資料7 平成18年度教員免許課程認定大学実地視察について(案)

中央教育審議会初等中等教育分科会
 教員養成部会

1.実地視察の目的

 教員免許課程認定大学実地視察の目的は、教員免許課程認定大学実地視察規程(平成13年7月19日教員養成部会決定)に基づき、教員の免許状授与の所要資格を得させるための大学の課程(以下「教職課程」という。)の認定を受けた大学について、認定時の課程の水準が維持され、その向上に努めているかどうかを確認することである。

2.概要

(1)視察大学

平成18年

  • 6月13日 千葉大学・敬愛大学
  • 6月22日 三重大学
  • 6月23日 皇學館大学
  • 6月29日 名桜大学
  • 6月30日 沖縄女子短期大学・沖縄県立芸術大学
  • 7月4日 天使大学・北海道教育大学
  • 7月6日 奈良女子大学・奈良教育大学
  • 7月10日 東京学芸大学・創価大学
  • 7月13日 神戸海星女子学院大学・神戸女子大学
  • 7月16日 東京福祉大学
  • 11月29日 鳴門教育大学
  • 11月30日 徳島文理大学・徳島文理大学短期大学部
  • 12月4日 エリザベト音楽大学・安田女子大学
  • 12月7日 群馬大学

平成19年

  • 1月18日 常葉学園大学・大阪樟蔭女子大学
  • 1月19日 桜花学園大学・近畿大学
  • 2月6日 鹿児島大学
  • 2月7日 鹿児島純心女子大学
  • 2月8日 秋田大学
  • 2月9日 山形大学
  • 2月15日 金城大学
  • 2月16日 金沢大学

(計32大学)

(2)全般的事項(評価の概要)

 全体としては、概ね、教育職員免許法、教育職員免許法施行規則及び教員免許課程認定審査基準を満たしていた。
 しかしながら、一部の大学においては、教育課程や教員組織について、認定時の基準が維持されておらず、早急に改善が必要であったため、厳重な指導を行うとともに迅速な対応を求めた。例年このような大学が見受けられるが、教職課程を法令や審査基準に照らして適切に運営することは、自ら進んで教員養成を行う大学の当然の責務であり、社会に対する最低限の約束である。「今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申)」(平成18年7月11日)(以下「18年答申」という。)においても提言されているように、実地視察のみならず、教職課程の事後的・定期的なチェックを行い、必要な改善を促す体系的な仕組みを整備することが重要である。
 他方、評価できる取組事例としては、例えば、より実践的な指導力を養成するため、学部と学校現場での学修を交互にかつ段階的に実施している往還型カリキュラムを編成するなど、意欲的な教員養成の取組を行っている大学が見受けられた。

(3)個別的事項(個々の具体的評価、指摘・指導等)

1.教員養成に対する理念等

 18年答申においては、教職課程の質の維持・向上を促すため、教職課程の認定に係る審査について、今後は、大学の教員養成に対する理念や教職課程の設置の趣旨、責任ある指導体制等を審査対象とすることが適当である旨提言されている。
 このことを踏まえ、実地視察大学の運営状況を確認したところ、大学として、また、学部・学科としての教員養成に対する理念が必ずしも明確ではない大学が多く見受けられたところである。これらの大学に対しては、大学だけでなく、学部や学科ごとにおいても、教員養成カリキュラム委員会などを通じて、教員養成に対する理念の構築だけでなく、その理念を十分反映させた教育課程・教員組織の編成及び教職指導体制の確立に努めるよう、学内における十分な議論の機会を恒常的に確保するなど、教員養成に対する全学的な取組に努めるべきであることを指摘した。

2.教育課程について

ア 教職に関する科目等について

 科目の開設状況は、全体的には、法令や審査基準を満たしていた。
 しかしながら、「教職に関する科目」については、法令に定められている「各科目に含めることが必要な事項」が網羅的・体系的に含まれているかどうかを確認したところ、多くの大学に対して、以下のように指摘した。

  • 「教職の意義等に関する科目」について
     「進路選択に資する各種の機会の提供等」が含まれていない。このため、当該科目において、学生に対して、自らの進路に教職を選択することの可否を適切に判断することに資する各種の機会の提供など(例:現職教員との意見交換会など)を含めるように求めた。
  • 「教育の基礎理論に関する科目」について
     「幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」の科目において、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」が含まれていない。
  • 「教育課程及び指導法に関する科目」について
    • 本科目は、法令の趣旨をふまえて、小学校学習指導要領・中学校学習指導要領・高等学校学習指導要領又は幼稚園教育要領に掲げる事項に即し、包括的な内容を含むものでなければならない。このため、指導法に関する科目(各教科の指導法、道徳の指導法、特別活動の指導法)については、当該科目で使用する教科書又は参考書において、これらの学習指導要領や幼稚園教育要領を使用するように努めることを求めた。
    • 「教育の方法及び技術(情報機器及び教材の活用を含む。)」の科目においては、情報機器の活用や教材の活用が全て含まれていなかったり、対照的に、これらの内容が多く含まれており、教育の方法及び技術が若干(講義回数でいえば1回・2回程度)しか含まれていない科目が見られた。このため、当該科目において、バランスのとれた包括的な内容にすることを求めた。
  • 「生徒指導、教育相談及び進路指導等に関する科目」について
     「教育相談(カウンセリングに関する基礎的な知識を含む。)」の科目においては、カウンセリングの専門的な理論に特化した内容になっている科目が多く見られた。このため、カウンセリングに関する基礎的な知識を含み、学校教育現場の実際の場面を想定した内容にすることを求めた。
  • 「総合演習」について
     「総合演習」についての指摘は、この科目の創設以来、毎年度指摘を行っており、未だ科目の趣旨が十分理解されているとは言いがたい状況にある。
     総合演習の趣旨・目的は、人間尊重・人権尊重はもとより、地球環境、異文化理解など人類に共通するテーマや少子・高齢化と福祉、家庭の在り方など我が国の社会全体に関わるテーマについて、教員を志願する者の理解を深め、その視野を広げるとともに、これら諸課題に係る内容に関し適切に指導することができるようにすることにある。その内容には、上記のような諸課題のうち、1以上のものに関する分析及び検討並びにその課題について幼児、児童又は生徒を指導するための方法及び技術を含めることが求められている。
     しかしながら、当該科目について、「総合的な学習の時間」の目標、内容、方法等についての理解を図ることが内容となっていたり、同科目で取扱うテーマ・課題が限定的になっており、学生がテーマを選択することができないような科目設定を行っている大学があった。このため、上記の設置趣旨を再度説明し、当該科目の目的や内容をすみやかに検討するように指摘した。

 これらの「教職に関する科目」の指摘内容については、平成18年度より課程認定申請を行う大学の申請書の一部として、「教職に関する科目」の全ての科目のシラバスを提出する際に、各大学において確認するように求めており、法令に定められている「各科目に含めることが必要な事項」を含んだ科目であることを確認した上で、科目を開設するように十分注意してほしい。

 また、シラバス(講義概要)については、各科目の様式が統一されていないものや、統一された様式であるものの担当教員によっては記載内容に差異が見られるものがあった。さらに、複数教員が担当する科目においては、各教員の役割分担などが明記されていないものがあるなど、不十分なシラバスが見られた。シラバスとは、学生と大学との間のいわば履修に当たっての契約のようなものであり、学生に対してわかりやすく丁寧なものとなるよう、科目の目次だけでなく、テーマや到達目標、各回ごとの内容を明記するなど、改善を図るように指摘した。

イ 教育実習について

 実習生を受け入れる学校は、大学によって、附属校・協力校・出身校など異なっているが、いずれの場合においても、大学の担当教員が、実習生の状況を把握するためにできるだけ実習校に出向き、実習校の教員と連携・協力しながら、実習生に対する適切な評価・きめ細かな指導を行うように努めることを指摘した。
 また、実習生の受け入れにあたって、実習校やその所在する都道府県教育委員会・市町村教育委員会との間で連絡調整を行う教育実習連携協議会のような組織を活用しながら、大学と実習校が実習生の受け入れを円滑に行っている大学があったが、このような取組は18年答申でも提言されており、評価できる。
 一方で、大学内の一部の学部において取り組んでいるが、他学部においては実習校任せにしているなど、学部間において取り組み状況に差異が見られる大学もあった。当該大学に対しては、学部間の連絡調整を行う組織を設けて、大学が全学的に責任を持って、実習生に対して、丁寧な指導を行うように指摘した。

3.教職指導・介護等体験等

 学生に対して、各学年ごとに段階的な履修計画を立て、指導教員制度やクラス担任制度などを設けることによって、きめ細かな教職指導体制を築いており、教員志望への高い動機付けを行っている大学があった。
 今後は、より充実した教職指導が実践されるよう、教職課程の科目内容や学内の指導体制を調整する組織として、教員養成カリキュラム委員会などを設けて、教職課程の「教職に関する科目」の教員だけでなく、「教科に関する科目」の教員も含めて、全学的・横断的な教職指導体制を築くなど、一層の充実を求めた。
 介護等体験については、体験期間中に大学の担当教員が介護等施設を訪問するなど、きめ細かな指導を行っている大学が見られた。

4.免許状取得状況及び教員就職状況について

 大学が置かれている都道府県教育委員会の教員採用担当者を、当該大学へ招聘し、学生に対して、同教育委員会において求めている教員像などを紹介する機会を設けているなど、学生の教員への就職意識を高める上での効果的な取組を行っている大学があった。
 一方で、多くの学生が教員免許状を取得していることに比して、就職状況が芳しくない大学については、学生のニーズに応えるような就職支援体制を構築することを求めた。

5.施設・設備の状況について

 各大学ともに、教員養成に必要な施設・設備は概ね整備されていたが、一部の大学では十分に活用されていない状態にあり、教職資料コーナーを設置するなど、教職関連資料等を有効に活用するための工夫を求めた大学があった。
 一方で、実際の学校の教室を模した「授業研究用の教室」を設置し、ビデオや高機能マイクなどを使用し、模擬授業や教育実習の事後指導などにおける教育効果を高める工夫をしている大学があった。

(4)総括的事項(指導、助言等の概要)

 今年度の実地視察大学について、概ね、法令及び審査基準を満たしていた。
 しかしながら、教員養成に対する理念を、全学として、あるいは学部・学科として明確に持っていないため、大学がこのような理念や教職課程の設置の趣旨などを明確に持ち、その理念を十分反映させた教育課程・教員組織の編成や教職指導体制の確立に努めるよう、学内における十分な議論の機会を恒常的に確保することを求めた。
 課程認定大学においては、学長や各学部長が、18年答申はもとより、これまでの各種答申で提言されている内容を再度確認し、教職課程における不断の見直しを行い、責任を持った教職指導体制を構築することを強く望みたい。
 実地視察は、教職課程の認定を受けた大学が、課程の水準を維持し、その向上に努めているかどうかを確認するための重要な手段である。教職課程を法令や審査基準に照らして適切に運営することは、自ら進んで教員養成を行う大学の当然の責務であり、社会に対する最低限の約束であることを、全ての課程認定大学はいま一度十分認識することが求められている。
 今年度の視察の対象とならなかった大学も含め、全ての課程認定大学が、本実地視察報告書の指摘内容を理解し、教職課程の質的水準の維持と一層の向上を図るための取組を進めていくことを期待する。

平成18年度実地視察大学実地視察報告書(案)

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

Adobe Readerのダウンロード(別ウィンドウで開きます。)

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、まずダウンロードして、インストールしてください。

-- 登録:平成21年以前 --