教職実践演習(仮称)は、教職課程の他の授業科目の履修や教職課程外での様々な活動を通じて、学生が身に付けた資質能力が、教員として必要な資質能力として有機的に統合され、形成されたかについて、課程認定大学が自らの養成する教員像や到達目標等に照らして最終的に確認するものであり、いわば全学年を通じた「学びの軌跡の集大成」として位置付けられるものである。学生はこの科目の履修を通じて、将来、教員になる上で、自己にとって何が課題であるのかを自覚し、必要に応じて不足している知識や技能等を補い、その定着を図ることにより、教職生活をより円滑にスタートできるようになることが期待される。
このような科目の趣旨を踏まえ、本科目には、教員として求められる以下の4つの事項を含めることが適当である。
上記1.のような本科目の趣旨を考慮すれば、授業内容については、課程認定大学が有する教科に関する科目及び教職に関する科目の知見を総合的に結集するとともに、学校現場の視点を取り入れながら、その内容を組み立てていくことが重要である。具体的には、以下のような授業内容例が考えられる。
授業内容例 | 含めることが必要な事項との関連 |
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主として1.に関連 |
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主として1.、3.に関連 |
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主として2.に関連 |
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主として2.に関連 |
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主として2.、3.に関連 |
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主として3.に関連 |
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主として3.に関連 |
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主として4.に関連 |
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主として4.に関連 |
(注)授業内容例は、どのような授業を行えば、学生が教員として最小限必要な資質能力の全体を修得しているか(理解しているか、身に付いているか)確認できるかを例示したものである。
課程認定大学においては、本科目の中で、上記の授業内容例を必ずしもすべて行う必要はなく、科目に含めることが必要な事項1~4が全体として確認できるよう、適宜、組み合わせてカリキュラムを編成することが望ましい。
含めることが必要な事項 | 到達目標 | 目標到達の確認指標例 |
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1.教員として求められる使命感や責任感、教育的愛情等に関する事項 |
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2.教員として求められる社会性や対人関係能力に関する事項 |
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3.教員として求められる幼児児童生徒理解や学級経営等に関する事項 |
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4.教員として求められる教科等の指導力に関する事項 |
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(注1)到達目標は、学生が具体的にどの程度のレベルまで修得している(身に付いている)ことが必要であるかを示した基本的・共通的な指標である。したがって課程認定大学の判断により、これらの到達目標に加えて別の目標も設定することは可能である。
(注2)確認指標例は、どのような観点に基づけば、到達目標に達しているかどうか確認できるかを例示したものである。課程認定大学においては、到達目標との関連を考慮して、適宜、確認指標例を組み合わせたり、あるいは別の確認指標例を付加して確認を行うことが望ましい。
上記2.に示すような内容の授業を効果的に展開するためには、授業方法の面でも、課程認定大学が有する知見を結集して、理論と実践の有機的な統合が図られるような新たな授業方法を積極的に開発・工夫することが重要である。具体的には、授業内容に応じて、例えば教室での役割演技(ロールプレーイング)やグループ討論、実技指導のほか、教育委員会や学校等との協力により、実務実習や事例研究、現地調査(フィールドワーク)、模擬授業等を取り入れることなどが考えられる。
(想定される主な授業形式)
学生に自己の課題を自覚させ、主体的にその解決に取り組むことを促すため、本科目の履修に当たっては、役割演技(ロールプレーイング)や事例研究、指導案の作成等の成果を省察する観点から、単に映像記録等を残したり、感想文を書かせるだけではなく、例えば学生に実践記録を作成させる等の工夫が求められる。
受講者数は、できる限り少人数(15名~20名程度が理想的)とし、演習の効果が最大限に発揮されるよう配慮することが望ましい。受講者数が増える場合には、大学の実情に応じて、ティーチングアシスタント(TA)等を活用するなど、授業形態の工夫を図る必要がある。
本科目の実施に当たっては、教科に関する科目の担当教員と教職に関する科目の担当教員が、学生の情報を共有するとともに、適切な役割分担や緊密な連携の下に授業計画の作成や授業の実施、学生の指導や評価に当たるなど、両者が共同して、科目の実施に責任を持つ体制を構築することが重要である。その際特に、教科に関する科目の担当教員の積極的な参画が求められる。
また、指導に当たっては、基本的に教職経験者を指導教員に含め、授業計画の作成、学生に対する指導、評価等の面で、学校現場の視点が適切に反映されるようにすることが必要である。
個々の学生の課題や不足している知識や技能等を補うために、教育委員会や学校等との協力のもと、学生の状況等に応じて、個別に補完的な指導を行うことも考えられる。補完的な指導の実施にあたっては、教員の適切な指導のもと、相互批評や集団討論等、学生が自己の課題を自ら克服していけるような主体的な学習形態や授業方法等の工夫を行うことが望ましい。
本科目の効果的かつ円滑な履修を進めるためには、各大学において、教員養成カリキュラム委員会等の組織を活用しながら、入学直後からの学生の教職課程の履修履歴を把握する体制を整備し、それを踏まえて、指導に当たることが必要である。
本科目の趣旨・ねらいや授業内容例等を考慮すると、履修時期は教科に関する科目及び教職に関する科目の全てを履修済み、あるいは履修見込みの時期(通常は4年次の後期)に設定することが適当である。
本科目の教職課程における位置付けや、授業内容例等を考慮すると、ある程度の授業時間数が求められることから、2単位程度の科目とすることが適当である。
本科目の性格が、教科に関する科目と教職に関する科目の双方の目的・内容等を基盤とするものであることを考慮すると、新たな科目区分(例えば、教職(総合)実践に関する科目)を設定することが適当である。
本カリキュラムイメージ(案)は、主として小学校・中学校・高等学校の教員を念頭に置いたものであり、その他の校種や職種については、上記を基本としつつ、それぞれの特性に応じて、各大学において工夫されることが必要である。
本カリキュラムイメージ(案)は、教員養成系大学や一般大学、4年制大学や短期大学、免許状の種類(学校種や教科種)等の違いにかかわらず、およそ基本的・共通的な内容をまとめたものである。したがって、各大学においては、それぞれの養成する教員像や教職課程の特色、学生の履修状況等に応じて、例えば他の内容や方法を取り入れたり、免許状の種類(学校種や教科種)に応じて「含めることが必要な事項」の特定の項目に重点を置いたり、「教職実践演習1・2」(各1単位)のように科目を分割して実施するなど、特色あるカリキュラム編成の工夫を検討することが必要である。
本科目も含めた教職課程の履修履歴については、あらかじめ大学と教育委員会との間で協議・調整を行った上で、教員の採用選考や採用後の研修の際に、参考情報として活用することも考えられる。
以上が、教職実践演習(仮称)のカリキュラムイメージについての、本協力者グループの検討状況であるが、このほかにも、会議においては、例えば以下のような意見があったところであり、今後、これらも含めてさらに検討を進めることとしている。
初等中等教育局教職員課
-- 登録:平成21年以前 --