【資料2】全国公民館連合会資料

平成30年4月16日(月曜日)

公立社会教育施設(公民館)の所管の在り方について

公益社団法人全国公民館連合会
事務局長上村忠男

○公民館は、社会教育の中心的担い手であり、地域づくり・人づくりの拠点としてその役割・存在感を示している。安易な所管の変更がなされないようにするとともに、地域住民にその存在がさらにプラスになるように取り組むことが大切である。
   そのうえで、地域の実態や実情に応じ、教育委員会の所管が原則だが、首長と教育長とが連携を密に取り合えば、首長部局の所管にしても支障はないものと考える。

1.公民館の現状について
   近年、地域を取り巻く生活環境は、大きく変化しています。わが国の総人口が減少に転じて少子高齢化が一層進行し、東日本大震災の後に人々の絆の必要性が叫ばれたものの、人と人との関係はより希薄になり、地方消滅という言葉で表されるように、地域社会の持続可能性そのものが課題となっています。
   そうしたなか、各地域の特徴を生かした自律的で持続可能な社会を創生できるよう、平成26年11月、地方創生の理念等を定めた「まち・ひと・しごと創生法」が施行されました。このような大きな課題に対して、地方創生を成し遂げるには、人口、経済、地域社会の課題に一体的に取り組むこと、また地域住民一人一人が公民として主体的に社会を創り出していくことが求められています。
   これからの公民館は、今まで以上に学校、家庭、地域との連係を図り、公共の精神を高め、地域の連帯感を深め,地域住民の協働による地域課題の解決や地域活性化の取り組みを促進すること、そして公民館が地域づくり・人づくりの拠点となることが期待されています。また、災害のときの身近な避難所として、地域の安心・安全を守る国土強靭化の拠点としても活用されています。
   一方、公民館を取り巻く状況は、市町村合併、指定管理者制度の導入等により、大きく変化しています。多くの自治体で、公民館の現行制度やその役割を見直しつつも、公民館数や職員数、財政面での削減を効率的に進める方向に向かっています。
   公民館の職員配置や予算を確保するためには、それぞれの立場で、首長や財政当局との積極的な意思疎通を図りつつ、公民館の存在や役割・機能がますます重要になることを認識してもらうことが必要です。
   現在、全国の公民館数は13,777館で、公民館利用者数は約2億9百万人(H27社会教育調査)となっており、国民一人当たり年間2回弱公民館を利用しています。
   それぞれの公民館がさらなる創意工夫と努力を重ね、地域の課題解決や、地域の人々が安心して集い学べる公民館づくりに積極的に取り組み、実践することで、公民館が地域ばかりでなく、わが国の社会にとって欠くことのできない存在として全国各地で活動を展開しています。

2.公民館について
(1)教育基本法
   第1条(教育の目的)
   第3条(生涯学習の理念)
   第6条(学校教育)
   第10条(家庭教育)
   第12条(社会教育)

(2)社会教育法
   第2条(社会教育の定義)
   第5条(市町村の教育委員会の事務)
   第20条(公民館の目的)
   第21条(公民館の設置)
   第23条(公民館の運営方針)
   第23条の2(公民館の基準)

(3)公民館の設置及び運営に関する基準
  第3条(地域の学習拠点としての機能の発揮)
  第6条(学校、家庭及び地域社会との連携等)
  第7条(地域の実情を踏まえた運営)
  第10条(事業の自己評価等)

3.公民館の所管について
「政治的な中立性の確保」「首長と教育委員会との連携」「地域と公民館との関係」 
   など、過去の経緯を踏まえた上で、これからの対応をしていく必要があります。
(1)首長部局の所管  
   メリット・予算の確保がしやすい。
            ・観光や福祉などの分野との連携がしやすくなる

(2)教育委員会の所管
   メリット・学校教育、家庭教育、社会教育の一貫性と連携が取りやすい。
             (地域の活動に学校が協力、学校に地域が協力など)
            ・人材の確保と育成がしやすい。

(3)所管変更にあたっての留意点
   ・所管が変わっても名称(公民館)を変える必要はない。
   「内容面で考えれば、公民館の事業としての対応が可能である。」
   ・地域の実態に即し、地域主体の事業を実施すること。
   ・公民館運営審議会と同様な仕組みを設置し、チェック機能を持たせること。
   ・社会教育に関する専門的知見を有する人材の育成と確保を心掛けること。


4.公民館活動の事例
(1)北海道:鹿部中央公民館(町内唯一の社会教育施設で図書館、博物館、生涯学習センター等の機能を併せ持つ)
   ・公民館は、「あらゆる世代が集う、学びの拠点」
      ○学びを地域活性化につなげるには!?
   ・学びをつなげる~世代別アプローチ
      乳幼児(0~6歳)・・・・・・・・・親子で地域デビュー
        親子ふれあい教室、バンビ教室など
      小中学生(7~15歳)・・・・・・・たくましく生きる子の育成
        しかべっこ教室、ジュニアリーダー育成など
      青年~成人前後(16歳~20代)・・・地域を担う人材の育成
        青年活動隊、スポーツ推進委員など
      成人中期~(30代~)・・・・・・・次の世代を育てる人材
        生き生きと過ごす人材
        公民館講座、各事業の運営サポートなど
        ・例「しかべっこ教室」
           鹿部町は小中学校が各1校のため、近隣市町の同年代の子どもたちとふれあう場「宿泊研修」を設けるなどの体験学習を企画実施している。
           また、中学生を運営に携わらせることで、リーダーの育成へとつなげている。

(2)福井県:鯖江市北中山公民館
   「社会教育を通じた持続可能なまちづくり」
   北中山地区のまちづくり理念
   ○自分たちで出来ることは自分たちで
   ○どうしても出来ないことは市や県に
   ○税金の有効活用(何でも税金を使わない)
   ○税と自治制度の原点に返る

・住民によるワークショップで地域の課題を洗い出し、独自のまちづくり計画策定
・計画の実現は住民が主役で公民館は後方支援、職員がサポート
・「美しいまちづくり」アジサイ1万本計画
   「健康福祉のまちづくり」笑いの三笑運動
   「歴史文化のまちづくり」ふるさと学習(地域と学校との連携)などを策定
・公民館は、小中学校、老人会、壮年会、体育協会などをつなぐプラットフォームの役割を果たす。

(3)沖縄県:那覇市若狭公民館
「全ての人に開かれた公民館へ」~地域に暮らす多様な人とのかかわり~

   ※那覇市は、平成16年に公民館運営審議会廃止→社会教育委員会議で審議。  
   平成17年から独自に周辺自治会長及び役員、利用団体役員、近隣の学校長及びPTA会長、図書館や児童館等の近隣施設長による外部委員会を設置。
    『若狭公民館サポートポロジェクト委員会』
   平成19年にNPO法人化、名称変更し「NPO法人地域サポートわかさ」となり、現在は指定管理者として、公民館を運営。

   ※若狭公民館エリアの概況
   ・一人親世帯や生活保護受給世帯の割合が高い。
   ・自治会加入率15.5%(未加入84.5%)で地域活動とかかわりのない人が多い。
   ・急増する外国人労働者や留学生と住民との軋轢


○地域課題に対応するために
   ・地域情報の共有を図り、風通しを良くする。「多様な情報発信」
     館報「広報わかさ」・・・新聞販売店4000部、小中学校3400部他
     インターネットの活用
   ・青年層が楽しみながら主体的に関われる場の創出
     公民館合宿、朝食会から広がった「100人でだるまさんがころんだ」等
   ・子供の多様な体験、居場所と関係づくり
    「トムソーヤ」シリーズ、「若狭ちむどんどん太鼓」、無料英会話教室等 
   ・自治会の枠を超えた多様なかかわりが生まれる活動
     おもちゃ×防災「リッカ!ヤールキャラバン」等
   ・公民館に足を運ぶことの少ない層への取り組み
     シングルマザー支援の取り組み、在住外国人との交流、パーラー公民館
   ・NPOや専門機関など多様な機関との連携
    「企画づくりのじゃばら手帳」開発・活用等

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