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実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会(第14回) 議事録

1.日時

平成28年4月11日(月曜日) 16時00分~18時30分

2.場所

東海大学校友会館 阿蘇の間・朝日の間

3.議題

  1. 関係団体からのヒアリング
  2. その他

4.議事録

【永田部会長】  それでは,所定の時間になりましたので,第14回実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会を始めさせていただきます。
改めて,皆様,お忙しい中,お越しいただきまして,本当にありがとうございます。
本日は,あらかじめ報道関係者から録音,カメラの撮影を行いたい旨のお申出があり,既に許可しておりますので,御承知おきいただきたいと思います。
前回ヒアリングを行いましたが,その続きといたしまして,今回も関係団体からのヒアリングを行います。
それでは,そのヒアリングに先立ちまして,事務局から本日配付の資料について,説明いただきます。
【塩原主任大学改革官】  お手元の配付資料の御確認をお願いいたします。
本日の配付資料は,議事次第にございますとおり,資料1並びに資料2が丸1から丸9までの9点,そして参考資料1点となっております。
また,そのほか,机上配付の資料といたしまして,本日お越しいただいておりますヒアリング発表者の一覧を配付させていただいております。
なお,参考資料の委員名簿につきましては,この4月に一部の委員の先生方の所属,役職の変更があったことを踏まえまして,更新させていただいております。
以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
それでは,早速ですが,ヒアリングに入らせていただきます。
本日,10団体からのヒアリングを予定しておりまして,通常よりも長い時間をかけた会議という予定になっております。いずれにしても,なるべく効率よく進めたいと思いますので,是非とも御協力のほど,よろしくお願い申し上げます。
また,各団体様からは10分程度で意見を発表していただき,5分程度の質疑応答時間を設ける予定です。
また,関係団体ごとにセッションを設けておりまして,そのセッションごとにヒアリングを行い,まとめて質疑をすることにしています。
それでは最初に,大学関係の3団体から意見を発表していただきます。
まず,国立大学協会の高橋副会長,どうも本日はお忙しい中お越しいただきまして,ありがとうございます。それでは,よろしくお願いします。
【高橋氏】  それでは,国立大学を代表して,発表させていただきます。
資料2の丸1を御覧ください。
既に公表されました審議経過報告に対しまして,意見や希望,期待することを述べさせていただきますが,まず,総論の1番目についてです。
新たな高等教育機関は大学体系の一部をなす機関であるという位置付けが,審議経過報告の13ページにありますが,15ページでは,「近年の動向」として,高等教育段階における職業教育の制度的受皿の整備が一定程度図られたが,その後の実態として,平成26年度には,大学の進学率が51.5パーセント,短期大学5.2パーセント,高等専門学校0.9パーセント,専門学校22.4パーセントとなっており,一番大きい受皿は大学が担っているということが示されました。しかし,今回,新たな高等教育機関を設けることによって,高等教育機関への進学率を全体として高めていこうとするのか,あるいは高等教育機関全体の進学率は大きく変化させないが,大学,短期大学,高等専門学校,専門学校のそれぞれの進学者の比率を変化させることを目指しているのかが明確には分かりませんでした。我が国の高等教育全体の今後の方向性についてのビジョンを見据えた検討や,我が国の高等教育政策全体の中で,新たな高等教育機関がどのように位置付けられるのかについて議論が必要ではないかと思われます。
続きまして,高等専門学校制度との関係についてでございます。
審議経過報告の5ページには,高等専門学校の現状として,「理論的な基礎の上に立って実験・実習等の体験重視型の専門教育を実施することで幅広い分野で活躍できる実践的・創造的な技術者を育成しており,高い評価を得ている」とされています。大学体系に新たな機関が位置付けられていく場合,現行の大学と高等専門学校との間の境界線の在り方が大きく変化することが予想されるため,新たな高等教育機関の制度化の検討に当たっては,それと同時に,高等専門学校制度についても一体的に改革の方向性を検討する必要があるのではないでしょうか。
続きまして,設置基準の具体の内容については今後検討されるものとは思いますが,新たな高等教育機関に取り入れられる仕組みとして,インターンシップや実務家教員配置の義務付け等が挙げられています。これらは専門職大学院を含め,既存の大学等においても実行可能な仕組みでありますから,大学体系に位置付く新たな高等教育機関としてよりふさわしい仕組みを取り入れることで,その意義をより明確にすべきではないでしょうか。
続きまして,社会人の学び直しについてです。審議経過報告の9ページでは,「社会人の学び直し環境に関する課題と対応」として,現行の大学における課題の背景が説明されています。新たな高等教育機関が社会人にとってアクセスしやすく,多様な学び直しの機会を提供するためには,従来の大学における学び直し環境に係る課題を解決する方策の検討が必要であるとともに,現行制度の機能分化をいかに図るかが必要であると思います。
続きまして,制度設計等についてです。新たな高等教育機関においては,実践力強化に重点を置いた職業教育を推進するとされていますが,産業構造の変化や職業の盛衰のスピードが増し,雇用も流動化する状況に鑑みますと,分野を特化した実技教育に重点を置く人材養成機関としての存在意義というのは短命に終わる懸念があります。また,他分野への転向が柔軟かつ迅速に行えないのではないかといった懸念も同時に生じてくると思います。新たな高等教育機関は,他分野への転向や人材の流動性にも柔軟に対応することが可能になるような機関とするべきではないかと思われます。
審議経過報告の21ページに,「他の高等教育機関等との連携」として,新たな高等教育機関の教育の機会は,既存の大学等の在学生,卒業生に対しても,個々のニーズに応じて積極的に提供することが期待されるとありますが,転学や単位互換のみならず,キャリアデザインの観点から,新たな高等教育機関が周辺地域のハブ機能を発揮し,リソースの共有等を通じ,既存の大学等におけるキャリア教育の実質化への貢献を期待したいと思います。
質保証システムの仕組みとして,23ページに,「その学校設置認可は,新しい基準の下,適切な審査体制により実施されるものとすると同時に,大学体系に位置付くとともに,産業界と連携して教育を行う機関として,情報公表や評価についても,相当の水準を求める必要がある」とあり,その質保証の仕組みとして,質の高い,実践的な職業教育を担う機関としてふさわしい設置基準等を設定し,新たな高等教育機関が一段低い高等教育機関と見られることにならないよう,的確な審査体制を整えることとされていますが,どのような設置基準となるかということについて,具体性に欠けているのではないでしょうか。
25ページでは,設置形態として,既存の大学・短期大学を設置したまま,当該大学,短期大学の一部の学部や学科を転換させること等により,新たな高等教育機関を併設することを可能とする必要があるとされていますが,新たな高等教育機関の設置基準は,現行の設置基準に比べ,事実上の規制緩和となることが予想されます。このため,新たな高等教育機関が国際的な通用性を担保するとともに,既存の高等教育機関と同様に位置付けられるようにするためには,厳格な質保証システムが構築される必要があると思われます。厳格な質保証が実施されない場合,日本の高等教育全体の質が低下するおそれもあると思われます。
次に,三つのポリシーの明確化についてですが,入学者選定については,審議経過報告の21ページの「入学者の受入れ」の項目で,多様な入学希望者が想定されると言及されていることから,高等学校卒業者や社会人等,知識や経験が異なる多様な入学希望者に応じたアドミッション・ポリシーを明確化する必要があるとともに,高大接続システム改革と一貫性を持って,それぞれカリキュラム・ポリシー,ディプロマ・ポリシーについても併せて明確にする必要があるのではないでしょうか。これにより,教育の質の保証にもつながるのではないかと思っております。
続きまして,学位の種類・表記についてですが,審議経過報告の24ページにおいて,授与する学位の種類・表記については,実践的な職業教育の成果を徴表するものとしてふさわしい設定の方法を検討するとあり,また,新たな高等教育機関の修了者に授与する短期大学士相当の学位については,現行の短期大学における短期大学士の学位,高等専門学校における準学士の称号との関係にも留意しつつ,その在り方を検討する必要があるとされています。また22ページには高等教育機関としての質保証と国際的な通用性の担保として,実務家教員の質の担保や適切な質保証の仕組みを整えることを強調していることを鑑みますと,学位の種類,表記の検討に当たっては,グローバルな視点で,それが実践的な職業教育の成果を徴表するものとして認識されるように留意する必要があります。
最後になりますが,財政措置についてです。審議経過報告の25ページでは,「新たな高等教育機関に対する財政措置については,実践的な職業教育を行い,専門職業人材の養成を担う高等教育機関としてふさわしい措置の在り方について,検討する必要がある」とだけ示されております。新たな高等教育機関のための予算措置がなされず,日本の高等教育予算の全体的枠組みが変わらない,むしろ漸減していくといった場合には,既存の大学に充てられる予算が大きく削減されることにもなりかねないため,新たな高等教育機関に対する財政措置については,既存大学に充てられる予算の削減につながらないよう,慎重な検討をお願いいたします。
また,新たな高等教育機関は,産業界,地域等との協働による教育の推進を想定するものであるので,産業界・地域等からの財政的支援を要件とすることも検討されるべきではないでしょうか。
以上,駆け足でございますが,意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございます。
【永田部会長】  高橋副会長,どうもありがとうございました。
次は公立大学協会からです。
清原会長,お忙しいところお越しいただき,誠にありがとうございます。それでは,御意見の発表をお願いいたします。
【清原氏】  公立大学協会会長の清原でございます。本日はこのような意見陳述の機会を与えていただき,ありがとうございます。私の方から,3点ほどに絞って,口頭で端的に申し上げます。
新たな高等教育機関については,仮に専門職業大学と呼ばせていただきまして,1点目としては,この専門職業大学の設置につきまして,審議経過報告によりますと,実践的な知識と学術的な知識を共に教育,教授していくということですが,この理念については大変評価しております。といいますのは,既存の大学における専門的な知識ないしは実践的な知識と学術的な知識との兼ね合いについては,現在,非常に多様な試行が行われていますが,このような専門職業大学の理念を端的に打ち出すことによって,既存の大学教育に対する大きなインパクトになるからです。
一方で,既存の教育機関との関係が,この審議経過報告ではまだ明確でない印象を持っております。
例えば,大学や短期大学,専修学校から専門職業大学に移行することができるという記述はございますが,高等専門学校との関係は必ずしも明確に記述しておりません。それから,この専門職業大学設置の現実的な意図,例えば,専修学校等の大学への移行を目的としたものなのか,あるいは職業訓練機関・施設等も視野に入れているのかといった,この辺りの現実的なターゲットが,まだ十分見えてこないという点がございます。以上が第1点です。
2点目は,この専門職業大学はどのような分野の人材を育成しようとするものかということです。この審議経過報告では,分野としての限定はしないと書いてありますが,例示は必要であろうと思います。といいますのは,既存大学の中で,職業に関連した学部・学科等がたくさんございます。例えば,公立大学におきましても,医療・看護系,あるいは栄養系,福祉系,教育系といった資格や免許に関連した学部・学科におきましては,以前から相当,意識的に職業的な知識が教授されております。このような既存の大学と専門職業大学で重なると思われる分野,その関係の整理は必要かと考えます。
審議経過報告の中にも,この専門職業大学が一段低い大学と見られないようにという記述がございますが,私も全くそのとおりだと思います。それだけに,この既存の学部・学科等との関係を明確化していく必要があると考えております。
3点目です。社会人の学び直しという考え方が強く出ておりますが,このことは非常に高く評価しております。とりわけ現在職業に就いておられる社会人の学び直しという,この理念は大変重要であろうと考えております。
その一方で,職業に就きながら大学で学ぶということは様々な課題が伴います。その一つは,例えば,平日,職業に就いている社会人が,いつ,どのようにして大学で学ぶのかということです。社会人が大学で学ぶためには,土曜日開講を大学の方で用意する等の条件整備が必要になってまいります。あるいはまた,企業や関係団体の方でも,そのようにして学ぼうとする社会人をバックアップするような措置が必要になってくると思います。つまり,企業と大学双方において,この社会人の学び直しという点について合意が成立する必要があると思っています。また,そのようにして学ぶ社会人に対して,その学びのキャリアを評価する仕組みも必要ではないかと思います。要するに,こうした社会人の学び直しを進めていこうとすれば,専門職業大学のいわゆる設置基準の中に,そのようなことを盛り込んでいくということが必要ではないかと思います。既にこの審議経過報告の中では,前期課程・後期課程の区分といった非常に斬新な発想も盛り込まれており,これも高く評価しているところですが,是非,この社会人の学び直しの推進という点についても実現していただきたいと思います。専門職大学院等でもかなりの実績を積んでおりますが,こうしたことが,また大学,学部レベルで行われれば,我が国の高等教育に与える大きなインパクトになるだろうと考えております。
以上3点申し上げました。資料がなくて申し訳ありませんが,口頭で発表させていただきました。
以上でございます。
【永田部会長】  清原会長,どうもありがとうございました。
引き続き,日本私立大学団体連合会から,東海大学観光学科の松本教授に発表をお願いします。松本教授,お忙しいところ,どうもありがとうございます。それでは,御意見の発表をお願いいたします。
【松本氏】  それでは,日本私立大学団体連合会の意見を述べさせていただきます。
資料2の丸2を御覧ください。
本審議経過報告の第1章で述べられていますように,現在,グローバル化の進展とともに,産業の高度化,産業構造の転換が急速に進みつつありますが,その中で,我が国の少子・高齢化の進展は,今後の我が国の経済の国際的競争力維持に不安を投げかけている要素であると言えます。
こうした状況において,高等教育全般の充実ということが非常に大事になるわけですが,特に高等教育において,実践的な専門性を身に付けた職業人材の育成を図り,また,生涯にわたって学び続けることのできる仕組みを整えることは,今,我が国に求められているところであると考えられます。その意味で,本審議経過報告は傾聴に値するものでありまして,特別部会の皆様の御努力に対して敬意を表したいと存じます。
しかしながら,審議経過報告で述べられております新たな高等教育機関につきましては,様々な点で,まだ曖昧なところが多く,具体像を想起しにくいという問題がありますので,以下4点に分けて,お話をさせていただきたいと思います。
1点目は,専門職業人材が必要とされる分野,養成すべき人材像,育成すべき人数等,新たな高等教育機関設置の前提についてでございます。
第2章の「高等教育における職業人養成の現状と課題」の中におきまして,平成23年1月の中央教育審議会で答申が出された際の委託調査の推計を基に,福祉,IT・情報サービス,コンテンツ,観光等の分野で相当量の人材ニーズがあると述べられていますが,こうした例示にとどまるのみで,どのような職業,あるいは産業分野に関わる人材を育成するのかが具体的に提言されていません。
それから,第3章の「新たな高等教育機関の制度化の方向性」では,「養成すべき人材像」として,三つの観点からその人材像について述べられていますが,いずれも抽象度が高く,具体的な人材像が不明確ではないかと思います。養成すべき人材像は職種・産業によって異なり,いかなる職種・産業で,どのような人材を育成すべきかを具体的に検討され,提言されることが必要ではないかと思います。
さらに,様々な職業,あるいは産業分野において,今後,我が国が,毎年一体どれくらいの数の専門職業人を高等教育機関で養成しなければならないかという見通しが全く述べられていないということも問題ではないかと思います。
第4章において,設置認可審査に際しては,設置構想全体が社会的ニーズ等を反映し,学生確保,人材需要の見通し等の面からも,十分,現実性が認められるものであることを確認すると述べられておりますが,このような確認を行うためには,国が必要人材数についてビジョンを持っていることが必要ではないかと思います。この点について,既に我々は法科大学院で,この需給関係に対して同期させることができなかったという問題を持っておりますので,需要を的確に試算することが必要ではないかということを,まず申し述べたいと思います。
2点目は,現行の大学・短期大学との関係についてです。
第3章で述べられていますが,新たな高等教育機関については,教養や理論にも裏付けられた実践力を育成するものであることを踏まえれば,大学体系の一部をなす機関として,その制度の設計を図り,従来の大学と同等の評価を得られるようにすることが適切であると述べられております。そしてまた,第4章でも,その制度設計について説明されておりますが,これらはおおむね現在の大学や短期大学でも実施されていることではないかと思います。なぜ新たな高等教育機関を大学体系の一部として制度化しなければならないかについて,説得力のある説明がなされているとは言い難い状況でございます。
本審議経過報告にも記述されており,皆様,御承知のとおりでございますが,例えば,平成23年の大学・短期大学設置基準の改正によって,いわゆる職業教育が大学・短期大学に義務付けられております。平成27年度には「職業実践力育成プログラム」が創設され,文部科学大臣が認定することになりました。また,平成17年の学校教育法改正によりまして,「教授は,専攻分野について,教育上,研究上」だけではなくて,「又は実務上の特に優れた知識,能力及び実績を有する者」とされ,実学を標榜(ひょうぼう)する学部・学科においては,既に実務家教員を採用して,専門職業人の育成を行っている状況でございますし,社会人の学び直しにも対応できるように,多くの大学で昼夜開講等の措置が行われているという現状がございます。
25ページの方には,既存の大学・短期大学が実践的な職業教育の専攻を新たに開設し,アカデミックな教育と,より実践的な教育とを共に提供していけるようにすることも,有益と考えられると記されていますが,既に大学・短期大学がそういった方向で動いていることも確認していただきたいと思います。
したがって,現行の大学・短期大学との差異を明瞭にすることができないままに,新たな高等教育機関を大学体系の一部として発足させることは,混乱を招くのではないかと憂慮されます。
3点目は,新たな高等教育機関の制度設計と産学連携についてでございます。
今述べましたことと密接に関わることですが,新たな高等教育機関の制度化,設置認可審査,教育課程の編成・実施並びに認証評価等々が,現行の大学や短期大学を基準としているように思われます。そのため,実務家教員,あるいは研究能力を併せ有する実務家教員の割合に関する基準を除くと,新たな高等教育機関の特性が明確であるとは言い難いのではないかと思っております。そして,この新たな高等教育機関の実効性のある実現のためには,企業等や産業・職能団体,地域の関係機関との連携というのが,生命線と言えるほどに不可欠となりますが,その実現のための方策に具体性がなく曖昧ではないかという問題がございます。
4点目は財政措置についてですが,現行の大学・短期大学を対象とする我々私学の立場で申し上げますと,この新たな高等教育機関に対する財政措置は,私学助成の枠内において措置されることがあってはならないと思っております。現行の私学助成と別立てによる助成制度の創設は,新たな高等教育機関の充実・発展,それから現行の私立学校振興助成法が定める同法の目的の貫徹のためにも不可欠ではないかと思っております。
以上,まとめて申しますと,最初に述べましたように,質の高い専門職業人養成のための新たな高等教育機関の制度化に対する提言というのは一定の必要性を認めることができますが,この制度化を行っていくための前提としての具体的な現状並びに将来の傾向分析がなされていないということ,それから現行の大学・短期大学と異なった高等教育機関としての特性が明確に示されていないこと,この2点が惜しまれるところでございます。
更に申しますと,新たな高等教育機関の名称,学位の種類,表記,この機関の設置基準にふさわしい助成水準,追加財政需要に見合った財源など,平成27年3月に公表された有識者会議の審議のまとめで成案を得なかった事柄の検討が進んでいないということがございます。そしてまた,新たな高等教育機関の設置までの具体的スケジュールが不明確ということも問題ではないかと考えられます。こうした4点につきまして,今後,具体的な検討を行っていただきまして,これまで成案が得られていない諸点についても,具体的な案を提示していただくように望みたいと思います。
以上でございます。
【永田部会長】  松本教授,ありがとうございました。
それでは3団体からの御意見を伺いました。今度は委員の方から御質問等がございましたら,なるべく簡潔な御質問としていただければと思います。それでは,金子委員,どうぞ。
【金子委員】  ありがとうございました。今,御発表いただいた御意見はどれも大変重要な論点を含んでいると思います。
少し先走ってしまい,申し訳ないのですが,松本教授から御発表いただいた私立大学団体連合会としてのお立場の御議論も,大変重要だと思いますが,肩書を拝見いたしましたら,東海大学の観光学部の先生でいらっしゃるということです。
この特別部会でも,ホテル業界の人材不足について議論があり,確かに,これが成長産業であることは事実であろうと思います。
ホテルというのが一つの新しい人材需要のフィールドだとしますと,この特別部会でも,その教育というのが四年制大学ではできないのかどうかという点について議論がありました。多くの方は,できるという方でしたが,一方で,既存の観光学部ではホテルマンの養成などというのはできない,新しい高等教育機関のような枠組みでなければできないという御意見もありました。実際に観光学部で教えていらっしゃる先生として,そういった議論についてどのように考えられるかをお伺いしてもよろしいでしょうか。
【松本氏】  私どもの観光学部,観光学科というところは,今,教員は15名おりまして,その中の4名は,いわゆる実務家教員です。また,実務と研究の両方とも行ってきたという教員が2名おります。そういった形で,かなり職業的に専門化された教育も行っておりますが,大学でございますので,教養教育の充実,あるいは観光に関する学問的な充実ということを目指しております。そうした面から申し上げますと,今,ホテルの実技教育というところは,なかなか大学では行いにくいところがございまして,それは確かに金子委員のおっしゃるとおりです。例えば,大学の中でベッドメイキングをすることなどは非常に大きな抵抗がございます。
それでは,我々はどのように実技教育を行っているかと申し上げますと,専門学校と契約を結びまして,ホテル就職希望者に対しては,インターンシップも併せながら,夏休みを中心として委託的な教育を行っていただいています。ただ,それは飽くまでも補助的なものであって,そのような補助的なものをプラスする形で,アカデミズムも併せ持ったような観光学教育というものを私どもは行っているところです。
ただ,ほかの大学,特に海外の大学というのを見ますと,ホテルの実践的な教育を行っている学部・学科は,たくさん存在するということも事実であります。ですから,大学で必ずしも行えないものではないと思いますが,ただ,それのみに特化すると大学教育ではなくなってしまうというところがありますので,ホテル関係に関しては悩ましいところがあるのは確かです。
以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
寺田委員,お願いします。
【寺田委員】  まず,国立大学協会の高橋副会長に1点お伺いします。
御提出いただいた資料の2ページの一番上,制度設計の部分の一つ目の丸についてですが,これは主として新たな高等教育機関の在り方について論及されている話だと思います。他分野への転向や人材の流動性に柔軟に対応するという点について,国立大学においても,先ほどの話を伺う限り,一定の職業教育的なことを行ってこられているわけですので,それとの関係として,新たな高等教育機関は非常に専門性の高い職業教育を追求していくべきという意味なのか,あるいは,他分野への転向,人材の流動性にも対応し得るように,割と幅広い職業教育を追求すべきだとお考えなのか,どちらなのかということをお伺いしたいと思います。
それから,もう一点,日本私立大学団体連合会の松本教授にお伺いしたいことがあります。大変恐縮ですが,資料2の丸2の2ページで,私立大学も職業教育を行っている根拠に関して,平成23年の大学設置基準の改正を挙げられていましたが,これはやや誤認ではないかと思います。職業実践力育成プログラムが27年度に創設されたというのは事実ですが,平成23年の大学設置基準の改正により,職業教育が大学に義務付けられたのではなく,正確にはキャリアガイダンスの実施の明確化です。先生の場合は,職業教育とキャリア教育について,よく似たものとお考えなのか,あるいはある程度違うものとお考えなのか,どちらなのかということをお伺いしたいと思います。
【永田部会長】  それでは,高橋副会長からお願いします。
【高橋氏】  新しい高等教育機関の非常に特殊な領域,狭い領域の人材を育てていくとする制度設計は,その領域やその技術が世の中に必要とされる期間が短くなる可能性があるという点に課題があるので,それらが世の中に必要とされなくなったときに,柔軟に対応を切り換えられるシステムを用意するべきではないかということと,新たな高等教育機関で育成された人材が,新しい他分野にも挑戦できるような仕組みを作っていきたいということでございます。
現在,国立大学において,学部の垣根をなくすことで,流動的な仕組みを作りつつありますが,新たな高等教育機関においては,その流動性を更に増していただきたいと思っております。
【永田部会長】  ありがとうございます。
続いて,松本教授,お願いいたします。
【松本氏】  寺田委員のおっしゃるとおり,平成23年の大学設置基準の改正は,キャリアガイダンス実施の明確化ということで承知しておりますが,私自身,キャリア教育と職業教育が全く同一であるとは考えておりません。なぜキャリア教育を行っていくのかというのは,自立した職業人として,社会で生活ができるようするためと考えております。いわゆるキャリア教育の先にあるものが,職業観の育成ということであり,これは職業教育にもつながるものだという認識でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
それでは,麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】   今,寺田委員から御質問のあった実務力・実践力強化に重点を置いた職業教育と,他分野への転向に関する流動性の問題に関して,専門教育,実践的な特定の分野の教育をするということは,今回の制度化においては重要な部分だと思いますが,関連して,現行の大学において行われている基礎教養や一般教養教育というのはそもそもどのような役割を果たしているかという点について,お尋ねしたいと思います。
【高橋氏】  本学は新潟県という地方にある総合大学で,9学部あるのですが,学生の交流が盛んで,本学の授業は基本的に垣根がございませんので,所属学部以外の学部の授業であっても学ぶことができます。それから副専攻というものもございますので,一般的な教養教育で他の専門領域を学んだ人間は,卒業後の進路も非常にバリエーションに富んだものになっていると考えております。卒業後の就職先等を見ると,例えば,医学部保健学科を卒業しながら,副専攻でマスコミュニケーション分野を学んで,放送業界に就職した卒業生がいます。教養教育として,他のいろいろな分野を学ぶことは,非常に意味があると実感しております。
【永田部会長】  ありがとうございます。
続いて,内田委員,どうぞ。
【内田委員】  従来の日本の大学というのは,基礎教育をしっかり行った上で,そこから実践的な教育を行って,卒業後,自分なりに社会に出てからも学ぶといったように,いろいろな仕掛けがあるということなのですが,一方でヨーロッパなどは,アカデミックな大学とは別に職業教育を行う機関を制度として設けており,学生は実践教育を先に行った上で,社会で一般的なことを更に勉強していくという形になっています。ただ,どちらも最終目標は同じところを目指すのであろうと思っております。このようにヨーロッパはいわゆる複線型であるのに対して,アメリカはどちらかというと大学中心のシステムになっているものと承知しております。
そこで,国立大学協会の高橋副会長にお伺いしたいのですが,日本の場合は,既存の大学は,一般教養や専門教育について,どのようなお考えをもって実際の教育をしておられ,最終的に,社会の必要とする人材をどのように育成しようとしていらっしゃるのか,この機会に少しお話しいただければ有り難いと思います。
【高橋氏】  今,大学では,教育が非常に長期化しているというのが全体の傾向だと思います。例えば,工学部は6年一貫や9年一貫になっているところもあり,薬学部や獣医学部も6年一貫になっております。かつての教養学部があればいいという話では絶対ないと思いますが,4年制,6年制や9年制であるとしても,専門科目を学びつつ教養科目も学ぶという教育が同時に行われながら,だんだんと専門性を深めていくべきだと思っております。従前,教育者は,自分の後任となる次世代の研究者を育成するという観点が強過ぎて,職業人を育成して社会に貢献してもらう人材を輩出するという意識が少し弱かったので,そのような意識の醸成に関して,学内の教員に対して繰り返し申し上げているのが現実でございます。
【永田部会長】  今の御回答は,高橋副会長だけでよろしいでしょうか。
【内田委員】  ほかのヒアリング御対応者の方々もお考えがございましたら御回答いただければと思います。
【永田部会長】  清原会長,若しくは松本教授,何か御意見があれば賜りたいのですが,いかがでしょうか。それでは,清原会長,お願いします。
【清原氏】  大学で行う教育は,一般教育や教養教育,それから専門教育の二つがあります。一般教育や教養教育については,今,各大学が非常に改革に努力しているところです。私どももアカデミックな知識を薄めて教える教育ではいけないということで,学生が幅広い見聞を獲得できるように,実践的かつ体験型・経験型の学習内容を盛り込む努力をしております。
専門教育に関しましては,実践的な知識に結び付くものというよりは,やはり高度な学問的・学術的な知識を教えていくことに偏っていると思います。そういう意味で,専門職業大学の考え方そのものは,大学教育に大きなインパクトを与える可能性があり,そのような点は非常に評価できると思っています。
この実践的な知識というものは,現場で蓄積されているわけです。現実の社会の中の職能団体,関係団体や企業等と大学が連携しなければ,教えることはできませんので,この連携が今後の社会においても非常に重要であると考えております。
もう一つは,学び直しですが,これは非常に大事だということを先ほど申し上げたつもりでしたが,言葉足らずだったかもしれませんので補足して申し上げます。以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
それでは,松本教授,御意見あればお願いします。
【松本氏】  大学教育の基本は,教養教育で,教養教育の上に専門教育を行っていくことであることは,言うまでもないと思います。ですから,この新しい高等教育機関の提言の中にも,教養に関する知の重要性がうたわれているものだと思っております。ところが,現行の大学を見ますと,特に,人文学系の学部や学科では,職業教育あるいは職業に関する実践的な教育というのが卒業までつながっていきません。一方で,観光学系や工学系であれば,職業的なところにきちんとつながった教育をしております。
この新たな高等教育機関においては教養教育と専門教育をどの辺りで線引きしてどのような形で教育していくか非常に難しい問題があると思いますので,今後の具体的な御議論を皆様方にお願いしたいと思っております。
以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
それでは,最後に千葉委員,お願いいたします。
【千葉委員】  簡単に御質問させていただきます。
国立大学協会の高橋副会長の資料の中で,新たな高等教育機関が国際的な通用性を担保するとともに,厳格な質保証システムを構築する必要があるという一文がございました。既存の大学と,今度の新たな高等教育機関につきましては,教育の目的が違いますが,厳格な質保証において,既存の大学と新たな高等教育機関で共通する部分あるいは共通しない部分のお考えがありましたら,少しお聞かせ願いたいと思います。
【永田部会長】  それでは,高橋副会長,お願いします。
【高橋氏】  新たな高等教育機関が国際的な通用性を担保するためには,国際的な通用性を持ったような専門教育を行う必要があると思います。国内の状況だけに対応するのではなく,例えば,今,ある領域でローカルな仕事に関するニーズがあるからといって,そのローカルな仕事の部分だけに特化したような専門職業教育を行うのではなく,やはりグローバルな視点で国際的な立場に立った教育というのが必要なのではないかということでございます。
【千葉委員】  つまり教育の中身が,国際的な通用性を担保するものになっているべきであるということでしょうか。
【高橋氏】  そうです。教育の質がグローバルな視点に立っているという意味で国際性というものが新たな高等教育機関には必要だと考えております。
【千葉委員】  つまり,ラーニング・アウトカムと,教育の目的が合致しているのかどうかということになるのでしょうか。
【高橋氏】  はい。
【永田部会長】  ありがとうございました。
それでは,大学3団体からの発表と質疑応答はここまでにさせていただきたいと思います。
高橋副会長,清原会長,松本教授,お忙しい中,誠にありがとうございました。
続いて,短期大学関係2団体から御意見を頂きます。先ほどと同様に,お二人から御意見を賜った後,質疑応答とさせていただきます。
それでは,最初に全国公立短期大学協会です。東福寺会長,村上副会長,お忙しい中誠にありがとうございます。
それでは,東福寺会長から御意見を賜ります。よろしくお願いいたします。
【東福寺氏】  全国公立短期大学協会会長の東福寺でございます。本日は村上副会長とともに参りました。
私からは,資料2の丸3に基づいて概略を説明申し上げました後,村上副会長から補足説明をいたします。また,委員の皆様方からの質疑に対しては,両名で対応させていただきます。
お手元にあります資料2の丸3を御覧ください。
まず,1ページの「公立短期大学の推移と現況について」ですが,ここでは公立短期大学が誕生した当初から,実学的な職業教育あるいは夜間教育,つまり社会人を対象にした教育などの社会的養成に即した教育を実施していることを申し上げたいと思います。
現在,全国公立短期大学協会に加盟している短期大学は全部で16校ございますが,分野で見ますと,保育士,栄養士,看護師あるいは教員等の職業に直結する分野と人文社会系などの教養系の分野から成り立っております。そして,各短期大学においては,キャリア教育,職業教育も積極的に実施しております。
また,前回のヒアリングで,大学・短期大学に入学する学生は,比較的,経済的に恵まれており,経済的な困難を抱えている学生は専門学校や専修学校に行くとの御発言があったと記憶しておりますが,公立短期大学に入学する学生は,同じように経済的な困難を抱えている学生が多数おります。そういう点では,学費が安くて良質な教育を受けることができる上に,資格を取得できることから公立短期大学に入学してくる学生が多いということを述べさせていただきます。
さて,2ページの「『審議経過報告』に対する意見」についてです。
会員校に審議経過報告に対する意見を求め,回答がありましたものにつきまして,その概要を項目ごとにまとめさせていただきました。
まず,第1章ですが,ここでの「職業人」というくくりですと,例えば,会員校の中の医療系の短期大学から,医療専門職は当てはまらないとの指摘がされております。
それから,第2章ですが,やはり医療専門職等に当てはまらない記載があることが一つあります。そして,もう一つですが,新たな高等教育機関の創設により,就職のミスマッチあるいは早期離職等の課題解決につながるとの記述があったと思いますが,必ずしもそう簡単にはいかないのではないかという懸念がございます。
ここで訂正ですが,今申し上げたところの1行下に,脚注1と書いてありますけれども,脚注2が正しいため,訂正いただきたいと思います。
また,社会人の学び直しにつきましては,大学だけの努力ではなくて,企業側あるいは国の制度的な支援が欠かせない課題であると認識しておりますので,御検討をお願いしたいと思います。
第3章ですが,やはりここでも,記載が医療専門職には当てはまらないと指摘がありました。また,高等教育機関で重視されている人格陶冶(とうや),批判的思考力あるいは判断力の育成といった視点が,十分に記載されていないと思われます。したがって,大学体系へ位置付けるのであれば,大学としてふさわしい最低限の施設・設備あるいは教員資格が必要ではないかと考えております。
第4章ですが,今までと同様の内容になりますが,幅広い教養教育,哲学,歴史学,文学などといった教養教育をもう少し重視していただきたいと思います。
最後に,審議経過報告の全体を通してですが,今回の制度改革案は,我が国の高等教育機関の性格を大きく変える可能性があると思いますが,少しその結論を急ぎ過ぎているように思います。そういう点で,3ページになりますが,本当に新たな高等教育機関を作る必要があるのかどうかが十分に納得できていないところです。
そして,今回の制度改革については,質の高い実践的職業教育がうたわれていますが,これが設置基準の緩和に走ってしまうと,我が国の大学の質の低下につながるおそれがあるのではないかと指摘しております。
さて,「3.制度創設を前提とした場合,考慮されるべき留意事項」でございますが,全体で5点にわたりまとめています。
まず,名称についてですが,大学・短期大学,それからこの実学重視の新しい高等教育機関がそれぞれ異なるものであるということがはっきりと分かる名称にしていただきたいという意見です。
それから,学位授与機関としての国際通用性については,やはり通用性のあるものとする必要がある一方で,日本語の名称については,実学重視の新しい高等教育機関が認めた学位であることがはっきりと分かるものにしていただきたいと思います。
続いて4ページ目に移って,設置基準の具体的内容についてですが,現行の大学・短期大学の設置基準を維持していただきたいということです。設置基準について,ダブルスタンダードになるのは避けるべきだと考えております。もし,どうしても現行の大学・短期大学と異なる基準が必要である場合には,その違いを明確にしていただきたいと思います。特に実務家教員の位置付けあるいは評価,教育内容における実習の位置付け,インターンシップの単位認定などについては,慎重に協議・検討を行う必要があると考えております。
次に,企業等との関係性ですが,企業等との連携は,新しい高等教育機関では必須であると考えていますが,飽くまでも連携であって,企業の論理を教育の現場にそのまま持ち込むことがないような仕組みを構築していただきたいと考えております。
最後に,質保証ですが先ほど申し上げたように,設置基準については現行のものを維持していただきたいと思います。それから自己点検・評価あるいは認証評価制度の導入,情報公開の実施が不可欠であると考えております。
なお,記載はしていませんが,三つのポリシーの義務化あるいはFD・SD活動の義務化についてもお願いしたいと思います。
村上副会長から何か補足あればお願いします。
【村上氏】  補足は特にありませんが,1ページの下の一番後ろの段の(3)のところで,卒業時点での状況に合わせて進路の選択ができるということを少し強調したいと思います。この新たな高等教育機関の審議経過報告書の中では就職・就業のミスマッチという言葉もありますが,私どもの短期大学の例を少し紹介させていただきたいと思います。小学校・中学校・高等学校でキャリア教育はされていると思いますが,高等学校を卒業して短期大学に入学してくる時点で,どのような職業が世の中にあって,自分がどのような職業に向いていて,その職業に就くためにどのようなものが必要かということが,分からないまま入学してくる高校生がたくさんいます。そのような学生たちに対して,短期大学の2年間を通して,こんな学問もあるということ伝えます。世の中にはこのような職業があると学び,その2年間で,また進路を変更することができるというメリットが短期大学にはあると思います。そのうち一つは,大学編入制度が挙げられます。ですから,ミスマッチは,ある程度,短期大学の部分では防げることがあると思います。
以上です。
【永田部会長】  ありがとうございました。
それでは,続きまして,日本私立短期大学協会です。関口会長,お忙しいところ,ありがとうございます。それでは,よろしくお願いいたします。
【関口氏】  日本私立短期大学協会の関口と申します。よろしくお願いいたします。
最初に,五つのカテゴリーをお示しいたしましたが,俯瞰(ふかん)的に,この審議経過報告を読ませていただくと,分からない点がたくさん出てきました。どのような背景から新たな高等教育機関が制度化されるのかについての疑問点がございましたので述べさせていただきます。
まず,質の高い専門職業人というのは,どのような職業人なのか,また,それが実践的な職業人ということになりますと,どのような職業が該当するのか,ということです。一般的に,職業というのは,すべからく実践を伴うものだと思います。その実践ということを考えますと,今,私どもが大学・短期大学でそれぞれ教育をしております実践的な内容,それに,10年ぐらい前に寺田委員が提唱されてから,何度か議論を交わさせていただいた人間形成としてのキャリア教育が,この職業教育の中には余り見えてこないので,是非見えるようにしていただければ有り難いと思います。
それから,2番目は,学士課程の問題です。アメリカのコミュニティ・カレッジにおいては,学士課程との単位互換や編入学が可能なAAディグリーと,主として職業に対応したようなそれ以外のディグリーの二通りのディグリーがありますが,今回の前期課程と後期課程を学士課程の中に組み込むという案は,新たな高等教育機関において,同じ教育課程の中で,二通りのディグリーを出すということを想定しているのでしょうか。1トラックで実施されたものに二通りのディグリーを出すということは,本来,国際的には通用しないのですが,そのようなものを作り出すということなのでしょうか。アメリカの例のように,前期課程の中に二つのトラックを設けて二つのディグリーを出すというお考えのようには読み取れなかったので,意見を申し上げた次第です。なお,職業専門課程の実施をしている職業実践専門課程の英語名称ですが,文部科学省で提出している資料を見ますと,ディプロマと表現されており,四年制課程のディプロマがアドバンスド・ディプロマと表現がされていますが,基本的にこれは成り立たず,ディプロマのアドバンスドは少し問題のある表記かと思います。
私自身,長年,アメリカのアクレディテーションの中で仕事をしていた関係も踏まえますと,今,国際的な通用性そのものが著しく欠如しているのではないだろうかと思いがしてなりませんので,この新たな高等教育機関の制度化に当たっては,その辺りの整理が必要であろうと思います。
そしてまた,もう一つ御検討いただきたいことがあります。今,我が国には,大学,短期大学,専門学校,専修学校,その他大学校などがありますが,学校種の数が多過ぎます。アメリカのアクレディテーションの関係者から,なぜ日本でこれだけたくさんの機関による高等教育が必要なのですかと質問を受けたことがあります。そこに新たな高等教育機関という新しい学校種が更に加わると,日本の高等教育機関の構成はどのようになるのか,私は疑問でなりません。既存の日本の高等教育機関の学校種の多さという問題をクリアにした上で,新しい高等教育機関の位置付けをお考えになるべきだと思います。
同時に,先ほど全国公立短期大学協会の方からお話がありましたように,高校生が進学先を含め,自らの将来について混乱している状況を改善するためには,どこで学べば希望する力が付くのか,どのようなトラックが用意されているのかを整理して明示しなければならないと思います。
これから御検討なさる名称についても,新たな高等教育機関は本当に大学でよいのでしょうか。大学というカテゴリーと大学以外のカテゴリーは全く違いますので,その辺りの御検討をお願いしたいと思います。
そしてまた,実務家教員やプラクティカルな分野に対する評価の在り方をどのようにお考えになるのでしょうか。まず実務の中で,働いてこられた方の実務業績に対する評価がなければいけませんし,分野の設定の仕方によっても用意できる実務家教員が大きく違ってくると思います。分野の在り方についても明確にされて,教員の資質向上の観点からも,教員の評価基準がきちんとされることを期待したいと思います。
専門的な職業教育ということを充実させるためには,実務家教員が一定程度必要であり,その位置付けは大変重要ですので,御検討をお願いいたします。
最後に,是非,図書館だけはきちんと作っていただきたいと思います。その理由は,私が拝見した国内の大学で,専門学校から転換してきたところの図書館が余りにも不備が多過ぎるためです。日本の若者のため,学生のための教育環境をどう整えるかが大きな課題ですので,御検討のほど,よろしくお願いいたします。
財政的な措置については,既に他で御発言がございましたので,意見は重ねません。
以上です。
【永田部会長】  御発表,どうもありがとうございました。
それでは,簡潔に御質問等をお願いいたします。
それでは,岡本委員,どうぞ。
【岡本委員】  公立短期大学協会の東福寺会長にお尋ねしたいと思います。
資料2の丸3の3ページの上から7行目の「今回の制度改革については,質の高い実践的職業教育をうたいつつも,実質は『設置基準緩和』による新しい教育機関制度の設立を目指すものであれば,我が国の大学の質も低下につながるおそれがある」と記載されています。今回の特別部会では,具体的な設置基準について決定したものは一つもないと思っておりますが,その上で,懸念される設置基準緩和による質の低下とは,具体的にどのようなことを指しているのかお聞きしたいと思います。
以上です。
【永田部会長】  東福寺会長,お願いいたします。
【東福寺氏】  まず一つは,その前の方で申し上げた,教養教育を是非大事にしていただきたいことと関係してくるのですが,今,私立短期大学協会の関口会長もおっしゃったように,図書館あるいは様々な施設・設備を是非しっかりと整備していただきたいということです。
それから,教員の資格審査についても,是非厳密に行っていただきたいことが二つ目です。
【永田部会長】  ありがとうございます。
そのほか,御質問はいかがでしょうか。長塚委員,どうぞ。
【長塚委員】  公立短期大学協会の村上副会長から,高校生の進路選択がうまくいっていない場合に,短期大学では進路変更に対応できるとの御説明がございました。確かに高校在学時に将来を見据えて大学あるいは短期大学の学部・学科を選択していくのですが,必ずしも,そこで学んだことを生かしていない職業に就いているケースが非常に多く,少し残念に思います。村上副会長にお伺いしたいのですが,高校生がより専門的な分野に特化したような大学あるいは短期大学を選ぼうとすると,進路選択を誤ってしまうケースが更に多くなるのではないかとの御懸念を持っていらっしゃるということなのでしょうか。
【村上氏】  そうではありません。公立短期大学は,学校数が減少しており,今存在するのは,保育,栄養士,看護師,教員を養成するための学部と,そのほか人文社会系の学部です。保育士,栄養士,看護師などを養成する学部に進学する高校生は,高等学校時代に自分の進路を十分考えて,資格を取って,職業に就きたいと思って,進学してきています。そのほかの人文社会系の学部の学生のことを,私は先ほど申し上げたつもりでございました。
【永田部会長】  ありがとうございます。
永里委員,お願いします。
【永里委員】  資料2の丸3について,御質問します。
4ページ目の,企業等との関係性の項目に,企業の論理を教育現場に持ち込まないでほしいと書いてありますが,企業人として,大学関係者から見た企業の論理とはどういうことなのかを具体的にお聞きしたいと思います。
【東福寺氏】  私も企業人になったことはないので,なかなか難しいところですが,感覚としては,大学は大学として,専門教育のほかに教養教育なども大事にしていることを企業の方にも理解していただきたいということです。うちの企業にはこういう学生が必要なので,是非これを教えてくれといった圧力的なものを掛けないでいただきたいという意味合いでございます。
【永里委員】  分かりました。企業側も,教養は重要だと言っておりますので,両者の認識は一致していると思います。
【永田部会長】  寺田委員,どうぞ。
【寺田委員】   公立短期大学協会の東福寺会長にお伺いしたいと思います。資料2の丸3の3ページで,新たな高等教育機関の名称に関して,これだけたくさん制限されてしまうと付ける名称がないという気がしてしまいます。専門短期大学という名称について,短期大学という名前を名のると,法令上差し障りがあることは理解します。あるいは専門職大学院との関係で,専門職大学というとやや紛らわしい印象を与えるかもしれません。しかし,専門大学というのは国際的にもたくさんありますし,法令上,専門大学という学校種は現在,我が国においてありませんので,特に中等教育の職業教育と高等教育の職業教育をつなぐ観点からすると,極めて普通の話かと思っております。したがいまして,今回の御意見の趣旨は専門短期大学を名のるべきではないということでよろしいかというのを確認させていただければと思います。
【東福寺氏】  私どもの立場としては,短期大学協会ですので,専門短期大学という名称は是非避けていただきたいと思いますが,趣旨としては,実践的な職業教育を行う高等教育機関であることがはっきり分かるような名称にしていただきたいということです。御検討,よろしくお願いしたいと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
そのほか,いかがでしょうか。
それでは,東福寺会長,村上副会長,関口会長,本当にお忙しい中,ありがとうございました。貴重な御意見を賜りましたので,今後の議論に役立てたいと思います。
それでは,続いて,高等専門学校連合会からのヒアリングに移ります。新田副会長,お忙しい中,お越しいただきまして,誠にありがとうございます。
それでは,御意見を賜りたいと思います。
【新田氏】  御紹介いただきました高等専門学校連合会の副会長をしております新田です。本日は,会長が海外出張中のため,副会長の私が説明させていただきます。私は,国立高等専門学校の鈴鹿工業高等専門学校及び鳥羽商船高等専門学校の校長もしております。資料2の丸5に高等専門学校連合会の概要を示しておりますので,御覧いただけると有り難いと思います。私から6点ほど,お願いも含めて申し述べたいと思います。
1点目は,新たな高等教育機関の制度を見ますと,高等専門学校の教育内容と非常に似ているというのが実感です。そのため,教育内容については,高等専門学校との違いを明確に打ち出していただくとともに,中央教育審議会において,高等専門学校の在り方についても検討していただきたいということが1点目の内容です。
よく似ているといいますのは,高等専門学校は15歳から20歳までの5年一貫の教育を行っております。その上に専攻科が2年間あり,それを含めますと7年一貫ですが,高度専門的,創造的,実践的技術者を育成するのが高等専門学校のミッションです。ミッションを達成するために,実習,演習,インターンシップ等を行うとともに,教員には実践的な職業教育を担う実務家教員も相当数入れております。学位を持っている教員も過半数以上おります。したがって,教育内容,教育課程が新たな高等教育機関と非常に似通っているので,期待する面が非常に強いわけではありますが,一方でそのミッションというのを高等専門学校との違いにも留意の上,具体的かつ明確に打ち出していただきたいというのが一つでございます。新たな高等教育機関では,高等専門学校にない分野もあるでしょうし,大学でもできないような内容を特色として出していただけたら有り難いと思います。
それから,高等専門学校制度は創設されまして,もう50年以上になりますが,進化する高等専門学校として,次の50年を見て,今進めているところです。その中の重要な柱の一つに,専攻科の学位授与の権限の問題があります。専攻科が設置されて20年以上もたち,一定の役割を果たし,多様な卒業生を輩出している一方で,各校で独自に学位授与の仕組みを作りながらも,大学並みの学位授与の権限はいまだないというのが現状です。中央教育審議会において,この新たな高等教育機関ができる機会に,高等専門学校の位置付けや在り方についても検討していただけたら有り難いと思います。
2点目は,新たな高等教育機関の教員数や施設整備等の基準に関することです。審議経過報告の関連データの中で,大学,短期大学,高等専門学校,専門学校を比較されておりますが,新たな高等教育機関の教員数や施設整備等の将来の設置基準を検討するときに,高等専門学校のデータがない部分もあり,比較対象から除かれているような気がしております。先ほども申し上げましたが,新たな高等教育機関は,ある意味で高等専門学校を上回るようなミッションを持つ機関かと思いますので,大学,短期大学の水準を踏まえつつ,より高い水準で設置基準を設けるよう,制度設計をしていただけたら有り難いと思います。
3点目は,通信制課程の設置について検討していただきたいということです。高校,高等専門学校,短期大学,専門学校卒業生の社会人が働きながら学ぶことができるようにする一つの方法としては,通信制は非常に大きな役割を果たすのではないかと思っております。教材を通信制に即した教材にするのももちろんそうですが,社会人もこの新しい高等教育機関には多数入ってくると思いますので,社会人のインターンシップについては工夫が必要かと思います。社会人学生のインターンシップは,従来の高等専門学校や大学での専属の学生のインターンシップとは違った意味合いが出てくると思います。例えば,働きながら学ぶという点に関して,自らの企業でのインターンシップというのも,一つあり得るのではないかと思います。もちろん,評価は当然公平にする必要がありますが,いろいろな問題点を含めてこれから更に考えていただけたら有り難いと思います。
4点目は,新たな高等教育機関や四年制大学に附属する高等専門学校,短期大学の専攻科の修了生に対して,新たな高等教育機関や四年制大学の学士の学位を授与できる仕組みを検討していただきたいということです。先ほど言いましたように,高等専門学校,短期大学の場合は,大学改革支援・学位授与機構で審査を受けて学位を頂く仕組みになっておりますが,今回,新たな高等教育機関を含めた四年制大学が附属的な高等専門学校,短期大学等を持つ場合には,親大学がそこの附属の機関に対しても学位が出せるような仕組みがあると非常にいいと思いますので,その辺りも検討していただけたらと思います。
5点目は,今までも幾つか出ておりますが,新たな高等教育機関に対する財政措置は既存の学校種に対する財政措置とは別に新しく措置していただきたいということです。既存の学校の補助金等が減らないように,新たな財政措置を考えていただけたら有り難いと思います。
それから,最後に文章上のことになりますが,審議経過報告の本文の25ページのところの「対象分野,設置形態,財政措置等」の二つ目の丸においては,既存の大学,短期大学が,新たな高等教育機関を併設できる,つまり,同じ設置者が二つの学校種を同時に持つことができる旨を言っているかと思います。これについては,既存の大学の中に実践的な職業教育を行う学部なり学科なりを新たに作ることにより,新機関を作るという意味になるということで解釈したいと思います。
つまり,新機関を併設するというときに,従来型の学科,学部という形で設置ができるということで理解したいと思います。
以上,6点申し述べました。よろしくお願いします。
【永田部会長】  新田副会長,大変ありがとうございました。それでは,御質問等をお願いいたします。
永里委員,お願いします。
【永里委員】  簡単な質問ですが,社会人の学び直しに関して,自社でのインターンシップというようなことをおっしゃいましたが,通常,社会人が学び直しするのは,自社で学べないから高等教育機関に行って学び直しをしたいと思うのではないかと思うのですが,その辺りについていかがでしょうか。
【新田氏】  そのようなケースもあるかと思いますが,私も大学でいろいろ,社会人にドクターを出してきた経験から踏まえると,自らの会社にプラスになるような格好で学位を取りたいとか,更に発展して,いろいろ勉強したり研究したりしたいといった人もいらっしゃいますので,そのような場合に十分対応していけたらいいかと思っています。
【永里委員】  学位の取得や新たな研究で自社に貢献したいということは大いに理解できるのですが,インターンシップをする際,社会人が自分の会社で行うことの意義についてお伺いしたいのです。自社でインターンシップをされる方というのは,その企業において,自分の学びたいこと,学びたい分野の技術や知識が学べない立場にある方ということなのでしょうか。
【新田氏】  新しい技術を研究し,修得する場合に,それはもちろん,他社でもいいのですが,自社においてであったとしても,社員としてではなく,新たな高等教育機関という学校やそこの教員の指導のもとで研究し,実践につなげていくという点で,意義のあるものかと思っています。
【永田部会長】  次,内田委員,どうぞ。
【内田委員】  先ほどのお話の前半の方で,学位が出せる機関になることが望ましいとおっしゃっていて,それは高等専門学校が大学化することを意味するのだろうと思うのですが,一方で,後半では,例えば,既存の大学と同じように,新たな高等教育機関が高等専門学校を持つことができるような前提のお話がございました。今,高等専門学校の5年制は,社会的にもかなり評価がされていまして,これは大変いい制度だと言われている一方で,高度化を目指すのには,やはり大学化あるいは大学と同等な位置付けというのも大変大事かと思っております。そういう意味では,高等専門学校もその一部は学位が出せるような機関にする,あるいは新たな高等教育機関になれるようにすることなどにより,高等専門学校の高度化を図る仕組みを作ってほしいという理解でよろしいですか。
【新田氏】  大学については,大学体系の中に高等専門学校を位置付けることはもう無理だと思います。ただ,本科,専攻科のラインで学位授与に向けた制度を設け,高等専門学校制度の充実を図っていくことは可能かと思いますので,高等専門学校の大学化とは別の議論として考えているということです。
【永田部会長】  ありがとうございます。そのほか,いかがでしょうか。
それでは,新田副会長,お忙しいところ,どうもありがとうございました。
次は専門学校関係から御意見を頂きます。全国専修学校各種学校総連合会から小林会長及び菊田事務局長においでいただいています。お忙しい中,本当にありがとうございます。それでは,御意見の発表をお願いいたします。
【小林氏】  本日はこのような機会を設けていただきまして,誠にありがとうございます。また,本特別部会が新たな高等教育機関の制度化に向けて鋭意御審議されておりますことに,改めて敬意を表する次第であります。それでは,全国専修学校各種学校総連合会としての意見を申し述べさせていただきます。
我が国が一億総活躍社会を目指していく上においては,一人一人の国民が能力の高度化,多様化を図って,生産性や付加価値を向上させていく必要があります。そのためには,全ての国民が専門的な知識,技能や変化に対応できる資質,能力を身に付けるための職業教育の重要性を評価し,そして,尊重する社会を形成することが大変重要であると考えております。そのことが,夢や希望を持って日々学んでいる若者,あるいはキャリアアップやキャリアチェンジを目指し学び直しを行っている社会人に対しても大きな励みと勇気を与えることになると確信しております。
そのためには,現在の我が国の単線型のアカデミック・ラインに並立して,実践的な職業教育の体系としてプロフェッショナル・ラインの柱を確立し,複線型の教育体系を構築することが必要であると考えます。現在,我が国が直面しているグローバル化や生産年齢人口の大幅な減少などの極めて大きな課題を踏まえると,この審議経過報告にあるとおり,産学連携を義務化した新たな高等教育機関の創設は緊急の教育政策であり,本連合会としては,その創設の方向性に全面的に賛同するところであります。
また,地方創生の観点からも,この新たな高等教育機関は地方に定着し,地域の強みを生かす人材育成の機能も求められます。したがって,小規模の課程を設置,運営しやすい工夫も凝らした制度とすることが大切であると考えます。このことは,各地域において既存の高等教育の資源の有効活用にもつながると考えます。新たな高等教育機関を大学体系へ位置付け,学位を授与する制度とすることについては,国内的,国際的通用性の観点から是非とも実現すべきことと考えております。
一方で,技能と学問の双方を結び付けた教育を行う高等教育機関として,実践的な職業教育に最適化した機関として新たに創設するものでありますので,そうした独自性が発揮できるような基準を設定することが大変重要であると考えます。制度設計の具体化においては,産業界,地域等との連携体制を構築できる基準とすることが重要で,引き続き審議を深め,詳細を整理することをお願いいたします。以上の観点に立ち,本連合会が重要と考える内容を整理しました。以下,簡単に御説明申し上げます。
まず,独自の基準の設定についてです。産学連携による実践的な職業教育に特化した新たな高等教育機関にふさわしい独自の設置基準を制定すべきであると考えます。新たな高等教育機関は,職業教育を行うことを制度的に義務付けられた機関であり,実践的な職業教育に最適化した高等教育機関として,独自の基準の整備若しくは,そうした特性に留意した基準の設定が必要と考えます。したがいまして,産学連携による取組の担保,そして,社会人学生への配慮,経済的困窮世帯の学生への配慮,実践的な職業教育の特徴といった観点を踏まえて,現行の大学,短期大学の設置基準と同等とすべきもの,また,同等とする必要のないもの,また,同等とすべきでないものを整理して,職業教育機関としてふさわしい独自の設置基準を制定すべきであると考えます。
次に,教員組織・教員についてであります。教員組織としては,実務家教員等の比率について,専門職大学院の比率を参考に一定割合以上配置する必要があると考えます。そして,教員については,特定の職業の実務経験,実務上の業績その他を基に,実務家教員等の質を担保されることが重要であり,その要件としては,実務経験年数に応じて,実務上の業績のほか,実務における専門的な研究経験や教育訓練に係る指導経験等についても考慮すべきであると思います。特に新たな高等教育機関の教員の研究活動については,本審議経過報告での御指摘のとおり,大学,短期大学の教員に求める研究活動と性格が異なることを前提とすべきと考えられます。
次に,教育条件あるいは質保証等についてでございます。小規模の基準の整備に当たっては,大学,短期大学の設置基準の収容定員を参考に設定されたいと思います。そして,運動場や体育館など体育施設は要件に加えないということ,そして,教育課程に体育が設定される場合は,公立の体育施設や民間のスポーツ施設等の借用を可能にしていただきたいということ,あるいは,校地・校舎等については,実践的な職業教育の特性を踏まえて,専門職大学院と同様,必要に応じた十分な規模を有する基準とし,大学,短期大学の基準を機械的に適用されないことをお願いしたいと思います。そして,質保証の仕組みとしては,実践的な職業教育の特性に応じた認証評価の導入を検討し,レベルの高い質保証を確立すべきであり,業界団体や企業,職能団体等の関係者が設置に関わる審査会に参画し,実践的な職業教育の質について客観的,公正な審査を行うことが重要と考えます。いずれにいたしましても,実効性の伴う設置基準にしていただきたいということであります。
最後に,その他の制度設計等についてでございます。学士課程相当の課程の後期課程の単独設置は認めるべきではないと考えます。また,産業界との多角的・密接な連携体制を組織的に整備し,教育活動の見直しに関する機能を実質化されることこそが重要であると思います。そして,新たな高等教育機関の名称については,既存の専門職大学院に倣い,社会的にも分かりやすい専門職大学とするのがふさわしいと考えます。
また,関係省庁の枠を超えて,人材養成について連携する産業界等の負担軽減,学生の経済的支援や従業員の能力開発を行う企業等の支援を推進されるようお願いします。将来的には,ドイツのデュアル教育システム等のような形を目指せればと思います。
そして,学習歴や,あるいは教育訓練の履歴を蓄積する統一的制度を整備し,その成果を累積して,学位につなげる仕組みを構築されたいということも申し上げておきます。
今,中小企業を含め,アジアに日本企業が展開している中で,アジアの若者においては,日本のものづくりをはじめ,専門的な職業教育を学びたいというものが非常に多くいるといいます。TPP等の先には,労働力の国際的流動性は,EUを見ても避けて通れない時代になってきていると思うわけでありますから,日本は特に少子化の中で,実質的な労働力の不足が生じることが考えられます。留学生にとっても,日本で専門的な職業教育を学び,国際通用性の担保されたディグリー,すなわちバチェラーやマスターが取得できれば,大変魅力的な制度かと思います。
我が国では,国内において,大学卒業後の就職で30パーセントが未就職,そして,入社3年で30パーセントが離職すると言われ,そして,大学卒業後3年のうちに60パーセントが再就職しなければならないという状況が20年間続きました。そういうことを踏まえ,早々に我が国独自の資格枠組みを構築し,EQFに倣い,アジア諸国をはじめとした各国の資格枠組みと広域的な連携を推進していただくべきであり,それは国際貢献の面からも必要であります。日本の職業教育を高度化し,国際通用性を持たせることは,国内だけではなく,アジアを含む世界の職業教育のハブ機能を備えることになるという点においても大変意義のあることかと思いますので,是非この制度は進めていただきたいと思います。
以上,専門学校側から審議経過報告に対する意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。それでは,委員から御意見,御質問等があればお願いいたします。
それでは,益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】  具体的にお話しいただきまして,どうもありがとうございます。私は,この社会,経済の変化に伴う新しい人材需要に対応した教育は非常に重要だと思っているものですから,どうしたらこれが実現できるのだろうという観点で,ずっとこの部会に参加をしていましたので,今回いろいろと具体的なお話を教えていただいたことに大変感謝いたします。
その中で,頂いた資料の3ページの教員のところについてですが,ここに,実務家教員というのは,「実務上の優れた業績のほか」,「『調査研究等の経験』又は『職業教育・職業訓練や能力開発の指導等の経験』等も考慮する」と書いてあります。
新たな高等教育機関が誕生した場合,実務家教員に関して,どこにポイントを置いて採用していくかというのは,各学校の物の考え方だと思うのですが,私は初めから余り細かく実務家教員の定義をつくってしまうと,逆に手かせ足かせになってしまうのではないかと思います。要するに,新しい制度を作っていくわけですから,社会,経済の変化に伴う人材需要に即応した教育ができるような形にするべきだと思いますが,教えていらっしゃる側からしますと,この点についてはどのようにお考えになりますでしょうか。
【小林氏】  ありがとうございます。益戸委員のおっしゃるとおり,この実務家教員の特定に関しては大変難しいところがあるのも事実だろうと思いますが,職業教育は,専門分野ごとに非常に幅広い分野があるわけで,そのような中で,実務家教員をきちんと規定の中に入れていただくことを考えた場合,例えば,私どもの専門学校の例でも,実務家教員は十数年の実務経験を有して,そして教員の研修を受けて,教育方法をきちんと学んだ上で私どもの学校で教えていただく制度になっているところ,そのような専門学校の現状や実態も踏まえた上で,今後の制度の検討を行っていただきたいということでございます。
益戸委員のおっしゃったことも含めまして,この点につきましては,今後の特別部会等で更なる御検討をしていただけましたら有り難いところだと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。そのほか,御質問はございますでしょうか。
それでは,安部委員,お願いします。
【安部委員】  御説明ありがとうございました。二つ質問があります。全国専修学校各種学校総連合会は,新たな高等教育機関を大学制度の中に創設し,国際的に通用性のある学位授与機関としての位置付けを図る機関として賛同するというお考えなのですが,同じ職業教育を今までおやりになって,高度専門士並びに専門士の称号をお出しになる機関である専修学校として,新たな高等教育機関と専修学校にはどのような違いがあるとお考えかということが1点です。
もう1点は,4ページから5ページに,後期課程を単独で設けることは認めないとお書きになっていらっしゃるわけですが,なぜ後期課程を認めないかということについて,もう少し具体的にお聞きできればと思いますが,いかがでしょうか。お願いいたします。
【小林氏】  まず,高度専門士や専門士の制度というのは,国が定めている制度で,国内だけしか通用しないという問題があります。ディグリー制度となりますと,国際的にやはり一定の質は担保されているということになりますので,その意味で全く異なるかと思います。日本で職業教育を受けて,ディグリー,あるいはバチェラーなり,マスターなりを取得すれば,当然,国際社会においても専門的な教育を受けてきたことが評価されることになるわけで,この国際社会の現在,世界のどこへ行っても,基本的には評価されるということにつながりますし,あるいは留学生が日本に来て,日本のこの新たな高等教育機関で学んだとしても,国際的に通用するディグリーをもらえれば,自国に帰ってもあるいはどこか他の国へ行っても,一定レベルの高等教育を受けたことの評価がなされるわけで,大変有用なことだと思います。日本の今の高度専門士あるいは専門士は国内でしか認知も評価もされていないので,国際通用性という点が大きな違いになるかと思っております。
そして,2番目の後期課程だけの設置はなぜ許されるべきではないのかという話ですが,やはり職業教育というのは,制度化に当たって,課程の体系性の確保や,あるいは段階ごとの出口水準の明確化などに留意するとともに,他の高等教育機関の制度との整合性を図る必要があると考えておりまして,その観点から考えたところ,後期課程だけを設けることは,言わばつまみ食いのような形で,特に体系的な教育が困難という点で問題かと考え,ふさわしくないのではないかという意見を述べさせていただいたところです。
【永田部会長】  ありがとうございます。
次,千葉委員,お願いいたします。
【千葉委員】  御説明,どうもありがとうございました。1ページの上から四つ目の丸のところで,アカデミック・ラインとプロフェッショナル・ラインの並立ということと,二つの教育体系を構築ということが書かれていますが,こちらの特別委員会で現在審議をしている方向性というのは,どちらかというと一つの教育体系の中を二つに割る,あるいは一つの教育体系の中身の枠を広げていくというような形に進んでいるように感じられるのですが,その辺りについて小林会長はどのようにお考えなのかお聞かせ願います。
【小林氏】  ヨーロッパでは,ダブルディグリー制度,要するに,プロフェッショナル・ラインとアカデミック・ラインとの並立,つまり高等教育の複線化が確立しているわけですが,我が国において,ヨーロッパ型の複線化を進めていくのか,それとも千葉委員がおっしゃったような形で進めていくのかというのは,この特別部会を含めて,国の考えや位置付け方次第かと思っております。ただ,複線化ということの重要性については,この新たな高等教育機関の制度化を検討いただくに当たって,非常に重要なことと思っておりますので,その重要性を御認識いただきたく意見を述べさせていただきました。
【永田部会長】  内田委員,どうぞ。
【内田委員】  先ほども御質問が出ましたが,3ページの教員組織や実務家教員のところの話なのですが,いわゆる研究能力を要するべきではないということはよく分かるのですが,やはり高等教育機関による教育というと,技能だけではなくて,人間教育や基本的な一般教育も大変大事だと思うわけでありまして,ここで求められている実務家教員というのは,そういった教育力は重視しないということなのでしょうか。つまり,実務家教員の数は一定数とされているところ,教養のような教育については,それ以外の教員が担うので実務家教員にはそのような素養は求めなくてよいというお考えなのでしょうか。
【小林氏】  新たな高等教育機関は,飽くまでも高等教育機関であり,初等中等教育を終えた人が進学するところであり,基本的には,ある程度の基礎教養は持っている人たちが学ぶ機関だと理解しております。そして,私どもの専門学校のように,都市にある専門学校においては,ほとんど大学を卒業した社会人の学び直しの学生が多いといった実態等も踏まえますと,この新たな高等教育機関に入学する学生というのは,一般教養は既に学んでいる人たちだと思うので,既存の大学のような一般教養を重視したような教育を行う教員組織ではなく,やはり職業教育,あるいは実務教育に注力した教育機関としての特性を出した教員構成なり,実務家教員の要件なりとすることが重要ではないかということを考えております。
【内田委員】  今の御発言についてですが,そもそも新たな高等教育機関に入学するには,ある種の基礎教育を受けているということが要件,入学資格というようにお考えであるというように捉えてよろしいでしょうか。
【小林氏】  高校卒業以上の人たちを高等教育として入れるわけですから,基本的にはそこまでの中で基本的な教養は得られていることが原則です。また,新たな高等教育機関は既存のアカデミックな大学とは異なり,実践的な職業教育を行うということを特徴ないし,ミッションとした高等教育機関ですので,その点を十分斟酌(しんしゃく)する必要があるかと思っております。ただ,分野や職種によっては,一般教養を含めた教養を更に高度化することについての教育も必要かと思いますので,それは各学校がカリキュラムを考える際に検討すればよいのではないでしょうか。
【永田部会長】  ありがとうございました。
それでは最後に,小杉委員,お願いします。
【小杉委員】  どうもありがとうございます。私も,資料5ページに書かれていた産業界との組織的な連携は必須だと思うのですが,専門学校の職業実践専門課程でも,このような連携が図られていると思います。職業実践専門課程における企業連携と今回の新たな高等教育機関における企業連携は同じような水準なのでしょうか,それとも,もう少し進んだものなのでしょうか。
【小林氏】  職業実践専門課程という文部科学大臣の認定課程が始まって今年で3年目になります。これは飽くまでも,新たな高等教育機関を作るための試行的な取組という位置付けでスタートしていることでありますから,新たな高等教育機関における産業界との連携というのは,これをやはり踏まえた上で,更に高度なものである必要があると思っております。先ほども申しましたように,新たな高等教育機関は国際通用性のあるものとして,ディグリー制を導入するということですので,ヨーロッパにおけるポリテク大学と言われている専門大学に類する制度として,また学位の授与がない専門学校とは異なるレベルの職業教育を行う機関として相応の産業界との連携ということが求められて当然かと考えます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
時間が参りました。小林会長,菊田事務局長,本日はどうもありがとうございました。それでは,ここまでとさせていただいて,次のセッションに移らせていただきます。
次においでいただきましたのは,産業教育振興中央会の冨岡専務理事です。本日はお忙しいところ,ありがとうございます。早速ですが,御意見の発表をお願いいたします。
【冨岡氏】  よろしくお願いします。産業教育振興中央会の冨岡と申します。意見の発表をさせていただく機会を頂きまして,ありがとうございます。
初めに,私ども産業教育振興中央会の紹介を少しさせていただきたいと存じます。私どもは,産業界と教育界の連携により,主に専門高校の充実,発展に取り組んでいる団体で,昭和11年に発足しております。戦前の実業学校,戦後の職業高校,そして今日の専門高校の振興をしてまいりまして,今年でちょうど80年目になります。私どもの活動を支えるために維持会員という組織を持っておりまして,その会員としては,学校,企業や教育関係団体などがございます。学校の会員でございますが,これは高等学校でございます。約1,800校が会員でございまして,高等学校の総数の3分の1強が会員になっています。すなわち,専門高校のほかにも,全部ではありませんが,総合学科,あるいは職業に関するコースを持っている普通科の高校も会員となっております。
また,教育関係の団体の会員といたしましては,全国農業高等学校長協会ですとか工業の校長会,商業の校長会,そのほか,水産,家庭,看護,情報,福祉といった専門分野ごとの全国レベルの校長会が会員となっておりまして,私どもは,それらの校長会といろいろな面で協力をしておりまして,本日のヒアリングに当たりましても,その校長会に意見を求め,当該意見を踏まえて,本日のヒアリングに臨んでいるところでございます。
さて,専門高校の卒業生でございますが,全体でここ数年,大まかに言って,毎年20万人程度でございます。卒業後の進路は,各専門の分野でばらつきはございますが,全体として就職率は50パーセント強,大学,短期大学,専門学校などへの進学は約45パーセントという状況でございます。進学する生徒たちの中には,高校で学んだ専門分野と違う分野へ進む生徒もいることはいますが,ほとんどは高校で学んだ専門を更に深めるために,関連する学校,学部,学科へ進んでおります。
そのことから,この報告書に示されております新たな高等教育機関の制度化につきましては,専門高校の生徒たちにとって,卒業後の進路の選択肢が増えることになり,歓迎するものでございますし,また,専門高校に活力を与えてくれることにもなりますので,専門高校の充実,発展につながってくれる制度として非常に期待をしているところでございます。
それでは,この審議経過報告の中身につきまして,各専門高校の校長会からの意見やお願いごとを数点まとめてまいりましたので申し上げたいと存じます。お手元の資料2の丸7として1枚物の資料が配られていると思いますが,この資料に沿って意見を述べさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
まず1点目でございます。審議経過報告の7ページに記載されております2の(1)「職業教育に対する社会全体の認識に関する課題と対応」のところでございます。これは極めて重要なことと受け止めております。中学校の進路指導あるいは保護者の意識においても,普通科の高校と専門高校に差があることは否めない事実でございます。このことからも,新たな高等教育機関を卒業した者と従来型の大学を卒業した者に対する意識,評価に差が出ないよう,制度化に当たっては,社会全体で積極的に取り組むことが大切だと思っておりますので,答申ではこのことを強く訴えていただければと思います。
そこで,同じ7ページのところで,1点,文章について御意見を述べさせていただきたいと思います。(1)の「職業教育に対する社会全体の認識に関する課題と対応」のところの四つ目の丸の頭の文章でございます。「これにより,職業教育に対する社会の意識にも変化をもたらすとともに,高校生の卒業後の進路選択においても」という文章がございますが,ここのところは,「高校生の卒業後の進路選択」ではなく,「中学生,高校生の卒業後の進路選択」とするのが適切ではないかと思います。専門的な職業教育というのは,高等教育の段階からだけではなく,高等学校の段階から行われております。高等学校の段階からその職業教育を行っております専門高校の立場からは,中学校卒業段階で将来の職業についての意識を持つべきもの,また,持たせるものと思っておりますので,ここのところは「高校生の卒業後の進路選択」ではなく,むしろ中学生の卒業後の進路選択と言ってしまう方がより適切ではないかとも思っておりますので,御検討をお願いいたします。
次に2点目でございますが,新たな高等教育機関に,専門高校が行っております教育に対して支援や協力をしてほしいということでございます。具体的に申し上げると,二つございます。まず一つ目は,専門高校での教育活動の充実と生徒の学習意欲の啓発のために,出前授業や専門高校でのカリキュラムについて,新しい高等教育機関と接続した,あるいは連携したカリキュラムを提示していただくなど,専門高校での教育へ御支援をお願いできたらと思っております。
二つ目は,専門高校では実践的な実習を中心に職業教育を行っております。このためには,専門高校で実践的な指導ができる教員というものが必要でございます。そこで,新たな高等教育機関において,専門高校での実践的な指導ができる人材の養成をお願いしたいと思います。例えば,現職教員の研修を受け入れるですとか,職業に関係する専門教科の教員を目指す教育を行っていただくですとか,他の大学の学生も実践的な職業教育に関する講義を受けられるようにするですとか,教員の研修や養成に関する取組ということについても行っていただければと思います。
できましたら,今申し上げました2点につきましては,19ページの下の方に,「産業界・地域等のニーズの適切な反映,産業界・地域等との連携による教育の推進(新たな機関の教育活動における連携)」というのがございますので,そこに,少し書き加えていただければ大変有り難いと思っております。
次に,新たな高等教育機関の入学者の受入れについて,3点お願いをさせていただきたいと存じます。
まず1点目は,入試についてでございます。入試におきましては,専門高校で学んだ中で取得した各種資格や技能検定での成績,また,各種コンクールなどでの活動を積極的に考慮していただくなど,多面的,総合的に評価をしていただくことを是非ともお願いしたいと思います。
二つ目でございます。専門高校から専門を更に深めるために,この新たな高等教育機関に進学しようとする生徒は,当然のこととして,その専門の分野での一定の専門的知識,技術,技能というものを身に付けております。このため,専門高校からの入学者に対しましては,専門高校での教育の内容を踏まえたカリキュラム,普通科の高校からの進学者との相違を踏まえたカリキュラムというものを用意していただくことを是非お願いしたいと存じます。また,その旨をアドミッション・ポリシーにも明確に記載していただくことをお願いしたいと思います。
三つ目は,学生の費用負担の軽減でございます。専門高校へ進学する生徒,経済的に厳しい環境を持っている者も多いと聞いております。この新たな高等教育機関では,それなりの費用が掛かることが想定されます。このため,専門高校からの入学者についての費用負担の軽減策についても考えていただければと思います。
最後に,「その他」といたしまして,お願いごとを書かせていただきました。この審議経過報告全体を通して読んでみての感想でございますが,職業に関する専門的なことは,これから新たな高等教育機関を含めた高等教育機関で身に付ければいいとも受け取られかねないと感じました。専門高校は,専門的な職業教育を行う重要な教育機関の一つでございます。専門高校は,産業界のみならず,地域社会の発展を支える原動力でもございますし,産業界,地域社会から大きな期待を寄せられております。現実として,高校生の約2割近くが専門高校で職業に関する専門的な知識,技術,技能を学んでおります。彼らのほとんどは,将来の職業についての目的意識を持って高校に入学してきております。また,教員もそれと同様に,使命感を持って頑張っております。職業についての専門的なことは新たな高等教育機関で学べばいいというような考えで,中学校卒業後は,とりあえずは普通科の高校への進学をというように取られますと,我が国全体の職業教育の体系が崩れるだけでなく,産業の基盤そのものが崩れるのではないかと思います。そういったところで,専門的な職業教育を担う教育機関の一つである専門高校に対し,期待のメッセージのような文言を答申に入れていただければ大変有り難いと思っております。
以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【永田部会長】  ありがとうございました。それでは,委員の方々から御質問等をお願いいたします。
それでは,川越委員,お願いいたします。
【川越委員】  ありがとうございました。20パーセントぐらいの生徒が専門高校に進学されているというお話でしたが,例えば私が住んでいる宮崎県では,普通高校と専門高校の進学割合は,まだ5対5からそう大きく変わっておりません。地方における専門高校卒業生の果たしている役割というものについて,何か御意見があればお願いします。
【冨岡氏】  今,地方では,その地域で人材を育てるということで,特に九州,大分,宮崎,鹿児島は50パーセント近くの生徒が専門高校に進学している状況でございます。そういった状況を踏まえますと,やはり職業に関する基礎的な技能,知識といったものは,16歳,18歳ぐらいまでの間には,ある程度は身に付けておいてほしいという考えもございます。特定の地域に限らず,全国でもそのようなことを考えていただいて,安易に普通科に走るということがないように是非お願いしたいと思っております。
【永田部会長】  どうもありがとうございます。
安部委員,どうぞ。
【安部委員】  御説明ありがとうございます。先ほど,専門高校は普通科に比べて,生徒の意識や評価に差が出ているということをおっしゃっていたのですが,私は,全体の2割である専門高校はとてもいい職業教育をなさっていると思います。ただ,今の知識基盤社会の中で職業が高度化すると,専門高校での後期中等教育だけでなく,高等教育も受けた方が,より良い将来の職業生活につながるものと思います。そのような社会的な状況の変化の中で,このような職業教育に特化した大学の構想というものが起こってきていると私は認識しているのですが,ただ,新たな高等教育機関を制度化するといっても,学生が一般大学や短期大学ではなくて,この実践的な職業教育を行う新しい大学に入りたい,入って良かったとならなければ全く意味はないと思っています。そこで,新たな高等教育機関でどういう教育を充実したら,専門高校の生徒の進学意欲や自ら学ぼうとする意欲が引き出せるのかということをお伺いできればと思います。そして,もう一つは,専門高校というのは,普通科高校に比べると学びの内容は違いますので,専門的な知識や技能を早期に身に付けられるという長所もありますが,高等教育機関に進学するための基礎的な教養等について不足している部分もあるかもしれません。そういう不足している学習を新たな高等教育で補うとすれば,それは具体的にどういう教育を行うことが適切なのかということについてお聞かせ願えればと思います。
【冨岡氏】  専門高校の生徒も,高校に入学してくる時点で,自分は専門高校を卒業して更に上位の機関に進学するという意志を持った生徒もかなり多くいます。そういった意味で,新たな高等教育機関では,先ほど申し述べさせていただきましたが,専門高校と接続したカリキュラムというものを工夫していただいて,専門高校の生徒たちが専門を更に深めるような学校にしていただければ大変魅力的に感じると思いますし,進学の選択肢として積極的に検討するようになるかと思います。
専門高校を出て新たな高等教育機関でまた基礎的なことを一から教わるとなると,専門高校出身者はそのカリキュラムを物足りないと感じるかと思いますので,その辺りは強くお願いしたいと思います。
【永田部会長】  國枝委員,どうぞ。
【國枝委員】  いろいろ教えていただきまして,ありがとうございました。先ほど,専門高校で指導ができる人材の養成にも新たな高等教育機関は取り組んでいただきたいという御指摘があったのですが,確かに今,専門職業人の育成をする高等教育機関としての役割の一つでもあるというのは理解するところですが,新たな高等教育機関で教員免許を出すとしたら,具体的にどのような人材を育成してほしいとお考えになっているのか,お聞かせいただけますか。
【冨岡氏】  やはり最先端の技術を指導できるような先生というのでしょうか,専門教科,専門的な分野に精通している方をお願いしたいと思っております。必ずしも学校の先生,いわゆる教員である必要はないと思っておりまして,新たな高等教育機関を卒業されて実務家として活躍されている方が専門高校に来て御指導いただくという形でも大いに結構だと思っています。
【永田部会長】  それでは,冨岡専務理事,お忙しい中,貴重な御意見を賜り,どうもありがとうございました。
最後に,産業界,労働界の2団体から御意見を賜ります。
まずは日本経済団体連合会から,同連合会の永里産学官連携推進部会長から発表していただきますが,産業技術本部の吉村上席主幹にもおいでいただいております。それでは,お願いいたします。
【永里委員】  時間が押しておりますので,できるだけ簡単に御説明いたします。
まず,この新たな高等教育機関の制度化についての我々の考えなのですが,基本認識がありまして,かねてより,このことに関連して,日本経済団体連合会は種々の提言を行ってきております。種々の提言というのは,資料の下の方に注を付けておりますが,「世界を舞台に活躍できる人づくりのために─グローバル人材の育成に向けたフォローアップ提言─」や「次代を担う人材育成に向けて求められる教育改革」,「未来創造に資する科学技術イノベーション基本計画への進化を求める─第5期科学技術基本計画の策定に向けた第2次提言─」などです。これらの提言において,理系,文系を問わず,基礎的な体力,公徳心に加え,幅広い教養,課題発見・解決力,外国語によるコミュニケーション能力,自らの考えや意見を論理的に発信する力を持った人材育成に期待する旨を言及してきております。そして,これらの素養を初等中等教育段階で身に付けた上で,各高等教育機関においては,学生が志す専門分野の知識を修得するとともに,留学をはじめとする様々な体験活動を通じて,文化や社会の多様性を理解することが重要であるという認識を持っているところです。
そして,今後,この新たな高等教育機関を制度化するに当たっては,次のようなことを期待したいと思います。まず前提ですが,新たな高等教育機関における課題認識・解決策の多くは,大学改革に関する議論において,従前より産学官を問わず指摘されている点と非常に似ております。注を付けて記載しておりますが,ここで認識されている課題等は,特に国立大学改革プランにおいて認識されているものと共通するところが多くございます。文部科学省においては,第一に大学改革を完遂することが本制度化の前提であると思っております。
次に,既存の大学等の高等教育機関との重複感を避けるため,教育内容・方法や教員資格,学位等に関する差別化を図るべきです。あわせて,既存の大学等が新制度へスムーズに移行できる仕組みも重要だと思っています。その際は,我が国の教育システム全体を俯瞰(ふかん)し,諸外国における成功例等を分析した上で議論すべきだと思っております。この諸外国における成功例というのは,例えば,スイスでの産学連携ですが,スイスは職業教育が充実しておりまして,職業教育が国家の生産性向上に寄与しているというような指摘もありますし,また,イギリスの質保証の制度なども非常に参考になることがありますので,是非そのような国々の事例も参考にしながら検討を進めてほしいと思っております。
それでは,次のページを御覧ください。産業界からのニーズについてなのですが,現時点では,どのような職業分野で新たな高等教育機関へのニーズがあるかは不明確です。今後,経済産業省における調査結果等も活用しながら,具体的にニーズがある職種,産業分野を明確にすべきだと思っております。経済産業省の分析というのは注の4にありますが,「理工系人材育成に係る現状分析データの整理」といったものがあります。
次に,卒業生が実社会で活躍できるよう,設置認可や評価に関しては産業界の協力を得て,実社会において求められるスキルを反映したものとすべきです。また,イギリス等の取組に鑑み,学生・教育機関・教員に関する質保証システムの導入も積極的に検討すべきだと思います。そのイギリス等の取組というのは,下の方に出ております注の5ですが,高等教育質保証機構(QAA)などの公的機関が,教育の質や達成度において厳格な評価を行い,資金配分を行う機関と一体となり活動を行っているということですので,このような例についても分析して,必要に応じて見習うべきだろうと思います。
また,新たな高等教育機関の開設予定年度である2019年度における変化を見越した対応にすべきだろうと思います。特に,技術進歩に伴う要求スキルの変化への対応です。例えば,人工知能やIoT,すなわち「モノのインターネット」等の技術進歩を通じ,これらの技術を用いた新ビジネスの創出やプロジェクトマネジメント等を担う人材育成の要請が今後飛躍的に高まることが予想されます。
また,国際社会への対応も重要です。多くのグローバル企業においては,既にインド等から優秀なIT人材を積極的に呼び込む取組が進んでいます。新たな高等教育機関においては,外国人材への門戸を開くとともに,グローバルな人材獲得競争下に置かれることを見越した教育・研究レベルの確保が重要だろうと思っています。
それから,教育環境の変化への対応です。今後は,教育のIT化が一層進展することが予想されます。新たな高等教育機関においては,MOOC(大規模オンライン学習講座)等の仕組みの活用を前提とした設計が不可欠になると思います。
非常に急いで説明させていただきましたが,私からの発表はこれで終わります。よろしくお願いします。
【永田部会長】  永里産学官連携推進部会長,ありがとうございました。
それでは続いて,日本労働組合総連合会の小熊総合政策局社会政策局長から御意見を賜ります。本日はお忙しいところ,ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
【小熊氏】  本日は,このような貴重な機会を頂戴し,永田部会長をはじめ,委員の皆様には改めて御礼を申し上げたいと思います。
まず,私ども連合が新たな高等教育機関に関して,どういった考えを持っているかという前提をお話ししたいと思っております。連合としては2020年をめどに,働くことを軸とする安心社会を実現することを政策目標に掲げておりまして,そういった社会を実現するための政策パッケージとして,五つの雇用とつなぐ橋というものを提唱しております。
教育と働くことをつなぐ橋を第1の橋と掲げておりますが,とりわけ高等教育につきましては,働くことの意義や生きるための知恵を学ぶ機会の拡充,学ぶ場から働く場への円滑な移行を支援する制度,それから,いつでも学び直しができる環境整備を行っていくといったところを主な政策として掲げているところでございます。そのようなことをまず申し上げて,今回の質の高い専門職業人養成のための新たな高等教育機関の創設についての審議経過報告について意見を申し上げたいと思っております。
初めに,第2章の「高等教育における職業人養成の現状と課題」に関して,二つの観点から意見を申し上げたいと思います。まず第1の観点でございますが,人材養成ニーズへの対応についてでございます。審議経過報告の中で御指摘されていますように,近年新設された大学の多くは,専門資格職養成等を行っているということでございますが,大学進学者の中には,6ページの中段に御指摘のとおり,明確な目的を持たずに,いわゆる高学歴志向,それから何となく大学進学をしている者が少なくないのではないかと考えております。
そういったことがどこまで影響しているかは分かりませんが,就業構造基本調査によりますと,大学卒業者の四人に一人が非正規で働いているというような実態もございます。また,非正規雇用の問題で申し上げれば,入職後の企業における職業訓練が不十分といった問題などもございまして,職業スキルを高める機会に恵まれなかったり,その後に正規の職に転じることが難しかったりというようなことが大きな課題となっているわけでございます。このような問題を解決していくためにも,厚生労働省で実施をしているようなジョブ・カード制度などを活用しつつ公的な職業資格制度との連携を図りながら,新たな高等教育機関で修得した一定の職業スキルを企業サイドが明示的に認識できるような方法も検討する必要があるのではないかと考えております。
第2の観点は,企業における女性の活躍の観点でございます。厚生労働省の雇用均等基本調査によりますと,研究開発職あるいは設計職,営業職などの職場では,女性を配置していないという企業も多く見られております。審議経過報告の中にも,女性の社会参加,仕事復帰を支援していくためには,様々なライフステージを通じた学び直しの機会の充実は重要な課題という記載もございますが,先ほど申し上げた実態がある中で,受入れ側の企業の理解を進めていくということも課題としてあるのではないかと考えております。女性が再チャレンジをする機会として,新たな高等教育機関での学び直しを通じて多様な職業選択を可能とするとともに,企業にとっての人材ニーズを十分把握された上で,そのカリキュラムを編成すべきではないかと考えております。
次に,新たな高等教育機関の制度設計及び名称に関して申し上げたいと思います。審議経過報告の第4章では,専門職業大学等の名称が考えられるという記載もございました。職業教育を行う高等教育機関としては,既存の専修学校専門課程と新たな専門職業大学,この二つが併存することになろうかと思います。それ以外にも,職業能力開発促進法で規定をされております,厚生労働省が所管をしております職業能力開発大学校というのもございます。特に職業実践専門課程につきましては,専門学校のうちの最新の実務の知識を身に付けられるカリキュラム編成により実践的な職業教育の質を確保するというものでございまして,2014年4月に文部科学大臣が認定する制度として導入をされたばかりかと思います。この新たな高等教育機関の設置に当たりましては,厚生労働省と連携しながら,学ぶ場から働く場へと円滑に移行できることを念頭に置いた制度設計を行っていただくとともに,新たな高等教育機関に入学しようとする学生や保護者にとって,既存の各高等教育機関との制度の違いやそれぞれの特徴について分かりやすい説明を行う必要があるかと思いますので,混乱のない一般に分かりやすい名称というものを検討していただくべきかと思います。
加えまして,同じ第4章の中の学生の費用負担に関する配慮でございます。こちらにも,学生の費用負担の軽減策についての検討を求めるというような記載がございますが,教育につきましては,国富や国の経済成長の源泉となるもので,また,全ての国民に対して,家庭の経済的な事情に関わりなく学ぶ機会を保障することは国の責務であると我々は考えております。しかしながら,現在の高等教育を取り巻く環境を見ますと,二人に一人の学生が,奨学金を借りなければ大学や専門学校に通うことができない状況にあることも一方の事実かと思います。その上,国の奨学金制度は全て貸与型となっておりまして,その3分の2は有利子での貸与になっております。そればかりか,高額な授業料を設定しながら給付型の奨学金が存在していないのはOECD加盟国の中で日本のみという状況の中で,家庭の経済的困窮のために奨学金を借りて高等教育を受け,その子供が返済のために自身が経済的困窮に陥るというような貧困の連鎖が生じるといった事象も多くなってきているのではないかと思います。学ぶ意欲のある若者が等しく教育を受けることができ,その持てる能力を存分に発揮することができる社会にするため,文部科学省におかれては,他の先進国と比べて極めて低い公的負担を拡充し,新たな高等教育機関の学費を低減するとともに,給付型奨学金の制度の導入も含めて,奨学金制度の改善も検討いただきたいと考えております。
四つ目,社会人の学び直しについてでございます。こちらにつきましては,2005年に職業能力開発総合大学校能力開発研究センターで実施をした調査がございます。社会人が学び直しをする際に想定される課題として,「仕事が忙しい」という回答が72.3パーセントと非常に高い割合を示しております。また,そのほかにも,2009年に東京大学が実施をした「職業人と大学教育」という調査におかれましても,「勤務時間が長くて十分な時間がない」という回答が50パーセントを超える実態になっております。これらを見ましても,社会人が学び直しをする際には,時間的な余裕のなさがこれを阻害していることは明らかであります。
したがいまして,新たな高等教育機関の制度化に際して,社会人の学び直しの弊害を少しでも排除するため,労働時間の短縮やワークライフバランスの確保,有給での教育休暇の制度化などの環境整備についても,社会人の学び直しの具体的な課題として答申の中に記載していただきたいと考えております。
最後に,働くことの意義や生きる知恵を学ぶ機会の拡充の必要性でございます。日本労働組合総連合会では2014年,1,000人に対しまして労働教育に関する調査を実施いたしました。その結果,「学校で働くことや労働組合の意義について学んだことがある」という回答が70.9パーセント,それから,「労働法などについて知識を学んだことがある」といった回答が55.3パーセントという結果でございました。しかし,その一方で,「働いていて困った経験がある」と回答した方が全体の約6割を占めておりまして,そのうち三人に一人は「何もしなかった」と回答しております。
この調査結果から見えることは,若年労働者の多くが働いていて困ったときに,学校で身に付けた働くことに関する知識を活用する方法が分からないということ,また,労働組合などに相談をして労働条件を改善することができないでいるといったことではないかと考えております。
したがいまして,新たな高等教育機関の制度化に当たりましては,新たな高等教育機関は,社会,経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い専門職業人を養成するとされておりますところ,働くことの意義や労働法などを学び,特にその知識を活用できるよう,具体的,実践的な労働教育の充実したカリキュラム化を図っていただきたいと思います。
若干長くなりましたが,以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。それでは,今,御発表いただきました二つの団体につきまして御質問をお受けいたします。
それでは,鈴木委員,どうぞ。
【鈴木委員】  永里委員にお伺いしたいのですが,日本経済団体連合会の基本認識をお読みしますと,ここに書かれていることは,そのまま現在議論している新たな高等教育機関の制度化につながらないような印象を受けました。
伺いたいのは2点ございます。1点目は,1ページの,「既存の大学等との重複感を避けるための差別化を図るべき」という部分について,今までの議論も踏まえまして,差別化をきちんとしていくためにはどのような議論をしていけばいいとお考えかというのが1点です。
もう一つは,2ページ目のところで,「具体的にニーズがある職種・産業分野を明確にすべき」とありますが,永里委員としては,新たな高等教育機関はニーズが明確になったところから設置すべきとお考えかどうかということの2点について伺いたいと思います。
【永里委員】  まず,2点目の方からお答えします。経済界としては,出口のところで,これだけ人材がいるから採用してほしいというようなことではなくて,産業界はどのような人材を求めているかということで,入り口のところで産業界に相談すべきだと思っています。ニーズのある分野というのは産業界が協力していきますので,カリキュラムや教員やインターンシップ等も含めて,これから一緒にすり合わせをしていきたいと考えているわけです。
それから,1点目について,もう一度おっしゃっていただいてもよろしいでしょうか。
【鈴木委員】  「既存の大学等との重複感を避けるための差別化を図るべき」と書かれていますが,今までの特別部会での議論も踏まえて,どの辺りにポイントを絞っていけば,この差別化ができるとお考えでしょうか。
【永里委員】  それは,今申し上げた2点目のことを真剣にやっていけば差別化ができると考えております。
【永田部会長】  金子委員,どうぞ。
【金子委員】  やはりこの新たな高等教育機関の卒業生に対してどのような需要があるのかということは,制度化に当たって大変重要な点だと思うのですが,今回の審議経過報告でも,例示はあえて避けているものと承知しております。それはなぜかというと,例示をすると,既存の大学と新たな高等教育機関との差が必ずしも明確になるとは言えないからです。しかし,実践的な職業教育を行う高等教育機関と名のるわけですから,具体的な労働需要がどこにあるのかということを,飛ばして議論してはならないと思います。この部会の最初の会議の資料に経済産業省が行った調査の結果が出ていましたが,結局,その議論はそのままになってしまっているとともに,正直に言えば,実は調査の結果自体もよく分からないものでした。経済産業省においてもその調査の後,本格的な調査は特に行っていなかったと思います。
結局,これまでの議論は,かなり抽象的な職業教育論で,基本的にはサプライサイドでの話になっていたわけですが,ここであえて永里委員にお伺いしたいのは,私が根本的に疑問に思っていたことでして,もし本当に新たな高等教育機関で育成する人材に対して需要があるのであれば,経済界はなぜそれを言わないのか,なぜ企業からそのような需要というものが表れてこないのかということです。それを私は非常に疑問に思うところで,経済同友会などが行っている調査を見ましても,今回の新たな高等教育機関に関しては必ずしも賛否は明確でありませんし,新卒者の採用基準についても,専門的な知識を重視するのは2割ぐらいなわけです。どうして企業から具体的な需要というものが出てこないのでしょうか。それから,経済団体はそれを明らかにするために何かやれることはないのでしょうか。
【永里委員】  我々は,経済団体としていろいろ言っておりますが,この新たな高等教育機関について加盟企業に対してアンケートを採ったときに,このような機関を作った方がいいということと,作る必要はないという意見が半々でありました。ただ,日本経済団体連合会という立場ではなく,この特別部会の一委員として申し上げますと,やはり今の大学においては,我々企業人から見て物足りない部分がありまして,そういう意味で新たな高等教育機関が必要だろうと思っております。それについて,産業界が全く種を出してこないではないかと言われますが,実は今までは,企業が自分のところでOJTを行うことにより自社に必要な人材を養成又は育成していたわけですが,もはやそれが,ままならぬような状態になってきた,要するに,企業そのものに余裕がなくなってきたということと,周りの変化が余りに激しいということで,人材育成機能を自社以外に求めるようになりつつあるという背景をまず御理解いただければと思います。特にICT関連は現在,非常に変化が激しいですので,そのような意味では学び直しというのも必要になってきますし,そもそもITに関しては職種を問わず基礎的なことは必要になってくると思いますので,そこは職業教育という範疇(はんちゅう)でももちろんですが,全ての分野に共通したものとして学生に教授してほしいということを思っているところでございます。産業界として,実際に今何が足りていなくて,何が満ち足りているのかということについては,真剣に議論していく必要があると思っております。
【永田部会長】  ありがとうございます。そのほか,御意見,御質問はいかがでしょうか。
佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  先ほどの金子委員のお話も含めて,少し考えていたのですが,ここでは,どのようなシステムを作るかということについて1点だけ意見させていただきます。実は,受皿のことについてももう少ししっかりと議論すべきではないかと思うのです。例えば,企業数で言うと,99.5パーセントはスモールビジネスの世界だと思います。雇用も7割から8割近くがスモールビジネスのところにあります。そのようなところが何を求めているかについても,やはりきちんと把握しないといけないのではないかという思いがあります。一方で,私の大学の就職キャリアセンターにおいては,学生は,物すごい数のエントリーシートを出して上場企業を受けていてもなかなか採用されないといったことがよくありまして,これは出口を見据えて大学は学生を育てたのだけれども,実は受皿の方がきちんと準備できていないということなのではないかとも思えることでして,そのようなことも含めて,産業界の立場での今の永里委員のお話を拝聴しておりました。特に質問ではありませんけれども,これから議論する必要があるということについて,発言させていただきます。
【永田部会長】  そのほかはいかがでしょうか。よろしいですか。
【永里委員】  すみません,私の方から言うのもおかしいのですが,いわゆるこの新たな高等教育機関が輩出する人材というのはどのような人材なのかということを,逆に少し思うのです。今のお話のとおり,ほとんど日本の企業は中小企業というか,スモールビジネスなので,そこで求めている人材と日本経済団体連合会のような組織において,グローバルな企業が求める人材には,乖離(かいり)が若干あるのかとは思っております。本日はいらっしゃいませんが,冨山委員のような方は明らかに地方創生ということを考えておられて,何か難しいことを教える必要はないという極論をおっしゃっていますが,そのようなことも含めて,実は,この特別部会で詰めきれていないのではないかという気が私はしています。これは私の率直な意見です。
【永田部会長】  そのほか,この2団体にお聞きしたいことはございませんか。
それでは,千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  先ほど,全国専修学校各種学校総連合会のときにも質問させていただいたのですが,今,永里委員のお話の中では,学位等に関する差別化,重複感を避けるということがありましたが,これについては,先ほどの全国専修学校各種学校総連合会の意見のように,アカデミックな大学や学位と並立というようなイメージをお持ちなのか,既存の大学体系の中で分けていくというようなことをお考えなのか,その辺りについて御意見があれば伺いたいのですが。
【永里委員】  これについては我々も議論しておりまして,難しいところです。一番いい形は,既存の大学で今の人材需要に対応した教育をできれば一番いいと思っているのですが,この点は日本経済団体連合会としてももう少し議論を詰めたいと思います。
以上です。
【千葉委員】  ありがとうございます。
【永田部会長】  前田委員,どうぞ。
【前田委員】  質問というより意見かもしれませんが,ずっと気になっていることがありまして,有識者会議のときから参加させていただいているのですが,企業の方の要求が,最初は使える人間が欲しいという御意見が多くありました。その人材の養成に関しては,極論を申し上げれば,新たな高等教育機関でも大学でもどちらでもいい,とにかく使える人間をというような御発言を何回か伺ったことがあります。しかし,この特別部会で議論をすることになってから,いろいろな企業の方の御意見を伺っていくうちに,永里委員のお書きになった基本認識の一番初めのところが企業として今,一番欲しい人材の内容だというような御意見が結構ありました。要するに,例えば,「学士力」と言われているような汎用的な能力というところが割と企業の方々から強く主張されるようになってきたという印象が私はあります。ですから,結局,今,産業界としてはどのような人材が欲しいのかということをもう少しきちんと整理いただいた上で,具体的にこういう力を付けた人が欲しいというものを明確に聞けないと,私どもとしても新たな高等教育機関のイメージができないという気がしています。
それと,もう一つ,永里委員のお書きになった基本認識の最初のところを見ると,なるほどと思うのですが,2番目の丸を見ると,上記の素養を初等中等教育段階で身に付けるとあるのですが,これは本当にそのようにお考えなのでしょうか。
【永里委員】  日本経済団体連合会は,ディベートなども小学校で教えるべきだということを言っていますし,英語もやるべきだと考えておりますので,初等中等教育でこういうことを勉強できたらいいと思っています。
【永田部会長】  前田委員の前半の質問は,これからこの特別部会で永里委員からまた御意見を賜ることにしたいと思います。
【吉村氏】  すみません,短くお話しさせていただいてもよろしいですか。
【永田部会長】  どうぞ,お願いします。
【吉村氏】  日本経済団体連合会は,こういった専門職業人育成のための新たな高等教育機関の制度化を積極的にやった方がいいというような発信を,提言等でした経緯はございません。今,いろいろ言われている大学改革の中での機能分化ということにおいて,そういったことが本当にできないのかということについては検証が必要だと思っているということであって,それでどうしても専門職業人養成に特化した既存の大学とは別の機関が必要だとするならば,教育内容や方法等について,今の大学では行っていないようなことに踏み込んで行う必要があることを申し上げているところです。
それから,産業界からのニーズについてですが,今のところ,我々としては前述の経緯があるので,具体的にどのような分野で人が要るのかについては,積極的に把握しておりません。ただ,必要だというようなお声もあるようですから,やるとすれば,中途半端に新たな機関を作って,後で,産業界が新たな高等教育機関を作るべきだと言ったのだから卒業生を採用するべきという話になるのは避けてもらいたいので,作るからには,具体的なニーズをしっかり把握して,しかも,そこで育成された人については,しっかりと質が保証できるような人を育ててほしいということを申し上げているのであります。
以上です。
【永田部会長】  御意見を頂きました。永里委員,吉村上席主幹,それから小熊政策局社会政策局長,本当にありがとうございました。後の議論の参考とさせていただきます。
それでは,本日のヒアリングはここまでとなりますが,事務局から今後の予定についてお願いいたします。
【塩原主任大学改革官】  次回会議の御案内でございますが,次回の第15回の特別部会は,4月26日15時から17時,場所は文部科学省3階の第1講堂での開催を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。
【永田部会長】  本日は夜遅くまでお付き合いいただきまして,誠にありがとうございました。これにて,本日の部会は,終了とさせていただきます。皆様,どうもありがとうございました。

―― 了 ――


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-- 登録:平成28年10月 --