資料8 教員養成等の現状に関する教育委員会や新任教員の主な意見

 今後の教員養成・免許制度の改善の参考に供するため、本年4~5月に、東京都内の複数の区・市教育委員会の学校教育担当者(3名、校長OBを含む)及び小・中学校に勤務する新任教員(13名)から意見を聴取したところ、概ね次のような意見があった。

1.教育委員会担当者の主な意見

(1)新任教員の評価について

  • 小学校の教員については、保護者への対応ができないこと、学級経営能力が課題。集団としての子どもの掌握ができない。
  • 中学校の教員については、部活動の指導や生活指導、進路指導の力を求める校長が多い。
  • 現場でまず必要なのは、先輩教員を含め人の話を聞くことができる態度、明るい性格である。
  • 学力は高いが、子どもの扱い方や授業での話し方、子どもの関心を引き付けるテクニックが身についていない。
  • 理科、社会、総合学習等の子どもを動かして体験させ理解につなげていくような分野は、苦手。
  • 人とのかかわりができず、1人で悩んでいる新任者が多い。
  • 分からないことはパソコンに頼るため、先輩教員から学級経営や指導のコツを伝承してもらう機会が減っている。
  • 学部卒と修士卒で、資質能力に大差は無く、採用の際にも考慮しない。
  • 校種によって求める資質能力にそれほど差異はない。

(2)大学の教職課程(特に教育実習)について

  • 教育実習では、子どもと接する機会は多くない。長期間現場に入って実態を知ってもらうことが必要。
  • 教育実習で子どもの良さを知り、さらにTAを経験することで教職に対する意欲が深まるという効果がある。
  • 日頃から交流の多い大学から実習生が来てくれれば、個々の学生の情報を共有でき、実習の効率化にもつながる。
  • 教育実習の延長は現場としては負担が大きいが、ボランティアやTTのような形での現場体験は、学校側も受け入れやすい。

(3)修士レベルの教員養成について

  • 今日的な教育課題への対応など養成段階の教育内容は増えている。
  • 修士課程の2年間を実践力を身につける内容にすれば、意味がある。
  • 学部の後に2年間のインターン期間を設け、実習を重点的に行うことも考えるべき。
  • 早い段階から教員志望者を絞るのではなく、全て一般大学にして、希望者は教員養成大学(大学院)に行くというシステムも考えられる。
  • 専修免許状は、高度な研究を行なっている学校や中高一貫校では活かせるかもしれないが、どこの学校でも求められるものではない。

2.新任教員の主な意見

(1)学校現場で求められる資質能力について

  • 学級経営能力が最も重要。
  • 明確なビジョンと適応性。
  • 児童生徒に対する理解力、子どもが好きなこと、人間性を磨くこと。
  • 知識や教材を使いこなす実践力。

(2)大学の教職課程について

  • 学校現場の実態を分かっていない。概念的な講義が多く、実践例や子どもとのふれあいが少ない。
  • 研究者を育てるような専門性より、授業の流れやクラス運営等に関する専門性の方が大事。
  • 教科教育法は、指導案の焼き直し程度しかやっていないため、実際に指導案を作らせたり、模擬授業を行う方がよい。
  • 反抗期、思春期の難しい時期にある生徒の指導方法を教えてもらいたい。
  • 教育相談や教育心理など、子どもに結びつく授業を増やしてほしい。
  • 教科教育に比べて、教育論等は実践に結びつかず、余り役に立たない。
  • 教育原理や地方公務員法などは、教育の基本や流れを知る意味で、必要性は感じる。

(3)教育実習について

  • もっと学校現場に関われるよう、実習の質の改善と期間の延長が必要。
  • 実習である程度責任を持たせた上で、現場の壁を感じて、もう一度大学で学び直すことが有効。
  • 実習の時期を4年次より早くすれば、教員としての適格性が判断できる。
  • 早期の実習は、教員としての基本的素養が身につく前なので、効果が無い。実習ではなく「観察」という形で入ることができれば良い。
  • 単に免許を取るだけの人と、本当に教員を目指す人が同じ内容の実習であるのはおかしい。
  • 大学の指導教官で、実習時等にフォローしてくれる人は少ない。

(4)学校ボランティアについて

  • もっと時間を増やすとともに、大学で積極的に単位認定するべき。
  • インターンシップは担任と完全に分けられるので、重要な部分で関われない。副担任ぐらいの立場で経験を積ませることが必要。

(5)大学の教職課程担当の教員について

  • 現場経験のある教員と研究者とでは全く授業の質が違う。
  • 教員の話から現場の様子が見えてくると、後々役に立つ。

(6)教職に就く前に身に付けた方が良いと思うこと

  • TTや臨採等により、子どもの実態や関わり方、1年間を通じた学校の流れ、色々な教員の授業等を体験すること。
  • 教員養成大学以外の他の目的を持った人と触れ合うことや、様々な社会経験を積むこと。

(7)修士レベルの教員養成について

  • 修士までとするならば、現場実態に応じたカリキュラムの編成が不可欠。
  • 4年卒で、医学部のようにインターンを行うことも方法の一つ。
  • 1・2年で基礎的な勉強、3・4年で専門的な勉強をし、卒業時に認定試験を受け、合格者が修士で実践を重ねて採用という流れが良い。
  • 修士修了後は必ず教員になれるという、将来の保障が必要。
  • 修士のうち1年は実習を行い、残り1年で自分の進路を考えるようにし、仮に教職を諦めた場合のフォローも必要。
  • 修士の2年間は、学費的に厳しい。実習期間中も給料を支給してもらうと生活の保障ができる。
  • 現行の4年間でも、授業内容を実践的にすれば十分。若い柔軟性のある間に現場経験をした方が良い。

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