資料2 中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会(第40回)議事要旨(案)

1.日時

 平成18年1月30日(月曜日) 15時~17時

2.場所

 霞が関東京會舘 35F 「ゴールドスタールーム」

3.出席者

 梶田部会長、安彦委員、天笠委員、大橋委員、小原委員、門川委員、河邉委員、川並委員、甲田委員、高倉委員、田村委員、角田委員、渡久山委員、永井委員、中村委員、西嶋委員、野村委員、平出委員、北條委員、宮﨑委員、八尾坂委員、山極委員、横須賀委員、鷲山委員

文部科学省関係者

 結城事務次官、近藤文部科学審議官、銭谷初等中等教育局長、樋口政策評価審議官、山中審議官、布村審議官、戸渡教職員課長、浅田専門教育課長、勝野視学官 他

4.議事

(1)新委員の紹介

 事務局より1名の新委員を紹介した。

(2)副部会長の選任

 梶田部会長の指名により、中村正彦東京都教育委員会教育長を副部会長に選任した。

(3)今後の教員養成・免許制度の在り方について

 中間報告に対する意見及び今後の審議事項等について自由討議が行われた。主な発言は以下のとおり。

委員
 資料6に示されている審議事項の検討は答申までの間に行うということか。

委員
 最終答申に向けて、資料6以外の課題も残されているかもしれないが、当面はこの検討体制に基づき、示されている審議事項の検討を行っていくということである。

事務局
 資料6は、中間報告で残されている課題のうち、専門的見地からの検討が必要と思われる事項について、検討体制(案)にあるグループで検討し、その検討成果も踏まえて、最終答申に反映させていけばどうかという提案である。これらの検討課題のすべてについて、完全なイメージを作ってからでないと最終答申を取りまとめられないということではない。

委員
 教員の職務は、学校教育法により児童・生徒の教育をつかさどることになっており、学校では、職務外ではあるものの、後輩育成のためとして教育実習生を受け入れている。教員の教育実習生への指導を、法令上の職務としてきちんと位置付けてもらいたいが、国としてどのように解釈しているのか。

事務局
 学校教育法第28条第6項は、教諭の主たる職務を定めたものであり、児童に対する教育活動のみに限定されるものではないとの解釈である。したがって、校長の判断で教育実習生を受け入れるとした場合、教育実習自体が学校運営に関わる校務となるので、それは教諭の責務として位置付けられることとなる。

委員
 これから大量採用時代を迎えるので、必要な改革はスピード感を持って行う必要がある。教育実習については、半年間や1年間というようにもっと長く学校に来ることになれば、学校にとっても大きなマンパワーとなる。学校ボランティアとして来てもらうのは良いが、教育実習は迷惑というのは理屈が成り立たない。学校と外部との協力関係を構築していくことが重要であり、それには、法令上の問題よりも学校の忙しさに対応できる支援措置が必要である。

委員
 「教えることは学ぶこと」であり、教員が教育実習生の指導を担当することで教員自身の力量を高める側面もある。しかし、最近は、教職に就かないかもしれないが、免許は取得したいので教育実習だけは受けようとする学生も多く、無力感を感じているのも事実である。また、初任者研修が拠点校方式に変わったため、新採教員の指導は、学校運営上の重荷になっている。大量採用時代を迎え、これから新採教員が増えていくが、現職教員の資質向上については、初任者研修の在り方を含め、研修全体を本質的に議論する必要があるのではないか。

委員
 教育実習は確かに苦労する部分があるが、これから教員になる後輩の指導と捉えて頑張っている。新設される教職実践演習(仮称)と教育実習を大学のカリキュラムとして密接に関連付けていくことが必要になってくる。

委員
 新しく設ける協力者グループの審議事項には、教育実習は含まれていないが、教職課程の改善・充実の中の重要な課題の一つとして、学校現場に喜んでもらえ、協力してもらえるような教育実習の在り方について、検討してもらわなければいけないのではないか。

委員
 中間報告に対する意見の結果については、もう少し丁寧に見ていかなければならないが、おおよそはわかった。しかし、これらはある意味、利害関係のある者の意見であり、直接の利害関係のない方々の意見はどうなのかについても目配りをしながら、意見を受け止めていく必要があるのではないか。今回の意見の中には、給与を下げても良いといったような意見は出てきていないが、その辺りについて、どのような声があるのか気になる。

委員
 教職課程の履修学生の中には、ペーパーライセンスさえあれば良いと考えている者がいるのは事実だが、教育実習の体験は、教職を目指している者はもちろん、ペーパーライセンスのみ欲しいと思っている者の双方にとって、人生における重要な勉強の場になっている。学生は、人が人を教えることの難しさを経験し、コミュニケーション能力を含めた人間力がいかに大事かを痛感している。また、働くことの意味を考え、教職を目指していた者が教職に向いていないと見極めたり、逆に教職を目指していなかった者が、実習後に教職志望へ切り替えることもある。採用試験を受けるつもりがないのに、なぜ教育実習に来るのかとの指摘は理解できるが、それについては、様々な工夫をしながら、今後クリアしていくべき課題である。

委員
 教養審第一次答申を取りまとめた際、教育実習期間の延長、修得単位数の増加については、私立大学から反対を受けた。教育実習の問題を考える場合には、実習生を送り出す大学側の協力体制をきちんと確立していくことが重要で、そこがずれると問題になっていく。

委員
 中間報告に対して、積極的に賛同する団体やネガティブな意見を述べている団体があるが、後者には、出された意見に対するフォローが必要ではないか。この場で終わらせるのではなく、関係団体に直接説明するなど、丁寧な対応をすることを提案したい。

委員
 機会があれば、中間報告の趣旨を理解してもらう努力したい。事務局でも、中間報告に盛り込んだ内容について、社会一般に広く理解してもらうための活動を検討している。

事務局
 関係団体には、説明の機会があった団体に対して、個別に説明をしている。また、今回の中間報告を含め、教員養成・免許制度の改革について、保護者や現職教員、大学関係者を含めて幅広く国民の理解を深めることを目的に、「教員の資質向上に関する全国フォーラム」を東京・京都の2か所で開催することを予定している。

委員
 今後、各ワーキンググループや協力者グループにおいて、今回いただいた意見で取り入れられるところは取り入れて、答申に向けて検討を行ってもらうと同時に、中間報告の考え方について理解を深めて欲しい点は、関係団体への説明やフォーラムの開催により、理解してもらうよう努力していきたい。

委員
 文学部や理学部で、教科専門科目と教職専門科目の授業を行い、それらを統合化していく時に、どのような形で教職実践演習(仮称)が行われていくのかが問題となる。子どもに理解させるには、教員が教材解釈力を持っているかどうかが重要であるが、例えば、テーマとして源氏物語を扱う場合、文学部では、教員養成に視座を置かないまま、教科専門教員による授業が行われている。教育現場を見据えて授業を行い、教員を養成していく場合、文学部や理学部では、教職実践演習(仮称)をどのような形で行っていくのか。教員養成系学部とは異質なものになると思われるため、検討課題に加えなければならない。統合化については、これまで、教科専門科目と教職専門科目を教えさえすれば、予定調和的に優れた教員が養成できると考えてきたが、文学部や理学部では引き続きそのように考えていってしまうのではないか。

委員
 理学部等だけでなく、教育養成大学・学部の教員にも、教員養成を考えずに授業を行っている者がいる。開放制の教員養成には一定のメリットがあったが、師範学校はすべて悪であるとしてしまったために、今、その反動がきていると思われる。そのことも含めて、協力者グループで検討していただきたい。

委員
 関係団体の意見にもあるように、大学の教員養成に対する理念が確立されていない。大学での教員養成は今のままで良いのか。現場の教育実践との繋がりが希薄となっている点や、教職課程のレベルがどうなのかについては、大学としてもう少しきちんとした方が良い。また、大学と学校、行政の連携が必要である。出身校における教育実習では、当該地域における教育を体感できず、教育学部としての存在感がない。教員の処遇の問題も重要であり、人材確保法が無くなれば、行政職より処遇は悪くなる。処遇は悪くても、教職につく熱意や使命感のある者を採用すれば良いとの論理は通用しない。教員のステイタスを高めることと処遇はリンクさせることが必要である。教育実習を引き受けることにより、授業がおろそかになり、子どもの教育指導に悪影響を与え、実習公害と言われることになっては、何のための教員養成かとなるので、十分な条件整備をしていく必要がある。また、現職教員の研修環境や、上級免許状の取得のための条件整備も検討してもらいたい。

委員
 今後、中間報告に対する意見に基づき、各ワーキンググループや協力者グループで検討してもらったものを、適宜当部会に報告してもらい、審議を深めていきたい。協力者グループの人選については、部会長と事務局に一任いただきたい。今後の審議事項に詳しい方を選び、検討してもらおうと考えている。

(4)今後の教員の資質向上施策について

 資料7に基づき、今後の教員の資質向上施策の在り方について、自由討議が行われた。主な発言は以下のとおり。

委員
 規制改革・民間開放の推進に関する第2次答申は、教員が十分な働きをしていないので、多様な人材を外部から入れたらどうかということだろうが、例えば、二次方程式を解けることとそれを教えて理解させることには雲泥の差があるように、教えるには深い専門性を有していなければならない。この答申については、当部会できちんと受け止めて、取り入れるところは取り入れつつも、反論すべきところは反論していくべきだ。また、この保護者アンケートは、典型的な誘導型アンケートであり、留意しなければならない。質問方法や調査主体により結果は左右されるので、この結果を鵜呑みにしてはならない。教員採用選考試験の結果については、資料のデータに基づき、どのように考えていくかを検討しなければならない。

委員
 日本では、免許状主義が原則として考えられている。各教育委員会の教員採用で、社会人枠等を設け、有能な社会人を採用しているが、その実態を検証していく必要がある。また、特別免許状で教壇に立っている者の検証も必要になってくるのではないか。その上で、免許状の必要性について議論していかなければならない。内閣府のアンケートは、米国の制度を参考にしていると思われるが、米国でも、採用時に免許状がなくても、臨時免許状を授与しつつ、採用後に正規免許状取得に必要な学習と同様の学習を求め、最終的には正規免許状を取得させており、制度理解の履き違えがある。米国の考え方は、教員養成の本質として、免許状を凌駕するものはないという免許状主義を踏襲しつつ、選択の一つとして、別制度によっても優秀な者を取り入れたいというのが、本来の趣旨である。

委員
 教員をめぐる現状の認識や問題点は、中間報告で結論を出しているが、中間報告の記述だけでは結論に至る過程が見えない部分があるので、現行制度でもできるのではないかとされ得る。なぜ、現行制度でこれらの問題点等に対処できないのかを、実証的なデータを提示して反論することで、中教審として、規制改革・民間開放推進会議の答申に対して疑義を申し出るのも良いのではないか。現行制度の改善で良いのか、改革が良いのか、現行制度では対応できない根拠を示しながら、反論する姿勢を持って、答申を書かなければいけないのではないか。

委員
 内閣府の答申について、民間の方が教員の資質について抱いている危機感は、我々も共通認識を持っているが、解決の手法は異なる。これから、教員に求められるものが多くなってくるので、危機感、スピード感を持って対応しなければならない。京都市でも、教員の年齢構成はワイングラス型で、教職を目指す者を対象とした教師塾を今夏にかけて立ち上げ、大学と共同で教員養成を行おうとしている。この中には、社会人にも入ってもらおうと考えている。現在の問題は、養成制度の改革だけでは解決が困難である。改革を行うにはスピードが大事なので、改革の手を早く、大胆に打つ必要がある。

委員
 内閣府のアンケートは、求める結論を導くための設問で行われている。そもそも、保護者や子どもを消費者・ユーザーとして捉えているのがおかしい。教育には、主権者をどう育てるか、子どもの学ぶ権利をどう保障するかの観点が必要である。義務教育については、教育の機会均等、無償制、教育水準の確保が不可欠である。また、教員の処遇に格差をつけるというが、今でも給与の格差はある。規制改革会議の議論には、教育の在り方や、国がどう関わるべきかということが欠けている。

委員
 内閣府のアンケートは、選択の基準さえ示していないものである。この結果に反論できるのなら、中教審又は文科省が、アンケートを取るなどして、きちんとした数字を示して反論した方が良いのではないか。小学校教員の採用について、東京都では来年度以降、大量に募集しなければならず、採用倍率は2倍近くになると予想しており、不安を持っているが、免許状取得者から採用するため、セーフティーガードはかかっている。また、これから3,000人規模で小学校教員が辞めていくが、団塊世代の問題を繰り返さないために、同じ人数を採用しようとは考えていない。大量採用の問題をどのように解決するかは、国でも検討してもらいたいが、例えば、他県で採用された教員を5年間の期限付きで東京都に派遣してもらうことができれば、相当程度問題が解消されるのではないかと考えている。各都道府県間で協力しなければ、大量採用の問題は解消できないのではないか。

5.閉会

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初等中等教育局教職員課

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