資料2 全国都道府県教育委員会連合会提出資料

                                     全教委連発第99号
                                     平成25年10月28日

文部科学大臣 下村 博文 様

               全国都道府県教育委員長協議会 会長 木村 孟
               全国都道府県教育長協議会 会長 比留間 英人


今後の地方教育行政の在り方に対する意見について


 平成25年10月11日に中央教育審議会教育制度分科会においてとりまとめられた「今後の地方教育行政の在り方について」(審議経過報告)について、下記の通り意見を申し上げます。

1 教育委員会制度の在り方について

 全国都道府県教育委員会連合会(以下「連合会」という。)は、各都道府県教育委員会に対し、今後の「教育委員会制度の在り方」に関して調査を行った。その結果、全都道府県教育委員会のうち、審議経過報告にある「教育長を首長の補助機関とするとともに、教育委員会を首長の附属機関とする案」(以下「A案」という。)を支持した回答は約1割であり、約6割の教育委員会は、「教育長を、引き続き、教育委員会の補助機関とするとともに、教育委員会を性格を改めた執行機関に改革する案」(以下「B案」という。)を支持した。加えて、現行制度を維持すべきであるという意見や、首長とともに教育委員会も執行機関とするべきという意見なども含めると、教育委員会を執行機関として残すべきとする意見は、約7割に達した。また、回答のあったすべての教育委員会が、地方教育行政の政治的中立性、継続性・安定性は引き続き確保されるべきであるとした。

 そもそも現行の教育委員会制度は、教育委員会を合議制の執行機関とすることで、教育行政の自主性を確保しつつ、公正中立な教育を継続的、安定的に行うことを目的として構築されたものである。教育の政治的中立性等の確保は、必ずしも十分な批判能力や判断力を有していない子供たちを対象に教育活動を行っている地方教育行政においては、特に配慮されるべきである。

 一方で、現行の教育委員会制度は、責任の所在が不明確である(責任者が、教育長なのか、教育委員長なのか、合議制の教育委員会なのか分からない)といった批判がある。こうした批判に対しては、真摯に耳を傾ける必要があるのであって、現行制度を見直し、地方教育行政の権限と責任を明確にする必要があるものと考える。
 以上を踏まえると、教育の政治的中立性等の確保という観点からは、A案では、教育委員会に教育事務のチェック機能を持たせるために、一定の事項について教育委員会の同意を必要とするなどの制度が考えられるとされているが、そのような制度が法制的に可能であるのか、明らかではない。また、どのような場合に首長が教育長に指示を行うのか、教育長の罷免要件をどうするのかなど、教育長の首長からの独立性をどのように担保するのかも、不明である。

 他方、地方教育行政における権限と責任の明確化という観点からは、B案には、新しい教育委員会と教育長の具体的な事務の分担が明確ではないという課題がある。しかしながら、B案は、政治的中立性等を維持しながらも、教育長を地方教育行政の日々の事務の執行・管理の責任者として位置づけている点において、現行制度を大きく改革する案であるのであって、現行制度と比較して、具体的に、何がどのように変わるのかを、国民に分かりやすく示すことが求められる。

 このように、A案、B案ともに不明な点が多いものの、約6割がB案を支持し、また、回答のあったすべての教育委員会が政治的中立性等の確保を求めていることを踏まえ、何よりも第一に、新しい教育委員会制度においても、教育の政治的中立性等の確保が制度的に担保されることを明確にするべきである。また、地方教育行政における責任と権限の明確化をどのように実現するのかについても、具体的に示すべきである。今後、最終的に答申をまとめるに当たっては、こうした指摘をしっかりと受け止めた上で、各都道府県教育委員会をはじめとした関係者の意見を聴取し、反映していただきたい。

2 国の関与

 連合会は、国の関与の在り方についても調査を行った。その結果、国の関与を強めることは地方分権に逆行するという意見や、平成19年の「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正で、国による是正の要求や指示が可能となり、また、平成25年3月から国による違法確認訴訟の提起が可能となっている中で、これ以上国の関与を強める必要はないという意見が示され、回答のあったすべての教育委員会が、国の関与を強めるべきではないとした。
今般の「地方教育行政の在り方」に係る見直しに当たっても、こうした意見を重く受け止め、現行制度以上に国の関与を強めることがないようにしていただきたい。

3 まとめ

 中央教育審議会においては、これまで、「今後の地方教育行政の在り方」の見直しを行うに当たって、「教育委員会制度の在り方」や「国の関与」以外の論点についても、幅広く審議が行われてきたが、様々な見直しの視点がある中で、最も重視されるべき点は、何よりも教育の充実である。今般の「地方教育行政の在り方」の見直しにより、教育の内容や質等が損なわれることがあってはならないのであって、最終的な結論を出すに当たっては、この点について、特に留意されたい。

(注)「1.教育委員会制度の在り方について」に関しては6つの教育委員会が、「2.国の関与」に関しては7つの教育委員会が、それぞれ無回答であった。したがって、本意見書は、回答のあった教育委員会の意見を集約したものである。(いずれの無回答も、調査票そのものの提出の無かった3つの教育委員会を含む。)

 

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