資料6-1 外国語(英語)コアカリキュラム案

外国語(英語)コアカリキュラム案について


1 全体の構成と各項目の位置づけ
 外国語(英語)コアカリキュラムは、「外国語/英語科の指導法」及び「外国語/英語科に関する専門的事項」で構成され、それぞれにおいて、「全体目標」「一般目標」「学習項目」「到達目標」が示されている。「全体目標」は、「外国語/英語科の指導法」及び「外国語/英語科に関する専門的事項」において達成すべき包括的な目標である。「一般目標」は、学習すべき内容のまとまりごとに設定された目標である。「学習項目」は、それぞれの内容のまとまりにおいて扱うべき具体的な項目であり、「到達目標」は、個々の学習項目において達成すべき目標である。

2 基本的な考え方と留意点
(1) 小学校教員養成コアカリキュラムは、全ての小学校教員養成課程での活用が想定されており、小学校教員免許の取得希望者全てが対象となる。また、中・高等学校教員養成コアカリキュラムは、中・高等学校の外国語(英語)教員免許の取得希望者全てが対象となる。
(2) コアカリキュラムに記載している学習項目は、「外国語/英語科の指導法」及び「外国語/英語科に関する専門的事項」の中で全ての内容を盛り込むことを想定したものである。内容のまとまりや項目を独立させて必修科目で扱う場合には、必ずしも当該項目を「外国語/英語科の指導法」及び「外国語/英語科に関する専門的事項」で扱う必要はない。例えば、「第二言語習得」「英語教育評価論」「英語教材開発論」などを独立した必修科目として設定している場合、その内容は「外国語/英語科の指導法」では扱わないということもあり得る。
(3)コアカリキュラムに記載している学習項目は、「外国語/英語科の指導法」及び「外国語/英語科に関する専門的事項」において扱うべき必要最低限の項目を示したものであり、これら以外にも各大学において独自に学習項目を設定することができる。
(4)「外国語/英語科の指導法」及び「外国語/英語科に関する専門的事項」については、両者を統合する科目を設定することも可能である。
(5)個々の学習項目を1回の授業で扱う必要があるわけではない。1つの項目を複数回の授業で扱うことも、複数の項目を1回の授業で扱うことも可能である。
(6) 学習項目は内容のまとまりごとに記載されており、記載の順序は、学習すべき順序を示すものではない。
(7) 記載の順序は、学習内容の重要度を示すものではない。


1. 小学校教員養成課程 外国語 (英語) コアカリキュラム案

[1]外国語の指導法【2単位程度を想定】

【全体目標】
小学校における外国語活動(中学年)・外国語(高学年)の学習・指導・評価に関する基本的な知識・指導技術を身に付ける。

【学習内容】
1. 授業実践に必要な知識・理解
(1) 小学校外国語教育についての基本的な知識・理解
◇一般目標
小学校における外国語教育に係る背景知識・主教材、小・中・高等学校の外国語教育における小学校の役割、多様な指導環境について理解する。

◇学習項目
1 学習指導要領
2 主教材
3 小・中・高等学校の連携と小学校の役割
4 児童や学校の多様性への対応

◇到達目標
1) 小学校外国語教育の変遷、小学校の外国語活動・外国語、中・高等学校の外国語科の目標・内容について理解している。
2) 主教材の趣旨・構成・特徴について理解している。
3) 小・中・高等学校の連携と小学校の役割について理解している。
4) 様々な指導環境に柔軟に対応するため、児童や学校の多様性への対応について、基礎的な事柄を理解している。

(2) 子どもの第二言語習得についての知識とその活用
◇一般目標
児童期の第二言語習得の特徴について理解する。
◇学習項目
1 言語使用を通した言語習得
2 音声によるインプットの内容を類推し、理解するプロセス
3 児童の発達段階を踏まえた音声によるインプットの在り方
4 コミュニケーションの目的や場面、状況に応じて他者に配慮しながら、伝え合うこと
5 受信から発信、音声から文字へと進むプロセス
6 国語教育との連携等によることばの面白さや豊かさへの気づき

◇到達目標
1) 言語使用を通して言語を習得することを理解し、指導に生かすことができる。
2) 音声によるインプットの内容の類推から理解へと進むプロセスを経ることを理解し、指導に生かすことができる。
3) 児童の発達段階を踏まえた音声によるインプットの在り方を理解し、指導に生かすことができる。
4) コミュニケーションの目的や場面、状況に応じて意味のあるやり取りを行う重要性を理解し、指導に生かすことができる。
5) 受信から発信、音声から文字へと進むプロセスを理解し、指導に生かすことができる。
6) 国語教育との連携等によることばの面白さや豊かさへの気づきについて理解し、指導に生かすことができる。

2. 授業実践
(1) 指導技術
◇一般目標
実践に必要な基本的な指導技術を身に付ける。

◇学習項目
1 英語での語りかけ方
2 児童の発話の引き出し方、児童とのやり取りの進め方
3 文字言語との出合わせ方、読む活動・書く活動への導き方

◇到達目標
1) 児童の発話につながるよう、効果的に英語で語りかけることができる。
2) 児童の英語での発話を引き出し、児童とのやり取りを進めることができる。
3) 文字言語との出合わせ方、読む活動・書く活動への導き方について理解し、指導に生かすことができる。

(2) 授業づくり
◇一般目標
実際の授業づくりに必要な知識・技術を身に付ける。
◇学習項目
1 題材の選定、教材研究
2 学習到達目標、指導計画(1時間の授業づくり、年間指導計画・単元計画・学習指導案等)
3 ALT等とのティーム・ティーチングによる指導の在り方
4 ICT等の活用の仕方
5 学習状況の評価(パフォーマンス評価や学習到達目標の活用を含む)

◇到達目標
1) 題材の選定、教材研究の仕方について理解し、適切に題材選定・教材研究ができる。
2) 学習到達目標に基づいた指導計画(年間指導計画・単元計画・学習指導案、短時間学習等の授業時間の設定を含めたカリキュラム・マネジメントなど)について理解し、学習指導案を立案することができる。
3) ALT等とのティーム・ティーチングによる指導の在り方について理解している。
4) ICT等の効果的な活用の仕方について理解し、指導に生かすことができる。
5) 学習状況の評価(パフォーマンス評価や学習到達目標の活用を含む)について理解している。

【学習形態】
上記の内容を学習する過程においては、教員の講義に留まることなく、以下の学習形態を必ず盛り込むこととする。
1 授業観察:小・中・高等学校の授業映像の視聴や授業の参観
2 授業体験:授業担当教員による指導法等の実演(学生は児童役として参加する等)
3 模擬授業:1単位時間(45分)の授業或いは特定の活動を取り出した模擬授業
   手順例:計画→準備→実施→振り返り→改善→再計画……



[2]外国語に関する専門的事項 【1単位程度を想定】

【全体目標】

小学校における外国語活動・外国語の授業実践に必要な実践的な英語運用力と、英語に関する背景的な知識を身に付ける。

【学習内容】

1. 授業実践に必要な英語力と知識
(1) 授業実践に必要な英語力
◇一般目標
小学校における外国語活動・外国語の授業を担当するために必要な実践的な英語運用力を、授業場面を意識しながら身に付ける。

◇学習項目
1 聞くこと
2 話すこと(やり取り・発表)
3 読むこと
4 書くこと

◇到達目標
1) 授業実践に必要な聞く力を身に付けている。
2) 授業実践に必要な話す力(やり取り・発表)を身に付けている。
3) 授業実践に必要な読む力を身に付けている。
4) 授業実践に必要な書く力を身に付けている。

(2) 英語に関する背景的な知識
◇一般目標
小・中学校の接続も踏まえながら、小学校における外国語活動・外国語の授業を担当するために必要な背景的な知識を身に付ける。

◇学習項目
1 英語に関する基本的な知識(音声・語彙・文構造・文法・正書法等)
2 第二言語習得に関する基本的な知識
3 児童文学(絵本、子ども向けの歌や詩等)
4 異文化理解

◇到達目標
1) 英語に関する基本的な事柄(音声・語彙・文構造・文法・正書法等)について理解している。
2) 第二言語習得に関する基本的な事柄について理解している。
3) 児童文学(絵本、子ども向けの歌や詩等)について理解している。
4) 異文化理解に関する事柄について理解している。



 
2. 中・高等学校教員養成課程 外国語 (英語) コアカリキュラム案

[1]英語科の指導法【8単位程度を想定】

【全体目標】
中学校及び高等学校における外国語(英語)の学習・指導に関する知識と授業指導及び学習評価の基礎を身に付ける。

【学習内容】
(1) カリキュラム/シラバス
◇一般目標
中学校及び高等学校の英語教育の基軸となる学習指導要領及び教科用図書 (教科書) について理解するとともに、学習到達目標及び年間指導計画・単元計画・各時間の指導計画について理解する。また、小学校の外国語活動・外国語の学習指導要領並びに教材・教科書について知るとともに、小・中・高等学校の連携の在り方について理解する。

◇学習項目
1 学習指導要領
2 教科用図書
3 目標設定・指導計画
4 小・中・高等学校の連携

◇到達目標
1) 中学校及び高等学校の外国語(英語)の学習指導要領について理解している。
2) 中学校及び高等学校の外国語(英語)の教科用図書について理解している。
3) 学習指導要領の「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力等」の3つの資質・能力(以下、「3つの資質・能力」という)とともに、領域別の学習到達目標の設定、年間指導計画、単元計画、各授業時間の指導計画について理解している。
4) 小学校の外国語活動・外国語の学習指導要領や教科用図書等の教材、並びに小・中・高等学校を通した英語教育の在り方の基本について理解している。

(2) 生徒の資質・能力を高める指導
◇一般目標
中学校及び高等学校における3つの資質・能力を踏まえた「5つの領域」(「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」及び「書くこと」)の指導及び各領域を支える音声、文字、語彙・表現、文法の指導について基本的な知識と技能を身に付けるとともに、複数の領域を統合した言語活動の指導方法を身に付ける。また、教材や ICT の活用方法を知るとともに、英語による授業展開や ALT等とのティーム・ティーチングの方法について理解する。さらに、生徒の特性や習熟度に応じた指導について理解する。

◇学習項目
1 聞くことの指導
2 読むことの指導
3 話すこと(やり取り・発表)の指導
4 書くことの指導
5 領域統合型の言語活動の指導
6 英語の音声的な特徴に関する指導
7 文字に関する指導
8 語彙・表現に関する指導
9 文法に関する指導
10 異文化理解に関する指導

11 教材研究・ICT等の活用
12 英語でのインタラクション
13 ALT等とのティーム・ティーチング
14 生徒の特性や習熟度に応じた指導

◇到達目標
1) 聞くことの指導について理解し、授業指導に生かすことができる。
2) 読むことの指導について理解し、授業指導に生かすことができる。
3) 話すこと(やり取り・発表)の指導について理解し、授業指導に生かすことができる。
4) 書くことの指導について理解し、授業指導に生かすことができる。
5) 複数の領域を統合した言語活動の指導について理解し、授業指導に生かすことができる。
6) 英語の音声的な特徴に関する指導について理解し、授業指導に生かすことができる。
7) 文字の指導について理解し、授業指導に生かすことができる。
8) 語彙・表現に関する指導について理解し、授業指導に生かすことができる。
9) 文法に関する指導について理解し、授業指導に生かすことができる。
10) 異文化理解に関する指導について理解し、授業指導に生かすことができる。
11) 教材及びICTの活用について理解し、授業指導に生かすことができる。
12) 英語でのインタラクションについて理解し、授業指導に生かすことができる。
13) ALT等とのティーム・ティーチングについて理解し、授業指導に生かすことができる。
14) 生徒の特性・習熟度への対応について理解し、授業指導に生かすことができる。

(3) 授業づくり
◇一般目標
中学校及び高等学校の学習到達目標に基づく各学年や科目(高等学校)の年間指導計画・単元計画・各時間の指導計画及び授業の組み立て方について理解するとともに、学習指導案の作成方法を身に付ける。

◇学習項目
1 学習到達目標に基づく授業の組み立て
2 学習指導案の作成

◇到達目標
1) 学習到達目標に基づく授業の組み立てについて理解し、授業指導に生かすことができる。
2) 学習指導案の作成について理解し、授業指導に生かすことができる。

(4) 学習評価
◇一般目標
中学校及び高等学校における年間を通した学習到達目標に基づく評価の在り方、観点別学習状況の評価に基づく各単元における評価規準の設定、さらに評定への総括の仕方について理解する。また、言語能力の測定と評価の方法についても併せて理解する。特に、「話すこと(やり取り・発表)」及び「書くこと」については、「パフォーマンス評価」(生徒が実際に話したり書いたりする活動の過程や結果を評価する方法)について理解する。

◇学習項目
1 観点別学習状況の評価、評価規準の設定、評定への総括
2 言語能力の測定と評価(パフォーマンス評価等を含む)

◇到達目標
1) 観点別学習状況の評価とそれに基づく評価規準の設定や評定への総括について理解し、指導に生かすことができる。
2) 言語能力の測定と評価 (パフォーマンス評価等を含む) について理解し、指導に生かすことができる。

(5) 第二言語習得
◇一般目標
学習者が第二言語・外国語を習得するプロセスについて基礎的な内容を理解し、授業指導に生かすことができる。
◇学習項目
1 第二言語習得に関する知識とその活用
◇到達目標
1)  第二言語習得理論とその活用について理解し、授業指導に生かすことができる。

【学習形態】
上記の内容を学習する過程においては、教員の講義にとどまることなく、次の学習形態を必ず盛り込むこととする。
1 授業観察:授業映像の視聴や授業の参観
2 授業体験:授業担当教員による実演を生徒の立場で体験
3 模擬授業:1単位時間(50分)の授業或いは特定の言語活動を取り出した模擬授業
  手順例:計画→準備→実施→振り返り→改善



[2]英語科に関する専門的事項【20単位程度を想定】

1. 英語コミュニケーション

【全体目標】
中学校及び高等学校において、生徒の理解の程度に応じた英語で授業を行うための英語運用能力を身に付ける。英語運用能力としては CEFR B2レベル以上を目標とする。また、生徒に対して理解可能な言語インプットを与え、生徒の理解を確かめながら英語でインタラクションを進めていく柔軟な調整能力を身に付ける。

【学習内容】
◇学習項目
1 聞くこと
2 読むこと
3 話すこと(やり取り・発表)
4 書くこと
5 領域統合型の言語活動

◇到達目標
1) 様々なジャンルや話題の英語を聞いて、目的に応じて情報や考えなどを理解することができる。
2) 様々なジャンルや話題の英語を読んで、目的に応じて情報や考えなどを理解することができる。
3) 様々な話題について、目的や場面、状況等に応じて英語で話すこと(やり取り・発表)ができる。
4) 様々な話題について、目的や場面、状況等に応じて英語で書くことができる。
5) 複数の領域を統合した言語活動を遂行することができる。

2. 英語学

【全体目標】
中学校及び高等学校における外国語科の授業に資する英語学的知見を身に付ける。

【学習内容】
◇学習項目
1 英語の音声の仕組み
2 英文法
3 英語の歴史的変遷、国際共通語としての英語

◇到達目標
1) 英語の音声の仕組みについて理解している。
2) 英語の文法について理解している。
3) 英語の歴史的変遷及び国際共通語としての英語の実態について理解している。

3. 英語文学

【全体目標】
英語で書かれた文学を学ぶ中で、英語による表現力への理解を深めるとともに、英語が使われている国・地域の文化について理解し、中学校及び高等学校における外国語科の授業に生かすことができる。

【学習内容】
◇学習項目
1 文学作品における英語表現
2 文学作品から見る多様な文化
3 英語で書かれた代表的な文学

◇到達目標
1) 文学作品において使用されている様々な英語表現について理解している。
2) 文学作品で描かれている、英語が使われている国・地域の文化について理解している。
3) 英語で書かれた代表的な文学について理解している。

4. 異文化理解

【全体目標】
社会や世界との関わりの中で、他者とのコミュニケーションを行う力を育成する観点から、外国語やその背景にある文化の多様性及び異文化コミュニケーションの現状と課題について学ぶ。併せて、英語が使われている国・地域の文化を通じて、英語による表現力への理解を深め、中学校及び高等学校における外国語科の授業に資する知見を身に付ける。

【学習内容】
◇学習項目
1 異文化コミュニケーション
2 異文化交流
3 英語が使われている国・地域の歴史・社会・文化
◇到達目標
1) 世界の文化の多様性や異文化コミュニケーションの現状と課題を理解している。
2) 多様な文化的背景を持った人々との交流を通して、文化の多様性及び異文化交流の意義について体験的に理解している。
3) 英語が使われている国・地域の歴史・社会・文化について基本的な内容を理解している。

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初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成29年07月 --