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資料2-5 ~人の、地域の、日本の未来を育てる読書環境の実現のために~「国民の読書推進に関する協力者会議」報告(要旨)

平成23年9月

第1章 なぜ今読書が必要なのか

    読書には、以下に示すような意義がある。

  • 知識、想像力、思考力、判断力、創造性など個人の自立の基盤を形成。
    先人の知を吸収し、人生をより厚く深く生きることを可能にする。
  • 表現力やコミュニケーション力など、豊かな人間関係を築く言葉の力を涵養し、社会における協働性を育成する。
  • 「新しい公共」を担い、自ら社会の課題解決に取り組む力を育成する。
  • 先人の知恵やアイデンティティを継承・発展させ、新しい価値の創造を可能とする。「知識基盤社会」においては、個々人の「知」の総和こそが国の在り方を規定するものであり、読書は国のインフラと位置付けられるべき。
  • 「読むこと」は、それ自体が人生に大きな喜びを与えるかけがえのない贈り物。


 東日本大震災を経験した我が国が危機的な状況から立ち上がり、もう一度未来を創造する力を養うため、一人一人に、また、社会全体に、今こそ読書が求められている。

第2章 読書環境・読書活動の現状

(1)読書環境の現状

  (出版・書店の現状)

  • 書籍の新刊点数、販売金額は、いずれも減少傾向。平成22年の販売金額はピークの平成8年から約3割減少。
  • 書店数はこの10年間で約3割減。一方で、新古書店や書籍のインターネット販売などが普及。     

  (図書館等の現状)

  • 図書館は3,165館(平成20年)で、昭和38年以降一貫して増加。しかしながら、町立図書館は約6割、村立図書館は約2割の設置率にとどまる。
  • 図書館職員に占める専任職員数が減少し、図書館職員の約半数は非常勤。公立図書館の約6.5パーセントが指定管理者制度を導入。資料費予算額は減少傾向。
  • 貸出冊数は年々増加。平成19年度間における貸出冊数は全体で約6億3千万冊。
  • 高齢者や障害者も含めたすべての人がアクセスできる環境の整備や、ビジネス支援など地域の様々な課題解決を支援する取組、ブックスタートなど親子での読書を進めるための取組が進展。

  (学校における取組の現状)

  • 平成19年に学校教育法が改正され、義務教育の目標に「読書に親しませ」と規定。幼稚園教育要領、学習指導要領においても「言葉」に関する教育や「言語活動」を重視。
  • 学校図書館法に定める司書教諭は、12学級以上の小・中・高ではほとんどの学校で発令されているが、当分の間置かないことができるとされている11学級以下の学校での発令は未だ2~3割。学校図書館担当職員は、小・中で5割弱、高校で約7割の配置。(いずれも平成22年度。)
  • 文部科学省の定める「学校図書館図書標準」の達成を目指した地方財政措置「学校図書館図書整備5か年計画」(平成19~23年度)により、毎年度約200億円を措置。しかしながら、「学校図書館図書標準」の達成状況は小学校で約5割、中学校で約4割(平成21年度末)にとどまっている。
  • 各学校における「朝の読書」活動が活発化。「放課後子ども教室」などで学校図書館を活用し、読み聞かせなどを行う活動も進展。
  • 大学図書館における資料費、運営費は前年度からほぼ横ばい。電子ジャーナルに係る経費が前年度から12.4パーセント増の一方で、洋雑誌の購入種類数は減少傾向。(いずれも平成21年度。) 

  (「子どもの読書活動推進計画」等の策定状況)

  • 「子どもの読書活動の推進に関する法律」に基づき、現在、政府は第2次の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」を策定し、取組を推進中。
  • 都道府県及び市町村についても、各自治体における計画の策定に努めることが規定されているが、市町村については、平成22年度末時点で策定済み46パーセント、策定作業中12パーセントにとどまる。

(2)読書活動の現状

 (国民の読書活動の現状)

  • 総務省「社会生活基本調査」によれば、平成18年の1年間に「趣味として読書を行った人(10歳以上)」の割合は41.9パーセント。年齢層別には、10~14歳が50.6パーセントと最も高く、その後も49歳までは概ね50パーセント近い割合だが、50歳以上は年齢が高いほど割合が低く、70歳以上は23.4パーセント。
  • 毎日新聞社「読書世論調査」(平成22年9月実施)によれば、書籍を「読む」人は48パーセントで前年同、雑誌を「読む」人は58パーセントで前年より3ポイント減。1日の読書時間は書籍26分、雑誌24分の計49分(四捨五入の関係により計は一致しない)で前年より3分短くなっている。本を読む量や時間について、約7割が以前と比べて減少したと回答。

  (小学生から大学生までの読書活動の現状)

  • 文部科学省「平成22年度全国学力・学習状況調査」から小・中学生の1日の読書時間(月~金曜日)を見ると、小学生については全体の6割以上が1日10分以上読書をしており、「全くしない」は約2割。中学生については1日10分以上読書をする割合が約5割、「全くしない」が約4割。
  • OECD「生徒の学習到達度調査(PISA2009)」において、「趣味で読書をすることはない」と回答した我が国の高校1年生の割合は44.2パーセントであり、2000年調査に比べて減少しているものの、OECD平均37.4パーセントと比べるとまだ高い。一方で「読書は、大好きな趣味の一つだ」などと読書に好意的な回答をした生徒の割合はOECD平均を上回っている。
  • 全国大学生活協同組合連合会「学生の消費生活に関する実態調査」(平成22年10月実施)によれば、大学生の1日の平均読書時間は「冊子」27.0分、「電子書籍」6.1分で、全く読書をしない学生の割合は全体の約3分の1。

(3)読書環境の変化の動向、特にICTの影響

  • ICTの発展は、読書の在り方にも大きな影響。
     例えば、「ケータイ小説」は、携帯電話をツールに、自らが書き手であり、また読み手でもあるという今までにない読書環境を醸成。
  • 平成22年は「電子書籍元年」とも言われ、電子書籍の出版が活発化。図書館の中にも電子書籍の貸出等に取り組む館が出てきている。また、国立国会図書館による所蔵資料の電子化が進捗。
  • 今後、ICTを活用した新しい読書環境が急速に広がることが予想される中で、人と知との関わり方、産業や社会の在り方がどのように変化するのか、またそれにどのように対応するのかが社会全体に問われている。   

第3章 人の、地域の、日本の未来を育てる読書環境の実現のために~3つの提言~

 読書は、一人一人が自立して、かつ、他者との関わりを築きながら豊かな人生を生きていく基盤を形成するものであり、今後の社会の最大の資源である「知」へのアクセスや新たな「知」の創造の鍵となる、目に見えない社会のインフラ。

 しかしながら、我が国の読書をめぐる環境は厳しく、また、様々な情報手段や娯楽の登場に伴い、個人の読書時間が減少するとともに、読書を通じて得られる言語力、表現力などの重要性を軽視する風潮が拡がるなど、豊かな未来を創造する足がかりを失わせる危機に直面。

 誰もが読書に親しみ、その恵沢を等しく享受することのできる環境づくりに向けて、国、自治体はもちろん、社会全体で早急に取り組むことが必要であることを打ち出すとともに、そのために取り組むべき項目について、3つに絞って提言。

提言1:読書で人を育てる、「読書を支える人」を育てる

 読書で人を育てることが重要であると同時に、質の高い読書活動のためには、それを「支える人」が重要。

 <提言のポイント>

  1. 自治体の首長や議員の理解を得る
    • 読書の意義について、自治体の首長や議員等の理解促進が必要。読書を専門に担当する組織を明確に位置付けるなど行政の推進体制の整備も重要。
  1. 司書や司書教諭等の読書に関する専門的職員を充実する
    • 読書に関わる職員に優秀で意欲的な人材を得ること、特に、図書館の司書、学校図書館の司書教諭や学校図書館担当職員などの専門的職員の確保が重要。
    • すべての学校で読書に関する教育を保障するため、当分の間11学級以下の学校には置かないことができるとされている司書教諭をすべての学校に必置とすることなどが必要。大学の教員養成課程における「読書教育」「図書館活用教育」の導入などについても検討されるべき。
  1. 地域で読書に関わるすべての人を支援する
    • 地域でボランティアによる読書サークルなどの活動は、いわば地域のソーシャル・キャピタルであり、その相互の連携やネットワークにより、横断的な「読書コミュニティ」として発展することを期待。
    • 司書、教員、書店員、ボランティアなど読書に関わり、支える様々な人材の資質向上に向け、国や自治体、関係団体などは、資格制度の検討や教育研修プログラムの開発・実施等に取り組むべき。

提言2:住民参加で自治体ごとの「読書環境プラン」(仮称)を策定し、実現する

 読書推進の基本戦略として、自治体(市町村)ごとに、住民参加で独自の「読書シビルミニマム」(読書生活保障の最低基準)、その実現のための「読書環境プラン」を策定し、取り組むべき。

 こうした取組が、地域の文化や方言などの保存・継承、さらには地域における「新しい公共」の具体的な実現にも大きな役割を果たすことを期待。

<提言のポイント>

  1. 市町村が、主体的に、それぞれの独自性を活かして取り組む
    • 取組の中心となるのは自治体、とりわけ市町村。住民をはじめ多様な関係者の参加を得て、地域の特性を踏まえつつ、例えば中学校区単位で、乳幼児から高齢者、障害を持つ人など様々な人々が、学校図書館や公立図書館、公民館、書店などにおいていかに読書にアクセスできるようにするかなど、地域の読書環境の最低基準を設定、計画化して実現に取り組む。実施状況の評価や見直しも必要。
  1. 学校や保育所、児童館、公民館等の読書環境を充実する
    • プランの策定・実現には、学校や幼稚園、保育所、児童館、公民館等の役割が重要。あわせて、これらの場における読書環境の充実が必要。
    • 特に学校においては、「言語活動」はもとより、「コミュニケーション活動」「思索活動」等の充実に資するよう、「読書センター」、「学習・情報センター」として学校図書館の人的・物的環境を充実することが必要。
  1. 図書館の機能強化を図る
    • 図書館は、プランの策定・実現に専門的見地から参画するとともに、すべての住民が読書に親しむことができる環境整備、サービスの充実が必要。あわせて、図書館の情報と人(司書)を、個人や社会が抱える様々な分野の課題解決へのアクセスポイントとして活かすよう充実を図ることが必要。
  1. あらゆる世代の住民が参画し、議論し合う
    • 住民の協働・参画が鍵。「図書館熟議」などを通じて地域の読書や図書館を皆で考えるなど、「新しい公共」の視点からの取組が重要。
  1. 国は自治体の取組を強力に支援する
    • 国は、ナショナルミニマム確保の観点からの学校教育や社会教育における基準づくりの明確化などを通じた自治体等の取組の側面支援が必要。

提言3:読書の可能性や将来像を構想し、推進するプラットフォーム(基盤となる「場」)をつくる

 読書は、単に「本を読む」ということだけにとどまらず、人と人とをつなぎ、知的コミュニケーションの起点となり、さらには広く社会の在り方にも影響を与え得る多様な可能性や潜在力を持つ。こうした読書の力を活かしていくための様々な試みの基盤となるプラットフォームが必要。

<提言のポイント>

  1. 本を起点としたコミュニケーションを活発化させる
    • 読書会や読書サークル、イベントなどで読書体験を共有することや、日頃の読書の成果を何らかの形に表現してコンクール形式で競うような取組、「本を贈り合う文化」の育成などを提案したい。
    • 本を通じたコミュニケーションを広げるためにも、ワーク・ライフ・バランスを改善して大人の読書する時間を生み出し、「本と読書のある風景」を作りだすことを呼びかけたい。
  1. 読書に関する関係者の力を結集したプラットフォームをつくる
    • 読書と社会の各分野との幅広い関わりに着目し、経済学、社会学、脳科学、心理学、教育学など、多様な観点からの読書に関する総合的な研究や、諸外国の本をめぐる状況に関する調査など行うことが必要。こうした調査研究を推進し、読書の可能性や将来像について構想するとともに、読書の意義や楽しさを社会に発信していくため、読書に関わる関係者の力を結集したプラットフォームが必要であり、その在り方について引き続き検討すべき。

お問合せ先

生涯学習推進課社会教育課

-- 登録:平成23年11月 --