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3.18歳以降の個人が行う奉仕活動等の奨励・支援
     〜奉仕活動を日常生活の一部として気軽に行う〜


  2の1で見たように,我が国では,多くの人が奉仕活動等について興味を抱いてはいるが,一歩を踏み出せないという状況にある。大学等の学生も含め,18歳以降の個人が日常的に奉仕活動等に取り組むことができるように,以下のような奨励・支援の方策を検討することが求められる。

(1)学生に対する奨励・支援等
  大学,短期大学,高等専門学校,専門学校などにおいては,学生が行うボランティア活動等を積極的に奨励するため,正規の教育活動として,ボランティア講座やサービスラーニング科目,NPOに関する専門科目等の開設やインターンシップを含め学生の自主的なボランティア活動等の単位認定等を積極的に進めることが適当である。
  また,学生の自主的な活動を奨励・支援するため,大学ボランティアセンターの開設など学内のサポート体制の充実,セメスター制度や,ボランティア休学制度など活動を行いやすい環境の整備,学内におけるボランティア活動等の機会の提供などに取り組むことが望ましい。
  こうした大学等や学生の取組を支援するため,国においてボランティア教育や活動を積極的に推進する大学等に対する支援措置を講じることが適当である。さらに,公務員や民間企業の採用に当たって,学生のボランティア活動等を通じて得られた経験,能力等を一層重視することが期待される。
1) 大学等による奨励・支援
  1 教育活動としての取組
  ア) 大学,短期大学,高等専門学校,専門学校(以下「大学等」という。)などにおいて,地元自治体,地域の社会福祉協議会,国際協力団体,NPO,スポーツ団体,青少年団体等関係団体と連携協力し,ボランティア講座やサービスラーニング科目(注2),NPOに関する科目等を開設することが望ましい。また,複数の大学等で協力し,こうした科目に関するモデルカリキュラムや教材等を共同開発することも適当である
  イ) インターンシップを含め学生の自主的な活動について,大学等において,教育効果などを勘案しつつ,大学等の単位として積極的に認定することが求められる。なお,専門学校においては,既にボランティア活動やインターンシップを授業科目の履修としてみなすことができるようになっており,今後,この制度をより一層活用することが期待される。
  ウ) こうした取組に当たっては,特定教員のみならず全学的に教職員の啓発を図り大学全体で進めることが求められる。
  2 学生の自主的活動に対する奨励・支援策
    大学等においては,学生の自主的な活動に対する奨励・支援策として以下のような取組を検討することが望ましい。
  ア) 学生に対する学内のボランティア活動等の機会の提供
    大学そのものが最大の活動の場となり得る要素を備えている。例えば,学内の環境整備,学内のコンピュータやネットワークに関する技術的サポートの支援,図書館,学内のスポーツ施設の地域住民への開放などでの業務支援,留学生や障害を持った学生に対する支援などにおいて,ボランティア活動等の機会を積極的に学生に提供する。
  イ) 学生に対するサポート体制の充実
    地域のボランティアセンター,学生関係団体等とも連携しつつ,大学内において,以下のようなサポート体制を整備する。
  a) 学生部等に情報提供,相談窓口の開設
  b) 大学等のボランティアセンターの開設(専任スタッフ,学生ボランティアの配置(センターにおいては,(a)学生のボランティア活動等に関する情報収集・提供,(b)学生向けプログラムの開発,場の開拓,(c)ボランティア養成講座等の開催等の事業を行うことが想定される)
  ウ) 学生が活動を行いやすい環境の整備
    セメスター制度(注3),ボランティア休学制度(休学期間中の授業料の不徴収,在籍年数制限からの除外等)の実施,9月入学の促進,いわゆるギャップイヤー(注4)など学生が長期的な活動を行いやすい環境を整備する。
  エ) ボランティア活動等に関する啓発
    地域のボランティア推進団体等との連携協力によるボランティア活動等に関するガイドブックの作成,ボランティアセミナー等の開催,入学時における学生に対するオリエンテーションなどの啓発を行う。

2) 国等による奨励・支援
    上記のような大学等及び学生の取組を奨励・支援するため,例えば,以下のような取組が検討されることが望ましい。
  1 大学等に対する国等の奨励・支援
  ボランティア教育や活動を積極的に推進する大学等に対する支援を行う(例:ボランティア関係カリキュラムやサービス・ラーニング科目の開発に対する支援等)とともに,学生関係団体による学生ボランティアに関するガイドブックの作成・配布を支援する。
  さらに,今後,大学等の評価において,ボランティア等に係る教育の取組や学生の自主的ボランティア活動等への支援等を評価指標の一つとして適切に位置付けることも検討することが期待される。
  2 就職の際に評価
  関係府省と経済団体等が連携協力し,公務員や民間企業の採用に当たって学生のボランティア活動等を通じて得られた経験,能力等を一層重視することを明確にする。
  関係府省と経済団体等が連携し,企業等に対し,学生に求める履歴書等にボランティア活動歴の有無を記載する欄を設けるよう呼び掛けを行うとともに,国等の行政機関においては,履歴書等にボランティア活動歴の有無を記載する欄を設けることを検討する。

(2)企業,社会人に対する奨励・支援
  国,地方公共団体,企業や労働組合などにおいては,気軽に参加できる職場環境作り,柔軟な勤務形態の導入など社会人が参加しやすい環境の整備や,地域での諸活動への参加を含め勤労者が行う幅広いボランティア活動等を奨励するための支援が期待される。
  国においても,こうした取組を支援するため,取組の事例紹介など情報提供を積極的に行うとともに,社会人に適した活動の機会の充実を図ることが適当である。また公務員や教員の活動を奨励するため,研修の一環として活動を位置付けることや,公務員や教員の経験を生かした活動のプログラムの開発等を検討することが望ましい。
  社会人の幅広いボランティア活動等を奨励・支援するため,国,地方公共団体,企業等においては,職員や社員が気軽に参加できる職場環境作り,柔軟な勤務形態の導入など社会人が参加しやすい環境の整備が期待される。
  また,企業や労働組合などにおいては,社会の主要な構成者としての役割や社会的責任を踏まえ,自らがボランティア活動等に対する支援を行うことや,社員が活動を行うことに対する積極的な支援を期待したい。

1) 企業の社会的役割
    企業等においては社会の主要な構成者としての役割や社会的責任を踏まえ,企業自身がボランティア活動やNPO活動に対し継続的に助成や支援を行うことを通じ,社会に貢献することが期待される。また,青少年に社会体験やインターンシップなどの就業体験の場を積極的に提供することを通じ,一定の教育機能を果たすことも求められている。

2) 社員が気軽に活動に参加できる職場環境の整備等
    企業等においては,長期間にわたる活動の実施に適したボランティア休暇制度の導入のみならず,地域での諸活動への親子や家族での参加を含め活動を幅広くとらえるとともに,(a)気軽に参加できる職場環境作り(定時退社の奨励,有給休暇の取得促進,サービス残業の解消など),(b)柔軟な勤務形態(短時間の継続的な活動の実施に適したフレックスタイム制など)の導入に積極的に取り組むことが期待される。
  ◇企業等のボランティア活動等に対する奨励・支援
    さらに,企業や労働組合などが社員のボランティア活動や地域の活動を支援するため,次のような取組を行うことが期待される。
  ボランティア推進団体等との協力による社員向けボランティアセミナー等の開催
  社員が属している活動団体への助成,社員が活動支援のために団体に寄附する際に企業等が一定の上乗せをするなどの支援の拡大
  地域社会の一員としての企業や労働組合等の社会貢献活動の推進(例:地域の清掃活  動,寄附,献血等の呼び掛け等)
  地域や学校での青少年の体験活動等への協力(例:施設の開放,社員を指導者として派遣,青少年の受入れ等)
  ◇国等の奨励・支援
    こうした企業等の取組や社会人のボランティア活動を奨励・支援するために,国等においては,以下のような取組の一層の充実が望ましい。
  ボランティア推進団体,経営者団体,NPO等の連携による社会人に適したボランティア活動等の機会の提供
  社員のボランティア活動等を支援する企業等の支援方策やその導入に当たっての取組などの事例紹介などの情報提供  等

3) 公務員・教職員のボランテイア活動等の奨励
    ボランティア活動は公務員や教職員にとっては,行政や学校現場を離れて,新たな社会とのかかわりを持つ場となる。特に教職員にとってはボランティア活動等の経験を教育指導に生かすことができるとともに,一方で,文化・運動部活動等で培った指導技術を地域における活動に活用するなど,日常業務で得た経験を社会に還元することもできるなどの意義がある。
  公務員や教職員が自発的にボランティア活動を行うことができる機会を整備するため,特に以下のような取組を検討することが望ましい。
  ア) 公務員
  公務員の自主的な奉仕活動を支援
  ・ボランティアに関するセミナーの開催,事例集の作成等による啓発の充実
  ・現行のボランティア休暇制度(国家公務員)の一層の活用・促進に努める。
  公務員の研修の一環としての体験研修
  ・一定期間介護等を実地に体験することを研修カリキュラムに位置付ける
  イ) 教職員
  初任者研修等教員の研修のプログラムとしてボランティア活動等を積極的に導入
  教職員生涯福祉関係団体等によるボランティア活動等に係る啓発の一層の充実
  さらに,関係行政機関が,ボランティア推進団体等と連携協力し,公務員や教職員の専門性を生かした活動のプログラムの開発についても検討することが適当である。

(3)個人が参加できる多彩なプログラム等の開発・支援
  奉仕活動・体験活動は,基本的には個人が自らプログラムを立て,自主的に活動を行うことが望まれるが,奉仕活動・体験活動を気軽に行うことができるようにするためには,様々な魅力的な活動の受け皿やプログラムを用意することが必要である。そこで,そのような取組の一例として,(a)青年,勤労者向けの長期の社会参加プログラム,(b)公共施設等におけるボランティアの受入れの促進,(c)ボランティアパスポートなどボランティア活動等の実績に応じて,活動を行う個人一般や団体に対する支援を行う仕組み作り(d)国際ボランティアの裾(すそ)野の拡大などを提案したい。
1) 青年・社会人向け長期参加プログラム
    奉仕活動等を長期間にわたって行うことは,青年にとっては知識・技術を習得し将来の人生設計に役立てることができ,また,社会人にとっても視野を広げ新たな人間関係を構築し,転職を含め新たな人生を切り開く契機となるものである。また活動を行う施設等においても,こうした活動に参加する青年や社会人を人材として期待できる。諸外国においても,こうしたプログラムが実施されている例もある。
  関係府省,ボランティア推進団体等が協力して,例えば,以下のような国内外の長期の社会参加プログラムを創設することを提案したい。また,こうしたプログラムの経験者について,官公庁,企業等の採用において積極的な評価が行われることが期待される。
◇青年,社会人向け長期参加プログラム
   対象:18歳以上
  活動場所:社会福祉施設,社会教育施設,学校,青少年教育施設,子どもの遊び場,NPO,ボランティアセンター等のボランティア推進機関,官公庁,環境保全,国際協力のフィールド等
  活動期間:1年〜2年
  支援措置:大学,職業訓練施設等と提携し資格等の取得も含めた学習プログラムを適宜取り入れる(企業等の協力も得ながら,一定の実費等の支給も検討)。

2) 身近に参加できる魅力あるプログラムの開発
    活動を行う主体や,活動分野などそれぞれの特性を踏まえつつ,参加者の能力や経験,興味や関心に応じて身近に参加できるように多彩な活動の機会が用意される必要がある。
  活動プログラムの開発に当たっては,例えば若者を引き付けることができるようにゲーム性やエンターテイメント性を持たせたプログラムや,親子で参加できる活動,中高年齢者が技能や経験を生かしてできる活動など,活動に参加する者の特性に応じた配慮が必要である。また,プログラムのアイデアを公募したり,各分野で活動する多彩な人材の参加協力によるプログラムなどの工夫も求められる。特に、今後,本格的に高齢化社会を迎える我が国において,高齢者が社会とのかかわりを維持し,活力を持ちながら生きることができるように,社会参加の場として高齢者のボランティア活動の機会を拡充していくことが必要である。
  さらに,地域においては,環境保全,国際理解,高齢化社会への対応など現代的課題の学習機会が充実されてきており,また,IT普及国民運動の一環としての全国民を対象としてのIT講習が実施されたところである。こうした学習の成果等を活用した活動の機会の提供やプログラム開発についても検討することが適当である。
  1 公共施設等におけるボランティアの受入れの促進
    近年,社会人,主婦,退職者等が,知識や経験,技術を生かして,地域の学校,社会教育施設,青少年教育施設,文化施設,スポーツ施設・病院などの公共施設においてボランティア活動を行う例が増えている。例えば,学校での教科や部活動の指導,地域でのスポーツや文化活動の指導,公民館,図書館等社会教育施設でのボランティア,博物館・美術館等でのガイドボランティア,スポーツ競技大会での組織運営・通訳など幅広い活動が行われている。こうした活動は個人の能力や経験,学習成果を生かし日常的に取り組めるものであり,活動の裾(すそ)野を広げる上で意義が深い。また,地域に開かれた施設としての事業や運営の改善充実や活性化に資する面も大きい。
  このため,公共施設等においては,ボランティアの受け入れ・活用を組み込んだ事業の運営,施設の担当者の指定,ボランティア及び職員双方への研修など受入れに必要な環境整備を行うことを求めたい。
  さらに,特別非常勤講師制度,スポーツや文化の指導者派遣制度など学校教育への社会人の活用のための施策の一層の充実を図る必要がある。
  2 個人一般に対する奨励・支援
    個人が,生涯にわたってボランティア活動を行うことを社会的に奨励し,こうした活動が持続的に行われる仕組みを検討していく必要がある。こうした観点から,試行的な取組として以下の取組を提起したい。
○ボランティアパスポート(仮称)

  市町村など地域単位で,地方自治体ないしボランティア推進団体等が,ボランティア活動等の実績等を記録・証明するボランティアパスポートを発行し,希望する住民に交付する。
  住民がボランティア活動等を行った場合に,これをポイントとして付加し,活動実績に応じて,公共施設の利用割引などの優遇措置,協賛団体等からの様々なサービス,利用する住民の様々な助け合いなどを受けることができるようにすること等が考えられる。
  国の機関・団体等に広く協力を呼び掛け,例えば,博物館・美術館の割引など特典や優遇措置を広げていくことも検討に値する。
  地域通貨など既に取組を実施している地域や団体等の協力を得て,こうした取組を試行的に実施し,持続可能な取組として広域的に広げていく方策について検討する。

  3 ボランティア団体・NPO等への援助
    NPOやボランティア団体の活動の財源は,基本的には寄附や会費による収入が中心となっている。安定的な資金の確保のためには,ボランティア活動に対する個人や法人のNPO等への寄附を促す税制上の優遇措置等の一層の充実について検討が進められる必要がある。また,個人の寄附を広く募る方策として,例えば,ボランティア推進団体等において以下のような仕組みについて検討することも考えられる。
    幅広く民間企業の協力を得て商品にポイントを付加し,売上げに伴うポイント数に応じて企業から団体に寄附するもの
    カード会社,航空会社等の協力を得て,クレジットカードやマイレージカードのポイントをボランティア活動の財源として寄附できるようにするもの

3) 国際ボランティアの裾(すそ)野の拡大
    学生や退職者などを中心に開発途上国での援助活動や技術協力など国際ボランティア活動に対する関心が高まっている。また,国内においても,異文化交流の手伝い,ホームステイやバザーの開催等による留学生の支援など様々な形で活動が行われている。このような活動は,参加者個人にとって国際的な視野を広げ,多様な価値観の中で生きる寛容の精神を養うとともに,草の根レベルでの国際貢献を推進する上で意義が大きい。
  今後,国際的なボランティアの裾(すそ)野を拡大していくために,国の関係行政機関,国際協力事業団,学校関係者,NGOなど関係団体等が連携協力し,次のような方策について検討することが望ましい
  1 大学等における国際ボランティアの養成及び大学関係者の積極的参加のための取組の充実
    大学関係団体,青年海外協力隊,NGO等が連携協力し,例えば,(a)大学等における国際ボランティア経験者の積極的活用(例:大学等の要請に応じ国際ボランティア経験者を担当教官やコーディネーター等として国際ボランティア講座や大学ボランティアセンター等へ派遣する「国際ボランティア養成人材バンク(仮称)」の設立等),(b)受入国のニーズの把握,語学や専門性の向上のための大学での指導体制,学生の参加の便宜等を勘案した国際ボランティアの養成のためのプログラムの開発,(c)教育援助や環境保全など専門性を生かし青年海外協力隊の活動等を支援する事業,(d)大学教員等がその専門性を生かし,NGO等の国際ボランティアに積極的に参加できるような環境作りなどの取組を図る。
  2 国際ボランティアに対する協力
    シニアを含め、海外ボランティアの一層の拡充を図るため,国際協力事業団やNGOなどの団体が地域で行う海外ボランティアのシニア海外ボランティアの募集や説明会の開催等に協力するなど,連携協力を図る。
  3 学校教育における裾(すそ)野の拡充
    青年海外協力隊やシニア海外ボランティア等,教職員の国際ボランティアへの参加を一層拡充するため,派遣元である地方自治体の主体性を高め,より長期的な計画をもって派遣を可能とする更なる工夫や,より生産的で効果のある派遣方法など現行制度の一層の改善を図る。また,児童生徒の国際理解教育や進路指導に国際ボランティア経験者等を社会人講師として活用する取組の充実を図る。


4.国民の奉仕活動・体験活動を支援する社会的仕組みの整備

  奉仕活動・体験活動を支援していくためには,国,都道府県,市区町村のそれぞれのレベルで,関係行政機関,ボランティア推進団体,学校をはじめ関係者による連携協力関係を構築するための協議の場(協議会)や,活動に関する情報提供,相談・仲介などを通じて個人,学校,関係団体等が行う奉仕活動・体験活動を支援する拠点(センター)を設ける必要がある。
  また,こうした推進体制が有効に機能していくためには,a)だれもがいつでも容易に必要な情報を得ることができる国及び地方を通じた情報システムの構築,b)地域におけるボランティア団体,受入施設,送出施設など関係機関・団体等が日常的に連絡・交流する市区町村のセンター等を中心とした地域ネットワークの形成,c)センター等において活動が円滑に実施されるために必要な連絡調整等を担うコーディネーターの養成・確保が求められる。
  奉仕活動・体験活動に関する現状及び課題を踏まえ,個人,学校,関係団体等の活動をサポートできるような以下のような仕組みを作ることが有効である。

(1)奉仕活動・体験活動を支援する仕組みづくり
1) 協議会・センターの設置
    特に学校内外での青少年の奉仕活動・体験活動の円滑な実施のためには,国,都道府県,市区町村のそれぞれのレベルで,関係行政機関,ボランティア推進団体,学校をはじめ関係者による連携協力関係を構築するための協議の場(協議会)を設けるとともに,コーディネーターを配置し,活動に関する情報提供,相談・仲介などを通じて,奉仕活動・体験活動を支援する拠点(センター)を設けることが必要である。このようなセンターは,一般の社会人や学生等の活動のセンターとしても機能し得ると考えられる。
  また,協議会やセンターの設置・運営,さらには各種施策等の展開に当たっては,国レベルにおける関係府省や全国規模の関係団体等による連携はもとより,地方においても,教育委員会と首長部局,さらには行政と学校,社会教育施設,社会福祉協議会等の関係団体,地域の経済団体,地域の代表者など活動にかかわる様々な関係機関・団体等の密接な連携が必要である。
  なお,協議会については,関係する行政部局が多く,広く関係団体等の協力を得ることが必要であるため,ネットワーク作りなど行政が一定の役割を果たすことが適当である。
  一方,センターについては,既に蓄積されたノウハウ等を活用するとともに,機動的かつ柔軟な運営を確保するため,教育委員会など行政がその機能を担うほか,状況に応じてボランティア推進団体等にゆだねることも有効である。特に市区町村のセンターについては,幅広い関係団体等との協力関係が構築できる場合には,教育委員会のほか,社会福祉協議会ボランティアセンターその他既にコーディネート等を活発に行っている団体等にゆだねるなど地域の実情を勘案した柔軟な対応が適当であると考えられる。

奉仕活動・体験活動を支援する仕組み(イメージ)

2) 国及び地方を通じた情報システムの構築
    だれもがいつでも容易に必要な情報を得ることができるシステムが求められる。
  特に市区町村,都道府県レベルでは,前述のセンターを中心に,既存のボランティア活動や体験活動に関する情報データベース等を活用しつつ,地域内の活動の場や指導者,活動団体や活動プログラム等に関する情報を整理し,活動を始めようとする個人,学校関係者,ボランティア活動関係者等様々な個人や団体の求めに応じて必要な情報を提供するシステムを構築する必要がある。
  国レベルにおいても,関係府省,ボランティアや体験活動にかかわる関係機関・団体等が連携協力し,全国的なボランティアや体験活動に関する情報等を利用しやすい体系に整理し,上記の地方のセンターの情報とともにリンクするなど関連するすべての情報が総覧できる情報システムの構築が必要である。その際,利用者が居住する地域以外の情報も容易に入手できるように配慮することが大切である。
  なお,情報システムの整備に当たっては,可能な限り広く収集し掲載することが適当であるが,例えば,特定の団体の誹謗中傷,政治や宗教への利用など不適切な活動の可能性があると判断される場合には管理者で削除するなどのルールを決めておくことが適当である。また,指導者等の人材等についての情報の登録に当たって,センターのコーディネーターなどが適切な判断を行うことが適当である。
  さらに,将来的には,国及び地方を通じて,各種情報をデータベース化し,活動分野,年齢,親子など参加形態,地域等により参加し得る活動が検索できるシステムや,生涯学習の視点を踏まえた活動手法や活動事例などの情報提供,希望団体自体による情報提供のために開放できるスペースの提供などの工夫が求められる。

(2)地域ネットワークの形成
  奉仕活動・体験活動を日常的な活動として,着実に実施していくためには,市区町村のセンターのほか,地域の実情に応じて,社会福祉協議会,自治会,民生委員,青年会議所,商店会等地域の団体が連携協力して,小学校区単位で公民館や余裕教室,地区センター等を活用し,地域住民が日常的に活動に取り組むために集うことができる身近な地域拠点(地域プラットフォーム)を整備することも有効であると考えられる。ここでは,市区町村のセンターを補完して,身近なエリアにおける活動の場の開拓や地域住民の活動への参加を促すことが想定される。
  一方,地域住民の生活圏域に応じた広域的な活動のニーズにこたえるため,例えば,市区町村単位などで,県内のボランティア推進団体,大学,NPO等が連携協力して,広域的な拠点(広域プラットフォーム)を整備していくことも検討に値する。
地域ネットワークのイメージ
※奉仕活動・体験活動を推進する仕組みの全体のイメージについてはこちらを参照。


(3)コーディネーターの養成・確保
  1 コーディネーターに期待される役割
    コーディネーターは,奉仕活動・体験活動の推進において重要な存在であり,センターないし仲介機関にあっては,活動参加を希望する者と活動の場を円滑に結び付けるため,活動の準備,実施,事後のフォローアップなど活動の各過程を通じて,参加者に対する活動の動機付け,情報収集・提供,活動の場の開拓,受入先の活動メニューの提供,活動の円滑な実施のための関係機関等との各種の連絡調整などの役割を担う。
  また,学校などの参加者を送り出す施設や福祉施設などの参加者を受け入れる施設にあっても,コーディネーターの役割を担う担当者が必要であり,送出し側では事前指導や関係機関等との連絡調整,受入れ側では参加者へのガイダンス,活動内容の企画,施設内での連絡調整等の役割を担う。
  2 養成・確保
  コーディネーターには,ボランティア活動や体験活動,企画・広報,面接技法等に関する専門的知見とともに,関係機関との人的ネットワークやその背景にある豊かな人間性など幅広い素養・経験等が求められる。さらには,活動の適正さを確保するため,活動に関する情報や団体や人物に対する確かな目利きといった能力も必要である。このため,関係する行政部局や団体等の協力を得つつ,都道府県と市町村が共同して人材の積極的な発掘,計画的な養成が必要である。
  コーディネーターの養成については,社会福祉協議会,ボランティア推進団体,教育委員会,スポーツ団体,青少年団体をはじめ,関係機関・団体等が連携協力して,養成講座の体系化を図り,養成講座を共同で開設することや,さらには関係機関・団体が協力して養成のための各種のモデルプログラムの開発等を行うことも検討する必要がある。また,受講者の経験や知識のレベルに応じた必要事項の補完や,担当する分野の特性に応じた多様なプログラムを用意する必要があることから,基本的には一定人数をまとめ得る都道府県単位で養成講座を行うことが効果的と考えられる。

(4)行政機関におけるボランティア活動や体験活動を担当する部局の設置・明確化等
  ボランティア活動や体験活動を効果的に推進していくためには,行政機関とNPO,ボランティア団体その他関係団体などが連携・協力しやすい仕組みを作ることが重要である。また,活動を行おうとする個人にとっても,行政機関の窓口が明確であれば,情報提供や相談対応を求めることができ,活動に気軽に参加しやすくなる。そこで,各行政機関等に、これらの活動を担当する部局を設置(「ボランティア課」等),又は明確化し,それらの推進に取り組むとともに,国民にアピールするなどの取組も求められる。


5.社会的気運の醸成
     〜皆が参加したくなる雰囲気作りを〜


  国民一人一人が奉仕活動・体験活動の意義を理解し,身近なものとしてとらえ、日常生活の一部として継続して取り組んでいくためには,社会全体でこれらの活動を推進していく気運を醸成していくことが不可欠である。このため,奉仕活動・体験活動に関する年次報告など奉仕活動・体験活動に関する積極的な広報・啓発,ボランティア活動推進月間など活動に気軽に参加できる雰囲気作り,活動を継続して取り組む者に対する顕彰の工夫などに取り組む必要がある。
  また,奉仕活動・体験活動の推進の上で果たすべき役割が大きい企業等の取組を促す方策として,積極的に取り組む企業の社会的奨励や関係府省と経済団体等との協議の場の設置などについても検討する必要がある。
(1)奉仕活動・体験活動に対する社会的気運の醸成
  1 奉仕活動・体験活動の魅力をアピールする取組の実施
奉仕活動等に対する社会的気運を醸成するため,関係機関等が連携協力し,例えば,以  下の取組について検討することが適当である。
  「ボランティア活動推進月間」などを設けて,関係府省,民間団体等が協力して奉仕活動等に対する国民的な啓発運動を実施
  奉仕活動・体験活動の全国的な概況をまとめた年次報告書等の作成
  国民の関心を引き付ける広報・啓発の実施
  奉仕活動等を自ら実践している各界の著名人が集まり,その意義を国民に対し働き掛ける活動等の実施
  テレビ等の媒体を通じ活動への参加が若者にふさわしいライフスタイルとしての印象を与えるような工夫
  地域の未経験者の参加者を促す工夫
  例えば,地域でのボランティア活動経験者に「語りべ」となってもらい,地域で友人や仲間に参加の喜びや感動を伝えて一緒に活動に参加する
  地域における行事などの身近な活動に家族一緒に参加するように呼び掛けを行う
  2 活動の顕彰
    奉仕活動・体験活動に継続的に取り組む者を幅広く社会的に認知し,その取組を顕彰していくことも重要である。ボランティア活動等に関する表彰・顕彰については,既に国や地方公共団体,企業や民間団体等により様々なものがあるが,例えば,以下のような点について検討することが望ましい。
  活動に携わるあらゆる人や団体が対象となる工夫
  例えば,青少年の奉仕活動等に対する顕彰など既存の表彰・顕彰の対象となりにくい者に対する新たな制度の創設,既存の表彰・顕彰の実施の工夫による対象者の拡大
  国民の関心を集める顕彰の工夫
  積極的に活動を行っている個人や団体などが社会から脚光を浴びるような環境を作り、関係者の意欲を鼓舞し,国民にその功績を広める顕彰の工夫(例:前述の推進月間に合わせて顕彰を実施(「ボランティア大賞」の創設等),顕彰と合わせてイベントの開催等)

(2)企業等の取組を促す方策
  奉仕活動・体験活動を社会的に定着させるためには,(a)青少年の体験活動への協力,(b)ボランティア団体等への支援,(c)社員のボランティア活動等への支援など企業等の取組が果たす役割が大きい。このため,以下のような方策についても検討する必要がある。
  1 積極的に取り組む企業の社会的奨励
  奉仕活動・体験活動を積極的に支援する企業を,例えば,「ボランティア活動支援企業(仮称)」のような形で広く公表する方策の検討
  2 関係府省と経済団体等との連携
  奉仕活動・体験活動の推進に関する官民を通じた共通認識の醸成,推進のための具体的な方策を検討するための関係府省と経済団体等による協議の場を設置

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