資料2-1 生涯学習による可能性の拡大、自己実現及び社会貢献・地域課題解決に向けた環境整備について(審議経過報告)≪素案≫(検定試験の質の向上等)抜粋

目次
4.検定試験の質の向上等
 1.検定試験の意義
 2.検定試験の評価及び情報の公開
 3.検定試験の活用

4.検定試験の質の向上等

1.検定試験の意義

○ 学習の成果を適切に評価するものとしては、国家資格、国家試験、大学教育における学位や履修証明制度等のほか、民間による検定試験が広く用いられている。

○ 民間による検定試験は、多くの国家資格、国家試験と異なり、法令上、合格が特定の職業等に従事することの要件とされるものではないが、学習の成果を評価するものとして、学習者にとっても人材を活用する側にとっても以下のような意義があり、「学び」と「活動」の橋渡しを促進するために、更なる活用が期待される。

○ 学習者にとって、検定試験は、いつでも、どこでも、誰でも受検することができるものであり、自己の学習の到達目標・到達度の確認・証明とともに、チャレンジ精神の涵(かん)養、継続的な学習意欲の喚起、教養の涵(かん)養等様々な意義がある。「一億総活躍社会」を形成するためには、社会人の学び直しは不可欠であり、検定試験は、学び直しの成果の確認を可能にするものである。

○ また、人材を活用したい側にとっても、検定試験は、課題の解決のために必要な知識・技能を持っている人材を明らかにすることができるものであり、人材のマッチングに資するところが大きい。

○ さらに、平成27年9月にまとめられた「高大接続システム改革会議中間まとめ」においては、高校生の多様な学習成果を測定するツールを充実する観点から、高等学校基礎学力テスト(仮称)の導入に加えて、校長会等が実施する検定試験の活用促進や各種民間検定の質的向上・普及促進が提言されている。

○ 一方、民間による検定試験は、法令等に基づいて実施されるものではなく、検定試験を実施すること自体には特段の規制も届出等の義務もない。実施主体や目的、内容、規模等は極めて多様であり、全国に存在する検定試験を網羅的に把握することは困難であるが、全国に1,000種類程度(詳細にみると5,000種類以上)の検定試験が存在するとも言われる※1。


※1 「検定試験の評価ガイドライン(試案)について(検討のまとめ)」P.7

○ このため、学習成果を適切に活用するよう検定試験を更に活用していくためには、それぞれの検定試験がその質の向上を図るとともに、検定試験の社会的認知や活用が進むことが重要である。 

○ 平成22年6月に文部科学省でとりまとめた「『検定試験の評価ガイドライン(試案)』について(検討のまとめ)」(以下、「検討のまとめ」という。)においては、「社会一般で通称的に使用されている「検定」や「資格」、「認定試験」等の用語を含め、広く学習成果を測定する、言わば物差しとしての役割を果たしているもの」を包括的に「検定試験」と整理している。本答申で扱う「検定試験」は、特に、学習者の学習成果を測定するもののうち、法令等に基づかずに、民間の団体が実施するものを指すものとする。

2.検定試験の評価及び情報の公開

○ 検定試験が、個人の学習成果を適切に証明し、その証明された学習成果が社会において有効に活用されるためには、検定試験そのものについて受検者や利用者からの信頼性が確保されることが前提となる。このためには、検定試験の全体を通じた様々なプロセスが適切に行われていることなど各検定事業について受検者や利用者の便に資する様々な情報を積極的に公開することにより、実施する検定試験の質や信頼性についての説明責任(アカウンタビリティ)を果たすことが期待される。また、検定試験に対する評価の実施とその結果の公表は、このような説明責任を果たす上で有意義である。

○ 評価の枠組みについては、「検討のまとめ」では※2、その主体に着目して大きく「自己評価」と「外部評価」に分類してきた。さらに「外部評価」を、様々な検定事業者間で評価を行う取組としての「関係者評価」、及び、希望する検定事業者に対して専門家等が行う評価としての「第三者評価」に分類している。


※2 「検討のまとめ」P.14参照。

その上で、「評価の対象とされる検定事業者において、自らが実施する検定試験の与える受検者(学習者)や社会への影響、生涯学習社会へ果たす役割等を認識し、検定試験の質向上や信頼性の確保を図るべく、まずは自己評価の取組が進展することが重要である」「その上で、様々な検定事業者間で評価を行う取組(関係者評価)や、希望する検定事業者に対して専門家等が行う評価(第三者評価)といった外部評価が行われることが期待される」としている。

○ これについて、その後の評価の取組の進展等を踏まえて、改めて以下の通り整理することにより、評価を通じた検定試験の質の改善と向上が一層効果的・効率的に促進される仕組みとしたい。

(1)検定試験の自己評価

○ 検定事業者は、検定試験を実施し、その結果を振り返ることにより、日常的に検定試験を点検し必要な改善を図っている。これに加えて、日常的な点検では気付かない新たな視点からの改善を図るために、定期的に検定試験の評価を行うことが有意義である。

○検定試験の評価は、その質の改善と向上を目指すものであることから、まずは検定試験の実施主体である検定事業者自らが自己評価に取り組み、その結果に基づきPDCAサイクルを回していくことが基本となる。

【評価する項目】

○ 「検討のまとめ」を踏まえて、平成23年に検定事業者等の関係者により取りまとめられた「検定試験の自己評価シート」においては、検定試験の自己評価を行う際の視点やその内容として考えられるものについて、「実施主体」、「実施内容」、「実施手続」、「検定結果の活用促進」、「継続的な学習支援」の5分野に分けて評価項目を設定している。

○ 平成26年度に受検者数5,000人以上の検定試験を実施する団体等90団体に対して実施したアンケートによると、約7割の団体が、上記「検定試験の自己評価シート」を活用した自己評価を実施している。

○ 「検定試験の自己評価シート」は、各検定事業者にとって、自らによる組織的・継続的な事業改善のための指針となるものであり、検定試験の質の向上のため、「検定試験の自己評価シート」を活用して自己評価を行う検定事業者を更に増やすことが必要である。さらに、各検定事業者は、利用者や受検者にも分かる形でその結果を公表することが期待される。

○ その上で、国においては、例えば、各検定事業者の自己評価の評価項目や評価結果を踏まえて、各検定試験に共通して必要と考えられる評価項目の抽出を図るなどにより、「検定試験の自己評価シート」が更に効果的なものとなるよう、国として自己評価の項目をガイドラインとして示すなど、今後検討を深めることが期待される。例えば、試験におけるコンピュータ活用の進展を踏まえた項目や、近年のスマートフォン等の情報通信機器の小型化・高度化を踏まえた不正受検対策に関する項目を追加することなども考えられる。

【評価の実施回数】

○ 検定事業者は、受検者や社会からの要請に応えて不断の改善を図る観点から、検定試験の実施毎に日常的な点検を行うなどPDCAサイクルを着実に回していくことが期待される。

○ 一方で、評価の実施に伴う検定事業者の事務負担の増加や、ひいては受検者が負担する受検料への反映等も考慮すると、「検定試験の自己評価シート」に基づく自己評価については、1事業年度に少なくとも1回は実施することが求められる。

(2)検定試験の外部評価

1.第三者評価

○ 検定事業者による自己評価の実施に加えて、第三者の視点からの評価を受けることにより、自己評価の妥当性が検証され、評価の信頼性や客観性が高まる。また、自己評価とは異なる第三者の視点からの評価を受けることで、自己評価では気付かなかった今後の取組の参考となる改善のポイントが明らかになってくることが期待できる。

○ 同様の効果は、従前から行われていた他の検定事業者等の関係者による評価によっても一定程度実現可能であるが、関係者による評価であるが故に、社会の側から見た時に、評価の客観性、透明性という点において必ずしも十分ではないと判断される場合もあると考えられる。

○ このため、利害関係を有しない第三者としての専門家等から成る第三者評価を適切に組織し、実施することができれば、各検定事業者の自律的な質の改善と向上が更に促され、検定試験事業全体の質向上や社会における信頼性の一層の確保に資することが期待される。

【評価の実施機関】

○ 第三者評価を実施する機関が乱立すると実施機関間の評価のばらつきが生じて信頼性が損なわれることを懸念する考え方もあるが、検定試験が多様な分野で実施されており、適切な第三者評価を行うためには多様な主体が特色のある第三者評価を実施し、検定事業者の側において選択できるようにすることが重要であることから、第三者評価の実施機関を一つに限るのではなく、複数の機関において実施されることが望ましい。

○ その場合、第三者評価の質を保証するとともに第三者評価を実施する適切な主体を確保し、育成する観点から、国が第三者評価事業を後援することや、第三者評価のガイドラインを作成するなどにより支援することが求められる。

【評価結果の公表】

○ 第三者評価の実施機関は、検定試験の優れた取組を社会に対して発信していくことが必要であり、第三者評価の評価結果を、検定事業者とともに、第三者評価の実施機関においても公表することが求められる。

加えて、国においても、検定事業者・第三者評価機関が公表する評価結果が、広く検定試験の受検者・活用者に周知されるよう促すための取組が求められる。

【評価する内容・項目】

○ 多種多様な検定試験を評価する場合、検定試験の多様性を阻害しないよう、各検定試験の規模、目的、測ろうとする知識や技能、受検者等を踏まえた評価の視点を工夫する必要がある。どのような内容・項目を評価するのかについては、その評価実施機関毎の個性や強みを発揮し独自性を持って行われる部分が存在することが考えられる。そのため、第三者評価の評価内容は、実施する機関が策定することを基本とすることが適当である。

○ 同時に、様々な検定試験の中から選択する必要がある受検者・活用者にとっては、どの第三者評価機関が実施した評価結果であっても、一定の基本的な内容・項目を中心に、検定試験間で結果を比較できることが望ましく、そのため、評価する内容・項目について、国が一定の基準を示すことが必要である。

○ 評価の項目は、大きく「検定試験の運営・組織に関する項目」と「検定試験の試験問題に関する項目」に分類することができる。

○ 学習成果の活用のために学習成果を適切に証明するためには、証明をする主体である検定実施者が適切な団体であることや試験が公正に行われていることが前提である。そのため、検定試験の運営・組織に関する項目については、検定事業者の規模・目的等にかかわらず、評価の対象とすべきである。

○ また、学習成果の証明のためには、その前提として試験問題の内容が学習成果の証明のために適切なものであることが示される必要がある。その際、例えば、試験問題が測ろうとする知識や技能の専門性が妥当であるかどうかについての評価が考えられる。

○ これについては、特に検定試験を活用しようとする者にとって、当該検定試験が測定する知識・技能が、例えば、学習指導要領や特定の職業で必要とする知識・技能と適切に合致しているかどうかが重大な関心事となることが考えられる。一方で、これを全ての第三者評価機関において、検定試験毎に異なる様々な分野の専門家を評価者として揃えて、専門的な知識・技能の妥当性を適切に評価することには非常に困難を伴う。

○ そのため、試験問題の知識・技能の専門性について、まず第一義的には検定試験の実施事業者において、当該検定試験の主な活用目的を踏まえて、検定試験が測定しようとする知識・技能と、その活用が想定される場面に合わせた学習指導要領や特定の職業で必要とされる知識・技能等との関係について、自ら点検し積極的に情報を公開することが求められる。

○ その際、試験問題の知識・技能の専門性等を適切に担保しつつ試験問題の作成にあたる体制等の状況については、「検定試験の運営・組織に関する項目」の一環として、第三者評価の対象とすることが考えられる。

○ 併せて試験問題については、それが測ろうとする受検者の知識・技能等を適切に測定できる妥当な精度や設計を有するかどうか(テストとしての妥当性)や、測定対象が変化しない限り安定したテスト結果が得られるかどうか(テストとしての信頼性)などの問題がある。

○ これについては、試験問題の知識・技能の専門分野の別とは関わりなく、テストに関する理論の専門家により適切に評価できるとの考え方がある一方、テストに関する理論の専門性のみならず、当該検定試験で測定しようとする分野の知識・技能についても一定程度精通していなければ評価することが難しいとする考え方もある。また、多くの検定事業者や第三者評価機関においてテストに関する理論に詳しい人材を得ることは現状では困難なのではないかと考えられる。

○ 検定試験の目的や社会的活用の態様が様々であること、また、第三者評価機関が複数あることを前提とする場合にそれぞれの評価機関がその長所を生かしてどの部分において独自性を発揮すべきかを考慮すると、すべての評価機関に共通して求める評価の内容・項目としては、検定試験の運営・組織に関する部分とし、検定試験の試験問題に関する部分のうち、試験問題で測定する知識・技能の専門性の評価や、テストに関する理論に基づく評価については、各評価機関がその専門性を発揮し競争する部分として位置づけることが適当と考えられるのではないか。

【評価者】

○ 第三者評価を実施するに当たり、文部科学省において実施した試行においては、生涯学習振興行政経験者、検定事業関係者、学校関係者、企業等関係者、学識経験者等が第三者評価の評価者となって行われた。今後本格的に第三者評価を実施する際には、共通して求められる組織・運営の評価については、会計と法令の専門家を必ず含めることが必要と考えられる。また、試験問題の評価については、テスト理論の専門家や当該分野の専門家などを必要に応じて加えることが考えられる。

【評価の対象とする検定試験】

○ 第三者評価の意義にかんがみ、純粋に趣味的な検定試験である場合を除き、検定事業者の判断で積極的に第三者評価を受けることが強く期待される。特に、文部科学省の後援を受けようとする検定試験や就職・進学・社会参画等広く社会で活用されることを目的とする検定試験は、その質の向上や信頼性の確保が強く求められることから、第三者評価を受けることが必要である。

○ その際、それぞれの検定事業の特性に配慮し、第三者評価の評価基準についてもそれぞれの特性に配慮した基準を設けるとともに、経済的な負担も含め、第三者評価の実施に伴う負担が、検定実施者にとって過大にならないようにする必要がある。

【自己評価との関係】 

○ 検定試験の評価は、検定事業者が自ら実施する検定試験を改善し質的向上を図るための自己評価が基本であり、それを前提として、第三者評価機関は、当該自己評価結果への評価も含めて評価を実施ことが適切である。

○ このことから、検定事業者は、まず、第三者評価機関が提示する自己評価項目に基づき、自らの実施する検定試験について自己評価を実施した上で、その自己評価結果を提示して第三者評価を受けることにより、検定試験のPDCAサイクルの質を一層向上させることが求められる。

 その際、自己評価は前述の「検定試験の自己評価シート」を活用して行われるものであることから、第三者評価機関においては、「検定試験の自己評価シート」の内容を十分に踏まえ、検定事業者が取り組むべき自己評価の項目・内容を示す必要がある。

○ また、例えば、上場企業については内部統制報告制度(いわゆるJ-SOX法)として財務報告にかかる内部統制を評価して国に報告する制度がある。これも参考として、組織における業務遂行の適正性の状況についてあらかじめ検定事業者が自己評価を行った結果をとりまとめ、第三者評価を受けるにあたり組織・運営に関する項目について適切に評価を受けるための重要な資料として当該評価機関に提示することが考えられる。さらに、国の後援を受けている検定試験の事業者にあっては、国に対しても示すことが考えられる。

【評価の実施回数】

○ 自己評価については、前記の通り1事業年度につき少なくとも1回実施されることが求められる。これに対し、第三者評価を同じ頻度で実施する場合、第三者評価の内容・項目によっては検定事業者等の負担が相当に重くなることも考えられる。そのため、検定試験の評価を有効に行う観点からは、例えば、「検定試験の運営・組織に関する項目」の評価については、作問体制等の評価も含めた自己評価の結果が公表されることを前提として、自己評価の結果をチェックするという観点から、2事業年度につき1回実施することとし、試験問題で測定する知識・技能の専門性の評価やテストに関する理論に基づく評価を行う場合は、年度内に行われたテストの適切性を速やかに確認し担保する観点から、1事業年度に1回は実施することが考えられるのではないか。但し、評価の実施回数については、検定事業者の円滑な業務運営や負担への配慮も必要ではないか。

【第三者評価の機能】

○ 第三者評価の実施機関には、評価を通じて検定試験に関するノウハウを蓄積し、これを活用して検定事業者に対して、検定試験の企画・実施や評価の実践について助言や支援を行うことができる。

○ また、第三者評価を行うに当たっては、例えば、検定事業者のスタッフとの協議をしながらテストの信頼性等に係る評価を行うことにより、より適切な評価を行うことができるとともに、検定試験の更なる改善を目指すための人材養成に資する場合も考えられるが、一方で、評価者のチームの中に含めるのではなく、検定事業者のスタッフを協議しながら進めていくことも考えられるのではないか。

○ このように、第三者評価の取組を通じて検定試験を実施する人材や自己評価を実施する人材を育てる機能を果たすなど、いわば“対話的”、“協働的”で、検定試験やそれを担う人材を“育てる”機能を果たす第三者評価であることが期待される。

○ 以上のように、検定試験の第三者評価は、「検定試験の自己評価の上に、直接の利害関係を有しない専門家等が検定試験の評価を行うことにより、検定試験の質の向上や改善を図る検定事業者の自律的な取組を促し、また、検定試験を担う人材を育成することによって、検定試験を育成する取組」と位置付けられる。

2.関係者評価

○ 「検討のまとめ」においては、外部評価のうち、関係者評価を「検定事業者間による評価の取組を通じて、相互に検定試験の現状や先進的な取組等を把握することにより、各検定事業者の自律的な質の向上や改善を促し、検定業界全体の向上に資する」ものとした。

○ この関係者評価については、検定試験の改善に資する面がある一方、類似した検定が存在するとは限らないこと、ほかの類似した検定事業者といえども評価対象の検定については必ずしも専門性が高いとは限らないこと、評価対象の検定事業者の財務・運営状況等の内部事情がほかの検定事業者に知られてしまうこと等の課題も指摘される。

○ 一方で、関係者評価によって、検定試験の試験問題の内容や評価基準等について評価を行うことも考えられるとの指摘もある。

○ 前述したとおり、検定試験の試験問題が当該分野の専門性に照らして適切かどうか、ということについては、各検定事業者において自ら点検し公表することが求められるところであるが、その際に、検定事業者の判断により、専門性が共通する他の検定事業者や、当該分野の専門家による評価を受けることも考えられる。

○ これらを踏まえ、検定試験の評価の体系においては関係者評価は今後位置づけないこととするが、検定事業者の自主的な判断により、自己評価や情報公開の取組の一環として、従前の関係者評価に相当する評価に取り組むことは有意義である。

○ 併せて、類似の分野の検定試験や難易度が近い検定試験の実施者と情報交換を進めることによって、更に検定試験の質を高め、活用を促進するなどの検定事業者の自主的な取組も期待される。

(3)評価の体系の整理を踏まえたガイドラインの作成

○ 上記の整理を踏まえ、また、検定事業者への過剰な負担を避けて効果的・効率的に評価を行う観点から、自己評価及び第三者評価の相互の体系やその詳細について更に国において検討を深めることが必要である。その結果を踏まえて、現在は試案にとどまる「検定試験の評価ガイドライン」を、今後策定することが求められる。

○ これらの取組を通じて、検定試験の質の向上や信頼性の確保が進むことにより、更に検定試験の活用の幅が広がり、これが更なる信頼性の向上を呼び起こすという好循環を呼び起こすことが期待される。

3.検定試験の社会的活用の促進

(1)検定試験の活用の意義

○ 検定試験を学校や企業の活動において活用する事例が進みつつある。

 例えば、一定の検定試験に合格している場合に、採用において優遇措置が与えられたり、入試において加点の措置や一定の試験の免除の措置があったり、学校の単位を認定したりする例が広がっている。

○ また、大学において、本来は大学入学以前に学校や家庭で習得することが期待されている能力について、それが十分ではない場合に、学生に対し当該能力を評価する検定試験の受検を求めている例もみられる。

 あるいは、将来専門的な技能を有する社会人として活躍する上で、いわば常識として知っておく必要があると考えられるビジネス上の知識・能力を身につけられるよう、検定試験の受検を求める例も見られる。

○ さらに、検定試験の合格を目指すことにより、学生・生徒や社員の学習等への意欲を喚起する例も見られる。

○ また、前記の通り、「高大接続システム改革会議中間まとめ」においては、高等学校における検定試験の活用促進や質的向上・普及促進が提言されているところである。

○ このように検定試験が様々に活用され、また期待が高まる中、これを単に資格の取得とそのための学習活動自体を目的とすることにとどめるのではなく、検定事業者や国、企業等は、その成果が適切に評価され社会的に活用される場を広げるよう意識することが重要となっている。

○ また、検定試験により学習の成果が証明されることは、人材をマッチングする際の判断基準の一つとなり、企業・学校だけでなく、地域と学校との協働活動や地域活動等において人材を活用したい側にとっても意義がある。

 このように、検定試験の活用の幅が広がることは、学習者の学びの進化や更なる検定試験の活用、学びと活動の循環につながるものである。

(2)検定試験の活用の促進方策

○ (1)に示すような様々な効果が期待できる検定試験の活用を一層促進するために、以下の通り、関係者それぞれに期待することを整理した。

 これを踏まえて、各関係者におかれては、検定試験の社会的活用に向けた取組に積極的に取り組まれることに強く期待したい。

【検定事業者に期待すること】

○ 検定事業者においては、検定事業者の組織・運営、検定試験の受験者数・合格率などの基本的な情報を公開することが求められる。

また、検定試験の活用を念頭に置きながら、学校・企業や地域に対して、測ろうとする知識や技能、難易度や活用方策を示すことが求められる。例えば、学校における検定試験の活用を促進するためには、学校向けに有益と考えられる内容について示されることが重要であり、また、企業の就職・採用で活用される検定試験については、同様に企業に対し示される必要がある。 

○ また、検定試験の社会的活用を促す上で、学習者の学習意欲を喚起し検定試験の受検意欲を高めることも重要となる。そのため、検定事業者においては、例えば、受検者の年齢層や発達段階・学習段階に応じて基礎的な段階から発展的・応用的な段階まで幅広く検定試験を実施したり、更には親子で検定試験を受検できるよう工夫することなどにより、学習者が、生涯にわたり、段階をおって学習を継続する励みとなることが期待される。

【企業・地域等人材を活用する側に期待すること】

○ 企業・地域等人材を活用する側についても、人材のマッチングを促進するため、どのような検定試験に合格している者を必要としているかを発信することが求められる。

○すなわち、企業においては、就職などにあたりその求める能力を、検定試験を通じて得られる資格等として明確にすることが考えられる。

 さらに、その能力が的確に検定試験を通じて評価されるよう、検定試験の設計段階から検討に加わるなど積極的に関与するとともに、人材募集において当該検定試験の合格を要件とするなどの取り組みも考えられる。

【学校に期待すること】

○ 学校においては、各種検定試験の質的向上・普及促進が行われることを前提に、多様な学習成果の測定のための一つの方法として、検定試験の活用が考えられる。検定試験の結果を学校での指導に役立てるとともに、特に高等学校段階において、学校の教育目標や実態に応じて、一層、単位認定などの取組が進むことが重要である。

○また、前記の通り、生徒の多様化が進む中で、共通的に必要とされる基礎的な知識・技能を身につけているかどうかを客観的かつ効率的に把握する上で、検定試験は重要な役割を果たすことが期待され、それにより、その後の授業が円滑に進むことが期待できる。

○ そのためには、検定試験が、学校における学習とどのように結びつき、どのような観点から学習成果として評価することが可能であるかについて示していくことが必要である。

【国・地方公共団体に期待すること】

○ 国においては、検定試験の意義や活用の促進について広く周知・啓発すると共に、検定事業者と活用者である学校・企業等の間で意義や課題を共有し連携・協働につなげる基盤となる対話の場の設定を支援することや、更には、産業界や学校と検定事業者による“産・検協働”“学・検協働”による検定試験の質の向上や社会的活用の促進を図る取組を促すことが期待される。

○ また、この対話・協働の成果も踏まえて、地方公共団体においては、公立学校の設置者として、学校における検定試験の適切な活用のために必要な情報を各学校に提供することなどにより、各学校における適切な活用を促すことが期待される。

○ また、国や地方公共団体、また検定事業者をはじめとする関係団体等の連携協力により、個人が取得した検定試験の結果等について、当該個人やその活用を図ろうとするものが一覧して把握できるように、例えば生涯学習パスポートの一層の普及や、ICTを活用してそれを発展させた取組を進めることなどが考えられる。

お問合せ先

生涯学習政策局生涯学習推進課

電話番号:03-5253-4111(内線3273)
ファクシミリ番号:03-6734-3281
メールアドレス:syo-bun@mext.go.jp

(生涯学習政策局生涯学習推進課)