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資料3



第19回以降の生涯学習分科会における主な指摘事項


1(1)   生涯学習の概念について
   ○    生涯学習が,学校教育,社会教育,家庭教育などあらゆる教育活動の中で行われる学習を包含する概念であることが行政関係者に浸透していないのが現状であり,生涯学習の理念や体系について共通理解を得ることが必要。
   生涯学習は学校教育,家庭教育,社会教育というフィールドを横断的に貫くものであり,そこに生涯学習の意義がある。
   生涯学習社会を形成するという姿勢を培う場が学校や家庭,社会であって,そこで行われる教育が学校教育であり,家庭教育,社会教育であると捉えればよいのではないか。
   時代の状況が著しく変化しているという認識を踏まえた生涯学習のイメージ図をつくっていくことが必要。
   社会への貢献という視点から,生涯学習の趣旨の中に「社会の発展」を加えてはどうか。
   生涯学習の中では,学習する意欲のある人が,図書館,博物館等に足を運び,資料や展示物を見ることにより学ぶというような自発的な意思に基づいて行う学習が大きな領域を占めており,そうした図書館,博物館等を中心とした,利用者の生活時間帯に合わせた学習形態も,生涯学習の例として取り上げることが必要。
   企業内教育と企業外の職業能力を形成する様々な機関を循環するような生涯学習のイメージ図が描けるとよいのではないか。
   専修学校は,生活の向上,職業上の能力の向上という観点で生涯学習と深く関わっており,組織的な教育活動における学習に専修学校を含めて考えることが必要。
   「社会教育における学習」の中に,きちんとした理念やシステムを持って青少年の教育に大きな役割を果たしている青少年団体の活動を含めることが必要。

(2)    生涯学習の目的・今後の在り方について
   ○    生涯学習のビジョンとは何かという根本的な議論が必要。
   なぜ生涯にわたり学習する必要があるのかについて,あいまいな理念ではなく,明確で迫力あるメッセージを提示することが必要。
   時代の要請を踏まえて生涯学習はどうあるべきかという生涯学習の骨太の方針を文部科学省が責任を持って提示することが必要。その上で,他省庁が関連部分に協力していくというスタイルがよい。
   生涯学習の目的は,1個人が多様なキャリアを選択できるような職業的な自立を図るための学習基盤の提供と,2豊かな生活と豊かな地域をつくること,3助け合い,支え合う類としての人間関係の構築を推進していくことであるという考え方に基盤を置くことが必要。
   生涯学習審議会審議の概要「生涯学習の成果を生かすための方策について」(平成9年3月)で提言されている,生涯学習の成果を1地域社会の発展に生かす,2ボランティア活動に生かす,3個人のキャリア開発に生かすという三つの支援方策に戻って見直すことが必要。
   ユネスコの21世紀教育国際委員会が提示している1知ることを学ぶこと,2為すことを学ぶこと,3他者と共に生きることを学ぶこと,4人間として生きることを学ぶことの四つを,生涯学習の根本の柱として考えていくことが必要。
   公的な分野に関して市民の参画する力を育てていくこと,一人一人の豊かな個人生活を営むこと,職業の問題の三つが混乱しないように整理することが必要。
   「新しい時代における教養教育の在り方について」(平成14年2月)及び「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」(平成15年3月)の2つの中教審答申を基本に据えて,生涯学習のビジョンを考えていくことが必要。
   これまでの考え方の連続として生涯学習の振興方策を講じていくのか,新しい生涯学習のあり方を考えていくのか議論することが必要。
   社会の転換期で,従来のものを生かしながら新しい生涯学習のあり方を考えることが必要とされており,今後,生涯学習社会のトータルな教育学習システムについて考えていくことが必要。
   今後の生涯学習のテーマとして,現代社会が直面している様々な課題に取り組むことが必要。
   行政の財政状況,地方分権などの現状にあった視点を持ち,これからの時代を見据えた生涯学習のビジョンを持つことが必要。人が豊かな人生,自己実現を図るという観点では,国の役割を後退させ,民間に委ね,国民の自己責任という分野に移行していくことが必要であり,国民生活を最低限保障していくという観点では,雇用を創出していくことや,フリーターなどドロップアウトした人が学び直す仕組みをつくること,高齢者等の健康づくり,生きがいづくりなどを通して社会保障費をどのように低減していくのかという視点が必要。また,これらの実現のためには,企業の人材を活用することが必要。
   今後の生涯学習施策を進める上で,若者のフリーター,無業者の学習意欲,チャレンジ精神の喚起をどうするかが大きな課題であり,職業上の能力の向上という視点と結び付けて考えることが必要。
   これからの生涯学習,生涯学習施策が目指すものは何かを考えることが必要。生涯学習の目標を,自己の充実,生活の向上に結び付く教養の向上に置くのか,職業上の能力の向上に結び付く高度な専門的な能力の開発に置くのか,市町村において,職業能力の向上を目指すことは非常に困難な状況であり,国・都道府県・市町村の役割を整理する上でも生涯学習の目標を整理することが必要。
   学習成果を社会に生かす場合,生涯学習が生きがいや精神的な満足を与えるだけのものに終わってしまわないように,有償ボランティアの考え方を強調し,流動的な動きのある社会としていくことを考えることが必要。
   若者自立・挑戦プランの目指すべき社会である「やり直せる社会」は,生涯学習社会の目指している社会の一つの在り方ではないか。
   価値観が劇的に変化し,少子化が急速に進行していく中では,中退したり価値体系が見えなくなったりしている若者に,生きていくことは面白いことであり,働くことは自己実現につながるということを教えることが必要。
   学歴ではない部分で自分が必要とされるシステムを,生涯学習社会として,また,企業などでどうやってつくっていくかを検討することが必要。
   コミュニティのサービスの利用者によって便利な,学校教育にも介護や育児の問題にも取り組んでいく人材を育てるシステムを早急に構築することが必要。
   新しい生涯学習の振興方策を推進するためには,これまで実施してきた施策がどの程度所期の目標を達成できているのか,また,どの程度国民に浸透し,満足を得られているのかなどについてきちんと政策評価した上で検討することが必要。
   国民の政治的関心の低下への対応が必要。


2.学習者の多様なニーズへの対応について
(1)    対象者ごと
   学習者のニーズにこたえる生涯学習を実現するためには,あらゆる層に生涯学習振興行政の対象を広げていく努力が必要。
   学習者の多様なニーズへの対応が必要であるとともに,個々人の学習意欲を喚起し,学習ニーズを育てていく施策が必要。
   生涯学習においては学び方が重要であり,学習者の関心が低い分野での学び方について今後開発していくことが必要。

1 若者・職業人
   講座等への参加が少ない若い世代の参加を促進する方策を考えることが必要。
   若者が参画する社会にならないと,社会は活性化しない。子どもや若者が受け手としてではなく,地域の一員として生涯学習に参画していくシステムを検討することが必要。
   生涯学習において,夜間や土曜日,日曜日の事業の実施など,参加が少ない働き盛りの男性への対応方策を検討することが必要。

2 高齢者
   高齢化する地域社会をどう活性化していくかを高齢者の学習,学習成果の活用を含めて考えることが必要。
   高齢者がプラスの意味を持つよう能力を発揮してもらわなければ社会が成り立たなくなる。高齢者の活動が生きがいにとどまるのではなく,能力開発や再教育を通して,多少なりとも生きる糧に結びつくようにすることが必要。
   生涯学習を楽しみ,活力ある第二の人生を送ることが,市町村の医療や保健,介護に反映される。退職した後の団塊の世代の人々を地域に迎えるに当たって,元気な高齢者づくりを推進していくことが必要。
   高齢者の能力が向上している現代において,単なる生きがいづくりということではなく,様々なレベルの高齢者に納得してもらえるような取組が必要。
   現代の若者が伝統的な生活文化,伝統文化を継承する機会に恵まれていない現状を踏まえ,高齢者の新たな能力開発というプログラムとともに,高齢者の知識や経験の継承のための学習プログラムを考えていくことが必要。
   高齢者から子どもへの伝統の継承について考えることが必要。ボランティアをその地域だけで通用する地域通貨,エコマネーなどで利用するシステムが様々な地域で実践されているが,こうした取組を広めていけば,より活性化するのではないか。

(2)    領域ごと
1 キャリアアップ
   高失業社会,雇用の多様化,労働者に対する企業の評価の変化等,企業や社会のシステムの変化に対応し,個人の能力の向上を図ることが喫緊の課題。
   フリーター,パートタイマーなど終身雇用制度の枠組みで育成できない人材を育てるような生涯学習の仕組みが必要。
   今後,社会の高齢化が進む中で,社会の変化についていくためには,生涯学習を第2義務教育的な,社会人が自ら取り組まなければならない課題として考えることが必要。
   社会人等のキャリアアップのための全省庁を連携させた体制整備が必要。
   少子高齢化,介護,女性の社会進出等に伴って発生する個々人の諸課題の解決につながる対応が必要。
   若者のフリーター,中高年の失業問題,女性の再就職の問題等の雇用の問題を考えた場合,多様なキャリアをどのように選択していけるかという点での生涯学習の方法論と枠組みの大きな転換が必要。
   自分は何のためにどう生きていけばよいのかわからないなど,根本的な自己確認をすることができないために職業観を明確にできない若者が非常に多い。職業観について漠然としたイメージを持っている若者だけではなく,自分探し傾向にある若者に対する対策を講じていかなければ,フリーター対策も空振りになってしまうのではないか。NPO,NGO等の協力を得ながら,こうした若者たちに対して刺激を与えていくための対策を検討していくことが必要。
   家庭や地域における経済価値として社会システムにない見えない価値の転換システムを生涯学習の今後の振興の中で考えることが必要。

2 家庭・地域の教育について
   本来ならば家庭がすべきこと,地域がすべきことまで学校にお願いし,学校もそれを受けざるを得ないような現状であり,開かれた学校として地域や家庭と連携していく中で,どこまでを学校が担うのか整理することが必要。
   青少年問題は,学校教育と社会教育,それら以外の生涯学習の分野の一体的な取組を進めることが重要であるが,コントロールタワーの不在という問題がある。
   青少年問題は,乳幼児期からの親子の取組が重要であるが,市町村においては,生涯学習としての家庭教育支援の研究や取組が十分にできていないのが現状。
   子どもを中心としたコミュニティの形成が重要であり,学校,家庭,地域の連携を強化することが緊急の課題。
   地域全体のネットワークをつくることが重要であり,行政だけでなく,NPOや地域のコミュニティを活用した体制整備を急ぐことが必要。
   教育する側の人材不足が課題であり,教育する側の大人の教育力全体を向上させることが必要。
   生涯学習関係の事業への成人男性の参加が少ないが,やがて生活することとなる地域社会にどのように溶け込み居場所をつくるかが課題。
   スポーツを通して地域社会をつくっていくという総合的地域スポーツクラブの考え方は非常に重要。
   家庭の中での子どもの位置づけが,勉学をし,有名な学校に入ることが中心となり,家庭の一員として社会性を育むという部分が欠落している中で,生活体験を通じての学習は,地域や社会を考える上で非常に有意義。
   家庭教育上の大きな問題は,親が親として育つことであり,広く子どもから学び,仲間同士の親とも学び合うなど地域全体で学び合って力をつけるような学習を検討することが必要。
   母親が自立することを保障した学習過程を経ることが必要で,単なる経済的な自立だけではなく,社会からの閉塞感がもたらす育児ストレスなどから自立するための学習過程を保障していくことが必要。
   昨今の少年犯罪や児童虐待等においては,当事者が発信しているサインを読みとることが重要。そうしたサインを察知するためには,地域に配置されている「子育てサポーター」の役割が重要。また,「子育てサポーター」としては,専門性のある人材を配置することが必要。

3 スポーツ活動
   国立の青年の家や少年自然の家が実施している悩みを抱える青少年を対象とした自己発見のための体験活動のプログラムなどは,地方自治体の青少年教育施設にとって重要な事例の提起になっているので,一層充実してほしい。
   スポーツをすることで健やかな一生を送ることが第一義的な目的であり,その上で,健康な人が交流する健全な社会という方向に向いていけばよい。日本の場合は,自分の健康を自分でつくっていくという意識が低く,こうした視点でとらえて,厚生労働省と一緒に生涯スポーツ社会を目指していくことが重要。その際,お金をかけず,国民がスポーツに親しみつつ健康になっていくという発想に立つことが必要。
   国民一人一人の意識に訴えることを充実すべきである。生涯スポーツに親しみ,スポーツをすることの心地よさを若いころから味わうために,様々な生活の場や企業の中で気軽に体を動かすことから始めるという発想が必要。

4 ITを活用した多様な学習機会の提供
   時間的・空間的な制約を受けることなく,いつでも生涯学習ができることが重要であり,これからの生涯学習には情報化が必要。
   社会人等が学習するためには,対面型の学習だけではなく,通信教育等遠隔教育のさらなる充実が必要。また,高校生,中学生を含めた在宅学習の仕組みも含めた議論が必要。
   公民館や大学などの学習の場に通学する方式に限定されない,遠隔方式で学べるような生涯学習の体制づくりを,国や都道府県レベルで組織的に行っていくことが重要。
   個人の学習履歴や学習相談などのソフト面の情報を高度な情報通信手段により蓄積していくことが,今後の生涯学習を成功に導く重要な要因ではないか。

(富山インターネット市民塾の取組の主な成果と課題)
(成果)

   ○    インターネット上で講座や市民活動の場を提供することにより,大学や,県,市町村,企業,NPO,商工会議所など,多くの機関が多目的に共同利用している。
   教育機関だけではなく,企業やNPO,公的機関,自宅(県内,県外)などいろいろな場所が,知識を発信する場に変わっている(いつでも,どこからでも講座を開催)。
   インターネットを活用することにより,自宅から自分のペースで自由な時間に学習できるため,働き盛りの世代の利用が多いことに加え,インターネットを通じた学習が施設に行って学習するきっかけともなっている(いつでも,どこからでも講座に参加)。
   市民講師として,持っている高い技術や経験を生かしてもらっているとともに,インターネットを通じて人と人との交流を深めている。
   退職後の高齢者の講座の開設や,市民講師の講座開設等を支援するITボランティアの活動がみられる。
   不特定多数を対象とするホームページでは生まれないような参加意識を生み,同じテーマの参加者とのコミュニティを形成しやすい。
(課題)
   ○    運営の自立のため,地域でコストを負担することが重要であり,そのために,地域全体の効果をわかりやすく示すことが重要。
   市民講師の育成と交流に関する研究をし,各地の運営ノウハウの共有化と活動を支援する役割を持ったセンターのようなものなど,市民講師の交流の促進が必要。
   コミュニケーションの方法や著作権などを含めたメディアリテラシーの問題への対応が必要。
   どこにどのようなことを教えている人がいるか検索できる新しいタイプのデータベース「Know Whoデータベース」の構築が期待される。
   企業の端末に,地域の学習情報ネットワークが組み入れられれば,学習の成果の活用や学習ニーズの把握など,ニーズと学習目標をリアルタイムに組み合わせやすくなる。地域の官・民・学による協働だけでなく,民間企業も含めた情報ネットワークの構築が必要。


3.社会教育施設の運営をめぐる課題について
(1)   共通の指摘事項
(総論)

   ○    公民館,図書館,博物館については,戦後,国が管理の軸をつくるために,法制度を整えたという面があるが,時代も変わり,また,都市部と山間部とを一律に扱うべきではないということもあるので,こうした制度を壊して各地域の実状に合ったものとしていくことが必要。国は,これらの施設についての簡潔なコンセプトを示し,地方公共団体から出たアイディアの中から優れたものを奨励するとともに,これからは地方公共団体が責任を持ってやっていくというパラダイムになるのだということを周知することが必要。
   生涯学習の支援に当たっては,個人の学習需要を満たすとともに社会的要請にも応えるという視点が必要。
   都市部と山間部では,事情が異なり,一律的な考え方はとれないが,行政は,生涯学習に対する国民のニーズのうち,民間で担えないものを補完していくという発想が必要。
   今回の議論は,教育基本法見直しの答申の議論の延長にある根本的な問題に遡るものであり,必要に応じ法令改正を含めた議論も必要。例えば,公民館の堅い,古いといったイメージを払拭するために,公民館の名称を変更するための法令改正を検討することも一案。
   各地域において,公民館,図書館, 博物館が生涯学習の拠点という共通性を活かして,市民と共につくることと,対話と連携を深めていくことが必要。
   学習資源の充実と流動化が必要。
   若者自立挑戦プランの推進に当たっては,公民館,図書館,学校といった施設を活用していくことが必要。
   国際社会に存在する施設である図書館,博物館については,国際的な水準にレベルを保つことが必要。
   社会教育施設は国民の資産・財産であるという認識を国民が持ち,伝統・文化の継承・発展や,アイデンティティーの形成を図るために,社会教育施設という資産の活用を考えることが必要。

(管理・運営関係)
   ○    公民館,図書館,博物館のそれぞれについての望ましいビジョンを描き,そのビジョンを達成するために指定管理者制度が必要であるという説明が必要。現在,図書館,博物館の望ましい基準を大綱化・弾力化し,国のビジョンが掲げられていないため,指定管理者制度を導入した場合にどのようなサービスが望ましいのかが見えてこない。
   官から民へ運営を移行すれば,競争の促進により効率的な運営ができると言われるが,行政がコスト意識を持ち効率的な仕組みで運用していけば民間に委託しなくてもよいのではないか。単なるコストの問題なのか,地域の資産として施設を活用していくのかというビジョンを議論することが必要。
   公設民営については,できるだけフリーにするのが良いのではないか。
   運営をできる限り,民間に任せていくなど公設民営的発想により,開館時間の延長などに対応していくことが必要。
   運営の民間への委託に当たっては,経営力・手腕が問われる。また,責任の所在を明確にしておくことが必要。
   社会教育施設の運営を民間等に委託するに当たり,従来担保されてきた公共的な質の確保が必要。
   地方の市町村においては,公共施設を受託できるだけのノウハウを持った民間事業者が育っていない状況であり,想定されるメリットをすぐに発揮できるかは不安。
   将来的にどのようなサービスを提供したらよいかについてのあるべき姿を基準として条例に明示することが必要。しかし,著作権を例にとってもガイドラインの作成は非常に難しく,新しく経験がない自治体では指定管理者制度の導入はなおさら困難。
   職員の交流や研修の機会などの将来的な人材育成の問題も含めて,長期的な視点から,よりよい社会教育施設としての運営の責任を考えることが必要。
   指定管理者制度によりNPOに運営を委託することにより,行政と市民のパートナーシップを実現していくに当たっては,運営や共催について,それぞれの役割についての具体的な努力目標を掲げることが必要。
   専門職員等の人材の雇用が民間に委託されていく状況において,専門的な知識・技術をネットワーク化して蓄積していくことが行政の戦略的な役割であると考えられる。
   行政と受託する側との間で協定を結び,運営からコスト,情報公開などの細かいルールを明確にしていくことが重要。NPOに任せた場合,人件費等はかなり安くなるが,人材の質を十分に確保できていない例が各所で見られており,協定の中身を細かく詰めていくことが必要。

(2)   公民館
(社会の変化への対応)

   ○    公民館が設置された時代から,時代背景,社会の構造,国民意識やその成熟度が大きく変化している中,公民館の役割,領域,方法論について再定義することが必要。
   これからの公民館には,若者の失業,年金,少子高齢化,地域の教育力の低下などが問題となっている中,地域の問題解決の発信場所としての機能が求められ,地域の環境(例えば,ゴミ,排気ガス),防犯,教育問題,男女共同参画の問題等の地域的な課題に取り組んでいくことが重要。これらに関する講座の開設数については,例えば,7割といった目標値を設定するのも一案である。また,講座内容については,新しい発想や工夫に富んだものにすることが必要。
   図書館,博物館と比較して,公民館に固有の資源があるかどうかについて,しっかりと検討することが必要。
(NPO・住民,大学,民間教育事業者との連携)
   ○    公民館の運営について,もっと市民と協働し,パートナーシップを組んで一緒に考え実践していくことに大胆に取り組むために,一定の部分をNPOに委ねていくなど,NPOとパートナーシップを組むことを政策として打ち出していくことが必要。公民館の運営をNPOに任せるという視点が必要。
   講座の企画等を住民に任せることなどにより,住民参加を確保し,講座内容のマンネリ化を防ぐことが必要。
   NPOの活動拠点を探すことが困難なのが現状であり,公民館をもっと活用することが必要。
   地方ではNPOそのものがないという状況がある。また,住民との対話や交流の中で公民館が運営されている現状を考えると,NPOに公民館の運営を委託する場合には,住民の情緒的な愛着心を踏まえて検討することが必要。
   地域の活性化や学習資源を作り,蓄積していく上で,大学と公民館が連携を図っていくことやITの活用が必要。
   IT講習など専門的な学習機会の提供に当たっては,民間教育事業者との役割分担を踏まえ,公民館は,基礎的な講座を中心に提供していくべきであり,専門性の高いものの提供については,十分な議論が必要。
(地域の拠点)
   ○    子どもにとって,公民館には,堅いイメージがあり,余り利用されていないが,今後は,学校だけではなく,公民館が子どもや若者の居場所になるようなシステムを考えることが必要。
   公民館には,講座に参加するという目的がないと入りにくいという印象があり,外国人が母国の新聞等を読むことができるコーナーを設けたり,子どもが入りやすい構造にするなど住民が気軽に足を運べる施設にすることが必要。
   公民館が各地域の住民が安心して集える「鎮守の森」的な役割を担っていくために,NPOや今後大量に余剰人員が出ると考えられる金融界など民間の人材を活用することや,全国の公民館の各館の取組について情報交流のネットワークを構築することが必要。
   「体験活動・奉仕活動支援センター」が全国各地に設置されているが,従来型の生涯学習が目指している地域型の拠点とは一致していない。学んだものを生かし,社会の活力を生む場に積極的に参加していくことが大切であり,支援センターも含めた骨太の公民館像を総合的に立案していくことが必要。
(職員の在り方)
   ○    市町村では,公民館の機能の充実は非常に効果的。公民館は,ボランティア活動の拠点などの地域のコミュニティセンターとしての機能を充実させることが求められており,オールラウンドに動ける幅の広い人材が必要。
   参加者の高度な学習要求に対して,カリキュラム,指導者の両面から本格的に対応していくことが必要。
   地域の学習ニーズの把握,地域の学習資源のコーディネート,地域の学習資源の提供サービスを充実させるため,職員のIT,メディアの活用能力を高めることが必要。
   指導者養成については,国が地方で役立てることのできるようなソフトづくりをすることが必要。
   公民館職員の研修も重要であるが,職員の士気を高める観点から,特に,年齢の高い専門職員の処遇の問題について検討することが必要。
   公民館等の質の確保のために,有資格者の活用を検討することが必要。また,有資格者の質の確保を図るためには,新しい情報を提供し,研修を実施することが必要であり,資源を動かすためには,ネットワークを動かすネットワーク・リーダーのような仕組みが必要。
(その他)
   ○    講座の企画,個人の学習歴蓄積に当たって,学習相談の機能を持たせることが重要。
   特定の利用者が繰り返し利用するなど利用者が固定化されている問題については,「市民カレッジ」や「町民カレッジ」のように修了証を発行するなどの方法により,新たな利用者を確保する努力をすることが必要。
   高齢者の健康と公民館活動の活性化との関係を検証し,PRすることが必要。

(3)    図書館
   これからの生涯学習体系を検討していく上で,時間的制約が少なく,誰でも生涯学習を実践でき,人的資源づくりにつながる場としての特長を備えたものとなるよう図書館の在り方を見直していくことが必要。
   まちづくり,子育て支援,ビジネス支援や教育支援などの地域の中での若い世代の育成といった地域の社会的ニーズに応えるサービスの在り方を考えていくことが必要。
   これまで図書館は,貸し出し機能に重点を置いてきたが,経済が低成長でデジタル化している時代において,民間ではできない付加価値をつけた情報の発信,蔵書の検索,他の自治体とのネットワーク等のインターネットを活用した情報化への対応等,従来と違う視点で図書館の在り方を見直していくことが必要。
   図書館の閲覧コーナーは,かつて,若者が人生や社会について考えるなど人を育むのに適した空間であった。今後,図書館を若者の教養向上のための居場所として活用することが必要。
   図書館の持っている知的な雰囲気や本の持っている,バーチャルな世界では味わうことのできないよさを大切にしていくことが必要。
   図書館の数がまだ不足している。平成14年度の社会教育調査の中間報告によると,図書館の利用者数と図書の貸出冊数が伸びており,図書館が設置されれば,十分な利用が見込まれる状況にあると考えられることから,引き続き図書館の設置整備を進めていくことが必要。
   図書館においては,物流(アナログ)と情報(デジタル)の双方のネットワークを構築したハイブリッドな図書館が望まれる。そのような図書館においては,物流における民間業者との連携や,大学の図書館等との連携の基盤ができてくる。
   国立の図書館が国会図書館であるため,県立図書館をまたがったネットワークをつくりにくいのが現状であり,県立図書館間の連携協力体制をつくるなど都道府県を越えて情報提供できる仕組みをつくることが必要。
   日本図書館協会と日本書籍出版協会の調査によると,本を買わずに借りている人が増えており,図書館の在り方を見直していくことが必要。
   公民館との協働が必要。

(4)    博物館
   全国に5千ほどある博物館が地域の生涯学習の一つの拠点であることについての認識が必要。
   全国の博物館の8〜9割は,零細な博物館であるという認識が必要。それぞれの館の個性をいかに伸ばしていくかという視点が必要。
   わかりやすい,親しみやすい展示にするため,体験型の展示,展示物を通じて人の生き方を知ってもらうなどの工夫を施すことが必要。
   ボランティアの活用,外国人向けの展示を行うことにより,観光立国の中での博物館の位置づけを検討することが必要。
   博物館について,どこに何があるという情報提供の仕組みを早急につくることが必要。
   教育委員会に属している博物館と首長部局に属している博物館との指導体制の一体化が必要。
   博物館の学芸員の経営感覚を養うための民間的手法を取り入れた館運営方策の検討が必要。
   現在,大学院卒で学芸員になる人が多い現状に鑑み,市民ニーズに応える経営感覚を備えた新しい人材を養成することを目的とした新しいカリキュラムの下で学芸員を養成することが重要。また,採用後の研修は,地方公共団体と文部科学省の双方で行うことが必要。


4.大学について
   ○    グローバル化する競争社会を生きていくためのキャリアアップにつながる学習を支援するために,高等教育機関やe−ラーニングシステムをより活用しやすいものにする方策が必要。
   国民の教育レベルが上がり,高度化した社会になっている現在,大学を高等教育機関と生涯学習機関の二つの柱を持った拠点として考えることが必要。
   生涯学習は,低下してきている日本の社会のダイナミズムを取り戻すための有効な手段の一つと考えられる。イギリスでは,生涯学習に高等教育機関がコミットし,大学が社会人を受け入れやすいシステムにするための取組などが行われてきており,日本においても,行政と高等教育機関が積極的に連携することが必要。
   大学も生涯学習の場として,自らの知的資源によって社会に貢献していく姿勢を明確に表明し,開放されることが必要。
   多様なキャリアを次の活動につなげるための学習や活動に関する情報を提供するために,大学が,多様なキャリアづくりのために生涯学習の場としてその重要性を再認識し,様々な教育機能を活用して,付加価値の高い学習の拠点としての機能を果たしていくための支援施策を進めることが必要。
   これまでの大学や企業,様々な行政機関などを新しく組み合わせることによって多様なキャリアの実現の仕組みをつくることが重要。
   大学の障壁を低くしていく運用の仕組みや,大学で新しい観点のキャリア育成をしていくための人材,地域とのネットワークやコンソーシアムを強力に推進していくことが必要。
   e−Learningのインフラの設置を3倍にするというインフラ系の整備よりも,世界中の子ども達が指導者になり,Web上で学びのネットワークをつくるシンク・クエストのような試みを高等教育の中に取り入れ,公開してはどうか。
   NPOでのインターンシップの開発や支援が全くなされていない状況にあり,企業でのインターンシップについても不備がある。実践と理論学習を結びつけて質を高めることを検討することが必要。
   インターンシップのカリキュラムの充実は,大学が市場原理を働かせて,優れた教育をするための水準や方法論,独自性を追求し,自主的に行うべきものであり,地域や産業界への理解を促進することも,大学が自主的に行動すべき課題である。
   社会人を経験してから大学に入学するようにするということは,大学の質を上げ企業にとってもニーズのある人を採用できるということにつながってくる。長期的な視野で,今後そのことについての検討をしてはどうか。
   現在の日本の大学などでは,実践的,社会的な課題から学んでいくという教え方が非常に少なく,実践をもっと前面に出した学び方が必要。
   大学が専門的なプロのニーズのための学問ということを支援していないのではないか。根本的に高等教育機関としての大学,大学院とは何かということが問われており,それに対してどのように手を打っていくべきかが問われている。
   大学のレベルが非常に低いことに加え,何のために来ているのかわからないという学生の迷いもあり,大学も悩みながらも,あまり方針がないまま進めているのが実態であり,大学の質を高めるような方策を具体的にとっていくことが必要。


5.学校教育について
   ○    初等中等教育段階で社会性を学習するなど社会性を養う方策についての議論が必要。
   学校教育において,生涯の学習の必要性や学び続ける意思と方法,技術を教育することが重要であり,確かな基礎学力を培う過程で,学ぶ意欲や知的好奇心の喚起,想像力,表現力の育成などの情意的学力の育成に努力することが必要。
   単にどこの学校に行くという進学指導ではない進路指導や,職業観,勤労観の教育が重要。
   若者のフリーターの問題に対応するため,学校教育の中で若者に対する職業訓練を考えることが必要。
   親子が受験に熱を入れて一生懸命上の学校を目指している中で「ゆとり教育」や「確かな学力」という政策が生かされるためには,こうした施策が受験や選抜の段階で反映される仕組みが必要。
   「確かな学力」として,自分自身で課題を発見し解決する能力を身に付けるためには,インターネットだけではなく学校図書館を活用し,じっくりと本を読むことが必要。
   本や新聞記事の中に現代社会を反映するような課題がたくさんある。それらを発見するためには,学校図書館の活用が更に重視されてよい。
   学校図書館の業務を行いつつ,生徒の調べ学習に応じて適切な資料を案内するという役割を担う専任の司書教諭を配置することが必要。
   民間や地域の人々,保護者などを活用する場合に,管理職である校長や教員には,特に従来有していないコーディネートできる能力が必要。
   特に小学生については,キャリア教育や職業体験などを推進する際には,アフターケアをしっかりしないとうまく育たないし,受け入れる側も苦労する。
   学校教育の中で環境学習を進めていきたいというニーズに対する対応が必要。


6.民間教育事業者について
   ○    カルチャーセンターの活用など学習者が自らの負担で学習することに対するインセンティブやモチベーションを与えることが大切であり,行政から与えられるものではなく,自発的に学習するという視点が必要。
   学習者の多様なニーズに対応するための民間教育事業者との連携に関しても,指定管理者制度の導入における議論と同様のことについて確認していくことが必要。


7.NPO,ボランティアについて
   ○    これまでの行政,企業が中心となった社会の構築の限界を改善する上で,NPOの役割は非常に重要。産・官・学・民の連携が求められており,行政のNPOに対するバックアップが必要。
   自己の充実,自ら学ぶという分野において,NPOを軸として社会参加・貢献していくことが,現在の時代の流れであり,今後大きな位置を占めてくると考えられることから,行政とNPO・企業とが連携していくという新しい視点が必要。
   インターンシップやワンストップサービスセンターの設置・ボランティア活動など人材育成・社会参加を支援する事業は,NPOが主体となって推進していくべき課題。
   NPOへの支援については,補助金という概念でなく,国や地方自治体が生涯学習の振興のために多様なNPO,非営利団体と協働していくということに考え方の転換を図ることが必要。
   NPOが様々な地域の活動,子育て支援をするメリットを生かすためには,行政が同等のパートナーとして関わり合い,変わるべき点は互いに変わることが必要。そのためには,NPOやボランティアを育てていくことが必要。
   環境省の「環境パートナーシッププラザ」のように,行政,企業,市民,NPOが同等な立場で運営し,パートナーシップが組めるような形の情報センターをつくることについての検討が必要。


8.学習成果の評価について
   ○    学習したことが,学習者個人の生きがいづくりだけではなく,その成果を地域社会に還元し地域の振興に貢献できるような方策を考えることが必要。
   ボランティア活動を通して個人レベルの成果を活用したり,企業内で成果を活用してビジネスを創出したり,地域の協働事業を地域全体で一緒につくっていくなど,あらゆる形で成果を活用していくような取組が必要。
   学んで蓄積した知識,技能,技術を職業活動や社会活動に生かすための評価や連結の仕組みが生涯学習機関に強く求められている。
   生涯学習社会の実現という理念のためには,どのように学習成果を活用しているかという実態を把握する必要があり,学習の成果を地域社会の発展に生かすということよりも広く捉えた「生涯学習社会をつくる」という理念が,個人の学習の蓄積としてどのように発展しているかということを捉えることが必要。
   学習成果の活用を促進するためには,従来の知識ストック型から,知識循環型への転換を進めていかなければならない。そのためには,インターネットのフラットで縦横に伝播しやすいという効果を活用して,知識を市民同士で交換し,地域の中で循環していくことが重要。
   学習者によっては,賞状を授与するという評価の仕組みに満足している人もいるが,これからの生涯学習活動が,生涯学習社会をつくっていくという理念に向かうのであれば,キャリアアップにつながるような公的な認証が必要であり,国家統一でなくても,県域を越えて学習成果が生かせるような幅広いシステムになることが望ましい。
   グローバル化する競争社会と高齢化する地域社会の二つの社会を貫くものとして,「生涯学習パスポート」などの生涯学習支援体制の整備が必要。
   地域に還元できる成果の評価については,学習成果を対外的にも社会的にも認める評価の在り方を前向きに検討することが必要であるが,講座の中身の質が確保されていないと,対外的・社会的評価は困難。また,対外的・社会的に評価するために試験等を実施することは,自発的な学習を阻害することになってしまう恐れもあるため,その両面のバランスについての考慮が必要。
   行政が考えている以上に,学習者の生涯学習パスポートに対する関心は高いのではないか。生涯学習パスポートの取組については,県レベルで独自に進めていくこともよいが,県域を越えて全国的に必要になった場合の対応を考えていくことが必要。また,学習者は学習したという結果だけでは満足しなくなるため,生涯学習パスポートを評価する仕組みを検討することが必要。
   生涯学習パスポートや学習成果の認証は,国家施策としてやるべきものではない。国は,学習成果の評価・活用の事例を提供し,学習成果をどのように評価・活用するかは個々の地方公共団体の判断に基づいて実施すべき問題。
   資格が急増しているが,社会で通用するのはわずかである。日本社会の蓄積された知識・技術を引き出して活用することを考えることが必要。
   学校のクラブ活動や総合的な学習の時間などに地域の人材を活用していくことが必要である一方で,社会貢献したいという意欲があるがどうすればよいのか分からない人もいるという状況であり,行政やNPOが,これらの人材のネットワークを構築していくことが必要。
   企業にどのような職業ニーズがあるのか分からないことも,転職が困難な要因の一つであり,ニーズの側である企業が活用していけるような評価の仕組みをつくるためにも,企業を巻き込んでいくことが必要。


9.生涯学習振興行政を担う人材の養成について
   ○    住民の視点を生かしながら社会教育を実施していけるような人材の養成について改めて考えることが必要。
   生涯学習は,文部科学省や教育委員会の専管事項ではなく,首長部局と教育委員会とが連携し,農業部門や商工部門等も生涯学習に取り組んでいくという幅広い対応が必要であり,そのためには,幅広い視点を持ち,幅広く手を伸ばせる人材を育てていくことが必要。
   地域の教育力を高めるためには,学校と家庭と地域社会の関係をよいものにしていくコーディネーターが必要であるが,単なる人事異動により学校現場から教員が来て,2,3年で異動するという,これまでの公民館や市町村教育委員会のやり方では,コーディネーターとしての能力を持った人は育たない。市町村の取組における一番の問題点は,担当職員の資質の差であり,人材を育てるための努力をしていくことが必要。
   博物館や図書館において,民間事業者に実質的なサービス面での業務の一部を委託している例が増えてきていることや,指定管理者制度の導入に係る地方自治法の一部改正などを考えると,新たに社会教育主事や博物館学芸員の資格を取るための教育よりも,NPOやボランティア,民間事業者に対する生涯学習についてのセンスの教育が必要。また,公務員の雇用制度が臨時職員や嘱託など多様化している中で,公務員と住民のセンスとスキルの向上を図ることや,市町村合併の進展に伴っての施設の配置や専門性を持った職員の配置,学校の教職員の社会教育関係への異動についても考えることが必要。
   NPOやボランティア活動においては,教育関係者の参加が全国どこでも少ないと言われており,教育関係者の意識改革のための教育が重要。
   公民館,大学,小・中学校や図書館,博物館,民間の施設等の人や組織について総合的に考えていくことが必要。
   国で,都道府県や市町村における指導者養成のためのソフトづくりを行うことが必要。


10.国,都道府県,市町村,民間の役割分担について
   ○    現在の国・地方の財政状況を考えると,これまでと同様に施策を進めていくことは非常に困難。必要性・効率性という観点から予算の配分の見直し等抜本的な改革を検討することが必要。
   生涯学習について,どこまでを国,地方で実施し,民間に任せていくのかという仕分けは重要であり,財政支出まで含めた整理が必要。
   将来的にもナショナルミニマムとして,国がコントロールすべき部分は最小にすべきであり,地域に任せてしまったほうがよいものの仕分けや,NPOや民間に委ねてよいものの整理が必要。人材育成についてもこうした役割の仕分けの検討が必要。
   生涯学習を推進していく際に生じる地域格差という問題を念頭に置いて,生涯学習の理念を考えることが必要。
   現在差し迫った課題である雇用と社会保障の問題に対応するためには,生涯学習が単に知識として職業生活を豊かにするのではなく,職につながるという観点が必要。収入の面でも意識の面でも階層分化が進み最下層の人が増えており,その予備軍としての高校・大学を卒業しても就職しない無業者や,失業者が増えている現状を踏まえ,これらの人々に対して国として何ができるのかを検討することが必要である。厚生労働省との関係もあるが,職につながる評価の軸を加えていかなければ,国が取り組むべきミニマムな役割を果たせなくなるのではないか。
   厚生労働省の施策に関連して,若者から高齢者まで働くことに密着した学習の分野については逼迫しており,こうした視点を踏まえた長期的な施策の検討が必要。
   生涯学習社会における国の役割は,自己責任,自主性の尊重,チャンスの提供,社会での貢献・努力を提示するということであり,日本における知識資源の高度化と有機的な循環システムをつくることが大きな目標になる。地方公共団体の役割は,これらを誰もがいつでもどこでも楽しく地域のニーズにあった形で具体的な展開を行っていくことと考えられる。また,国は理念・原則を示し,それが適正に行われているかどうかを監視する機能を果たすとともに,生涯学習に新しい形の活力をつくるための競争的資金の助成などのインセンティブを与えることが必要。
   高齢化社会においては,国や自治体が,高齢者が寝込まない,高齢者を寝込ませないという視点で高齢者が健やかに生きていくことを目指すことが非常に重要であり,それが,各人の人生を豊かにし,医療費等の窮状を緩和することに結びついてくるという視点を加えれば,財政支出の理由として国民の理解も得られる。
   国の役割は,教育・文化水準の維持など国の利益に関わる部分や,都道府県域を超えてサービスを提供する必要がある部分と考えられる。国の利益に関わる部分としては,指導者の研修を実施し一定の水準を保っていくことと,努力している,あるいは意欲のある組織・団体を評価していくことが考えられる。例えば,COEのように,地域で実践プログラムをつくり,地域が競争し,評価されるような仕組みの検討が必要。また,市民教育として,自立した個人の育成はどこが実施すべきかを検討することが必要。
   国の役割として,地域を越えて情報提供を一元化することや,どこでも使える学習成果の互換の基準をつくることが課題。
   今後,自己責任・市民主体の社会に向かっていく中で,生涯学習が,個人の学習意欲に応えるだけのものではなく,豊かな社会・地域をつくるために,学習成果を社会還元・循環する仕組みを構築することが,文部科学省が主導して推進すべき大きな役割ではないか。
   知識の還流を起こすことは,国全体で強力に推進していく課題であり,国は,知識を還流させる分かりやすい仕組みやモデルを提示し,各地域においては,それらを参考にしつつ工夫をしながら運用していくことが必要。
   個人のライフスタイルや地域をどのようにつくっていくかを考えた時に,新しい学びの場をつくるという生涯学習の観点から文部科学省が基盤をつくっていくことが必要。
   市町村が中心となって生涯学習を推進し,それを県がサポートするという姿が望ましいが,都道府県によっては,県が市町村に対して講座の企画の手助けや指導・啓発をしていかないと市町村が動かないというのが現状。
   市町村合併が進み,今後,公民館などの統廃合も進むことにより,県庁所在地から遠い地域において生涯学習の展開が困難になることに対応し,県の生涯学習課と生涯学習センターの役割を更に充実させるとともに,それぞれの市町村に設置されるセンターのサービスを充実していくことが重要。
   国がある程度メニューを示し,助走をつけ,それ以降は県や市町村などの地方や,ボランティア,民間に委ねていくことが適当なのではないか。大都市を抱えた地域とそうではない地域とでは,地域にふさわしい在り方が自ずと異なるはずであり,徐々に地域ごとのやり方を考えてもらうようにするのが適切である。
   NPOに対し,ITを活用して相談に応じていくことが必要。また,デジタルコンテンツを作成するなど,様々な学習成果の活用の方法があってもよいのではないか。
   生涯学習の中で民間の社会教育団体が今後どのような役割を果たしていくのかということについて真剣に考えていくことが必要。
   福祉,介護,教育,医療の分野については,市場原理だけで論ずることは難しく,なかなか民間が育っていかないため,市場化しにくい分野においては教育基盤構築のための助成金を組織・団体等に助成するという仕組みが考えられる。
   職業能力開発に結び付く資格の分野については,質の確保のために監視機能を強化することが必要。
   市民や民間のビジネスベースでの学びの情報流通のネットワークができてきており,これらをサポートし,取組を活発化させることが必要。
   職業能力の向上という分野については,市町村の果たす役割はそれほど大きくない。


11.行政の体制について
   ○    国が実施している施策に関する情報が市町村までなかなか伝わってこないという実情への対応が必要。
   生涯学習振興行政については,教育委員会と首長部局との協力・協働が必要だが,教育委員会の専管事業と考える自治体と首長部局の事務事業と考える自治体があり,今後どのように一体化していくかが課題。
   市町村長は,生涯学習は教育委員会の仕事だと考え,教育長は,学校教育に比べて生涯学習に関しては力の入れ方が足りない。市町村において生涯学習を推進していくためには,トップの意識を啓発することが重要。
   青少年教育関係はスポーツ・青少年分科会の所掌になっているが,社会教育法上は社会教育に含まれるスポーツ・レクリエーション活動の位置づけなどについての議論が本分科会でも必要であり,文部科学省の中でも,生涯学習を組織の上でどのように所管していけばよいのかという視点が必要。
   全く目標を持たずに漂流する若者や無目的に大学院に進む若者が増加している問題は深刻であり,厚生労働省と連携して,若者自立分野に力を入れていくことが必要。また,中高生の勤労観,職業観の育成に緊急的に取り組むことが必要であり,これらの分野についても厚生労働省に密に情報提供していくことが必要。
   フリーターや浮遊している若者の増加,若者による凶悪犯罪の増加などの現状を考えると,家庭教育の段階から職業教育を進めることが必要であり,厚生労働省と文部科学省が連携して取り組むことが必要。
   図書館に関して,創業,起業,資格等のビジネス支援サービスのために,商工部局等の首長部局と連携して取り組んでいる地方公共団体が増えてきており,職業教育と図書館での情報提供をうまく結び付ける例が出てきている。
   生涯学習センターと女性センターとを併設し一体で運営していくことは,コスト面からも非常に効率的である。


12.受益者負担について
   ○    財政が逼迫していく中で青少年教育関連事業に徐々に軸足を移している例もあり,成人及び高齢者の受益者負担についての検討が必要。
   子どもの体験活動に関しては無償であることが必要。
   今後は,住民が有償も含めてボランティアとして参加をし,事業も有償参加していくことが必要。


13.男女共同参画社会の形成
   ○    地方では,公共作業に関する出不足金の男女差等の慣習等が存在するなど男女共同参画社会に向けた取組が遅れており,男女共同参画社会づくりを促進していくことが必要。
   生涯学習の推進と男女共同参画社会づくりは表裏一体であり,所管官庁の壁を越えて連携を図りながら,推進していくことが重要。



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