県費負担教職員の人事権の移譲について

全国町村教育長会
会長 熊坂 直美
(神奈川県愛川町教育長)

1 町村の状況について

(1)町村教育委員会の職員

 (本会の平成22年12月調査より、回答数872/937 93%)

人口

教育委員会数

事務局職員数(人)

指導主事

総数

平均

設置

未設置

~1万人未満

436

3907

9.4

133

303

1万人~2万人未満

263

4188

16.2

130

133

2万人~3万人未満

97

1986

20.5

59

38

3万人~4万人未満

51

1052

23.4

42

9

4万人以上

25

632

27.5

23

2

合計

872

11765

13.5

387

485

・ 事務局職員数の合計欄は全体平均。
・ 指導主事の配置率は、人口4万人以上では92%であるが、全体としては、44%の配置率である。
・ 人口1万人未満の教育委員会の内、5千人未満が約半数さらに千人未満が1割ある。

(2) 学校数別町村数割合

 (本会平成19年度の調査より推計 単位は%)

 

1校

2校

3校

4校

5校

6校以上

小学校

16.0

14.7

15.4

14.3

13.5

26.1

中学校

48.0

27.2

14.2

5.9

2.2

2.5

・ 推計全学校数 小学校 約3800校 中学校 約1600 校。
・ 6校以上ある町村の学校は規模が大きいものはあまりない。

(3)その他

・ 町村の全人口に占める割合は、おおよそ9%であり、面積の割合は41%である。
・ 少子化の状況の中、児童・生徒数の減少が大きく、学校の統合が進んでいるところがある。
・ 財政規模が小さい自治体が多い。
・ 過疎が進む中、極小自治体の中には他市町村との合併もままならないところもある。
・ 小規模なるが故に、学校・地域・行政が近い関係にあり、連携を図りながら特色ある教育活動が行われている。また、教職員の地域の活動への参加、協力も行なわれている。

2 町村の状況を踏まえての人事権委譲による問題点

(1)各町村の財政状況や教育委員会事務局の状況から、人事事務(教職員の採用、異動による適正配置など)を担うことは非常に困難な状況にあること。
(2)各町村の財政規模が小さく給与負担について困難な状況があり、格差が生じること。
(3)教職員の都市部集中傾向がある中、人材確保に支障をきたすこと。
(4)小規模のため新規採用の余地が少なく、バランスのとれた採用が不可能になること。
(5)1町村内の学校数が少ないことから広域的な異動は困難であり、人事の停滞・硬直化を生む。また、管理職登用もアンバランスが生じること。
(6)教育委員会事務局に学校教育を担う専門職がいない町村が多く、教員の資質向上を図るための研修会開催に格差を生じること。
 以上のようなことから、様々な格差が生まれ、義務教育の機会均等・教育水準の維持・確保の面からの不平等が増大する懸念があります。

3 全国町村教育長会の意見

  現行制度においても、全県を一つとして、あるいは、複数の市町村を一つの単位として県が要となり市町村の意向を踏まえての円滑な運用がなされておること、そして、人事権委譲が行われることにより、様々な教育格差が生じることが懸念されることから、現行制度のもと各都道府県ごとに市町村と協同のもと工夫改善を図ることが最良であると考えます。
  なお、県費負担教職員の人事権については、5 月30日に開催した全国町村教育長会総会において、最重点要望の一つとして県費負担教職員人事権の現行制度の堅持(教職員の人事権に関しては、全国一律の義務教育水準維持の確保という観点から、人事の膠着化、教員の格差が生じないように、現行制度を堅持していただきたい。)を全会一致で確認したところであります。

 

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