資料3 教員免許更新制の制度設計に係る意見

全国都道府県教育長協議会提出資料

平成19年8月31日

全国都道府県教育長協議会

 教員免許更新制度の導入については、教員の資質向上を図るための様々な既存の制度との関連の中で、昨年度以来、全国都道府県教育長協議会においても、本制度の必要性、実効性について、強い懸念を表明してきたところである。
 しかし、本制度は、本年6月20日の教育職員免許法の改正成立をもって、平成21年4月1日から実施される運びとなった。
 そこで、全国都道府県教育長協議会として、本制度の実効性について依然として様々な懸念が払拭できない中ではあるが、教員免許更新制の制度設計について、可能な限り具体的な提案を行うこととする。

1 【「教員免許更新制」の制度設計にかかわる事項】

<提案1>

 教員免許更新制は教員の身分に直接かかわる制度であり、基本的に国の責任において運用されるべきものであることから、講習開設の認定、講習の免除対象者、講習の修了認定、免許状の有効期間の延長及び修了確認期限の延期の事由等について、不公平が生じないよう、国が明確な基準を設定すること。
 なお、都道府県教育委員会は教員の任命権者であるが、更新講習の開設者は原則として大学とすること。

<提案1>の背景

(1)免許更新講習の修了認定の公平性についての懸念

 大学等が行う免許更新講習の内容、方法は、それぞれの大学の規模や特色によって異なることが予想され、修了認定に関して公平性を欠くおそれがある。

(2)免許更新講習の免除についての懸念

 知識技能及び勤務実績が特に優良な教員は、免除対象者として認めていくべきと思われるが、曖昧な基準では認定について判断が難しく、公平性を欠くおそれがある。

(3)都道府県教育委員会が講習開設者になることについての懸念

 大学における免許更新講習の開設が困難な場合、都道府県教育委員会に対して講習の開設が要請されることも想定されるが、都道府県教育委員会は、教員に対する分限処分等の権限を持っており、そのうえに講習の修了認定等を行う権限を持つことは、好ましくない。

<提案2>

 国は、教員免許更新制の周知に努め、講師等の任用が円滑に行われるよう配慮して制度設計を行うこと。特に、緊急を要する際には、何らかの特例を設けるなど、柔軟な措置がとれるようにすること。あわせて、随時更新講習を受講できるような体制を整備すること。

<提案2>の背景

(1)講師等の確保についての懸念

 学校における教育活動の現状において、講師等の臨時的な教員を一定数任用することは不可欠であり、講師が任用できない場合は、教育活動に大きな支障をきたす。僻地では現状でもその確保に困難をきたしており、有効な免許状を所持する者を常に任用できるか大きな懸念がある。
 また、休職代員等、緊急を要する人事等への対応も懸念される。

2 【「免許更新講習」の実施にかかわる事項】

<提案3>

 免許更新講習の実施に当たっては、講習を受講する教員や、教員が所属する学校の教育活動に支障をきたさないよう、土・日、長期休業中、夜間等に行うとともに、大学による出張講習を実施するなど、多くの受講機会を保障すること。
 また、通信教育、インターネットによる配信、放送大学等での受講を可能にし、修了認定のための試験等についてのみ複数の会場で実施するなど、大学が少ない地域及び遠隔地等の免許更新対象者の受講機会を保障すること。
 なお、障害のある教員の受講については、手話授業や点字教材の使用等、適切な配慮を行うこと。

<提案3>の背景

(1)講習の開設者である大学の受入についての懸念

 更新講習を開設する大学が少ない都道府県では、受講対象者が当該都道府県内において更新講習を受講できなくなるおそれがある。

(2)受講者の講習参加に伴う勤務校への負担についての懸念

 毎年10パーセント程度の教員が更新講習の対象に該当するため、多くの学校において同一年度に複数の教員が更新講習を受講することになり、受講機会が限られると、受講時期が集中し、学校運営や授業等に支障をきたすことが予想される。
 また、土・日、長期休業中等であっても、部活動指導、補充授業等が行われている現状から、学校における教育活動に支障が出るおそれがある。

(3)障害のある教員の受講機会についての懸念

 障害のある教員は、その障害の種類や程度に応じて、特別の配慮がなければ、更新講習の受講が困難である。

<提案4>

 先の国会における附帯決議を踏まえ、講習の受講料をはじめ、交通費、宿泊費等を含めた費用負担の軽減に配慮すること。

<提案4>の背景

(1)受講者の費用負担についての懸念

 講習の受講にかかる交通費、宿泊費等は、特に、大学が少ない地域及び遠隔地等の受講者にとって大きな負担となる。

<提案5>

 免許更新講習の実施に当たり、10年経験者研修について、そのあり方も含めて、見直しを検討すること。

<提案5>の背景

(1)免許更新講習と10年経験者研修の関係についての懸念

 免許更新講習の導入に伴い、10年経験者研修については、免許更新講習との内容の重複や講習にかかる教員及び学校の負担の増加が懸念される。

3 【「免許状更新事務」にかかわる事項】

<提案6>

 新たに導入される教員免許管理システムの設計に当たっては、都道府県教育委員会における業務の効率化・合理化の観点から、原簿管理だけでなく、免許状の授与・更新等の申請、免許状の授与・更新通知などの一連の事務手続きをシステム上で行えるようにするとともに、すでに都道府県教育委員会が構築している免許管理、人事管理のシステムとの連携を図ること。
 あわせて、免許管理センター(仮称)の設置(別紙参照)等、従来の免許事務も含めて、免許の授与・管理を全国レベルで一元的に行うシステムの構築も進めること。それに伴い、授与・更新など免許にかかわる事務は国が行い、都道府県教育委員会は教員の任用・人事管理のみを行うなど、国と都道府県教育委員会の役割分担が明確になるような制度を、法改正を含め検討すること。

<提案6>の背景

(1)教員免許管理システムの効率的な活用についての懸念

 現在、国において進められている一元的な免許管理システムとすでに各都道府県教育委員会で構築されている免許管理システム、人事管理システム等との連携が課題となる。
 また、免許の授与権者と免許管理者が異なる場合や複数所持する免許ごとに授与権者が異なる場合など、都道府県を越えてデータを管理すべき事例が数多く考えられ、この機会に、教員免許の授与、管理のあり方における国と都道府県教育委員会の役割分担を改めて見直すべきである。

<提案7>

 教員免許管理システムの導入に当たり、各都道府県教育委員会が管理している原簿データを誤りなく移行、統合するとともに、移行事務、現況調査、システムの維持及び運用に係る費用、国のシステムとの連携を図るための各都道府県教育委員会の免許管理、人事管理システムの修正等について、都道府県に新たな負担とならないよう、国が財政措置を行うこと。
 また、免許更新制の実施に伴う都道府県教育委員会における事務の増加量について明確にするとともに、負担増に対する人件費等の財政的な措置を行うこと。
 さらに、免許管理者である都道府県教育委員会が直接把握していない市町村立高等学校や私立学校(幼稚園を含む)の教員の現況情報の収集方法について配慮すること。

<提案7>の背景

(1)教員免許更新制導入に伴う事務負担の増加についての懸念

 都道府県教育委員会においては、免許管理者、授与権者としての新たな事務(私立学校の教員やペーパーティーチャー等を含む免許更新事務、免許状紛失者等に対する免許状授与証明書の交付事務等)、県立学校教育職員および県費負担の教育職員の任命権者としての新たな事務(免許の有効期間や更新講習の受講状況の管理事務、免許状が失効した教員の任免事務および欠員の補充事務等)など、かなりの量の新規業務が発生すると想定される。
 また、原簿データのシステムへの移行作業後において、現況と原簿データでは、本籍又は氏名の変更がなされていないなど、一致しないものが多いため、現況調査を行い、原簿データとの調整が必要と考える。こうした新たな負担への対応が懸念される。

(2)市町村立高等学校や私立学校における現況の把握に対する懸念

 市町村立高等学校や私立学校(幼稚園も含む)については、都道府県教育委員会が直接把握していないため、教員の退職、異動、改姓、本籍地の変更、新たな免許取得などの現況を収集できる仕組みになっていない。

4 【免許更新制に伴う今後の課題にかかわる事項】

<提案8>

 分限免職処分を受けた者の教員免許状の失効については、今回の法改正で定められた。しかし、免許更新制により、免許状が失効した教員の地方公務員としての身分に関する規定が整備されておらず、今後、都道府県教育委員会では、任用免職についての課題が残されているため、法整備を含めた検討をすること。

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

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