生涯学習を推進する人材の育成及び確保の在り方に関する作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成18年10月31日(火曜日) 13時~15時

2.場所

仲通ビルB1階K2会議室

3.議題

  1. 生涯学習を推進する人材の育成及び確保の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 明石座長、菊川委員、山本委員、山岸委員、菊川委員

文部科学省

 中田大臣官房審議官、平林社会教育課長、後藤参事官、行松社会教育課室長、岩佐生涯局政策課企画官、山本家庭教育支援室長、馬場社会教育研究センター長、圓入生涯局政策課専門調査官、その他関係官

5.議事録

(1)岩佐企画官より、具体的な方策に関する提言について説明が行われた。

(2)菊川委員より、意見発表が行われた。
 なお、意見発表配付資料の他、次のような追加意見があった。

  • 生涯学習成果の評価のための生涯学習推進機構といった構想が出されて10年以上たつが、構想実現が難しかったという経緯がある中で、今、何故必要かということを整理する必要がある。学習を支援する人材の質と量が高まる、また、学んだ人の生きがいにもなるといった目的を整理する必要があるのではないか。このような学びの循環の基点になるのが、今回提案する認証制度であるのではないか。全体の報告案作成においては、このような制度が何故必要かという、分かりやすい総論の説明が必要ではないか。
  • 認証システムに社会教育センター等都道府県レベルのセンターを明記してはどうか。

(3)自由討議が行われた。
 以下、討議の内容。

【明石座長】
 1.行政に民間から任用するなど民間に門戸を開くことは重要。2.社会教育主事の有資格者を学校の教員にならせる。地方公共団体の中には、校長は社会教育主事の資格をもつことが前提としているところもあると思う。鹿児島県あたりではやっているが、まだまだ、社会教育主事の有資格者という重みが感じられない。学校図書教諭制度のように、社会教育主事を準学校区に複数名置くことを明記しても良いのではないか。3.生徒指導と教育相談は平成2年の教養審において指摘され、必修科目となった。教育基本法案に「家庭教育」が規定されているのに、必修としないのはおかしいのではないか。教養審のように生涯学習分科会から初等中等分科会へ提案していけばいいのではないか。4.認証制度について、独立行政法人大学評価・学位授与機構、大学基準協会、教大教などが認証評価機関となって行うが、本部会で提言する認証は誰が行うのか。多くの人が分かりやすいものはどのような形が考えられるのか、検討していきたいのでご意見をいただきたい。

【小杉委員】
 提言されている1.学習コーディネーター、2.教育サポーター、3.学習相談員と社会教育主事の関係はどうなっているのか、新しく考えている認証システムにおいて、社会教育主事は別物としてとらえているのか。

【岩佐企画官】
 1.2.3.それぞれを下から支えていくために社会教育主事がいるという位置づけ。認証システムの中では社会教育主事自体は入ってこない。別物である。

【菊川委員】
 社会教育主事の行政職員としての役割・位置づけをこの際、グレードアップしていくことが必要ではないかと考えてる。コーディネーター等をどう位置づけるのかが今回の新しい制度のメインになると思うが、社会教育主事と土台で重なる部分があるのではないか。

【小杉委員】
 そういうことであれば、社会教育主事もコーディネーター等と並べて、4.として記した方が適切ではないか。

【明石座長】
 これまでの社会教育主事のままでは役割を果たせていないという声があり、実際に、社会教育主事が減ってきている。一方で、多様な住民ニーズがあるため、行政サイドが住民の学習意欲が吸収しきれずに、NPOやサポーターなどの活動が芽生えつつあるという現状がある。しかしながら、それらの人材が、どこまでのレベルをもっているのかが外からみても分からないという問題も出てきている。このような状況において、何ができるのかというのを考える必要があるということで、今回提案してもらったような制度が出てきた。

【山本委員】
 社会教育主事については、昭和40年代後半から「素人でもできる。」「専門性がない。」という批判があり、臨教審において社会教育無用論が出てきて、抜本的見直しを行うことになり、昭和61年に現在の制度にかわった。それをここでこれ以上議論しても時間がないが、制度を抜本的に変えるべきではないかという話もある。養成のあり方を一つ変えるだけでも予算がかかるが、生涯学習推進主事というようなものも考えられるのではないかと思っている。

【明石座長】
 本来社会教育主事は、本来学習コーディネーターや学習相談者の役割をも担っていた。しかし、現状は組織的な社会教育活動を行政側で支援しているところであるが、社会的にはそれ以上の要求がきており、思い切って名前くらいはかえたらどうかとの指摘もあてはまるかもしれない。

【山岸委員】
 社会教育主事の役割を見直さなければいけない時期にきているのだろう。NPOの取組みは課題がはっきりしており、ワンストップサービスの入り口から出口まで、理論と実践で取組を行っている。これが発展の要因だと思う。学ぶために学ぶのは長続きしない。何のためにやるのかという、課題がはっきりしている方がやりやすい。学んだ結果の出口も考えないとうまくいかないだろう。

【山本委員】
 例えば学習コーディネーター資格を取得した後で、どこで働けるのかまで考えた制度設計をしなければうまく機能しない。講座を受けたら、受講料がかかるので、せめて、投資した分のもとがとれる仕事を提供できないといけない。国の方でどのように手当ができるのか。非常勤くらいしか出口がなければ、大きな大学は乗ってこないだろう。文部科学省の信頼にかかる話である。一つの大学だけで取組むのも難題。そのようなことも、ある程度見込んで第三者機関をつくらないと、危ないと感じる。都道府県で有資格者を非常勤でも雇うこととするなど、例示でもいいから提示できないか。

【明石座長】
 (提示したカリキュラムのイメージについて)今回、このような案自体を提示したことは面白く、このようなカリキュラムを提示することは重要。ただし、一つの大学だけではここまでそろえられないので、このままでは、なかなか大学等が単独で手を挙げてこないのではないか。現在やっている社会教育主事講習を少し変えるとか、生涯学習センターや公民館の講座と結びつくとか、大学等複数で行うなど、簡単でもいいから、分担のモデルまで詰める必要がある。

【圓入調査官】
 各地のコーディネーター等の機能を抽出し、機能・役割を整理して、カリキュラムイメージを作成したが、時間数等はあくまでイメージであるので、具体的には別途検討も必要と考えている。また、第1回部会でご照会した先進事例の中で、大学コンソーシアムや都道府県の生涯学習推進センターが地域の大学等関係機関を連携して行う人材育成・認定事業があるが、これらを参考にカリキュラムを作ることも想定できる。いろいろと意見をいただければ幸いである。
  また、民間資格の生涯学習インストラクターがすでに24,000人いるが、これらの人たちが、やる気があっても、通信教育を受けた後、なかなか活動につながらないという現状がある。このような人材を活動の場に橋渡しする学習コーディネーターの役割を果たす人材が必要になってくると考えている。

【菊川委員】
 先日ヌエック事業から発展させた事業を実行委員会形式で行った。ここ数年この活動の中で育った人で、市町村の地域活動指導員等になっている人たちがいるが、このような人材の品質保証のフレームができるといい。その際、既に地域活動を行い、力を発揮している人については、経験年数、活動実績を読み替えていけばよい。社会に参加する人のきっかけ作りになると思う。
  また、教育サポーターと学習コーディネーターにも養成カリキュラムで共通することがあるのではないか。また、出口(職)をイメージしてやるべき。

【小杉委員】
 学習コーディネーター等の人材にとっても、それらの人材等からコーディネートされる側、教えられる側にとっても、アウトプットの議論が大切になってくると感じる。要は、生涯学習で職が持てるようにすることが大事である。
  また、キャリアコンサルタントとほかの資格(学習コーディネーター等)との乗り入れを考えると、同じ方向性のものは、なるべく取り込んでいくなど単位の互換性を検討すれば、相乗効果で資格がとりやすい環境を作れるかもしれない。

【中田審議官】
 システムが空振りしないよう、新しい制度においては、ある程度ハイレベルものを要求することを考えている。高い質を確保し、有象無象が入ってくるのを排除することで、出口が用意されるような環境を作らなければならないと考えている。当面は、学校を中心としたものを対象に考えていきたい。

【山岸委員】
 指定管理者マーケットは3兆円、市場化テストによって新たに生まれるマーケットは約40から50兆円とも言われている。今後、教育施設の民間委託などが相当増えると考えられることから、見識を持った人がそのような民間の機関に多く入り質を確保できるような制度にしなければいけない。

【山本委員】
 教育サポーターに対しては、お金がついているのか。

【中田審議官】
 現状では、交通費は出るが、報酬は出ない。

【山本委員】
 勉強するためのお金なども保障していかないと、なかなか教育サポーターになろうと思う人が出てこなくなってしまうのではないか。

【小杉委員】
 何がハイレベルなのか、それを誰が決めるのか。現場の評価等も入れて、皆が納得のいく制度をつくっていかないといけない。

【明石座長】
 教員の専門職大学院の議論においては、実務を重視し、実習時間も30時間から45時間になった。実務能力を如何に評価するかが課題。第3者機関なのか、大学等で単位認定するのかなど認証する仕組を検討する必要がある。カリキュラムの中身をどうするかというのが今後の課題となるだろう。

【菊川委員】
 本日の案はモデルプランであると考えるが、有料で任用する話は別の話かもしれない。正規の職員と地域のボランティアとの中2階的なものがあればよい。それともうひとつ、学校現場で本格的に活動するにはトレーニングが必要であり、生徒に対する理解など最低限の研修が必要ではないか。

【明石座長】
 スクールカウンセラーというものがある。その条件で、必要十分ではないが、臨床心理士の資格を持っておいたほうがよいとか、教育相談の関係を両面でやった方がよいとか、週30時間、各学校に派遣されている。文科省と都道府県が費用を負担している。市町村でお金があるところは独自にスクールカウンセラーを導入していたりする。
  これから教育サポーターという方が、単位をとり、第三者機関で認定されたときに、学校や市町村で、資格業務のように基準を設けてくれると、臨床心理士のようになっていくと思う。

【山本委員】
 社会教育主事の改訂の時、40日間で専門家の養成はできない、本当に専門家を養成するのであれば2年間しっかりやらないといけないという議論があった。結局、40日間できるのは、資格取得後自分で勉強できるようにすることであるという話になったのだが、学習コーディネーターについても、そのように考えることが可能ではないか。

【山本委員】
 社会教育主事のカリキュラムの内容をだれがつくるのかという問題もある。社会教育に関する研究者も豊富にいるわけではないので、他の領域からの人材の意見も必要ではないか。

【明石座長】
 具体的にどういうことをやるのか、どの大学にお願いするのか、教育以外の人にも入ってもらって、本当の意味での作業グループを作る必要がある。そうでなければ、質の保障が保たれず、有資格者を誰も雇ってくれないのではないか。この場では、まず、新しい制度として、打ち出すことが大切であるが、次のステップとしては、出口の問題も含めて、さらに具体的な制度設計を考えていく必要がある。教育サポーターの80時間を基礎モデルとして大学コンソーシアム等で育成し、追跡調査を行うなど、当面は教育サポーターを対象にするということでも良いのではないか。

【山岸委員】
 インターンシップにかなりの時間をとった方が良い。大学院もやる気になれる。

【明石座長】
 大学、社会教育施設、青少年施設など、地域の中で活躍できるようないろいろな実習の場への結びつきを考える必要があるだろう。

【山本委員】
 学習コーディネーターは、学習支援等の経験もないと役割を果たせないだろう。学習コーディネーター、学習相談員、教育サポーターの違いを示すとともに、相互の関係をもっと整理しないといけない。

【明石座長】
 千葉大学では、教育援助体験を行うと単位を与える。その際、学習の過程が見えるように、当該施設長に判定していただき、施設長の2単位と大学において単位を与えているが、学習暦が分かるようにした上で、大学の担当の先生が見ることができようにする必要がある。学習相談員などを基礎的な資格として、その上に、学習コーディネーターを作ったらどうか。また、NPOの中に、社会教育主事が一人いた方がよいとなったとき、ハードルが高いか。

【山岸委員】
 最初はハードルが高いだろう。しかし、期間を定めて、それまでの間に、有識者を置くこととするというようなものであれば、うまくいくかもしれない。

【明石座長】
 各学校に最低1人の有資格者を置くことを生涯学習分科会より提案することも考えられる。

【明石座長】
 校務分掌でしっかり位置づけることでうまくいった学校もある。

【小杉委員】
 場合によっては、個人だけでなく、法人が資格を取るという可能性もあるのではないか。

【明石座長】
 法人として資格を取得できるような制度というのは面白い発想である。

【山本委員】
 地方公共団体で社会教育主事派遣会社をつくれないかという話をきいたことがある。

【明石座長】
 大きな制度設計自体は、これで良いとして、この仕組みが空洞化しないようにさらに具体的に考えていきたい。

以上

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生涯学習政策局政策課