社会教育に関する事務の所管について

社会教育に関する事務の所管について
平成25年8月7日
中央教育審議会 生涯学習分科会長 明石要一

 本年3月、生涯学習分科会の下に「社会教育推進体制の在り方に関するワーキンググループ」を設置し、これまで有識者ヒアリングなどを含め6回にわたって集中的に審議を行い、7月25日に「審議の整理(案)」を提示されたところ。その概要は以下のとおり。

1.教育委員会制度の趣旨(教育の特性)

○現行制度において、社会教育に関する事務は学校教育に関する事務と同じく教育委員会が所管することとなっている。
○教育委員会制度の趣旨は、教育行政の執行に当たり、(1)政治的中立性の確保、(2)継続性・安定性の確保、(3)地域住民の意向の反映を図ることとされており、これら三つの趣旨は、社会教育行政においても引き続き確保していくことが必要である。

2.社会教育行政の現状と課題

(1)学校教育との連携
・学校教育行政と社会教育行政の連携・協力が、よりよい教育や学習効果を上げる上で、欠かせないとの認識が高まっており、「放課後子ども教室」、「学校地域支援本部」、「コミュニティ・スクール」など地域住民と学校の連携・協力による様々な取組が活発化している。
・学校と地域が連携・協力することにより、子供たちの教育環境の向上、学校教育の充実や学校運営の円滑化に資することが期待されている。また、地域住民にとっても、学習した成果を発揮する機会が広がることになる。
・社会教育行政においても、個人の精神的な価値の形成を目指して行われる教育の内容が中立公正であることは重要であり、学校教育行政との連携に当たっても、そのことが求められる。
・この点について、社会教育行政においては、地域住民の意向や地域の実態が社会教育行政に反映されるよう、広く各界多方面の立場からの意見を取り入れる仕組みとして、社会教育委員の制度が設けられており、学校教育との連携に当たって、地域住民の意向が学校教育行政にも反映されている。
・教育委員会において学校教育と社会教育が一体となって行われることは、教員自身の資質向上や適当な人材の確保・配置の円滑化という利点もある。

(2)「人づくり」の観点からの総合的な学習機会の提供
・教育委員会が社会教育に関する事務を所管することにより、社会教育委員や公民館運営審議会等を通じた地域における個人の要望や社会の要請の実態把握を踏まえ、地域の課題に対して教育という視点から総合的に施策を取り組むことが可能となり、多種多様な学習機会を継続的・安定的に提供することが保障されるとともに、地域課題に取り組む多様な人材の育成につながっている。
・他方、現状では、教育委員会が提供する学習機会の多くは趣味・教養といった学習であり、公民意識のかん養や現代的な地域課題に関する学習や学習成果の活用の支援については、一層の充実が必要である。
・また、教育委員会は首長から独立した行政委員会と位置づけられているため、首長部局が所管する多様な行政分野との連携に関する経験・人脈などが少なく、連携事務がうまくいきにくいという面もある。

3.社会教育に関する事務の所管についての今後の方向

○他の行政分野との連携の広がりや自治体の組織編成における自由度拡大の観点から、自治体の判断により、首長が担当することを選択できるようにするなどの弾力化を図っていくことも一考に値する。
○一方で、上記2.(1)にもあるように、社会教育に関する事務については、学校教育との連携や生涯学習社会の構築の観点から、学校教育行政と一体として担当することの利点は大きいと考えられる。
○いずれの場合であっても、教育の特性への配慮について引き続き担保する仕組みの構築が必要である。

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初等中等教育局初等中等教育企画課

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