資料6 日本私立大学団体連合会 提出資料

中央教育審議会 初等中等教育分科会 教員養成部会「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について(中間まとめ)」に対する意見


平成27年9月10日
日本私立大学団体連合会


 日本私立大学団体連合会では、累次の意見開陳において「開放制教員養成制度」を堅持することにより、多様な経歴を持つ多様な教職人材の養成を行うことこそが、我が国の初等中等教育等における教員組織の健全な発達と活性化をもたらすであろうことを確信していることを述べてきた。これらの考え方を教員養成の根幹とする私立大学では、戦前の反省を踏まえて多様な教職人材を供給し、戦後における我が国の社会・文化・経済の発展の礎を築いてきたといっても過言ではない。
 この度、貴部会がとりまとめた「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について(中間まとめ)」(以下「中間まとめ」)で示された、使命感や責任感、教育的愛情に、専門知識や実践的指導力等の教員としての不易の資質能力や、生涯にわたって学び続ける資質能力を、全ての教員に身につけることができるようにするため、教員の養成・採用・研修の一体改革を行うとする基本的方向性には概ね賛同できる。その一方で、改革の具体的方向性においては、多様な経歴を持つ多様な教職人材の養成を行う私立大学の教員養成課程に配慮した審議を期待しており、特に下記の具体的方向性について意見を申し述べる。

 

1.教員育成指標及び研修指針の策定について(p13)
 教員育成指標や研修指針等の策定により、教職キャリア全体を俯瞰しつつ、教員がキャリアステージに応じて身につけるべき資質・能力等の明確化を図ることは、「学び続ける教員像」の実現に向けて意義あることと考える。教員育成指標や研修指針等の策定に当たっての「大学と教育委員会による目標の共有、連携」に際しては、その内容が画一的なものとならないよう、建学の理念を有する私立大学の多様性に留意した共有、連携がなされることにご留意いただきたい

 

2.教職課程を含めた総単位数を大学設置基準の範囲内とすることについて(p27)
 「中間まとめ」では「教職課程も含めた総単位数が大学設置基準の範囲内であること」が示されている。我が国の教員の質の向上を目指し、単位制の実質化や履修の適正化等により、教員養成課程における教育の質を一層高めていくことは、国公私立の設置形態を問わず重要であり、今後一層の努力を重ねる必要があると考える。その上で、多様な教職人材の養成を担ってきた私立大学等における開放制教員養成制度の意義や現状を踏まえた更なる審議を期待したい

 

3.学校インターンシップの導入について(p28)
 養成段階においても学校現場での体験活動が重要であることは論を俟たないが、単位化及び教職課程コアカリキュラムに盛り込むことが検討されている学校インターンシップ制については、学生の受入れ先の確保や、学生に対する事前・事後指導に向けた受入れ校との情報共有など、国及び教育委員会等による私立大学に対する積極的な協力・支援体制の構築が不可欠であることを強調しておきたい

 

4.教職課程の第三者評価の導入について(p31)
 現在進められている中央教育審議会大学分科会大学教育部会における認証評価制度にかかる分野別評価の導入を含む第3サイクル以降の在り方の検討過程においては、所謂「評価疲れ」による教育研究活動への支障が問題点の一つとして指摘されている。
 こうした大学の現状を是正し、教員養成分野を含む我が国の大学の教育研究の充実を真に図り、我が国はもとより国際社会に対してその質を保証していくためには、認証評価の導入を教職課程の一視点のみで捉えるのではなく、分野別評価の導入を含む我が国の認証評価改革の全体像を俯瞰した上で、教職課程を含めた我が国の第三者評価制度の総合的・段階的な整備が検討されるべきである

 

5.教科に関する科目の充実について(p31)
 「中間まとめ」では、教科に関する科目の中に「教科の内容及び構成」等の科目を設ける旨が提言されている。特に中学校・高等学校の教員にとって、教科の専門性は極めて大切であることから、教職課程の必要単位数を増加させない範囲において、教科内容のみならず学問的な幅広い知識と深い理解を涵養する教科専門が維持・充実される必要がある

 

6.教員養成系以外の修士課程における教員養成機能の充実について(p39)
 教員の資質能力の高度化に向けて、教員養成系以外の修士課程で展開されている教科専門の重要性に言及されていることに賛意を示したい。その上で教員養成系の修士課程においても純粋学問としての教科専門が維持されることが、我が国の教員の高度化を図る上で極めて重要であることを改めて指摘しておきたい。

 最後に、我が国の大学数の約8割、我が国の大学生の約7割を占める私立大学は、既に述べたように開放制教員養成制度の下で、我が国の教員養成において重要な役割を担ってきた。しかしながら、私学助成をはじめとする高等教育機関に対する我が国の公財政支出は国際比較においても低い水準にあり、私立大学の経営環境が近年厳しさを増す中にあって、今般の「中間まとめ」の提言を実現するためには、多様な特徴を有する教員を養成してきた私立大学に対する財政支援措置についての配慮が合わせて検討される必要がある
 なお、私学全体の視点から、この度の養成・採用・研修の一体改革を改めて俯瞰するとき、国や各教育委員会等が実施する教員研修への私立学校教員の参加を促すとともに、そうした教員研修への参加に関わる各私立学校に対する財政的な支援が図られる必要があることも最後に申し添えたい。

 

以上

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初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成27年10月 --