資料9 中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会 (第28回) 議事要旨(案)

1.日時

 平成17年1月18日(火曜日) 10時~13時

2.場所

 如水会館 2階 「オリオンルーム」

3.出席者

 國分部会長、田村副部会長、大南委員、小川委員、小栗委員、梶田委員、川並委員、川邉委員、佐々木委員、高倉委員、角田委員、渡久山委員、永井委員、西嶋委員、橋本委員、平出委員、藤崎委員、宮﨑委員、森川委員、八尾坂委員、山極委員、山﨑委員、横山委員、鷲山委員、渡辺委員

文部科学省関係者

 銭谷初等中等教育局長、板東審議官、戸渡教職員課長、杉野専門教育課長、勝野視学官、伊藤専門官 他

4.議事

 (1)事務局から、配布資料について説明が行われた。その後、八尾坂委員より、アメリカ合衆国における免許更新制について説明が行われ、それに関して、質疑応答が行われた。主な発言は以下のとおり。(○=委員、□=八尾坂委員)

委員
 ヨーロッパや米国では、伝統的に初等教育と中等教育の教員を待遇面でも資格面でも分けてきたが、現在は、区別がほとんどなくなっている。また、米国では学校教育領域で博士号を取って管理職になっている。教育長はほとんどEDDであり、校長もEDDが増えていると感じる。学位と免許状の上進や現職教育との関係を教えていただきたい。

八尾坂委員
 教育長には、博士号相当という免許資格の規定がある。校長については、博士号を持って校長になる人は多くはないが、校長になってから博士号を取っている。教育委員会等の政策担当者は、生涯学習の中でEDDや博士号を取っている。PHDの方がレベルが高いイメージがあるが、プロフェッショナルな大学はほとんどがEDDである。米国の大学では、教職経験があり、その後博士号を取った人が教えている。また、政策担当者は、若い時に教職経験があり、その後、博士号まで取った人が通常である。米国では歴史的に、初等教育の免許状要件は低かったが、70年代から同じになり、最低限の基準では差異はない。このほか、マイノリティの教員が足りない地域や理数系の教員が足りない場合等に、一般大学を出て教職に就きたいという人を対象とした通常の教員養成とは異なるルートが設けられている。

委員
 米国では、行政研修が整備されていない中で、大学や民間等が主催するワークショップを使いながら、教員が自己責任で研修を受ける、また教員の自己研修を促すインセンティブとして更新制があると理解している。日本では、行政研修が整備され、かつ義務づけられおり、このような中で更新制を導入する必要性はあるのか。上級免許状やマスターティーチャー、管理職等、特別な資格を付与する免許状への上進のための更新制は考えられるが、それ以外で更新制を導入する場合、現行の行政研修中心の研修システムを見直すことが必要である。さらに、米国では不適格教員への対応や職務能力の評価・処遇については、評価システムがある。また、免許更新制とキャリアラダーとは直接関係なく、あくまで教員評価の面で機能していくと理解してよいのか教えて欲しい。

八尾坂委員
 米国では、各州が免許制度を持っており、更新の際の研修も一定基準のもとで、州や学区が研修システムを作り、主催もしている。州の認定の下、様々な機関も研修を行っているが、主体はあくまで行政である。米国では、教職に就かないのに終身有効でよいのかという免許状の価値の問題から、有効期限を付したが、これは日本にもあてはまる問題だと思う。日本の10年経験者研修を見ても、教育委員会が主体で行うとしても、他の機関での受講を認めるものもあり、この点は更新制でも参考になる。免許状の更新の問題とキャリアラダー、すなわち教員の人事や採用とは切り離して考えて良いのではないか。

委員
 米国の更新制のような機能を日本に活用する場合、入職時と、特別な資格を与える免許状の付与という点では、機能すると思う。5年研や10年研のような研修で更新制を機能させようとした場合、民間の研修の機会をオープンにした上で、教員が自らの職能開発の計画や、長所短所を踏まえた研修計画を立案して、受講するなど、裁量を拡大することが、更新制の可能性を検討することに値するものとなるのではないか。

委員
 米国では、教員の資格認定はどうなるのか。日本で更新制を導入する場合、更新制や現職研修、専門職大学院などを総合的な戦略として位置づけ、優れた人材を教職に入れ、質の高い教育をしていくにはどうしたらよいのか、処遇との連動も含めて、検討する必要がある。大学卒業後すぐに免許状を授与するのではなく、初任者研修の終了後に正規の免許状を授与し、これらの教員を対象に更新制を実施すべきである。また、資格認定と連動させ、最初の更新をした人のうち優秀な教員に認定教諭の資格を与え、次の更新で専門教諭の資格を与える、さらに次の更新では指導教諭の資格を与える。指導教諭は、認定教諭や専門教諭を育てる資格を持つ。将来、校長になるためには、最低、指導教諭の資格を持ち、専門職大学院でマネジメント等の実践的な学習をすることが必要としてはどうか。

八尾坂委員
 資格認定、サーティフィケイションなど名称は色々あるが、基本は免許資格である。一般教員だけでなく、校長、教育長、指導主事、カウンセラー、スクールナース等、専門分野ごとに免許資格がある。一般の教員が上級免許状を取得した場合には、履修内容から、採用側が専門性を判断している。

委員
 米国の場合は、全ての教員が学士号を持っているとのことだが、日本でいう開放制のような原則はあるのか。

八尾坂委員
 基礎資格としての学位は学士であり、日本の教職課程の要素はある。教育実習が日本より長く、事前・事後の研修が積極的に行われている。米国では、開放制のもと、認定機関の基準に合致すれば、誰でも免許状を取得できる。ただし、例えば成績が4段階で2.5以上が必要などの要件があることが日本と異なる。

委員
 行政が企画して教員が参加するという従来の研修システムは、変えていかなければならない。自らの職能開発であるから、例えば、自己負担とするなど、柔軟なシステムを考えても良い。

八尾坂委員
 米国には、行政が主体となって、多様な研修機会がある。日本では、行政研修というとイメージが良くないが、各センター等では良い研修を実施している。

委員
 失効後に再チャレンジできるのは米国らしい。日本では、ペーパーティーチャーや、課題を抱えた教員がいる中で、更新制は必要だと考える。更新制は教員の排除ではなく、再チャレンジできるシステムを作ることが大切である。米国では、いつ頃から更新制が導入され、どのような効果があったのか。日本の場合、更新制や上進制を強調しすぎると学歴重視につながる危惧がある。日本では処遇に反映されなくても、自ら資質能力を高めていこうという考え方がある。教育委員会が行う研修もあるが、自主的な研修を行う組織として、例えば、研究団体等がある。指定研修だけでなく自主研修も組み合わせて、どのように教員の資質能力を向上させるかを考える必要がある。日本で更新制を導入する時、どのようなスタイルが考えられるのかお聞きしたい。

八尾坂委員
 米国の更新制は19世紀中頃からやっており、歴史的に長い。米国の先生は給料やレベルに地域性があり、一概には言えないが、学習歴は高い。米国の場合、採用は学区ごとであり、人気のない地域は希望者が少なく、臨時免許状で対応している。教育委員会が開く研修であっても、自主研修の一つである。自主研修にも色々な形があり、グループ研修も認めているが、どのような研修を受講したかチェックはしている。

委員
 米国の場合、免許取得の段階から更新制の必然性があると考える。更新により、教員の待遇改善や資質能力の向上が系統的にできている。日本の場合、免許取得の時に、更新制が制度的に入っておらず、導入する必然性があるのか。また、日本の免許制度の優位性というものもあるのではないか。米国で終身免許を取る場合、単位を取得しているが、易しい単位を取るのではないか。日本のような教科中心の免許状ではないような気がするがどうか。

八尾坂委員
 米国では、修得単位について、免許更新の申告の際にチェックされる。免許教科に関わる、実践的な実務に関わる単位修得を勧めており、全く関係のない単位を修得することはない。教職生活の節目ごとの学習の機会は必要であり、従来の研修システムの課題を踏まえながら更新制を考えることが必要である。

委員
 最近の研修は充実しており、教員の意識や意欲の高まりも見られる。初任者研修や現職研修の成果が上がってきている中で、教員の意識を高めるためには何が必要なのかを考える必要がある。教員採用試験は、門戸が狭く厳しい状況にあり、その中で更新制が必要なのか。専門性を高めることは大切だが、子ども、保護者、地域との関わりで問題を抱える教員もいるので、養成段階でどのように対応すべきか検討する必要がある。

委員
 更新時の研修が、150時間、120ポイントなどとなっており、かなりハードだと思う。日本では、研修で学校を空ける時に気をつかうのが現状である。米国ではうまくいっているようだが、日本に当てはめるとどうなるか教えてほしい。

八尾坂委員
 米国では、免許更新の際の研修には、教科のほか、カウンセリング、学級経営、生徒指導など様々なものがある。150時間とは、5年間で150時間であり、州によっては1年間に20時間などと定めているところもあり、時間的にそれほど厳しいものではない。米国では、夏期休業中は給与をもらってないため、自主的に研修をするということである。日本でも、夏期休業中に教員が自主的に研修することは可能ではないか。

委員
 免許資格の問題、処遇の問題、養成・研修の問題の3者は切り離せず、うまく絡めて議論する必要がある。また、日本の教員は社会的地位が高いため、社会の見る目が厳しい。このような日本の特徴を踏まえて検討する必要があり、処遇の問題を真剣に考えなければならない。一般の教員と指導資格を持つ教員では、給料、処遇、役割等が異なるようにしなければならない。校長や教頭にならなければ、給与が上がらないというのは不合理であり、上位の教諭として、例えば校長級や教頭級の主任教諭を設けてはどうか。優秀な教員が、早く指導主事や管理職になることは問題である。

委員
 前の部会では、ネガティブな答申をしたが、二年後にはこのような状況になってきた。前回は、スタートの段階で国民会議の提言があり、更新制の可能性について検討するという元気の良い表現ではなかった。前回は結局、10年経験者研修に落ち着いたが、今回は、更新制を導入すべきだという委員が複数いる。時代も変わっており、それは良いと思うが、本当に更新制を導入するという決意を固めているのか聞きたい気持ちもある。

委員
 養成・免許制度は、各国の歴史や文化、社会状況によって規定される。米国で導入されていることが、そのまま我が国に導入して機能するというわけではない。ヨーロッパ諸国において、更新制がとられない理由は何か。また、我が国では、養成、採用、研修を通じて、次第に教員の能力が向上していく、また教職生活を続けることにより、さらに資質が高まっていくという考え方をとっている。更新制を導入するとすれば、一つには、自己又は教員全体の資質能力を高めるインセンティブとして機能させることが考えられる。もう一つは、このような教員の能力が高まっていくという考えに相応しくない、あるいは免許状の信頼を損なうような場合に、更新制によりチェックするということも考えられる。我が国に導入するとすれば、どういう観点に立って考えればよいか。

委員
 幼小の連携は深めなければならず、また幼稚園教員は80パーセントが短期大学卒であり、資質能力を高める観点から、抜本的に改革しなければならない。資質に問題のある学生でも単位を修得すれば免許状が取得でき、採用される。採用後に、キャリアや研修を積めば教員としての適性が身につくのかというと難しく、これらの問題をどのようにクリアしていくかが重要である。

委員
 更新制の議論には、二つの面がある。米国では、第一次大戦の影響で社会が激変したため、初等中等教育も変化を迫られた。社会の変化が教員の資質向上を求め、更新制が出てきたと理解している。もう一つは、今の社会では、若い人を中心に「経験」というものが通じなくなってきている。PISAの学力調査によると、子どもの成績には教職経験ではなく、教員の社会体験の豊富さや学歴の高さとの相関関係があるとの結果が出ている。社会が大きく変化する中で、日本はこのまま更新制を導入しないで良いのか心配であり、日本式の更新制を考えるべきである。社会は流動的なものということを前提に考えていく時代に入っており、我が国においては、更新制は、新しい流動する社会に対応する仕組みとして導入することは考えられないか。

八尾坂委員
 ヨーロッパの場合、更新制がなくても、需給との関係で同様の効果があるところもある。また、ドイツのように試補から教員になるところもある。更新制がないから、研修もないかというとそうではなく、イギリスなどはティーチャーセンター等で資質向上を図ってきた。地域ごとに、職の成長の機会は作ってきたし、校長養成の制度もできている。更新制を導入するとすれば、日本的な立場から、その在り方を考えるべきである。

 (2)資料4,5について、追加修正を行った上で、部会長が確定し、第2期教員養成部会における主な論点として、第3期部会に引き継ぐことが了承された。

 (3)資料7について、特殊教育免許の総合化に関するワーキンググループにおける論点整理として、第3期部会に引き継ぐことが了承された。

5.閉会

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成21年以前 --