[1]の現状と課題を踏まえ、学校教育において、キャリア教育・職業教育の改善・充実を図り、1.学生・生徒等の社会的・職業的自立、社会・職業への円滑な移行を支援するとともに、2.社会からの知識・技能の高度化等の要請に十分に対応する。
具体的には、
○ キャリア教育とは、社会的・職業的自立に向け、必要な知識、技能、態度を育む教育である。
○ ここでいう「職業的自立」は、家庭人や市民等としての自立とともに、「社会的自立」に含まれるものであるが、その重要性にかんがみ、「社会的・職業的自立」とした。
○ キャリア教育について、より詳しくは、「一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な知識、技能、態度を育む教育」と定義できる。ここでいう「キャリア」とは、「個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積」であり、職業生活、市民生活、家庭生活、文化生活など、すべての生活局面における立場、役割を含むものである。このため、「それぞれにふさわしいキャリアを形成していく」ということは、言い換えれば、「社会的・職業的に自立していく」ということと同じである。
○ 改正教育基本法においては、教育の目標の一つとして、「自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと」を規定しており、キャリア教育は、社会的・職業的自立に向け、初等教育から高等教育に至るまで、すべての学校段階を通じ、体系的に実施していく必要がある。
また、キャリアは、順を追って、段階的に成長・発達していくものであることから、発達段階に応じた取組が必要である。例えば、社会において自立的に生きる基礎を培う(教育基本法第5条第2項)義務教育段階では、自己や他者への積極的関心の形成や、集団の中での役割の自覚、身の回りの仕事等への関心・意欲の向上、肯定的自己理解の獲得等が求められる。そしてこれらは、後期中等教育・高等教育を経て社会・職業に移行する際の基礎となるものである。
○ さらに、キャリア教育は、学生・生徒等の社会的・職業的自立を促す視点から、従来の教育の在り方を見直していくための理念と方向性を示すものである。このようなキャリア教育の視点に立ち、すなわち個々の教育活動が、学生・生徒等の将来の社会的・職業的自立にどのようにつながっていくのかを念頭に置き、教育活動を改善・充実していくことが重要である。自己の将来と、現在の学びとを関係付けていくことは、学生・生徒等に学びの意義や楽しさを実感させ、その学習意欲を喚起する上でも有効である。このようなキャリア教育の意義等について、教職員の意識を高めることが必要である。
○ 加えて、社会的・職業的自立を促すという目的にかんがみれば、キャリア教育は、子どもの自立心等を育むことが求められている家庭や、産業界等の地域社会との連携の下に推進していくことが不可欠である。例えば、学校支援地域本部や放課後子ども教室など、学校・家庭・地域の連携・協力の下に行われる教育活動の中でも、キャリア教育に取り組んでいくことが重要である。
○ 一方、進路指導については、中学校・高等学校段階において、「将来に対する目的意識を持ち、自らの意志と責任で進路を選択決定する能力・態度を身につけることができるよう、指導・援助すること」であり、社会的・職業的自立を促していくという点でキャリア教育と理念を同じくするものである。しかし、現実には、進学先・就職先の選択・決定など、いわゆる「出口指導」に終始しがちな状況も指摘されており、本来の理念に従い、これまでの進路指導の在り方を見直していくことが必要である。
○ 職業教育とは、一定の又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、態度を育む教育である。
○ 職業教育は、職業によって行われるもの、すなわち具体の職業を題材として行われるものであり、学生・生徒の職業観を育み、職業的自立を促す上で極めて有効である。また、職業教育は、実験・実習等による体験的・実践的な学習を重視するものであり、学習意欲の喚起や、課題解決能力の育成等にも資するものである。
逆に言えば、普通教育中心・座学中心の教育には、職業的自立を促す観点から限界も認められるところであり、例えば高等学校の普通科等においても、職業との関連付けを強めていくことが求められている。
○ また、職業に「従事」するために必要な知識、技能、態度を育むという性質や、地域によって産業構造・就業構造が大きく異なることなどから、職業教育は、地域の産業界や関係機関等との密接な連携の下に行われることが不可欠である。例えば、インターンシップの実施や、カリキュラム編成の際の連携、教員研修の受入れ、地域コンソーシアムの形成など、様々な面での連携・協力が求められるところである。国においても、文部科学省と厚生労働省等の関係府省との連携を一層推進していくことが必要である。
○ なお、キャリア教育と職業教育との関係について言えば、職業教育については、単なる専門的な知識・技能の教授に終始しないよう、社会的・職業的自立を促すというキャリア教育の視点に立って行われるべきものである。
さらに、両者については、発達段階・学校段階等に応じて重点の置き方等が変わってくるものであ
る。例えば小学校段階では、社会生活の中での自らの役割や、働くこと、夢を持つことの大切さの理解、関心・意欲の向上、自己及び他者への積極的関心の形成など、キャリア教育を通じた社会性、自主性・自律性、関心・意欲等の涵養に重点が置かれる。中学校段階では、その基礎の上に、キャリア教育により、社会における自らの役割・生き方を考え目標を立てて計画的に取り組む態度の育成や、社会・経済の現状についての基本的理解、勤労・職業の社会的意義・役割の体験的な理解等に重点が置かれる。一方、職業への移行が近づくにつれ、職業に従事するための実践的な職業教育や、本人の自主的・自発的なキャリア形成を支援する観点からのキャリア教育に重点が置かれることとなる。これらの関係性及び発達段階を踏まえた対応策等については、今後更に具体的な検討が必要である。
特に喫緊の課題は、学校から社会・職業への移行段階に当たる後期中等教育・高等教育修了時点において必要な能力等を身に付けているかどうかという点であり、3.章以降においては、両段階を中心にキャリア教育・職業教育の在り方について整理を行った。
Copyright (C) Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology