資料2 中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会(第42回)議事要旨(案)

1.日時

 平成18年4月21日(金曜日) 10時~12時30分

2.場所

 東京會舘 11階「ゴールドルーム」

3.出席者

 梶田部会長、安彦委員、天笠委員、石原委員、大橋委員、小原委員、門川委員、川並委員、河邉委員、甲田委員、高倉委員、田村委員、角田委員、渡久山委員、永井委員、中嶋委員、西嶋委員、野村委員、平出委員、北條委員、宮﨑委員、八尾坂委員、山極委員、山﨑委員、横須賀委員、渡辺委員

文部科学省関係者

 結城事務次官、樋口政策評価審議官、山中審議官、徳永審議官、磯田審議官、戸渡教職員課長、浅田専門教育課長、勝野視学官、新田室長補佐 他

4.議事

 (1)教職実践演習(仮称)のカリキュラムイメージについて
 協力者グループ代表の山極委員から、資料3に基づき説明が行われた後、自由討議が行われた。主な発言は以下のとおり。

委員
 資料3のp.9の内容は、全て同じ重さで捉えられているのか。学校現場には、若い教員や熟練の教員がいるが、責任感や使命感、教育愛といったものはベースになるものであり、これがなければ、授業がうまくても力を発揮できない。若い教員については、教科指導力は学校現場で育てていくものであり、このようなこれから身に付けていくものとベースにあるものとでは、重さが違うのではないか。有機的な統合された能力だと理解しているが、この辺りは重要なので、うまく表現できないものか。

委員
 教職実践演習(仮称)は1.使命感、2.総合的な人間力、3.児童生徒理解、4.授業力まであるが、実際に教員や校長に聞くと、最近の教員は笑顔がなかったり、子どもと一緒に遊ばないなど、指導以前の問題がある一方、授業力不足も言われているので、重点をどこに置くのか難しい。例えば、中学校・高校では、授業力にウェイトがあるが、小学校では人間的な魅力にウェイトをかけるなど、確認指標で評価する場合には、ある程度ウェイト付けをするなど、どのようにするのか検討していきたい。

委員
 p.3の3には「幼児」が含まれているが、p.6の9.留意事項では幼稚園教員が対象になっていないので、その理由を教えてもらいたい。

事務局
 1~4は、中間報告においても、幼稚園・小学校・中学校・高等学校の教員を念頭に置いており、基本的には、幼稚園・小学校・中学校・高等学校の教員免許状を取得する全ての者に当てはまる考え方である。幼稚園は教科がないので、4のようにそのまま幼稚園に当てはまるかどうかという部分もあるが、含められるべきところは幼児児童生徒という形で含めて整理したい。

委員
 幼稚園は「領域」なので、p.1の1.の4も「教科・領域等」のように整理してもらいたい。

委員
 大学でどのように教職実践演習を進めたら良いか、具体的にイメージできる内容である。履修時期を採用試験を終えた後の4年次後期と設定したのも良い。採用試験に合格した学生も、卒業までの中だるみの時期であり、大学全般における教育面から見ても、このような統合的な授業が入ることは、望ましいことである。

委員
 教職課程全体に影響を与える教職実践演習(仮称)を新設することにより、教職課程全体がどのようになっていくという議論はあったのか。例えば、この科目を新設することに意義があるから、他の科目はそのままにして、科目を追加するという考え方なのか、教職課程の一部分を再組織化するのかといった、カリキュラムをつくっていく中での、科目を新設する基本的な考え方や将来的な見通しについて検討がなされたのか。

委員
 実際に、養護学校教員免許状を取得する学生を中心に、教職実践演習(仮称)のようなものを実施しており、事前指導として、ロールプレイングを中心とした研究授業を行い、現場での教育実習に備える対応をしていて、好評を得ている。教育実習のあり様を大きく変える点で、教職実践演習(仮称)の持つ意味は大きいので、今後の教育実習の仕組みは変えた方が良いのではないか。教職実践演習(仮称)を4年次後期に置く意味は大きいが、教育実習で現場のあり様を学ぶことも大きいので、それとの関連付けをうまくしていく必要がある。

委員
 教育実習の特に事前・事後指導との関係については、p.7にあるように、教職実践演習(仮称)を「教職に関する科目に位置付け、教育実習との関連を重視するという考え方はどうか」という意見の他、教育実習の事後指導等で十分ではないかという意見もあったが、一つの領域の中で指導するために、単位数と新たな領域を設けるということである。教育実習については、教職実践演習(仮称)との関連も考慮することは当然であるが、教育実習の評価がきちんと行われていないと思われるため、教職実践演習(仮称)についてきちんと評価していくことが必要である。教職実践演習(仮称)が新しい領域で入ってきた時に、教職課程の全体がどのようになるのかという議論はあったが、これは教職の在り方そのものになり、協力者グループで扱う検討の範囲外であったので、多くの時間を取って議論はしていない。

委員
 教職実践演習(仮称)によって、既存の教員養成の在り方が変わってくるのではないか。教職実践演習(仮称)に収れん・統合化された形で、意識的に教科専門科目や教職専門科目の教員が、それぞれの授業において変わらざるを得なくなってくる。中間報告までは、総単位数を増やすことに慎重だったが、やはり2単位は必要である。演習は4時間という意味の2単位なのか。少人数で効果を上げるとなると、数百人も教員養成を行っている大学では、どのような形で教職実践演習(仮称)を行えるのか、シミュレーションを行ってみる必要がある。教職実践演習(仮称)は、教科専門科目や教職専門科目の教員が担当すると思われるため、教職実践演習(仮称)と教科・教職科目とのつながりができてくるのではないか。

事務局
 1単位の授業時数の計算方法については、大学設置基準により、講義及び演習は、15~30時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって1単位とすることとされている。

委員
 現在の教育実習は、大学における学修と、教育現場に出てからの初任者研修的なものの両面を含んでいると思われ、どちらかと言うと、大学における学修との関係の方が強いが、学校現場との関係をもっと強く打ち出せないか。この3年くらい、学校の仕組みを勉強できるように、採用試験の合格者のうちの希望者を、1~3月の間に市内の学校に派遣し、PTAや職員会議、教育委員会の見学、救急救命の方法等を体験させているが、学生に評判が良く、学校側の評判も良い。また、4年次後期の中だるみについての意見があったが、学生は中だるみと同時に教育現場に出る不安感も持っている。その時期に現場に出て、実際に行われていることを見ることは、学生に安心感を与える。資料3の内容は良いが、もう少し大学から外へ出て行く可能性についても踏み込んでもらえると良いのではないか。

委員
 採用試験では、現行の教職課程で欠けているものを見るために、指導案作成や模擬授業、集団討議を重視してきた。京都市では、採用内定を早め、採用決定者に7日間の採用前研修を行い、学校現場に派遣して、実践と理論の融合を行わせている。教職実践演習(仮称)では、現場経験者が大学でどれくらい関わることができるのかが難しい。15~20人を1つのチームとして対応していくことは大事だが、それだけの教員がいるのか。学校現場と研修センター、大学が連携すれば、有意義なものになっていくのではないか。京都市では、今年4月に教員養成支援室を立ち上げ、大学と学校現場の融合した支援制度をつくることや、教師塾をつくることを行っている。大学の良さと、学校現場の実践の良さを融合する取り組みを行っていこうということでスタートしているが、求めているところは、教職実践演習(仮称)と同じである。大学だけではだめだし、学校現場だけでは無理なので、この両方の力を融合させていくものになれば良いのではないか。

委員
 4年次後期であれば、学生は卒論に力を入れなければならない時期でもある。教職実践演習(仮称)は、今まで欠けていたところを補うニュアンスが強かったが、単位が増えてきて、重み付けが変わってきた。負担が重くなっても良いが、卒論やその他のものと関連付けて、例えば、教職実践演習(仮称)の単位の一部が卒論の一部にもなるとか、理論的な卒論と教職実践演習(仮称)のレポートの2つを合わせて、1つの融合された形で残るということも検討してもらいたい。

委員
 p.8~9は、小学校の教員養成をイメージしている感じがする。p.8の図では、教職実践演習(仮称)が大きく図解されており、何十単位もある感じを受ける。中学校・高校になると教科に関する科目が増えてくるので、実際には2単位となれば、教職に関する科目の一部でしかないのではないか。p.9に、教職実践演習(仮称)の具体的展開例が示されているが、2単位でこれらのことを消化するにはどのようにすれば良いのか。p.3の1~4を2単位の教職実践演習(仮称)だけで消化するのは困難である。科目を新設することで、教科や教職の科目の在り方が変わってくるという期待感もあるが、どのような形になるのか。教育実習との関係も含めて、小学校・中学校・高校の教員養成のイメージをもう少しはっきりさせてもらい、その中で教職実践演習(仮称)がどのような意味を持ち、どのくらいの有効性を持つのか、もう少し具体的に示してもらいたい。

事務局
 教職実践演習(仮称)は、各科目で教育してきた中で、大学の責任において教員として必要な資質形成が行われているかどうかを最終的に確認するための科目であり、この科目で全てを教え込むものではない。

(2)教職大学院におけるカリキュラムイメージについて

 主査の横須賀委員から、資料4に基づき説明が行われた後、自由討議が行われた。主な発言は以下のとおり。

委員
 資料4で言われている高度専門職業人について、総合的で何でも理解している専門職のイメージが強い。学校で一番の問題は、教員を束ねて、教育機関として組織化し、トップとしてきちんと指導できる校長等の管理職の脆弱さである。今の校長は、教諭だけの専門性で職に就いているが、校長が各学校の授業や人事、財政についてもきちんと理解し、判断できるという意味での校長職・管理職を養成していくことが期待されている。学校現場に行くとあいさつもしなくなり、色々なことで絡めとられていく風土もあるため、そのような風土を変えていくために、校長の力量を高め、一般教員からも尊敬され、自分たちとは違う専門性を持って、きちんと指導できる者を養成してもらいたい。新教育大学として現職教員の資質向上に関する大学院大学をつくったが、あまり効果がない。効果のない内容を行っているし、2年間現場を離れることによって、現場に戻ってもうまく対応できないからである。教職大学院には、今の日本の教育をきちんと支え、地域や一般教員からも尊敬され、自分たちとは質的に違う者が、学校に対してきちんとした理念や指導力を持ち、組織化していける、そういう層を育てられるカリキュラムや指導体制を整えてもらいたい。

委員
 学級経営と学校経営については、もう少し詰めた検討が必要ではないか。p.28にある一般目標と到達目標の部分は、学校経営の内実に当たる部分がある。地域との関係をつくっていくことや、教職員の自覚を促すことで、学級経営のエキスパートが学校経営のエキスパートになることもあり得るが、学級経営のエキスパートが、必ずしも学校経営のエキスパートにはつながっていないこともあり、それは教員の世界でも学校の世界でも両方あり得るので、何気なくつながっているところは、もう少し検討する必要があるのではないか。

事務局
 教職大学院そのものの性格については、中間報告では、教員そのものが高度専門職業人であると捉えており、この教員養成の改革の一環として、教職大学院制度の創設を念頭に置いている。教員養成に関する専門職大学院が色々あることは想定しているが、教職大学院は中核的な教員を育成していく専門職大学院として特別な制度設計を行うものであり、ここでは一般教員に限定し、義務教育である小学校・中学校の教員を念頭の中心に置いている。中間報告でも、今回の教職大学院の他に、教員養成に関連する色々な専門職大学院はあり得て、その中には、校長や教頭等の管理職に必要なマネジメント能力に特化した専門職大学院もあり得ると示しており、それは、教職大学院とは別の専門職大学院として各大学で構想されるものと整理されている。

委員
 教職大学院と新教育大学の大学院との区別はどのようになるのか。教職大学院をつくる時の議論の多くに、スクールリーダーの養成が挙げられたが、そうなると、一般にはスクールリーダーを養成する大学院だから、このような教職に特化した専門職大学院が必要だという理解が一方にあったのではないか。

事務局
 中間報告のp.22において、スクールリーダーとは、例えば校長・教頭等の管理職など特定の職位を指すものではなく、上記のような社会的背景の中で、学校単位や地域単位の教員組織・集団の中で、中核的・指導的な役割を果たすことが期待される教員であると限定して記述している。専門職大学院制度を活用する意味として、これまでの新教育大学の大学院は、現職教員を受け入れて再教育するという意味では新しい構想の大学院大学であったが、その教育システムとしては従来の大学院と質的・構造的に変わりがなかった。専門職大学院は、大学院なので研究を除外するわけではないが、基本的には教育活動に特化した形で行われ、そのことに関して教員がファカルティ・ディベロップメントの形で相互に研修し、打合せを行い、組織的な活動を行うことが義務付けられている。その上で、専門職大学院には実務家教員の必置が義務付けられ、一般には3割以上だが、教職大学院では4割となっているほか、5年に一度の事後評価が義務付けられている。これらの意味で、専門職大学院制度の持つ、教育機能に特化した優れた点を教員養成に活用しようということが、教職大学院のねらいである。

委員
 今の学校管理職に対する感想や批評は同意見であり、そうなった理由は、大学における教員養成の不十分さと、教育委員会における管理職の養成プロセスに足りない部分があることもある。管理職が、教育内容やソフト面について十分に経験したり、研究するプロセスを経ないで、学校管理に習熟するだけでできてきた時期があるのだろう。今の管理職の問題は、教員の中位層に教育実践に十分打ち込んで力を付けていく層がないところにあるのではないか。スクールリーダーには、学校管理職を指す考え方もあるが、教員として教育のソフト面をしっかり対応する、学校や一定地域におけるリーダー的役割を果たす教員がつくられていかなければならない。指導主事が単に行政の管理者候補になっていることは問題であると考えている。少し時間がかかるかもしれないが、教育委員会と大学が、教員の中位層に教育実践を踏まえる力を持った層をつくり、それが学校管理職を本格的につくり上げ、日本の学校を建て直していく基になってくるのではないかと考えている。

委員
 新教育大学の大学院と教職大学院、教育学研究科の3つが混乱して、誤った理解があると、特に対社会的に問題なので、これらの区別をきちんと明確に示さなければ、学生もどこに進めば良いのか、悩むこととなる。教職大学院修了者の学位は教育学(専門職)だが、法科大学院の場合は法務博士で、国際的にも通用性があるので、これから日本の教育も国際的に通用性を持たなければならないとすると、学位の在り方も含めて、輪郭を明確にすることが必要ではないか。

委員
 輪郭については既に中間報告に示しており、それぞれ性格が異なる。

委員
 校長職に就く者の養成については、イメージとしてはあったし、ワーキンググループでも意見が出ていた。p.27に、学校経営の実践と課題という科目で挙げているので、全く扱わないということではないし、大学によっては、この点にウェイトを置いて授業を展開する可能性もあるので、別に挙げて論じたり、例示したりする必要はないのではないか。

委員
 教職大学院の入学者には、ストレートマスターと現職教員、他学部を卒業して免許を取得していない者の3種類がおり、現職教員に学校経営の領域を授業するのと、ストレートマスターに授業するのでは違うので、その点は何らか補う必要があるのではないか。

委員
 教職大学院に大きな期待を寄せている。今の大学院が学校現場から歓迎されていない反省に立って、理論と実践の融合、大学院と学校現場の融合をしていくべきである。大学の附属学校で教育実習を行っても、一般の学校に行けば自信を失うので、多様な子どもがいる公立学校で通用する教育実習でなければいけないので、公教育と大学院との融合を第一に考えて欲しい。一番良いものがこれだと決め付けず、新しいアイデアを柔軟に取り入れながら、色々な実践の形があっても良いのではないか。4割が実務経験者というのはありがたいが、荒れたクラスや学校を建て直した教員がそれほど多くいるわけではなく、教員を辞めて大学院教員になるわけにもいかないので、そのような第一人者的な教員が、現場で実践しながら大学院の教壇に立つことを認めてもらえば、学校現場と大学院の融合ができる。優れた教育実践者や専門家がスクールリーダーになり、いずれそのような者が管理職になっていくのだから、あまり管理職の養成はイメージしていないと言わなくても良い。現在、京都では、教育大学を中核にしながら、私立大学や教員養成系大学と連携して、連合教職大学院をつくろうとする動きが出ており、京都市の教育センターや学校をキャンパスにしてもらおうと考えている。熱意あふれる教員が協力して、このような融合を進めていきたいと考えているので、専門性の高い者だけでなく、幅広い人材を養成できるものになってもらいたい。

委員
 多くの管理職は頑張っていると認めてもらいたい。力の及ばない管理職がいるとすれば、それは日本の教育制度の歴史の中で、仕方なくつくられてしまったところも否めないので、全ての責任を校長や管理職に押しつけるのではなく、これまでの教育の流れや、教育行政について責任を取りながら、これからの学校教育をどのようにしていけば、どもにとって良いものになるのかという視点で考えていただきたい。知識ばかり豊富な教員が教職大学院に入学しやすかったり修了しやすくなるのではなく、現場で苦労し、成果を上げようとしている者が大学院に通えるようなシステムにしていかなければならない。学校を支えるのが忙しく、教職大学院に通いたくても通えない一方、サラリーマン教員のような者が教職大学院に通えるとなっては本末転倒なので、将来、リーダーになってもらいたい者が通えるようなものとしてもらいたい。そのためには、大学院だけで教職大学院を修了するのではなく、例えば、地域の教育センター等での実践についても、理念に適っていれば認めても良いのではないか。それらで修了した単位が上積みされて、教職大学院を修了できるようにできないか。現場で苦労している教員にとっては、授業の開設時期がネックになるので、そのようなことについても議論してもらい、意味のある教職大学院にしてもらいたい。

委員
 先週、兵庫教育大学で教員を集めて研修会を行ったが、ケーススタディーやフィールドワークをどのように重視するかといった課題が出ており、校長に関する意見がそれにつながる。同じ校長職でも県によって異なり、必要とされる資質も違うので、それをケーススタディーでどのように行っていくのか話題に出ていた。新教育大学については、色々な批判があるが、現在、改革に取り組んでおり、兵庫教育大学では、ここ10年以上、派遣教員は100人くらいだったが、今年は150人を受けている。これまでは、現場を嫌って大学院に学びに来る者がいたが、昨年度からは、将来の人事計画に基づき、教育委員会がピックアップして教員を派遣することを始めた。教職大学院も創設されれば、こうした動きを念頭に置いて検討しなければならない。

(3)教員免許更新制の導入に関する主な論点について

 事務局から、資料5~8に基づき説明が行われた後、自由討議が行われた。主な発言は以下のとおり。

委員
 小学校や中学校、高校の教員の専門性とはどのようなものかが問題になっているが、これについては、これまでの歴史を踏まえながら議論を深めなければならないと言われながら、今日まで来ており、各学校種の専門性の見通しが、更新制との関係で必要になってくる。中間報告で示されたように、指導力不足教員や教員の人間性の問題があるため、公証性を与えるために更新制を導入した方が良いのではないかという議論があった。分限処分を受けるような教員に持たれた子どもは、その時点で犠牲者となっているので、そのような子どもをつくらないために、免許を更新することによって、教員が自信と誇りを持って教壇に立つことができるようにすべきであるというのが、更新制の理念である。現在、教員に対する信頼や尊敬が失われている中で、教員が社会から尊敬・信頼され、立派な教員として教壇に立つことができると評価されるような公証性が更新制の中にある。そのことについて、中間報告ではまだ深く示せていないという批判があるかもしれない。それをどのように具体化していくのか、議論してもらいたい。

委員
 更新制で問題となっているのは、現職教員への対応をどうするかだが、これから20~30年先は、現職教員が学校教育の中核になっていくし、指導力不足教員は、40歳台後半に多くいると言われているので、現職教員への対応を何もしないことが、社会的な理解が得られるのか。現職教員を対象に含めれば、対象者数が膨大になるし、各県の免許管理体制や国による免許管理システムの整備といったことも必要であるが、何らかの講習は課すべきである。最初の有効期限を5年とする案があるが、更新制は、最新の知識・技能にリニューアルするためのものであるのに、最新の知識・技能を身に付けた者の有効期限が5年というのは違和感がある。新卒者の正規採用が採用者全体の約25パーセント程度で、非常勤講師を経験してから教員になる者も多いため、最初を5年とすると、採用試験や初任者研修と重なる可能性があるので、一律に10年で良いのではないか。講習内容は、質が高くなければならないが、実施機関によって差があるのは良くないので、更新講習の認定基準や修了目標、実施内容等は、国が定めておく必要があるのではないか。

委員
 中学校や高校では、講師が授業を担当していることが多いが、講師に対する研修制度がないため、資質に差がある。その意味では、現在、教壇に立っている者のリニューアルをすることは必要であるので、現職教員への更新制の適用を視野に入れていくべきではないか。

委員
 この変化の激しい時代に、専門性の高い教職に従事する者が、10年に一度、自らの誇りとして免許を更新していくというように、前向きに受け止めて、主体的に研修を受けて、更新していく形になれば良い。教員の多くは、熱心で頑張っており、そのことが、国民や保護者に信頼感を与えていくが、不信感があれば、教育にとってマイナスになる。コミュニティー・スクールや教員の外部評価システム等に取り組めば、教員は頑張ってくれているという保護者の声が出てくる。更新制をうまく運用していけば、教員の専門性やモチベーションを高め、保護者や市民の信頼を得ていくことにつながるのではないか。現職教員の免許状は既得権なので、更新制の適用を除外するとすれば、保護者の不信につながるので、今回のような制度であれば、現職にも適用したら良いのではないか。更新されない者は、直ちに教壇から降りなければならないが、例えば、2年の猶予を置いて、正規担任の下、補助教員的なことをして、その間に研修を受ければ更新できるといった弾力性のある手立てが必要ではないか。現場で実践して、優れた実績を上げている者が、基礎基本の講習を受けても負担感が増すだけなので、例えば、フィールドワークやロールプレーイング、ティーチングアシスタントを活用していくのも良いのではないか。危険防止のためのCAPシステムやカウンセリングマインド等、民間の優れた研修システム・人材開発があるので、民間や大学が連携しながら、そのような選択肢を入れて、教員の能力開発を目指す形で行えれば良いのではないか。期間については、10年ならば、2年間ではなく3年間でも良いのではないか。京都市でも、講師が教壇に立っているケースが多く、批判も受けるが、大学で免許状を取得しただけでは実践力はないので、事実上の試補制度のように、講師を経験しながら実践力を付けており、講師対象の研修会も行うなどしている。講師の研修は大事だが、更新制と講師の問題は別である。私学団体は、色々な研修を行っているが、参加者が少ないので、多くの者が研修を受けられるように、私学団体と大学が連携して取り組みを行い、それを講習に位置付けていけば、私学団体の実践も高まっていくのではないか。

委員
 平成14年の答申を取りまとめる際、更新制をめぐり内閣法制局と色々なやり取りがあったが、その点は現在どのようになっているのか。10年経験者研修は、更新制の代わりに導入したが、今回更新制を導入するにあたっても、これを当面存続させ、将来については検討するとされているが、将来は廃止も含めて検討するという議論はあったのか。

事務局
 法制的に、どのような形で更新制を制度設計するかについては、議論いただきながら整理していきたいと考えており、具体的に法制局との間で整理している状況ではない。制度化にあたっては、中教審での議論を十分に踏まえながら整理していく必要がある。

委員
 10年経験者研修については、更新制を運用していく中で、既存の研修体系とともに再検討することとなっている。

委員
 平成14年の答申後も、義務教育特別委員会で1年間に渡って議論を行ったりしたが、世の中が日本の教育を信用していないことを実感した。更新制すら導入できないのかという意見も言われ、愕然としたこともあるので、更新制に踏み切らなければ信用回復はできないのではないか。研修というのは、校内研修が中心にあり、足りない部分は外部で研修してくるのであって、外部講師の話を聞いたり、研究することは、校内研修がなければ意味がない。各学校で全ての教員が、少なくとも1学期に1回、1~2日間の研修を行う中で、その他の研修の必要が出てくるというのが、教育界の常識だと思わなければ、社会に通用しない。経済団体との交流の一環で、総合的な学習の時間に社会人に来てもらっているが、教員のその時間に対する評価について、社会人に来てもらえることで子どもたちの目が輝くため、良かったと評価することを聞き、これで説明できたと思っている。世の中は、不登校児童生徒数がどれだけ減ったかや、子どもが学習に参加する割合がどうなったかを説明しなければ、納得しない。その辺りのところは、校長やスクールリーダーの役割であるので、それらの者を養成する教職大学院に期待しており、教育学部以外の出身者が教職大学院に入ってくれば、良い影響があるので、その効果を生かすような制度設計をして欲しい。有効期限については、新卒で採用されることはほとんどなく、数年間講師等を経験した上で正規教員になるので、最低10年は必要ではないか。現職教員に適用しなければ、世の中には通用しない制度なので、適用するのが常識ではないか。

委員
 今の日本の教育が、国際的に見てうまくいっていないとは思わない。例えば、PISAやTIMSSの結果も、日本は上位に位置しているので、原因が教員にあるとするのはあたらない。今の義務教育をより良く発展させるには、どのようにすれば良いのかについては、中教審の義務教育の答申時でも、国庫負担制度も含めて、教育条件の改善にウェイトがあったので、今、最も大事なことが更新制の導入なのかという疑問を持っておかなければならない。いじめや子どもの問題行動など、義務教育の全てが成功しているわけではないので、より良くするためにはどのように取り組んでいけば良いかが大きな課題であるし、管理職も含めた教職員が解決していかなければならない。平成14年の答申で、指導力不足教員への対応や、10年経験者研修を取り入れることを打ち出し、現在、それが行われており、一定程度の成果が出てきている。現職教員に対しても、既存の研修制度や指導力不足教員への対応も含めて、一定程度抑止する仕組みや不適格教員を排除する仕組みがあるので、現行制度でも効果を上げているのではないか。更新制を導入しているのは米国だけであり、国内的には、他の公務員制度との問題がある。教員のみに更新制を適用することは、教職志望者を減少させるのではないか。現在、採用数が増えているものの、質は必ずしも高くない。教職に就こうとする意欲が少なくなってきているのは、教員バッシングが強すぎて、責任を教員のみになすりつける風潮があることの他に、教員が多忙であるということがある。そのような実態で、更新制を導入しても、現職教員が講習を受ける余裕があるのか。リニューアルは必要だが、初任者研修や10年経験者研修の他、各都道府県で研修が行われているので、十分できているのではないか。

委員
 平成14年の答申で、10年経験者研修を導入したことと、今回、更新制を導入することについての言及が明確にされなければならないのではないか。更新制については、適格性を欠く教員や指導力不足教員への対応というイメージが一般的になっている。ここでは、リニューアルという表現で説明しているが、そこをもう少し明確に示さないと、今後、更新制は何かおかしいのではないかと指摘されるのではないか。

(4)小学校における英語教育について

 事務局から、資料9に基づき説明が行われた。

5.閉会

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成21年以前 --