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第1章 今後の社会教育行政等の推進の在り方について 3.今後の社会教育行政の取組の方向性~「社会教育行政の再構築」~

※下線は「中間とりまとめ」からの変更部分

 今後、社会教育行政は、2.(3)の課題に対応し、地域住民同士が学びあい、教えあう相互学習等が活発に行われるよう環境を醸成する役割を一層果たしていくことが求められる。このため、社会教育行政は、今こそ、従来の「自前主義」から脱却し、小中学校等への支援や社会教育施設間の連携の強化のみならず、首長部局や大学等・民間団体等とも自ら積極的に効果的な連携を仕掛け、地域住民も一体となって協働して取組を進めていくという、いわば「ひらく・つながる・むすぶ」といった機能を様々な領域で発揮すること、つまりは平成10年の生涯学習審議会答申及び平成20年答申で提言されたネットワーク型行政の推進を通じて社会教育行政の再構築を行っていくことが強く求められる。

(関係行政部局との連携・協働の推進)

○ 今日、人々の多様化・高度化した学習ニーズに応えるため、社会教育担当部局のみならず、他の行政部局においても、それぞれの行政課題に沿った普及啓発事業としての学習機会が提供されている。しかしながら、それぞれの実施主体が他の実施主体と連携することなく学習機会が提供されてきたため、事業の内容に重複や偏りがみられ、人々の学習ニーズや社会の要請に対応しきれない部分も生じてきている。

○ 社会教育担当部局以外の行政部局で行われる取組も、事業に参画する側から見れば、社会教育の対象範囲である組織的な教育活動である。このため、様々な領域にまたがる社会教育行政が従来の「自前主義」から脱却し、関係行政部局に対して、自ら積極的に効果的な連携を仕掛けていき、協働して施策を推進するネットワーク型行政の推進がますます重要となっている。

○ そして、今日では、教育委員会と首長部局による協議会を設け、緊密な情報交換や意見交換等が行われており、そのような連携を通じて、各部局間で目指すべき目標像を共有し、他部局の予算も活用した横断的な連携体制を強化するといった取組を行っているところも見られる。

《事例1 島根県の取組》

 地域に根ざした住民自治活動の振興を図るとともに、その中核となる公民館の機能強化を支援するため、「実証!「地域力」醸成プログラム」を実施している。
 本事業は、公民館が培ってきた「地域力」醸成のノウハウを、モデル公民館の具体的活動を通じて実証することにより、「地域力」の重要性について世論喚起することを目的として、平成19年度から始まった。モデル公民館選定のためのプレゼンテーション大会や事業成果を、マスメディアやインターネットを通じて積極的に情報発信してきた。 
 その結果、健康福祉部との連携により子育て支援の取組を促す「子育て支援枠」、地域振興部との連携により中山間地域の課題解決のための実践活動を促す「中山間地域実践枠」を創設するなど、実践活動の立ち上げ支援が広がっている。
《事例2 長野県松本市の取組》

 「健康寿命延伸都市・松本」を目指し、健康づくりを核として、教育委員会や健康福祉部はもとより、経済や環境、建設など様々な分野が連携したまちづくりを展開している。具体的には、地域振興を担当する地区センター、教育・学習を担当する公民館、地域福祉を担当する福祉ひろばの3つの機能が一体化したネットワーク組織である「地域づくり支援センター」を地区における地域づくりの支援拠点として35の地区に設置し、地域住民が主体的に地域課題を解決していくための地域づくりの仕組みである「地域システム」と地域住民の主体的な地域づくりを支援する行政の仕組みである「行政システム」を結ぶ役割を果たしている。

○ このように、教育委員会と首長部局とがそれぞれの課題に応じて密接な連携・協働を行っていくことにより、地域内外の様々な情報が集約されるとともに、それぞれが有する教育資源が効果的に活用されることによって地域住民の学習活動を支援するための様々な施策の展開が可能となる。その中で、社会教育行政は、各々の施策等の中で様々な行政部局間をつなぐ役割を果たすことにより、幅広い分野で社会教育の機能を生かせることになる。

○ なお、社会教育行政が、各々の施策等の中で様々な行政部局間をつなぎ、地域住民による自由・闊達な学習が行われるよう環境を醸成して、連携・協働体制を構築していくためには、地方公共団体の統括者としての首長の役割が重要である。このため、首長も人づくりや絆づくり・地域づくりにおける社会教育の重要性を踏まえ、連携・協働体制の構築に積極的な役割を果たしていくことが期待される。

(初等中等教育機関との連携・協働の強化)

○ 社会教育と初等中等教育機関との連携については、先に述べたとおり、一定の成果をあげているが、活力あるコミュニティが地域住民の学習活動を支え、生き抜く力をともに培い、住民の学習活動がコミュニティを形成・活性化させる好循環の確立に向けて、学校や公民館等を拠点とした多様な住民のネットワーク・協働体制を確立するなど、社会教育と学校教育との連携・協働を今後も一層強化していく必要がある。

○ このため、学校支援地域本部、放課後子ども教室、コミュニティ・スクールなどといった、学校と地域が連携・協働する体制を、全ての学校区において構築していくことが望まれる。

○ こうした中にあって教員には、保護者や地域住民との良好な関係を構築するためのコミュニケーション能力や地域人材との調整など多様なマネジメント能力が求められる。学校が地域に開かれ、地域社会に貢献していくためには、社会教育主事資格を持った教員の学校への配置、教員を対象とした社会教育的手法を身につけるための研修の実施、地域連携を進められるような校務分掌の工夫などを行っていくことも望まれる。

○ また、こうした連携・協働を一層強化するため、例えば、学校の建替えに際し、地域住民の社会教育の場としての活用も考慮した設計を行う、あるいは、学校施設と社会教育施設の複合化や余裕教室の活用の推進を図るなどの取組を、地域の実情に応じて推進していくことも考えられる。

(大学等の高等教育機関との連携・協働の推進)

○ 現在、多くの大学等の高等教育機関において、社会人が学びやすい環境整備の取組が行われ、また、大学等と地域との間で、様々な連携の取組も行われている。しかしながら、その多くは地域と教員の個人的な関係に基づくものであり、社会教育担当部局から、組織的に大学等に連携・協働を働きかけるといったことは必ずしも活発に行われてこなかった。

○ 今後、多様化・高度化する地域の課題に対応し、地域の活性化を図っていくためには、人材や情報・技術など様々な資源を有する大学等との連携・協働が不可欠であり、社会教育担当部局からも積極的に働きかけを行っていくことが求められる。

《事例3 栃木県の取組》

 栃木県では、学校と地域が連携した取組を行う際に重要な役割を果たす社会教育主事有資格者の養成に力を入れており、各学校に1名以上の社会教育主事有資格者の配置を目指し、宇都宮大学で実施される社会教育主事講習に教員を派遣している。その後、養成した有資格者が、市町村の職員や他校の有資格者等と、相互のネットワークを構築することができるよう、宇都宮大学と連携し、県内の社会教育主事や有資格者を対象とした交流会を実施している。
《事例4 和歌山大学の取組》

 和歌山大学地域連携・生涯学習センターでは、地域連携事業として、KOKO塾「まなびの郷」(和歌山県立粉河高等学校と連携)を展開し、「まちづくり」「福祉」「環境」「教育」「情報」の5つの分科会で独自のプログラムによる、年齢・職業・分野・地域等を越えたオープンな共同学習を行っている。また、住みよい地域づくりに参画する地域住民を育て支援するため、マナビィスト支援セミナー(和歌山県教育委員会と連携)を展開し、地域課題に関して自らの学びを深める共同学習をゼミ形式で行っている。

(民間団体の諸活動との連携・協働の推進)

○ 本来、社会教育行政は、住民のニーズに応じて、多様で豊かな学習の場を提供する観点から、社会教育関係団体、民間教育事業者、NPO、さらには、町内会等の地縁による団体を含めた民間団体の諸活動を支援すべきであり、民間団体が創意にあふれた活発な教育活動を展開できるような環境を整備していくことが重要である。

○ 今後、社会教育行政は、地域住民の多様なニーズに応えていくためにも、従来から社会教育の振興に重要な役割を果たしてきた既存の社会教育関係団体に加えて、NPO等の新たな市民活動団体や様々な民間教育事業者と連携・協働することが不可欠となる。そのためには、行政、民間団体が、それぞれの特性を認識し、尊重しあいながら、対等な立場のもとに積極的に協力し、より良い地域社会の実現に取り組んでいける関係を構築していく必要がある。

(企業等との連携・協働の推進)

○ 今後の社会教育行政においては、企業等の産業界との連携・協働も重要になる。企業は、専門的かつ高度な人材や施設設備など貴重な学習資源を有するとともに、社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)の観点から、地域社会の一員として、地域経済の活性化など地域の課題解決を担っていく役割も期待される。

○ また、その社員が自ら学習の機会をもち、自らの生活を充実させるとともに、学習の成果を活用することによる社会参画や地域貢献が可能となるよう、社員のワーク・ライフ・バランスを考慮した取組も望まれる。

(様々な主体との連携・協働を推進するための体制の整備等)

○ このような連携・協働を進めるに当たっては、首長部局による普及啓発事業の実施状況、小中学校等の状況、大学等・民間団体等が実施する活動の実態等、当該地域の実情に応じて、どのような分野に重点化し、そこでは何を行うのか、また、どのような連携・協働体制を構築していくのかを判断し、社会教育主事の適正な配置を含め、適切な体制を整備していくことが求められる。

○ なお、住民活動の広域化、市町村ごとの規模の違い、教育資源の偏在などにより、一つの市町村が独自に提供できるサービスには、自ずと限界があり、社会教育の取組の充実度は市町村間において差がある。したがって、教育委員会や各社会教育施設など、様々なレベルにおいて、必要に応じて市町村域を超えた広域的なネットワークを構築し、連携して社会教育行政に取り組むことも効果的である。

(地域社会を担う人材の育成)

○ 地域の課題解決にかかわる住民の活動においては、行政も含めた関係者間での意見や考え方が異なることがしばしば見られる。これらの意見や考え方の相違については、関係者間の相互学習や「熟議」の手法の導入等を通じて合意形成につなげていくことが期待される。それにより、地域の絆は、より強まり、活力あるコミュニティが形成されることになる。

○ このような地域住民の主体的な学習や地域づくりを活性化させていくためには、こうした活動のリーダーとなる人材の育成が重要である。このため、地域住民が、地域の多様な課題を総合的に捉え、他者との関係を築いていける力を身につけ、それぞれの分野におけるコーディネーターやファシリテーターとして活躍していけるようにすることが求められる。そして、各地方公共団体においては、地域の実情に応じて地域社会を担う人材の育成や確保の方策について検討することが望まれる。

○ また、このような地域住民主体による自由・闊達な学習や地域づくりが円滑に行われるような環境を醸成していくためには、社会教育主事など行政における専門的職員が、地域住民間の合意形成や絆の構築に向けてコーディネート機能を発揮し、また、関係者等の具体的な活動を触発していくファシリテート機能を発揮できるよう、資質・能力の向上を図っていく必要がある。

○ さらに、各地方公共団体においては、社会教育主事等の専門的職員をネットワーク型行政の要とし、関係部局の職員や民間団体等で活躍するコーディネーター等の地域人材とを結ぶ体制を構築していくことが期待される。

《事例5 福井県福井市の取組》

 原則として小学校区ごとに配置された地区公民館に運営審議会を設置し、地域の学校教育・社会教育・家庭教育の関係者等を委員として委嘱するとともに、地域住民を非常勤特別職の公民館職員として委嘱することで、地域住民が主体となって公民館の運営を行う体制を構築している。
 これら公民館職員に対しては、多様化・高度化する地域住民の学習ニーズに対応するため、また、公民館が地域のコーディネーター役を果たせるよう、意欲と資質の向上を図ることを目的として、福井市教育委員会主催の研修の充実に加えて、福井大学と連携・協力した研修も行われている。
 福井大学と連携した2年間の長期研修(「学び合うコミュニティを培う」)では、職場や地域で実践を展開しつつ、毎月1回、それらに関わる実践報告、実践者相互の交流・研究を重ね、実践と省察、仕事と研修が有機的に結びついたサイクルを実現している。20年以上続く社会教育主事有資格者の実践研究会の積み重ねがこの研修の基盤となっており、また、福井大学教職大学院における実践研究の方式も活かされている。

(都道府県の役割)

○ 地域住民が行う社会教育の支援については、地域住民に最も身近な基礎自治体である市町村が第一次的な役割を担っている。都道府県は、市町村の自主性・自立性に配慮しつつ、広域的自治体としての立場から、市町村事業の支援、都道府県立施設等における事業の実施、広域にわたる情報提供の仕組みづくり、市町村間の連絡調整等を行っていくことが必要である。

○ また、各市町村では対応が困難な専門人材や地域人材の育成、社会教育関係職員に対する専門性の高い研修事業の実施など広域的な対応が必要な事業について積極的に対応することによって、「社会教育行政の再構築」に取り組む市町村を支援していくことが求められる。

(国の役割)

○ 国の役割としては、1.各地方公共団体の主体的な連携・協働の取組が円滑に進むよう、全国的な観点から、「社会教育行政の再構築」に関する基本的な理念・考え方を示し、地方公共団体の取組の参考となるよう努めること、2.社会教育行政が中心となりながら、部局横断による取組、様々な主体との連携・協働による取組など、地域課題の解決に先進的に取り組む地方公共団体を支援し、優れた成果を全国に普及するモデル的な事業の推進を通じて各地方公共団体の多様な取組の進展を促すこと、3.国立教育政策研究所社会教育実践研究センターを中心に、社会教育の実態に関する調査や社会教育事業の質的向上を図るための実践的な調査研究を行うことにより、地方における社会教育の活性化を支援すること、4.社会教育行政の再構築を推進するために必要となる制度の改善を図ること等が考えられる。

○ また、今後、人々の学習を支える多様な主体が連携しながら地域における社会教育を推進していくに当たって、社会教育主事など行政における専門的職員は、どのような役割・専門性を持つことが求められるのかについての考え方を示すことが必要となる。そして、地域の多様な人材のネットワークの構築をコーディネートしていく高い専門性を持った専門的職員としての社会教育主事の資質・能力の向上を図るための方策を講じていくことが求められる。

○ 社会教育主事については、様々な要因により市町村における配置率が年々低下傾向にあるが、その主要な要因としては、厳しい行財政状況に加え、社会教育主事有資格者のキャリアパスの構築が困難であることがあげられる。社会教育主事有資格者の多くを教員が占める都道府県の中には、学校に社会教育主事有資格教員を配置することでキャリアパスを構築しているところもあるが、市町村レベルでは、社会教育主事の多くは行政職員であり、他の行政職員と同じ人事サイクルの中でキャリアパスの構築に苦慮している地方公共団体も少なくない。また、社会教育関係職員が削減される中で、職員に40日間の社会教育主事講習を受講させる余裕がなく、社会教育主事有資格者の養成が困難であるために社会教育主事を配置していない地方公共団体もある。

○ こうした状況の中で、「社会教育主事の必置規制が民間活力の阻害要因となっている」との理由で廃止を求める意見(※1)や、都道府県及び市町村の教育委員会の事務局に限定されている配置先を、学校や社会教育施設、首長部局に拡大を求める意見もある。

○ しかしながら、このような社会教育主事の養成・配置や資格の在り方については、社会教育行政の根幹にかかわる極めて重要な問題であり、社会教育行政における専門的職員としての社会教育主事の位置づけや、配置先の見直しも含めた配置の在り方、資格の汎用化も含め、引き続き、教育関係者、地方公共団体関係者、有識者など様々な関係者の意見を幅広く聴取しつつ、総合的に検討していく必要がある。

○ さらに、主体的に地域に参画し、学習成果を生かして地域の課題解決に資する活動を行う人材や各地域での活動の円滑化に資するコーディネーターやファシリテーターの通用性や信頼性が確保されるような質の保証の仕組みを構築することが重要である。このため、このような人材間のネットワークの構築など、社会教育に関わる人材の在り方全体について、引き続き検討し、その方向性を示していく必要がある。


※1 「さらなる「基礎自治体への権限移譲」及び「義務付け・枠付けの見直し」について【提案】」(平成24年7月24日全国市長会)

お問合せ先

生涯学習政策局生涯学習推進課

電話番号:03-5253-4111(内線3273)
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-- 登録:平成25年02月 --