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2 調査結果

3 地域教育力の向上に向けた方策の検討−先進事例調査を通じて−

 アンケート調査では、保護者も子どもも交流範囲が学校や家庭内に偏る傾向があり、地域住民と接点を持つ機会が乏しい状況にあることが分かった。また、子どもはひとりのときも複数人で過ごすときも屋内で過ごすことが多く、結果的に子どもの日常生活は地域の大人から見えにくくなっている。
 こうした状況をふまえるならば、家庭や学校「以外」に保護者や子どもの活動や意識を向けるとともに、地域の大人が子どもと接する機会をより多く持てるようにすることが、地域の教育力の向上のために非常に重要な要因となると考えられる。実際に、地域との交流に積極的な保護者は、地域の子どもに対しても目を向け、その子どもは地域からもより強く関与してもらっている。
 保護者は地域の教育力の低下を十分に認識しているため、具体的な方策を提示することができれば、賛同を得る可能性は高いと考えられる。
 そこで以下では、保護者や子どもが家庭や学校以外に交流の場を持ち、人間関係を構築できるしくみや工夫について、先進事例の調査を通して検討した。

(1) 地域活動のコーディネーターとして位置づけ−島根県松江市古江公民館−
 
1 概要
   松江市古江地区は古くは純農漁業地域であったが、昭和60年前後に大規模な団地開発が行われた結果、学校の児童・生徒数の半数以上が「新住民」となり、地域活動の停滞化が懸念された。そこで、平成7年に就任した前館長の瀧倉健一氏は、青少年の健全育成を重要なテーマとして位置付けたほか、平成15年度に引き継いだ藤井廣志館長も子育ての輪を障害児にまで広げるなど、さらに積極的な活動に発展している。

2 活動内容
   新たに開発された地区では行われていなかった「とんどさん」などの伝統行事、夏祭りなどのイベントの開催を呼びかけ、材料の提供など、側面支援を積極的に行った。また、新たに開発された地域で実施された夏祭りには、古くからの地域の住民を招き、交流の推進を図った。このほか、新住民に地域風土を実感してもらうために、「ふるさと古江探訪コース」を設置、立て看板を設置するとともに、地元中学生も参加して地域の名所旧跡を取材し、編集したガイドブックやパンフレットを作成した。
 学校との協力では、古江公民館の地区を含む湖北中学校区で行われる「町民運動会」に、部活などで忙しい中学生も参加できるように中学校側と交渉し、全中学生が参加する日程を設定し、学校と地域の垣根を取り払うことに成功した。また、地元の小中学校の要請に応じ、社会人講師を派遣。割烹の板前が地元で採れる魚のさばき方を指導したり、幼稚園で中学生が子どもの接し方などの保育指導を体験するなど、地域の英知を結集した実践教育を行っている。
 公民館活動については、文化教室に子どもを参加させることにより、子どもの居場所づくり、地域の大人と子どもの交流を展開している。
 

3 活動の成果
   公民館からの支援が功を奏し、人間関係が希薄になりがちな団地地区の地域活動が活発になるとともに、新旧地区の交流も盛んに行われている。
 子どもへの影響としては、あいさつができるようになるとともに、地域の名所旧跡に親しみを持つ活動が行われたことにより、「思い出になる場所」づくりができたという感想も寄せられている。このほか、子どもだけではなく、大人たちが地域の子ども達との接点を持ち、見守ることにより、生きがいを感じているという声も聞かれている。

4 成功の要因
   松江市の公民館は「公設自主運営方式」を採用しており、運営を行う公民館運営協議会には、地域内の各小中学校長、社会福祉協議会会長、交通安全協会会長、老人会連合会会長、民生委員会長など、地域の多様な主体の代表者が委員として参加しており、地域活動の中心として公民館が機能している。地域の教育力向上に向けた公民館自体の自主活動は多くはないものの、地域の自治会・町内会の運営支援、学校への社会人講師の派遣など、地域内での様々な活動の側面支援を行っており、公民館が地域づくりのコーディネーターとしての役割を発揮している。

5 課題
   公民館と地区内の学校の距離が離れているため、「学校帰りに公民館に立ち寄る」という状況にはない。夏休み期間中などは、子ども用の講座を開講したり、公民館所蔵の図書を自治会の集会所に貸し出し、臨時の「ミニ図書館」を開設したりするなどの努力はしているものの、公民館そのものとの距離感はある。

(2) 公民館を拠点に活動を展開−青森県八戸市立小中野(こなかの)公民館−
 
1 概要
   八戸市立小中野公民館では、19年間館長を務める船田勝美氏(右)を中心に、大人も子どもも楽しめる公民館づくりに取り組んでいる。「IT」「歴史・文化・郷土芸能」「コミュニティビジネス」の3班に分かれ、地域住民が中心となって活動を展開している。かつて「東北の上海」と呼ばれるほど反映した港町が、徐々に衰退していくことに危機感をもち、退職後に「生まれ育った小中野に恩返しをしたい」という気持ちから館長に就任。郷土愛に基づく公民館活動を展開している。


2 活動内容
  【伝統芸能】
 地域の伝統芸能である「えんぶり」や太鼓について、祭りの直前だけではなく、生涯学習の一環として取り入れ、毎月講座を開いている。公民館は子どもたちにとって「ここに来れば太鼓が鳴らせる」場所となっている。講師を務めるのは地域住民の一人で、太鼓のたたき方だけではなく、太鼓の扱い方、礼儀作法を含めた指導を行っている(たとえば、あいさつをしなければ帰らせる、学校の宿題をしていなければそちらを優先させるなど)。受講しているのは幼稚園児から小中学生、高校生など、年齢も幅広いので異年齢交流にもつながっている。
 このほかにも左比代(さびしろ)虎舞という郷土芸能については、毎年、八戸三社大祭に幼児から高齢者まで約100名が参加。平成7年にはシンガポールでの郷土祭に参加したほか、平成15年にはアジア冬季競技大会開会式、平成17年は愛知万博でも演技を披露するなど、子どもには学校教育ではできない経験をさせる機会を提供している。

【歴史・文化】
 住んでいるまちのことをよく知らないとまちの継続性がなくなってしまうと考え、大人と子どもが一緒になって地区の史蹟名勝、店、ランドマークなどを調査し、「小中野アレコレにほさんぽ」というマップを作成。地区の全小中学生に配付し、友達の家や「ここは暗い道なので注意」など、自分で発見したことを書き込めるようにしている。

【コミュニティビジネス】
 公民館の敷地を利用して朝市を開催。小中学校にボランティアを呼びかけて、朝市で買った荷物を高齢者の自宅に届ける活動を実施した。高齢者にも喜ばれ、お祭りのときには子どもと高齢者が一緒に夜店を出すなど、異年齢の交流にもつながった。このボランティアがきっかけで子どものボランティアクラブが結成され、現在も活動内容を充実させている。

3 活動の成果
   子どもと大人、とりわけお年寄りとの絆が深まった。子どもボランティアは組織化され、現在でも継続的な活動に結びついている。郷土芸能を通じて地域が活性化するとともに、子どもにとってもふるさとの良さを実感することができる良い機会になった。
 また、子どもが郷土芸能に真剣に打ち込む姿を見て、大人たちの態度も改まるなど、子どもへの教育によって大人(保護者)を変える効果も現れている。従来から「大人が変われば子どもが変わる」と言われているが、大人が変わることを直接働きかけるのは難しい。このため、船田館長は、「子どもが変われば大人も変わる」という考え方で子どもに接している。たとえば、子どもにあいさつをすることを公民館でしっかり教えることによって、子どもが家庭でも保護者に対してあいさつをよくするようになった。この結果、保護者も子どもに触発されて、子どもに対してあいさつを返すようになるなど、公民館での子どもに対する教育が、家庭にいる保護者に対しても影響を与えるようになっている。
 さらに、郷土芸能の発表会等を通じて、保護者が他の保護者や地域の人と交流する機会を持つことにもつながり、学校のPTAの活動においても役立っているとのことである。子ども会の活動だけであれば年1回程度の交流になってしまうが、公民館活動は年間を通じて実施されているため、保護者が地域と交流する機会を持つことに大きな効果を上げていると言える。
 船田館長が「保護者が家庭で見ている自分の子どもは、その子(本来の姿の)半分くらい」と語るとおり、地域との交流を通じて、自身の子どもの新たな面も発見できる。「自分の子どもにもこんなところがある」ということを再発見することによって、我が子の教育における保護者自身の意識が啓発される効果も出ている。

4 成功の要因
   船田館長をはじめとして、地域の人たちに「生まれ育った小中野に恩返ししたい」「子どもを育ててくれた小中野地区に何らかのお返しをしたい」という強い気持ちがあり、これが公民館での活動につながっている。
 また、「子どもに親しまれない公民館は長続きしない」という考え方のもと、子どもの居場所を提供するとともに、郷土芸能を通じた教育支援を積極的に行っている点が、子どもも大人も集まりやすい公民館をつくりあげることにつながった。
 公民館における様々な活動を実践する過程において、船田館長が地域住民に声をかけ、人材のコーディネート機能を果たしている点も、当該活動を継続的かつ効果的に実施できている要因になっている。

5 課題
   これまでの活動が船田館長を中心として推進してきたが、今後は活動を引き継ぐ後継者づくりが課題となっている。ともすれば、公民館の運営は地域の高齢層が中心となる傾向があるが、その中に若い世代をいかに巻き込んでいくかが重要となっている。活動が多岐にわたっていることもあり、郷土芸能の指導者を含めて、人材育成が課題である。

(3) 幼小中高と地域の連携で子どもの成長を見守る仕組みづくり−千葉県八街市教育委員会−
 
1 概要
   八街市内の学校では、学校運営の改善を目指す動きが平成8年ごろから始まった。平成9年度には、八街南中学校が千葉県教育委員会の「夢を育む教育」の研究指定を、さらに平成11年度には、実住小学校で学校運営改善の工夫について公開研究会が行われるなど、小中学校が連携し、学校運営改善を図る動きが定着化した。その後、幼稚園、高等学校を含め、幼小中高の14年間を見据えた教育活動を推進している。

2 活動内容
   「共通指導6項目」「学校改善の視点」「地域・家庭との連携」が、活動の核となっている。「共通指導6項目(注1)」は、市内すべての学校で共通して目指す目標であり、地域・家庭へも周知し、達成へ向けての協力依頼を進めているほか、市内の全家庭にも配付している。
 「学校改善の視点」としては、人との関わりを増やすことを重視しており、地域の人材を、各教科・領域において積極的に取り入れ、地域の人に学校の様子を理解してもらえるようにしている。こうした事業を通じて、子どもにとっては、教師よりも専門性のあるエキスパートと関わることの良さを感じることができるほか、地域の人材にとっては、現在の教育活動の工夫点や児童・生徒の実態を認識することができるなどの効果がある。
 「地域・家庭との連携」としては、積極的な地域公開、地域を巻き込んだ各種行事、地域によるパトロール活動などを推進している。地域とともに子どもを育てる、地域に学校を理解してもらう、地域とともに子どもを守るという3点について成果が上がっている。

 
(注1) 「みんなで大切にしよう 八街市幼小中高継続指導6項目」と題した共通6項目は次のとおり。「1.話を静かに聞くことができる」「2.指示を受け止め行動ができる」「3.あいさつができる」「4.正しい言葉づかいができる」「5.清掃ができる」「6.自学ができる(自分のことは自分でできる)」

3 活動の成果
   「学校改善の視点」を実践することにより、子ども達にとって、教師よりも専門性のあるエキスパートと関わることの良さを実感できる利点がある。このことは、地域の人たちにとっても、現在の教育活動の工夫点、児童・生徒の実態などについて情報を共有することにつながり、大人と子どもの接点ができている。このほか、幼小中高連携による交流促進により、児童・生徒たちが新たな環境での学校生活にスムーズに移行できるようになった。
 また、「地域・家庭との連携」に関しては、学校だけではなく、地域とともに子どもを育て、守るという意識が高まっており、地域が学校を理解し、協力を申し出てくれるようになっている。その結果、学校を通さずに、地域が独自に子育て活動を企画・実行する例も見られるようになった。

4 成功の要因
   千葉県教育委員会「夢を育む教育」指定を契機に、八街市がその理念を引き継いだ事業を推進していることが今日の取り組みにつながっている。
 また、小中学校校長会が、学校運営を積極的に改善するための手立てとして、幼小中高の連携教育を推進しており、校長の強いリーダーシップが活動の大きな原動力となっている。
 八街市は人口急増地域であるが、その基盤を支える旧来からの「地域」が存在しており、「おらが学校」という意識が住民の中にも強く、学校を支える風土につながっている。

5 課題
   八街市の財政状況が悪化しており、事業費が減額される傾向があり、事業の継続が困難になる可能性がある。
 また、これまでの取り組みによって、学校の地域開放を定期的に開催するなど、「学校を地域に開く」という意識は高まっているものの、必ずしもすべての学校や教職員に浸透しているわけではない。学校や教員が主体的に地域に関わっていくことができるよう、意識啓発を行う必要がある。

(4) 行政、学校、地域、企業のすべてを巻き込んだ全市的な体験活動を展開−岐阜県大垣市−
 
1 概要
   完全学校週5日制の実施にともない、地区センターや学校などを拠点とした子どもの体験活動を実施している。また、行政、学校、地域、企業など、地域の主要な主体がすべて関与する形で事業を展開しており、こうした活動を「まるごと土曜学園」として位置付け、おおむね小学校区(15地区)の単位で、大人も子どもも一緒になって取り組んでいる。

2 活動内容
   地区センターを運営する地域の運営協議会の中に、自治会やPTA等のメンバーが中心となり、地区での体験活動(社会体験・自然体験、スポーツ、職場体験など多数)を企画、実施している。
資料:大垣市ホームページ(※大垣市公式ホームページへリンク)より作成

 事業の実施は、原則として地域の自主性に委ねられており、大垣市から地区センターに対して補助金を交付している。
 協力企業を募り、職場体験などの企業体験を実施する場合には子どもの訪問受け入れなどをしてもらっている。
 大垣市生涯学習課に設置されている地域子ども活動支援センターが、地域活動の各種支援や、事業に必要なコーディネート等を幅広く行っている。
 こうした取り組みを続ける中で、公民館や地区センターが子どもの活動場所となり、家庭から子どもが外へと飛び出してきたという実感が得られている。様々な活動を通じて異年齢の交流も進んだことに加え、子どもとの交流機会が増えたことにより、地域住民自らが子どもの教育について考え始めるようになっている。

3 活動の成果
   地域の教育力を生かした体験活動が、地域の主導により全域で展開されていることが、結果的に子どもの居場所づくりにつながっている。また、活動の拠点となっているのが地区センターであることから、教育関係者だけにとどまらず、地域をあげての活動に広がっており、事業を継続的に行う基盤となっている。
 こうした活動は、保護者の意識啓発にも効果を上げている。たとえば、家庭の中だけでは「自分が“親”である」との自覚を保護者が持ちにくい中で、地域での活動に保護者が参加することによって、「親とは本来こういうもの」という「気づき」を与えることにつながっている。子どもへの接し方について他の保護者と自分自身を比べることによって、保護者が自身の姿(他の保護者との違い)を自覚できるようになる。イベント等を通じて他者の態度から学ぶことも多く、これが保護者自身の意識啓発にもつながり、家庭での教育にも影響を与えていると生涯学習課では考えている。
 さらに大垣市では、イベント時には大型バスや列車を貸し切り、自家用車での参加を控えることによって、保護者にも子どもにも「他者への気遣い」を経験させる機会を提供するようにしている。このように、地域での活動を通じて「個から集団へ」と転換するしくみを工夫することにより、身近な人を通じて保護者や子どもが自覚的に意識変革ができるという効果を上げている。

4 成功の要因
   大垣市では、地域住民によって運営されている地区センターが市内15か所に整備されており、当該事業を実施するにあたっての基本的な環境が整っていた。
 そして、放課後や週末の読書活動、生涯学習等の講座、企業体験等に関して、必要となる経費の一部を補助する制度を実施しているが、「多すぎても少なすぎても地域の活動を促進できない」との考えから、生涯学習課では地域とのコミュニケーションをしっかり取ることで、その見極めを図っている。取り組み状況や活動内容は地域によって異なるため、同課では当該地域の意欲と行動を促すためにふさわしい支援を実施していくことに配慮している。
 また、当該分野に長年携わっている社会教育主事が地域との関係構築に尽力しており、行政に対する地域の信頼を醸成することにつながっている。

5 課題
   活動プログラムをより効果的にするためには、「地域の人材をかき混ぜる」必要があり、その機能を担うコーディネーターを育成する必要がある。
 「まるごと土曜学園」では、企業の協力を得て、企業体験のプログラムも実施しているが、業務の現場に子どもを迎えることは、営業上の障害になったり、けがなどのリスク管理においても前向きにはなりにくい部分があるため、必ずしも十分な成果を上げられていない。今後は、さらに企業の協力を得るため、関係構築を強化していくことが課題である。

(5) 子守りボランティアを通じた子どもの地域参画−愛媛県西予市−
 
1 概要
   乳幼児を持つ保護者が子育て講座を受講中に、当該保護者の子どもを預かって中高生が子守りをするボランティア事業を、平成14年度に旧宇和町の単独事業として実施した。以来、近隣4町との合併を経て、今年度(平成17年度)まで継続して実施されている。

2 活動内容
   1〜3歳の乳幼児を持つ保護者を対象とする家庭教育講座「うわっこわくわく子育て講座」の開催にあたって、保護者の講習中に乳幼児の子守りをする必要があるため、中高生による子守りボランティア「乳幼児ふれあい体験教室」を並行して行っている。
 平成14年度及び15年度は年間4回、平成16年度は近隣4町との合併により1回、平成17年度は2回、それぞれ毎年実施している。

3 活動の成果
   これまで個別に実施されていた保健事業(子育て講座)と教育事業(中高生向けのボランティア)を両立させることができ、事業の相乗効果を生むことができている。また、ボランティア活動を通じて、子ども(中高生)に生命の大切さを体験し、家族について考えてもらえる機会を持ってもらうことにつながっている。
 一方、子守りボランティアとして、元保育士の人などが口コミで手伝いに来てくれるようになるなど、少しずつではあるが地域の人材育成が進んできている。

4 成功の要因
   子どもたちが命の大切さを体験し、家族について考えるなど、親の大切さが分かる機会を持つことができるのが当該事業の最大の効果である。ボランティアの募集に際して、学校側(中学校1校、県立高校1校)の協力を得ることができており、円滑な参加者募集につながっている。
 また庁内的にも、保健分野と教育分野において連携が取れている点が、当該事業の特色を効果的に発揮できている要因となっている。
 講座に出席する保護者、ボランティアを体験したい中高生双方のニーズが合ったことから、平成14年度から始まった当該事業は、今年度(平成17年度)まで継続することにつながっている。

5 課題
   年間延べで20名〜30名程度と、中高生の参加者数が小規模にとどまっているため、ボランティア活動への興味を持ってもらえるように、中高生に対して積極的に呼びかけていく必要がある。一度参加した人から、さらに知り合いに話しをつなげてもらえるように、口コミで広がっていくしくみを工夫することが求められている。
 また、コーディネーターは行政職員が行っているが、地域の中でこうした人材を確保していくことが今後の課題である。

(6) 就学前の児童を対象に地域の自然を体験できるプログラムを提供−滋賀県草津市 NPO法人「子どもネットワークセンター天気村」−
 
1 概要
   平成2年、現在の代表理事である山田 貴子氏が、小学校教諭だった経験等を活かしながら、自然体験保育園や幼児教室を週1回のペースで始めた。平成11年、NPO法人「子どもネットワークセンター天気村」を設立し、本格的な活動を開始した。
 山田氏は私財で現在の施設を開設し、保育施設も自ら設計したほか、琵琶湖や近隣の山、信楽の土など、地域の自然資源をふんだんに活用した独自のプログラムを提供している。こうした自然体験を通じて、地域住民と子どもとの接点をつくることができ、多様な世代との交流機会にもつながっている。

2 活動内容
   就学前の児童に対して、自然体験や地域交流を体験させる保育園「こんぺいとう自然保育園」(無認可)、幼児から小学生までを対象として、土曜日に体験プログラムを提供する「こんぺいとうクラブ」、草津市からの委託事業である「草津市ファミリーサポートセンター」事業の3つが主な事業である。
 「こんぺいとう(注2)自然保育園」(火曜日〜土曜日)では、就学前の児童に対して、およそ週に3回、バスで地域の様々なスポットに遠足に連れていくなどのプログラムを提供している。
 「こんぺいとうクラブ」(土曜日)では、近隣の大学の学生ボランティアの協力を得ながら、春は田植え、夏は川遊び、秋は稲刈り・芋掘り、冬はしめ縄つくり等、季節感のある体験メニューを提供している。
 「草津市ファミリーサポートセンター」は、育児の援助を受けたい人(依頼会員(注3))と援助を行いたい人(提供会員(注4))で運営される子育て支援事業であり、草津市からの委託を受けて実施している。

 
(注2) 名称につけられている「こんぺいとう」とは、子どもはこんぺいとうのように、色も形も異なり「でこぼこ」がある。この「でこぼこ」を大切にしたいという山田氏の考え方を表すものである。
(注3) 市内に居住し、または在勤している人で、保護者としておおむね生後3ケ月から12歳までの子どもを養育しており、センターに会員登録した人
(注4) 有料(基本料金1時間当り700円)で、次のような育児の援助活動をすることができる。ただし講習会受講は必須。1保育園、幼稚園の送迎、2保育園、幼稚園、小学校の終了後の預かり、3依頼会員が家族の病気で急に育児が困難になった時の預かり、4依頼会員の冠婚葬祭、趣味、買い物などの理由による預かり等

3 活動の成果
   就学前の子どもに対して、認可保育所では経験させられない自然体験を提供することができている。また、自然体験を通じて、地域住民と子どもの拠点をつくることができ、多様な世代との交流機会ともなっている。
 土曜日に開催する「こんぺいとうクラブ」では、幼・小・中・高・大まで、異なる世代の子どもが交流することにつながっており、それぞれの世代の教育に対して相乗効果を生んでいる。

4 成功の要因
   保護者や地域住民と積極的に関わる代表者の理念に基づき、独自に開発したプログラムが、保護者と子どもの参加意欲を高めている。
 また、NPO法人としても順調に活動を続けており、長い活動実績の中で行政(滋賀県及び草津市)からも信頼を得ている点が、安定的に事業を継続している要因となっている。

5 課題
   現状では、高齢者ケアの分野に比較して、子どものケアをするスタッフに求められるスキルの要求水準が低いのが実態であり、人材育成をさらに充実させていく必要がある。
 また、「地域にはボランティアをしたいという人が色々な分野にいる。実際に声をかけて事業を動かしてみると、活動をしたい人ばかり」と山田代表理事が語るように、地域のボランティアを分野横断的につなげていくとともに、地域の大人に様々な形で関与してもらえるよう、呼びかけていくことが課題である。天気村では、ファンを増やし、感動を生む企画を提案し、多様な分野を交流させる取り組みを推進していきたいとしている。

(7) 地域からの自発的な子育て−茨城県友部町 子どもの居場所づくり実行委員会−
 
1 概要
   昭和50〜60年代に開発された新しい学区であった友部第二小学校区では、地域のつながりが希薄だったことを受け、学校内外の連携活動や地域子ども教室の開設を行うことになった。
 かねてより子ども達への読み聞かせや歴史教育を自主的に展開しており、学校とのパイプも強かった江田玲子氏に、町教委は活動の中核を依頼し、活動に賛同する地域住民が参画。大人も子どもも関わりあう、みんなにとってよき居場所づくりを目的として「地域子ども教室」を設立。平成16年12月より活動を開始した。町教委は活動場所を提供する側面支援に徹し、有志メンバーがボランタリーで主体的に運営に関わっている。


2 活動内容
   「子ども茶の湯(茶道、地域伝統行事、食育、百人一首、読み聞かせ)」、「友二小ふれあいクラブ(カルタ、こま回し、囲碁、手品、紙芝居づくりなどを体験)」を毎月1回開講。活動をクラブ内にとどめず、製作した紙芝居を持参し老人ホームで実演するなど、異世代との交流も図っている。バドミントン教室、ソフトボール教室は、毎週土曜日に友部第二小学校の校庭で活動しており、技術を磨くことよりも、道徳的な精神を養うことを第一の目的としている。また、通常の活動のほか、独自イベントとして、地区の協力の下、水田を無償で借り上げ、稲作から収穫に至るまでの作業を体験、地産地消などの食育や地域の人たちとのふれあいの機会を設けている。
 活動方針として、日曜日は家庭に子どもを帰すべきだとして、活動を土曜日に限定している。
 会費は月100〜200円で、最低限の材料費を負担してもらうようにしているが、補助金にも頼らず、参加者の熱意により、地域主導で活動を続けている。また、教室に参加している子どもの保護者を取り込んで、指導者としての活動してもらうなど、将来の指導者育成にも積極的に取り組んでいる。

3 活動の成果
   内気な子どもが声を発するようになったり、あいさつができるようになったりするなど、子どもが元気になったと、保護者の反応も上々である。
また、指導者も子ども達に接し、子ども達が健やかに成長していくことに喜びを感じている。
参加者の中心は小学4、5年生で、好評のため参加者は増加傾向にある。このため定員に余裕があれば、他校区の児童や中学生の受け入れも検討していく予定である。

4 成功の要因
   江田氏を中心として、活動に賛同する指導者が良好な関係を構築できたことが、当該事例の最大の特色である。「何かを得るために子育てに関わるのではない」「補助金には頼らない」という考え方を持っており、適用が決まっていた補助金も返上したほどである。指導者たちも「子どもが健やかに成長していくことに喜びを感じる」と語っており、地域住民の熱意が活動に結びついている。
 また、地区の人口増加にともなって、新しく流入してきた住民を寛大に受け入れていることで、さらに活動が活性化されている。

5 課題
   昨年から活動が始まったばかりの「地域子ども教室」であるが、活動を継続するためには、子どもを飽きさせないよう、メニューを多様化させることが必要である。「地域子ども教室」では、「衣食住の重要性を説く」という理念を基本としており、今後はこのテーマに沿って地域の自然や文化を体験することができるプログラムを検討していきたいとしている。
 また、次世代の人材育成も課題となっており、教室に参加している子どもの保護者にも指導者として活動してもらうなどの取り組みを進めている。
 しかし、いくら活動を充実させても、託児所と勘違いしている保護者が一部にいることは事実であり、地域全体で子育てをしていくことについて、意識の浸透を図っていく必要がある。

(8) 図書館を拠点に読み聞かせを中心とした教育活動を展開−徳島県鳴門市 NPO法人「ふくろうの森」−
 
1 概要
   「ふくろうの森」の前身の団体である「おはなし会活動 モモの会」は、平成4年、市立図書館で司書をしていた高田理事を中心に鳴門市立図書館のボランティアが参集して誕生した。その後、「モモの会」の活動は市民の支持を得て継続・拡大される一方、平成15年度からはじまった学校週5日制の完全実施に伴い、赤ちゃんから高齢者までの読書活動の振興と文化の向上をさらに発展させようとする機運が高まった。そこで、鳴門市立図書館を拠点に活動するグループが一つになり、平成13年12月、NPO法人(特定非営利活動法人)「ふくろうの森」を設立し、特色ある図書館づくりに向けた活動を展開している。

2 活動内容
   NPO法人「ふくろうの会」の組織は大きく「図書館ボランティア活動」と「図書館運営支援」(鳴門市からの受託業務)に分類されるが、このうち、「図書館ボランティア活動」は、さらに小グループとして「子どもの読書活動の推進(ありんこの会)」「成人の読書活動の振興」「児童室での活動」「館庭の環境整備」「おはなし活動(モモの会)」「IT活動」「子ども体験活動」「バリアフリー活動」に分かれて活動している。
 おはなし会活動「モモの会」では、毎月第2土曜日に「おはなしたいむ」として、絵本の読み聞かせを行っている。また、準備会として毎週水曜日(毎月第1週を除く)を開き、おはなし会の打ち合わせや作品の制作、練習に励んでいる。
 「モモの会」の活動は図書館で行われているが、読み聞かせの活動をもっと身近なレベルにまで広げようと、メンバーが中心となり、子どもの読書活動の推進「ありんこの会」をつくり、おはなしボランティアとして各小学校に出向き、絵本の読み聞かせや手遊びなどの指導を行っている。
 「子ども体験活動」では、農業体験としての「田んぼでお米を育てよう!」「プランターでいちごを育てよう」のほか、科学遊び「シャボン玉で遊ぼう」など、様々なイベントを開催しており、参加者は市内のみならず、県内一帯に及んでいる。一見、図書館の活動とは異なるものに見受けられるが、活動を行う際には、必ず図書館の資料を使って下調べするなど、本から得られる知識と体験がうまく融合するように工夫されている。
 「ふくろうの会」に参加しているボランティアは子育て中の主婦をはじめ、定年退職した人たち、学生(四国大学など)など、多種多様である。


3 活動の成果
   保護者の感想として聞かれる子どもの変化は、「あまりテレビゲームをしなくなった」「手紙をよく書いてくれるようになった」など様々だが、氾濫する情報の中で、「正しいこと」と「正しくないこと」を主体的に考える能力を身に付け、他人への思いやりを持つ人間へと育っているというのが主催者の実感である。
 また、一人で本を読むことからだけでは得られない体験、たとえば保護者以外の大人たちと触れ合いなどを通じて、子ども達は自分の特性を徐々に見出している。
 「モモの会」として活動を始めた当初、読み聞かせに参加していた子どもが、現在、保護者として子どもを読み聞かせに連れてくる事例もある。
 一方、子どもだけではなく、ボランティア活動に参加している大人たちからも、「最初は子どものためと思い活動に参加したが、今ではかえって自分が生きる喜びをもらっている」という声が聞かれる。

4 成功の要因
   子どもだけではなく、ボランティア活動に参加している大人たちからも、「最初は子どものためと思い活動に参加したが、今ではかえって自分が生きる喜びをもらっている」という声が聞かれる。活動が息の長いものとなっている要因として、「地域の人(赤ちゃんからお年寄りまで)たちのために活動している」という共通の目的を有することにより、仲間意識が強くなっていることが挙げられる。また、構成メンバーの個性を互いが認め合い、会の力としてうまく活用していけるような雰囲気があることも重要な要素となっている。

5 課題
   「絵本は子どもが読むもの」と考えている保護者が多いことから、読み聞かせ活動に参加する子どもは乳幼児が中心となっており、本来のターゲットである小学校中学年以上とはズレが生じている。
 また、「モモの会」発足以来、賛同者は順調に増えていたが、近年は増加数が鈍る傾向も見られるため、地域住民に対して活動の趣旨を理解してもらい、参加者を増やすことが課題となっている。

(9) 大学が地域の教育力充実に参画−福岡県宗像市−
 
1 概要
   福岡市と北九州市の中間に位置する宗像市は、ベッドタウン化により人間関係の希薄化が進んでいたため、地域の連携強化による活性化が課題となっていた。そこで、宗像市では、「ひとづくりでまちづくり」という基本理念の下、「学びを通して、ふるさと宗像という里づくりを行う」ことを目的として、平成13年4月1日、生涯学習都市「むなかた学びの里」宣言を行った。
 宗像市には、福岡教育大学(昭和41年移転・統合)、日本赤十字九州国際看護大学(平成13年開学)、東海大学福岡短期大学(平成2年開学)の3つの大学が立地しており、平成14年8月には、市内3大学とともに「むなかた大学のまち協議会」を設立した。協議会組織は、協議会(市長、学長)、協議会幹事会(課長、事務局長以下)、協議会担当者会(係長以下)、図書部会(司書などの図書館職員)、地域づくり部会(学生)等で構成され、各種アイデア提案や実行のための戦略を練っている。

2 活動内容
   当該事業では、大学との連携を通じて様々なプログラムを提供しており、その一つである「ルックルック講座アカデミー版」は、市民が市内3大学の教員の話を聞くことができる制度で、市内に在住、勤務、在学している10人程度以上のグループで、希望テーマに沿った話を直接聴くことができる(「交通費」として2,000円を支払うことが必要)。また、「子ども向け版」としては、「ロボットづくりを通して未来の社会を考える」、「親と子のための性教育」など、各大学の特色を活かした講座メニューが用意されている。
 さらに、市内の大学の教員によって作成された副読本「家庭科支援ブック」が市内の一部小学校で教材として採用されているほか、日本赤十字九州国際看護大学の教員は、市内の小・中学校に出向き、性教育の講義を行ったりもしている。
 このほか、同じ中学校に進学する2つの小学校による交流事業のプログラムの企画や実施にあたって、大学の教員や学生が積極的に支援している。
 地域との関わりとしては、学校週5日制導入に伴い「土曜わくわく児童館」を開催し、「土曜日は子どもを地域に帰す」、「子どもたちに体験学習の場、異学年との交流の場を設ける」などの考え方を実現している。ここでも、プログラムの企画や指導に、大学の教員や学生が参加している。当初は中央公民館を拠点に行っていた事業だったが、昔の遊びを楽しむ「あそび塾」などが好評なことから、現在では地区のコミュニティセンターや自治公民館への出張も要請されている。

3 活動の成果
   市民にとって、それまで印象の薄かった大学が身近なものとして捉えられるようになったこともあり、市民の間からは「大学のイメージが変わった」という声も聞かれる。
 また、子ども達にとっても、学校の先生以外から物事を教わる経験は新鮮であると、反応も上々である。
 宗像市には教育系や看護系の学生が多いことから、学生にとっても小さな子ども達と遊ぶことは役立っている。

4 成功の要因
   活動の端緒となった福岡教育大学に地域と連携に非常に熱心な教員がいたことが挙げられる。また、市側でも、「用がなくても」情報交換できる開放的な雰囲気をつくり上げることにより、地道にお互いの信頼関係を構築していけたことが、現在の大学と連携したまちづくりの展開に貢献している。
 大学との連携事業を通じて、市民にとってはそれまで印象の薄かった大学が身近なものとして捉えられるようになり、市民の間からは「大学に対するイメージが変わった」との声も聞かれる。子どもにとっても、学校の先生以外から教わる経験は新鮮で、反応も上々とのことである。さらに、宗像市では教育系や看護系の学生が多いことから、学生にとっても児童や生徒との交流が役立っているなど、関係者すべてがメリットを感じていることが事業が継続されている秘訣であると考えられる。

5 課題
   各大学との連携協力に関する協定が締結されたとともに、「むなかた大学のまち協議会」が設立されたのにも関わらず、肝心の組織間の連携は円滑には進んでおらず、むしろ、教員と市職員という、個人間の信頼関係で成り立っている側面が大きい。
 市と大学が連携して事業を進めようとした場合、3大学全ての意向が統一されたり、実施体制が整っているというわけではないため、協議会が設置されたのにも関わらず、具体的な事業展開は遅々として進まなかった。今後は、市と大学、大学間の連携を深めていくととともに、仮に3大学の足並みが揃わなかった場合でも、できることから事業を実施していく柔軟な姿勢・行動力が求められている。

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