生涯学習分科会(第94回) 議事録

1.日時

平成30年7月23日(月曜日) 16時00分~18時00分

2.場所

会議するなら 新橋会議室 8E会議室(東京都港区新橋2-12-5 田中田村町ビル)

3.議題

  1. 人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について
  2. その他

4.議事録

【明石分科会長】 
 定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会生涯学習分科会(第94回)を開催いたします。本日は,お忙しいところお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
 本日は2つのテーマがあります。一つは,3月2日に行われた諮問の議論の一環として,高校生や大学生等の若者を地域の課題解決に巻き込んでいく方策についてのヒアリングを行いたいと思います。大体1時間を想定しておりまして,その後,残った1時間を,これまで議論してまいりました生涯学習分科会で出された主な意見のポイントについて,事務局より御説明を頂きまして,これまでの議論を振り返るとともに,今後の答申に向けた審議のために必要な論点などについて,自由討議を行いたいと思っております。
 それではまず,本日ヒアリングをさせていただく方々を御紹介したいと思います。一般社団法人未来の大人応援プロジェクト代表理事であり,皇學館大学現代日本社会学部教授の岸川政之様でございます。

【岸川氏】 
 どうぞよろしくお願いいたします。

【明石分科会長】 
 続きまして,千葉大学国際教養学部准教授兼コミュニティ・イノベーションオフィス地域イノベーション部門長の鈴木雅之様でございます。

【鈴木氏】 
 よろしくお願いいたします。

【明石分科会長】 
 なお,本日も,報道関係者より,会議の全体について撮影・録音を行いたい旨申出があり,許可しておりますので,御承知おきくださいませ。
 では,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【菅野生涯学習推進課課長補佐】 
 配付資料につきましては,議事次第,座席表のほか,資料が資料1-1から資料3までございます。それから参考資料につきましては,参考資料1番から参考資料4番までお配りをさせていただいております。
 また,机上に配付いたしましたドッジファイルには,これまでの分科会とワーキンググループでの配付資料のほか,参考となる資料を収納しておりますので,御参照くださいませ。
 もし過不足等ございましたら,事務局の方までお申し付けください。

【明石分科会長】 
 それでは,議題1の人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策についてでありまして,早速ヒアリングに入りたいと思います。最初にお二人の御発表を伺い,その後まとめて質疑応答と意見交換を行いたいと思っております。
 まず初めに,岸川さん,よろしくお願いいたします。

【岸川氏】 
 皆さん,改めましてこんにちは。三重県からやってまいりました岸川政之と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は,三重県の多気町という小さいまちの役場の職員を32年間やっておりました。今は銀行で3日間,それから大学で2日間という,2か所で働く生活をしております。会社を公務員時代に一つ立ち上げまして,今,社団法人という形で,2つの会社を実はボランティアで運営しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 きょうの事例発表は,廃校になる高校をどうしたらいいか,そういうところからスタートしていきました。4つの方法で廃校になる高校を発展的に残す提案ができまして,その3つ目の方法で取り組んだ内容を,きょうは御紹介させていただきたいと思います。
 それでは,資料に沿って,地域ビジネス創出事業(Social Business Project),略してSBPと申しております。これは,地方にいる高校生たちが輝いて,そして地域を知って,地域のことを愛して,地域の中で暮らしていける,そういう仕組みができたらいいんじゃないかなということで取組を始めました。もちろん外へ出ていくこともオーケーです。だけれども,今の教育の中では残念ながら,勉強しなさい,夢を持ちなさい,スポーツをしなさい,そういうトーナメント戦で戦っていきながら,そして勝ち残っていった者は,やっぱり都会へ出て行くという形になっておりますので,それはどうしてかなと思ったときに,地域のことを知らないからじゃないかな,そういう思いでこの取組を始めました。
 地域ビジネス創出事業,ソーシャルビジネス。ソーシャルビジネスはもう言うまでもありませんけれども,地域の課題をビジネスの手法で解決していきましょう,考えていきましょう,取り組んでいきましょうということです。ビジネスそのものではございません。
 ここにも書いてありますけれども,相可高校の食物調理科という,料理の勉強をしている高校があって,その出会いからいろんな取組がスタートしていくんですけれども,例えばソーシャルビジネスと申しますと,何かビジネスと付いていますから,高校生がビジネスをやるように思われますけど,実はそうではなくて,ビジネスの考え方でもっていろんな取組をする,そういう取組です。
 例えば相可高校の食物料理科はレストランをやっているわけです。将来食の道に100%進む子たちです。例えば大学に行って家庭科の先生になる子もいますし,あるいは管理栄養士の資格を取って,ばりばり企業の中で食品開発をやっている子たちもいます。あるいは学校給食の中へ入っていって,公務員になってふるさとの味を食べさせてあげたい,そういう思いで集団給食,あるいは病院給食の中へ入っていく子たち,あるいは料亭に行く子たち,いろいろいますけれども,100%食の道に行きます。
 その子たちがレストランを経営しているわけです。土曜日,日曜日,祝日,学校の休みのときに。そのレストランは非常に人気を呼びまして,売上げも5,000万円ぐらいあるわけです。もちろん給料はもらっていませんけれども,そこで得た収益でもって自分たちがいろんな料理に挑戦している。伊勢エビとかアワビとかいろんな高級食材を使いながら,ビジネスの手法を取りながら,いろんなものに挑戦している。それがソーシャルビジネスという私たちの位置付けです。
 その中で,ソーシャルビジネスの取組のヒントになったのが,この相可高校の取組なんです。実は今のお店は9,000万円というすごいお金を掛けて,今から十七,八年前に取組が始まりました。市町村の税金を管轄外の県立高校のために何千万円と出すという取組は,日本中を見ても,多分どこにもなかったと思います。それをみんなが「よし」と言ってくださって,イニシャルコストを出してくださったわけです。
 だけど,スタートしてから今まで,一円のお金もランニングの費用は頂いていません。電気代からガス代から小さい小物から修繕,全て高校生たちの稼ぎの中で,自分たちに投資しています。もちろん人件費がただだからできることではあるかは分からないですけど,それを私たちはソーシャルビジネスと呼んでいます。
 そういう取組をしているいろんな高校が集まってきて,フェアを実はやっておりまして,今年で3回目になります。「全国高校生SBP交流フェア」と銘打ちまして3回目。実はトータルでいきますと6回目になるんですけど,私は何かをやるときに必ず仮説を立てて,それを実証していきます。
 例えばこの相可高校のレストランにしても,その18年前に例えば町長に,町長の母校はすごい高校ですよねという話を。たまたま母校だったんですけど。その高校のために,料理の勉強をしている子たちに一番いいステージは何なのか,それはやっぱりお店を開くことではないでしょうかという話をしました。
 ところが返ってきた答えは,「岸川君,何を言っているんだ,市町村の税金はまちのために使わないといけないじゃないか,何で県立の高校,管轄外のところに使うんだ」という話で,だから最初は実は民間をくどいて,400万円というお金を出してもらって,屋台のようなお店からスタートしていきます。それが認められて,その仮説が正しいということが分かって,それならばということで,まち全体が動いていくわけです。
 同じようにこのフェアも,実は3回,私の小さいまちで実施をしています。行政の金は一円も使わずに,民間の補助でスタートしていきます。1回目のときは1,200万円というお金を集めてやりました。2回目は500万円,3回目は一番安くて幾らでできるか。200万円ぐらい掛かりました。ルールは簡単で,来る費用,は,全国,北海道から沖縄までいろんな高校が来ますけれども,自費で出してもらっています。ただ,着いた瞬間からおもてなしをさせてほしいということで,地元ですので松阪肉も食べさせてあげたいですから,そういうものを用意していくと,いろんなことを含めるとそれぐらい掛かっちゃう。
 今の話はこの高校生レストランです。こういう形で運営をされています。それからこのOBたちが運営する会社を作ってあげたかったんです。受皿を作ってあげたくて,「せんぱいの店」というお店,株式会社を公務員時代に仕掛けをしまして,立ち上げをしました。もちろん公務員ですから社長にはなれないし,ボランティアです。本当にすばらしい方々に恵まれて,社長さんもいろんな協力をしていただいて,今は2代目になっております。今年で9年目の会社になります。
 ちょっと余談ですけど,店を拡大することを最初は考えまして,ちょっと途中で失敗もしましたけれども,今は安定をしておりまして,ずっと黒字で運営しております。あるいは「高校生レストラン」というドラマ化にもなりました。私の役を実はドラマの中で伊藤英明さんがやってくださって,ちょっと負けていますけど勘弁してください。
 あるいは世界を舞台にということで,2年前に三重県で行われたサミットのファーストレディーたちに,高校生たちが日本料理のフルコースを振る舞いました。英語できちっとプレゼンもやりました。
 あるいはこういうふるさと納税の商品なんかも作りながら,そういうものは国の方でもいろいろ認められて,いろんな賞を頂いております。もうここに挙げられないぐらいいっぱい頂いています。
 それから,今回のSBPの発祥の地は同じく三重県の高校なんです。この高校が南伊勢高校。日本の人口はあと大体50年で3割ぐらい減っていきます。三重県は大体平均的な減り方をします。だけど,このまちは実は三重県で一番人口減少が進むところで,20年ぐらいで半分ぐらいになっちゃいます。理由は簡単で,場所的な不利な点もあるんですけれども,海岸に面していまして,東南海の地震が来ると6,7割壊滅すると言われています。なので非常に厳しいところです。そこにある高校,募集しても半分も来ないような高校で,6年前には廃校のカウントダウンが実際にもう行われていました。
 そこの高校と出会って,いろんな取組をしていくわけです。どうしたらこの学校を残せるか,このすばらしい子たち,偏差値は高くないかも分からない。だけどとても賢いんです。とても心根の優しくてすてきな子たち,そしてその子供たちを取り囲む周りの大人たちの温かさです。それに感動して,ソーシャルビジネスプロジェクトというのをこの学校で立ち上げていきました。
 目的は一つです。プロジェクトなんですけれども,普通科で定員が割れている高校を残すには,もう普通科では駄目だ,こういう人口が半分になっちゃう地域をステージにして,いろんな地域資源,人とか物とか歴史とか文化とか産業とかそういったものを,高校生が勉強して触れ合って活用して,まちづくりとかビジネスを提案していく,それを行政とか周りの大人たちがみんなで頑張れよと応援するような,そういう取組をしていく,それを学校の教育の中でできないか。簡単に言うと学科改編です。そういったものができたら,この学校は地域にとって必要な学校に変われるんじゃないか,そういう思いでこの取組を始めました。
 結果はすぐに出てきました。どんどん成長して。例えばすごく有名な政治家の方もお見えになったりとか,定員が割れている高校に日本中からいろんな方々が視察に見えるようになりました。そして高校生たちが小学校,中学校,大学で授業をして,それに触れ合った小学生も大学生もみんな感動して変わっていくんです。その姿を見て,まちがまた元気になっていきます。そして先生が変わっていく。実はこれは,この高校を残すために取り組んだことがスタートだったんです。それは目的ではなくて手段だったんですけど,その手段が今どんどん日本中で広がろうとしています。
 このフェアは去年2回目,今年も8月に行われます。参考資料で1-1-2というのを付けさせていただきました。「高校生の“のびしろ”は,そのまま日本の“のびしろ”だ!」というこのキャッチコピー,すごく気に入っているんですけれども,文部科学省の共催も頂きまして,この事業をさせていただいております。文部科学省の共催事業になったのは今年で2年目でございます。いろんな後援団体,あるいは協力企業の皆さんに協力していただいて,若い高校生たちを応援していただいております。
 裏の方に今年のスケジュールなんかも書いてありますけど,内容についての紹介は時間の関係上,省かせていただきます。
 これは去年の2つの団体です。このフェアでいろんな取組を高校生たちが発表してくれるんですけれども,静岡県の高校が文部科学大臣賞,そして三重県知事賞は愛知県の高校が受賞しました。あとは企業賞があります。例えばGoogle賞とかいろんな企業賞がありますけれども,その企業賞は各企業が企業の基準でもって選ぶのであって,私たちのフェアのコントロールするところではありません。でも言い方を変えると,三重県知事賞よりもGoogle賞をもらった方が喜んでいたかも分からないです。
 最後に,SBP(Social Business Project)の一番の肝について,このような取組は,もう日本中の高校でやっているんです。だけど一つだけSBPが違うところがあります。日本中でやっていることのほとんどは,みんな一国一城のあるじを気取ります。何とか高校は何とかの取組です。行政でも同じです。何とか町は何とかの取組です。それが非常につまらないと思いました。
 なので,このSBPの一番いいところは,ネットワークなんです。つながっていって,やっていることは全部フルオープンです。そして何をやっていいか分からない高校が,別に参加証みたいなのものはないんですけれども,やりたいなと思ったら,そのSBPの取組のネットワークをのぞいて,いろんな取組がありますので,あっ,これだったら僕たちできるんじゃないかなといった取組を,まねをしてもらってオーケーだと,そういう取組です。
 このまねをするといいことがいっぱいありまして,例えばセレクトギフトというものがあります。これは高校生が地域にあるものを詰め合わせして,中にラブレターを入れるなどいろんな工夫をして,地域の人に買ってもらって,まちから出ていった人とかいろんな人に贈物として使ってもらって,自分たちのまちのいいところをPRしたい,そういう思いで作ります。
 これがいいなと思ったら,これをまねしてもらったら,例えば一つの県で一つの高校が取り組んだら,全国で50ぐらいできちゃうわけです。でも1校でこれを,自分たちの高校はこの取組だというのでクローズしちゃったら,できても3つか4つですよね。このスケールメリットです。
 この前,島根県の吉賀高校というところに行ってきたんですけど,そこでお話をさせてもらったら,去年の第2回のSBPに参加してくださっていました。見学で来られたんです。静岡県の高校生が,廃線になるJRを何とかPRしたいということで,カレンダーを作っているんです。それを見ていいなと思って,鉄道はないのでバスが廃線になると困るというので,バス停をいろんな角度から撮ってカレンダーにしたんです。それがすごい人気で。
 そのことを言われたんです。岸川先生,実は去年参加して,まねをしたんです,お恥ずかしい話ですけれどもと言われましたけど,私はそれがすごくうれしくて,先生,何言っているんですか,これは私たちがやりたいことですよ,よくまねをしてくださいました。しかも進化をさせてくださっているんです。
 どういうことかというと,日本中の高校生たちが例えばそういうカレンダーを作る。まちにあるものをPRしてカレンダーにしていく。もしその取組が広がっていったら,それはスケールメリットですよね。一つの運動になるわけです。それが私がSBPを通して実現していきたいなということなんです。
 ちょっと映像を,1分間動画を3つ見ていただきます。最初の高校が,南伊勢高校,先ほど紹介した高校が,ゆるキャラでたい焼きの機械を作っているんです。その機械を作るところから発生して,3つの高校がまねをしていくんです。今回のSBPの交流フェアに参加してくださる高校が動画を添付してくださったんですけど,たまたまその参加校の3つの高校が,偶然ですけれども,一つの取組を発展させてくれているんです。ちょっとごらんいただけたらと思います。よろしくお願いします。

(映像上映)

【岸川氏】 
 このゆるさですね。
 じゃ,2つ目をお願いいたします。まねをして発展させていくというところです。

(映像上映)

【岸川氏】 
 海外営業まで実はやっていて,来年はもう輸出が多分始まると思います。
 3つ目は,ここに発注した青森県の高校です。

(映像上映)

【岸川氏】 
 どうもありがとうございました。こうやってつながっていく。これはまだキッチンカーまで次はやって,B-1グルメのようなことができたりとか,どんどん広がっていく。これが私たちのつながり,広がりだと望んでいるところです。どうも御清聴ありがとうございました。

(拍手)

【明石分科会長】 
 岸川様,ありがとうございました。御意見,御質問は最後にまとめていただきたいと思います。
 続いて,今,岸川様より御発表がありましたソーシャルビジネスプロジェクトにつきまして,事務局からも,昨年度実施しました調査研究の状況などがまとまっていますので,補足を頂けると思います。
 では,事務局より,ちょっと補足をお願いいたします。伊藤参事官,お願いします。

【伊藤生涯学習政策局参事官】 
 生涯局参事官の伊藤と申します。よろしくお願いします。お手元に配付しております資料1-2-1と,そして1-2-2,この2つに基づきまして,このSBPの取組の成果と,また同じような取組を進めていくに当たりましての課題について,調査結果を実施した内容について簡単に御報告申し上げます。
 まず,この資料1-2-1ですが,岸川氏から今,このソーシャルビジネスプロジェクトについて御説明がありましたけれども,我々がこれに着目させていただいた観点としては,大きく2点ございます。
 まずは地方創生の課題として,高校卒業時が一番人口流出をしていることです。高校生が地域資源,地域を知らないまま進学したり,卒業,また就職していくということがございます。そういった観点からすると,高校在学中に地域を知るような取組が,この地方創生の課題解決のためには必要なのではないかというのが1点目でございます。
 もう一つの課題は,地域における仕事の少なさといった観点。これに対してでございます。持続可能なまちづくりといったときに,地域の仕事をする大人と一緒にビジネスの手法で取り組むことを通じて,地域における仕事の少なさという問題意識に触れる効果が非常にあるという観点の下に,この取組を我々も応援しているところでございます。
 加えてもう一つ大きな趣旨としては,先ほど岸川氏のお話がありましたとおり,これは1高校1地域だけの取組ではなくて,全国交流フェアとして,地域資源を知って見直して活用していく機運作りといったところで,いろんな高校がつながって交流している。そういった取組というのは,我々も全体を把握することで政策効果の把握もできますし,また何より,こういった取組が全国同じような課題を抱えている地方に広がっていくことで効果があると思っております。
 なお,先ほど岸川さんが恐らく御遠慮されて,お話はありませんけれども,このもともと手掛けられた相可高校の高校生レストランの取組でございますけれども,効果といたしましては,県内外からの利用者が増えたということで,地域の交流人口の増加にも資していますし,また高校生がここで地元農産品を使うことによって,地元の特産品が注目を浴びて,地域活性化にも資していること,また先ほど,会社を立ち上げられたとお話がありましたけれども,ここで経験した高校生が,地域で関わる場ということで,「せんぱいの店」を立ち上げられて,ここで仕事として,地元に残っていかれるという意味での地域の人材定着という効果もあるところでございます。
 1-2-2,この調査研究について御説明申し上げたいと思います。この調査研究の背景は今申し上げたようなところでございますけれども,対象の共通項として,ここがキーワードでございます。高校生と,そして地域のビジネスの手法を通じた取組に対して,ターゲット設定としては3点ございますけれども,一つは地域の課題を対象とした取組であること,そして地域の大人が関わって,机上ではなくて実践をしているという,この3つの要素を備えた取組でということで,昨年この全国交流フェアに参加された高校23地域,そして参加してみたいということで視察等されている20地域と,計40地域強を調査対象にし,この取組についての効果,そして進めていく上での課題を研究したものでございます。
 まず,現状どういう取組の形態にしているかというところでございますが,圧倒的に,今現在は特定の高校単位で活動されているところが多い。実際の活動形態というところに関しましては,この青色で占められているのがその高校の有志,また,次の薄い青色が部活動,このピンク色の部分が特定の科目で実施されているものでございます。
 立ち上げに当たって何が重要なキーワードになっているかという部分でございますけれども,これはやはり青い部分のここで囲ってありますとおり,熱意のある生徒であるとか,それを支える教職員,校長先生のリーダーシップというのがきっかけではありましたけれども,併せてどういう支援体制があったら,より進むのかというアンケートの回答に関しては,ここに希望要因とございますとおり,その地域の自治体と教育委員会の協力であるとか,またいろんなアドバイスをしていただいたりとか,その地域の企業とつなぐコーディネーター的な役割というところがあると,より取組が進んでいくのではないかという声も上がっております。
 実際に活動した高校生の成果でありますけれども,こちらについての声というところで,高校生の自己評価でいきますと,実際に取組の中で自分の考えとか意見を他人,また人前で発表する機会を,この取組を通じてたくさん経験したことで,自分はこの能力が伸びたことを自己評価するという声であったりとか,一番上にございますけれども,地域の課題について調べたり考えたりする機会が多くあったということで,よく理解するようになったという評価も自己評価としてあります。
 ただ,更に一歩踏み込んで,仕事というところに関しましては,一番上の赤枠にありますが,この地域の課題ということと比較して,地域の仕事について調べる機会というのが,少し少ないところがあります。もともとのSBPの取組であります地域の課題の解決を通じてというところに,更に踏み込んだ意味でのその地域の仕事を通じてというところは,取組によってはまだ差があるのではないかというところがございます。
 それと,成果ということですが,次のこちらでございますけれども,同じくSBPを通じて得た成果と,そして成長実感の相関関係を見たところでございますが,SBPを通して何が自分は得られたかというところであります。「信頼できる友人ができたと」いう声も多いんですが,それに対して,例えば「信頼できる地域の大人ができた」とか,「地域の仕事についてよく知ることができた」という声と比較してみますと,「信頼できる友人ができた」というところについて,より自分がこの取組を通じて成長できたかというところの「あてはまる」,「あてはまらない」の差が,そんなに実はないんですけれども,「信頼できる地域の大人ができた」とか,「地域の仕事についてよく知ることができた」という回答については,成長実感に関しては大きく回答としては伸びているところで,より通常の高校における学業生活とは違う形で,地域の大人だったりとか,仕事という実態経験を通じて,自分の成長実感を高めていることが確認できると思います。
 同じような観点でございますけれども,これについては同一コーホートの経年比較ではないんですが,この取組についてまだ始めたばかりの1年生から,実際に最後の卒業の3年生まで比較しますと,学年を経ることに将来の自分の考え方について,「いま住んでいる地域で働きたい」とか,また「地域を出ても,いずれ戻ってきたい」という声が高まったりということだったり,実際に地域にある仕事について調べる経験をされた場合というところだったりに関しては,同じように,「いま住んでいる地域で働きたい」とか,またいずれそのようなことを考えたいという声が大きく上がっている効果もございます。
 最後に,この取組を推進するときの課題という部分でございますけれども,こちらのSBPの継続・推進というところであります。効果というところについては,実はこちら,左端の部分でございますけれども,高校生が実際に深い学びにつながるとか,地元高校生の地域定着についての課題,関心,こういったものが深まるといったような効果がありますが,一方で,活動推進に当たっての課題というところでいきますと,下から3点目ですが,「教育委員会・高校との関係構築・連携が難しいと思う」という声であったりとか,また一番下の四角囲いでございます「活動を推進・継続できる人材や資金が整わない」というような課題が挙げられています。
 同じような整理を,また違う観点でございますけれども,期待する支援策というところでありますが,同じような取組をされている他の地域,市町村での取組の紹介というような,いわゆる優良実践事例の紹介,把握とともに,コーディネーターであるとか,またテーマ活動に沿った連携・協力者先の紹介ということで,取組をつなぐ人,つなぐ専門家の必要性が,こういった取組を更に他地域で広げていくときの課題というところで浮かび上がってきているところでございます。
 簡単ではございますが,昨年行いました調査研究について御紹介申し上げました。

【明石分科会長】 
 ありがとうございました。
 続きまして,千葉大国際教養学部の鈴木准教授,お願いいたします。主に大学生による地域課題解決の取組における「COC+」について御説明を頂きたいと思います。

【鈴木氏】  この発表では千葉大学で特定の学部に関わらず,全ての学部において進めています人材づくりについて御説明させていただきます。
 まず私の自己紹介ですが,大学に来る前にコンサルをやっていました。大学に来てから15年ほど,大学のガバナンス側,キャンパスに関するマネジメントをやってまいりまして,2013年からCOCの責任者をやらせていただいております。2016年,3年前から,新しくできました国際教養学部の方に移っております。それと3つ目ですが,横芝光町のシティマネージャーということで,内閣府の地方創生の人材派遣制度で,2015年から首長の非常勤の副町長という形で,週1回勤務をしております。最後ですが,ちば地域再生リサーチというNPOを15年ほどやっておりまして,年間4,000万円ぐらいの地域づくりの事業規模で,職員を3名常に雇用して動かしています。
 それで,本題に入っていきますが,諮問の内容を見せていただきまして,大学生がこれからの地域の担い手となる若者ということであれば,千葉大学がやっている人材育成にぴったりだということで今日は御報告させていただきたいと思います。
 千葉大学はCOCとCOC+,両方動かしておりまして,2013年度からはCOCで,千葉市から西側の都市部と言われているところ,若者が人口流入超過しているところを対象として,特に地域づくりですとかコミュニティづくりの人材育成をしております。2015年度からはCOC+という形で,若者が人口流出してしまっている地方圏,千葉市から東側,あるいは南側を対象として,若者に魅力のある産業を作るような人材育成をしています。そういうセットで千葉県全体を見て,人材育成を図っているところでございます。
 そこにおいて千葉大学が目指す人材像としましては,学生であっても地域の一員であることに変わりありませんので,全ての学生が何らかの形で地域に関われるような人材を目指すというのが1番目です。2つ目が,地域課題を解決する人材。3つ目が,地域産業をイノベーションする人材で,従来の職業像にプラスして,地域課題を解決できるような,あるいは地域志向の人材という3つの人材像を目指してやっております。
 まず初めの取組は,地域志向の入り口に寄せることは非常に難しいので,その入り口を造成するということです。地域のことを知らず,あるいは地域の課題さえ知らない,そういう学生が来ていますので,まず入り口に立たせることが大事です。平成27年度から約2,400人の新入生が全て,地域に関する必修の授業を取るということにしています。
 ただ,千葉大学では全学動員体制で,様々な先生が20科目を担当しそれぞれ学生が配置されますので,いろいろ教え方もあるということになります。来年度からはもう一つ必修の科目を新たに作ることにして,そこではeラーニングで共通して,地域の課題や地域のことを学ぶ授業を計画中でございます。
 そういう授業では,必ず日本の人口減少のグラフを見せまして,皆さんが働き盛りの頃には1,000万人から2,000万人いなくなるということを実感してもらう。それを悲観的に見るのか,チャンスがあると思って見るのか,それは学生によって違うと思いますけれども,こういうことを必ず伝えています。
 次の取組は,地域志向のマインドセットです。入り口に立ってもらったら,次に全ての学生がそういうふうにはならないと思いますけれども,グラデーションで地域に入っていくような組立てです。
 必修の授業によって導入された学生が,多数・多様な地域志向の科目を受講しつつ,2年,3年,4年という形で徐々に地域に入っていくような,そういう授業のカリキュラム構成を作っています。
 地域志向の科目を毎年10個ぐらいずつ増やしています。それによって1科目以上地域志向科目を受講した学部学生が増えてきておりまして,今年度には修業年限が6年の学部を除き100%になります。
 2つ目の人材像である地域づくりの人材育成では,コミュニティ再生ケア学という副専攻を動かしています。主専攻で,例えば工学部のドローンの研究室に入った学生が,そのドローンを使ってどういう地域づくりができるのかということを学ぶ副専攻が作られております。
 これは23単位取ると履修証明書が発行されるというプログラムでして,千葉大学は一般教養を普遍教育と呼んでいますが,普遍教育と専門教育の横断型のものです。昨年度初めての修了者が8名出ております。現在139名の多様な学部の学生が,鋭意学修を続けているというところです。
 このプログラムを作るに当たっては,日本には地域づくりのモデルがありませんので,イギリスやドイツのコミュニティマネジャーと言われている方にヒアリングをしました。いわゆるコンピテンシーですけれども,どんな能力が必要なのか,いろいろ聞いてまいりました。
 ただ,彼らに言われるのは,「そんなのはOn-The-Job Training(OJT)なんだよ,教えられないんだよ」と。そこを何とかといって聞き出したのが地域づくりに必要な能力リストなんですけれども,やっぱりOJTで5年掛かるということです。であっても千葉大生に教えたい内容がこういう形で出てきたということで,これらを先ほどの副専攻のカリキュラム構成の基本にしています。
 大きくは,先ほどの必修のほかに,座学で学んで更にPBLとか実習型,演習型で行うという一般教養の科目と,専門の科目群での構成になっています。
 もう一つ,COC+の方ですが,こちらは地域に,若者に魅力のある産業を作っていくような学問体系です。こちらは30単位ということで,今42名の様々な学部の学生が,鋭意取得に向けて取り組んでいます。
 そういったものに対して,学生が落ちこぼれないようにサポートするほか,高校教諭向けのベネッセですとか,河合塾の進路指導の冊子にも取り上げられておりまして,そういったところから学生が入り口に入ってくることも期待しております。
 次の取組は,地域に出るということで,一番大事なのは地域との「関わりしろ」を造成するということだと考えています。まずは様々な地域づくりのNPOをやっている方々に,50時間の受入れプログラムを作っていただき学生を受け入れてもらっています。いろんな学びがありますので,やっぱりNPOじゃ駄目だという学びでも私はいいと思っておりますが,そちらで様々な学びを提供してもらっております。
 そのほかに地方公共団体ですとか,地域づくりをやっている企業の部署に行く地域指向型インターンシップというのがございます。今年度からはそういった企業から,課題とかプロジェクトを出していただいて,それに向けて学生が提案するインターンシップを始めています。5つの企業とこれから進めていくということになっております。
 続いて,カレッジリンク・プログラムです。これは千葉大学に特徴的な授業です。学生と市民が共にワークショップ形式で学び合うというもので,学生は2単位,市民は1万円の受講料で,最終的に学長名の修了証書が発行されるというプログラムです。学生は市民の社会体験ですとか実際の課題を持った実感から学ぶということ,市民の方は若い感性ですとか発想から共に学ぶということで,非常に人気が高い授業になっています。千葉市,松戸市,柏市で開講しています。企業のサイボウズさんが持っているアプリを作るソフトで,地域課題を解決するようなものを作ってみることとか,今ちょうど私が担当の,「シェアでまちをつくる」でも,自治体や企業に講師としてきていただいて,終わった後に交流会等を開催し,市民の方々には具体のプロジェクトを立ち上げてもらうことが内蔵されておりますので,そういったことを期待しているということです。
 あとは地方部の長柄町とか横芝光町などでも,カレッジリンクを展開しています。市民と学生が共に学び合う授業としては,良いモデルになるんではないかと考えております。実際に,市民が耕作放棄地に出ていって活動が始まるといったことが,大学の授業を通して行われていくということが進められております。
 そのほかPBL型の授業としましては,千葉大学は廃校になった小学校をサテライトキャンパスにしています。そこで地域とつながるという授業をやっています。また,昨年度からは銚子市とか勝浦市とか南房総市,あるいはいすみ市で実際の地域づくりのプロジェクトを起こしています。いすみ市では特産品を新たにデザインするとかの話が生まれております。
 今年度は,COC+の方は4年目ですので,先ほど言ったようにグラデーションですからPBLを増やして,今年度は8コースがあります。こういった学生がばらばらに参加していますが,学生同士の交流が欲しいということで,秋に学生同士の交流会を計画しています。
 正課外でも,千葉テレビさんとテレビ番組をドキュメンタリー形式で撮りながら,オリジナルアイスを開発するような授業をやったりしています。こういった場合には学生にはアルバイト代を出しています。
 また,各地でやっているPBL型の成果を,昨年の12月ですけれども,東京駅前のKITTEでテスト販売しています。その販売に当たっての企画とかレイアウト構成まで含めたものを,PBLにしています。7万円ぐらい売り上げたという話です。
 そういう取組がありまして,それをマネジメントしていくための幾つかのポイントを説明させていただきます。まずは「関わりしろ」を造るということで,これはCOC+の枠組みでもありますが,県内の様々な大学等の高等教育機関,14の市町と連携をしています。こういったところに課題を出してもらうということです。それに対して連携する都心の企業や地元の企業にも入っていただいて連携を強化して「関わりしろ」を造るというのが,我々教員側の役割になっています。
 もう一つが,地域の拠点作りで,一つ目がサテライトキャンパスです。これは先ほど申しましたように,千葉市の廃校になった小学校を無償で借り上げていまして,そこで生涯学習の場ですとか,あるいは住民を対象とした介入型の研究事業が進められています。それと,先ほど申しましたカレッジリンク・プログラム等の授業を開講して拠点化を進めています。
 もう一つが,地方の方にも千葉大学のローカルハブという形で,今4か所,空き店舗とか空いた商工会議所を使って拠点にしています。
 それと,地方にいてマネジメントする地域コーディネーターという職能の教員がおりまして,そこでPBLを作ったり,学生の受入れをしたりしています。
 このように大学としては学生を地域に押す,PUSHすることはできますけれども,同時に地域側からPULLしてもらうということがないと,結局何か電車の脱線ゲームみたいに,教員が地域に学生を出して,地域の方に先回りして更に学生を待っていなきゃいけないようなのはちょっと変です。やっぱり地域の方にしっかりとしたキーパーソンや元気な企業ですとかNPO,それらがいなければ作ってPULLしてもらうという,PUSH&PULLのような仕組みが必要だと思います。
 あとは地方でのPBLの隘路となる学生の交通費とか,宿泊費については,今,国から地方への大きなお金が動いておりますので,自治体等から得た研究費や補助金のような形で取ってきまして,もちろん産業振興とか商品化もするのですが,PBLの開講の経費を作らせていただいているということになります。
 千葉県では,こういった形で今,各大学,各自治体との連携によって広がりを見せているというところです。
 次の取組として,出口です。学生をマインドセットしても,今地方に,あるいは地域に受皿がないので,本当に地域志向の教育をしていいんだろうかというのが私のいつもの悩みです。地域づくりは学生にとって働き方,職業としても魅力が必要なわけなんです。徹夜して準備して,これは1円にもなっていないんじゃないかみたいなことに,あるとき学生も気付くわけです。そうすると,地域づくりというものは職業として,学生には魅力的に映っているのかなといつも考えてしまいます。今,日本には地域志向となった学生の受皿が存在していないというところが大きな問題でもあります。
 そこで,千葉大学では大学発ベンチャーを作りました。今年の4月に株式会社ミライノラボというのを作って,大学生が起業するための応援をすること,あるいは実際にミライノラボの方に就職の受皿の役割があってもいいかなと思います。あとは私どものNPOでは,大学生を今までに4名雇用したことがありますので,そういったところも受皿として踏ん張ってやっているところです。
 プレゼンの最後の方で幾つかポイントをまとめておりますので,簡単に説明させていただきます。地域の課題の担い手は市民活動もNPOもあるので,大学が関わるんであれば大学らしさが必要だということを考えております。あとは先ほどの岸川さんの報告にあったように,高校生が追い掛けてきていますので,高校でもできないことをやらなきゃいけないし,千葉大学としては,ほかの大学ではできないことをやらなきゃいけない,そういうことを授業で千葉大生に課すと,答えは出なくなってしまいます。それほど難しいわけです。
 次に,地域というのは直接的な課題解決を望んでいる傾向がございます。一方で,大学というのは先進的な課題解決を提案する傾向がありますので,そこでどうしてもミスマッチが起きてくる傾向がございます。
 それと,地域は学生をマンパワーとして利用したいという傾向もあります。その場合私は,千葉大生にとってどんな学びがあるのかという企画書を作ってもらいます。そういった中で,ボランティア的でいいのであれば,ボランティアセンターを紹介するということにもなります。何より企画書が作れるということも地域の一つの大きな力になりますので,そういったエンパワーメントという形で課している意味合いもあります。
 学びの内容・質・量の設定も難しいです。OJTでしか教えられないものをどういうふうに教えるのか,どこまで失敗させながら学ばせるのかというのが難しいです。私も15年地域活動をやっていますから,学生の提案は失敗するかどうかすぐ分かるので,学生にわざと失敗させるということもさせますが,一方で,地域の迷惑にならないかどうかという判定も難しいところです。
 成績判定も難しいです。今,学生はGPAを非常に気にしますので,そもそも住民とのコミュニケーションとかが必要なPBLに来ないんです。そうすると,そもそもの地域に出る学修というのが頓挫しますので,今年から成績判定は「合」「否」判定のみとしてしまいました。これも試行で,学生にとってどちらの方がモチベーションが高まるのかというのは,これから検証してみたいと思います。ただ,地域づくりのマインドセットがまずは重要なので,1度地域に来てしまえば,そこでマインドセットはできるという自信がありますので,一度は来てもらいたいということで進めております。
 そして,正課外のプロジェクトでは,単位は関係なく地域づくりに入りたい一定数の学生もおります。あるいは入り方が分からないという学生もいますので,そういった場合は学生へのリターンを作りながら関わってもらっています。
 学生は一瞬しか地域に関われませんので,なかなか地域側の不満として,いつも学生がいないじゃないかみたいなことは当然あります。それと,地域づくりをやって,地域がよくなってきているのが分かるのが,3年か4年後なんです。そうすると,自分が関わったことが,どういうふうに地域づくりに貢献したのか分からないまま学生は卒業していく,そういう不幸があるということでございます。
 学生を受け入れる地域・自治体の素地作りも大事です。地域・自治体が大学に何かお願いすればいいんじゃないかみたいなことだけ考えていると,こちらは消耗してしまいますし,あくまでやっぱり地域の主役は地域ですので,大学はメインにはなり過ぎないようにするのも大切です。一方でエンパワーメントは大学の役割ではないかとも考えております。
 大学と地域の「関わりしろ」を増やすための営業も必要です。様々な教員に関わってもらうためには,やっぱり研究費を取ってきて,PBLを実施してもらうことも必要になってくるということです。その際に,マネジメントとしては,大学,自治体,地域それぞれガバナンスや力学がありますので,その特質を熟知することによって,初めていいマッチングができるということかと思います。
 私の方からの報告は以上でございます。

【明石分科会長】 
 両先生,ありがとうございました。
 これから20分ほど質疑に入りたいと思います。例によって,御質問,御意見のある方は名札を立てていただけるといいかと思います。横尾委員。

【横尾委員】 
 ありがとうございました。岸川先生には以前にもお世話になりました。ありがとうございます。いろいろな取組,事例として参考になるかと思っています。
ただ一方で私が思っているのは,日本は明治維新以来,まずは殖産興業に取り組みましたので,手工業から重工業,重化学工業,その後の発展に向けての人材育成をしたと思うのです。それはひょっとしたら工場や生産現場で働く人をメインに置いた教育だったかもしれないと思う訳です。つまり,教室型で教えて,スキルを身に付けて,とにかく優秀なスタッフになってほしいという教育の方向性だったという面です。
 時代が変わって戦後という時代になって,もちろんそういったことも続いていますが,特にこの5年,10年で大きいのは,よりクリエイティブな新しいことをやっていける人材が確保できるかどうかということが勝負だと思っています。特にこれは,この10年ぐらいの時流で見ると,21世紀型スキルをはじめとして,新しい時代の要請にどう応えるかという側面があると思っています。
 たまたま今日は,いろんなところで多様なセミナーとかシンポジウムがあって,短時間ですが,とあるIT関係のところを見せてもらってきました。そうすると,やっぱりもう調査をされていました。すなわち,ビジネスの世界が現実に求めている人材と,今の教育システムが提供している人材のミスマッチがあるということです。
 まず,ビジネス界は採用したい人材に何を求めているかというと,プレゼンテーションがよくできて,よりクリエイティブなことが創造できて,人も含めて物をオーガナイズして,やっぱり経営ができる,仕事ができるという人を求めているのです。だけど,学校教育とか今の社会教育というものは,なかなかそこまで至っていないということなんです。
 そのギャップを埋めるような活動として興味深かったのですが,これは考えていくと,日本の教育にもっとイノベーションを起こしたり,あるいは自分で業を起こしたり,あるいは自分で業を起こす起業家を育成したり,そういったものを入れるというところまでいかないと,今日お示しいただいたものがもっともっとアクティブになるには,まだまだ足りないのではないかなと感じます。
 学校や学園の中で,少人数かとは思いますが,クラブ,サークル,あるいは活動の仲間としてやるのはもちろん興味深いですけど,本当に将来いろんなところに行くには,起業家,いわゆるアントレプレナーとか言いますけど,そういうことを感じています。
 それで,そこまでいくようなことを文部科学省も考えないと,日本は十数年後には負けているのではないかということがあります。例えば科学系の論文等は,今は中国が圧倒的に増やしてきています。そしてニュービジネスに関しても,中国がもう膨大な投資を国家主席が宣言してやろうとされています。アメリカは当然もうオバマさんのときに始まっています。
 そういったことも含めた大きな仕掛けというのを考えないといけないのではないか。改めて説明を聞きながら感じました。これは誰に聞くという質問ではないかもしれませんが,もしお感じの点がありましたら,お三方,あるいは文部科学省の方で,思い切って意見を言ってもらってもらい,聴かせてもらってもいいのかなと思うのですが,いかがでしょうか。

【明石分科会長】 
 岸川さん。

【岸川氏】 
 じゃ,座って失礼いたします。先ほどの愛知県の高校,偏差値で言うならば,高い学校ではないかもしれません。普通科の女子生徒たちがSBPをやりたいということで取組を始めました。何をやっていいか分からないということで,先ほどの南伊勢高校のゆるキャラでたい焼きを焼いているというのをヒントにして,それをまねして,私たちはそれを2つの産業,伝統産業だけど斜陽産業に近い瓦産業,でもすごい技術を持っている。一方では,トヨタのレクサスのエンジン部品を作っているような,その会社を高校生がくっつけて,大人なら絶対できないですけれども,そしてミクロン単位のたい焼きの機械を作っちゃう。ミクロンが要るかどうかは分かりませんけれども。
 そして年間420万円の売上げがあって,60万円利益を出して,それを自己投資するためにどうしたらいいかというので,海外輸出営業をしていこうということで,韓国に10名行ってまいりました。大学と高校を回って。
 そういうふうにしていくわけですけど,そのステップとして,行くに当たって,輸出の勉強会を銀行が主催をしまして,例えば保険はどうするんだと東京海上が説明しに来ます。運輸はどうするんだといって運輸の会社が来て,あるいは為替はどうするんだ,円で契約するのか,ドルなのか,ウォンなのか,そういうことを2時間ぐらい掛けてやるわけです。高校生は多分半分ぐらいしか分からないと思います。だけど,この大人たちは本気なんだなというのは確実に伝わります。明洞(ミョンドン)で買物するときに,円高と円安が自分たちにどういう影響を与えるのかぐらいは分かってくれたと思います。
 そういうふうに,大人たちが真剣に取り組むことによって,高校生たちと周りのいい関係ができて,何か信頼関係ができて,次につながっていくような,もしかするとそれがおっしゃるように,ビジネスの起業につながっていったら最高だと思いますけど,新しい風が吹いているということは確実に感じます。

【明石分科会長】 
 ありがとうございました。
 ちょっと時間の関係で,あと質問者を牧野委員,清原委員,中田委員,関委員,生重委員で終わりたいと思います。それで1人1問限定してお願いしたいと思います。では,牧野委員,お願いします。

【牧野委員】 
 厳しいですね。1問にします。すみません。興味深い御報告ありがとうございました。実は私も出身は愛知県でして,高浜高校はよく知っているんですけれども,ありがとうございました。とても興味深くて,あとは三重県の例の高校生レストランのこともいろいろ調べたりして知っておりまして,私自身もあちこちでまちづくりをやっていますので,共感するところはとても共感するんですが,どうしてもこの高校生という問題と,まちおこしや起業という問題を考えるときに,ちょっと私自身がまだ古いのかもしれません,今,横尾委員がおっしゃったことと関わってくると思うんですけれども,高校というものをどう考えるかといったことを,どう政策的に位置付けるのか,また行政的に考えるのかといったことがあると思うんです。
 例えば今まではある意味では国民教育の完成ということがベースになっていながら,今回も18歳成人法で主権者になりますので,主権者をどう育成するかといったことと,その教育内容という問題があるでしょうし,ある意味では人材育成ですとか,さらには彼ら自身が起業していきながら新しいまちを作っていくといったことがあると思うんですけれども,そのあたりで,例えば高校というものをどう考え直したらいいのかといったことが,これから問われてくるんだろうと思うんです。
 例えば私が関わっている長野県の飯田市の地域人教育というのをやっているところがあるんです。これは職業高校と地元の市,行政が連携を組んでやっているんですが,そこで商業科の子たちが地域に出ていく中で学んでいくのは何かといいますと,実は商業というのはお金をもうけることではないのだということが分かってくるわけです。
 簡単に言えば,商業というのは物やサービスを介して社会を作っていくことであり,人を結び付けていく。その過程で,実は人々は新しいニーズを発生させてくるというところに気付いていくことによって,地域人教育に限らない形で,自分たちが商業を学ぶことって一体何なんだろうかということに気付いていく。その過程で,自分たちがその観点から新しい社会を構想しながら事業を作り出していくというところに展開していくんですけれども,今までのきょうの御報告で,そこまで見えたかというと,ちょっと見えないような感じもするんです。
 その意味では高校の在り方といったものを,例えば新しいこういう取組の中からどう考えたらよいかということを,もしお考え等ありましたら,少しお教えいただきたいと思います。

【岸川氏】 
 ありがとうございます。事例を全て紹介することはできないので,一,二例を紹介させていただきましたけど,本当に多種多様な取組をやっております。その中で,高校というものを考えたときに,もう今は義務教育に近い形で,そして高校を卒業するときに大学進学か専門学校か就職かを選択します。ということは,高校生というのは社会の出口の大きな,もうその3年間というのはあるわけです。なのに画一的に例えば普通科を取ってみたとしたら,偏差値教育の中で,大学に進学する偏差値の高い高校,あるいはそうじゃない高校。でも,やっている内容,カリキュラムは一緒で,シラバスは一緒で,教科書の程度が違うだけで。
 本当にそれでいいんだろうか。きのう留学生,ALTとかいろんなメンバーと話をしていたときに,何で日本の高校生は英語をしゃべれないんだろうといって。モチベーションがないんじゃないのと,そういう話になって,思いのある子は,例えば海外に行ったら話せる。そう考えたときに,高校というのは本当に人生に出ていくときの,もしかすると,彼らが本気で気付いて伸びたら,日本はもう変わるんじゃないか。大学では,もしかすると,それを更に発展させるところであってというのが,高校が大学になったような気がして,そういうふうに感じます。
 一つだけ言いたいのは,お金をもうけるためにやっているわけではありません。ほぼ全部補助金をもらわずにやっています。みんな自前でやっているんです。そういう取組をするために,ビジネスという手法を取り入れているというところです。

【明石分科会長】 
 ありがとうございました。
 では,清原委員。

【清原副分科会長】 
 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。岸川先生の御報告の中で,女子高生がいっぱい出てきました。私は少子長寿社会というか,人口減少社会の中で,女性がいかに地域にとどまり,自分自身でなりわいを持ち,稼いでいくかということがとても大事だと思っています。大都市の大学に行こうとか,大都市に勤めようかではなくて,女性こそ地域にとどまるということの兆しを,本当に町役場の職員としての経験を生かして波及させていただいていることを,とても感謝したいと思います。
 そこで鈴木先生に質問なんですけれども,私も三鷹市と杏林大学とでCOCの取組を,この間,してまいりました。大学生に,もちろん地域について学んでもらい,三鷹市の職員も市民も講師等として関わりながら,連携をしてきました。
 三鷹市立大学ではありません。杏林大学は私立大学です。だから三鷹のことだけ学んでいただくことがテーマではありません。むしろ三鷹というフィールドを通して,地域,コミュニティ,人口減少社会,様々な課題を学んでいただくことで,どの地域に行って働いてもボランタリーな活動をしていただけるだろうし,課題解決に尽くしていただけるだろうと思って取り組んでいました。
 鈴木先生も,まさに県立大学ではないんですが,県と14の市町と一緒になってやっていらして,その中で,大学生を地域課題解決に巻き込む中では,学生の活動と地域づくりの時間軸が一致しないということなんですけど,学生は必ず卒業していきます。いなくなる,とどまる人は少ないかもしれない。
 でも,その通過する中で,一人ひとりが地域に関心を持ってもらう,そして次の後輩たちに継承してもらうという,継承ということが大事だと思うんです。先生はその継承していく,要するに通過していくかもしれないけれども,必ず千葉大生は地域について,どの場所に移ったとしても,モチベーション,あるいは関心を持ち続けるということを目指していらっしゃるんじゃないかなと思ったんですけど,そのあたりのことについて御努力されているポイントを,一つだけ教えていただければ有り難いと思います。よろしくお願いします。

【鈴木氏】 
 私の個人的な目標なんですけれども,千葉県はこれから30年間に大地震が起きる確率が高いと言われていますので,その起きたときにいち早く戻ってきてもらいたい。企業の人になっていても何でもいいのですが,自らができることを考えてきてもらえる人材を育てたいんです。東北復興の支援をしたときに,明らかに人材不足でしたので,そういったマインドを持った人が千葉県のことを思って戻ってきてもらうというのが,私の夢です。

【清原副分科会長】 
 共感します。災害はいつやってくるか分からない。私たち自治体の首長は,常に市民の皆様,住民の皆様の命を守るということで,そのことを考えている。そのとき,大学生,高校生,中学生,みんな大いなる支え手です。是非そのことは私も共感いたしましたので,よろしくお願いします。

【明石分科会長】 
 では次,中田委員。

【中田委員】 
 実践的に地域の課題を学んで,そのことが子供や青年の自己成長にどうつながっていくか,社会的対応力をどう培っていくかという,この取組は,社会的課題だなと思っています。私は福島の大学に勤めていて,震災以降,地域の課題をどうくみ取とって,将来の担い手を地域の中で育てていくのかということを,福島県総出で取り組んでいると思っています。それで大学としても,COC,COC+の両方,事業委託を受けさせていただき取り組んでいます。
 福島県の双葉郡ではそのことを,大学だけでなく,未来学園高校でも地域実践型の教育に取り組むし,町村の義務教育の段階でも総合的な学習の時間を使って,ふるさと創造学という地域の課題をつかみ取っていくという実践的課題解決学習を展開していて,発達段階をきちんと踏まえながら実践的な課題解決学習を継承していくことを見通した取組に努力しています。その中でちょっと私が今後の課題だなと思っているのは,持続可能な社会を創っていくときの地域課題の把握を進める際の観点について,どうしても経済的自立を可能とする地域課題の把握というのが分かりやすいためか,そうした観点からの把握が支配的傾向にあることです。
 だからその地域の特産物を使って起業して,それを商品開発化していくというようなモデルは非常に浮上しやすいんです。けれども,その次に出てくる地域課題というのが幾つかあります。福島の場合であれば,例えばイノベーション・コースト構想を地域につなげていきながら,将来の経済的自立を果たす持続可能な社会というのは,描きやすいわけです。けれども,高齢化が同時に進みますので,福祉や教育に関わるような地域課題,これがどうしてもビジネスモデルに乗りにくい側面があるせいか,そのあたりの地域課題をどのようにソーシャルビジネスとして取り組んでいけるのかという課題が浮上します。こうした課題について御意見を伺いたいと思います。
 義務教育段階でやることと高校,大学でやることというのは,やっぱり発達段階に応じて,性格が違うんじゃないかと思うところもあって,その意味で言うと,公教育の中で必ず押さえなくちゃいけないことであるように思います。進路が分化していく中で,個人の選択に応じてリーチをどう伸ばしていくのかということとは,発達段階に応じて違うような気がするんです。そのあたりの課題についても,御意見があれば伺いたいなと思っております。

【鈴木氏】 
 現時点では非常に難しいと思っています。イギリスとかドイツでは,地域づくりの専門職としてキャリアラダーモデルがしっかりあるんです。小さなNPOから大きなNPOにどんどん出世していく,あるいはヘッドハンティングというのもあって,流動化されている職業像がある。それを,ローリターン,あるいはミドルリターンでもいいという,働き方の考え方を教えられるとは思いますけれども,ただ教えたところで日本にはそういう受皿が今ないために,キャリアラダーとかキャリアモデルとして教えにくいというのが一つ大きな問題です。なので現時点では難しいだろうと思っています。

【明石分科会長】 
 では,関委員。

【関委員】 
 本当に貴重な情報ありがとうございました。もう手短に1点だけ。岸川先生にお願いしたいんですが,行政と高校との信頼関係,今の時代であれば,18歳選挙権とかいろんなものがあって,つながりやすいと思うんですけれども,このことを始めた頃にはなかなか難しかったような気もするんです。それが信頼関係がお互いつながったような体験,経験等何かございましたら,教えてもらえますか。

【岸川氏】 
 最初,例えば相可高校というまちの中にある高校は,行ったことのない高校なんです。職場から3分で行けるんですけど。そこと出会って感動したわけです。家政科の子たちと出会いました。正直,農業振興がしたかったので,農産物で試食会をしてもらったときに,大したことできないと思っていた高校生たちが,ホテルへ持ち込んだら結婚式の披露宴ができるような,すばらしい料理を作って,そして一生懸命料理の説明をして,まちの人たち250人ぐらいに取り分けたりしながら,その姿にもう感動して,泣きそうになったんです。それから学校通いが始まっていって。夢をいっぱい語って,そしてそのできるものを全部やってきました。
 そういう形で本気になって,大人が高校生を利用して何かをするというのではなくて,完全に,この子たちの最高に輝くステージは何なんだろうかということを真剣に議論しながら,学校に迷惑を掛けないというスタンスでやってきたことが,3年ぐらいしたら,もう完全にフリーパスになりました。そういうところが大事なんじゃないかなと思います。何かをしてもらうというんじゃなくて,この子たちの最高のステージを用意してあげたい,ステージを提供する,そういう大人であるということが大事だと思います。

【関委員】 
 ありがとうございます。

【明石分科会長】 
 では,最後,生重委員。

【生重委員】 
 両者の御発表ありがとうございました。岸川さんとは3・11後の生涯学習フェスティバルで御協力いただいて,企画の方をやらせていただいていたので,ありがとうございました。
 鈴木さんに御質問ですが,千葉大がここまでCOCとCOC+を体系付けてきちんと置かれて,発展的なことをやっているというのを,きょう本当にがっつり中身が面白いなと思って,感心して聞いておりました。実は私は本当にシンプルな質問なんですが,これを作り上げて,私も各地方で,おやりになっていることって,役所におけるセクションを横断型にして,例えば産業振興であるとか,社会教育,公民館の位置付けであるとか,そういう前向きであらねばならんところが,意外と足を引っ張る存在になっていったりする事例もたくさん知っている私としては,そこを様々な千葉のまちでどう乗り越えられて,協力体制を敷いていったのか。
 住民の協力,地域の理解なくしてはやっぱり,大きく物事は動いていかないというのと,もう1点,資金獲得とか,それからマネジメントを,多分鈴木さんたちのチームがやっていらっしゃると思うんですが,そうじゃないと,それぞれの地域がそれができるとは思えないんです。そのマネジメントとか獲得に掛けての事務局というか,人材は何人ぐらいの体制で動かしていらっしゃいますか。

【鈴木氏】 
 最初の質問ですけれども,私はたまたま国の地方創生の人材派遣ということで,自治体の中枢にいさせていただいておりますので,どこをどうすれば大学と自治体の連携が進むのかというのが分かってきました。14の市町にも,連携して共同研究やPBLを進めるにはどうしたらいいかというアドバイスをしています。
 それと大学側の体制としましては,コミュニティ・イノベーションオフィスに4人の特任教員と2名の事務職員がいます。それと,本部に地方創生推進事業係があって4人の事務職員がおりますので,総勢10人ぐらいでやっています。これは,大学のトップマネジメントで作っていただいて進めているというところです。

【生重委員】 
 大学トップの理解もあるんですね。

【鈴木氏】 
 そうです。

【明石分科会長】 
 ありがとうございました。本当に参考になりました。
 では,議題2でございまして,これまでの議論の振り返りに入りたいと思います。事務局の方で,これまでの生涯学習分科会での意見のポイントについて資料を作っていただいておりますので,資料の御説明を伺った後,自由討議に入りたいと思います。
 では,課長の方でよろしくお願いします。

【萬谷生涯学習推進課長】 
 それでは,資料2をお願いいたします。これまでの会議での御議論を振り返っていただく際の御参考としまして,会議で頂いた御指摘を,主な御意見のポイントということで諮問事項ごとに整理をさせていただいております。より詳しい内容につきましては,毎回会議でお配りしておりますけれども,参考資料4ということで,本日もお配りしておりますので,見比べていただきながらお聞きいただければと思います。
 それでは,資料2の1ページですけれども,1ポツは,新しい地域づくりに向けた学習・活動の在り方についてということでございまして,(1)から(4)までございます。
 (1)のこれから社会教育に求められる役割ということでございますが,一つ目の○では,地域の様々な課題を「学ぶ」という観点から見直すことで,新たな社会教育の姿が見えてくるんではないかという御指摘がありましたし,一方で,二つ目の○にありますように,「地域課題解決」ということをあおり過ぎることへの懸念という御指摘もございました。
 また,三つ目の○では,現代的課題に応えるというだけではなくて,住民の自主性・自発性の尊重などという御意見がございました。
 また,三つ下の○ですけれども,地域コミュニティの維持発展のための施策と公民館との関係についての御指摘がございましたし,その下の○では,地域コミュニティの維持発展ということは,人口減少地域だけでなくて,大都市にとっても重要という視点についての御指摘がございました。
 また,その下で(2)として,地域住民等の参画の在り方についての御指摘ですけれども,○1では,参加者が主体的であることの重要性についてですが,例えば一つ目の○では,市民の側も分配を求めるのではなくて,むしろ自ら創造し,作り出していくことが必要だという御指摘ですとか,またその下の○では,主体性を育むというポイントについての御指摘がございました。
 めくって2ページ目ですけれども,○2として,では,その主体性を育む仕組み・仕掛け作りの方向性ということですが,例えば一つ目の○では,様々な方がアイデアを出していくうちに活動が出来上がっていく事例が多いけれども,それをどう整理するかという御指摘ですとか,またその下の○では,中間組織の必要性ということがありますけれども,一方でその例は非常に少なくて,漫然と学び続けている状況が多く見られるといったような御指摘がございました。
 また,更にその下の項目で,○3ですけれども,子供・若者の参画とか学校のとの連携ということについては,つい先ほどもヒアリングで御議論いただきましたけれども,これまでの御議論では,例えば二つ目の○で,子供こそが地域活性化の起爆剤であるといったようなこととか,また四つ目の○では,学校教育と社会との連携ということで,世代間交流が生まれるといったような観点からも非常に重要だという御指摘がございました。
 また,更に(3)として,社会教育関係者に期待される役割としましては,最初の○では,施設もさることながら,団体や人をいかに育て,活用するかが大事だという御指摘ですとか,また二つ目の○以降では,社会教育士とか社会教育委員に関する指摘が次のページに掛けてございます。
 また3ページをごらんいただきますと,二つ目の○では,こういった学びのオーガナイザーという方々が,むしろ学校の職員室で活動できるようにすべきだという御意見ですとか,またその下の○では,地域おこし協力隊についての言及がございました。
 更に(4)として,今後の議論の視点・留意点という関係では,一つ目の○として,教育委員会,文科省だけでなくて,関係省庁としっかり連携する必要があるという御指摘,また三つ目の○では,社会教育というのは生活そのものなので,行政的に整理していくのはなかなか難しい一方で,概念整理をしながら,どんな留意事項があるのかなどを整理できるといいのではないかという御指摘がございました。
 また,その下からは諮問事項の二つ目,三つ目の関係です。社会教育施設に求められる役割と,その役割を果たすために必要な具体的方策ということですが,これについては審議のまとめを今調整中ですけれども,そこにもかなり記載されておりまして,その内容は省略しておりますけれども,(1)として,社会教育施設と地域住民との関係の部分では,一つ目の○では,これまでの社会教育施設は,ともすれば敷居が高かったということ,同じようなことは二つ目の○でも,40代以下の若い世代から見ると,非常に入り難かったという御意見がありまして,三つ目,四つ目の○では,その裏返しとして,若い世代の意見を取り入れることの必要性ですとか,活動の様子が誰にでも見えるような,そういった方向性が大事だという御指摘がございました。
 また,下の(2)として,施設の複合化・高機能化についても,ヒアリング等で御議論いただいておりますけれども,一番下の○では,複合施設で交流のチャンスが拡大するということで,4ページに掛けますけれども,複合施設である社会教育施設だからこその学びの機会作りが日常化することが重要だという御指摘がございました。
 また,(3)の運営主体の関係では,先ほどの主体性の関係にも連動しますけれども,例えば市民団体等に運営してもらうことという御意見ですとか,二つ目では,市民が関わり,愛着を持った運営をしていく仕組み作りといった御指摘がございました。
 また最後の(4)の多様な資金調達の工夫ということでは,これは前回のヒアリングでございましたけれども,一つ目の○では,企業と市民など,みんなでアイデアを出し合って運営していく必要性の指摘がございましたし,またクラウドファンディングなどの多様な方法が資金調達にはあるということで,ただ,その事例周知だけにとどまらずに,成功や失敗の要因分析が大事だというような御指摘があったところでございます。こういったことをまた,振り返りの御参考としていただければと思います。
 併せて資料3として,今後の議論の進め方の案というものをお付けしております。上の方に書きましたように,3月以降,これまで6回の会議を本日含めて開かせていただいておりまして,ヒアリングなどで議論を重ねていただいているところですけれども,この議論を踏まえて,8月10日の中教審総会を挟んで,お盆明け以降,8月の下旬頃から答申に向けた審議に入っていただければと思っております。
 8月後半以降,月一,二回程度の会議を重ねていただいて,パブリックコメントを挟んで,年内目途に答申がまとめられるように,また御議論を重ねていただければと思っておりますので,こういうスケジュール感で御審議いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

【明石分科会長】 
 課長,ありがとうございました。
 それでは,12月の年末の答申を見据えて,これまでの生涯学習分科会の議論を振り返りまして,今後より深めていくべき点や,まだ検討が不足しているということがありましたら,審議を深めてまいりたいと思います。きょう出席されている両先生も,もしよろしければ参加していただけると助かります。
 では,時間があと25分しかありませんけれども,例によってまた名札を立てていただけると助かります。では,まず菊川委員で,山本委員。

【菊川副分科会長】 
 前回も申し上げて再度で恐縮ですが,今までの議論の中で,比較的出ていないのではないかと思う点を2点申し上げます。
 1点目は,諮問事項との関係もあると思いますが,どちらかというと活動する市民ということを想定してあるようにお見受けします。主体的な参画による新しい地域づくりということで,活動を提供する側の市民を想定しているわけですけれども,実は今後のことを考えますと,やはり私が一番気になりますのは,高齢者自身の問題でございます。
 特に後期高齢者の自立,自律,「立つ」と「律する」です。これの育成を支援して,そして健康寿命を全うさせることが,翻って地域づくりに福祉だけに,カバーされない社会につながると思います。人々が,自らそういう意識を持って自立して,健康寿命を全うしようという環境というか,機運の醸成をしないといけないのではないかと思っておりまして,そういう点が少し,諮問事項との絡みかもしれませんが,少ないような気がしております。
 それから2点目ですけれども,社会教育士でございます。これは今から施設の運営が流動化することも予想される中で,社会教育主事も含めて,社会教育士はどのような量を目指して,どのような手法で養成していくかということが,地域の社会教育の帰趨を決めていくような感じもしておりますので,この社会教育士養成の具体的なことを,更に少し検討する必要があるのではないかと思っております。

【明石分科会長】 
 ありがとうございました。
 あと8人いらっしゃいまして,時間を考えますと1人2分ぐらいの持ち時間でお願いできればと思っております。では,山本委員,次に中田委員,関委員,大久保委員,清國委員,金藤委員,牧野委員,横尾委員でいきたいと思います。では,山本委員,お願いします。

【山本委員】 
 宮本委員がきょう御欠席ですけれども,常におっしゃっておりますが,参加という概念の大切さです。本当に先ほど高校や大学の話を聞いても,やっぱり日本の子供が時代や社会に,同時代に参加するということの経験がいかにも欠落している。
 そういう意味で見ると子供の自由な時間をどう確保するかが大問題なんですけれども,今度の学習指導要領の改訂でも,あれだけボリュームがあると,本当に子供の自由度がどれだけ保障されるかというのは非常に心配なことなんですけれども,ここは生涯学習の分科会なので,是非子供の自由と参画というものを,子供期の人生のプロセスの中で重視するということを,このレポートから強調すべきかなと強く思っております。
 付け加えますと,今高校と大学の話を聞いたんですけれども,私も大学でやっておりましたのでよく感じたんですが,いや,こんなことは,小学生時代でも考えられるんじゃないのということを,大学生も,初めてのことなので生き生きと考える。現実生活の中の切実なテーマに彼らが小学生時代から取り組んでいたら,大学生段階では,もっと高度な,もっと複雑な問題にチャレンジできるのにということを,恐らく岸川さんも鈴木さんもお感じになりながらやっておられるんじゃないかと思いますが,そのことを併せて申し上げたいと思います。
 千葉大の例で報告されたCOCで言いますと,私も国立大学協会で全体をカバーしておりますので,千葉大学も頑張っておられ,すばらしい報告でしたが,全大学の全部のプログラムが,大体この水準というか,これぐらいの努力で,大学の地域,生涯学習への寄与は非常に大きく転換しております。ただ,大学の学長は,みな言っておりますが,いまはここに補助金等資金の集中の時代なので,可能になっているわけで,COC+の補助金が期限切れになってきますので,これがなくなると非常に一挙に瓦解するという条件の中でやっているということを広く御承知願いたいと思います。
 これも大学長みな,常にいっていることでありますが,こうした事業を,毎年毎年評価のし,それで資金が配分されるいということになっていることは,事業の安定性に欠けることになります。その点でもう,先ほど横尾さんもおっしゃいましたけど,うまくどこに先行投資して,しっかり押し通せるかということも考えていく必要があるんじゃないかなと思っております。
 以上です。

【明石分科会長】 
 では,中田委員,お願いします。

【中田委員】 
 社会教育主事の必要性というのは,きちんと確認をされた上でのこの論の展開と私は受け止めています。社会教育行政,社会教育主事の専門性をきちんと確認した上で,新たな視野,視点というのを,こういう形で広げていく。それは再確認させていただきたいというのが1点です。
 加えて,その際に社会教育主事と,例えば学びのオーガナイザー,社会教育士と言われるような人たちとの専門性の違いは何かと考えたとき,参考資料4では,第1の二つ目の○あたりにそのことは書いてあるんですが,もう少し翻って考えると,例えば地域課題に対応する住民の成長,参画というのを支えていくのが社会教育であったとして,その社会教育の視点から地域の課題と住民の学びをつなげていくのが社会教育主事であると確認されています。
 そのときに,地域課題は一面的な問題ではないので,多様な側面を持っているから,行政含め多様な専門,福祉とか教育とか,それから経済的な問題,もろもろ産業的な問題に関わるような,その他の専門の仕事をされている方々とも連携する必要がある。その連携を支えていくのが,私は社会教育主事だと思っているんです。
 社会教育士も,地域の住民の成長を社会教育的に支えながら,ほかの例えば教育や産業や福祉等の様々な課題を担っている地域コーディネーターといった専門の方々と,ある意味関わりながら,住民をつなぐ側面はあるとは思います。けれども,そうした地域のコーディネーターの成長も含めて支援するというのが,社会教育主事の役割じゃないかなと私は考えています。そういう意味では行政職員の方々が地域の課題を認識しながらも,住民の方々となかなか手をつなげない,距離が出ているとしたら,そこも含めてどのように地域の方々と手を結んでいくことができるのかとうことがポイントの一つです。
 様々な行政職員の方々が課題を住民の方々と共有していくためには,行政の職員の方々も成長する必要がありますから,そこも含めてバックアップするのが社会教育主事の新たな仕事としてあるような気もしているんです。そこは社会教育士ではできないことだと私は思っていて,そういう意味でも改めて社会教育行政や,社会教育主事の役割というのは,きちんと位置付けておいてほしいと思っております。

【明石分科会長】 
 では,関委員。

【関委員】 
 すみません,一番初めの回のときに,たしか秋山先生だったと思うんですけれども,SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)のことをお話しされたことを記憶しておるんですが,今その社会教育とSDGs的な持続可能な社会に向けての取組というものが,いま一つつながっていないような気がするんです。今,我々のまちでも,企業の方もSDGsに対して積極的に取り組んでくれている。一つ一つの地域課題はみんな違うかもしれないけれども,世界レベルで見たときには,そこに掲げられておるような持続可能な開発目標というのは,非常に社会教育のテーマとして取り組んでいくべき内容ではないかなと思うので,もう少しその辺の論点も含めていただけると非常に有り難いなと思います。
 あと,社会教育主事なんですけれども,私も社会教育主事人業でずっと仕事をしてきた者ですけれども,どうしても人事異動が中に絡みます。3年,あるいは5年のスパンの中で,本当の意味での社会教育主事的な仕事はどこまでできるのか,その辺をもう少し制度的なものとしても考えていくべきかなとは思います。
 以上です。

【明石分科会長】 
 では,大久保委員,お願いします。

【大久保委員】 
 社会教育の在り方を改めて議論するというのは,それは当然様々な環境変化があったからこういう議論をしているわけですけれども,社会教育の在り方を見直したときに,その見直しがうまく進んでいるかどうかを,どうやってこの後我々は評価していけばいいのかなということです。
 もしかしたらそれは,多様な住民の多くの人たちが,この社会教育に参加,コミットしてくれるというのが一つの姿かもしれないですし,あるいは行政的に社会教育のコストみたいなのが,より効率化されて回ることが大事なのかもしれないですし,より教育的な問題で言えば,社会教育の効果というのはそんな短期的に出るものではなくもうちょっと長いレンジで,じんわりと効果を出していくようなものだと思うんですけど,そういうものをどういうふうに見ていったらいいんだろうか。
 あるいは地域の課題解決というアプローチを取ることは,一体何を具体的な成果につなげていくためのアプローチなんだろうかということを今回見直すことを通じて,時間を掛けてそのことの方向性がうまくいってるかどうかを,どうやって我々はまた見ていくのかという議論が,この後の議論の中でもう少しできるといいのかなと思いました。

【明石分科会長】 
 ありがとうございました。
 では,清國委員,お願いします。

【清國委員】 
 これまでの議論の中で,非常に気になるところというのは,今回も出ているんですが,クラウドファンディングですとか,きょうもビジネスという言葉が多用されるわけなんですが,教育を考える上で,あるいは公教育といいますか,教育行政といいますか,それを考える上で,一方新しい時代の動きの中で,イノベーションというものが声高に言われて,何か今までのものを解体しないと新しいものが生み出せないみたいな雰囲気があって,本来行政と何をやるべきかというようなことがおざなりになってしまわないかどうかというところが,少し心配なところでございます。
 ですから,教育とはそもそも人を,あるいは地域をどういう方向に持っていくのか。この中でも,市民に自由に任せたらいいではないか,そういう議論は一方で分かるんですが,他方で行政が責任を持ってなし遂げていかなければならないことがあったり,それは予算も,地域を限定せずに,国レベルで関心の高いものを提案して,そこでお金を集めて実現すればいいではないか,例えばそういうふうに行政職員が考えるようになったら,その地域は本当にもつんだろうかということも一方で考えたりするんです。
 そこの整理は非常に重要ではないかなということがあります。これは前回牧野委員もおっしゃったんですけど,公共というものを変えてしまうんですかというところまで行き着いてしまうように思います。
 それから,これは非常に技術的なもう1点の提案なんですが,社会教育主事講習,これが県によっても違うんですけど,主事講習を受ける人たちで,教員の数がどんどん減ってきているというのが実態としてあると思います。教員が多い県もあるんですが,それを鑑みたときに,地域学校協働活動もありますし,夏の期間にはなろうかと思うんですが,できるだけ多くの教員に受けていただくときに,これは何とかならないでしょうかという提案なんですが,教員免許状更新講習等,あるいは5経年とか10経年とかそういう研修として,代替できるというような仕組みが作れないでしょうか。
 もちろん教員免許状更新講習も,必修科目みたいなものはなかなか置き換えは難しいんだと思いますが,選択科目とか普通の履修科目のあたりは,十分社会教育主事講習の内容が,学校でも汎用的に使えるものであるというふうにもっと打ち出して,認めていってもらえれば,かなり社会教育を履修する教員の数が増えるんではないかというところで,これは全くの提案でございますが,申し上げておきたいと思います。
 以上です。

【明石分科会長】 
 では,お隣の金藤委員。

【金藤委員】 
 ありがとうございます。2点です。一つは,子供・若者参画と学校,地域の連携ということについて,そしてもう一つは,多様な資金調達の工夫ということについてです。
 一つ目の若者の参加と学校,地域の連携ということについて,きょうは大変すばらしい御発表を頂き,大変勉強になりました。一方で,いずれもやはりキーパーソンとなる大人がいるところで,こういうものは始められているなという感じを強く受けるわけです。大学も数多くありますけれども,どこでもやれるものではないなと,またトップによってすごく左右されるということもあると思いまして,企業を興すということを含めた若者支援について,若者が中心となる若者支援の全国組織作りというものも必要なのかもしれないと感じております。
 スウェーデンについて研究されている方の御発表を最近聞く機会がありまして,そういうものがあるということで,また国からのかなり大きな資金が,そういった若者を中心とする全国組織に出されているということも伺いました。日本でもそういうことも考えていく必要があるのではないかと思います。
 もう一つの資金調達ということに関しましては,今,清國委員の方から,ビジネスとかクラウドファンディングというのはという御意見もありましたが,私もそのように考える面もありながら,一方で,大変利益を得ている大きな日本の企業は,もっと教育にお金を出すべきだとも思っておりまして,官民連携の社会的インパクト投資の手法と言われているSIB(Social Impact Bond)について,日本財団などが少し始めているということですけれども,社会教育の分野でも取り入れていけないかということも,御検討いただくことはお願いできればなと思っております。
 以上です。

【明石分科会長】 
 ありがとうございます。
 では,牧野委員。

【牧野委員】 
 どうもありがとうございます。また𠮟られるかもしれませんが,ちょっと大きな話になりますけれども,社会教育についての諮問が出ているということを,やはり考え直す必要があるかなと思っていまして,ある意味では一旦ここで生涯学習というものと,社会教育といったものをちょっと切り分けをしながら,もう一度社会教育とは一体どんなことであるのかといったことを問い返しをしながら,更にそこと一般行政との関わりをどう考えるかという議論をすべきではないかなと思います。
 簡単に言いますと,何度も言っていますけど,一般行政をある意味で社会教育的に組み替えていかなければいけない時代に入ってしまっているんだろうと思うんです。それをもう少し簡単に言いますと,ちょっと暴論ですけど,自由と平等と分けてしまうとすると,生涯学習はどっちかというと自由に傾いた形で,個人がある意味で言えばどんどん進めていけばいいという議論になっているかと思いますけれども,今や平等をどう確保するかといったことが社会的な大きな課題になっているんではないかと思います。
 それはきょうの御発表でもそうなんですが,参加をどうやって保障していくのかというときに,そういう参加のベースになるような,例えば学習の機会の平等であったりですとか,また教育を受ける機会の平等であったりですとか,さらには最近の貧困問題をどうするかといったことも含めて,もう一度やはりきっちりとその平等をどう保障するかという議論の中で,社会教育をどう進めていくのかということをやらなければいけなくなっているんだろうと思うんです。
 その意味では(1)のところに,社会教育に求められる役割ということがありますけれども,そこをもう少しきっちりと平等,学ぶ機会をちゃんと保障していくんだ,その上で自由に発展できるような形での社会システムを作っていくという議論にできないだろうかと思います。その点少し御回答いただければと思います。お願いいたします。

【明石分科会長】 
 では最後,横尾委員,お願いします。

【横尾委員】 
 ありがとうございます。私は心掛けているのは,ポジティブに物を言いたいと心がけているのですが,ちょっとネガティブなことを言うかもしれませんが,気になっていることを1,2点,伺いたいと思います。
 一つは,「子供こそ地域活性化の起爆剤」という表現です。率直なところ,ここまで言い切っちゃっていいのかなと思っています。子供たちの可能性を伸ばす取組も起爆剤の一つになり得ると思いますが,ここまで言ってしまうと,今現実に一番第一線で頑張らなきゃいけない大人はどこに行っているのかという気がしてならないのです。その大人たちが頑張らない限り,地域の経済は発展もしませんし,活性化もできませんので,個人的には少し気になりました。
 それと次は,ちょっと細か過ぎるかもしれませんが,社会教育士のところです。「職員室で活動できるようにすべき」であると書いてあるのですが,これは背景に何かあるのかなとも感じられるのです。つまり,職員室に入れない,学校に入れないという事情があるのかなと,つい連想したりしてしまうのですけどいかがでしょうか。いろんな背景はあるかもしれませんが,かなり細かく書くときには,論拠とか背景を明確にした上で記述していく必要があるのかなと思います。後ほどまた,スタッフの方から教えてもらって納得したら,それはそれでいいかなと思います。
 あと最後の方では,担い手のところが出てきまして,「担い手は必ず見つけられる」と,これも断言なのです。でも,本当にそうかなとも感じるのです。理想を目指す動きをする中で,いきなりその担い手というのは簡単に生まれるのかなという心配もちょっとありまして,ここはちょっとソフトに書いておかないと,後々困らないのかなという印象を持ったりしているところです。
 実はここにあるところで,その前のページですが,3ページの下から6行目ぐらいですけれども,「地域の生業を立てていく取組こそ求められている」ということです。全国1,700ぐらい自治体がございますが,本当に人口減少,あるいは財政の厳しさ,経済的な辛苦,そして今回の災害による大きな被害,まさにこのことが大きなテーマになってきていると思っていますので,これらも含めた地域の活性化,そこに必要な人材,また社会教育ということを,是非今後とも皆さんと一緒に詰めていくことができればなと感じています。
 以上です。

【明石分科会長】 
 ありがとうございました。
 では最後,岸川先生と鈴木先生,一言,突然ですけれども,社会教育に対する注文がありましたらどうぞ。

【岸川氏】 
 熱心な討議に交ぜていただきまして,本当にありがとうございます。貴重な経験をさせていただきました。子供の伸び代は,そのまま日本の伸び代だと思っています。全てではないとは思いますけれども,是非こういう議論を重ねていって,日本の教育を伸ばしていっていただけるといいかなと思います。本当にどうもありがとうございました。

【明石分科会長】 
 じゃ,鈴木先生。

【鈴木氏】 
 子供さんたちは親が地域でどういう関わりをもっているのか,見てくると思っておりますので,大人が見本を見せるような社会が実現すればよいのかなと思います。

【明石分科会長】 
 ありがとうございました。予定した時間となりましたので,ここまでといたします。本日の議論は,次回以降の答申に向けた検討に向けて生かしていきたいと思っております。
 では,事務局より事務連絡をお願いいたします。菅野補佐,お願いします。

【菅野生涯学習推進課課長補佐】 
 今後の開催日程ですが,日程の調整につきまして委員の皆様には御協力賜りましてどうもありがとうございます。次回の分科会でございますけれども,8月の下旬で引き続き日程調整をさせていただいております。これにつきましては決まり次第,事務局よりメールの方で御連絡をさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
 それからまた,本日の配付資料につきましては,机の上に置いておいていただけましたら,郵送させていただきます。
 連絡事項は以上になります。

【明石分科会長】 
 それでは,本日の生涯学習分科会はこれにて閉会いたします。本当にありがとうございました。

― 了 ―

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