資料4 中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会(第39回)議事要旨(案)

1.日時

 平成17年11月16日(水曜日) 10時~13時

2.場所

 ホテルグランドパレス 3階 「松の間」

3.出席者

 梶田部会長、安彦委員、石原委員、大橋委員、小原委員、門川委員、河邉委員、川並委員、甲田委員、高倉委員、田村委員、角田委員、渡久山委員、永井委員、西島委員、平出委員、北條委員、宮﨑委員、八尾坂委員、山極委員、山﨑委員、鷲山委員

文部科学省関係者

 銭谷初等中等教育局長、樋口政策評価審議官、板東審議官、山中審議官、布村審議官、徳永審議官、戸渡教職員課長、浅田専門教育課長、勝野視学官、伊藤専門官 他

4.議事

(1)平成17年度教員の免許状授与の所要資格を得させるための大学の課程の認定について(諮問)
 標記の件について、諮問が行われた。

(2)今後の教員養成・免許制度の在り方について
 中間報告(案)に基づき審議が行われ、文案修正を部会長に一任した上で、初等中等教育分科会に報告することが了承された。主な発言は以下のとおり。

委員
 p.10で、「教員養成システムについては、将来的には、大学院修士レベルまで含めた養成へとシフトしていくことが適当」とされているが、国際的趨勢は修士レベルとなっているので、表現が「意見もあり」で良いのか。前回、修士卒の小・中学校教員を量的に増やしていく必要があるとの意見があったが、例えば、修士レベルの者を3割とする努力目標を書き込むことは無理なのか。

事務局
 p.10の表現について、大学院修士レベルにシフトすることが適当と明確に書けるかどうかは、もう少し全体の仕組みを議論してもらう必要があるため、このような表現に留めている。また、努力目標については、教養審第二次答申において、専修免許状取得者を増やすことを目指して、努力目標が示されたが、今回の中間報告の段階で、改めてどれくらいの量を目標にするかは、十分に議論いただいていないので、そこまでは書き込まずに整理している。

委員
 大学院修士レベルまでの教員養成へシフトしようというのは、当部会で何度も意見が出ており、また、教育改革国民会議の報告の中にも、高度専門職業人としての教員は、原則として修士号取得を要件とすべきとあるが、課程認定大学・短大が800を超えている現状において、どのような形で移行させていくかは、もう少し議論が必要だろう。今後、答申までに議論を深めたい。

委員
 フィンランドでは、当たり前のように教員は修士号を取得しており、国際的な趨勢となっている。中間報告(案)の冒頭で、「知識基盤社会」と位置付けがあるので、高学歴化は避けて通れず、その場合、教員の学歴はきちんと吟味されるべきだと思うので、修士レベルへのシフトは、積極的に検討されるべきである。p.48で、修士レベルの教員の処遇について触れられているが、何のために修士号を取得するのかという声も出てくるため、処遇面も改善しなければならない。教職大学院もつくられ、大学院で学ぶ機会が増えてくるので、教員が積極的に大学院に進学するために、研修等定数の措置等、条件整備も必要である。p.10に民間人校長の登用等の記述があり、相当免許状主義の例外と位置付けたことは良いが、義務教育特別部会の答申では、民間人教頭の登用まで提言されているので、この点は慎重に対応してもらいたい。

委員
 p.10の大学院修士レベルへのシフトについて、教養審第二次答申の際には、現在、一種免許状が標準とされているのを専修免許状が標準とされるように持っていこうとする流れがあった。しかし、それを明瞭に書き込むことは、現実的な問題からできず、数値目標とすることもできなかったため、試算の表現でまとめた経緯があった。そのことから考えると、例えば、「積極的」という表現を加えて、「大学院修士レベルまで含めた養成へと積極的にシフト」とするのはどうか。

委員
 p.10の3)の「教員の多忙感を軽減」「学校の事務・業務の見直し」は大事なことだが、教員の疲労具合を見ていると、物理的な多忙感だけでなく、精神的ストレスが高くなっている。資質が高い教員でも疲弊している状態である。教員の精神状態をどう支えるのかについて、書かれていない。元を辿れば、家庭や地域社会との役割分担をどうするのかという問題になるが、4)の中で、「学校全体として組織的に対応するための体制整備」に加えて、「関係機関との連携や家庭への指導の強化」等も入れてもらいたい。教員のストレスをどこかで支えるシステムが必要である。

委員
 p.48の現職教員への修士レベルの教育機会の提供について、いずれ教職大学院が創設されることを考えた場合、従来の派遣制度では、現職教員は授業料を自己負担して大学院に行っているので、これからも国や都道府県が修士号取得を推進すれば、授業料の面で、国立に進む教員が多くなるのではないか。

委員
 都道府県により授業料負担の仕方が違うのではないか。現在、約2,000人の研修等定数があり、都道府県は研修に派遣したい教員定数を国に申請しているが、申請数は昨年が1,180人、今年が1,100人くらいで、55パーセントしか消化されていない。この辺りをどうするかは、教職大学院を支える制度的仕組みを検討する際に考えなければならず、中間報告後に議論しなければならないのではないか。

委員
 金沢市からも、現職教員が大学院へ行っており、教育委員会は住居費や研修手当等を負担している。しかし、そこでは、例えば、竹取物語の助詞に関わる研究や金融政策といった、大学研究者と同じような専門的な研究をしており、教員としての指導力向上ということではなく、現実には、「教養」を身に付ける形になっている。休職して個人的に行くのなら良いが、それに対して公費を投入することが妥当なのかということがある。現場で力を発揮するためのきちんとした研修目的が必要ではないか。義務教育段階で求められているのは、若い教員であり、例えば、臨時的任用や非常勤で若い教員が来ると、子どもと一緒に遊んだりするなど、学校は活気づく。修士課程修了の教員も必要だが、教員は弁護士や医師のように、独立して事業を営めるわけではないので、子どもと一緒に関われる体力・気力のある若い教員が、義務教育の現場にいることは重要である。子どもは元気が良いから、教員が中・高年ばかりだと、過酷な状況になり、そのことが多忙感にもつながっていると思われる。

委員
 今後、5~10年で、団塊世代の教員が退職するので、今まで以上に高い資質を持った若手教員が、専門的な力も持ち合わせるようにすることが、当部会のテーマだろう。兵庫県では、教員1人を1年間研修に派遣すると2,000万円かかると言われているが、それだけの予算を使うことで、教員としての資質能力を高めて現場に戻ってくれれば良いが、そうではない事実があるため、教職大学院を創設しようとしているのである。今までは、学術研究の世界のみで育った者が、教員養成系大学院の教員になっている場合がほとんどで、兵庫教育大学でも、小・中・高等学校の教員歴がある者は1割以下である。教職大学院では、4割以上の実務家教員を入れなければならず、また、単に教職経験があれば良いということではなく、学術研究の業績や力量もなければならない。そこで学んだ者には、例えば、竹取物語の面白さや物語の世界を子どもに理解させることができる資質を身に付けさせたい。現在、専門職大学院ワーキンググループの作業部会で、モデルカリキュラムの策定が行われているので、中間報告後に、それをたたき台にしながら、実践力が付く大学院教育について、議論していきたい。

事務局
 平成15年度の教員の大学院への長期派遣研修は、前年度からの在籍者を含めて1,422人、修学休業制度を利用した在籍者は、平成15年4月1日現在で302人という状況である。平成15年度に、教員養成大学の大学院に入学した教員は、1,059人で、内訳は、教育委員会からの派遣研修が794人、修学休業が59人、勤務時間外の通学者が185人となっている。長期派遣の場合には、研修等定数として加配を行っているが、大学院への派遣に伴う加配分は、平成16年度で922人分を配分している。これは、加配希望があった県には全て応えているので、加配を削っているということではない。

委員
 研修等定数の加配を希望すれば、国からきちんと加配され、給与費を半分負担してもらえる制度になっているが、現場で本当に役に立つかという問題がある。教員が修士課程で高度な研修を受けることは、高校では増えているが、小学校ではまだ低い。

委員
 教養審第二次答申の際に、研修とは自前で行うこととの意見があり、その流れで、修学休業制度が生まれた面がある。また、修士課程での研究テーマについて、教養審第二次答申の際にも、各大学の修士論文テーマを基に検討したり、それとは別に、いわゆる「在り方懇」が報告書を出した際にも、修士論文のテーマや内容等について、議論をした。その時にも、大学研究者と同じようなテーマで研究がなされているといったことが、課題として出されていた。だからこそ、今回の中間報告(案)でも、理論と実践の融合、すなわち、教育実践の下支えになるような研究やそのような研究に特化した大学院、あるいはそのような修士論文の中身を実現するために、大学全体として努力すべきである。中間報告(案)の中で、実践的指導力の向上に結び付く表現を強調できれば入れて欲しいし、それを実行に移す段階での行政施策をお願いしたい。

委員
 それらの問題は、大学における教員養成を行ってから常にある問題であり、大学院をつくったことで、より顕在化した。27年前に新教育大学をつくり、それらの問題を解決するはずだったが、解決できていない。兵庫教育大学でも、学内や、上越教育大学とのジョイントにより、教職大学院でどのように問題解決するか、教職大学院だけでは駄目なので、これをきっかけに既存大学院をどのように抜本的に改革するのか検討をしている。最近では、愛知教育大学が6年制の教員養成を開始し、そのカリキュラムや考えが教育雑誌で紹介されている。今後、当部会に、カリキュラムの改善や人事の工夫等、具体的な取組みを行っている大学の関係者を呼んでヒアリングを行い、それを踏まえて議論したい。

委員
 中間報告(案)の「はじめに」で、義務教育特別部会の答申との関連性が記述され、この案との関係がうまくとれてきた。義務教育特別部会の答申の中に、「改革に当たっては、教師を励ますような方向で進めるとともに、教職員の処遇の改善が図られるなど、教職や学校が魅力ある職業、職場となるようにすることが重要」「教師の意欲を高める視点が必要であり、教員免許更新制の導入により、教師への人材登用の途を狭めることや、教師の身分を不安定にしたり、過剰な負担感を与え教職の魅力を低下させることのないよう留意する必要がある」とされており、これは素晴らしいことである。教員の資質向上も大事だが、処遇がきちんと位置付けられなければならない。中間報告(案)が、教員免許更新制の在り方についてきちんと論じているのは良いが、教職を魅力ある職業にしていくために、処遇改善をきちんとすることを踏まえた上で、免許制度の改革や教職大学院の創設を位置付けることが、時代のニーズにも合っていることを、打ち出すべきである。「はじめに」の部分に、この中間報告(案)が教師を応援するものであるという考えを盛り込めば、教員が勇気付けられるのではないか。

委員
 p.48に、「教員に優れた人材を得るためには、教職が魅力ある職業であることが不可欠」とあるが、このような記述はここにしか出てきていない。p.4に、「教職は、日々変化する子どもの教育に携わり、子どもの可能性を開く創造的な職業」とあるので、p.48の表現を、もう少し前に持ってくれば、教員の励ましになるのではないか。

委員
 中間報告(案)の流れからすると、p.10の1)に、教職が魅力ある職業とあるので、ここに義務教育特別部会の答申の趣旨を入れても良いのではないか。「はじめに」に入れるのは、流れとして悪い。

委員
 p.39~41に、免許更新講習の在り方が述べられているが、この意味は、免許更新の際に、最低ラインのものはきちんと講習でリニューアルしてもらうということである。しかし、講習内容には様々なレベルのものがあるべきで、例えば、高いレベルの講習を受講・修了した者は、上進制度の単位修得に代替できるかどうか検討することが必要と記述されているが、更新講習は、単に講習を受講しただけのものになる可能性もあるので、レベルの高い講習も用意し、その履修者には、それなりの資格や処遇を与えていくなど、付加価値と連動した形で、検討して欲しい。

委員
 課程認定大学は700以上あるが、どの大学が更新講習を行っても良いとなると心配な部分もあるため、中間報告(案)にもあるとおり、「一定水準以上にあることを国が認定する」ことをはっきりさせる必要がある。講習内容によっては、上級レベルの講習として認定することもあり得るだろう。

委員
 大学のみならず、学校現場や教育委員会も関わって、専門性を高める努力は必要である。現職教員の大学院での研修は、現在、派遣研修、修学休業制度による研修、夜間や土日等の時間に行く研修の3種類があるが、十分に活用されていない。例えば、教員1人を1年間派遣するのに2,000万円かかるのであれば、1人当たり300万円補助すれば、7人派遣できることになるので、そのような制度を創設して、奨励することも必要である。無給の上、授業料も負担して大学院に行くことは大変であると同時に、そこまでして行く者は、現場に戻って来ないことが多い。更新講習については、実のなるものにしなければならない。最低限の基礎基本の確認も大事だが、例えば、京都市では、年度当初に全教員が自分の課題を明らかにして研修計画を提出し、不得意分野の克服や、得意分野を伸ばす研修をしているので、更新制も選択制にし、教育委員会が判断して、申請分野の講習を受講・修了すれば更新させるといったように、教員のモチベーションを高め、専門性を高めるようなものとし、同時に、最低限の資質が必要な者には、もう一度磨き直す機会にするという、柔軟な制度設計が必要である。それにより修得した単位が、いずれ修士課程で学修する時の単位として蓄積されても良いのではないか。

委員
 p.10の「将来的には、大学院修士レベルまで含めた養成へとシフト」については、現状を考えると、この表現で収めた方が良い。教員養成系大学院の教育学研究科は旧態依然であり、そこで学修することは勧められないので、この表現が無難である。p.21の一番上の○も、このような表現で収めるしかないだろうが、ここは、教員養成系大学の教育学研究科の存続意義に関わる文案である。教職大学院の創設を機に、既存の修士課程を抜本的に見直すことが行われていくのだろうが、それが必要である。この部分は、「資することが期待される」という表現でさらりと書いているが、教員養成系大学院の教員はこの部分を心配しているので、もう少し改めるように促す表現にできないか。p.42で、「現職教員に対する保護者や国民の期待に応えるためには、現職教員に対して、実効ある取組を行うことは不可欠」としており、これが大事である。現職教員への更新制の適用について、制度上困難であるので適用を見送るとなると、何を検討してきたのかと批判されかねないので、法制度上や実施上、色々な問題があるが、これを解決していきたいという意気込みがにじみ出るような表現であれば良い。

事務局
 既存の教育学研究科の在り方について、現在、教員養成学部出身者の新規採用教員に占める比率は低くなってきているが、そのような中で、答申において何らかの見直しが必要だと指摘すると、国立大学の法人化と絡んで、それについて国が財政的に約束していると捉えかねないので、国側とすれば、各大学が自己の責任で教員養成改革に取り組んでもらい、逆にこのような指摘がなされても何もしない大学は、自然淘汰されてもやむを得ないのではないかと思っている。教職大学院の教育課程については、ワーキンググループで検討を行い、中間報告(案)に書き込んだが、先ほど、教職大学院を創設しても、その中身が教員養成の目的意識に特化したものでなければ意味がないという意見が出された。p.27の2つ目の○の後段は、大学の特色を強く認める方向になっており、従来の繰り返しになりかねない。基本的な部分で、大学が自由に制度設計しても良いとなると、理論と実践の融合を謳っても、従来の繰り返しになるので、3つ目と4つ目の○でも、大学の裁量の余地はあることから、「その場合」以下は削除し、教員養成の目的意識に特化した教育課程にするとの基本認識を示した方が良いのではないかと思っている。

委員
 国全体の教育の質を上げていこうということであるから、公立も私立も、幼稚園から高等学校までの教員について、きちんとレベルアップを図り、子どもに還元されるシステムが、国民から期待されている。その観点からすると、現職教員の大学院での研修について、公立は私学からすれば恵まれた状況なので、国公私立を通じた、幼稚園から高校までの目配りをお願いしたい。p.47の一番下の○について、保育士資格との関連について意見を申し上げ、それを踏まえて、「関係機関や関係者への影響も少なくない」「関係行政機関等に十分説明し、理解を得る」と修正されたことはありがたいが、そこに含まれている意味は、一般の方には十分通じない。例えば、「他の資格制度との関連をも踏まえ」といった文言を、3行目の「課程認定大学」の前に入れるか、2行目の「国においては、」の後に入れるなど、検討していただきたい。

委員
 基本的に、更新制の導入は時期尚早で、慎重であるべきとの立場であり、中間報告(案)の問題点を指摘しておく。p.39では、更新講習の内容について、「1.使命感や責任感、教育的愛情等に関する事項」が挙げられているが、そのような精神論だけでなく、学校現場における教育実践の中で生きてくるような、より実証性のある講習でなければ意味がないので、検討して欲しい。履修形態が工夫されることは良いことであるし、教員としてのライフステージにおいて大事なことである。上進制度については、更新講習との関係を考慮してもらいたい。p.41の4で、「教員免許状が失効した場合の取扱い等について、雇用主と教員との間で、あらかじめ取り決めておくことが必要」とされているが、どのような雇用形態・契約になるのか具体的に検討する必要があるし、他の公務員制度との関係上、教員だけが不利になる状況をつくってはいけない。p.42の8について、現職については、現行法で免許状を授与されたという原則は、きちんと確認しておくべきである。現行法で授与された免許状について更新制に似たものを導入することは困難だろうが、現職教員については、研修等により対応すればよい。指導力不足教員に対して、法律上厳しく対応するようになっているから、更新制はリニューアルの方向で考えた時に、現職教員についてもそのような観点で、検討してもらいたい。

委員
 現職教員に更新制を適用するのは、法的に難しいこともあるかと思われるが、今回、それに加えて、実施上の課題が加わった。中間報告が出された時に、一般の方から、現職教員は現状のままなのかと思われ、更新制の意義が消え失せる危険もある。更新制は何をするのかというと、評価である。教員が講習を受講し、評価を受け、その評価によって免許状が更新されるかどうかが決まる。そうであれば、更新制の適用とまでは行かなくても、更新制に辿り着く移行措置を現職教員に当てはめ、評価をすることが必要である。教員のやる気や意欲を引き出すことも大事だが、研修の評価や授業評価、学校評価等を充実することにより、教員に緊張感を生み出さないと、世間は納得しない。その点を丁寧に書き込むことで、実施上の課題としていることが納得してもらえるのではないか。

委員
 現行制度上、小学校は全教科担任、中・高等学校は教科別の免許状であるが、そこで担保されているのは、免許状に書かれている能力が基本になると思われる。しかし、現実には高学年において、音楽や図画工作、体育、理科等の教科で専科教員を置いて欲しいという要望がある。そうすると、更新制においては、小学校の免許状保有者について、オールマイティーな能力を持っていることを担保するのか、やはり専科教員を必要としていくのか。かつては、オルガンが弾ければ音楽の教員として十分だったが、今は、子どもが音楽コンクールで優勝する時代なので、ピアノを少し弾ける程度で音楽を担当するのは難しい。昔と今とでは、社会が要求するレベルに違いがあることを検討課題として、免許状が担保する能力は何か、同時に、更新の際に、その能力を持っていると言えるのか、その辺りが問題になってくる。更新講習は、社会的に理解され、良いものと言われるよう、評価が必要である。例えば、自治体職員の場合、研修を受けると、人事考課や人事評価の中で、どのようなことが身に付いたのか点数化し、勤務評定や昇進に反映するが、教員の場合は全く別である。単に更新講習を受講すれば良いということでは、社会の眼に応えることはできないので、社会の信頼を確保するためのきちんとした評価を検討してもらいたい。

 中間報告(案)を了承した後、資料8に基づき、自由討議が行われた。主な発言は以下のとおり。

委員
 現在の教員養成大学・学部の問題がある。現在の国公私立大学において、どの程度実際に教員になっているか、問題教員がどの大学から輩出されているか等、教員に関するデータがあれば、提示してもらいたい。現在、国立大学でも県境を越えた取組みが行われており、例えば、鳥取大学の教育学部が、教員養成機能を島根大学に移したり、北海道教育大学の5分校が、機能の分化と統合を進めるなど、「在り方懇」の指摘に応える動きがあるようなので、「在り方懇」の提言事項のフォローアップ資料があれば、提示してもらいたい。教職大学院の問題等を検討する際、大学の実情を踏まえて、提言していかなければいけない面があるので、それらの資料をお願いしたい。

事務局
 「在り方懇」の提言後、例えば、山形大学が教員養成学部を廃止したり、富山大学と富山医科薬科大学、高岡短期大学の再編・統合に際しても、教員養成学部の廃止が行われているが、各大学がどのような形で教員養成学部を置くかは、大学の自主的な検討に委ねているし、教員養成の在り方は、大学単独で決められるものではなく、地元や教育委員会との十分な協議の中で行われなければいけない。実際に、山形大学の地域教育文化学部でも、幅広い意味での学校教育関連人材の育成と言っているし、富山大学の人間科学発達部でも、教員養成機能を持ちながら、地域の様々な学校関連人材の育成を行っていくとしている。国公私立大学を通じて、教育委員会や学校と連携した教員養成教育を行ってもらいたいということで、平成17年度に教員養成推進事業を立ち上げ、プロジェクトの募集を行ったところ、99件の申請があり、33件を採択した。現在では、各県・大学が連携して、地域の教員養成機能の充実という、「在り方懇」の報告が刺激となって、地域との結び付きがより強固になりつつある。大学が今後、どのような形で教員養成機能を持ち、地域との連携協力の中で強化していくのかは、各大学が自主的に考え、地域と相談することだと思っているが、どのような形であれ、教員養成を地域との協力の下に進めていくことについては、引き続き、財政的支援を続けていきたい。

委員
 中間報告(案)では、3つの大きな柱として、各大学の責任ある教員養成の推進による質的な水準の確保があり、教職大学院があって、更新制がある。今回、教職指導の充実や教職実践演習(仮称)の新設を入れたが、当部会としては、この部分を各大学でもっと検討してもらいたいということを踏まえ、教育界に送り出す学生の教育について、より一層責任を持って欲しいということを、もう少し書き込まなければいけないかもしれない。

委員
 教職指導や教職実践演習(仮称)を担当する大学の教員には、小・中学校で実際に授業を行ってもらいたい。実際に授業ができないのに、授業指導を行ってもうまくいかない。課程認定大学の実地視察で、教科教育法の授業を見たが、実践には向かないと感じた。中間報告(案)には、課程認定の問題が出ているが、課程認定にあたり、どのような講座がどのように行われているかまで確認することも一案である。我が国では、指導法等の理論的な裏付けが少ないので、その辺りの検討もお願いしたい。

委員
 教職大学院を成功させる要因は、まず、そこで行われる教育活動、教育指導の改善が大前提である。量的な確保が大事であり、その点では研修派遣制度をきちんと制度として確保し、条件整備を行うことはもちろん、働きながら大学院に通う者をどれだけ支援できるかが大事である。大学が、履修形態を弾力化して、入りやすい、学びやすい環境をつくることはもちろんだが、行政側も、修学休業制度だけではなく、働きながら通学できる多様な措置を考えなければいけない。その面での具体的な内容を、今後の課題として検討していただきたい。

5.閉会

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成21年以前 --