教育委員会制度の在り方に関する論点とこれまでの主な意見

首長と教育長の関係

○ 首長が任命する教育長の任期や罷免の要件をどう考えるか

 ・現在の制度も、教育委員を選んで、教育委員会が教育長を選ぶが、教育長にふさわしい人をあらかじめ議会の同意を得て市長が任命するわけであるから、市長が教育長を議会の同意を得て任命するというのは、すっきりしていいと思う。
 ・教育長を教育行政の責任者とするという考えは大方良いのではという共通認識があると考えている。
 ・教育長と意見が合わないことや、業績が悪いことを理由に首長が教育長を罷免することについては疑義がある。教育における業績をどのように考えるのか。
 ・教育というのは短期的にはなかなか見えない長期的な成果への考慮が必要で、短期的な成果だけに基づいて当時の責任者だけに責任をとらせることがよいことなのか。
 ・首長が議会の同意を得て任命した教育長を罷免することについては、任命責任を考えれば慎重であるべき。例えば、議会の過半数ではなく、2/3超の同意を要件としてはどうか。
 ・教育長の任命罷免について、教育委員が教育長の任命罷免にかかわるという制度設計もあり得るのではないか。
 ・教育長の任命に議会の同意は不要ではないか。実際、現在も、教育委員としての議会の同意が得られないため、教育長の空席が長くなっている地方公共団体もある。
 ・日銀総裁の国会同意人事のように、地方議会が教育長に対して質疑・応答して、人格、識見、見識をきちんとチェックした上で、承認する必要があるのではないか。

政治的中立性、継続性・安定性の確保

○ 教育委員会は教育長の事務執行に対してどのような権限を持つべきか

 ・教育委員会の審議を必要とする事項をどう考えるか。
 ・教育委員会の審議の結果にどの程度の法的拘束力を付与するべきか。
 ・教育がその時々の政治的な風潮に流されるということでは、学校教育に対する保護者や地域の信頼が得られない。
 ・教育委員会は学校教育の一番の推進役なわけだから、ぶれないような教育施策が続いていく、そういう制度設計にする必要がある。
 ・教科書等が首長の交替とともに変わってしまうことについては、常に懸念をしている。
 ・教育の政治的中立性は非常に重要であるが、首長と教育委員会の意見交換はあった方がよい。
 ・地方教育行政の大部分は、学習指導要領や義務標準法等が細かく設けられており、政治的中立性を侵す事態は想定しづらい。
 ・教育行政において政治的中立性が要求される仕事はほとんどないのではないか。抽象論ではなく、具体的な仕事を書き出して中立性が必要か考えたほうが良い。
 ・教科書採択や国旗国歌の問題においても、首長が教育委員会の事務執行に影響を与えるということは十分にあり得ることであり、政治的中立性が必要な仕事はある。
 ・教科書採択などは政治的中立性が必要だが、社会教育や生涯学習にまで首長が口を出せないというのはおかしい。
 ・政治的中立性のある仕事を棚卸にするというのも一つのアイデアだが、目に見えない潜在的なリスクもある。大阪の桜宮高校のようなことも起きているので、教育委員会の仕事を棚卸するだけでは見えないものがある。
 ・政治的中立性について顕在的な形で大きな問題になるものは多くないと思うが、現行の教育委員会制度はセーフティーネットとして機能しており、長の教育への関わりが抑制的になっていると感じる。政治的中立性については、あまり問題にならないから必要ではないという議論にはならない。
 ・政治的中立性については、大学については学生も大人でありほとんど問題ないが、小中学校については首長に対する牽制が必要である。
 ・首長の関与もなく、一人の役人である教育長が大きな権限をもつのは危険である。基本方針については教育委員会や首長が決めることにすべきである。
 ・現在の教育委員会制度の問題は、非常勤の教育委員が子細にわたることまで見なければいけないところである。監督管理については委員会、日常の業務執行については教育長と棲み分けをし、イメージとしては公安委員会に近いものとする案が考えられる。教育委員の中の一人が教育長として責任者となるという方法もある。
 ・自分たちが最終権限を持っている教育委員会だということで、ここまで仕事をしているんだという自負を持ってやっている教育委員も数多くいる。これが、例えば審議会レベル、あるいは諮問機関レベルまで落ちたときに、そこまでの活動を責任を持ってやっていただけるかどうか。教育委員会の位置付けについて、あまり軽くすることは好ましくない。
 ・教育委員に責任感を持って職務に取り組んでいただくためには、しっかりとした権限が必要である。
 ・教育行政は住民の選挙により選ばれた首長が住民の負託を受けて行うべきであり、首長を教育行政の責任者とすると共に、教育長を首長が任命する事務執行の責任者、教育委員会を首長又は教育長のアドバイザリーボードとすることが適当ではないか。
 ・合議制だと少しずつ人が替わるので変化はゆっくりになるのと、ぶれが小さくなりやすいという点から、教育委員会は合議制執行機関とする方がよい。
 ・教育委員会を諮問機関にしていくことは、教育長が権限を持ち過ぎることとなり、危険ではないか。一方、教育委員会を廃止して首長と教育長の連携による教育行政を目指すという意見は、教育の本質的な機能、その影響力の大きさを考えると、少し踏み込み過ぎではないか。
 ・教育の政治的中立性確保のために、教育委員会は合議制の執行機関として存続した方がよい。執行機関でなければ、教育委員の発言は重んじられなくなり、政治的中立性の確保は困難となる。
 ・教育委員会は、諮問機関とはせず、教育方針等を決定する合議制の執行機関として残すべきである。

新しい教育委員会の組織と役割

○ 教育委員を誰が、どのような手続きで任命するのか

 ・教育委員は教育長が任意に委員を選ぶということではなくて、首長が議会の同意を得て任命する方がよい。

○ 教育委員の人選の在り方はどうあるべきか

 ・コミュニティ・スクールのような、民意を反映した仕組みをしっかりと定着させていく中で、その代表が教育委員として選ばれていく方がよいのではないか。

○ 教育委員に求められる資質・能力をどう考えるか。引き続きレイマンコントロールを重視していくのか。高い専門性を持つ教育委員も必要と考えるか

 ・教育委員は非常勤だからできないのではなくて、非常勤でもできる環境を整えていくということが大切である。
 ・教育委員は今まで監査役として教育委員会に参加していたが、いじめの問題が起きて、世の中の論調は、教育委員にプレーヤーとしての在り方を求めている。教育委員については、現役で社会で活躍している方をメンバーに入れるということが非常に重要なことであり、そうした非常勤の方に責任をとらせるのは不適切である。
 ・教育方針、教科書採択の観点・手順等については、レイマンがコントロールする仕組みを残すことは重要。
 ・原子力規制委員会のように専門家だけで構成される委員会にするのも選択肢の一つだが、常勤と非常勤の二者択一だけではなく、NHKの経営委員会のように、半分常勤、半分非常勤という選択肢もあるのではないか。
 ・定年退職後の方だけではなく、40~50代の企業経営者等、幅広い人材を教育委員に任命するには非常勤でなければ難しい。
 ・レイマンだけではなく、専門性の高い人も教育委員になっていただいてもいいのではないか。
 ・レイマンコントロールは民意の反映のために設けられているのであり、今の仕組みは維持した方がよい。もし改革するとしても、教員経験者だけではなく、コミュニティ・スクールや学校支援地域本部の代表等を入れることを想定すべきではないか。

○ 合議体の機関として教育委員会の果たすべき役割、職務権限をどう考えるか

 ・地域の教育のあるべき姿や基本方針の審議
 ・教育長による教育事務の執行状況に対するチェック
 ・その他
 ・教育委員は成人式、入学式、卒業式で来賓と招かれて挨拶をするよりも、教育現場でなるべく先生や学生、児童の声を聞くべきではないか。地方議会においては、委員が非常勤であるということを理解して、答弁のあるときのみ呼び出せばよいのであって、単に議会に座らせておくということは、今後やめるべき。
 ・どのような情報を教育委員会事務局が出すのかが、教育委員の役割を決めている面もある。非常勤の委員は情報がなければ判断ができない。教育委員会事務局がどのような情報を出して、委員が何を判断すべきか明確になるとよい。
 ・教育委員は教育長や教育現場の指導・監督といった役割を担うべきである。
 ・現行制度において、合議制の教育委員会が、教育長に委任できない事務(地教行法第26条第2項)の中にも、形骸化しているものがある。教育長の専決事項を増やし、そこで生み出された時間で教育委員会は大所高所の議論をすべきである。
 ・教職員の処分、教育行政の点検・評価、学校の統廃合等については教育委員会が決定すべき事項であるが、条例等の文言修正や教職員の(処分以外の)人事については、教育長の専任事項とすべきである。
 ・現在、教育委員会は事務局の誤った判断へのチェック機能の役割を担っており、今後もその役割を担うべき。
 ・教育委員会が審議機関的なものになったとしても、幾つかの内容についてはチェック機能、監査機能を持たせて、教育長の仕事の一部に教育委員会の同意を要件としたり、教育長へのチェック機能を果たしていただくのがよいのではないか。
 ・社会教育、文化・スポーツ行政についての、首長部局との職務分担について議論が必要ではないか。

教育行政関係者の資質能力の向上等

○ 教育長等の資質・能力の維持・向上の方法はどうあるべきか

 ・直接の学校の教育指導に携わる指導主事が、統計上でいえば1万人以下の町や村では1.2名しかいない。私の町にも1名しかいない。そういう小規模な町村では、直接の学校現場の指導には教育長の教育経験が非常に重要になってくる。
 ・小規模市町村で専門的な人材が必要であることは、教育委員会の広域化等による解決も可能ではないか。
 ・事務局のみであれば広域化はあり得ると思うが、教育委員会そのものの広域化については、関係する複数の首長、議会の思いが様々あるので難しいのではないか。
 ・国や都道府県が主体となって、教育長の研修を積極的に実施することも必要ではないか。
 ・採用時から教育行政職として採用し、将来の教育長候補を育成するやり方も有効ではないか。
 ・教育長のスキルの問題は大切だが、今や教育行政は介護、福祉、環境等様々な分野と関連しており、教育の専門的知識だけではできない。
 ・「学び続ける教育長」ということで、資質をしっかりと担保し、能力もブラッシュアップしていくような、そういう機会を作っていくということが必要ではないか。

○教育行政部局の体制強化の方策をどう考えるか(指導主事等の専門職の配置充実、新たな制度の下での教育行政組織の名称など)

 ・一般市民は、教育委員会事務局が教育委員会ととらえていることが多い。事務局が学校現場をバックアップする機関でなく、新しい仕事やルールをオーダーする、現場をチェックする機関になっているという印象がある。現場がよかったと思えるような改革にしていただきたい。
 ・教育委員の報酬・待遇の改善、教育委員をサポートする事務局スタッフの充実により、教育委員会会議の活性化や現場との交流を積極的に行える体制を整えるべき。

その他

○ 人口規模に応じた教育委員会の在り方をどう考えるか

○ その他

 ・広域的自治体としての都道府県と、それから基礎的自治体として住民として極めて近いところにいる区市町村の教育行政の在り方、それから教育委員会制度の在り方は少し分けて議論する必要があるのではないか。
 ・直接の学校の教育指導に携わる指導主事が、統計上でいえば1万人以下の町や村では1.2名しかいない。私の町にも1名しかいない。そういう小規模な町村では、直接の学校現場の指導には教育長の教育経験が非常に重要になってくる。(再掲)
 ・教育委員会事務局で難しいのは、小さいところは教育の専門家とか教師の出身の方が少なく、教育長ぐらいしか教員出身者がいない。一方で、大きな自治体になると、教育職出身の方と行政職出身の方の意思疎通が、組織が大きくなる分難しくなるところである。

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初等中等教育局初等中等教育企画課

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