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これからの学校教育を担う教員の在り方について(報告)(案)

1 背景 ~教員の役割の重要性~
    社会が急激に変化する中、我が国の教育にも、以下のような時代の変化に即した対応が求められている。また、教育を支える教員についても同様に、時代の変化に対応し、あるいは時代の変化を先取りし、教員にふさわしい資質能力を備える必要がある。

  ○ 知識基盤社会への対応
 我が国においても知識基盤社会の到来とともに、知の創造の価値がこれまで以上に高まっている。そのような中、我々は、自ら課題を発見し、他者と協働してその解決に取り組み、新たな価値を創造できるような力を身に付けることが必要となっている。

  ○ グローバル化への対応
 世界全体のグローバル化が加速する中、多様な価値観と共存し、新しい価値を創造していくことが、これからの日本人に求められている。すなわち、イノベーションを創出し、多様な文化や価値観を受容し共生していくことができる人材や、イノベーションを創出するなど国際的に活躍できる人材の育成が必要となっている。

  ○ 人口減少社会への対応
 我が国を見ると、少子化と高齢化が同時に進行し、年齢構成バランスが著しく変化することが予想されている。50年後には、生産年齢人口が半分にまで減少し、社会保障においては、3人で1人を支えるという構図から1人で1人を支える構図へと変化することとなる。このような中、現在の豊かさを維持しつつ社会を安定させるためには、日本人の労働生産性を今より更に高めることが必要となっている。また、高齢化の進行により地域社会の維持が難しくなっていることが指摘されており、国民一人一人が社会に積極的に参画する意識を高め、社会を支えていく必要となっている。
 これらの変化への対応のために共通する解決策の一つが、教育の質の向上であり、なかでも学校教育の質をどこまで引き上げられるかが、今後の我が国の未来を左右すると言っても過言ではない。
 学校教育の質保証の仕組みとして、学習指導要領、教科書等に関する諸制度など教育内容や教育方法に係るナショナル・スタンダードが整備されるとともに、教職員定数に関する諸制度や義務教育費国庫負担制度、県費負担教職員制度を通じて適切な教員の確保が図られている。加えて、直接児童生徒を指導する教員の役割は極めて重要であり、教員の資質及び能力の維持向上及び開発を図るため教員免許制度や教員研修制度などが整備されている。
 今後、日本や世界の未来の姿を見据えながら、我が国の学校教育について、現状に適合しなくなっている制度運用を、より効果的・効率的なものとなるようさらなる改革を進めることが求められており、教員の養成・採用・研修についても同様に改革を進めてくことが必要である。
 この報告において、以下の課題を踏まえ、教員の養成・採用・研修の各段階における取組に一貫性を持たせながら、これらの改革を方向付けることとする。

2 課題 ~社会変化に伴い生じる様々な課題~
    教員の養成・採用・研修の各段階における主な課題は以下のとおりであるが、これらの課題は相互に関連し合うものであり、これらの課題を一体的に捉え、教員が生涯にわたって学び続けることを可能とする対応策を講じることが重要である。

(1)教員養成における課題
    知識の伝達というこれまでの一般的な指導方法のほか、児童生徒が主体的・協働的に学ぶ授業を展開できる力や、各教科横断的な視野で指導できる力、学校段階間の円滑な移行を実現する力など、従来の力に加え、新しい指導力が必要となっている。また、特別支援教育、小学校英語の教科化、道徳の教科化、ICTの活用など、近年の教育改革の方向に合わせた教員養成課程の充実を図るとともに、生徒指導や学級経営を行う力の育成にも対応することが求められている。さらに、養成段階において身に付けた力を学校現場においてすぐに活かすことができるよう、実践力を養うとともに、多様化した保護者の関心や要求に対応できる豊かな人間性と強靱な精神力を備えた教員を養成することも必要である。

(2)教員採用における課題
    学校に対するニーズが複雑化・多様化する中、豊かな知識と識見はもとより、幅広い視野を持った個性豊かかつ強靱な精神力を備えた人材を教員として確保することが必要である。また、一層深化する児童生徒の興味・関心に対応するため、より専門性を持った人材の確保も必要となっている。さらに、採用における当事者間のミスマッチを未然に防ぐため、採用前において学校現場を経験する機会を増やすなど、互いのニーズを符号させる工夫も必要である。

(3)教員研修における課題
    OECDの国際教員指導環境調査(TALIS)によると、日本の教員は研修意欲は高いものの、日常業務の多忙化などにより、必要な研修のための時間を十分に確保することが困難な状況であることが判明した。このため、教員研修のための機会確保が必要となっている。また、国、都道府県、市町村、学校がそれぞれ主体となって研修を行っているが、全体として体系だった研修が行われていない。このため、研修の実施主体が教職大学院等と有機的連携を図りながら効果的・効率的に研修を行うことが必要である。さらに、研修成果の可視化についても工夫することが必要である。

(4)教員免許制度における課題
    教育の質保証の仕組みの一つとして、我が国では教員免許制度が整備されている。この制度は、現在、学校種毎の免許状を基本としているが、近年、学校種を越えた連携や学制改革の検討が進められる中で、次世代の免許制度の在り方について抜本的に見直すことが必要となっている。

3 改革の方向性
    学校教育の成否は、正に教員の力量にかかっており、教員の資質能力を確実に向上・開発させることが我が国の学校教育の水準を高めることになる。その際、今後学校がチーム学校として、従来にはない組織としての機能が求められる中、教員についてもチーム学校を支える一員としての資質が求められている。
    このため、以下の「改革の視点」を持って、教員の養成・採用・研修の改革に取り組むことが重要である。

 【改革の視点】
  ○ 多様性への対応
 これまでの既成概念や固定観念にとらわれることなく、教育の目的の達成に向けて、多様な専門性や経験を有する人材によって多様な方法による教育を行うことができるような改革とする必要がある。

  ○ 体系的な取組
 教員の資質能力の向上について、より効果的・効率的に取り組むためには、大学などにおける養成、教員採用、採用後の現職研修などの各段階を通じ、また、国、都道府県、市町村、学校などの取組主体が、一貫した理念のもと、相互に関連して体系的に取り組む必要がある。

 ○ 次世代の教育像を意識した取組
 現状の課題に即した具体的方策の検討という従来型思考による改革も必要である。しかしながら、我が国は少子化・高齢化などの社会変化の速度が世界の中でも最も早く進行していることから、現状の課題への対応だけでは足りず、更に先んじて日本社会やその中の教育の将来像を描きつつ現在行わなければならない取組を逆算的に明らかにして、改革に取り組むことが重要である。

 以上、これからの学校教育を担う教員の在り方について、その背景、課題、改革の方向性について整理をしてきた。このような中、現在、小中一貫教育の制度化が喫緊の課題とされていることを踏まえ、まずは小中一貫教育制度の整備に当たっての取組について検討を行うこととする。

4 小中一貫教育制度の整備に当たっての取組
(1)現状
 政府は、終戦直後に制度化された6-3-3-4制の学制について、子供の発達の早期化や社会ニーズへの的確な対応の観点から、より柔軟かつ効果的な制度とするため、小中一貫教育の制度化を図ることとしている。これによって、今後、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校に加え、新たに小中一貫教育学校(仮称)が制度化されることとなる。このため、小中一貫教育学校(仮称)の教員に係る免許制度の在り方について検討する必要がある。

(2)対応方策
 1 小中一貫教育学校(仮称)の教員の免許状について
 小中一貫教育学校(仮称)の創設に当たっては、義務教育段階の学校種を全て小中一貫教育学校(仮称)に統一するということではなく、小学校、中学校は引き続き存置させるととともに、地域の実情に応じて小中一貫教育学校(仮称)を置くことができるような制度設計となる予定である。これは中高一貫教育を進めるために整備された中等教育学校と同じ仕組みとなる。
 また、学習指導要領については、既存の小・中学校の学習指導要領に基づくことを基本とすることとなる。
 小中一貫教育学校(仮称)は小学校の6年間の課程と中学校の3年間の課程を一貫して質の高い教育を目指す学校であることから、小中一貫教育学校(仮称)に配置される教員は、9年間の課程を見通した上で質の高い教育を実現できる力を有することが必要である。
このような点を踏まえつつ、本部会では、以下の3案について検討した。
 ア 小学校、中学校及び小中一貫教育学校(仮称)に対応した免許状の創設
 イ 小中一貫教育学校に対応した「小中一貫教育学校免許状(仮称)」の創設
 ウ 小学校教員免許状と中学校教員免許状の併有
 これらの案については、学校の種類ごとの教員免許制度という現行制度を前提とするとともに、以下の理由を考慮すると、小学校及び中学校の教員免許状の併有をもって対応することが適当である。これは中等教育学校における教員免許状の取扱いとも整合するものである。
 a 今回の小中一貫教育学校(仮称)の整備に当たっては、上記のとおり、小中一貫教育学校(仮称)に対応した学習指導要領を新たに作成することはせず、既存の小・中学校の学習指導要領に基づくことを基本とすることとなること。
 b 小学校及び中学校教員免許状の併有者の数は十分とはいえないものの、一定数は確保できるとともに、免許状の併有の促進策が一層講じられることが見込まれる中では、新たな免許状を創設する場合よりも機動的かつ迅速に人員の確保が可能であること。
 なお、上記bのとおり、両免許を併有するという今回の対応方策については、小中一貫教育学校(仮称)において教員の機動的かつ迅速な確保を可能とすること等を踏まえたものである。一方、平成14年答申「今後の教員免許制度の在り方について」では、幼稚園・小学校・中学校の連携や中高一貫教育の取組状況などを踏まえつつ、教員免許状の総合化を中長期的な課題として検討すべきであることが提言されているところである。
   本部会においては、このような検討経緯も踏まえつつ、アやイにおいて示された免許状についても、今後の小中一貫教育の定着状況、教育課程の特例措置の活用状況なども考慮し、また、これからの学校を担う教員に必要な力を身に付けさせるための養成・採用・研修の在り方といった大きな視点から、今後、引き続き検討を行うこととする。

 2 経過措置について
  上記の方法をとった場合であっても、小学校教員で中学校教員免許状を有する者が約60%、中学校教員で小学校教員免許状を有する者が約30%であり、更に地域によりばらつきが見られることなどを踏まえると、小中一貫教育の推進のためには、中等教育学校の場合と同様に、当分の間は、どちらか一方の免許状を有することをもって相当する課程(小学校教諭免許状を有する場合には小学校課程、中学校教諭免許状を有する場合には中学校課程)の指導を可能とする経過措置を設けることが必要である。
  この際、小学校及び中学校教諭免許状のどちらか一方を有する場合の指導範囲については、教科担任のみならず学級担任としての指導(道徳、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動の指導)を可能とすることが不可欠である(※)。
 ※ 中学校教員で小学校教員免許状を有する者の割合が極めて低いため、両免許状の併有者のみが学級担任を可能とするとした場合には、中学校課程における学級担任が可能な人員の確保ができない可能性が大きい。また、小学校教員で中学校教員免許状を有する者の割合は比較的高いものの、地域によっては併有率がかなり低く両免許状の併有者の確保が困難であることが想定されるとともに、小学校では1人の教員が1学級の学級担任としての指導と全教科の指導(一部の教科については専科担任制を採る場合も多い)を行うことが基本となっているにもかかわらず、もし、小学校教員免許状のみを有する者が学級担任としての指導を行うことができないとなった場合、全教科の指導を行うものの学級担任としての指導だけができない教員が存在し、その一方で、学級担任としての指導だけを行う教員を別に配置せざるを得ないこととなり、指導体制や定数確保上も、適切な小学校運営が不可能となると考えられる。

 3 両免許状の併有の促進による多様な人材の確保等について
  小中一貫教育学校(仮称)において、両免許状の併有者の確保をより一層円滑に行えるようにする必要がある。
  現在、現職の教員が隣接免許状を取得する場合、所定の講習等において必要な単位を修得することとなっており、例えば、3年の勤務経験のある小学校教員が中学校教員免許状を取得するためには14単位、3年の勤務経験のある中学校教員が小学校教員免許状を取得するためには12単位、それぞれ必要とされている。
  今後、小学校及び中学校教員免許状の併有を進めるためには、この制度について、例えば取得する免許状に関連する教職経験等を勘案して単位数を軽減するなど、都道府県・市町村教育委員会の判断を踏まえつつ、教員個人の経験や能力に応じ、従来よりも容易に他の学校種の教員免許状を取得できるようにする措置等を講じることを検討する必要がある。
  加えて、現職の教員が他の学校種の教員免許状を取得しやすくなるよう、大学や都道府県等における認定講習の開設が一層促進される取組を行う必要がある。この際、国においては、例えば小学校及び中学校教員免許状併有のための認定講習、通信等を活用した認定講習等に関するモデル事業を実施し、その成果を全国的に普及することが期待される。
  これらの取組により、小中一貫教育学校(仮称)に配置される教員については、例えば指導力に優れた教員や教科に関する専門性の高い教員、小中連携や小中一貫による教育に関する経験の豊富な教員など多様な教員の配置が進み、これらの教員が学校内において幅広く活動できるようになることが望ましい。
 また、小中一貫教育における利点の一つは、小学校における専科指導を充実できることである。このため、小学校や小中一貫教育学校(仮称)における小学校課程において、中学校教員による専科指導が一層促進される措置を講ずるとともに、他校種における指導範囲の拡大についての検討を進める必要がある。
 両免許状の併有を促進するためには上記の方策を講じていくとともに、教職課程において両免許状の併有を促進するため、教科・科目の統合や大くくり化などについても検討を進めることや、人事や処遇等について教員の免許状の併有に関するインセンティブ措置を講じることが考えられる。このため、国、都道府県、市町村、学校においては、両免許状の併有の促進策について、それぞれの視点から検討する必要がある。

5 今後の検討について
  以上、小中一貫教育制度の整備に当たっての教員免許制度の改革について検討を進めてきたが、今後においては、教員政策全般にわたって、今後必要となる改革について検討を進めることとする。既に教員養成部会に設置したワーキンググループにおいて、先行して必要な論点の整理が行われた。この論点整理を踏まえ、また、更に指摘される視点も加えながら、検討を進めることとする。
  その際、具体的な検討事項については、
 1 教員免許制度の在り方について
 2 教員養成の在り方について
 3 教員採用の在り方について
 4 教員研修の在り方について
 5 その他
として、上記1~3の背景、課題、改革の方向性を踏まえつつ、鋭意検討を進め、来年夏頃を目途として一定の方向性を示すこととする。

 

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成26年11月 --