地方文化財行政に関する特別部会(第1回) 議事録

1.日時

平成29年10月18日 16時00分~18時00分

2.場所

スタンダード会議室虎ノ門SQUARE2階会議室

3.議題

  1. 部会長の選任等
  2. 地方文化財行政の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

小川部会長、亀井部会長代理、荒井委員、岡田委員、門川委員、小西委員、鈴木委員、世良委員、中原委員、山添委員

文部科学省

髙橋局長、藤野政策評価審議官、白間審議官、下間審議官、中岡文化庁次長、山崎文化財部長、髙橋伝統文化課長、矢野初等中等教育企画課長、佐藤初等中等教育局企画官、松淵初等中等教育局企画課市町村教育委員会連絡調整官

5.議事録

【松淵調整官】  それでは、少し時間は早いですけれども、ただいまから中央教育審議会第1回地方文化財行政に関する特別部会を開催させていただきたいと思います。
 本日は、御多忙の中、御出席いただきましてまことにありがとうございます。また、各委員の先生方におかれましては、特別部会の委員の御就任を快くお引き受けいただきまして、まことにありがとうございます。この場をお借りしまして、お礼を申し上げます。
 本日は、最初の特別部会でございますので、部会長を選任いただくまでの間、便宜的に私、初等中等教育局企画課市町村教育委員会連絡調整官の松淵が議事を進めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本日の配付資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料は、議事次第に記載しておりますが、資料1から資料10の10点、参考資料1から5の5点でございます。不足等がございましたら、事務局へお申し付けください。
 それでは、次に、委員の皆様の御紹介をいたします。御出席の皆様につきましては、御着席の順に紹介させていただきます。
 横浜市教育委員会教育長、岡田委員でございます。
【岡田委員】  よろしくお願いします。
【松淵調整官】  放送大学教養学部教授、小川委員でございます。
【小川委員】  小川です。よろしくお願いいたします。
【松淵調整官】 京都市長、門川委員でございます。
【門川委員】  よろしくお願いします。
【松淵調整官】 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所所長、亀井委員でございます。
【亀井委員】  亀井でございます。よろしくお願いいたします。
【松淵調整官】 公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団理事長、株式会社ピーオーリアルエステート代表取締役、小西委員でございます。
【小西委員】  小西です。よろしくお願いいたします。
【松淵調整官】 白河市長、鈴木委員でございます。
【鈴木委員】  鈴木でございます。よろしくお願いします。
【松淵調整官】 津和野町教育委員会教育長、世良委員でございます。
【世良委員】  世良です。よろしくお願いいたします。
【松淵調整官】 鳥取県埋蔵文化財センター所長、中原委員でございます。
【中原委員】  中原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【松淵調整官】 与謝野町長、山添委員でございます。
【山添委員】  山添と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【松淵調整官】 なお、奈良県知事、荒井委員は、少し遅れて参ります。
 また、本日御欠席でございますが、長崎市教育委員会教育長、馬場委員に御就任いただいております。
 それでは、次に、事務局を紹介させていただきます。
 初等中等教育局長の髙橋でございます。
【髙橋局長】  髙橋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【松淵調整官】 サイバーセキュリティ・政策評価審議官の藤野でございます。
【藤野政策評価審議官】 藤野でございます。よろしくお願いします。
【松淵調整官】  大臣官房審議官(初等中等教育局担当)の白間でございます。
【白間審議官】  白間でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【松淵調整官】  大臣官房審議官(初等中等教育局担当)の下間でございます。
【下間審議官】  下間でございます。よろしくお願いいたします。
【松淵調整官】  初等中等教育企画課長の矢野でございます。
【矢野課長】   矢野でございます。よろしくお願いします。
【松淵調整官】  初等中等教育局企画官の佐藤でございます。
【佐藤企画官】  佐藤でございます。よろしくお願いします。
【松淵調整官】  文化庁次長の中岡でございます。
【中岡文化庁次長】中岡でございます。どうぞよろしくお願いします。
【松淵調整官】  文化庁文化財部長の山﨑でございます。
【山﨑文化財部長】山﨑でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【松淵調整官】  文化庁文化財部伝統文化課長の髙橋でございます。
【髙橋伝統文化課長】 髙橋でございます。よろしくお願いいたします。
【松淵調整官】  以上でございます。
 それでは、次に、「部会長の選任等」に入らせていただきます。部会長の選任につきましては、中央教育審議会令第6条第3項により、委員の互選により選任することとされていますが、どなたか推薦いただける方はいらっしゃいますでしょうか。門川委員。
【門川委員】  立派な方が委員に選ばれているのですけど、部会長は、小川先生を推薦したいと思っています。教育行政学を専門に長年研究してこられて、我が国の第一人者だと思います。また、中央教育審議会の委員もされていて、4年前ですか、教育行政の在り方が全国的な課題となったときに、教育制度分科会の、私も委員をさせていただいていたんですけど、部会長として見事にまとめていただいた、このように思います。このメンバーの中で唯一の中教審の委員でもあられますので、是非お願いしたいと思っています。
【松淵調整官】  ありがとうございます。ただいま門川委員から小川委員が部会長に適任であるとの御意見を頂きましたが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【松淵調整官】  委員の皆様に御了承いただきましたので、小川委員に部会長をお願いさせていただきます。
 それでは、今後の議事につきましては、小川部会長にお願いいたします。
【小川部会長】  部会長に就任しました小川でございます。よろしくお願いいたします。
 議事に入る前に、2つぐらい片付けなければならない仕事がありますので、最初、それをさせていただきたいと思います。
 最初は、部会長代理の指名なんですけれども、これについては、中教審の審議会令の第6条第5項に、部会長に事故があるときは、あらかじめ部会長が指名する委員がその職務を代理するという旨の規定がございます。その規定に沿いまして、私としては、部会長代理に亀井委員をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
(「異議なし」の声あり)
【小川部会長】  本来であれば隣に部会長代理の席があるんですけど、今日は会場がこんなに狭いですので、席の移動なしということで、よろしくお願いいたします。御了承ください。
 もう一つは、この部会の運営規則の制定についてお諮りしたいと思っています。これについては、事務局から御提案をお願いしたいと思います。
【松淵調整官】  それでは、資料1を御覧いただければと思います。地方文化財行政に関する特別部会の運営規則(案)の資料でございます。
 まず第1条は趣旨でございまして、第2条につきましては、会議の公開でございます。本部会の会議は、第1号、第2号に掲げる場合を除き、公開して行うことを定めているところでございます。
 続きまして、第3条でございますが、これは会議の傍聴についての規則でございます。手続により登録を受けた者につきましては、部会長の許可を受けて会議を撮影し、録画し、録音することができるということ、そのほか、傍聴人は、会議の進行を妨げないことなどを定めているところでございます。
 続きまして、ページをおめくりいただきまして、第4条でございます。会議資料の公開でございまして、本部会の会議で配付した資料は、原則公開ということを定めているところでございますが、ただし書きにありますとおり、場合によっては会議の資料の全部又は一部を非公開にすることができるという旨を規定しているところでございます。
 続きまして、第5条でございますが、これは議事録の公開でございまして、会議資料の公開と同様に、原則公開ということを定めているところでございます。ただし書きに、場合によっては議事録の全部又は一部を非公開にすることができるというものを定めているところでございます。
 同条第2項でございますが、仮に議事録の全部又は一部を非公開にする場合につきましては、非公開にした部分につきまして議事要旨を作成し、これを公開するものとするというものでございます。
 第6条は、雑則というものでございます。
 資料の説明は以上でございます。
【小川部会長】 ありがとうございます。
 この特別部会の運営規則(案)ということで、今、御説明いただきました。中教審のほかの部会も、ほぼこういう会議の公開と傍聴者、議事録の公開等の規定に準拠しております。何か御意見、御質問ございますでしょうか。(「異議なし」の声あり)
【小川部会長】  ありがとうございます。それでは、今後、この部会については、この運営規則に基づいて運営させていただきたいと思います。
 以上で議事に入る前の2つの必要な手続が終了しましたので、これから会議を公開したいと思いますが、今日は傍聴者等いらっしゃるんでしょうか。では、しばらくお待ちください。
(傍聴者入室)
【小川部会長】  それでは、議事に入りたいと思います。
 まず、文化審議会文化財分科会企画調査会における審議状況の報告をお願いいたします。最初に事務局から企画調査会の設置の経緯について説明していただいた後に、この企画調査会の委員でもいらっしゃいます亀井部会長代理から審議の状況について御説明をお願いしたいと思います。
 それでは、最初、事務局の方からお願いいたします。
【髙橋伝統文化課長】  文化庁伝統文化課長の髙橋でございます。
 この部会では、地方文化財行政の在り方について御議論いただくわけでございますけれども、なぜこれについて御議論いただく必要があるかについて、その背景などを含め、まず文化審議会における検討状況について御説明させていただければと思います。
 はじめに、お手元の資料の参考資料4を御覧いただけますでしょうか。資料の左手におかれているかと思います。
 当時の松野文科大臣から文化審議会への諮問文をお配りしてございますけれども、ページをめくっていただいて、裏面を御覧いただきますと、いろいろ文言が書いてございますけれども、端的に申し上げますと、これまで文化財の保護については、文化財保護法というものにおいて指定などを通じて保護を図ってきたわけでございますけれども、過疎化でありますとか少子高齢化などで社会の状況が大きく変化してきたことに伴いまして、文化財を守る、例えば、地域の担い手などが減少してきていて、きちんと文化財が後世に確実に継承されるということについてなかなか厳しい状況が生じつつあるというようなこと、それから、最近は特に文化財が重要なコンテンツといたしまして、地域振興でありますとか観光振興などで積極的に活用を図る上で非常に有意義であるというようなこともあり、そういったことも相まって、この際、文化財保護制度の在り方についていろいろ包括的に見直しをしようじゃないかということでもって、当時の大臣から諮問を受けたということでございます。
 幾つか諮問事項はあるわけでございますので、それを今、順次審議をしていただいておるということでございまして、現在はそこの(一)のところにありますとおり、これからの時代にふさわしい文化財の保存と活用の方策の改善というところについて、精力的に御議論を頂いておるということでございます。そこの最後のところにございますとおり、具体的施策や制度改正について検討というようなことになっておるわけでございまして、それで、資料2の方を御覧いただけますでしょうか。色刷りの資料でございます。
 資料2に、今申し上げたようなことで、文化審議会の中に企画調査会というものが設けられておりまして、ここで御議論をしていただいておりまして、実は8月末に中間まとめを取りまとめていただいたというところでございます。
 その本文は、後ろの資料3になるわけでございますけれども、概要の資料2の方で簡単に御説明させていただきますけれども、制度の見直しについて、大きく2つ提言をしていただいておりまして、1つが、オレンジ色でマーキングしてありますとおり、総合的な視野に立った地域における文化財の保存・活用ということでございまして、これについては、市町村が域内の文化財をまずきちんと把握しましょう、総合的に把握しましょうということでございます。そこは、指定の文化財のみならず、未指定のものも含めて、きめ細かく、どういったものがどこにあるのか、どのような状況になっているのかということを、市町村がまず把握しましょうと。これは結果として、例えば、災害が起こったときなどについて、どういった文化財がこの地域にあったのかというのは、災害が起こった後ではなかなか把握しづらいんですけれども、あらかじめ把握しておくというような効果もあるかと思いますけれども、そのようにまず把握をした上で、その文化財をどう守っていくか、そしてまた、どうそれを活用していくか、どう使っていくかということを計画として盛り込みましょうということでございます。
 この趣旨は、文化財行政というのは、これまでややもすればその時々の状況に応じて、つまり、他の行政分野でよくあるように、計画的に行政を進められてきたというところが、一部自発的にそういう取組をやっている自治体も多々あるわけでございますけれども、制度としてそういうものがなかなか確立していなかったというところもございますので、この際、文化財行政をきちんと計画的に進められるようにという意味もございまして、まず市町村に基本計画を作ってもらいましょうと。その上で、先ほど申し上げました、文化財の担い手が減っているという状況もございますので、そこはこれまで文化財の専門家が特に中心になって担ってきたというだけはもたなくなっているので、地域全体で文化財を支えていきましょうというようなことで、この基本計画を作っていただくと。また併せて、都道府県におかれては、市町村のバックアップといいますか、指導・助言などについて、きちんとした役割を果たしていただいたらどうかというようなことを主眼とする基本計画の作成というのが1つの大きな柱でございます。
 そして、おめくりいただきまして、2つ目が、個々の文化財の計画的な保存・活用と担い手の拡充ということで、先ほどが市町村における計画ということであったわけでございますけれども、一方で、個々の文化財、それぞれいろんな性質、特徴、事情がありますので、それぞれの文化財ごとにきちんとした保存・活用計画を作って、どういう場合であれば、その文化財について活用ができるかなどについて、これもあらかじめ明確化をしておきましょうというものでございます。
 こうした、いわば面的に文化財を捉える基本計画と、それから、個々の文化財の保存・活用計画、両者相まって、今後、文化財というものを後世に確実に継承していく。継承していくに当たっては、その活用もきちんとなされるような仕組みにしていくというようなことを中間まとめで提言をしていただいたということでございます。
 そのようなことを行政としてやっていきましょうという中で、現在、文化財保護行政というのが地教行法において教育委員会の所管になっているというところについて、文化財行政がまちづくりでありますとか地域振興なども非常に密接に関わりがあるということから、また、自治体によっては文化財の専門家が教育委員会だけでは確保しにくいというような状況もこれあり、それぞれの実情に応じて、そこは文化財行政は教育委員会だけではなく、自治体の選択によって、場合によっては首長部局の方でやった方がより効果的ではないかというような御意見もこれあり、資料4を御覧いただけますでしょうか。
 資料4の1ポツ、中間まとめの記載というところがございますけれども、8月末にまとめていただいた中間まとめでは、四角囲みの中の点線でアンダーラインを引いてあるところでございますが、文化財保護の所管は教育委員会となっているが、景観・まちづくり行政や観光行政など他の行政分野も視野に入れた総合的・一体的な取組を可能とするため、地域の選択で首長部局も文化財保護を担当できるような裁量性の向上についても検討が必要である、このような提言を頂いたというところでございます。
 ただしということで、その後、平成25年12月13日云々とございますけれども、実は、この論点につきましては、かつて教育委員会制度の見直しが議論になった際にも、この文化財保護の在り方については、1つの課題になっておりまして、当時の議論では、同じ資料4の7ページを御覧いただけますでしょうか。25年当時の、これは同じく文化審議会の企画調査会での報告の中に盛り込まれたものでございますけれども、最初の(文化財保護行政上の要請)とある中の2つ目のパラグラフのところでございますけれども、どのような機関が文化財保護に関する事務を管理し、及び執行することとなるとしても、下記の4つの要請を十分に勘案し、これらをどのように担保するかという観点から制度設計を行うべきであるということが言われまして、その4つの要請というのが、そのあと柱書きで、専門的・技術的判断の確保とか、政治的中立性、継続性・安定性の確保とか書かれている、この4つの事項でございます。この点については、当然、現在においても、この点をクリアしないといけないということで、今回の中間まとめにおいても、この点を十分に勘案して検討することが必要であるとされているというところでございます。
 また、時を同じくして、資料の1ページの下の部分、参考のところを御覧いただければと思うんですけれども、今年度の地方分権の提案募集、これは毎年政府が、地方分権に係るいろんな規制とかがあるものについて、ここはこうしてほしいとかということを受け付けるわけでございますけれども、今年度受け付けた中に、鳥取・山口・徳島・大分の各県から、この所管の話について、やはり教育委員会専管ということではなくて、自治体の判断での選択性を可能とする制度改正というような提案がなされてきているという状況でございます。
 こうした状況を受けまして、企画調査会においては、中間まとめを出した後も、現在、精力的に議論を頂いているところでございまして、その議論の状況については、企画調査会の委員でもある亀井部会長代理に御説明を頂ければと思いますので、よろしくお願いします。
【小川部会長】  ちょっとお待ちください。今、奈良県知事の荒井委員が到着しましたので、自己紹介をお願い致します。どうぞ、マイクを。
【荒井委員】  よろしくお願いします。
【小川部会長】  よろしくお願いいたします。
 それでは、亀井委員、よろしくお願いします。
【亀井部会長代理】  それでは、企画調査会における審議状況につきましては、私の方から御報告申し上げたいと思います。
 先ほど髙橋課長から説明ございましたように、資料4をおめくりいただきたいと思います。これは中間まとめから抜粋したものでありまして、所管に関する議論の取りまとめでございます。
 その3ページを御覧ください。4ポツの第8回企画調査会(地方公共団体へのヒアリング)の概要でございますけれども、そこに書いてございますように、3自治体からの意見聴取を行いました。
 まず1つ目でありますが、太宰府市でございます。これは人口7万程度の小さなまちですけれども、事務の所管が教育委員会・主張部局のいずれでも対応可能と思われるけれども、いずれが所管したとしても、まず自らの地域についてしっかりと議論した上で保護を進めていくことが重要である。地域文化財を大事にするという観点から行政を行ってきた、その実績を踏まえての発言でございました。なお、首長部局が所管した場合には、文化財の教育的側面の重要性に鑑み、両者が連携できるような場所が必要ではないかという意見を頂いております。
 次に、萩市でございます。人口5万程度のまちでございますが、自治体の判断で事務を選択制とすることは賛成でありますと。その場合に、文化財的な価値や継続性を担保する方法として、地方文化財審議会を必置とすることや、市町村が策定する基本計画、文化財保存・活用に関する基本計画に記載された事項を国へ事後あるいは年次報告するといった仕組みが考えられるという意見がございました。
 最後に、今年度の地方分権提案団体の一つでもあります鳥取県から提案でございますが、所管を自治体の判断により選択的に実施することを可能とするようにしていただきたいという強い意見が出ました。その理由といたしましては、現行の事務委任あるいは補助執行の制度があるんですけれども、これによると、責任の所在が明確でない部分がある。それから、意思決定に時間を要するといった課題がある。それから、首長部局が所管することで、教育の観点のみならず、地域振興、観光振興といった観点から、首長が所管する施策と一体的な政策の展開がより効果的・効率的に可能となるということ。あるいは、文化財の保存なくして活用はなく、首長の一元的な指揮の下で、文化財と地域振興を総合的に進めることで、文化財の担い手も確保できる。先ほどの少子化あるいは過疎化ということで、担い手がなくなってきているということに対する対応ということで、総合的に首長部局でやったらどうかという提案でございます。それから、懸案であります専門性や継続性を確保する方策につきましては、地方文化財保護審議会のような専門機関の設置、あるいは、専門的知識を有する職員の配置を必須とすることが考えられるという意見がございました。
 これを踏まえて、3ページの下の方向性(案)でありますけれども、今後も文化財保護に関する事務については、基本的には教育委員会が所管するということでありますけれども、まちづくりに関する事務との関連を考慮して、各自治体が文化財保護に関する事務を一層充実させるために必要かつ効果的と考える場合には、先ほど申しました4つの要請、専門的・技術的な判断の確保、政治的中立性、継続性・安定性の確保、開発行為との均衡、あるいは、学校教育や社会教育との連携ということの4つの要請への対応が担保される状況を考えた上で、地方文化財保護審議会を必ず置くことを条件に、条例によって、首長の下で事務の執行・管理も可能としてはどうかという方向で、現在、議論を進めているところでございます。
 また、この際、地方文化財審議会というのは、文化財保護法の規定によりまして、もともと諮問に応じるだけでなく、建議の権限も有しているということでありますので、このような権限を必要な場面で行使するなど、自治体において地方文化財保護審議会が効果的に機能することが必要だろうと思われます。
 次に、資料5を御覧ください。今説明した方向性に関しまして、これまで企画委員会で出された主な意見について御説明します。
 まず、地方文化財保護審議会を必置するということにつきましては、自治体によって権限にばらつきがあるということで、機能強化が必要ではないかという意見。あるいは、委員の任命権者が首長となる場合に、4つの要請が担保できるかどうか疑問であるということ。また、委員の任期を首長より長くしたり、首長の任期とずらしたりすることで、文化財の保存・活用等の事業の継続性が担保できるのではないかという意見。また、審議会が建議の権限を活用し、時には自治体と対立することもあり得るという強い発言力を持つ。こういうことがあっては余りよくはないんですけれども、そういうことがあってもいいのではないかという意見ですね。それから、現状では、地方文化財保護審議会に文化財に関する事項が随時報告されることにはなっていないために、建議のみでなく、審議会に報告する義務、あるいは、審議会における審査義務など、実効性を担保する必要があるといった意見が出されました。
 また、ほかに留意事項や懸念といたしましては、埋蔵文化財について、例えば、開発行為によって新しい遺跡が発見された場合に、開発とバランスが取れなくなるのではないかといった意見や、一方で、文化財建造物に関して、例えば、町並みの保存でありますとか文化財の保存というようなことを開発と一体的に考えるということで、一つの部局で取り組むことも重要ではないかといった意見がありました。
 これまでの議論は今説明したとおりでございますが、文化審議会企画調査委員の中には、首長や教育長といった上の方が入っておりません。行政の実務担当、あるいは、民間の支援者、大学での教育者、博物館・美術館の関係者が中心でございますので、本委員会において、是非、そのような観点、首長さんの観点、教育長さんの観点から御意見を賜れるとありがたいと思います。私が属している企画調査会としては、本部会で出された意見を踏まえつつ、今後更に検討を重ねて、年内を目途に一定の取りまとめを行うつもりでございます。
 私からの説明は、以上でございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 今まで文化審議会の文化財分科会企画調査会が設置された背景、経緯、そして、その審議状況について御報告いただきました。
 もう1点、地方文化財行政の現状についての資料もございますので、資料6に基づいて、事務局の方から御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【矢野課長】  初等中等教育企画課長の矢野でございます。それでは、資料6に基づきまして、今の地方文化財行政の制度の概要についてお話し申し上げます。
 まず、1ページをお開きいただきたいと思います。
 地方文化財行政を担当いたしますのは教育委員会でございますが、教育委員会制度については、首長から独立した行政委員会として全ての都道府県・市町村等に設置されているということでございます。教育行政における重要事項、基本方針を決定しておりますけれども、常勤の教育長1名と非常勤の教育委員4人の原則5名で構成されておりまして、教育長は任期3年、教育委員は4年でそれぞれ再任可ということでございます。
 制度の趣旨でございますが、政治的中立性の確保、継続性・安定性の確保、地域住民の意向の反映という趣旨でございまして、1ページの右側にありますように、首長が、議会の同意を得て、教育長・教育委員を任命するという制度に今現在なっているところでございます。
 2ページをお開きいただきたいと思います。教育委員会・首長の役割分担でございますが、学校教育、社会教育、文化財の保護、学校における体育に関することにつきましては、現在、教育委員会の専管ということになっておりますが、文化に関すること、スポーツに関することについては、原則教育委員会が管理・執行するものの、条例を制定すれば首長に移管できるというふうに整理されております。そのほか、大学に関すること、私立学校に関すること等につきましては、知事・市町村長の担当というところになっているところでございます。
 3ページをお開きいただきたいと思います。これまでの地方教育行政制度の変遷ということでございますが、昭和23年、教育委員会法という法律がございまして、教育委員は公選制だったわけですが、その後、昭和31年に任命制が導入され、教育長の任命承認制度の導入も行われ、それが平成11年に任命承認が廃止されるというような動きがあったわけでございますが、その後、平成19年の法改正によりまして、それまで文化・スポーツも含めて教育委員会の専管ということだったのを、一部又は全部を知事部局・市長部局に移すことが可能になったということでございます。
 その後、4ページをお開きいただきたいと思います。先ほど門川市長のお話にもございましたが、平成27年4月に、教育委員会制度は大きく変わりました。それまで教育長と教育委員長、並列的にあったわけですが、教育長が市長に任命されるということになりまして、教育長と教育委員長が一人になったと。これは、我々、新教育長と言っておりますけれども。これによって、市長が直接教育長を任命することによって、任命責任というものが明確化して、第一義的な責任者が教育長であることが明確になったということ。あるいは、緊急のとき、平成27年の法律改正のときは、大津のいじめの事件等がきっかけになったわけでございますが、緊急時の対応も迅速にできる、教育委員会の招集等、迅速化された。そういったようなことが狙いで、平成27年4月に、新たな教育委員会制度が発足したと、こういう経緯があるわけでございます。
 その次のページ、5ページ、6ページをお開きいただきたいと思います。地方文化財行政について、これまで中教審においても議論がございまして、上の方ですが、平成17年の地方教育行政部会におきまして、部会のまとめといたしまして、2つ目の丸、文化財保護に関する事務は、引き続き教育委員会の担当とすることを基本としつつ、下線部、文化財保護と開発行為との調整の仕組みを整えた上で、自治体の判断により、首長が担当することを選択できるようにすることを検討すべきであるということが、このときに既に指摘されているわけですが、最終的には、答申としましては、その下、平成17年10月13日ですが、文化(文化財保護を除く)、スポーツ等について、自治体の判断により、首長が担当することを選択できるようにすることが適当であるという答申に至っており、その次のページ、6ページ、これを受けた平成19年の法改正によりまして、文化(文化財の保護を除いて)、スポーツ(学校における体育を除いて)、地方公共団体の判断により、首長が担当できるようにした、こういう制度の改正の経緯がございます。
 その次のページをお開きいただきたいと思います。7ページ。先ほどの平成27年の地教行法の改正の基になった中教審の答申におきましても、文化財保護に関する事務については、政治的中立性、継続性・安定性の確保が求められるということから、引き続き教育委員会が担当するということになったわけですが、先ほど髙橋課長からも御紹介のありましたとおり、文化審議会文化財部会企画調査会から、4つの要請という観点から制度設計を行うべきという指摘が同時に出されております。
 8ページを御覧いただきたいと思います。現況でございますが、スポーツ・文化に関する事務の所掌の弾力化ということで、現在、先ほどの改正されました地教行法の23条に基づきまして、条例によりスポーツに関する事務を首長が管理・執行することとした地方公共団体は都道府県・指定都市で29、市町村で146と、少しずつ増えていっているという状況にございます。
 次のページをお開きいただきたいと思います。9ページです。先ほど鳥取県からの提案にもございました。文化財に関しても、地方自治法、ここに抜粋しておりますが、180条の7で、その権限に属する事務の一部を云々とあって、首長部局への事務委任、補助執行を行うことができるという法的根拠はございます。この法律上の根拠に基づきまして、例えば、下のグラフを御覧いただきますと、事務委任につきましては、文化財保護も若干の都道府県・市町村でなされている。右側を御覧いただきますと、補助執行については、都道府県で16.4%、市町村で4.3%が補助執行をさせているという現況にございます。
 現況、私の方からは以上でございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 この特別部会の中心的な審議事項というのは、「地方文化財行政の在り方について」、これから議論していくわけですけれども、これからの議論に資するというか、これからの議論をしていく上での基本的な事柄について、今、事務局と亀井委員から御説明がありました。今までの説明について、何か確認したいこと及び御質問等々があれば、この場で受けたいと思います。いかがでしょうか。
 ほぼ御理解いただいている内容ということで、これでこの件はよろしいでしょうか。
 それでは、これから、地方文化財行政の在り方について議論していくことになるわけですけれども、今日は最初ということもありますので、まず、この部会の委員の何名かから御発表いただければと思っています。首長、そして、教育長を務めていらっしゃる委員から最初に発表いただいて、その後に、一定お時間を作って意見交換をしたいと思います。
 恐縮ですけれども、私の方から発表の順番を御指名させていただきたいんですけれども、最初、奈良県知事の荒井委員、そして、京都市長の門川委員、その次に白河市長の鈴木委員、そして、最後に、横浜市教育委員会教育長の岡田委員、この4名の方に御発表をお願いできればと思います。最初に、荒井委員から、よろしくお願いいたします。
【荒井委員】  ありがとうございます。お手元に資料を配付しておりますが、「文化財の保存と活用を地域振興のための車の両輪に」という題でございます。
 おめくりいただきますと、4のパートで御説明申し上げます。
 まず最初は、知事部局への行政部署の移動・設置でございます。先ほど地方教育行政の組織・運営に係る法律改正がございましたので、それに伴って、このようにしてまいりました。スポーツ・文化、スポーツ振興課を作りました。成果として、奈良マラソンというのを実施いたしましたが、教育委員会の保健体育課ではできなかった事業でございます。それから、県スポーツ推進計画を策定して、いろんなことをしておりますが、その中では、地域総合型スポーツクラブというのを作るようにいたしました。これは部活との調整、先生は大変忙しいので、部活の代わりに地域総合型スポーツクラブを利用する方も出ているわけでございますので、そのような成果がありました。
 その次に教育振興課というのを作りましたが、教育振興大綱を策定できるということを踏まえて作りましたが、それと、私学の扱いは大きな扱いでございます。教育委員会は公教育でございますが、県の教育のフィールドの中で、私学の扱いをどうするかということも踏まえまして、大きな予算が私学にも出ております。教育振興大綱を策定したことと、奈良県独自の取組で、「県・市町村教育サミット」を開催しております。市町村教育長が一堂に会しまして、年2回ほど開催しております。
 それから、文化資源活用課を設置いたしまして、文化振興大綱を策定いたしました。文化振興の有識者会議を、これは知事部局に設置しました。青柳座長に来ていただきました。それから、奈良県国際芸術家村構想等検討委員会を設置しておりますが、これは佐藤禎一委員長に入っていただいております。
 文化資源活用に関する取組の例を少しだけ紹介いたしますと、2ページ目でございますが、2パラ目でございますが、文化振興、文化政策に関わる基本法、これは平成13年のことでございますが、地方公共団体の責務について、「基本理念に則り、文化芸術に関し、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」と書いてございますので、この文化振興、文化政策の責務ということを強く意識しております。そのようなことから、文化芸術基本法と文化振興大綱に基づき、文化芸術振興に取り組んできております。
 その中で、3ページ目から幾つか例を紹介しておりますが、「文化の力で奈良を元気に」を旗印に、社寺を活用した様々なイベントを実施しております。大芸術祭というのを毎年やっておりますが、催事が800を超えております。「ムジークフェストなら」と名付けた音楽祭を、社寺を中心にしておりますが、公演数は250を超えております。今年は国民文化祭・障害者芸術文化祭を全国で初めて一体開催しました。
 その次の文化資源活用という観点からの取組ですが、奈良県は文化資源が多いものでございますので、歴史文化資源データベースの構築に取り組んでおります。これは県が主体となって取り組んでおりますが、まだなかなかデータベースの構築が一部に留まっている実情でございます。
 それから、文化財はあるけど、歴史文化を奈良県民は分かっておらんじゃないかとよく言われるので、その本質を理解し、説明できる能力の向上は大事なことでございます。本質が分からない文化財がごろごろしているというように思っております。
 奈良の仏像の海外展示を、オリンピックに向けて、来年、2019年からしたいと。ギメと大英に持っていくことは確定しておりますが、これは県の主催で持っていかせていただこうと思っております。
 5ページ目は、奈良県国際芸術家村というのを作るので予算を組んでおります。それは文化財の保存と修復、文化資源の活用という大きなテーマがございますが、後継者育成とか伝統技能の継承、また人材活用、教育機能への活用ということを目標にして、今、県の予算で組みつつございます。
 それから、6ページ目でございますが、これからの文化財保護体系検討会議というのを設置いたしました。文化財保護は県の所掌になっておりませんので、一応教育委員会における意見聴取という形にしておりますが、実質私が主催をして議論をしていただきまして、その中で出てきた内容でもございますが、文化財の保存と活用というのは「車の両輪」で、青柳さんの言葉によると、シームレスにしないといけないという言葉が出てまいりました。第1回会議をこの10日にしたばかりでございますが、2月に体系の素案をまとめたいと思っておりますが、7ページ目で、その文化財保護体系の検討会議の委員でございます青柳前長官は、奈良県の文化政策顧問になっていただいておりますので、座長をしていただいております。建造物の鈴木さん、美術工芸の根立さん等々、日本の代表的なレベルの人に入っていただき、文化財保護についての意見を頂き始めました。
 次のページでございますが、保存と活用について、奈良県の考え方ということでございますが、文化振興大綱は県が策定していいということになりましたので、大綱では、「歴史文化資源活用分野」と「芸術文化振興分野」に力点を置いておりますが、芸術文化振興は従来からしておりますので、とりわけ歴史文化資源活用に力点を置いた大綱になっております。しかし、文化財保存が文化振興大綱に入っていないんですね。県の知事の策定でございますので、所掌外のことでございますので、当然、わざと入れなかったということでございます。残念ではありますが、入れなかったということでございます。
 文化財保存に関する議論の展開についての問題意識ということで述べさせていただきたいと思いますが、まず文化財の把握ということでございます。地域の文化財の、未指定部分を含めた悉皆的調査とデータベースの整備が必要ではないかと思います。
 保存の担い手では、文化財保存に従事する人材をどのように養うか、文化財保存人材の保存と活用と言っておりますが、人材の保存と活用こそ、日本の文化行政の将来を決めるのではないかと思います。保存人材の能力を上げるための養成/研修プロセスの構築も大事でございます。
 その次は、保存修理の実践の見える化。保存修理はどのように行われているか、職人芸で見えないところでされているのが多いのが実情でございます。また記録は残らないことも多いんですけれども、奈良は割と記録が残っています。あと役に立つということで、後世の参考に、また人材育成の観点から、保存修復過程の公開・活用を図るべきではないかという観点を持っております。専門職の方に任すだけでは、公開性が薄くなると考えています。
 それから、保存修理過程の合理化・標準化ということは、人材育成の観点から欠かせないように思います。文化財の劣化・損傷判定は誰がするのかというと、専門性の陰に隠れて見えないというのはあまりよくないのではないかと思っております。
 修復の考え方でございますが、修復をする場合に、保存と対立するのではないかと、ユネスコなんか、かつては言っていたわけでございますが、ユネスコにも行きましたが、どのように修復したかトレースができたらいいよとか、修復したプロセスが他人に分かるようにしたらいいよとか、修復をなぜしたか、どのような考え方でしたかというアカウンタビリティがあれば修復をしてもいいよというふうに、ユネスコの一部の人は言っておられます。最近では、このような考え方が強くなってきているように私は感じております。
 それから、文化財の所有者との関係。文化財は私有されているケースが多いんですけれども、最近出ております無住社寺の中の重要文化財をどのようにするか、重要文化財の個人民家の扱い、私有文化財の防犯、防災、防火の取組、これは教育委員会文化財保存課だけでは対応が難しいケースではないかとも認識しております。
 地域の文化財保存の担い手の中で、市町村教育委員会の文化財保存分野の足腰は弱すぎるという声は、県内至るところで聞きます。大きな政令指定都市、中核都市ではいいんですけれども、村の中にある昔の文化財、特に無形の伝統芸能文化というのは保存すべきだと思いますが、とても村の文化財保存課では、どんなものがあるのかすら分からないというようなことでございます。地域の文化財保存のリーダー、コーディネーターを育てる必要があろうかと思います。
 これは所掌で責任分野でありませんので、単なる感想といいますか、問題意識ということでございますが、このような会議に呼ばれましたので、整理をして持ってまいりました。
 その中で、恐縮ですが、文化財の保存と活用がリンクしていないのではないかという印象を持っております。関連付ける哲学はどんなものかということを時々考えますが、やはり車の両輪として捉えて、体系化を図っていただきたいなと、あるいは、体系化を図るための試行的な活動をしなければ文化財に申し訳ないなと思います。文化財の保存というのはどういうことなのか、そのままなのか、修復はどの程度可能なのか、活用というと、観光というふうにすぐ結び付けられるんですが、私は本質的理解をするのが活用だと思います。
 文化財を文化資源として捉え、文化財を「地域振興の元手」にする、また、「国際間の相互理解の船頭」にする、「現代人が過去の歴史の本質を理解し、未来を築く灯明」にするといったように、文化財の値打ちを捉え直すことが必要だと思います。そういたしますと、文化財の保存と活用を対立する別世界の概念として考えずに、地域振興のため、また、国際関係のため、車の両輪とする必要があるのではないかと思います。
 そのような観点に立って、この中間取りまとめに対する奈良県の意見でございますが、1パラ目は省略いたしますが、知事部局には車の一輪しかないようなことにならないように、法令上の明確化を図っていただきたいと思います。具体的に言うと、文化財保存課は知事部局にも置けるようにしていただきたいということでございます。そのような法令改正を、今までの経緯もございますが、余り先送りしないようにということを強く思います。
 それから、追加の意見で、最後のページになりますが、「60日ルール」というのが文化財の扱いにあります。原則一律60日でございますので、先ほど御紹介申し上げました、海外のギメとか大英に行くときに、公開は60日までということで、大変不評でございます。向こうの人が、ものによるんじゃないか、皆60日かと冷やかされるわけでございます。だから、合理的な60日かどうかということにチャレンジをしたいと思います。
 また、所有者のもとにいれば安全かというわけではなく、整ったところで展示をする、また、文化財修復施設など環境の整った施設の場合も公開は60日までというのは、何か不合理なような気がするわけでございますので、合理的なルールにこの際変えていただきたいという御要望でございます。
 最後のパラでございますが、都道府県の役割というのは、市町村の教育委員会保存課というのは、政令市なんかは、あるいは、京都市なんかは、府よりもすごいと思いますが、奈良県では、古い村・町の中の文化財、無形も含めてたくさん残っておりますが、ほとんどほったらかし、その認識についてほったらかしというようなときもありますので、都道府県の市町村を助けるという意味での積極的な役割、また、全体の鳥瞰ができるという能力は多少ありますので、そのような法例上の位置付けを明確にしていただきたいと思います。
 繰り返しになりますが、先ほど文化振興大綱を作りましたが、文化の活用については存分に書きましたが、文化財保存については書けなかったという思いがございますので、両方書けるようにしていただきたいということでございます。
 長くなりまして失礼いたしました。
【小川部会長】  荒井委員、ありがとうございました。
 今の御報告に対して、御質問、御意見あるかと思いますけれども、全ての委員からの報告が終わってから、まとまった時間を取りますので、そこで御質問、御意見いただきたいと思います。
 報告が続きますけれども、続いて、門川委員、よろしくお願いいたします。
【門川委員】  このような機会を頂いて、ありがとうございます。荒井知事のおっしゃったこと、全く同感でして、奈良と京都、本当に親戚みたいな関係ですので、共々によろしくお願いします。
 京都市の文化財保護行政なんですけれども、その前に、どれぐらいの文化財があるかということですけど、国宝・重要文化財、市・府指定、有形・無形含めて、3,000を超えています。国宝は211件、全国の19%、重文は14%と。しかし、これは余り実態を正しく反映していない表現だと思います。醍醐寺の古文書、文書聖教6万9,000点余りで国宝1件であります。東寺の百合文書2万4,000通で国宝1件であります。例えば、京都市の二条城は、建物は国宝ですけど、襖は狩野派の重要文化財1,016面あります。これ、京都市立芸術大学の大学院に修復担当の専門家を育てるコースを作って、40年掛けて60何%修復できた、模写できた、修復をやっていると。あと、天井画と杉戸絵は何だといったら、これは国宝ですよと。建物は国宝で一部ですからと。これ、2,000枚は手付かずです。これ、一所懸命やっていかな、というようなことであります。まさに文化財の中に生きているなと思うんですけど。
 次ですけれども、そのほかにも無数の有形・無形の歴史的・文化的遺産がございます。茶道、華道、香道、京舞、花街――祇園、祇園東・宮沢町・先斗町・上七軒、プラス島原。この島原の太夫が今厳しい状況にありまして、これも外国人が見はったら驚愕しはる、こういうようなものですね。江戸の花魁とは全く違う、天皇陛下から正五位の十万石相当の地位を頂いて、御所へ出入りした。これも言葉は悪いけど、絶滅危惧種ですからね。こういうことであります。酒蔵、京町家、町並み景観、こういうものがあります。
 京都市は、文化財行政が京都市政の最重要課題であるということで、総合行政としてやっていこうということで、相談しながら、昭和33年に補助執行しております。重要なことは教育委員会で議決します。文化財というのは、観光から教育・福祉、大学政策、景観、まちづくり、農林業、くらし、ものづくり、特に京都市で74の伝統産業を指定しております。例えば、西陣織は、私は、こんな着物を持つけれども、最盛期の7~8%になりました。2万人の職人が1,000人になりました。京友禅は2.7%になりました。こういうものがなくなれば、能も狂言もあらゆる宗教行事もできません。人を育てる、それから、材料を確保していく、これが危機的な状況だと、このように思います。
 そこで、我々は国家戦略としての京都創生、平成15年から、この創生という文字を、地方創生ですけど、行政として使ったのは京都が初めてではないかなと。そのときに、フレーズ「日本に京都があってよかった」。京都は日本の、いや世界の宝だ。それを守るために、京都市がやるべきこと、市民がやるべきことは全力を挙げよう。同時に、京都だけでできないことは、国に国家戦略としての要望をしていこうということで始まったのが、景観法の制定運動。この景観法の制定運動で景観政策ができるとか、こういうことであります。
 そして、今、二条城が注目されているんですけど、文化財を会場とする国際会議、MICEプラン等を進めております。非常に感動しました。国際会議の後、レセプションで二条城を使っていただく。二条城というのはお城ですけど、一切戦争に関係していないんですよ。260年間、国内で一切戦争がない時代が続いた。かつ、大政奉還――先日150年でしたけれども、近代国家へ大きな内戦なしに行ったと。こういうことを言いますと、外国から来られた方がびっくりしはる。日本は仏教国であるにもかかわらず、世界で唯一戦争の好きな国だということがアメリカの教科書に書いてあるとか、戦争の好きな国だということを一所懸命宣伝していただいている国があるとか、こういうことですね。いかにこういう文化財を生かして、世界の人々に、日本という国が、日本人の生き方はどういうものであったかということをお知らせするのがすばらしいなと。今、191の観光施策を実行していますが、観光、国の光を観る、人生観の観だ、歴史観の観だ、単なる物見遊山ではないんだと、こんなことをやっております。おかげさんで、観光事業というのは、100日黒字の200日赤字。したがって、京都で観光に従事している人の7割が非正規労働者です。これは現実です。これを何とか3.6倍の繁閑差を1.5倍まで持ってきたと。こういうことで、こういうことを日本中でやっていかなあかんなと。我々もまだまだ厳しい状況ですけど。
 そこで、新景観政策、今年ちょうど10年であります。日本中で高層マンションが建つ。不景気の下で都市間競争をやっていることで、どんどんタワーマンションが建つときに、京都市は小さな東京にならないという覚悟の下に、逆に、45メーターのところを31メーターに、31メーターのところは15メーターに、あるいは、全市的にデザイン規制をきめ細かく決める。眺望景観、これは日本で初めてです。眺めを財産とする。あるいは、借景の保全。あるいは、屋外広告物の規制強化。この10年で3万件の建物から撤去していただきました。チカチカ光る看板は全部撤去する。屋上の看板は認めない。ラーメン屋さんの赤い看板は認めない。こういうようなことでありました。そして、歴史的な町並みの保全、こうしたことに全力で取り組んでいます。なお、眺望景観は、今、38の視点場があるんですけど、それを更に拡充しようと、こういうことで今進めております。
 次のページですが、左側が10年前の四条通であります。今、右側、このように全部看板を自費で取っていただいた。110人体制で、ローラー作戦で、従っていただかないところは強制代執行。ここまでやって、余りお金にならないんですけど、やってきました。
 次が、二条城の横に派手な看板がありました。こういうようなことでは文化財が守れない、こういうことであります。
 そして、9ページ、その次ですけど、二条城から見える景色は、徳川家康が410年前に見たものとほぼ同じになりました。向かいに国際ホテル、42メーターのホテルが建っていました。50年経って解体されました。次、15メーターになります。これでまた京都市の固定資産税は減ります。私が市長になってから、税収は148億円減りました。非常に苦しいところであります。文化がお金にならないと、この典型だと思います。
 大文字の送り火、眺望景観の保全というのは、こういうことですね。円通寺から比叡山以外は一切何も見えない。したがって、国際会議場の高さは徹底的に規制する、こういうことであります。
 そこでですけど、今、深刻な問題は、京町家の保存・継承であります。私、市長になったとき、4万7,735軒の町家がありました。去年、4万に減りました。毎日2軒、3軒の町家がつぶれていく、これが現実であります。相続税を払うためにつぶさな、大体築100年ぐらいの町家。何ちゅうことやと厳しい批判を受けていますけど、個人のものですので、何とも仕方がない。今、ようやく市民的な危機感も高まってきました。今、条例案を出しています。京都市が、所有者の意向に関係なく指定します。その指定された町家については、壊す場合は、1年前に届け出なければならない。それを無視したら罰則規定です。それを解体した業者にも罰則規定を掛けようと。そして、その1年間の間にみんなで危機感と価値観を共有して、何とか文化庁に買い上げてもらえないかなとか。それはちょっと別にしまして。その生かし方をみんなで考えて、生かしていこう。そして、ここまでやりますから、京都市も一定の助成をしていこう。そして、相続税の猶予でもやってもらおうかということを、きっちりと京都市がやるべきことをやって、同時に、国に対して制度の改善も求めていこう、こういうことであります。
 その次、総合行政から生まれた有形・無形の未指定の文化財を守り、継承し、創造するための独自制度であります。
 京都を彩る建物や庭園ということで、市民の提案から行っていこうと。左下に置いていますのは、これは花山の京大の天文台。90年です。すばらしい歴史があります。しかし、京大が岡山に作らはったんで、もうこれは使わないと。これを何とか残さなければならない。あるいは、湯川秀樹さんの旧宅。これ、ちょっと地方都市やったらものすごい観光名所になると思います。多分、後継者が亡くなれば、ここはマンションになってしまうんです。これ、とりあえず指定させてもらいました。あるいは、いろんなそういうものを、今、323件まで選定して、例えばですけれども、立派なお屋敷がある。これが、息子はんはマンションに住んではる。そしたら売られる。売られたら、住居専用地域ですので、宅地分譲かマンションが建つ。しかし、料理屋さんはできない。あるいは、ホテル、旅館、宿泊施設にはできない。これを特例的にやっていこう。このために残す手法として使っていこう、こんなことであります。
 次ですけど、京都をつなぐ無形文化遺産制度というのも平成25年に作りました。京の食文化、これ、ユネスコの和食の登録以前に登録しています。あるいは、花街の文化。文化庁さんは、建物は文化財になるけれども、舞妓さん、芸妓さん、あの文化は認定されていない。まず京都市から認定していこうと。あるいは、地蔵盆、あるいは、きものの文化、京菓子の文化、こうしたものを認定してきています。これらも全部審査会を作ってやっております。
 その次ですけど、京都遺産。テーマごとに関連する文化遺産を、地域性、歴史性、物語性を持って、有形・無形を包括して、集合体として認定していこうということで、去年から始めました。例えば、北野天満宮、あそこを建てたときの残った用材で上七軒というお茶屋さんができました。そして、西陣、織物があります。そして、お茶屋さんがあって、そして、少し東へ行けば、千家、裏千家、武者小路千家等がある。その辺が全部つながっている。そして、京料理がある、町家がある。これを全体としての文化、有形・無形を含めた京都遺産にしていこう。ほんまは日本遺産にしてほしいんですけど、日本遺産、政令指定都市は全部外されましてね。しかし、京都遺産ということで、庭園文化、あるいは、火の信仰、こうしたものをやっていければと思います。
 なお、先ほど申し上げましたけど、これらで何とか伝統産業が生き延びられるように。私の家も、伝統産業の、周り全部そうでした。ほとんどがマンション等になりました。ただ、今頑張っている職人さんが、若いときに手に職さえ付けておいたら暮らしは楽になると言われた、それが50年、60年続けて、こんな暮らしが厳しくなるとは思わなんだと。これが現実であります。これは京都だけでなく、日本中そうやと思います。
 その次ですけれども、文化財保護行政に求められるもの。
 まず専門的・技術的判断の確保ですけど、京都市、市長部局でやっておりますけれども、文化財保護審議会を設置する。文化財保護技師の配置。
 さらに、政治的中立性、継続性・安定性の確保。第三者による確認。今、いろんな京都独自の文化財制度ですけど、これも全部審議会を作り、それも条例上の位置付けもし、そして、公開の下にしっかりやっています。
 あと、開発行為との関係ですけれども、たびたび審議会、特に埋蔵文化財等との関係において、計画変更を余儀なくされています。
 その次、学校教育や社会教育との連携をしっかりやっていく。これは当然のことであります。
 今、区役所との連携が非常に良くなってきまして、区役所と区民と一緒になって、親子の文化財体験、こんな取組が進んでおります。
 それから、ちょっと字が間違っていますけど、文化財を災害から守るまちづくり。火事が一番怖いです。それから、地震が、あるいは、水災害は怖いです。お寺、神社ごとに自衛消防隊を作る、あるいは、市民文化財レスキュー体制を作る。あるいは、最近作ったんですけど、観光ガイドの方々がきちっと研修を受けてもらって、文化財防災マイスターを養成する。今、472名になりました。かつては、お商売をしている人が文化財の近くにいはった。ほとんどサラリーマンになってきました。そうすると、観光業界の人、タクシーの運転手さん、あるいは、案内人、そうした方に文化財のことをしっかり学んでもらって、いざというとき文化財の守り手になってもらおうと、こんなことをしております。
 最後になりますけど、文化庁が全面的に京都に移転していただきます。「日本に京都があってよかった! そうだ、京都、行こう!」これを、「世界に日本があってよかった! そうだ、日本、行こう!」、こういうように、私たちは大きな目を持って、文化財をしっかりと守り、同時に、活用し、取り組んでまいりたいと思っています。
 ちょっと余分なことを言います。「乾杯は日本酒で!」という条例を作りました。今、全国で138できました。これはお酒の条例ではありません。これ、4年前に作ったんですけど、そのとき、10年間で日本酒は4割減りました。すばらしい酒蔵がどんどんつぶれていく。そして、世界では、日本酒は和食とともに高く評価されている。ところが、日本では、若い人が日本酒で乾杯すると、「わあ、おいしい。ワインみたいだ」と言う。これを外国人が笑う。だから、それぞれの地域にあるものづくり、その背景にある精神文化も、そうしたことももう一遍大事にしましょうと。これを堅く言えば煙たがられるから、「乾杯は日本酒で!」、こういうことですので、どうぞ、是非、次回は全員和服で来ましょうと。よろしくお願いいたします。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、続けて、鈴木委員、よろしくお願いします。
【鈴木委員】  奈良県さんも、京都市さんも、圧倒的な文化財の宝庫なので、恐縮しておりますが。
 私は、結論から言うと、大変今の文化財審議会の文化財の保存と活用に関する考え方は、基本的には大賛成であります。私ども、人口6万強の小さい市でありますけど、これまでの地域振興の在り方というのは、やっぱり外部の力を借りてということだったと思いますね。例えば、企業誘致、産業振興、あるいは、いろんな国からの支援、こういうことで地域を創ってきたわけですけど、そういう創り方がもう限界ではないんですけど、もう困難になってきているということから、もう一度足元にあるものを見つめ直して地域を創っていこうと。こういうことに今、白河市は進めようとしております。その足元にある資源が、すなわち文化であり、文化財であると。こういうことから入りたいと思います。
 では、資料に移りますが、白河市は、東京から200キロ弱の6万2,000人ほどの小さな市であります。東北の玄関口でありますし、歌枕の地でもありますし、仙台に河北新報という新聞社がありますが、これは「白河以北一山百文」と、こういうことに対する反発から、河北新報という新聞社がありますが、その河は、白河の河であります。
 白河のまちづくりは、ここにも写真が載っておりますけど、白河関というのが白河にございました。そして、国史跡指定の小峰城の跡があります。これは大震災で大崩落いたしまして、震災の8か月前に、文化庁さんの御協力で国史跡指定を受けまして、小峰城の石垣が全か所崩落いたしましたが、今、着々と、8割方修復をいたしました。この小峰城の跡。そして、松平定信公が造られた南湖公園というのがあります。日本で最初の公園だろうと言われておりますが、こういう3つの史跡がございます。こういうものを生かしながら、白河のまちづくりを進めていこうと。
 次のページが、江戸時代のまちは、今、ほとんど変わっていないですね。旧奥州街道沿いにずっと町家がありまして、小峰城があって、阿武隈川があって、そして、奥州街道がずっと走っている。この基本的な形は全然変わっておりませんし、この中には古い町並みもあります。こういったものを残しつつ、地域資源の地域振興の在り方を探っていこうと、こういうことであります。
 次のページに、ここに歴史的風致の維持・向上、景観形成と。当時、私、市長になったのが平成19年ですから、ちょうど10年前でありますが、中心市街地の活性化の認定を受けるべく、国と協議をしておりまして、そのときのキャッチフレーズが、歴史と文化のまちを生かした中心市街地の活性化を図っていきましょうということで、中活の認定を受けました。その後に、いわゆる歴史まちづくり法の認定も続けて23年2月、ちょうど震災の3週間ぐらい前にこれも認定を受けまして、これのキャッチフレーズが、歴史と文化のまちということ。そして、併せまして、京都市さんから話がありましたが、景観形成も非常に大事な要素であろうということで、21年4月に、県から景観行政団体の指定を受けまして、23年4月に景観条例を施行して、昨年4月には、市独自の屋外広告物条例なんかも制定し、併せまして、都市基盤の整備なんかも進めていこうと。こういうことで、今、地域を振興させております。
 次のページに、例えば、これは歴史的建造物の保全でありますが、修復前と修復後で、こういうふうに白壁が復元されました。あるいは、白河の提灯祭りというのがあるんですが、これが360年ぐらい前から続いている提灯祭りがあったり、だるま市があったりと。そういうことがあって、歴史まちづくり法の指定を受けたと。こういうものをもう一度地域の誇りとして、あるいは、地域の産業としての核にならないかと、こういうことでまちづくりを進めてきております。
 次のページには、都市基盤の整備なんかも、信号機なんかを撤去したり、街路灯を撤去したりして、景観に配慮した道路整備を行っておりますし、景観形成の観点から、店舗の修景整備なんかも、修景前と修景後でこういうふうに変わってきていると。
 それから、一番下は、小峰城の周辺の景観であります。右側にかわいい屋根があるのが白河駅、大正10年に造られた白河駅舎でありますし、そして、JRの北側に小峰城がある。この全体の景観を今生かそうと進めております。
 そういうことの中で、実はもう平成24年に組織の見直しをいたしまして、文化財の行政を、地方自治法による補助執行によって、教育委員会から建設部の都市政策室に移管いたしまして、文化財の指定とか解除を除くほとんど全ての行政は文化財課、建設部の方に移管しております。これのヒントになったのは、萩の市長さん、前の野村市長さんとお会いしたときに、実は萩市はもう相当前から、こういうふうに補助執行させていると。萩市のまちづくりは、まさしく文化・文化財行政が基本ですと。したがって、全庁的な対応をしていくのは、やはり教育委員会では限界があると。こういうお話を承って準備をしたわけでありますが、大震災があったので、1年ずれて、24年からこの文化財の行政を市長部局、かつ都市政策室の方に移管させて、全庁的に、それこそ観光であれ、まちづくりであれ、そういう一環の中に文化財を置くと、こういうことでありました。ともすれば、教育委員会にあったときは、文化財を守るという意識が多少強かったような気がいたしておりますが、市長部局に移ることによって、その垣根が非常に低くなってきた。全庁的に白河の文化・歴史を生かしたまちづくりを進めていこうという気運が出てきたということがあったということもあって、今回のこの審議会の検討状況、検討内容は、まことにタイムリーであると思っております。
 最後のページには、ここに、まさしく保護と活用は全く離反するものではない。これは表裏一体のものだと。文化財の保護にもそう書いてありますよね。文化は保護し、なおかつ、活用するんだと。従来の行政の中にどうしても首長部局と教育委員会がある。あるいは、開発部門と文化財行政は利害が対立するということがあって、なかなか仲がよろしくなかったわけでありますが、そういうことを乗り越えつつ、今があると思っております。歴史的遺産を保護し、活用することによって、地域の皆さんが地域に誇りを持つということになってくると思っております。そしてまた、こういうところから新たな産業が起こるかもしれない。そして、観光の客を増やすという大きな契機になるかもしれないという意味で、まさしく文化・文化財は地域の宝物、地域振興の核になるべきであると思っております。
 前の前の前の近藤誠一文化庁長官が、大震災後の1年後に小峰城を訪問されまして、そして、自らの足でずっと1時間ほど歩かれまして、ずっと一緒に近藤長官と話をいたしました。近藤長官がおっしゃるには、自分は外交官出身でありますと。まさしく、スマートパワーの代表は文化財です。文化ですと。その文化は地方にありますということをおっしゃっておりました。それが地域を強くすることだというふうに強くおっしゃったことが非常に印象的でありますので、今後とも、こういう組織の見直しも含めて、市長部局でも教育委員会でもいいわけですけど、それは各自治体の判断において執行できる、こういうことの体制を是非と作ってもらいたい、こういうふうに思っております。
 以上であります。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、最後、岡田委員、よろしくお願いいたします。
【岡田委員】  横浜市の岡田です。よろしくお願いします。洋式化が当たり前、和の香りはないのではないかと思われている横浜市ですけれども、少し現状をお話しさせていただきたいと思います。
 先ほど文部科学省さんの方から、資料6で、教育委員会の役割という整理をされておりまして、2ページをちょっと御覧いただきたいと思います。ここでこのように整理をされておりますけれども、まさしく横浜市はこのとおりの整理になっておりまして、教育委員会が文化財の保護に関することを担い、その下に書いてあります文化に関することは、文化・観光を担っている局が担う。スポーツに関しましては、18区の行政区を所管しております局が、スポーツに関することを担うということの役割分担をしております。余談ですけれども、5年前まで、私は、このスポーツの所管をする局の局長を務めておりました。
 それでは、こういう役割分担の下での現状ということで、お聞きいただきたいと思います。簡単なレジュメのようなものを作ってまいりましたので、横浜市のペーパーをちょっと見ていただきたいと思います。
 まず今回いろいろ御指摘があります、教育委員会で所管をするのか、首長部局で所管するのかということについては、私は、ここは自治体にしっかり任せてほしい。自治体で方針を決めさせていただきたいと思っております。その上で、横浜市にもし所管となった場合どうなんだろうかということを、私として考えさせていただきました。
 横浜市は、一番下の横浜市の特徴例という小さな囲みを書いてありますように、関東大震災と横浜の大空襲、2回にわたり市街地の大半が破壊され、多くの文書、あるいは、貴重な書籍などが焼失いたしました。そのために、50年掛けて海外から、そして国内からいろいろな文献を収集いたしまして、長い地道な研究をして、今になって分かってきたことがたくさんあります。一昨年、やっと横浜3万年の歴史というのを整理させていただきました。それだけに、文化行政、あるいは、研究が非常に遅れているといいますか、できなかった都市でもあります。
 現状のところに少し書かせていただきましたが、そういう状況があるために、文化財の学術的価値というものが、所有者とか、あるいは、広く市民の方になかなか御理解されていないという状況にあります。そのために、維持・管理していくときに、予算を取る、あるいは、所有者に御協力いただくということが非常に難しくて、苦慮しております。また、観光やまちづくりに活用したいという思いもありますけれども、現在の生活を守りたいと考えている住民の方が多くいます。こういう中で、何を留意しながらやらなければいけないかなというのを考えますと、やはり文化財の魅力や価値を失わないように、適切に修理・維持・管理することと、建造物や史跡などを活用に周囲の方の御理解をしっかり頂かないと、今の横浜ではなかなか難しいと考えています。
 いろいろな対応を考えましたけれども、まず文化財の知名度、京都市さんや他の都市のように、知名度がまずないので、文化財の知名度をしっかりと市民の方に御理解いただいて、市民の誇りとなる、地域の愛着となる事業を実施していかないとなかなか難しいなと考えております。
 次のページを御覧ください。これは開発などへの対応です。これは要請の4点の中にも含まれておりましたけれども、横浜市は東京に近くて、交通の便も非常にいいために、古い建物や遺跡の所在地なども含め、全てが開発の可能性を持っております。今、新たに、この時代に、まだまだ開発が進んでいます。さらに、戦後多く開発されたところが二次開発になりつつありまして、思わぬところから縄文式のものが出てきたり、今になって分かってくるものをどうやって守っていくかというのは非常に難しい状況にあります。
 歴史的な建造物や遺跡が存在する場所や、あるいは、所有者の方が処分されたり開発される場合に、大きな議論にはなるんですけれども、そこをどう調整していくかというのは非常に苦労しておりまして、教育委員会は文化財保護の立場から開発業者との調整を行っております。これが教育委員会の独立性と公平性のところで意義が見出されているのではないかなと思っています。
 これを首長部局に移った場合にどうやって担保するかというのを、横浜市としては、もし移すとすれば、少し真剣に考えていかないと市民的理解は得られないのではないかなと思っています。そのために、やはり法的な根拠をしっかり充実させることと、外部の有識者の意見を尊重していく制度をしっかり確立していくことではないかなと考えています。
 埋蔵文化財の協議というのがもうすごい数で上がってきているんですけれども、実は、先ほど御説明したように、開発行為が現れるたびに、その下に何が埋まっているのかという確認をしなければいけないという状況になっています。
 その次を御覧いただきたいと思います。学校教育との連携です。開港以前の歴史について子供たちが学ぶ機会が少のうございまして、今、多くの学校が、歴史博物館などの場所を使って学習をしております。また、学芸員の方たちに出前授業や施設を通じて、歴史についての学習を深めています。なかなか日常の生活の中で理解するというのが厳しい状況にありますので、ここは教育の中で頑張らなければいけないところだと認識しております。そのために、もし首長部局の方にということになれば、そこの連携を取れるだけの人材の体制ですとか、教育との連携をしっかり取りながらやっていくということが重要になるのではないかなと思っています。
 次を御覧いただきたいと思います。ここは横浜ならではのことかもしれませんけれども、今、文化財に関する説明文というのは多くは教育委員会が作っておりまして、教育委員会という名前が入った説明板を設置しておりますので、これを所管を変えるということになると、市民の方のご理解が必要かなというのと、それから、実は、教育委員会だからこそ、教育のために使ってほしいということで、寄贈や寄託された資料もあります。これをどう御理解いただくかなというのも、もし所管を変えるとすれば、しっかりと御理解を頂いた上でないと難しいのではないかなと思っています。
 横浜市という状況を踏まえて、問題点といいますか、考えられることをお話しさせていただきました。
 以上です。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、残り30分ほどありますので、4人の委員の方から御発表いただきましたけれども、これから、4人の委員の御発表に対する御意見、御質問、並びに、先ほど最初に事務局から説明ありましたような、文化審議会の企画調査会の中間まとめを含めた地方文化財行政の在り方に関する御意見等々について、委員の方から御意見を賜りたいと思います。どなたからでも、御発言あれば。どうぞ、亀井委員。
【亀井部会長代理】  荒井知事と門川市長にお聞きしたいんですけれども。
 まず荒井知事に対してですけれども、知事部局で、文化、スポーツについての大綱を作ったと。ただし、文化財については、所掌外だから遠慮したと言われましたけど、教育委員会は、そのとき何か動きをされたんですか。それが1点ですね。
 それから、門川市長に対しては、いわゆる道の文化、それについての審査会で認めて何かやっていると。その制度というのは、文化財保護法に、いわゆる技の認定、それから、保持者という制度が多分あると思うんですが、それとの関連はどうなんですか。その1点ですね。よろしくお願いします。
【小川部会長】 では、荒井委員の方からお願いします。
【荒井委員】  例えば、文化振興大綱について、知事が策定するといったときに、教育委員会文化財保存課は何か言ったのかと。余り言わなかったですね。ということは、文化振興大綱について見識がなかったんじゃないですかね。どうすればいいか分からなかったんじゃないかと思いますよ。
【亀井部会長代理】  分かりました。
【小川部会長】  よろしいですか。門川委員、どうぞ。
【門川委員】  審議会の方は、文化財保護法の関係でしっかりやっています。あと、今、市民が残したい有形・無形とか京都遺産というのは、条例で委員会を作ることは決めていますけれども、そこまではやっていません。
【亀井部会長代理】  審査会の位置付けというのは、任意のチェックする機関であるということですか。それで、認定した場合に、何かその認定者に対してメリットというか、施策としては何か展開されているわけですか。
【門川委員】  例えば、残したい庭園とか家屋、そういう場合に、わずかですけど補助をしています。それをしている――その前にもいろんなことがあったんですけど、それが何年か経って国の文化財に指定してもらえるとか、こういうようなことになってきているのもあるわけですけどね。その国の指定してもろうたのが、今、維持できひんというような厳しい問題もあるんですけどね。もともと伝統産業と京町家ということでしたので、その伝統産業自体がもう危機的な状況ですので、維持できない。宗教が、信仰心がだんだん薄れているからお寺維持できひんと一緒ですね。ですから、これをどうしていくのかいうのは、もう大変なことですわ。
【亀井部会長代理】  ありがとうございました。
【小川部会長】  亀井委員、よろしいですか。
【亀井部会長代理】  もう1点だけ。多分、皆さん共通していると思うんですけど、文化財保存と活用というのは車の両輪だというのはよく分かるんですけど、回転速度が違うとひっくり返ってしまうことがありますので。文化財というのは、どちらかというと、じっくり構えて進むという、歩みが非常に遅いですね。それに対して、開発というのは、活用ということは、回転速度が速いような気がするので、その辺をどういうふうに行政上バランスを取っていくか、これが腕の見せどころではないかと思います。
【小川部会長】  どうぞ、荒井委員。
【荒井委員】  回転速度は違わないと思いますよ。保存の人はそう思っているだけなので、活用というのは、そんな目先の活用というのではないんですよ。例えば、遺跡の発掘を受託させたらいかんという、こんなのは別にその場で判断しないと、いかんと言わなきゃいけない。それは知事部局でも言えるし、市町村の保存部局がオーケーと言っても、上の県の保存部局がだめと言うこともできる。そういう仕組みがないわけなので、独立した市町村教育委員会保存課がやると言っても、なかなか難しいというような感じがします。
 だから、長期的じゃないんですよ。長期的な観点で保存を図るべきと、いつもそういうふうに保存の人は言うんだけれども、短期じゃないけれども、活用も長期的なんですよ。車の両輪というのを賛成しながら、軸が一致しないというのは、おかしな言い方ですよ。一致する車軸を作らないといけないんじゃないですか。誰が車軸を作るんですか。回らないから両輪回らないということはないんだからと私は思いますね。
【小川部会長】  ありがとうございます。
 ほかの委員、いかがでしょうか。ございますか。山添委員、どうぞ。
【山添委員】  京都府の与謝野町の町長をしております山添と申します。先ほど4名の方からそれぞれの取組を発表していただきまして、大変興味深く拝聴させていただきました。それぞれに対して、私自身も思うことであったり考えることはあったんですけれども、特に荒井委員から御指摘がありました、文化財の保存と活用についての奈良県の考え方という分野において、保存修理の実践の見える化、そして、保存修理過程の合理化・標準化というのは大変興味深く聞かせていただいたところであります。
 といいますのも、私の町といいますのは、基幹産業に織物と農業を持っているんですけれども、特に農業の分野においては、IoT化・ICT化によって、この間、熟練した農家の皆さん方のスキル、ノウハウをできる限り見える化をしながら公開をしていくという取組を進めているんですけれども、このことによって何が起きているのかと言いますと、新たな新規就農者の方々が、その知見、データに基づきながら就農に励んでいただくというような現象が起きつつあると考えております。
 そうした観点からも、この文化財というのは、先ほど髙橋課長からもありましたように、これからどんどん担い手が減少していく。それに伴って、修復であったり、その文化財自身の知識というものが非常に乏しくなっていくという可能性があるのではないかというように思います。
 そうした中で、昨今、科学技術などの進展も非常にあるということでございますので、これらの修復過程におけるオープンデータ化、そして、更にそれを広く汎用させていく努力というのが非常に重要になっていくのではないかと思いながら聞かせていただきました。
 私ども、文化財行政といいますと、引き継いできたものに意識を向けがちなんですけれども、それを未来へとつなげていくためには、科学あるいは技術、こういった観点から何が可能なのかということも非常に重要に議論していくべきなのではないかと考えたところであります。
 私たちの町、30日に意見発表させていただくんですけれども、皆さん方の発表を基にしながら意見をまとめていきたいと思います。大変勉強になりました。ありがとうございました。
【小川部会長】  ほかにいかがでしょうか。中原委員、どうぞ。
【中原委員】  今日は、奈良県、あるいは、京都市といった、文化財におけるビッグネームのところの話と、白河市さんのような地方のお話とかも伺わせていただきまして、大変勉強になったと思っております。
 私自身は、実は埋蔵文化財が専門でございまして、30年間、埋蔵文化財の担当をしてきた人間でございますので、その立場からと同時に、全国的な文化財の専門職員といった場合の統計は持っていませんけれども、9割方は埋蔵文化財の専門職員ではないかなという気がします。私自身も本庁にいるときは、埋蔵文化財以外の文化財も担当いたしましたので、その視点からちょっとお話をさせていただきます。
 文化財に関して、文化財保護法における埋蔵文化財であるとか、建造物であるとかの中で、埋蔵文化財というのは、言ってしまえば、悉皆的に全てのものを保護の対象としていると考えています。例えば、先ほど京都市が、全ての文化財の指定の数が3,000点と言われましたが、横浜市が2,500件の埋蔵文化財包蔵地があると言われました。そういうふうに、埋蔵文化財というのは、数が多く、悉皆的なデータベースができていて、かつ、埋蔵文化財の専門職員も相当数配置されています。文化財の保存という意味では、相当な長い歴史もあって、取組はできていると私自身は考えています。
 開発サイドとの緊張感ということもありました。私自身が若い頃というのは、その緊張感は半端なものではございませんでした。工事現場でも叱られながら調査をするというようなことも多々ありましたが、その点は随分御理解が頂けるようになって、最近では、土木とかの開発部局と非常にいい関係ができていると思っています。
 一方で、埋蔵文化財以外のその他の文化財ということになりますと、指定文化財あるいは、登録文化財が保護の対象となっているわけでして、京都市のように、歴史的な町家を積極的にすごく保護されようというふうなことが地方においてできるかということになると、かなり厳しい状況はあるような気がします。
 具体的に言えば、埋蔵文化財以外の文化財担当者というのが、全国的に見れば、ほとんどいないのではないでしょうか。埋蔵文化財の担当者は配置されているけれども、そのほかはいない。鳥取県は、人口60万を切る小さな県ですけど、それでも本庁の方に建造物と民俗文化財の専門担当者を置いています。でも、この一人ずつしかいない。これで全県を把握しているというところです。文化財保護は、保存と活用から成り立つと考えています。
 私ども鳥取県が前回、文化審議会企画調査会で述べさせていただいたみたいに、文化財の保存なくして活用はない。その保存ということの担保がどういうふうに取れるのかというのが、今日議論になっております文化財保護行政を選択制にするかどうかの鍵になるだろうと思っております。埋蔵文化財に関しては、そんなに私は心配はしていないんですが、その他の文化財の保存ということになると、活用は絶対に首長部局の方が、より効果的な活用が生まれると思いますが、保存ということがちゃんとできる体制が取れるかどうか、これが一番気になるところでございます。
【小川部会長】  今の御意見に対して、どうぞ、荒井委員。
【荒井委員】  私は、活用なくして保存はないと思います。活用なくして保存ない。無形文化財なんか、やっぱりその無形文化をお祭りなんかでやっていないと、保存できないんじゃないんですか。保存が先にありきというのは、僕は保存者の傲岸だと思います。活用が先というわけではない。活用がなくして保存というのは難しいのではないかなと思います。というのは、奈良は文化財がたくさんあると言われているんだけど、奈良県民は値打ちが分からないと言われているので。京都の方は値打ちが分かっているのに、奈良は分からないと皮肉られているので。しかし、それは身近にないんですよね。値打ちものだということは専門家が言うんだけど、県民の人は知らないんですよ。それをどのように理解して見てもらうかというのは、活用の第一歩ではないかと私は思うんですよね。県民が値打ちの分からないようなものを保存しろ言ったって無理ですよ。専門家だけが分かっているのかと僕は言いたい。専門家も分かっていないんじゃないか。
【小川部会長】  大変おもしろい観点だと思いますけど。中原委員、そして、門川委員ということで。
【中原委員】  よろしいですか。すみません、お先に失礼します。
 荒井委員の言われることは、私もよく分かります。ただ、ここでいう保存なくして活用なしというのは、なくなってしまったら活用ができないという意味でございまして、その次に、活用がなければ、今言われたように、価値を知るということができないので、更なる保存ということに回っていかないという意味ではよく分かります。ですから、文化財保護というのは、保存と活用が両方なければいけないというのは十分理解しているつもりでいます。
【小川部会長】  今のご意見に対して荒井委員、何かございますか。
【荒井委員】 あります。埋蔵文化財で出てきたのを、保存すべき埋蔵文化財と捨てていい埋蔵――文化財とおっしゃっているから、分けておられるんですか。地中から出てきたものが皆値打ちだと、皆置き場所に困っているんですよね。記録保存というのは、今、地中のあれで大きな意味が、記録保存は随分立派な保存形態だと思うんだけれども、実物保存かという保存の哲学はおありにならないんじゃないかと思っています。それは、その値打ちを後世で分かるかもしれないと思うから。でも、後世で分かるかもしれないというのを、それは値踏みをせな。皆そうかという点が問題だという。みんな残しておかないけないのかと。
 それと、貯まってくると、分からないけど残す。どこかの家の倉庫みたいな、分からないけどものがたくさんあふれて、相続すると、捨てていいものかどうか、皆分からなくなる。値打ちを分かって残すべきだと私は思いますね。
【小川部会長】  まだあると思いますけど、門川委員、どうぞ。
【門川委員】  日本の埋蔵文化財の保存、これは大したものやと思います。こういうことなんですね。京都で100年を超えてすばらしい町家がブルドーザーでばーんとつぶされて、その中には、建物だけやなしに文化があるんですね。暮らしの文化。それが何の指定もなしにどーんとつぶされて、そのあとにマンションが建つときに、一所懸命、1年掛けて文化財の発掘調査をした。
 私、中国から来られる方によく言うんですけど、中国は確保してきたから、地下に文化財が残っている。地上にはない。これ、呉服というんです。呉の時代の中国から入ってきた織物が原点やというのが有力な説です。でも、呉の時代の織物が中国にはない。奈良には、京都にはある。だから、中国の人がどんどんと来て、多くの人が驚く、地上に中国がある。これがすばらしい。それに対して、活用しなければ町家はつぶれます。町家をつぶして、地下の発掘調査はするんです。これは非常に矛盾している。
 それから、もう一つ、活用しなければ、京都は大きな都市ですけど、75%は森です。その森の中に1000年続く集落がある。それからどんどん苦しくなる。もう林業が厳しい。北山杉、1本50万したのが、今は5万でも売れない。その職人が続かない。こういうことなんですね。
 今度、新文化庁です。文化芸術基本法ができて、食文化も、あらゆるものを、今まで、言葉は悪いけれども、特定の文化財を対象にしていたのを、生活文化全部していこう。こういうことで、そして、文化で日本中を元気にして、文化で世界から尊敬されるようになってくるというときの、こういうのは、僕は、埋蔵文化財ぐらいの古い建物も、あるいは、伝統産業も、伝統文化も、本当にすたれていくものは記録保存しなければならないし、そういうことに危機感を持ってやっていかなあかんと。
 こういうときに、京都で感じるんですけど、ほとんどの文化財は紙と土と木でできています。必ず朽ちていきます。いつかは燃えます。100年、1000年単位で見たときに。これをきちっと、材料が確保できる、巧みの技がきちっと育っていく、その哲学、何が正しいか、何がいいかということを分かる子供を育てていく、こうしなければ絶対にだめだ。こういうことで、そのためには、文化財から遠ざけてはならない。近づけて、近づけて、その価値を知って、その担い手になろうという人をどれだけ育てるかというのが、これからの文化財の活用ではなしに保存行政。保存のための活用である。ということで、発想をやはり同じにしなければあかんと。
 したがって、冒頭にも言いましたけど、小さな東京に京都はならないんだと。そのためには、文化財だって、もう都市計画局がかんかんになって景観政策をやっている。二条城から見た景色が400年前と一緒にする取組を一所懸命やっている。二条城だけ守ったってだめなんだ。桂離宮へ行かはった人が、世界中の建築家が桂離宮を教科書で学ぶ。でも、現地に行ったら違うた。借景まで教えていなかったと。桂離宮というのは、建物は一部であって、眺望景観、借景からということを、これを守らなければ、極めて一部であると。だから、それは生かさなければ価値観も伝わらない。こういうことを今言われているんじゃないかなと、このように思うんです。だから、保存と活用は一体だと。
【小川部会長】  時間も余りないので、あと世良委員、小西委員、御意見があれば、どうぞ。
【世良委員】  津和野町の世良でございます。
 京都市さんとか奈良県さんの莫大な文化財の量と、我々、7,800人を切るような小さい町とではレベルが違い過ぎて、話の論点がずれるかと思います。今度、30日に発表させていただきますので、そちらの方はまたそのときに話をさせていただきたいと思いますが、せっかくの機会なので、白河市長さんの鈴木委員さんの方から発表いただいたことについて、ちょっとお伺いしたいことがございます。
 もう既に文化財課というのを市長部局に設けておられて、進められておるということなんですが、いわゆる文化財保護の立場の部分は教育委員会にあろうかなと思っておりますが、そこら辺の連携をどういう形でやられておるのかなというのがちょっと興味があって、教えていただければいいかなと思います。
 うちの場合も、商工観光課という町長部局のセクトがありまして、そこへ歴町とか重伝建の部分については、観光課の方が持ってやっております。ただ、申請等は、くみ上げてくるには、教育委員会を通していくという、そういった流れを持ってやっておりまして、お互いが、うちの職員が観光課を兼務、観光課の観光係の者がうちを兼務というような形で、お互いを調整しながら行政を進めておるような状況でございます。どういった取組のやり方をやされているかというのは、ちょっと教えていただいたらと思います。
【鈴木委員】  それは人だと思います。今日随行して来ている建設部の次長なんですけど、彼は文化財の専門家。彼はずっと文化財課長兼務で、都市政策室長兼文化財課長ということで、彼が全部つないで、文化財の専門の職員と、教育委員会と、それから、我々の市長部局をうまくつないでくれているということで、やっぱりそこは人だと思います。
 あとは、その人の考え方で、先ほどお話があった文化財を活用という観点から、従来は保護という視点から、逆に、少しずつ軸足を変えつつ、活用という観点から文化財を見てみようと。こういうことで、この文化財課長さんを都市政策室長の兼務で2年ほどやってきたことが大変大きく功を奏しているということで、白河の場合には、パーソン、人かと思います。
【小川部会長】  世良委員、何かありますか。
【世良委員】  うちの場合も、まさに人かなと思っておりまして、もともと文化財で担当しておった者が、今、観光課の方へ移って係長をやって、お互いで調整をしながらやっておるというような状況です。
 それで、仮に首長部局が全てを、許認可も含めてやるということになれば、それは一本化されるわけですけれども、うちの場合は、文化財がかなり教育委員会行政としてはウエートが高い町でございまして、観光も抱えてございますが、学校教育とかふるさと教育というのを島根県は進めておりまして、特にうちの場合は文化系が多いので、ふるさと教育の中に文化財というものがどうしても必然的に入ってくると。そういった中で、学校へいわゆる講師として入っていくようなことも当然ございますけれども、そういった部分が、今は教育委員会から命令で入るわけですが、今度は、首長部局に含められたときは、お願いをして、学校に来てくださいという形にならざるを得ないのかなと。そういった連携の仕方をスムーズにいけるいい方法を考えていかないと、まさに人でございますので、人が替わると出しにくい、出さないという。
 以前、うちでも、恥ずかしい話ですが、観光部局と教育委員会部分は余り仲がよくない次期がございまして、そういった時期には、出す出さんで結構もめた時期もございまして、そこら辺が一番懸念をされるところでございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 小西委員、どうぞ。
【小西委員】  ポーラ伝統文化振興財団の小西と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、文化財の保護と活用に全方位で懸命に取り組んでいらっしゃる各自治体の皆様の色々なお話を伺いまして、大変勉強になりました。
 私どもの財団は、文化財の中でも伝統工芸、伝統芸能、民俗芸能や行事など無形文化財の保存、伝承、そして、振興に取り組んでおります。主な取り組みとしては、無形の伝統文化を支えてこられた方々を顕彰する事業、そして無形伝統文化の保存・伝承活動での支援を行う助成事業、また、卓越した技や文化などを後世に残していくための記録映画の作成や伝統文化の普及活動等を行っております。
 顕彰事業、助成事業では、毎年各自治体様や美術館・博物館、有識者の皆様などに大体1,600から2,000か所ぐらい推薦の御依頼をするのですが、推薦数がなかなか増えないという現状があります。毎年御推薦を何回も頂く自治体さんもあれば、そうじゃないところもあり、地域によって意識の格差があるのを常々感じているところでございます。
 本日御発表いただいた荒井委員、鈴木委員、門川委員、素晴らしいお取り組みをされていらっしゃり、感心いたしました。私共もぜひそのようなお取り組みの一助になるような活動をしていければと考えておりますが、どのような働きかけをしたら、全国の地域格差を無くし、より活発な文化財の保存や振興の活動ができるのか、もしヒントがあれば一言ずつで結構ですのでお聞かせいただければと思います。
【小川部会長】  そうですね。時間も余りありませんので、もしも今の御質問でお答えできる方がいらっしゃれば、鈴木委員、門川委員、そして、荒井委員、何かございますか。
【門川委員】  よろしいですか。
【小川部会長】  どうぞ。
【門川委員】  是非、これを機会に、よろしく頼みますわ。わんさと出しますし。
 いや、私も10年前まで教育長をしていたんですけど、本当に地域と一緒になって学校運営協議会を作って、そして、地域の担い手を育てるということを学校教育の一番大事な目標にして、地域の人が、自分たちがどうまちづくりしているか、そして、子供にどういう期待をしているかということを語り合いながら学校運営に参画してもらうというような仕組みを作っているわけですけれども。こういうことが前進はしているわけですけど、学校教育もすぐ結果に出るものばっかりをやる。
 例えば、京都に漢字能力検定協会がありますね。ものすごく減ってきているんですね。何たら英検の方にシフトしていますね。伝統文化、伝統産業のことを学ぶより、とりあえずは学力やと。学力も大事ですけどね。本当に幅広いことを学んで、そして、きっちりと社会の担い手として育てていくということが根本だなということを思います。
 同時に、うまくアクセスができてへんなということを実感しますので、そういうことをやっていただいていることは非常に貴重ですので、是非――余りにも世の中は情報が多すぎて、すばらしい取組をしてはるところに、きちっと学校や研究会等が知らないということがもったいないなと思いますので、是非、御縁を頂いて、よろしくお願いします。
【小西委員】  はい。
【小川部会長】  どうぞ。
【荒井委員】  文化財をどう守るかという考え方にもなるんですけれども、文化財というのは、私は公共財だと思います。それが、言葉は悪いですけれども、専門家と専門家と称する人たちの研究対象財になっていてはいかんということだけですね。それを外すと大丈夫ですよ。それさえ外せば大丈夫です。
【小川部会長】  どうぞ。
【鈴木委員】  文化財って、やっぱり普通の暮らしにあるものですよね。私が大震災を受けた後ちょっと心配したのは、各集落にある神社とか鳥居なんかが壊れちゃったんですよ。それを修復できないでいるわけですね。そういうものは集落の中心にあったわけですけど、そういったものがなかなか修復し切れていない。お金が集まらないのと、あと、やっぱり地域のコミュニティの希薄さが出てきているということから、もう一度、我々の生活の基本は何なんだろう、集落を守っていく意味は何だろうと、そういうことをもう一回考え直すという意味で、私は、白河の歴史をもう一回振り返るという意味で、子供たちに「れきしら」という白河の歴史本を副読本に使っております。地域を知らずして生活はあり得ないということ。白河の歴史を知らずして日本の歴史を知っていても、これは半分しか意味がないということなので、まずは地域に徹底的にこだわっていく。それが、すなわち、文化財を大事にしていくということ。無形文化財、踊り、民謡、全部そうですね。そういったものが地域への誇りと地域の再生につながっていくと。ですから、それはやはり皆さん方とともに地域をつくっていく意味でのキーワードが文化財だと、生活の暮らしだと思っております。
【小川部会長】  ありがとうございます。
 ちょうど時間が6時になりましたので、今日の会議はこれで終わらせていただきたいと思います。今日、様々な御意見が出てきて、幾つか論点もかなりクリアになった面もありますので、事務局の方でその辺は整理していただいて、また次回、更に議論を深めていけるようにしていきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。
次回の日程について、事務局から御連絡をお願いいたします。
【松淵調整官】  次回の特別部会は、10月30日月曜日の14時から16時を予定しております。場所は、本日と同じスタンダード会議室虎ノ門SQUARE2階の会議室でございます。後日、事務局より開催案内をお送りいたします。
 なお、資料につきましては、机上に残していただければ、後ほどお手元に郵送させていただきます。以上です。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、今日の議事は全て終了しましたので、これで閉会といたします。ありがとうございました。
―― 了 ――

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