資料1 平成28年度教職課程認定大学等実地視察について(案)

資料1

平成28年度教職課程認定大学等実地視察について(案)

中央教育審議会初等中等教育分科会
教員養成部会

1.実地視察の目的

教職課程認定大学等実地視察の目的は,教職課程認定大学実地視察規程(平成13年7月19日教員養成部会決定)及び指定教員養成機関実地視察規程(平成24年2月15日教員養成部会決定)に基づき,教員の免許状授与の所要資格を得させるための大学の課程の認定を受けた大学及び教員養成機関としての指定を受けた機関について,認定及び指定時の課程の水準が維持され,その向上に努めているかどうかを確認することである。

2.概要

(1)総括的事項

○ 平成28年度は,大学及び短期大学並びに教員養成機関の計15大学等に対して,実地視察を行った。

○ 全体として,教育課程及び教育組織等については,おおむね問題無く実施されており,教職課程の質を向上させるための積極的な取組も見られた。

○ 一方で,必要な専任教員数を確保できていない事例や,「教科に関する科目」「教職に関する科目」について,法令に定める内容を適切に扱っていない事例が確認されるなど,課題が指摘された大学等も多数あった。

○ 以下は,本年度の教職課程実地視察大学等に対して主に指摘された事項及び教職課程の質向上に向け必要と思われる指摘事項である。

(2)個別的事項(個々の具体的評価,指摘・指導等)

【教職課程の実施・指導体制(全学組織等)】

○ 教員養成に対する理念・構想が明確に示されているとは言い難い大学等に対しては,理念・構想を明確化するとともに,それを具現化するため,教育課程及び教員組織を一層充実させるよう求めた。

○ 過去の中教審答申では,教職課程の運営や教職指導について全学的に責任を持って行う体制を構築するため,「教員養成カリキュラム委員会」等の全学的組織の機能の充実について提言している。

この点,これまでの実地視察における指摘や,教職課程の実質化に向けた各大学等の改革により,多くの大学等において,形式的には,教職課程委員会等の全学的組織が整備されていた。

○ 一方で,

・教職課程の運営について,「教科に関する科目」を担当する専任教員の参加が少なく,「教職に関する科目」を担当する専任教員に依拠している

・教職指導や教育実習が課程ごとに委ねられており全学的な教職指導の方針・体制が整備されていない

・授業内容の扱いについて個々の教員に委ねている

など,各学科等と連携した教職指導・教育実習指導体制の構築等が,全学的組織を中心に,機能的に行われているとは認められない大学等も見られた。

○ このため,教職課程は教員免許状という資格を授与するための課程であることに鑑み,全学的組織で定められた教育課程の編成方針のもと,教職支援センターなどの教職課程及び教員組織を点検する全学的組織や,ファカルティ・ディベロップメントなどの,個別の授業内容を点検し改善ができるような体制・仕組みを構築するよう求めた。

【教育課程(教職に関する科目及び教科に関する科目),履修方法,シラバスの状況】

○ 法令及び教職課程認定基準等の観点から是正すべき点が確認された大学等については,速やかに是正することを求めた。

<主な指摘事項>

・「教職に関する科目」について,教育職員免許法施行規則第6条第1項表に定める「含めることが必要な事項」が含まれているか否かシラバスからは判断できない授業科目や,科目の趣旨に照らして適切でないと見受けられる授業科目があることが確認されたため,法令で扱うこととしている内容は必ず扱うとともに,科目の趣旨に照らして適切な授業内容となるように,内容を再度検討するよう求めた。

・中学校及び高等学校の教職課程の「教科に関する科目」については,自学科等での開設を原則としている一方,教育職員免許法施行規則で定める科目区分の半数までは他学科又は共通開設の授業科目を充てることを可能としているが,科目区分の半数を超えて他学科又は共通開設の授業科目を充てていることが確認されたため,速やかに是正するよう求めた。

・必要とされる専任教員数を満たしていない状況が確認されたため,速やかに是正するよう求めた。

・教職に関心のある学生が早い段階から教職の魅力や教員としての適性等を把握する観点から,「教職に関する科目」中の「教職の意義等に関する科目」の配当年次について検討するよう求めた。

・「各教科に関する指導法」等の科目について,学習指導要領をテキストまたは参考書としてシラバスに記載していない授業科目が散見されたため,是正するよう求めた。

・学科等の目的・性格と免許状との相当関係が不十分と思われる教育課程があったため,教職課程認定基準に照らし是正するよう求めた。

○ また,開放制により教員養成を行う場合,教育職員免許法上の最低修得単位数である20単位分の「教科に関する科目」に加え,学科教育としての専門科目を履修することによって,各教科の専門性を高めていくことが重要であるが,一つの学科等で複数の異なる教科の免許状を取得可能とする学科等の状況が確認された。

このような場合には,コース履修等を検討するなど,各教科の専門性を担保できるよう履修上の配慮・工夫を図ることが必要である。

【教育実習の取組状況】

○ 教育実習については,教育委員会と連携し,大学等の近隣の学校を教育実習先として確保しているほか,教育実習先に担当指導教員が巡回指導を行うなど,丁寧な教育実習指導が行われている大学等が確認できた。

○ 一方で,実習校の選定にあたって,依然として,母校実習を前提としているような大学等もあった。

母校実習については,過去の中教審答申で,「大学側の対応や評価の客観性の確保等の点で課題も指摘されることから,できるだけ避ける方向で,見直しを行うことが適当である。」と提言され,教育職員免許法施行規則第22条の5においても,教育実習等の円滑な実施について規定しているところである。

このため,

・教育実習は,大学等による教育実習指導体制や評価の客観性の観点から,遠隔地の学校や学生の母校における実習ではなく,可能な限り大学等が所在する近隣の学校において実習校を確保することが望ましく,今後,地元教育委員会や学校との連携を進め,近隣の学校における実習先の確保に努めていただきたいこと

・やむを得ず遠隔地の学校や学生の母校における実習を行う場合においても,実習先の学校と連携し,大学等が教育実習に関わる体制を構築するとともに,学生への適切な指導,公正な評価となるよう努めていただきたいことなどについて指摘をした。

【学生への教職指導の取組状況及び体制】

○ 教職支援センター等を設置し,全学的に学生へきめ細やかな指導ができる体制を構築している大学等が確認される一方,教職支援センター等を設置しているもののまだ十分に機能しているとは言い難く,学生への指導が不十分と思われる大学等もあった。

○ 教職指導は,学生が教職についての理解を深め,教職への適性について考察するとともに,各科目の履修等を通して,主体的に教員として必要な資質能力を統合・形成していくことができるよう,大学等が計画的・組織的に行っていく必要がある。

履修カルテを有効活用するとともに,教職指導の充実に努めることが必要である。

○ 教職課程は,各学科等の目的・性格と免許状の教科等との相当関係について審査の上,その学科等において免許状の教科等専門性が担保されることが確認されて認定されるものである。課程認定を受けていない学科等に所属する学生が教員免許状を取得できるかのように広報及び履修指導を行うことは,課程認定制度の趣旨に鑑みて適正といえないため,速やかに改めるべきである。

【教育委員会等の関係機関との連携・協働状況(学校現場体験・学校支援ボランティア活動等の取組状況)】

○ 多くの大学等において,教育委員会等と連携し,学校現場体験やボランティア活動等,積極的な取組を推進していた。

○ また,小中学校の公開研究会に学生を参加させたり,卒業生に対する若手教員研修会を実施したりするなど,生涯にわたって学び続ける教員を養成するための取組が見受けられた。

○ 教職に関心のある学生が,早い段階から学校におけるボランティア活動等を通じて,教職の魅力や教員としての適性等を把握した上で,教員免許状の取得を目指すことは重要であることから,各大学等においては,学生が教育実習以外にも学校現場等での体験機会を得ることができるよう,地元教育委員会や学校との連携・協働に努めていただきたい。

【施設・設備(図書を含む。)の状況】

○ 各大学等において,教員養成に必要な施設・設備,教育機器等は,学生数の規模に応じておおむね整備されており,非常に充実していると認められる大学等もいくつか確認できた。

○ ただし一部の大学等においては,図書について十分に整備されているとは言い難い部分もあり,教職を志す学生が教育に関する適切な情報を入手できるよう,環境の整備を求めた。

【その他】

○ 今年度の実地視察校の中で,変更届の未提出・不備が判明していることから,各大学等においても当該事態が生じないよう,今一度,事務組織含め全学的に確認していただきたい。

3.まとめ

○ 平成22年度から「教職実践演習」が導入され,また,教員免許状を取得しようとする者に対する教職指導の努力義務が定められたことにより,今後はより一層,教職を志す学生が体系的・計画的に教職課程を履修することができるような配慮が求められている。

また,そのために,教職課程の運営や教職指導を,全学的に責任を持って行う体制の構築や,教員養成を目的とする学科等の有する資源・機能の全学的活用に向けた取組が不可欠である。

○ 今回,実地視察を受けた大学等の中には,実地視察への準備を通じて,教員養成の現状,カリキュラム・各科目の現状等について評価・分析をし,十分実施できている点,課題・改善点及び今後の検討課題点の洗い出しを行うなど,自大学等の教員養成の在り方の自己検証・改善方策の検討の契機とした大学等もあった。

○ 本部会としては,このように,実地視察を各大学等における教員養成の質向上の契機となるような仕組みとしていくことが重要と考えている。

○ 一方,教職課程に係る各種改革が進められている中で,実地視察対象大学等のみならず,全ての課程認定大学等が,自ら,法令や教職課程認定基準に照らしながら教職課程を適切に運営することは,教員養成を担う大学等の当然の責務であり,社会に対する最低限の約束であることを,全ての課程認定大学等が十分に認識することが必要である。

○ 各課程認定大学等においては,学長及び各学部長はもとより,教職課程に関係する担当教員・担当職員全員が,主体的に,本実地視察報告書の指摘内容を理解した上で,教育職員免許法その他の関係法令や各種答申で提言されている内容を再度確認し,教職課程の改善を不断に行うことにより,教職課程の質的水準の維持と向上を図っていくことを期待する。

○ また,指定教員養成機関においては,教育課程,教員組織,施設・設備,指導大学の状況について,改善すべき点が多く確認されたため,引き続き,各指定教員養成機関における教職課程の運営状況について,教員養成部会として実地視察を行っていくことが必要である。

※各大学に対する個別の指摘事項については,後日,文部科学省ホームページに掲載予定。

 

平成28年度実地視察大学一覧

<教職課程認定大学>

平成28年 7月 5日 鶴川女子短期大学

7月19日 多摩美術大学

10月31日 沖縄キリスト教学院大学・沖縄キリスト教短期大学

11月 1日 筑波大学

11月 2日 筑波大学

11月 8日 桐生大学

11月21日 朝日大学

11月22日 名古屋経済大学

12月 5日 島根県立大学

12月 6日 島根県立大学短期大学部

12月15日 函館短期大学

12月16日 東京農業大学

12月19日 大阪大谷大学

12月20日 流通科学大学

(計14大学)

<指定教員養成機関>

平成28年 10月27日 聖ヶ丘教育福祉専門学校

(計1機関)

(総計15大学等)




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初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成29年02月 --