおっしゃるとおりでございます。
 説明は以上でございます。
【天笠部会長】  まだまだいろいろあるかと思いますけども,時間が参りましたので,本日の議事はここまでということにさせていただきたいと思います。
 事務局におかれましては,本日の議事につきまして,委員の皆さんからの意見等々を受け止めていただき,これを今後の審議に生かしていただければと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 最後に,次回以降の予定につきまして事務局からお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  次回の教育課程部会の日程につきましては,部会長と御相談の上,追って御連絡させていただきます。また,本日の資料については,机上に置いていただければ郵送させていただきたいと存じます。
【天笠部会長】  それでは,本日はここまでとさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

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