資料2 中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会 (第27回) 議事要旨(案)

1.日時

平成16年12月17日(金曜日) 10時~13時

2.場所

東京會舘11F 「シルバールーム」

3.出席者

國分部会長、田村副部会長、大南委員、小川委員、小栗委員、梶田委員、川並委員、佐々木委員、高倉委員、渡久山委員、永井委員、西嶋委員、野村委員、平出委員、藤崎委員、宮﨑委員、森川委員、山極委員、山﨑委員、横須賀委員、鷲山委員

文部科学省関係者

結城文部科学審議官、徳永審議官、板東審議官、戸渡教職員課長、勝野視学官、佐野主任大学改革官、伊藤専門官 他

4.議事

(1)事務局から、配布資料について説明が行われた。その後、麻生誠東京女学館館長より、新教育大学の現状と課題について説明が行われ、それに関して、質疑応答が行われた。主な発言は以下のとおり。(○=委員、□=麻生館長)

委員
 大学が、2年後には誰でも入れる仕組みに変わろうという時代が来ている。ユニバーサルアクセスの時代に高校までの教育が変わる時期に合わせて、教員の専門職大学院を考えることには意味があると思うが、どういう教員像を大学の特色としてお考えになるのか。

麻生館長
 教職教育の問題については、「在り方懇」の報告書が一つの方向を示していると思うので、それをもう少し現実の中で肉付けする作業が必要ではないか。教科教育でなく、教職教育をもっと評価すべきであり、それには研究の裏付けが必要である。専修免許状の教員は、子どもたちを把握していくパワーがないと聞く。その点で、ユニバーサル化した場合、両面から難しい問題が出てくると思う。

委員
 専門職大学院を作る際には、学部における教職教育の延長ではなく、現職教員のキャリアアップや教員の職能を特定分野で開発することに目的を絞るというのは分かる。一方、教科教育を専門職大学院で扱うことについては批判的であるが、それは何故か。授業作りやカリキュラム開発は重要であるが、現在の大学には、トータルなカリキュラムの構築や全体的なカリキュラムマネジメントの研究者がいない。従来の教科教育の在り方は、批判的に検証されるべきだが、現場で要請される教科教育やカリキュラム構築は、重要な課題であると思う。その辺はどう考えたらよいか。

麻生館長
 米国において、エクセレントティーチャーというコンセプトで、特別な大学院で養成しているのが当たるのではないか。ただし、エクセレントティーチャーとは何なのか、どこに卓越性があるのかは分からない。教育のアドミニストレーターの養成が重要であり、それにより、教育委員会と学校現場の溝も埋まると思う。

委員
 兵庫教育大学では、スクールリーダーコースという校長、教頭や指導主事になることを想定したコースを設けたが、評判がいい。スクールリーダーコースについて、兵庫県の場合、教育委員会が実質的に声をかけて、選考を行っている。

委員
 新教育大学の大学院は、第二文学部、第二理学部的な指向が強く、そこから戻った教員は、教育実践から疎遠になってしまっていると言われる。また、設置審の基準の関係で、実践的な指導力を持つ教員がいるにもかかわらず、アカデミックに偏重せざるを得なかった。色々な問題があってダメだということではなく、新しいビジョンのもとに進めていけば良いと感じている。

麻生館長
 専修免許状は、東西対立が残る時代に創設されたものであり、3段階の免許制度とするのに全精力を注いだ。このため、内容を見ると疑問な点もある。専修免許状と新教育大学を結びつけて考えるのが良いのではないかと思う。

委員
 専修免許状については、創設することに精一杯で、これにより教員の資質能力が具体的にどう高まっていくのか、高めていくのか、また新教育大学や教育学部の大学院との関連づけをどうするのかについて、具体的な議論はあまりなかったと思う。

委員
 現職の中に、修士や博士を持つ教員が少ないのは、何故なのか。また、今の大学の教育課程は、現場の教員を養成するものになっているのか。ティーチングプロフェッショナルを考えることが今までも言われているのに、実現しなかったのは何故か。さらに旧帝大、旧師範、新教育大学の利点をうまく合わせるという形での新しい養成システムを作ることと、現在の大学が専修免許状の課程認定の申請をしていることについて、どのように考えたらよいのか。

麻生館長
 専修免許状については、高等学校はこれからも増えていくと考えられるが、小・中学校の場合は難しい。上進制度での取得は悪いことではないが、甘いという感じもするので、再検討する必要がある。専修免許状の見直しは、新教育大学を変えていくことと連動しているので、取り組んで頂きたい。旧帝大、旧師範、新教育大学の3点セットを組み合わせると、一番理想的な教員養成になるのではないかと思う。

委員
 教員には、小学校、中・高等学校、大学の3種類の教員がいると思う。戦後、師範学校、高等師範学校、大学における養成が一本化されて、それぞれの特色ある教員養成がなくなってしまったことに大きな問題がある。特に、小学校の教員養成は、中・高等学校や大学とは全く違うのではないか。専門職大学院を考える場合、小学校の教員養成はどうするか、中・高等学校の教員養成はどうするかを、あわせて検討しなければならないと思う。

麻生館長
 小学校については、戦前は師範教育がエクセレントティーチャーを作った。エクセレントティーチャーがリーダーシップを取っていたため、師範教育が生きていたと思う。戦後は、義務教育は国が責任を持ってやろうという意気込みがあったと思うが、戦前の師範教育との比較は難しいのではないか。

委員
 新教育大学の教科教育、特に理数などの分野では、アカデミックな教育が中心になっているという主張は理解できる。学習指導要領で理科を担当した際に、協力者として熱心だったのは、東大の理学部や工学部、東工大の先生方だった。教員養成大学の教員や理科教育の専門家の協力がほとんど得られなかったところに、教育学部や教科教育の在り方を考えていかなければならない理由がある。

麻生館長
 教科教育の教員が7~8割を占めると、大学・学部の運営の方向が決まってしまう。

委員
 教員免許制度の改正が、開放制の問題と常にぶつかって、妥協の産物のような形でまとめられてきていることについて、どう考えるか。また、専修免許状の取得について、数値目標を作って、様々な教育機関に働きかけていこうということであったが、未だ平均して1割と少ない。量が質を変換していくという考えに関連して、感想をお聞きしたい。

麻生館長
 小・中学校については、私学の方から比率が上がってくるのではないか。小・中学校については、一定のステータスを与えることもしないし、校長等が比較的消極的である。実際、採用してみて、専修免許状の取得者は、2年間学んでいる割には教育のパワーがなく、子どもをうまく抱えたり、学級を上手に運営する力に欠けていると感じる。

委員
 教員免許状の取得者が、現場であまり評価されないのは、量的に少ないためであり、ある程度数値目標を持って養成をしなければならない。教育委員会が大学院へ派遣をしないことにも問題があり、今後、地方分権の進展に伴い、益々派遣が難しくなるのではないか。教員養成学部の様々な問題点が、以前、修士課程を積極的に活用した教員養成の在り方について審議した時も、出されていたが、今の問題点をどのように受け止めているか。さらに、現在の教員養成学部の修士課程の中にも、教育実践にあまり重点を置かない所があるという問題をどう考えるか。もう一つは、専修免許状の基準が、一種免許状に量的な基準をプラスしたものになっており、質的な基準が議論されていないのではないかと考えるが、どうか。

麻生館長
 我が国では、教育委員会には教育の専門家が入っていないので、専門職大学院では教育のアドミニストレーターのコースを設けて、その修了者が教育委員会に配置されるようなシステムを考える必要がある。専修免許状については、3段階とすることに精一杯で、構造がしっかりできていない。

委員
 教員養成学部や大学院では、研究と実践の両面を担っているつもりだが、アカデミズムに傾きすぎたという批判がある。教科教育と教科専門や教職系科目との間はどうなるのか、既存の教員養成学部や大学院と専門職大学院との位置づけや役割を明確にしなければならない。専門職大学院は、現職教員のリカレント教育に大きな役割を担うのではないかと思うが、お考えを伺いたい。

麻生館長
 基本的に学歴がグレードアップしていく中で、修士卒が教員になる傾向は出てくると思う。学部卒業者と現職教員を一緒に教育することにはメリットもあるが、デメリットもあると考える。リカレントでやるか、最初から教育するかは、免許制度とも関連してくる。義務教育は、教員も含めて国が責任を持つべきだと思うので、各都道府県にある教育学部が、現職教員の再教育と新任教員の養成の二本立てで対応することが良いのではないか。

委員
 新教育大学の考え方が、一般の大学・学部に広がらなかったのは、新教育大学をバックアップするという状況が生まれなかったことに原因の一つがある。専門職大学院を考える場合、ある程度数のボリュームを持つ必要があるのではないか。新構想教育大学は3つであるが、この3つで良かったのかお伺いしたい。専修免許状は、学生が自分の得意分野を作っていく、それに大学が応えるという準備をして作った。その意味で、教員一般について専門性を高めたり、実践的な指導力を強化するという考えではなかった。専門職大学院を考える場合、教員一般について、高い専門性やより高度な実践的指導力を育成するということを考えるべきと思うが、いかがか。

麻生館長
 専修免許状の単位の取り方が、個別の大学に任されている。新教育大学は特化して、専修免許状でも特別な専修免許状にしていくべきだと思う。例えば、教育のアドミニストレーターの養成に特化すれば、変わるのではないか。アメリカはアドミニストレーターの養成が主である。何でもやろうとしてもうまくいかないので、特化してやるべきだと思う。専修免許状は、見直す時期に来ている。

委員
 新教育大学は、大学院として創設されたようで、必ずしもそうではなく、学部を持っていることを考えると、6年一貫を指向したのかとも想像するが、いかがか。専門職大学院を作る場合、学部との関係を一貫にするのか、切り離すのかについて検討する必要があるが、お考えを伺いたい。

麻生館長
 個人的には学部はいらないのではないかと思う。特化するということは何かを捨てるということであり、そうでなければプロフェッショナルスクールにならないのではないか。

(2)大南委員より、特殊教育免許の総合化に関するワーキンググループの審議状況について、説明が行われた。

(3)今後の開催日程について
 事務局より今後の日程について説明の後、閉会となった。

5.閉会

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

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