資料1 教育基本法の改正を受けて緊急に必要とされる教育制度の改正について(答申)(案) 修正案

平成19年 月 日
中央教育審議会

はじめに

  • 中央教育審議会は、2月6日に文部科学大臣からの審議要請を受け、教育基本法の改正を踏まえて、緊急に必要とされる以下の教育制度の改正について、約1ヶ月間にわたり、集中的な審議を行ってきた。
    1. 学校の目的・目標の見直しや学校の組織運営体制の確立方策等(学校教育法の改正)
    2. 教員免許更新制の導入等(教育職員免許法等の改正)
    3. 教育委員会の在り方や国と地方の役割分担(地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正)
  • これらの事柄については、これまでも、中央教育審議会において所要の審議を進めてきたところであり、答申という形で、既に基本的な考え方が示されているものも多数含まれている。
  • 本答申は、こうした審議の積み重ねの上に、昨今の教育界に生じている様々な課題や状況の変化を見据えつつ、平成18年12月の改正教育基本法の成立を踏まえ、さらには平成19年1月の教育再生会議の第一次報告等も参考にしつつ、今後改正を要する諸法のうち、緊急に改正が必要とされる制度についての中央教育審議会としての考え方をとりまとめたものである。
  • 審議に当たっては、総会、教育制度分科会と初等中等教育分科会の合同会議(懇談会を含む。)、関係団体ヒアリングなど、計10回にわたって審議を行った。あわせて2月22日から2月28日まで文部科学省ホームページにおいて意見募集を行うなど、時間的制約のある中で、可能な限り慎重かつ丁寧な意見集約に努めてきた。大学分科会においても、2回の会議を開催するなど、これに準ずる手続きにより審議を行った。
     答申ではすべての意見が盛り込まれているわけではなく、個々の意見については議事録を参照されたい。
     ご協力いただいた方々にこの場を借りて厚く御礼申し上げるとともに、本答申を踏まえて、関係の制度改正が速やかに行われることを期待する。

(参考)関係事項の中央教育審議会への諮問及び答申等

1.学校教育法の一部改正関連

【諮問】 「今後の初等中等教育改革の推進方策について」(平成15年5月)

【答申】 「新しい時代の義務教育を創造する」(平成17年10月)

【答申】 「子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について」(平成17年1月)

【答申】 「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」 (平成17年12月)

【報告】 「審議経過報告」(平成18年2月)(中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会)
 「今後の教員給与の在り方について(答申)(案)」(平成19年)(初等中等教育分科会 教職員給与の在り方に関するワーキンググループ)

【諮問】 「今後の高等教育改革の推進方策について」(平成13年4月)

【答申】 「我が国の高等教育の将来像」(平成17年1月)

2.教育職員免許法等の一部改正関連

【諮問】 「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(平成16年10月)

【答申】 「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(平成18年7月)

3.地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正関連

【諮問】 「地方分権時代における教育委員会の在り方について」(平成16年3月)

【答申】 「新しい時代の義務教育を創造する」(平成17年10月)

第1部 総論

  • 昨年12月、教育基本法が約60年ぶりに改正され、これからの教育のあるべき姿、目指すべき理念が明らかにされた。これは新たな時代の教育の幕開けであり、我々はこの改正教育基本法の精神にのっとって、新しい時代にふさわしい教育を力強く総力を挙げて進めていかなければならない。
  • 一方、昨年秋に大きな社会問題となったいじめや未履修の問題については、その対応をめぐって教育委員会や学校の在り方について様々な議論を呼び、学校教育の本質や教育行政における責任の所在はどこにあるか等、公教育の在り方、さらには社会全体の在り方が国民的な議論となった。これらの過程において、国を含め公教育への信頼が失われかねない状況となっている。また、懸命に子どもたちの教育に打ち込んでいる大多数の教員がいる中で、一部の教員の不祥事により、公教育全体への不信感が広がる結果となっている。
  • こうした中で、昨年12月に成立した改正教育基本法において示された新しい教育の理念の下、各学校種の目的や目標を見直し、学習指導要領の改訂につなげていくことが必要である。その際、教育の機会均等、水準の維持向上や無償制が特に求められる義務教育については、新たに義務教育の目標の規定を創設することが適当である。
  • 教育の成否は教員にかかっている。教員に質の高い優れた人を確保することが重要であることから、教員免許更新制の導入等を図るとともに、副校長(仮称)、主幹(仮称)、指導教諭(仮称)の職の設置を通じて、学校の組織運営体制の強化を図り、より充実した学校教育の実現を目指していく必要がある。同時に、教員が誇りを持って教育に取り組み、社会と児童生徒から尊敬、敬愛を受ける存在であるためには、勤務条件の在り方等についても併せて検討していく必要がある。
  • 学校を支える教育行政制度の改善を図り、国民と児童生徒に対する責任の所在を明確にすることは喫緊の課題である。改正教育基本法の定めるところに従い、地方分権の理念を尊重しつつ、国と地方公共団体が適切な役割分担と相互の協力の下、地方における教育行政の中心的な担い手である教育委員会の体制を充実しなければならない。人の育成を担う教育の重要性にかんがみ、教育基本法において定められた教育の実施についての国の責任をしっかりと果たし、国民の信頼に真に応えられる教育行政の体制を構築する必要がある。
  • 何よりも忘れてはならないのは、未来を担う全ての子どもたちに対して、いかにして充実した質の高い教育の機会を保障できるかとの観点である。そのためには国、地方公共団体、学校、家庭及び地域社会が緊密に連携協力し、それぞれの責務をしっかりと果たしていくことこそが今、求められている。
  • 本答申は緊急に改正が必要とされる制度についての考えをとりまとめたものであり、今後、改正教育基本法を踏まえ、学校教育、社会教育等の各分野を通じた教育改革の具体的な方向性を順次示していくことが必要である。

第2部 各論

1.教育基本法の改正を踏まえた新しい時代の学校の目的・目標の見直しや学校の組織運営体制の確立方策等(学校教育法の改正)

(1)基本的な考え方

  • 教育基本法の改正により、教育の目的は、「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」と定められた(第1条)。また、教育の目標について、公共の精神や伝統と文化の尊重など、今日重要と考えられる事柄が新たに規定された(第2条)。さらに、義務教育についても、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うという目的が定められた(第5条第2項)。同様に、大学や幼児期の教育に関する規定(第7条及び第11条)も置かれたところである。
  • 学校教育法には、それぞれの学校種ごとに目標等が規定されている。これらの規定は、初等中等教育においては、小・中・高等学校等の教科等の教育内容の大枠を定めるとの性格を持つとともに、教育理念を規定する教育基本法と教科構成やその具体的な内容を定める学習指導要領等をつなぐ役割を果たしている。
  • このため、義務教育については、改正教育基本法第5条第2項に新たに義務教育の目的が規定されたことを踏まえ、義務教育の目標を学校教育法において明確化することが必要である。
     その際、審議においては、義務教育の目標により詳細にわたる具体的な教育内容を書く必要があるのではないかとの意見もあったが、他方で、むしろ学校教育法の目標規定はより大綱化すべきとの意見も出された。このため、現在の小・中学校の目標に、改正教育基本法第2条において教育の目標として新たに規定された理念の中で教科等の教育内容の大枠として学校教育法に規定することが適当なものを加えるとの考え方で整理することが妥当である。
  • なお、関連して改正教育基本法第5条第1項において別の法律で定めることとされた義務教育の年限については、現行制度どおり9年と規定することが適切である。
  • 改正教育基本法において、学校教育の基本的な役割として、「教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない」との規定(第6条第2項)が置かれた。幼稚園から小・中・高等学校、大学、高等専門学校等までのそれぞれの学校種の目的や目標を、発達の段階や当該学校種をめぐる状況の変化などを踏まえるとともに、学校教育全体の体系性に留意して、見直す必要がある。
  • このような観点から、幼稚園については、その目的の見直しを行い、小学校以降の教育との接続を明確にするとともに、これに伴って学校教育法に規定する学校種の規定順について、発達の連続性を踏まえ、幼稚園を最初に規定することが妥当である。
     また、高等学校については、高校教育の多様化を踏まえ、現行の学校教育法と同様に、その目的や目標は包括的に定めることが適当であるが、義務教育との接続の観点を重視することが必要である。
  • さらに、高等教育については、改正教育基本法に大学の基本的役割に関する規定(第7条)が置かれたことを踏まえ、大学等の目的に関する規定を改正することが適当である。
  • このほか、学校と社会との連携を深めるといった観点から学校評価や情報提供の充実を図るとともに、大学等の履修証明について、その制度上の位置付けを明確化することが必要である。
     審議においては、特に、公教育の信頼を確保する上で、学校が教育課程をはじめとする教育活動などの学校運営に関する情報の発信を行うことは重要との意見があった。情報提供に関する学校の責務の明確化は、公の性質を有する学校が自らの説明責任を果たすためにも重要である。
  • これらの学校評価や情報提供は、権限と責任が拡大する中で学校の主体性を高める基盤として重要である。同様の観点から、学校における組織運営体制や指導体制の確立が求められる。このため、学校教育において体系的な教育が組織的に行われることを求める改正教育基本法第6条第2項や初等中等教育分科会教職員給与の在り方に関するワーキンググループにおいて審議を行ってきた「今後の教職員給与の在り方について」を踏まえ、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に副校長、主幹、指導教諭を新たに置くための制度改正を行うことが必要である。その際、学校が置かれている状況はそれぞれ異なることから、このような多様な実態に対応し得る柔軟な制度とするために任意設置の職とすることが適当である。

(2)概要

  • 以上のような基本的な考え方の下、学校教育法を以下のような趣旨で改正することが適当である。
     なお、今回の審議においては、義務教育について知識・技能の習得とともに、その活用や探究の重要性を明確にすべきであるといった意見のほか、高等学校教育の水準確保の在り方など多岐にわたる議論がなされたところであり、学校教育法改正案の立案に当たって、これらを踏まえることを求めたい。
1.学校種の目的及び目標の見直し等
(1)義務教育の目標及び年限に関する事項

 教育基本法に義務教育の目的に関する規定(第5条第2項)が置かれたことを踏まえ、義務教育の目標に関する規定を新設すること。また、教育基本法改正により義務教育の年限は別の法律で定めると規定された(第5条第1項)ことに伴い、義務教育の年限を規定すること。

  • 義務教育の目標については、改正教育基本法に教育の目標に関する規定(第2条)が置かれたことを踏まえ、学校教育法に規定する小・中学校の目標規定(第18条及び第36条)を、次のような態度や能力等を養うといった趣旨に改めること。
    • 自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力、公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画する態度(第18条第1号、第36条第3号)
    • 生命及び自然を尊重する精神、環境の保全に寄与する態度(教育基本法第2条第4号)
    • 我が国と郷土の現状と歴史についての正しい理解、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度、国際理解及び国際協調の精神(第18条第2号)
    • 家族や家庭の役割、生活に必要となる基礎的な理解と技能(第18条第3号)
    • 国語の正しい理解と使用する基礎的な能力(第18条第4号)
    • 数量的な関係の理解と処理する基礎的な能力(第18条第5号)
    • 自然現象の科学的な観察と処理する基礎的な能力(第18条第6号)
    • 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣、心身の調和的発達(第18条第7号)
    • 生活を明るく豊かにする音楽、美術等についての基礎的な理解と技能(第18条第8号)
    • 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んじる態度、進路選択する能力(第36条第2号)
  • 義務教育の年限は、現行制度どおり9年と規定すること。
(2)幼稚園に関する事項

 教育基本法に教育の目標(第2条)及び幼児期の教育(第11条)に関する規定が置かれたこと等を踏まえ、以下のとおり学校教育法の幼稚園の目的及び目標に関する規定(第77条及び第78条)等を改めること。

  • 幼稚園の目的については、義務教育以後の教育の基礎が培われ、生涯にわたる人格形成の基礎が培われるよう、幼児期の特性に配慮しつつ、幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達を助長するといった趣旨を規定すること。
     また、目的の見直しに伴い、小学校以降の教育との発達や学びの連続性が明確となるよう、学校種の規定順について幼稚園を最初に規定すること。
  • 幼稚園の目標については、教育基本法に示された教育の目標や学校教育法に新たに規定される義務教育の目標の内容、幼児を取り巻く環境の変化を踏まえ、現行規定(第78条)を、次のような態度等を養うといった趣旨に改めること。
    • 健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な習慣、身体諸機能の調和的発達(第78条第1号)
    • 集団生活の経験、すべての社会生活の基盤となる人への信頼感、自主、自律及び協同の精神や規範意識の芽生え(第78条第2号)
    • 身近な社会生活や自然に対する理解と態度の芽生え(第78条第3号)
    • 自ら進んで言葉を使うよう正しく導くこと、相手の話を理解しようとする態度(第78条第4号)
    • 多様な創作的表現に親しむこと、豊かな感性と表現力の芽生え(第78条第5号)
  • 幼稚園が、家庭・地域における幼児期の教育を支援するよう規定すること。また、幼稚園が実施するいわゆる預かり保育を適正に位置付けること。
(3)小学校に関する事項

 義務教育の目標規定を置くこと等を踏まえ、以下のとおり小学校の目的及び目標に関する規定(第17条及び第18条)を改めること。

  • 小学校の目的については、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すといった趣旨を規定すること。
  • 小学校の目標については、その目的を実現するために、義務教育の目標を基礎的な程度において達成するよう努めなければならないといった趣旨を規定すること。
(4)中学校に関する事項

 義務教育の目標規定を置くこと等を踏まえ、以下のとおり中学校の目的及び目標に関する規定(第35条及び第36条)を改めること。

  • 中学校の目的については、小学校教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すといった趣旨を規定すること。
  • 中学校の目標については、その目的を実現するために、義務教育の目標の達成に努めなければならないといった趣旨を規定すること。
(5)高等学校に関する事項

 教育基本法に教育の目標の規定(第2条)が置かれたこと及び小・中学校の目標規定の改正等を踏まえ、以下のとおり学校教育法の高等学校の目的及び目標に関する規定(第41条及び第42条)を改めること。

  • 高等学校の目的については、中学校教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すといった趣旨を規定すること。
  • 高等学校の目標については、教育基本法に示された教育の目標や学校教育法に新たに規定される義務教育の目標の内容を踏まえ、現行規定(第42条)を次のような資質や態度等を養うといった趣旨に改めること。
    • 中学校教育の成果の発展拡充、豊かな人間性と創造性、国家及び社会の形成者として必要な資質(第42条第1号)
    • 将来の進路の決定、一般的な教養、専門的な知識、技術及び技能(第42条第2号)
    • 個性の確立、社会についての広く深い理解、健全な批判力、社会の発展に寄与する態度(第42条第3号)
(6)中等教育学校に関する事項
  • 中等教育学校の目的及び目標に関する規定(第51条の2及び第51条の3)についても、高等学校と同様に改正すること。
(7)特別支援学校に関する事項
  • 特別支援学校の目的については、先般の法改正で改められた内容を引き続き規定すること。
(8)大学に関する事項

 教育基本法に大学の基本的役割に関する規定(第7条)が置かれたことを踏まえ、以下のとおり学校教育法の大学の目的に関する規定(第52条)を改めること。

  • 大学の目的については、現行規定(第52条)に、教育研究活動の成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するといった趣旨を加えること(短期大学及び大学院にも適用。)。
(9)高等専門学校に関する事項
  • 高等専門学校の目的に関する規定(第70条の2)についても、大学の規定に合わせ所要の改正をすること。
  • このほか、公立大学法人が高等専門学校を設置できるよう規定の整備を行うこと。
2.学校の評価等に関する事項

 教育基本法に義務教育についての国及び地方公共団体の役割と責任(第5条第3項)、教育行政における国及び地方公共団体の役割と責任(第16条第2項及び第3項)並びに学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力(第13条)に関する規定が置かれたこと等を踏まえ、学校の裁量を拡大し自主性・自律性を高める上で、その取組の成果の検証が重要であることから、学校評価及びその前提となる情報提供の充実を図るために、以下のような規定を新設すること。

  • 学校(大学及び高等専門学校を除く。)は、当該学校の教育活動その他の学校運営の状況について評価を行い、その結果に基づき学校運営の改善を図ることにより、その教育水準の向上に努めなければならないといった趣旨を規定すること(専修学校及び各種学校についても同様の趣旨の規定を整備)。
    ※ 大学及び高等専門学校は、第69条の3及び第70条の10の規定により、自己点検・評価が義務付けられており、この規定の対象としない。
  • 学校(大学及び高等専門学校を除く。)は、保護者及び地域住民その他の関係者との連携及び協力の推進に資するため、当該学校の教育活動その他の学校運営の状況に関する情報を提供するものとするといった趣旨を規定すること(専修学校及び各種学校についても同様の趣旨の規定を整備)。
  • 大学及び高等専門学校は、教育研究活動等の状況に関して、情報を公表するものとするといった趣旨を規定すること。
3.副校長その他の新しい職の設置に関する事項

 教育基本法に学校教育においては体系的な教育が組織的に行われなければならないとの規定(第6条第2項)が置かれたことを踏まえ、学校における組織運営体制や指導体制の確立を図るために、幼稚園、小・中学校等に次のような職を置くことに関する規定を設けること。

  • 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に、副校長、主幹及び指導教諭を置くことができることとし、それぞれの職務として、次のような趣旨を規定すること。
    • 副校長:校長を補佐し、校務を整理するとともに、校長から任された校務について自らの権限で処理すること。
    • 主幹:校長、副校長及び教頭を補佐するとともに、校長から任された校務について、校長等が判断・処理できるよう、とりまとめ整理すること。あわせて、児童生徒等の教育を担当すること。
    • 指導教諭:他の教諭等に対して、教育指導に関する指導・助言を行うとともに、児童生徒等の教育を担当すること。
4.大学等の履修証明制度

 教育基本法に教育研究の成果を広く社会に提供することにより社会の発展に寄与するという大学の基本的役割に関する規定(第7条第1項)が置かれたことを踏まえ、次のような履修証明制度に関する規定を新設すること。

  • 大学は、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学に在学する学生以外の者を対象とした特別の課程を履修した者に対し、履修証明書を交付できるといった趣旨を規定すること(高等専門学校及び専門学校についても同様の趣旨の規定を整備)。

(3)留意事項

  • 学校教育法の改正案について審議するに当たっては、これまでの中央教育審議会における初等中等教育分科会や教育課程部会及び大学分科会における議論を十分踏まえて検討を行った。教育課程部会においては、学習指導要領の見直しについて、「生きる力」の育成のための具体的な手立ての確立の観点から、基本的な考え方から各学校ごとの改善と学校間の円滑な接続、各教科等の具体的な改善にいたるまで様々な審議を重ねている。
  • 今後、改正された教育基本法や学校教育法の見直しを通じて明確化された教育理念を実現する観点も踏まえ、学習指導要領の見直しについて、更に検討を深めることが必要である。
     特に、幼稚園、小・中・高等学校に準ずる教育を施すとともに、自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする特別支援学校については、学習指導要領において、今回の学校種の目的・目標規定の見直しを踏まえた特別支援学校の教育内容の明確化を図ることが求められる。
     また、幼児期の教育全体の充実を考えた場合、幼稚園だけでなく、保育所、認定こども園の教育内容及び小学校との接続についても留意することが求められる。
  • なお、今回の審議においては、教育内容に関する具体的な改善について様々な意見が出された。
     また、特に中・高等学校の法令上の目的・目標と上級学校への入学者選抜を重視することが求められる個々の学校の置かれた状況との関係や、グローバル化が進み、外国人児童生徒を多く受け入れる学校も見られる中での教育内容の在り方などについて、今後十分に検討する必要があるとの指摘もあった。
  • 義務教育の年限については、これを延長すべきとの意見も出されたが、現在の制度は国民の間に定着しており、延長する場合には多額の財政負担が必要となることから、国民的合意を要する事項である。このため、学校教育制度全体の在り方も踏まえ、長期的な視点で検討する必要がある。
  • さらに、「新しい時代の義務教育を創造する(答申)」(平成17年10月)で指摘されているように、学校評価については、地方・学校の主体性と創意工夫で教育の質を高めるとともに、保護者や地域住民に対し説明責任を果たす観点から、自己評価や保護者、地域住民による外部評価を一層推進することが必要である。
     また、これらの取組に加えて専門家による第三者評価が必要であるとの意見があった。これらを踏まえて、国は、第三者機関による全国的な外部評価の仕組みを含め、評価を充実する方策について更に検討を進める必要がある。
  • 情報提供については、学校が情報を提供するとともに、改正教育基本法の趣旨を踏まえ、家庭や地域も連携・協力に努めるという双方向性が大切といった意見が出された。
  • なお、主幹又は指導教諭が新たな職として位置付けられ、配置される場合には、その職に見合った適切な処遇を図るため、都道府県において、給料表上必要に応じて、主幹又は指導教諭の職務に対応した新たな級を創設することが望ましい。また、副校長についても、教頭との関係を整理した上で、職務に応じた処遇を行うことが望ましい。
     加えて、新たな職の設置の状況に応じて教職員定数の改善などの条件整備を図ることが望まれる。
  • 大学等の履修証明については、その質の確保を図るとともに、社会的な評価を高めるための具体的な方策等について今後さらに検討することが重要である。

2.質の高い優れた教員を確保するための教員免許更新制の導入及び指導が不適切な教員の人事管理の厳格化(教育職員免許法等の改正)

(1) 基本的な考え方

  • 国民が求める学校教育を実現するためには、教員に質の高い優れた人を確保することが極めて重要である。改正教育基本法においては、新たに第9条として教員の条を設け、その第1項において「法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」と規定するとともに、第2項において「その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない」と定めている。
  • こうした教育基本法の精神に基づき、質の高い教員の養成・確保を図るためには、教員の養成、採用、現職研修等の改善・充実を図るとともに、日々努力をしている教員に報いるため、優秀教員の表彰、教員の処遇や職場環境の改善を図るなど、教員に関する様々な施策を一体的に進め、教職が魅力ある職業となるようにすることが重要である。
  • その中で、教員が広く国民や社会から尊敬と信頼を得られる存在となることが必要であり、特に以下の施策に関する検討が必要である。
1.教員免許更新制の導入(教育職員免許法の改正)
  • 教員をめぐる状況は時代の進展に応じて常に変化し続けており、その時々で求められる教員として必要な資質能力も、恒常的に変化しているものである。
     教員免許制度は、免許状を有する者の資質能力を一定水準以上に確保することを目的とする制度であり、恒常的に変化する教員として必要な資質能力を担保する制度として、再構築する必要がある。
  • こうした考え方の下、その時々で求められる教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に必要な知識技能の刷新(リニューアル)を図るための方策として、教員免許更新制の導入が「今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申)」(平成18年7月)において提言された。
  • 今回の更新制は、教員が、社会構造の急激な変化や学校や教員に対する期待等に対応して、今後も専門職としての教員で在り続けるために、最新の知識・技能を身に付け自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ていくという前向きな制度である。
  • 教員免許更新制については、既に提言された制度設計を基に、その導入のための所要の法改正等を進めることが適当である。
2.指導が不適切な教員の人事管理の厳格化(教育公務員特例法の改正)
  • 教員の大多数が日々献身的に子どもたちへの教育活動に従事している反面、一部に指導が不適切な教員が存在することも事実であり、このような教員に対する国民の目は、昨今ますます厳しいものとなっている。
  • このため、各任命権者において、指導が不適切な教員の人事管理システムの厳格な運用を通じて毅然とした対応を講ずるとともに、国においても、教員全体への信頼性を向上させ、全国的な教育水準の維持を図る観点から、こうした仕組みを法律上明確に位置付けることが必要である。
3.分限免職処分を受けた者の免許状の取扱い(教育職員免許法の改正)
  • 昨年7月の答申においても提言されているように、分限免職処分を受け、既に教員としての身分を失った者について、明らかに教員としての資質能力に問題があると認められる場合に、当該者に引き続き教員免許状を保持させておくことは、教員免許状や教員に対する信頼を著しく損なうことにつながるおそれがある。従って、教員としての適格性に欠く場合などの理由により分限免職処分を受けた者の免許状は、失効とすることが必要である。

(2)概要

  • 以上のような基本的な考え方の下、教育職員免許法等を以下のような趣旨で改正することが適当である。
     教育基本法の改正、中央教育審議会の答申及び教育再生会議の第一次報告などを踏まえ、優秀な教員を確保し、資質を向上させる仕組みを導入するために、以下の事項について教育職員免許法等を改めること。
1.教員免許更新制の導入(教育職員免許法改正)
(1)教員免許状の有効期間
  • 普通免許状及び特別免許状に10年間の有効期間を定めること。
(2) 有効期間の更新
  • 免許状の有効期間は、その満了の際、現職教員等(教員や教員となる見込みがある者など)からの申出により更新することができること。
  • 免許管理者は、
    • 免許状更新講習を修了した者又は
    • 勤務実績その他の事項を勘案して免許状更新講習を受ける必要がないものとして認めた者
    については、免許状の有効期間を更新すること。
  • 災害その他やむを得ない事由があると認められる場合には、有効期間を延長することができること。
(3)現に免許状を有する者の取扱い
  • 現に免許状を有している現職教員等については、10年ごとに免許状更新講習と同様の講習を修了したことの確認を受けなければならないこと。
  • 講習を修了できなかった者の免許状は、その効力を失うこと。
2.指導が不適切な教員の人事管理の厳格化(教育公務員特例法改正)
(1)指導が不適切な教員の認定及び研修の実施等
  • 任命権者は、教育や医学の専門家や保護者などの第三者からなる審査会の意見を聴いて、「指導が不適切な教員」の認定を行うこと。
  • 任命権者は、指導が不適切と認定した教員に対し、研修を実施しなければならないこと。
  • 研修の期間は、過度に長期にならないよう実施期間を政令で規定すること。
  • 指導が不適切であると認定された者の研修期間中の免許状の取扱いについて必要な措置を講ずること。(教育職員免許法改正)
(2)研修終了時の認定及び措置
  • 任命権者は、研修終了時に審査会の意見を聴いて、指導の改善の状況について認定を行うこと。
  • 任命権者は、研修終了時の認定において、指導が不適切であると認定した者に対して、免職その他必要な措置を講ずるものとすること。
3.分限免職処分を受けた者の免許状の取扱い(教育職員免許法改正)
  • 教員が、勤務実績が良くない場合やその職に必要な適格性を欠く場合に該当するとして分限免職処分を受けたときは、その免許状は効力を失うこと。

(3)留意事項

  • 「基本的な考え方」で述べたように、質の高い教員の養成・確保を図るためには、教員免許更新制の導入や指導が不適切な教員に対する人事管理の厳格化のみならず、教員の処遇の改善等様々な施策を一体的に進めることが重要である。
  • 現在の教員の年齢構成を見ると、40歳代から50歳代前半の層が多くなっており、今後、この世代が退職期を迎えることに伴って、教員の大量採用時代を迎えることが見込まれる。このため、大学等における教員養成の改善・充実や透明性の高い、人物評価を重視した採用選考への改善・充実等による、養成・採用段階からの教員の質の確保が重要である。また同時に、現職研修の改善・充実、教員の処遇や職場環境の改善など、日々自己研鑽をしている教員を励まし、教員が魅力ある職業となるようにすることが重要である。
  • これら教員に関する施策については、各方面からの指摘を踏まえ、本審議会としても今後、適時適切に検討を加える必要がある。
1.教員免許更新制の導入(教育職員免許法の改正)
  • 教員免許更新制の導入に当たって、実効性のある制度とするためには、更新要件としている30時間程度の免許状更新講習の内容を充実したものとし、また、適切に修了の認定がなされることが重要である。そのためには、刷新すべき資質能力と講習内容を明示し、それが確実に身に付いたかを適切に判定するための明確な認定基準や、同時に講習の受講免除に関する基準等が必要である。
     また、現場の教員の負担軽減の観点から、教員の生涯を通じた研修体制の見直し、講習の経費負担の在り方の検討等が求められる。
     これらについては、今後、更に検討していく必要がある。
2.指導が不適切な教員の人事管理の厳格化(教育公務員特例法の改正)
  • 指導が不適切な教員の人事管理システムがより実効性のあるシステムとして運用されていくためには、今後、国において、「指導が不適切な教員」の認定に関する判定基準や、本人からの意見聴取等を含めてシステム全体の具体的な運用方法に関する全国的なガイドラインの策定について検討することが必要である。
  • 市町村教育委員会が、市町村費負担教職員に対し、指導が不適切な教員の人事管理システムを実施する際には、市町村の実情に応じて、柔軟な対応が可能となるようにすることが必要である。
  • 指導が不適切な教員の人事管理については、幼児児童生徒への影響を第一に考え、システム全体として迅速な対応が図られるようにすることが必要である。

3.責任ある教育行政の実現のための教育委員会等の改革(地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正)

(1)基本的な考え方

  • 教育は、子どもたちや地域住民に身近な学校や市町村が、それぞれの学校や地域の特色を生かして主体的な活動を展開していくことが重要である。
     このような考え方に立ち、これまで、中央教育審議会の答申などに基づき、教育行政の地方分権が積極的に推進されてきたところであり、今後も、それぞれの学校や市町村が、主体的に教育活動を展開していけるような条件整備を進めていくことを通じ、教育行政の強化・充実を図っていくことが重要である。
  • 同時に、改正教育基本法第16条第1項において、「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない」と定められた。
  • また、同条第2項において、「国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない」と規定するとともに、同条第3項において「地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない」と規定されたところである。
  • さらに同法第5条第3項においても「国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う」と定められている。
  • 地方分権の理念を尊重しつつ、こうした改正教育基本法の精神に基づき、地方における教育行政の中心的な担い手である教育委員会の体制を充実していくとともに、国と地方の適切な役割分担を踏まえつつ、最終的には、教育に国が責任を負える体制を構築していくことが必要である。
  • 教育委員会制度については、中央教育審議会が平成17年10月に既に答申しているとおり、教育における政治的中立性や継続性・安定性の確保、地方における行政執行の多元化等の観点から、全ての地方自治体に設置する等の現在の基本的な枠組みを維持することが必要である。その上で、地方分権の理念を尊重しつつ、教育委員会の役割の明確化を図るとともに、その機能・体制を充実し、それぞれの地域の実情に合わせた弾力的な運用が可能となるよう制度改革を図ることが適当である。
  • このため、地方教育行政の基本理念を法律上明確にするとともに、合議体としての教育委員会と教育長の役割・権限を明確化する必要がある。また、教育委員の数を弾力化するとともに保護者が必ず教育委員に含まれるようにするほか、小規模市町村の教育行政事務の広域処理を促進する。
  • 国と地方の関係については、今後とも地方分権の理念が重要であることは言うまでもない。国から都道府県、都道府県から市町村、市町村から学校へと分権が進めば進むほど、それぞれのレベルにおいて、自律的に責任が果たされなければならない。また、これと同時に、上記の改正教育基本法の精神にのっとり、全国どこにおいても、国民の代表である国会で定められた法律及びこれに基づく政省令・告示等が守られ、公正かつ適正な教育活動が展開されるような仕組みを構築していくことがより一層重要となる。国民の教育を受ける権利を適切に保障するため、最終的な担保措置として、国が責任を果たすことができるよう、新しい制度を築いていく必要がある。
  • すなわち、国は教育の実施についてナショナル・スタンダード(全国的な基準)を設定し、その履行が最終的に担保されるよう保障する責務を負うものであり、国と地方との関係は、このナショナル・スタンダードとローカル・オプティマム(それぞれの地域において最適な状態)とのバランスをいかにして図るかが、教育行政の充実や公教育への信頼の確保にとって重要である。

(2)概要

  • 以上のような基本的な考え方の下、地方教育行政の組織及び運営に関する法律を以下のような趣旨及び意見を踏まえ、改正することが適当である。
     教育基本法の改正及び中央教育審議会の答申、教育再生会議の報告、規制改革・民間開放推進会議の答申などを踏まえ、教育委員会の責任体制の明確化や体制の充実、教育における地方分権の推進や国の責任の果たし方等について、地方教育行政の組織及び運営に関する法律を改めること。
1.教育委員会の責任体制の明確化
  • 地方教育行政は、教育の機会均等と教育水準の維持向上、地域の実情に応じた教育の振興が図られるよう、国との適切な役割分担・協力の下、公正・適正に行わなければならないことを明確化すること。
  • 地域の基本的な教育方針・計画の策定や教育委員会規則の制定・改廃など、合議制の教育委員会が自ら管理・執行する必要がある事項を明確化すること。
  • 教育委員会は、前記以外の事務については、教育長に委任できることを明確化すること。
  • 教育委員会は、第三者の知見を活用しつつ、教育長に委任した事務も含め、教育委員会の事務の管理・執行状況について点検・評価を行い、議会に報告するものとすること。
2.教育委員会の体制の充実
  • 市町村は、教育委員会の共同設置、広域連合、事務組合などにより、広域で教育行政事務を処理する体制の整備・確立に努めるものとすること。
  • 市町村教育委員会は指導主事の設置に努めるものとすること。
  • 教育委員の責務・果たすべき役割を明確にするとともに、文部科学大臣・教育委員会は、教育委員に対する研修の実施に努めるものとすること。
3.教育における地方分権の推進
  • 教育委員の数については、5人を原則としつつ、都道府県・市の教育委員会は6人以上、町村の教育委員会は3人以上とすることができるものとすること。また、保護者が必ず含まれるものとすること。
  • 教育委員会の所掌事務のうち、文化(文化財保護を除く。)、スポーツ(学校における体育を除く。)に関する事務は、地方公共団体の判断により、首長が担当できるものとすること。
  • 県費負担教職員の人事に関し、都道府県教育委員会は、市町村教育委員会の意向をできるだけ尊重するとともに、同一市町村内における転任については、市町村教育委員会の意向に基づいて行うものとすること。
4.教育における国の責任の果たし方
  • 改正教育基本法において、「教育は法律に基づき行われるべきこと、教育行政は国と地方が相互に協力して行われるべきこと、特に義務教育については、国及び地方公共団体は、その実施に責任を負うこと」が定められた。この改正教育基本法の立法趣旨を踏まえ、地方公共団体の教育に関する事務が法令に明確に違反している場合や著しく不適正な場合には、国の法律上の責任を果たすことができるよう、以下を踏まえ、適切な仕組みを構築していくこと。
    • 文部科学大臣は、地方公共団体の教育に関する事務に法令違反等がある場合には、地方自治法第245条の5で規定する是正の要求を適切に行うことは当然である。
       しかし、児童生徒の生命や身体の保護のため緊急の必要がある場合や、憲法に規定された教育を受ける権利が侵害され、教育を受けさせる義務が果たされていない場合など極めて限定された場合には、地方自治法の「是正の要求」に加え、国がこれらの事態に適切に対応できるよう、地方公共団体に対し何らかの措置(指示等)を行えるようにする必要があるとする意見が多数出された。
    • ただし、国がこのような措置を行うことになった際には、専門家などで構成される調査委員会等の報告を参考に対応すべきとの意見、文部科学大臣による是正の要求に対し、地方公共団体がどのような対応を行ったかを当該地方公共団体の議会や文部科学大臣に報告させてはどうかという意見なども出された。
    • これに対し、国が指示できるような制度を新たに設けることは、地方分権の流れに逆行するとの意見や、是正の要求を行った事例が無いのに、より強力な関与を設ける必要性は無いなどの強い反対意見も出された。
  • 教育長について、事前に国が任命に関与する仕組み、例えば「任命承認制度」については、賛成意見はほとんどなく、当審議会として、これを採らないことが適当であると考える。
    • 教育委員会と教育長の職務の適切な執行を担保するためには、何よりもまず、それぞれのレベルにおいて、首長や議会がその責任を果たしていく必要があるとの意見や、国が教育委員会に指示等を行った場合に、その任命に関与した首長や議会にその旨を伝え、地方自治の本来の機能に期待すべきであるという意見が多くあった。
       また、大学の評価機関を参考にして、国における第三者機関が、学校や教育委員会の活動の評価を行い、その結果などを踏まえ、教育長や教育委員に対する研修や情報の提供の充実を図るという事後評価による対応を図ってはどうかという意見も出された。
5.私立学校に関する地方教育行政
  • 私立学校も、公教育の一翼を担うものであり、主権者たる国民の代表からなる国会が定めた法律を遵守することは当然であり、また、特に普通教育の法定された最低限の基準を担保するため、以下を踏まえ、適切な措置を講ずること。
    • 都道府県知事の下に、指導主事のような学校教育に関する専門的識見を有する者を配置するなど、その体制を充実していくことが必要であるとの意見が出された。
       また、必要に応じ、都道府県知事が、学校教育に関する専門的事項について、教育委員会に対し、助言、援助を求め得るようにすべきとの意見が出された。なお、都道府県知事が助言、援助を求める場合には、私立学校との協議を経て行うようにすべきとの意見も出された。
  • 都道府県知事の求めに応じて、教育委員会が助言、援助を超えて指導を行うことについては、私立学校の建学の精神や独自性・自主性を尊重する観点から、反対する意見が多く、当審議会としては、教育委員会が指導を行うことを可能とすることは採らないことが適当であると考える。
  • 私立学校に関する地方教育行政の在り方については、今回の答申に基づく措置の状況などを踏まえつつ、今後更に検討を行っていくことが必要である。

(3)留意事項

  • 県費負担教職員の人事権については、平成17年10月の中央教育審議会の答申において、既に、より教育現場に近いところに権限を下ろす方向が望ましいとの考え方の下、「当面、中核市をはじめとする一定の自治体に人事権を移譲し、その状況や市町村合併の進展等を踏まえつつ、その他の市区町村への人事権移譲について検討することが適当」との考え方を示したところである。
     しかしながら、人事権を全面的に移譲することについては、依然として関係者間での意見の隔たりが大きく、全ての市町村において一定水準の人材確保を図る上で支障が生ずるという懸念が大きい。このため、今回は前記のとおり、同一市町村内における転任については、市町村教育委員会の意向に基づいて都道府県教育委員会が行うこととし、人事権全体の移譲については、小規模市町村の教育行政体制の整備の状況を踏まえつつ、広域での人事調整の仕組みや給与負担の在り方などとともに、引き続き検討していく必要がある。
     なお、教職員人事については、学校長自らの教育方針に基づいた学校経営が可能となるよう、市町村教育委員会は、内申に当たっては、できるだけ学校長の意見を尊重するよう努めることも必要である。
  • 都道府県教育委員会が市町村教育委員会の評価を行うという制度については、都道府県と市町村の基本的な関係の在り方に関わるものであり、他の行政評価制度との関連や、学校評価システム構築の検討状況なども踏まえ検討を行うことが必要である。
  • 教育委員長は、教育委員会の会議を主宰するとともに、教育委員会を代表する者であり、その役割は、他の教育委員に比して重いものである。このため、各教育委員会においては、その選任に当たっては、持ち回りで委員長を決めるようなことは慎み、教育委員のうち、最も適切な人が選任されるよう努めることが求められる。
  • 教育委員会の体制を充実し、住民の期待に応える教育行政を展開していくためには、前述のような制度の見直しに加え、最終的にはその活動を担う人の資質能力に負うところが大きい。このため、教育委員や教育長はもとより、その活動を支える教育委員会の事務局職員や指導主事・社会教育主事などの専門的職員に、優秀な人を確保するとともに、その資質向上に努めていくことが必要である。

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