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実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会(第9回) 議事録

1.日時

平成28年1月20日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 第二講堂(旧庁舎6階)(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 審議経過報告(骨子素案)について
  2. その他

4.議事録

【永田部会長】  おはようございます。時間もまいりましたので,第9回実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会を開催させていただきます。
新年早々,お忙しい中,お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
本日は,あらかじめ報道関係者からお申出があり,録音,カメラの撮影等を許可していますので,御承知おきいただきたいと思います。
今回は,これまで審議してきたことを今後文章としてまとめていくための骨子案について議論をすることになっております。もちろんその中で,これまであった議論がまた出てくるものと思いますが,まずはどのような方向でまとめていくかということを議論させていただきます。
また,本日は豊田文部科学大臣政務官にも御出席いただいておりますので,御挨拶をお願いしたいと思います。それでは,お願いいたします。
【豊田文部科学大臣政務官】  おはようございます。ただいま御紹介を賜りました文部科学大臣政務官を拝命しております豊田真由子と申します。委員の先生方におかれましては,日頃より中央教育審議会を通じて,またそれぞれの先生方の教育現場におきまして,我が国の教育,また子供たち,若者の未来に多大なる御尽力を賜っておりますこと,改めまして感謝を申し上げます。
また,大変お寒い中,多くの御関係者の皆様,報道の皆様,御参集いただきまして誠にありがとうございます。
私は仕事でヨーロッパ,アメリカに暮らしておりましたときに,フィンランドやドイツ,また米国では,この職業の実践と,そして学問という理論と実践の融和を図る,実社会に学問的ベースを持って役に立つという人材の育成に非常に力を入れておられる姿を見ておりました。我が国におきましても,もちろん専門学校,高等専門学校,そして大学,それぞれの現場で先生方,また学生の皆様が切磋琢磨(せっさたくま)されておられるわけでありますが,それぞれの課題というものがありまして,このたび熱心な御議論を経て,新たな高等教育機関を制度化していくという方向性を導いていただいているものと承知しております。
日本の教育の現場は,幼稚園,保育園の幼児の段階から始まりますが,社会人になりましてからも,やはり教育というものが一人の人間の人生,そして国の礎となっております。教育がいかにあるかということが,一人一人の人生はもちろんのこと,この国の,また世界の未来を決めていく鍵でございます。そうした中,先生方の御議論によりまして,理論と実践の架け橋による職業能力の充実を図る,また産業界のニーズや社会人の学び直しといった課題にも対応できる,そして国際的にも通用する新たな制度を作っていくということになっているわけでございます。
そして,既存の専門学校,また高等専門学校,そして大学のそれぞれの現在直面している課題についても,引き続きそれをしっかりとブラッシュアップをしていくことが必要だと思っております。それぞれの現場で先生方が,また職員の皆様が,学生が引き続き前を向いて進んでいくということが,非常に大切であるというふうにも思っております。
また,個人的な意見になりますけれども,新機関が職業教育に重きを置くということでありましても,学生でなければできないことをやらせるべきだと思っております。社会人になってからは時間の流れが違いますから,例えば,いろいろな人間関係を作ることや放浪の旅,ボランティアなど,一見すると,それは社会人としての生活に直結しないようなことも,学生でなければできないことであり,いずれ何らかのかたちで自らを助けることになる経験ですから,そのようなことをする時間もしっかりと確保ができるような学校にしていただきたいなと思っております。これは文部科学省としてというよりも,私が個人的に思っていることでございますが,少しだけお伝えさせていただきました。
先生方,御関係者の皆様,お集まりいただいた皆様も,この新しい制度を単に創設するだけではなく,それが世の中の若い生徒たち,また先生方の役に立つ仕組みとしてしっかり機能していくように,行く末も含めてお見守りいただくとともに,引き続き御指導,御支援くださいますようお願いいたします。
本日は誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
【永田部会長】  ありがとうございました。
審議に入る前に,事務局側に人事異動がございましたので,御紹介いただきたいと思います。
【塩原主任大学改革官】  1月の人事異動に伴いまして,生涯学習政策局長が交代となっております。河村前生涯学習政策局長にかわりまして有松育子が生涯学習政策局長に就任いたしております。
【有松生涯学習政策局長】  有松でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【塩原主任大学改革官】  以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
審議に入りますが,先に資料の確認をしたいと思います。事務局,お願いいたします。
【塩原主任大学改革官】  お手元の配付資料について御確認をお願いいたします。
本日の配付資料,議事次第にもございますとおり,資料が1点,参考資料が2点,そして鈴木委員,牧野委員から,資料を御提出いただいております。
以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。資料の最後の方に,鈴木委員と牧野委員からの提案書が出ております。骨子の議論に入る前に,鈴木委員,牧野委員から,これについて簡単に御説明いただければと思います。
それでは,鈴木委員からお願いします。
【鈴木委員】  提起されました論点については,12月7日の第8回の部会までに一通りの議論がなされてまいりましたので,全国公立短期大学協会の会長の意見等も踏まえまして,意見表明させていただきたいと思います。
基本的には,先般の部会で,私立短期大学の立場から意見表明されました麻生委員の御意見に賛成ということをお伝えしたいと思います。
まず養成する人材像については,職業に特化した記述になっておりますが,現在の大学・短期大学の枠内においても,このような人材の養成は十分可能であると考えております。
続いて,論点2の修業年限・学位等の取扱いについては,特に慎重であっていただきたいと考えております。今までの議論では,「実践的な職業教育」を掲げながら,2,3年で短期大学士相当,4年で学士相当という,現在の短期大学・大学と同等の学士取得を可能とするとされておりますが,現在,短期大学の専攻科を修了した段階では,そのまま学位を取得することはできず,学位授与機構に認定されて初めて学位を取得するという制度になっております。この制度との整合性についても十分考慮されるべきかと考えます。専攻科における学位取得という意味では,恐らく質の問題があるのかと思いますので,「後期課程」における学位においても十分考慮されるべきかと思います。また,後から出てきます「長期インターンシップ」についても,学位授与の条件となる修業年限に入れるのかどうかについても慎重な審議が必要かと思います。
論点3の教育内容・方法については,「必ず入れる・義務付ける」という条件を課すというところが現行の大学・短期大学と異なりますが,現行の大学・短期大学の制度の中でも,演習・実験・実習・実技を相当の割合で入れていくことは可能でありますし,企業との連携の授業も現在進められているところです。
論点4の教員組織,教員資格等,論点5の教育条件については,現行の大学・短期大学の設置基準は「最低限の基準」とされています。現在の大学・短期大学はかなり余裕を持ってクリアしているかと思います。現行の設置基準が「最低限の基準」ということであれば,新機関も大学と名乗る以上は,この「最低限の基準」をクリアしてしかるべきかと考えております。卒業の資格を既存の大学と「同等のもの」とするのであれば,ダブルスタンダードにならないようにすべきだと考えます。
なお,実務家教員については,現在の大学・短期大学の中でもかなり問題となっておりますので,可能であれば,既存の大学,短期大学も含めて,その条件を整備すべきかと考えます。
論点7についてですが,質保証の仕組みでは,現行の大学・短期大学と同等,部分的には,それ以上に厳しくなるとされていますが,その他の基準が緩和されるのであれば,質保証の仕組みだけ厳しくしても,結果的には質は担保されないのではないかと思います。
論点8,その他のところで,「実践的職業教育」をうたいながら「研究」も重要とし,「教育研究機関としての自律性」を掲げて,大学院設置までを現段階で言及するのは早急過ぎるのではないでしょうか。また,厚生労働省関係の資格については,現行の大学・短期大学における養成実績,関係省庁,職能団体の意見等を十分聴取した上で決定していただきたいと思います。
論点9で,特に長期のインターンシップを巡る課題については,単位化や修業年限に入れるかどうかを含め,十分な議論が必要であると考えます。「インターンシップ推進に当たっての基本的な考え方」が昨年12月,文部科学省,厚生労働省及び経済産業省の3省により改正されました。そこに様々な留意事項が網羅されていると思いますので,その点を十分考慮して今後考えていかなければならないと思います。OJTが難しくなっている現在の産業界で,必ずしも自社の就職につながらない学生たちを継続的に教育できるのかどうか,また,インターンシップという名のもとに,早期の学生の選抜とならないかということも十分検討を要することかと思います。
諸外国の様子については,私はほんの一部しか知りませんけれども,イギリスの旧ポリテクニクで今は大学となり,栄養士を養成しているところに,この2,3年,調査に行ってまいりました。ここでは3年で学位取ることができますが,学外実習,例えばインターンシップのようなものが,24週あるのですが,それを修業年限には含めておりません。つまり,実質4年かけて,2年の大学の学び,1年の外での実習,1年の大学の学びで資格と学位を授与しているという状況もございます。このように,恐らく他の諸外国でも,インターンシップに関しては様々な要件があると思いますので,十分検討が必要かと思います。
その他,これから名称についても検討していくと思いますが,新たな教育機関であれば,現行の大学・短期大学と明らかに区別できるものを希望します。実践的な職業教育を行う機関であるということが,十分分かるような名称にしていただきたいと思います。
新たな高等教育機関の必要性については,個人的には疑問がありますが,今後,より具体的なレベルでの御議論をお願いいたします。実践的な職業教育の量的拡大についても最初のところに出ていますが,もし大学と同等の設置基準にするとすれば,非常に数の面では制限されると思いますので,「大学」の枠以外で再度検討するという余地もあるのではないかと考えている次第です。
以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。牧野委員,御説明ください。
【牧野委員】  当社はこれまで10年以上にわたって,インターンシップで毎年2,000人程度の学生を受け入れていて,これはインターンシップの受入れ人数として日本で最大規模となります。インターンシップの実施期間は約1か月と本格的な能力発掘型プログラムになるため,学生の長期休暇となる時期を利用して春と夏に開催しています。当社のインターンシップ出身者は,当社への入社者だけに限らず,国際的に活躍している方や起業している方含め,非常に多くいます。
その中で,当社のインターンシップに参加した方たちから声があがるのは,1年生のときなど,もっと早いタイミングで受けておけばよかったということです。
しかしながら,せっかくの長期休暇の約1か月をかけてインターンシップに費やすというのは,学生にとっては抵抗があるでしょうし,そう簡単に踏み切れるものでもないでしょう。また当社自体も,今以上の人数を受け入れるとなると,一企業では負担が大き過ぎます。事実,毎年2,000人を受け入れるに当たり,運用額だけでも年間10億円以上の投資をしていますので,単純に採用単価で計算すると,一人当たり1,000万円以上かかることになるため,全く見合わない状態です。
そのためここ2年間は,インターンの前段として,実践と理論を結び付ける前に,まず理論的なところだけでももう少し対象を広げて教えることができないかと思い,各大学と提携を始めました。大学の授業の中で約半期間,1単位分の授業科目としてキャリア観を養うための基礎教養講座を実施しています。これは,学生からの評判が非常に高く,もう既に一部の大学においては,正規授業として採用する動きがあります。ただ,各方面の大学へと拡大するに当たり,当社の社員が講師を行い続けるということ,これもまた一企業として実施し続けるにはやや厳しい状態です。
成果については,資料の1ページ目に少し書かれていますが,今,人工知能という話題が日本でも非常に大きく取り上げられておりまして,世界的にも多くの人工知能学者が,10年以内になくなるであろう職業を発表しています。その10年という期間はともかくも,私は2030年から35年ぐらいまでの間には,間違いなくかなり多くの職業がなくなると思います。
そして,真っ先になくなっていくのが,知識型の教育を受けて,知識を有することで優位性を保(たも)っている職業です。実はアメリカでは,税理士や会計士の仕事が既に減り始めています。本来は,アメリカの税制は非常に複雑で,日本のように簡単に処理を行えるわけではないのですが,そうであってもどんどん人工知能に置き換わっているというのが事実なのです。ここ2年ほどの間に,アメリカの納税に関する会計士や税理士は,3万人近くが失業したという調査もあります。
今の日本の学生は,教育の在り方が座学で,要は教授の言うことをひたすら一生懸命に覚えるという教育を受けている傾向にあります。例えば,アメリカのトップ大学に比べると,議論する時間も自分で物事を考える時間も,明らかに短いという状況です。一方で,アメリカの大学生は,もちろんそのまま研究の道に進む方もいますが,概して,卒業後は社会に出て働くのだという考えを持っています。だから,実際に働く上でどのような人材が活躍するかということを深くイメージした上で,そのための勉強を大学でするのです。日本に比べてアメリカの学生がより懸命に勉強する理由は,卒業基準が厳しいからだけではなく,本人の意識として4年間の間に,卒業後の自分のキャリアのイメージを強く持って自分自身を成長させようとしているからです。
当社は,海外においても,年数百名ほどの学生を採用していますが,入社時点で既に,海外と日本の新入社員にすごい差があると感じています。ただ,それは決して能力の問題ではありません。例えば,論理思考力テストを日本のトップ大学卒業生が受けたとすると,それはアメリカのトップ大学卒業生と同じくらいの高い点数を取ることができます。しかし,実践において自分で考えるということをさせてみると,日本人だけができないという事態が起こります。
当社がここ2年間で実施してきた「パトスロゴス」という講座において,この講座を受けた結果,大学生が自分で考えることの重要性に気づき,それを相当意識するようになったことは事実です。自分のキャリアや,今学ぶべきこと・やるべきことについて考えるようになったのです。このように,会社の中での実践だけでなく,大学教育の中でも,思考力や課題認識・解決力を高めることはできるということです。そのためには,大学側に当社のノウハウを伝授してもかまわないと思っています。いずれにしても,こういった学生を多く輩出することによって,間違いなく国際競争力は上がっていくと考えております。
なお,先ほどから,インターンシップの在り方について申し上げておりますが,今,大学で多く行われている1日ないし3日程度のインターンシップは,単なる会社説明会にしかならず,受け手が正しい判断をする機会を奪うことになるため,インターンシップと称するのを禁止するべきだと思います。1か月とも言わず160時間程度の時間をかけ,能力開発に取り組めば,学生のレベルは飛躍的に上がります。インターンシップについては,時間数を定義づけるとともに,思考の実践をさせるようなプログラムを是非入れていただきたいと強く思っています。
最後に,新機関の養成する人材像について,専門的な職業人としての能力と総合的な職業人としての能力の両方を追い求め過ぎているのではないかと感じます。今,産業界で求めている人材というのは,ある業種に特化した特殊な能力を備えている人材ではなく,職業人としての物の考え方を身に付けている人なのです。もしこの新機関が,いわゆる専門学校を更に高度にした教育内容を実施するという方向にあるのであれば,それは産業界で求めていることとは違います。むしろ職業に就いたとき,プロフェッショナルとして物事をどう考えていくのか,どういう仕事をやっていかなければならないのかを,大学の中で早い時期から教えていただきたい。そうすれば,必ず彼らの勉強に対する考え方が変わると思います。
業種特化の専門的な大学機関ということで,専門大学をつくっていただいても結構ですが,今申したようなことは既存の大学の中でもできることではあるので,私としてはむしろ,既存の大学の中でやっていただきたいと思っております。
以上です。
【永田部会長】  今,両委員の御発言というのは,ちょうどこの8回までに話してきたことの問題点を含みつつ,前向きな御意見もあったと思います。ありがとうございました。
それでは,骨子案のお話をさせていただきたいのですが,これまでの審議経過等についてのことを含めて,事務局から概要を説明いただきます。
【塩原主任大学改革官】  それでは,本日の資料,審議経過報告,骨子素案を御覧ください。骨子素案全体で12ページものになっておりますが,まずその1ページ目でございます。今回の骨子素案の大きな構成につきましてまとめてあります。
今回の審議経過報告の全体構成は,大きく4章立てといたしておりまして,第1章は,21世紀を生きる職業人を取り巻く状況と今後の職業人材養成,第2章は,高等教育における職業人養成の現状と課題,第3章は,新たな高等教育機関の制度化の方向性,第4章は,新たな高等教育機関の制度設計という構成になっております。
2ページでございます。第1章についての骨子,中身についてでございます。
第1章,職業人を取り巻く状況でございますが,まず1の(1)産業・職業の状況の丸1,世界的な状況としては,知識基盤社会を迎え,産業は高度化・複雑化していること,とりわけ変化のスピードがますます急速となっていることを記述しております。
さらに丸2,我が国の状況におきましては,生産年齢人口は減少し,日本型雇用慣行にも変質が生じており,また雇用の状況といたしましては,企業の従業者の7割は中小企業従業者が占め,また,産業別では,第3次産業が7割を占めるというような状況になっていること等について記述しております。さらに,今後の雇用需要増が見込まれるのは,専門的・技術的職業従事者やサービス職業従事者等であって,とりわけジョブ型雇用へのシフトが進むとの予測もあるということについても記述しているところでございます。
その下(2),職業人の状況でございます。こういった産業・職業の状況も踏まえまして,自己の従事する職業における専門性の高度化,複雑・困難な課題に対応できる実践力の強化を求められている状況にあるということ,また,キャリア・アップ,キャリア変更が必要な場面も職業人にとっては増えていく可能性があることについて記述しております。
そういった中,今後の職業人材養成の在り方について,大きな1ぽつでございますが,成長分野等への人材シフトを円滑に進めること,また,個々の職業人の労働生産性を高め,事業の現場において,商品サービスの質向上など,様々な変化へ対応等を推進していくことが不可欠というような認識を記載しておりまして,その上で,今後の職業人材養成につきましては,3ページの方にもあるように,次の両面からの要請に対応した教育の充実を図り,様々なライフステージに応じて,これらの教育機会を適切に提供していくことが求められるとしておりますが,一つの面,座学や理論の教育のみにとどまらず,産業界等と連携して,専門分野における高度で実践的な専門性の育成をしていくこととしております。そして,専門の中で閉じることなく,変化に対応する能力や,生涯にわたり学び続けるための力を育成するといった面の対応が必要ではないかということを記載しているところでございます。
続きまして,4ページ,第2章でございます。こちらは,高等教育における職業人養成の現状と課題についてでございますが,1の(1)制度の現状におきましては,現行の大学・短期大学,高等専門学校,専門学校において行われております各学校種の職業教育の現状について概観しているものでございます。こういった機関がそれぞれの制度特性を生かしながら職業人育成を推進しているわけでございまして,そういった職業教育機能の充実は今後も重要であるということであろうかと思っております。
したがって,まず大学単体につきましては,我が国の学校制度におきまして,大学教育は,幅広い教養の教育と,学術研究の成果に基づく専門教育により行うものとされており,職業人養成もその中で行われているというのが制度的な位置付けでございます。
大学は,その中で,企業等でジェネラリストとして指導的役割を期待されるような人材や,学問に基盤を置く技術・専門能力の担い手となる人材養成等において中心的な役割を果たしております。短期大学は,特に地域産業の担い手となる職業人材の養成等について貢献していることについて記載しております。
さらに,高等専門学校においては,5年一貫の職業教育という制度的特徴を有しまして,応用力に富んだ創造的な技術者を育成していること,専門学校におきましては,より自由度の高い制度特性を生かし,実習・技能等の充実により,技能を要する職種の養成に強みを発揮していること等について記載することとしております。
このような各学校種の位置付けでございますが,現在,高等教育の量的拡大に伴い,大学・短期大学自体が担う機能は多様化してきており,技術・技能等の習得を伴う,専門学校等の強みとも言われていたところについて,そういった技能と習得を伴う専門資格職養成等を行う大学等も増えてきている現状がございます。また,制度面では,飽くまで幅広い教育と学術に基づく専門教育として行うものとされていますが,実態としてそのような状況が進んでいるということについて記載をしております。
その下,学生受入れの状況でございますが,まず,高校卒業後の学生の状況について,高等教育進学率の上昇に伴い学生の実態も多様化しており,学問の教育に適正を有する者も,職業技能の教育に適正を有する者も同一の尺度で大学選びが行われている結果,時に,学生の目的意識,学習意欲等と学修内容とのミスマッチが見られている場合もあるということ,さらには,将来の生き方・働き方を真剣に考えることなく大学等へ進学,卒業していって,職業・社会とのミスマッチを生じている若者の問題もある点につきまして記載しております。
続きまして,社会人学生の状況でございますが,こちらにつきまして,我が国の社会人学生について受入れが増えていない状況について記載しております。
その次,5ページでございます。そういった状況を含めまして,高等教育における職業教育の課題と求められる対応ということでございますが,普通教育より職業教育が一段低く見られるような状況等の課題について記載しております。それを踏まえて,技能等に基づくスペシャリスト志向の若者にとって魅力ある進学先を制度化していくことが求められているのではないかということ,二つ目の丸でございますが,社会人の学び直し環境の整備が重要な課題となっておりまして,そのための受皿となる高等教育機関の整備も求められるのではないかということを記載させていただいております。
さらに,1で見たような職業人を取り巻く状況を踏まえまして,既存の職業分野における専門的な知識・技能だけではなく,変化への対応等にも必要な基礎・教養,理論にも裏付けられた実践力等を兼ね備えた質の高い専門職業人養成のための高等教育機関が必要となっているのではないかという認識がございまして,既存の高等教育機関に加え,技能の教育と学問の教育の双方に強みを持った新たな機関を加えることが必要ではないかということについての考えを記載しています。
続きまして,第3章でございます。こちらは新たな高等教育機関の制度化の方向性についての章でございますが,まず1の,養成すべき人材像につきましては,前回までの議論,論点1で整理をしていただきました,養成すべき人材像の大きな3点を記載しております。スペシャリストとして,高度な技能等を強みに,実務の主力を担うような人材,それをもって事業活動における新たな価値の創造を先導するような役割を担う人材というのが1点目,2点目は自らのキャリアを主体的に切り開いていける人材,3点目はこれらを通じて我が国の経済成長を支えていく人材という観点で捉えております。
6ページの真ん中,推進すべき教育につきましては,こういった機関が推進すべき教育の特性について記載しておりますが,高度で実践的な技能の育成,実践力を裏付ける理論面への理解の深化,知識・技能を結び付けて課題解決につなげる総合力,職業人に必要な教養,社会人のための多様な学び直し機会の提供等について,こちらの方にまとめてあります。
このような機関でございますが,教養や理論にも裏付けられた実践力を育成するものであるということを踏まえ,大学体系に位置付け,従来の大学と同等の評価を得られるようにするということの方向性をこちらの方に記載しております。
7ページにつきましては,そういった実践的な職業教育を志向する高等教育機関は,各国においても制度化がなされていることについて,その概観をこちらに記載しております。
8ページは,第4章,具体的な制度設計についてでございますが,制度設計に当たっての基本的な視点等ということで,(1)身に付けさせるべき資質・能力におきましては,前回までの議論にありますところの論点1の後段で整理してきました身に付けさせるべき資質・能力について記載しております。専門高度化,実践力強化,分野全般の精通等,総合力強化,そして自立した職業人のための「学士力」育成という5点でのまとめになっております。
その上で,この制度設計全体を貫く重視すべき視点ということで,四つの視点を記載しておりますが,理論と実践への架橋による職業教育の充実,産業界等のニーズの適切な反映,社会人の学び直し等,多様な学習ニーズへの対応,さらには,高等教育機関としての質保証等についての4点を記載しているものでございます。
9ページ,基本的視点等を踏まえた制度設計の在り方についてです。まず(1)制度の基本設計といたしましては,修了年限の取扱いなど機関の基本的なフレームワークに係るものについて記載しております。この機関につきましては,学士相当の課程を提供する修業年限4年の機関と短期大学士相当の課程を提供する修業年限2年又は3年の機関を制度化することといたしておりまして,とりわけ4年制の課程につきましては,前期・後期の課程区分を設けることができるとする特徴を記載しております。
その下の具体設計でございますが,先ほどの8ページの1の(2)重視すべき視点でまとめております四つの重視すべき方向性に沿って,これまで論点2から論点9までという形で御議論いただきました内容を改めて整理しているものでございます。
丸1,理論と実践の架橋につきましては,インターンシップをはじめとした実習等による授業科目の充実,総合的な演習科目の設定,また教員につきましても,実務家教員を一定割合以上配置することとともに,研究能力を併せ有する実務家教員の配置を一定以上義務付けることについて,こちらに記載することとしています。
また丸2,産業界等のニーズの適切な反映につきましては,企業等との連携により教育課程を編成する体制を整備すること,10ページでございますが,設置認可や認証評価におきましても産業界と連携についての記載をこちらの方に入れております。
丸3,社会人の学び直し等に係る制度設計でございますが,その中の二つ目の丸,教育内容・方法にございますように,多忙な社会人等向けのパートタイム学生や科目等履修生として学ぶ機会の充実,短期の学修成果の積み上げによる学位取得を可能とする仕組み等についての記載でございます。
その下,丸4,高等教育機関としての質保証等に係る制度設計でございますが,こちらにつきましては,教授等の職制などは現在の大学・短期大学と同様とすることを基本としつつ,とりわけ実務卓越性に基づく教員を教員組織の中に積極的に位置付けること,また,教育条件といたしましては,必要専任教員数,備えるべき施設設備,校地・校舎面積等につきましては,大学設置基準の水準を踏まえながら,質の高い職業人養成にふさわしい適切な水準を設定することとしております。
また,一つの授業科目について同時に授業を受ける学生の数についても,適切な水準を設定すること等について,こちらの方で記載することを考えております。
そのほか,質の保証の仕組みとしまして,独自の設置基準の制定,新たな審査会を設けての審査,また研究活動等の情報公表につきましては,現行の大学・短期大学の実施しているのと同等,又はそれ以上に充実した情報公表を義務付けること等についての記載を入れております。
(3)制度全般にわたる事項といたしまして,その四つの柱を通じ,全般的な事項についての記載を追加いたしております。研究機能の位置付けということで,この機関につきましては,「教育」機能に重点を置くが,機関の目的には「研究」も含めることとすること,さらに,制度上の位置付けとしては,こういった研究機関の目的に研究が含まれること等を踏まえ,この機関については,大学制度の中に設置して,国際的な通用性のある学位授与機関としての位置付けを図ること等について記載するものでございます。
なお,その下,学位の種類・表記につきましては,まだ議論も終えぬ状況であったかと思いますが,世界の高等教育機関における学位授与の標準的な在り方,我が国における既存の学位制度との整合性も踏まえながら,実践的な職業教育の成果を徴表するものとしてふさわしい設定方法を引き続き検討することとしております。
また,名称につきましても,例えば「専門職業大学」等の名称が考えられるが,引き続きふさわしい名称を検討することとしております。
12ページ,最後のページでございますが,対象分野,設置形態,財政措置等についての記載をしております。四つ目の丸,財政措置等につきましても,実践的な職業教育を行い,専門職業人材の養成を担う高等教育機関としてふさわしい財政措置の在り方についての検討ということで入れております。
最後,新たな高等教育機関による人材養成推進のための基盤整備ということでございますが,これまでも度々出てきましたような産業界等の連携等についての体制整備に関する記載とともに,職業に関する生涯にわたる学修を支える基盤の形成ということで,各職業に必要な段階的能力とこれを修得するプログラムの可視化等に向けた取組を推進することを記載しております。
以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。予定より説明に時間を要してしまいましたが,これから各章について御意見を頂きたいと思います。その前に,徹底的に何か欠けている章,こういうことを提言する章自体が欠落している,あるいは章の中を若干組み換えて3章立て,5章立てにした方がいいというような御意見等もあるかもしれませんので,まず,この構成全体についての御意見を簡単にお伺いしたいと思います。
それでは,川越委員,どうぞ。
【川越委員】  地方創生という観点について,この学校種は地方創生に資する学校種にならなければならないのではないかと,これまでも3回ほど発言させていただいています。例えば私の県では,今年,高校を卒業した人が1万1,136人いて,6,000人が大学,短期大学,専門学校,就職ということで県外に出ていきます。残る5,000人のうち,実は4,000人が専門学校に進学しています。したがって,残って高等教育機関に進む学生の比率からいいますと,40%が専門学校に進んでいるというのが実態です。これはいわゆる関東,関西,東海,北海道・札幌,仙台,福岡といったようなところを除きますと,恐らく同じ状況ではないかと思っています。九州は,特に福岡,大分を除きますと,そのような状況であろうと思います。大分を除く理由は,立命館アジア太平洋大学という学校があって,少し特殊な状況が起こっているためです。この新しい高等教育機関がこれまでどおり,いわゆる大都市圏に集中してオープンしてしまいますと,ただでさえ県外に流出している学生が,更に県外に流出することになります。地方創生,すなわち地方に残ってくれる人間をどれだけ確保するかということの中では,地方でこういう新しくできた機関で学んで,地方に誇りを持って就職してキャリアを積んでいけるということがすごく重要だと思っております。前にこの意見を申し上げましたときに,申請は全国どこの地域からでもできますと言っていただきましたが,そのことを承知した上で一点申しますと,あえて政策誘導的に,国に指導,支援を頂いて,47都道府県の全てにこの学校が,最低で1校あるいは2校誕生するようなことにしていかないと,地方の若年人口減少,学生の流出というのは食い止めることができないと思います。地域や地方という言葉は,本日の骨子案では,6ページの第3章,1のウの「これらを通じ,我が国の経済成長を支え,あるいは,地域の発展(地域の強みを生かした産業の振興等)にも貢献することとなる人材」というところにしか出てこないのですが,私としては,可能ならば,第4章の1(2)の丸1,丸2,丸3,丸4の後に丸5を設けて,地方創生に資する学校というイメージの記載を是非入れてほしいと思っております。
【永田部会長】  ありがとうございます。今の御意見は,第4章のところに地域という観点を入れてほしいということとして承ります。章立てとしては,よろしいでしょうか。
大体,これまでしてきた議論の方向に従って章立てはしています。問題は,各章で扱う文言等がこれで過不足ないか,あるいは過不足というよりは,ある一定の方向性を示しているかどうかということです。
それでは,早速ですが,第1章の方に入らせていただきます。2ページ,3ページを御覧になりながら,また,過去の議論を思い出しながら,ここに御意見を頂きたいと思います。ここで述べているのは,状況,それから,今後こういうことは必要なのではないか,こういうことがあればいいのではないかという,背景のようなことを述べているわけです。この中の,我が国の状況という中には,産業界からのニーズが主に書かれていますけれども,もし必要であれば,先ほど川越委員から御意見のございました地域という文言も入り得るのではないかとも思います。
そのほかにございますか。金子委員,お願いします。
【金子委員】  私は,ここに書いてある状況については,一般的には,そのとおりだと思うのですが,先ほどから問題になっていますように,このような社会的な要求に現在の4年制大学・短期大学・高等専門学校が応じることはできず,新しい高等教育機関を置かなければ対応することはできないということにつながるような記載がここに入る必要があるのだと思います。先ほどの牧野委員の御意見にもありましたように,実際に企業で必要とされるスキルがどのようなものかと考えてみますと,非常に狭く限定された専門的能力ではないのです。しかも,かなり汎用性の高い,高度な能力であるといったことが必要とされているということでしたが,そうだとすると,むしろ4年制の既存の大学でも対応できないことはないのではないかと思えるわけです。
基本的には,今,ここで新たな高等教育機関で行うべきとされている教育は,私は4年制の既存の大学でもできないことはないという方の意見なのですが,ただ,もし新制度の創設を提言するこの骨子に意味を持たせるとするならば,新しい職業高等教育機関でなければ対応できないこと,その需要はどこにあるのかということについて,もう一つ,何か具体的な論点がここにあるべきではないかと思います。
以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。第1章にはもう一つインパクトのある記載があればいいと思います。事務局,お願いします。
【塩原主任大学改革官】  説明させていただいてよろしいでしょうか。
ただいま金子委員から御指摘いただいた点は,事務局としては第2章で書かせていただいたつもりでございます。第2章の記述が十分かどうかという点を御意見いただければと思います。
【永田部会長】  金子委員の御意見は,第2章を第1章のどこかに前振りとして書けないかという御意見だと思います。
【金子委員】  例えば,一般的な能力が必要だということと,初めから非常に限定された能力が必要だということ,その二つの論点だけでは,新しい機関は正当化できないのではないかと思うのですが,それに対応するようなものが何かあるのでしょうか。これは第2章の議論を踏まえた上で申し上げていることでして,私は必ずしも十分な記載になっているとは言えないと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。そのほか,いかがでしょうか。今,第1章のところを見ると,背景として,第2章で訴えるものが若干欠けているかもしれないという御意見だったと思います。そのほか,いかがでしょうか。
それでは,第2章の方で,高等教育における職業人養成の現状と課題,ここは大変重要な部分なのですが,ここに明記されているもので十分かどうかということについて御議論を頂きたいということでございます。
小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  第2章にもう少しこれまでの高等教育改革の話を盛り込んでいただけないかと思っています。牧野委員が御指摘になった,現在の産業界が求めている需要というのは,まさに的確だと思います。そのことは,実は平成20年の中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」から,平成24年の「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」という,解のない問題に対して,解を考えて,生涯にわたって学び続けていく力を創ることこそが高等教育の行うことだという答申の延長上にあるのだと思います。これは,この新しい高等教育機関に限った話ではなくて,まさに既存の大学そのものが目指すべき方向であって,そのことについては,制度の現状の大学・短期大学の箇所に書いていただかないと,この新しい学校種の必要性をきちんと出せないのではないかと思います。これまでの中央教育審議会の議論の中で技能の問題をどう扱ってきたかということを是非触れていただきたいなと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。確かに主に職業人の養成について要望があるということでの道筋がこの骨子案には余り書かれておりません。
そのほかはいかがでしょうか。牧野委員,どうぞ。
【牧野委員】  私は今期から中央教育審議会の委員になりましたもので,審議会の進め方について改めて確認させていただきたく,議論にあがっているようなことにおいて,新機関で行う必要はなく,既存の4年制大学で行うとの結論になった場合に,これまでの議論はどう取り扱われるのでしょうか。これまでの議論の蓄積が全部消えてしまうことになるのか,この点についてお伺いしたいと思います。
【永田部会長】  今の議論は,新機関の必要性や特徴を際立たせるために答申につながるこの骨子をどう書こうかということです。
一言だけ申し上げますと,新しい大学を作るということは,言い換えれば,新しい課程を作るということです。新しい課程という考え方に立てば,すごく分かりやすいと思います。
【牧野委員】  よくわかりました。ありがとうございます。
【永田部会長】  金子委員,どうぞ。
【金子委員】  これは文部科学省に伝えるべきことかもしれませんが,今まで中央教育審議会で議論されてきたことについて,一般的な大学でも自律的に学修する態度を養おうということは常に言ってきていますし,そのためにどのような課程が必要かということも強調されています。
特に,私がこの間から申し上げてきていることは,既存の4年制大学でも学修プログラムという形で明確に学修目的を設定し,それに対する道筋を明示したような課程を作る,そういった形で,先ほどおっしゃっていたような能力というものを養成するべきだということです。これは,これからやるべきだということを主張していますし,これから議論されるべきものと思っています。
【永田部会長】  岡本委員,お願いします。
【岡本委員】  今までの議論に関連するのですが,既存の大学・短期大学・高等専門学校・専門学校の職業教育の現状について,記述があります。それぞれが一定の職業教育はしているという認識のもとで,しかし,限界もあるため,今,新たな高等教育機関が必要であると,こういう論理構成だろうと思います。大学でもいろいろやれるのではないかという議論は,これまでもずっとありましたが,それは大学のそれぞれの教育理念,それぞれの学校の特色に応じて,大いにされればいいと思います。再三,私も強調している点ですが,今回の産学連携による新たな高等教育機関というのは,産学連携がビルトインされた新たな制度であるということです。既存の大学では,産学連携をやってもやらなくても,それは学校によって選択できるものという話でありますが,一方の新たな高等教育機関は産学連携による職業教育がビルトインされるという点に既存の大学をはじめ,他の既存の学校と制度的な大きな違いがあるということを是非強調していただければと思います。
それから,5ページの社会人学生の状況というところで,我が国の高等教育機関における社会人学生の受入れは欧米と比べて非常に低く,OECD諸国で最低であるという記述がありますが,そのとおりだと思います。ただし,事実だけ記述するのでは不十分でありまして,欧米と比べて一体何がその障害となっているのかについて記す必要があると思います。産業界で働く社会人の働き方の問題などもいろいろあると思いますが,受入れ側の大学・短期大学等の受入れ側にも何らかの問題があるのだと思います。なぜ日本ではこれだけ多くの大学・短期大学・専門学校等がありながら社会人の受入れが不十分なのでしょうか。新たな高等教育機関では従来の機関でできなかったモジュール制や前期・後期課程,産学連携などといった新たな制度的仕組みというのがいろいろできるわけで,そのような制度の具体的な話は次の第3章,第4章になりますが,第1章や第2章は第3章や第4章の具体的な設計につながるようなものであるべきかと思います。
【永田部会長】  今の御意見は,社会人学生の問題について,その背景をもう少し書いていただきたいという御意見だと思います。
永里委員,どうぞ。
【永里委員】  そのことについて,若干のお話をいたしますと,25歳以上の社会人が学び直しをしている状況は,OECDで平均10%でして,それに対して日本では2,3%です。それぐらい日本は欧米諸国に比して低い割合なのですが,これはもともと日本の持っている文化といいますか,新卒を全部会社が雇うという慣習に要因があり,欧米ほど流動性というものがないのです。ここにも書いてありますけど,これからどんどん社会人も学び直しを必要とするような状況になります。これまでも申し上げていますが,会社の中の事業部そのものが消滅するといったようなことも起こっていくわけです。要するに,人材の流動,年功序列,途中採用,あらゆることがこれから変わってきますので,そのような雇用の変容に対応するために,社会の変化に即応し得る学び直しの機関の必要性というのは,今後ますます高まるであろうということです。
【永田部会長】  ありがとうございます。経済の現場からのお声です。
ほかにいかがでしょうか。
それでは,第3章の方に移ります。第3章の方で,何か考慮が足らない,あるいはこれは除いてほしいというようなことがあれば,ここで御意見を賜りたいと思います。先ほどのように第1章,第2章の問題ももちろん触れていただいても結構ですが,第3章を基本にお話しいただければと思います。いかがでしょうか。
益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】   第3章の養成すべき人材像はとても大切なポイントです。年末年始に様々な業界の経営者の方々にお目にかかりました。特に優秀な中堅人材は足りているのか,について尋ねるためです。私は,1980年から85年まで,都市銀行の人事部で採用担当の経験があります。当時,高校から大学,短期大学への進学率が高まり始め,優秀な高卒の方の採用が難しくなり始めた頃です。「特に中小企業・リテール業務でリーダーシップ」を発揮していた中堅マネージメント候補者となる男子高卒者のレベルを維持した採用は難しく,銀行界ではいち早く採用中止を決定しました。あれから30年です。ますます進学率が高まった今の実態に興味がありました。日本全体で比率の高い中小企業とサービス産業の大都市圏と地方の観光・ホテルの経営者に「どのような役割をする人が足りないか」,「どの従業員層に課題があるか」をお聞きしました。答えは,参考資料2の22ページ「産業競争力の強化に資する我が国の教育,人材育成システムの在り方に関する調査研究」で示されているように,経営トップ層の下にいる番頭,ないしは現場のミドルマネージャーが必要ということでした。先ほど,牧野委員から「日本の労働レベル・質は非常に高い」との御発言がありました。イギリスでは,移民の2割が英語を話せないので,新たな支援予算措置をするそうです。日本では,極めてしっかりした労働層があるが,その次の層が足りないのではないか,ないしは,もっとレベルを上げていかないといけないのが実態なのではないでしょうか。新たに養成すべき人材像では,是非ともこのイメージを入れて議論を続けたいと思います。
次に,この実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関における「研究」について触れたいと思います。従来の高等教育で中心だった「座学における研究」ではなく,インターシップなどの「現場経験に基づく研究」が大切だと考えます。教室で勉強して現場に出る,そこで疑問にぶつかる研究をする,そしてまた現場に出る。これが新たに求められている教育と研究だと思います。是非,事務局にお願いしたいのですが,「トビタテ!留学JAPAN」では,留学前にも留学後にもインターシップを実施すると思いますのでプロジェクトに参加している学生の意見を教えてください。実践から導かれた研究と学習は,非常に重要だと思いますのでお願いいたします。
最後に学び直しの点です。私の意見を先にお話しますと「現在ある高等教育機関でも学び直しの講座はあるが,余り頼りになりそうにない」ということです。これからの時代を考えますと育休後の復職やリストラ後のキャリア変更などがますます重要です。私がその状況にあったとして,インターネット上でいろいろと調べましたが,残念ですがそこに行って学んで自信が持てると直感できるところはありませんでした。時々,社会人のための講座や海外留学制度で候補者選びの審査員をお引受けすることがあります。そのときの実感ですが,応募者のほとんどは勉強マニアの方で差し迫った学び直しの方ではないということです。新たな高等教育では,差し迫っていたりしている学び直し方法も考えなければいけません。社会人が就業後に時間を作ることは非常に大変です。今,女性労働力を更に生かすべく,社会,会社組織,人事制度が変わらないといけないという議論が始まっていますが,社会人の学び直しについても同様な議論が必要でしょう。それに十分値するきっちりした制度を作っていくことが重要だと改めて思っております。
以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。いろいろと議論してきたことがもう一度違う言葉になって,まとめられました。研究というものの問題,すぐに学びたい,社会復帰,あるいはキャリアを変化させるために行きたい学校になるかどうか,あるいはその社会人がこれからの産業構造に対応していかなければいけないということが全部含まれた御意見だったと思います。
そのほか,いかがでしょうか。 研究という問題については,益戸委員の御意見とおりだと思って聞いていたのですが,ただ研究というのは,学生がやるのではなく,基本的には研究者がやることになっています。その研究をもって教育をしていくというのもあるし,もちろん研究を進める中で一緒に進んでいくということもあると思うのです。ただ,その研究というのは,学生がやるものだと考えてはならず,教育課程の中に教員の行った研究というものが,いかに寄与しているかということで見るものだと思います。
永里委員,どうぞ。
【永里委員】  その研究について,ここの研究というのは,いわゆる専門教育的な研究だろうと思いますが,社会で必要とされている研究ということになりますと,例えばインターンシップに行ったとき,その企業と一緒にプロジェクトを組んで問題解決していく中で,チーム力や研究力が養われるわけです。私が申し上げたいのは,研究のための研究のようなことは,従来の大学でやればいいのであって,ここは実践に基づいた研究,すなわちグループで一緒にやっていく,そこに教授がいるというような感じのものであるべきです。それによりコミュニケーション能力も高まれば,リーダーシップも発揮できるような力が養われますので,産業界にとっては歓迎すべきことだと思います。
以上です。
【永田部会長】  そのほか,いかがですか。大学体系への位置付けというところに書かれている,割と短い文章に対して,これでいいのかという御意見が出てきませんが,よろしいですか。
金子委員,どうぞ。
【金子委員】  それに関連すると思うのですが,7ページの諸外国との比較の件について,一番先にも申し上げましたが,職業教育が高等教育の中でどういう役割,どういう位置付けをするかということについては,国際的に一定の流れがあると私は思います。それは特に1960年代を中心として,一時,先進国の中では職業高等教育機関を別に作るという動きが非常に大きかったわけです。イギリスにおけるポリテクニク,フランスにおけるIUT,あるいは中級技術者養成課程,ドイツの専門大学,これらを1960年代に作りまして,ある程度成功したのですが,その後,世界は1990年代から新しい段階に入っているものと私は思います。それは何かと申し上げますと,冒頭からの御意見にもありましたが,要求される能力が複雑化というよりは多様化していて,今までの概念でどうも捕まえにくくなっているということでありまして,端的に言うと,特にホワイトカラーの仕事が異常に変質しているのではないかということです。それに対してどう対応していけばいいのかというのは,各国共通で非常に大きな問題になっているわけです。
そのような課題に対してどのような対応をしているかといいますと,例えばイギリス,ここではポリテクニクが大学へ昇格と書いてあり,新しいポリテクニクが専門大学になったように聞こえますが,今,ポリテクニクは完全に大学です。ポリテクニクでも,例えば一般課程はあります。それから,フランスは,いろいろな職業高等教育機関をむしろ大学の中に取り込み,そこで幾つか資格を与えるという方法をとっています。ドイツは,専科大学が比較的成功しており,また学士を与えるという方向になっていますが,しかし,新しいものを作ったというわけではありません。フィンランドにおいては地域大学で,少し特殊な例だと思います。それから韓国も,専門大学というのは,基本的には短期職業高等教育機関で,4年制課程があるというようなお話が前回ありましたが,調べてみたところ,専攻深化課程と書いてあり,これは日本で言うと一種の専攻科のようなもの,また,その卒業生に学士を認めるという制度で,これが近年できました。ただ,この専攻深化課程は全入学者の10分の1くらいで,また看護課程が多いらしく,非常に特殊な例のようです。
私が申し上げたいのは,いろいろな高等教育機関があって,それをシステム化して,その間の連絡をうまくしていこう,あるいは,新しいミッションをもってして,全く新しい定義にのっとり作ろうということは,各国を見ても例がないのではないかということです。日本は,そういった意味では,国際的な流れに少し背馳(はいち)しているのではないかと思います。
そういう意味で,私は,むしろ大学体系の中に位置付けることとするものの,異種の大学として位置付けるということはしない方がよろしいのではないかと考えております。
【永田部会長】  それは金子委員が当初からおっしゃっている御意見です。それが今こういう状態になっていて,それは一つの体系付けの中で,こういう点に留意すべきという御意見であるというふうに受け取った方がよろしいと思いますので,そのように承らせていただきます。
そのほか,いかがでしょうか。佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  先ほど益戸委員が1984年に銀行が高卒の生徒を採らなくなったというようなお話がありました。それまでのことを考えると,高等学校もいわゆる商業高校や農業高校,工業高校はかなり良い人材を産業界に出すというような役割がありました。しかし,今は,どちらかというと,普通科に入れない子たちが進むというような形に専門高校が変わっているのではないかと思います。この部分について申し上げると,大学体系への位置付けというのは,今,お話がありましたように,職業教育を行う機関も諸外国でも大学体系の中にあって,学位をきちんと出しているわけですから,それは当然そのような方向であろうと思いますが,この新しい制度が,いわゆる普通の大学に進めないからこちらに行くというような存在にならないことが重要だと思います。例えばかつてポリテクニクであったオックスフォード・ブルックス大学は,かなりレベルの高い学校になっており,ホスピタリティスタディーズを中心にして,国際関係も含めて強くなっています。新たな高等教育機関もそのような存在になるよう作っていければと思っております。つまり,新たな機関を大学体系の中に位置付けるならば,大学があって,その下に見なされるような形にはならないように設計していかなければならず,社会からもかなり質の高いものであると見なされるような設計が必要だと思っております。
【永田部会長】  ありがとうございます。できるか,できないかは別として,それは最終的な目標でもあるのだろうと思います。
ほかにはいかがでしょうか。それでは,第3章についてはまた後で総合討論することにいたしまして,一番御意見が交わされることになるかと思われる,第4章の新たな高等教育機関の制度設計に移りたいと思います。こちらは,具体的な制度設計について書かれていますが,そのうち幾つかについては今後検討するものとされている部分もあります。結構量も多いのですが,いろいろな論点が入っています。それでは御意見を頂きたいと思います。
川越委員,どうぞ。
【川越委員】  先ほど申し上げたことと同じでございます。先ほどは意見を述べるタイミングが間違っているのではないかという御意見を頂きましたが,地方創生に関することについてはどこにも書いていなかったので,意見を申し上げるとしたら,あの場で言うしかないかと思った次第であります。その上で,この第4章の(2)の重視すべき視点というところに是非,この地方創生に資するという観点を何らかの形で書き込んでいただきたいというのが私の意見です。
【永田部会長】  わかりました。
北山委員,どうぞ。
【北山委員】  質保証の仕組みとしての情報公開の充実について申し上げます。有識者会議の資料を拝見しますと,新たな高等教育機関においては,既存の大学等と同程度の水準の情報公開が求められる旨の記載があるとともに,質の高い専門職業人養成を目的とする機関であることや学生等の学校選択に資する情報を提供すべきことなどを踏まえると,社会における評価等についても情報公開を義務付けるべきとございます。その社会的な評価等の例としては,資格試験の合格率や,就職先,企業からの評価等が示されています。これらを踏まえて,今回の検討においても,各論の中で新たな高等教育機関の特徴に応じた情報公開の在り方について言及していただければ,質保証の部分が更に充実すると思います。
それから,川越委員がおっしゃった地方創生についてですが,ごもっともな御意見だと思います。地方創生に関しては,平成26年12月27日に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定されています。その中に大学の話も盛り込まれておりまして,そこでは,地方ニーズに対応した高等教育機関の機能が地方では十分でないと,指摘されています。そうした問題意識が出発点の一つになろうかと思いますので,その点についても第1章か第2章で言及した方がいいのではないかと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
それでは,岡本委員,どうぞ。
【岡本委員】  3点ございます。
まず,8ページの(1)身に付けさせるべき資質・能力ということについて,非常にいい分類かと思います。専門高度化と実践力強化は専門学校でも行われているわけですが,分野全般の精通であるとか,総合力強化とか,基礎的・汎用的能力や教養,こういうところは専門学校の制度の中では必ずしも行われていないわけであります。先ほど牧野委員のインターンシップ等のお話については非常に共感するところですが,専門学校の延長線上に今回の専門大学が入り,このような汎用的な能力の育成は大学でやるという区分けについては,私は反対です。つまり職業が固定化された産業界の中で人材育成を図ることは,従来の専門学校でできるわけで,産業構造,職業等が人材ニーズも含めて変わっていく中で,創造力を身に付けさせるという意味で,このような汎用的な力を見つけさせるということ,そしてまた,理論と実践の架橋ということは非常に大事だということが意見の1点目です。
2点目,10ページの教育条件のところですが,必要専任教員数,備えるべき施設設備,校地・校舎面積については,大学・短期大学の設置基準の水準を踏まえつつ,質の高い職業人養成にふさわしい適切な水準を設定ということでありますが,考え方として,実は大学・短期大学の設置基準もここ10年,20年で非常に変わってきていますから,新機関の基準も社会の変化に対応した基準とするべきであり,それは画一的なものであってはならないと思います。例えば,立地条件にしても,地方と都会では校地の利用状況も全く違うわけですから,そのようなことにも配慮していただきたいということであります。特に教育機関においては,ラーニング・アウトカム,学修成果が大事でありまして,そのラーニング・アウトカムを出すための教育プログラム,教授陣,ここが一番重要なわけでありますので,その点を強調していただきたいということであります。
それから3点目,11ページの名称については専門職業大学というのが出ておりまして,今後ふさわしい名称を検討となっております。有識者会議では,専門職業大学,若しくは専門職大学等が考えられますというまとめとなっておりました。個人的には,専門職大学が一番いいのではないかと思います。その次であれば,専門大学という名称がいいと思います。専門職業大学が絶対駄目というわけではないのですが,なぜ少し引っかかるか申し上げますと,厚生労働省の職業能力開発大学校で,職業訓練を行う事業がありますので,厚生労働省系の大学校と混同されるおそれがないかというのが1点です。それから,職業を英語に訳すと,ボケーショナルとプロフェッショナルの二つがあり得ると思うのですが,職業というのはどうしてもボケーショナルの響きがあり,ボケーショナルは,どちらかといえば,高等教育の職業という意味よりも,それより少し低い,中等レベルというような印象もあるように思います。プロフェッショナルの方は,高等教育というふうに考えることができるので,このような点も勘案すると,やはり新機関は専門職大学の名称が適当なのではないかと思います。また,専門高校というのが今ありますので,専門高校,専門大学,そして専門職大学院という,この三つが一本の柱になるようなネーミングという意味でも,私は専門職大学,若しくは専門大学を是非お願いしたいと思っております。
以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。
それでは,次,千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  私は8ページのところでお話をさせていただきたいのですが,(1)の身に付けさせるべき資質・能力というところで,ここに書いてあることは理にかなっていると思うのですが,特に丸2のところの実践力強化について意見を申し上げたいと思います。実践力強化というのは,既存の大学・短期大学・専門学校でも同様に行っていることとして捉えることができるのではないかと思います。これをプラティカルスキルということではなく,ワークフォースだとかジョブフォースというような,仕事力というところに置き換えていくと,この新しい大学の姿というのが既存の機関とは区別され,少し分かりやすくなってくるのかと個人的には思っています。例えば看護学部は,大学・短期大学にありますけれども,基本的には現場経験のある教授の方が長い時間をかけた実務教育と理論教育,そして長期のインターンシップというところでも,十分な時間をかけてスキル教育をしていき,まさにワークフォースを身に付けた人材を作っているのではないかと思います。今度の新しい大学についても,既存の大学の看護学部と同じように,現場経験のある先生方が十分な時間をかけて,現場ですぐ仕事ができる,そういうレベルまで技能を高めて卒業させていく,このような教育のやり方を様々な分野で行っていくということかと理解しております。このように新しい教育機関を説明することで,新機関の存在が分かりやすいものになっていく一つのやり方かと思います。また,このような教育をきちんとやることによって,学生たちも,高校生たちも,是非自分はこういう仕事に就くために勉強したいといった意欲を持って新たな高等教育機関に来てくれるのではないのかと思います。
また,アメリカの州立大学等では,それぞれの地域に合った教育というのが行われていますけれども,日本でも,観光が盛んな地域においては,観光の実務家人材,あるいは造船が盛んな地域であれば造船の実務家人材ということで,今度の新しい高等教育機関においては,それぞれの地元の需要に合った教育をやっていくことも一つのやり方として考えられるのではないかと思っています。
これらをベースにディプロマ・ポリシーを考えていくと分かりやすいのではないかと私なりには思っておりますので,よろしくお願いいたします。
【永田部会長】  ありがとうございます。 そのほか,いかがでしょうか。麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】  9ページでございます。前も申し上げたかもしれませんが,(1)制度の基本設計におきまして,二つ目の丸に,黒丸が二つあり,修業年限4年と修業年限2年又は3年に分けられるとありますが,これに関しては十分理解いたします。ただし,修業年限4年のところで,前期・後期を置くことに関しては,現行の大学制度との関係にもよく留意して検討する必要があるかと思います。現行の4年制大学の制度におきましては,そもそも前期・後期という概念がありません。前期修了者に短期大学相当の学位も与えておりません。現行の4年制大学と短期大学は,別々に設置基準がありますし,それぞれの法令上の決められたものがあります。後期課程を置くことに関しては,いわゆる社会人の学び直し等も含めて必要であるということは理解いたしますが,新機関に前期・後期課程を設けることを可能とする場合,現行の大学の制度との兼ね合い,現行の大学に前期課程・後期課程を現在置けない状態になっているということを十分勘案した上で,進めなければならないのではないかと思っておりますので,その点よろしくお願いします。
以上でございます。
【永田部会長】  その点は,御指摘のとおりだと思います。博士一貫課程も同じ問題があります。2年終わった時点で,別途,認定をして修士を与えるような扱いを大学院ではしています。
そのほか,いかがでしょうか。今の時点では,設置基準の詳細までは議論されていませんが,いろいろなバラエティを持った考え方にしてほしいという御意見があって,それは確かにそうかと思う一方,例えば,社会人を受け入れる課程を設けるのであれば,保育園を必ず併設すべきであるなどそういう詳細については,アウトラインができて,また話し合っていくべきことかと私は思っております。是非ともそのような議論をする機会もあるといいと個人的には思っているところです。金子委員,どうぞ。
【金子委員】  かなり基本的な問題なのですが,今,議論されている組織が制度的にどのようなものであるのかについて,ある程度はっきりした議論は必要なのではないかと思います。それに関して,一つは,現行の大学ないしその他の機関に関しての制度的な経緯を1のところで少し入れておいた方がいいのではないかと思います。今回問題になっているのは,制度的に申し上げますと二つ問題があって,一つは,これまでの専修学校専門課程ですが,学校教育法では1条校には書き込まれておらず,その他の学校のうち云々(うんぬん)というような書き方をしています。そのような意味では,いわゆる1条校ではないわけでありますが,今回議論されているのは,いわゆる1条校の中に新しい職業教育機関を入れるという話,これが一つです。もう一つは,この新しい教育機関が短期であるものか,それとも学士課程を出すものであるかという問題です。これについては,余りここで言及はないのですが,この答申は,そういった意味では,日本の学校教育制度自体に相当大きな変化をもたらすわけでありますから,その問題については明示をしておいた方がいいのではないかと思います。
もう一つ,これに関連して,大学体系の中に位置付けると書いてありますが,大学体系の中に位置付けるというのはどういう意味を持つのかというのが,必ずしも明確ではないと私は思います。1条の中に位置付けるのであれば,大学に並列して新機関というものを入れるということも不可能ではないだろうと思います。ただ,今,大学体系の中に位置付けると書いてあるのは,現在の学校教育法ですと,短期大学というのは独自に規定されているわけではなくて,広い意味での大学の一部という扱いになっていて,学校教育法108条で,大学のうち一定の資格を持ったものが短期大学と称するという言い方をしているわけです。そのような意味では,広義の大学の中に短期大学があるという考え方をしているわけですが,これに並列して新しい大学を位置付けるというやり方も考えられるかと思うのです。ただ,そうであれば,もしかしたら,4年制であれば,既存の大学の中に職業専門課程なるものを作るということを可能にするという言い方も可能かもしれません。そういった意味での制度的な選択肢について,ある程度ここに書いてあった方がよろしいのではないかと思います。
以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。学校教育法の中で具体的に何条にどのような形で規定するのかというような,根本的な法律論については,実はこれまでも余り表立って議論されておりませんので,そもそも関連した法律はどのようなものがあり,どのように位置付けられる可能性があるか等については,一度,委員の皆様方と御議論した方がいいかと思っています。これについては,一度,事務局で整理していただきたいと思います。金子委員,御指摘ありがとうございます。次回以降にその議論はさせていただきたいと思います。
そのほか,いかがでしょうか。今度は第1章から第4章まで全体含めて,まだおっしゃっていないこと,あるいは追加したいこと等ございましたら,積極的にお願いいたします。冨山委員,お願いします。
【冨山委員】  永里委員と重なるとは思いますが,専門教育の専門の意味合いについて,9ページ目の教員の話,それから11ページ目の研究機能の位置付けについて,先ほど少し議論がありましたが,これについて一言申し上げておきたいと思います。従来の大学体系の延長線上では,専門教育というのは,どちらかというと,アカデミックの専門課程というふうに捉えられがちなような気がするので,これは,もちろんそれとは違う前提で書かれていると思いますけれども,そうならないように,割と明確なメッセージを出しておいた方がいいかと思っています。これは職業的あるいは社会実践的な専門教育という意味だと思うので,そこは是非明確に記載いただくようお願いしたいと思います。
それから,それに近い話なのですが,先ほど永里委員が言われた話と同様なのですが,研究能力について,理論の実践という切り口と,もう一つ,実践の理論というのがあるのだと思います。ここで最も重視されるのは,恐らく実践の理論だと思います。分かりやすい例を一つ言うと,戦後,昭和20年代に石川馨先生という大変偉大な先生が東京大学にいらっしゃいました。確か化学の先生だったと思いますが,今世界で使われているシックス・シグマも含めてTQCの基本体系を作ったのは,京都大学の西堀先生と東京大学の石川先生です。彼らが何をやったかというと,アメリカで作られた統計的品質管理手法というのを日本型に展開をして,当時の生産現場は高卒の人たちがメインだったため,彼らが使いこなせるような,要するに足し算,引き算,割り算,掛け算が全てできるような,いわゆるパレート分析とかABC分析とかに展開していったわけです。ある意味では,学問的には大変妥協していて,その統計手法というのは,恐らくアカデミックな統計的な批判には耐えられないのですが,これが実は現場でははるかに使い勝手が良かったものなのです。要するに,現場の人に統計学をやるべきと言ってもそれはもう無理なわけですが,アカデミックな統計学を強要するのではなく,現場になじむ,実践に適した手法というものを編み出したということが日本を製造業大国に押し上げた背景だと思います。
石川先生たちがすごかったのは,もともとアカデミックな人たちだったので,まさに実践に裏打ちされた理論を作っていったところだと思っていたのですが,ところが,残念ながら,例えば社会人文系で申し上げますと,今の日本国の実践の理論というのは非常に弱体だと思っています。そういった意味合いで言えば,ここでの研究能力というのは,恐らくその軸だと思います。そうするともう一つ考えなければいけないことは,ここでいう研究能力というのは,恐らくドクター力とは少し違う話で,例えば学術的な博士論文の批判には耐えられなくても,実践で使えるものは幾らでもあるわけで,そうであれば,新機関でいう研究というものをどう定義づけ,いわゆるアカデミックな研究とはどのように線引きしていくのかということはとても重要で,これは11ページ目の研究機能の位置付けという点でも実は同じ問題があると思います。例えば,先ほどいろいろな経営の現場で何が大事かということが出ていましたが,そのようなところで実際に使われている教科書であるとか,有効に機能するもののほとんどは,学術的な視点では考えられていない理論なので,恐らく博士論文はパスしません。ですが,そちらの方が現実的には使われており,現場では有益であり,有用なのです。私が書いた本も,産業界では使われている場合がありますが,はっきり申し上げて,これは博士論文の批判には耐えられないものです。したがいまして,新機関の研究機能の位置付けについては,研究の意味を明確にした上で,きちんと明確化していかないと,産業界や現場は無論,誰も望んでいないような方向に行ってしまうような危険性があると思うので,その点,整理をよろしくお願いいたします。
【永田部会長】  今,冨山委員がおっしゃったことは,前からずっと申し上げていることで,いわゆる学術博士云々(うんぬん)というわけではなくて,研究というのは幅広い意味を持っています。例えば,先ほどの牧野委員がおやりになっていることをまとめて,ポートフォリオとして出せば,それはそれである一定の現場教育の研究ということになるという認識かと思います。
永里委員,どうぞ。
【永里委員】  研究に関しては,そういうことなので,その点は省略しまして,先ほどの石川教授の話は,実は化学メーカーその他で大変役立っています。そういう実学の研究というのがあるということのすばらしい例でございます。
そもそも論に戻るのですが,牧野委員がおっしゃっているように,ここで議論されたことは,既存の大学に戻してやらせればいいというように思われなくもないですが,そもそも論からいって,既存の大学では今挙げられているような課題への対応ができておらず,現行制度では行き詰まっているから,このような新しい高等教育機関を作ろうとしていると私は解釈しています。
そこで,この高等教育機関はどこに置くかということで,川越委員のおっしゃっているとおり,地方創生は非常に重要ですから,疲弊している地方に,各都道府県,48校置くというような考えと,それからもう一方で,この新機関を出た人たちは質の保証がされていて,国際的に通用するというようなことも学位の部分で話されていますので,そうなると地方創生とは相反して,48校も必要ないのではないかという考えがあります。後者の考えであれば,少ない高等教育機関で,そこを出た人は質の保証がされていて世界中に通用する,日本の企業もこぞってここの人を採用することも考えられるわけです。偏差値50の,年収500万円というような例示も以前,会議の中でありましたが,それは各地方の創生にとって,そのような人たちをイメージしていくとすると,いわゆる世界に通用する人材というのと,ちょっと違ってくるのではないかと思います。
結論を申し上げると,川越委員のおっしゃるような,例えば宮崎県にこの高等教育機関を持っていくというようなことはあっても,それは非常に数を少なくして行えばいいのではないかと思います。そしてきちんと質が保証された教育機関とするべきだというのが私の意見です。
以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。毎回申し上げていますが,設置者がその哲学に基づいて作っていく,それを許容させることができる枠組みを今作っているわけです。ですから,今,永里委員がおっしゃったものもあるけれども,同じレベルなのに地方でこそやれるような業種もあるかもしれないということです。御意見として伺っておきます。
冨山委員,どうぞ。
【冨山委員】  この新しい仕組みというのが少なくとも学生から魅力的に映って,かつ採用する側からもよく映らないと,現実的にはきちんと定着しないと思うので,そういう脈絡で一言申し上げたいと思います。今,私は,法科大学院の数を実質的に減らす委員会の委員を務めているのですが,法科大学院の失敗からそれなりに教訓を学べると思っていて,法科大学院は,中身がきちんと整備される前に,学校をたくさん作り過ぎてしまったのですよ。恐らく,最初のところで絞り込んでから順次広げていくというやり方をしていれば,多分展開は変わっていったと思うのですが,いきなり何十個も作ってしまったので,あのようなことになってしまったわけです。
この議論は,ターゲットは現状中堅人材に位置付けられている人をメインとしているのだと思いますが,前に申し上げたように,従来の偏差値と違う尺度においては,別の偏差値軸において,その新たな尺度の中では偏差値の高い人をまずは養成していくということを考えるべきだと思っています。要するに,介護偏差値というのもあっていいし,観光現場の偏差値もあっていいと思っているので,そういった意味合いで申し上げると,最初はかなり質というものを重視して,丁寧に作っていくというスタイルが大事で,質というものは余り妥協しない方が,少なくとも入り口においては,もちろん運用面においてもですが,心掛けた方がいいように私は思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。ほかにはいかがでしょう。安部委員,お願いします。
【安部委員】  制度上の位置付けに関しましては,学校教育法第1条,いわゆる大学とは違う専門職業大学とするのか,あるいは大学の1類型,例えば第108条の短期大学のような位置付けとするのかということについては考えなければいけないと思います。ただ,短期大学の場合は,2年又は3年という修業年限で,これは4年制の大学とは完璧に違いますので,それとは異なるものとして,学校教育法に規定されているということは容易に理解できますが,今回のこの新たな高等教育機関に対しては,先ほどから,内容に関してもそれは大学でできるのではないかという話が当初からずっとあるように,実践的な職業能力を鍛錬する機関というだけで,その制度や役割がやや漠然としており,制度として大学と差別化して,規定し得るのか疑問に思います。例えばこれが現場の高校の先生とか,これから進学していく高校生や,その保護者に対して,この制度が創設される前に,既存の短期大学・大学・高等専門学校との違いや,もっと言うと,この機関にしかない魅力をしっかりと説明したものを,まずこの骨子の制度設計の中にも書き込むべきではないかと思います。先ほどおっしゃったような地域性,あるいは職業教育機関としての国際性を担保した,既存の大学と同等の高等教育機関であるとか,そういうことをしっかりこの制度設計の中に書き込むとともに,具体的な教育の中身が,既存の大学とどう違うのかについて,例えば対照表などを用いてしっかりと書くべきではないかと思います。そうしないと,ステークホルダーの了承が受けられないのではないかと思いますし,何のためにこういう機関を作るのかと社会から問われてしまうのではないかという気がします。
以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。
長塚委員,どうぞ。
【長塚委員】  今,高校生が大学に魅力を感じるかどうかというようなところに言及がありました。第1章のところで申し上げようかと思っていたのですが,産業・職業の状況で,世界的な状況とか我が国の状況のところに,国際社会の世界的な状況というくくりはあるのですが,産業構造全体に,まさに多国籍企業の大企業を中心に世界を席巻(せっけん)していることについて言及がないのは適当ではありません。いわゆる産業構造がグローバル化して一つになろうとしているような,そういう文言がない中で,最初から日本の中の地方の話,あるいは専門高校出身者対象のための大学づくりのような前提で文章が書かれてしまっている感じがあるように感じます。加えて,普通科を出て,本当に実践的な教育を求めている生徒もいるということも御留意いただければと思います。一方で,専門高校では実践的なものを中心にやるものですから,理論が不足しているのです。例えば工業高校なども,いきなり始めから公式を習って,難しい理論を習うのですが,理論はほとんど分からず,ただそれを丸暗記している状態です。実践から入っていく生徒もいますから,その層が大学に行って,それを理論化して深めていくということができるような,つまり,逆の意味でその学びが深まっていくというようなことがあってもいいわけで,地方創生のためにそのような人材がもっと出てくることが期待されると思いますので,もう少し第1章の最初のところにそういう文言が必要ではないかということが一番の気になるところでありました。
以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。そのほか,いかがでしょうか。第1章から第4章まで全般にわたっての御意見で結構でございます。
もし余りないようでしたら,先ほど少し申し上げたように,法律上の置き方,それから他の高等教育機関との違いについては一旦事務局の方でまとめていただきますので,こういうところに問題がある,こういうところも整合をとる必要があるなどという御意見を出していきたいと思います。一度も法令上の問題については開示していなかったような気がしますので,それは次回の会議で出させていただきます。
それから,新機関の名称の問題についてはいろいろ御意見を頂きましたが,学位の名称についても同じだと思います。バチェラーについては,既存の大学でも括弧書きでいろいろ付しているわけですが,そこにこの専門職業について学んだということが出るような学位名にしないといけないと思っております。この新たな機関を出た優位性が出るように表現しないといけないと思います。
大学設置・学校法人審議会等でも今いろいろと問題が出て,既存の制度の改善をしようとしていること,それから認証評価についても,認証評価と設置の接続をよりよくしていこうということなどが議論されております。質の保証という問題については,他の審議会等ともうまく意見交換をしていかなければならないだろうというように,本日感じたところでございます。
それでは,そのほか,よろしいですか。
それでは,若干時間早めでございますが,本日は新年早々お集まりいただきまして本当にありがとうございます。本日頂いた御意見を踏まえて,また次回以降,議論を続けさせていただきたいと思います。
それでは,次回以降の予定を事務局の方からお願いします。
【塩原主任大学改革官】  次回の開催日程の御案内でございますが,次回,第10回会議は2月12日金曜日,午前10時から12時の予定での開催でございます。場所は,現在調整中でございます。追って御連絡させていただきますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【永田部会長】  それでは,本日の部会はこれで終了させていただきます。
どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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生涯学習政策局参事官(連携推進・地域政策担当)付

高等教育局高等教育企画課新たな高等教育機関プロジェクトチーム

(生涯学習政策局参事官(連携推進・地域政策担当)付、高等教育局高等教育企画課)

-- 登録:平成28年05月 --