教育制度分科会(第21回)・初等中等教育分科会(第51回)合同会議 議事録

1.日時

平成19年3月3日(土曜日) 14時~17時

2.場所

霞が関東京會舘 35階 「ゴールドスタールーム」

3.議題

  1. 関係団体から寄せられた意見について
  2. 一般の方から寄せられた意見について
  3. 答申案の構成案について
  4. その他

4.出席者

委員

 梶田分科会長、木村副分科会長、田村副分科会長、天笠委員、荒瀬委員、安西委員、石井委員、市川委員、井上委員、岩崎委員、植田委員、梅田委員、大南委員、小川委員、奥山委員、押尾委員、片山委員、加藤委員、門川委員、郷委員、甲田委員、佐々木委員、高倉委員、高橋委員、角田委員、寺崎委員、渡久山委員、中村委員、野澤委員、藤井委員、北條委員、宮城委員、山極委員、山本委員

文部科学省

 結城事務次官、田中文部科学審議官、玉井官房長、金森総括審議官、倉持政策評価審議官、加茂川生涯学習政策局長、銭谷初等中等教育局長、合田大臣官房審議官、布村大臣官房審議官、辰野大臣官房審議官、樋口スポーツ・青少年局長、徳久初等中等教育企画課長、尾崎財務課長、常盤教育課程課長、田河幼児教育課長、大木教職員課長、藤原企画官、淵上教育制度改革室長

オブザーバー

 山崎中央教育審議会会長、鳥居文部科学省顧問

5.議事録

【梶田分科会長】
 それでは、時間になりましたので、ただいまから中央教育審議会、第21回教育制度分科会及び第51回初等中等教育分科会を合同で開催いたします。
 本日は、非常にご多忙の中、しかも土曜日でありますのにご出席をいただきまして、まことにありがとうございます。この前の日曜日にも長時間ご審議いただきましたところでありますし、先日は1日ヒアリングにもお出ましいただいた方、たくさんいらっしゃいます。非常に恐縮しております。
 今回は、総会を含めますと合計7回審議を重ねてまいりました。何とかそろそろ収れんさせていきたいと思っておりますが、物言わぬは腹膨るる業でございますので、大事だと思うことは本日もぜひご発言いただきたいと思っております。
 本日は山崎会長にご出席いただいております。まず最初に山崎会長からごあいさつをいただきます。

【山崎中央教育審議会会長】
 皆さん、今、梶田分科会長がおっしゃったように、土曜日のこういう時間にお集まりいただいて大変恐縮しております。また、両分科会合同会議を短期間にたび重ねまして、大変有益なご意見を多数出していただいていることにもお礼を申し上げます。
 私、病気療養に努めながら、しかし事務局から逐一、皆さんのご発言の骨子は拝聴しておりますので、会議の雰囲気は大体理解しているつもりでございます。
 そういう認識に立ちまして、そろそろ答申の骨子を絞り込んでいただきたい。今、特に課題として残っているは、地方の教育行政のあり方、それと文部科学省との関係の問題が残っておりますので、ここにぜひ集中してご議論をいただきたいと存じます。
 その際、ぜひご留意いただきたい1点は、中央省庁たる文部科学省及びその大臣が、地方の自治と矛盾しない範囲において、いろいろな指導、指示といった権限を持ち得るということは、既に大略、既成の法律によって定められているということでございます。かいつまんで申しますと、地方自治法そのものに、これは第245条の5でありますけれども、文部科学省に限らず、どの省の大臣も、自治体の行政が法令の規定に違反している場合、あるいは著しく適性を欠き、明らかに公益を害している場合には、是正改善のため必要な措置を講ずることができると書いてあります。これは地方自治を実のあるものにするための中央のかかわり方を規定したものであります。
 もう一つ、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第48条にも、これを受けまして、各自治体の教育委員会に対し必要な指導や助言、あるいは援助を行うことができると定められております。したがいまして、ぜひ指示、指示というのは具体的な改正の指示でありますが、それを含めてこの条項は皆さんの間でまとめていただきたいと思います。
 地方の教育長の任命権に関しましては、皆さんの間にもご議論、さまざまにありますし、本日の新聞にも、自民党の部会での発言あるいは流れが出ておりますので、比較的これは柔軟にお取り扱いいただいて結構かと存じますが、とりあえずその方向に向かって、なるべく具体的なご提案をいただき、それを総会にかけられるようにご協力の方お願い申し上げます。
 本当にご苦労さまですが、よろしくお願いをいたします。

【梶田分科会長】
 ありがとうございました。
 今回は3つの問題について、結局は4つの法律の改正といいますか、これにつきまして最終報告の骨子を皆さんで何とかまとめていただきたいと考えているわけですけれども、皆さんに議論に移っていただく前に、28日にヒアリングを30の関係団体から行いました。そのほかにも書面をもっていろいろとご意見もいただいております。また、パブリックコメントと申しますか、一般の方々にもご意見を募集しまして、たくさんの方からご意見が寄せられております。こういうこの問題につきましての関係団体、あるいは多くの国民の方々のご意見について事務局で取りまとめていただきましたので、本当に作業だったわけですけれども、これを報告していただいて、この報告も私ども念頭に置きながら、多くの関係団体のご意見、あるいは国民の多くの方々のご意見も念頭に置きながら、今日の議論に移っていきたいと思います。
 それでは、資料の確認をお願いしたいと思います。

【淵上教育制度改革室長】
 本日お配りをしております資料は議事次第にあるとおりでございます。
 資料1-1及び1-2といたしまして、関係団体から寄せられた意見の概要と、その意見をそのままとじ込んだものでございます。
 資料2といたしましては、一般の方々からこの間寄せられたご意見をまとめたものでございます。
 資料3といたしまして、答申案の構成案(イメージ)というものでございます。
 参考資料1は、28日に開催されました本分科会の議事概要の速報版。
 参考資料2から4として、25日の本分科会で配付をされました各法律の改正に関する骨子案。
 参考資料5といたしまして、石井委員から事前に配付依頼がございました、2月27日付、地方六団体、教育委員会への国の関与の強化案に対する反論でございます。
 以上の資料につきまして、不足等ございましたらお申しつけいただければと存じます。
 なお、前回までに配付をいたしました議事概要と同様に、今回配付をいたしております議事概要もあくまでも速報版でございます。
 以上でございます。

【梶田分科会長】
 ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思いますが、まずヒアリングをやりました結果、及び書面でご意見を幾つかの団体から寄せていただいておりますが、その結果につきまして整理をしていただいておりますので、ご説明をいただきたいと思います。では、お願いいたします。

【淵上教育制度改革室長】
 それでは、資料1-1をご覧いただきたいと思います。
 資料1-1は、関係団体から寄せられました意見を私どものほうで取りまとめたものでございます。1-2は意見発表団体の一覧、その裏面が書面によって意見表明をしていただいた団体でございます。それに続きまして、意見発表団体のご意見の概要をそのままつけてございます。
 それでは、資料1-1に基づきましてご説明をさせていただきます。
 ヒアリング対象団体は、2月28日にヒアリングをいたしました30団体、それから書面で意見を提出いただいた9団体。これらのご意見の概要をまとめたものが以下でございます。
 まず、学校教育法関係といたしまして、(1)目的・目標の見直し等についてでございます。目的・目標については、おおむね賛成する意見が多かったという状況でございます。否定的な意見は一部、少数の団体から出されたということでございます。また、義務教育の年限につきましては、現行どおり9年と規定することに賛成する意見が多かったということでございます。
 続きまして、副校長、主幹等の職の設置についてでございます。おおむね賛成する意見が多かった状況でございます。否定的なご意見は1団体のみということでございました。なお、賛成意見の中には、副校長、主幹ともに現行の教員定数を上回ることが必要、あるいは給与面での処遇が必要といった、定数や待遇面での条件整備を同時に行うことを求めるものが多かった状況でございます。
 学校評価及び情報提供につきましては、おおむね賛成する意見が多かった。なお、これに関連いたしまして次のような意見がありました。自己評価、外部評価は必要であるけれども、第三者評価は時期尚早、あるいは学校や地域の実情に応じた柔軟な制度とすべきといったご意見でございます。
 次のページをご覧いただきたいと存じます。大きな2つ目は、教育職員免許法等の関係でございます。
 まず、(1)としまして免許更新制については、おおむね賛成する意見が多かったという状況でございます。否定的な意見は、ここにあります団体など少数の団体から寄せられたということでございます。なお、賛成意見の中には、管理職等は全面免除すべきといったご意見、優良教員については自動更新とすべき、更新講習を受けるための条件整備が必要、更新講習の内容が重要など、運用に関するご意見が同時に提出されたものが多数ございました。
 続きまして、指導が不適切な教員への対応でございます。これもおおむね賛成する意見が多かったという状況でございます。否定的な意見は、こちらにございます少数の団体から寄せられたということでございます。なお、賛成意見の中には、認定基準や研修方法等について明確化すべきといったご意見、あるいは指導が不適切な教員への厳格な対応だけでなく、努力している教員への優遇措置も同時に必要といった運用等に関するご意見が同時に提出されたものが多数ございました。
 続きまして、3ページ目をご覧いただきたいと存じます。地教行法関係でございます。
 (1)教育における国の責任の果たし方でございます。児童生徒の生命にかかわる事案や著しい問題について、早急に是正が必要とされるような事案については、指導、助言、援助ではなく、国が明確な指示を与えられるという規定がぜひ必要というご意見。
 国、都道府県教育委員会は、法令違反や著しく不適切な場合に限り、全国的な教育水準の確保や教育事務の適切な実施のため、是正の勧告や指示ができるようにしたほうがよいといったご意見。
 万一、地方の教育行政が十分に機能していないと思われる場合は、文部科学大臣により是正指導、指示が当然必要というご意見。
 全国どこの地域においても一定の教育水準を確保することは国の責任、教育における最終的な責任を国が果たせるような制度にすることが必要というご意見。
 国は、県、市教育委員会に対して是正の勧告や指示ができるよう制度化する必要がある。現在の教育委員会が持つ隠匿体質を変える必要がある。
 国の教育委員会に対する関与は、第三者的な機関を設置する等その中立性、透明性が確保されることが必要。
 文部科学大臣及び都道府県教育委員会に是正の勧告、指示の権限を与えることや、教育長の任命について一定の関与を行うことは、地方分権の観点から問題であり、容認できないといったご意見。
 国の権限強化につながる国の地方への是正勧告権や是正指示権を持つべきではない。教育長の任命承認制は復活すべきでないといったご意見。
 是正の指示を盛り込むことは、自治事務を形骸化させるおそれがあり反対。都道府県教委が市町村教委の教育長の任命に関与することは自治体の独立性を阻害し、地方分権に逆行するもので反対。
 教育長の任命に国が関与することは、地方自治、議会制民主主義を侵すもので反対。
 国の責任の果たし方については、地方分権の考え方を前提として慎重に検討すべきといったご意見がございます。
 続きまして、(2)といたしまして私立学校と教育委員会との関係でございます。
 国や地方公共団体から財政的な補助が出ている現状の中では、県教育委員会が一定の範囲内で関与すべきといったご意見がございます。
 私学の独自性を尊重しつつ、教育委員会が専門的な指導、助言ができるようにし、公私のバランスがとれるよう私立と深い連携が保てる仕組みが望まれるといったご意見。
 私立学校に係る地方教育行政については、私立学校の振興と公教育の健全な発展のため、教育委員会の指導、助言、援助を受けることなく、現行どおり地方部局が所轄すべき。
 私立学校への指導、助言は慎重にすべきなどのご意見がございました。
 (3)市町村への人事権の移譲でございます。
 人事権の移譲は、まず中核市を対象とし、他の自治体への移譲については中核市への移譲の状況を踏まえながら検討すべきとのご意見。
 教職員人事権は、市町村への移譲が地域の特色ある教育づくりを推進する上で必要。ただし、広域人事等の調整をする機関が必要といったご意見。
 教職員人事権の市区町村、とりわけ中核市への移譲を検討するに当たっては、結論を急ぐのではなく課題等に十分留意し、移譲の是非も含めて慎重に検討すべきというご意見。
 人事権の市町村への移譲は条件整備が必要であり、それなしに移譲することは延期を含めて慎重に検討していただきたいなどのご意見がございました。
 (4)その他といたしましては、都道府県教委による市町村教委の評価には反対。
 教育委員会の活動を評価する第三者機関を置くことには賛同できない。
 教育長を教育行政の執行機関の責任者として明確に位置づけ、他の教育委員が教育行政のチェックをできる体制にすべき。
 教育長は教育委員とすべきではない。
 教育長の教育委員兼任制度の是非、教育委員会の必置規制の撤廃等についても検討が必要。
 市町村教委の規模の適正化は慎重に議論すべき。
 教育委員の研修を重ねることは、地域の特徴を生かすために特に重要。
 委員数の弾力化をすべき。
 国の役割として最も重要ものは財政支援であり、義務教育費国庫負担制度を堅持すべき。
 すべての市町村に指導主事を配置するという方針は歓迎。
 幼稚園教育を専門とする指導主事を配置すべき等々のご意見をいただいているところでございます。
 以上でございます。

【梶田分科会長】
 ありがとうございました。
 以上、関係団体からのご意見を整理していただいたわけでありますが、今の報告をお聞きいただきまして、もしこの場でこれだけはというご発言があればお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。これは後でのいろいろな議論の中に生かしていきたいと思います。
 それでは、一般の方々から寄せられた意見につきまして、事務局で資料をまとめていただいておりますので、これにつきましてご説明をお願いいたします。

【淵上教育制度改革室長】
 資料2が一般の方々から寄せられたご意見でございます。2月22日から28日までの1週間という短い間でございましたけれども、文部科学省のホームページで3法の改正に関する意見募集をいたしたところでございます。期間が短いといったご批判のメールなどもいただいたところでありますけれども、この間1,200件余りのご意見を頂戴することができました。いただいたご意見の内容は後ろにつけているとおりでございますけれども、ざっと全体の状況をご説明させていただきます。
 届いたメール、または郵便の総数が1,205件でございます。このうち、学校教育法改正に関するご意見が415件、教育職員免許法等の改正に関するご意見が468件、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正に関するご意見が319件、その他が55件ということでございます。
 資料には載せてございませんけれども、意見提出いただいている方の属性を少し補足させていただきます。1,205件のご意見の方々のうち、教員の方々が560名いらっしゃいます。これは全体の半数弱という状況でございます。このほか、公務員の方が145名でございます。ですから、全体の1割強ということでございます。また、団体あるいは団体職員という方が124名おられまして、およそ1割ということでございます。これらの方々で大体7割が占められているということでございます。
 最初に申し上げましたように、教員の方々が5割弱、また公務員という方々の中にももしかしたら教員公務員の方が入っていらっしゃるかもしれません。したがいまして、全体の属性といたしましては、国民の全体という観点から見ますと、今、申し上げたような方々の比率が高いといった状況でございまして、ご意見につきましてはこのことにもご留意いただいておく必要があるのではないかと思います。
 なかなか一つ一つ指し示しながらご説明することはできませんけれども、いただいたご意見、ざっとポイントだけご紹介させていただきたいと思います。
 まず、学校教育法関係でございますけれども、1枚おめくりいただきまして目的・目標の関係でいいますと、たくさんご意見寄せられているわけですが、大きな意見の一つといたしましては、8番にございますような意見がございます。規範意識、公共の精神、国を愛する態度を新たに盛り込み、公に重点が置かれている。こういうことではなくて、むしろ自己肯定感の涵養とか問題解決力、コミュニケーション力の育成が優先されるべきといったご意見がございます。こういったご意見がこの後多く続く状況でございます。
 新たな職の設置に関しましては、13番にございますように、副校長や主幹といった新しい職を設けることは現場に監視体制をつくるようなもので、また一般教員を忙しくするといったご意見がございます。
 学校評価につきましては、16番にございますように、学校評価システムの推進を進めようとしているけれども、これに反対をしますといったご意見がございます。
 全体を通して、今、申し上げたような意見が多いわけでございますけれども、このほかにかいつまんでご紹介いたしますと、目的・目標については、豊かな情操と道徳心、あるいは宗教に関する一般的な教養、我が国の郷土と歴史、あるいは家族や家庭の役割などについて規定をすべきといったご意見もございます。このほかにも、技術教育について規定をすべきといったご意見が見られるところでございます。これ以外に、義務教育の年限をきちんと法律によって設定することが適当といったご意見もいただいておりますし、幼稚園の規定を前にする必要があるといったようなご意見もいただいているところでございます。こうしたご意見が415番まで続いていくことになります。
 続きまして、教育職員免許法等の関係でございます。この資料で申し上げますと、85ページまで学校教育法の関係が続いてまいります。それ以降が教育職員免許法の関係でございます。
 免許法の関係といたしましては、主なご意見といたしまして、なぜ教員にだけ免許更新が必要なのか理由がわからないといったご意見。あるいは、免許更新制の導入による教職員の待遇の切り下げは人材の質の低下につながるのではないかといったご意見。また、教員の質の向上を考えるのであれば、やる気を起こさせるような政策を考える必要があるのではないかといったご意見。また、免許更新制は徐々に教職員の統制につながるものではないかといったご意見がある一方で、免許更新制に賛成をする、不適格教員は教壇に立つべきではないといったご意見。あるいは、免許状に10年の有効期限を定めることは、教員にいい意味での緊張感を与えるといったご意見がございます。また、免許更新制には反対ではないけれども、運用に当たって講習の地域格差が生じないようにするということ。あるいは、現職以外の職の免許保持者は更新を減免するとか、更新を試験にするなどの配慮が必要といったご意見がございました。これが468番まで続くということでございます。
 最後が地方教育行政法の関係でございます。地方教育行政法の関係につきましては、地方への是正勧告権は地方分権一括法の理念に反しているし、国の統制管理につながるので反対といったご意見や、国が地方への是正勧告権や是正指導権を持つべきではないかといったご意見。あるいは、文部科学大臣が都道府県教育委員会の教育長、あるいは都道府県教育委員会が市町村教育委員会の教育長の任命権に関与することは不適切ではないかといったご意見などがございます一方で、国がきちんと方向づけをして地方を指導できる体制にすることが大切だといったご意見。あるいは、偏向教育是正のため、国に是正命令を出す権限を付与するべきであるといったご意見。教育に関する権限を思い切って現場に移譲する以上、法令違反がないかどうかを日常的に調査をして、問題があれば是正指示を出せるような権限は国に担保されるという方向で法改正すべきといったご意見もございます。
 私立学校との関係では、教育委員会の私学への関与は、その自主性、独自性を守るためにも受け入れることはできないといったご意見がございました。
 市町村の人事権の移譲については、教育条件の悪化、格差につながらないようにする必要があるといったご意見。あるいは、人事権を市町村教育委員会に移譲すると人事の硬直化を招く懸念があるといったご意見がございました。
 以上、なかなかまとまりございませんけれども、簡単に主なご意見を紹介させていただきました。

【梶田分科会長】
 ありがとうございました。
 それでは、今の一般の方々から寄せられたご意見についての報告、それから先ほどの関係団体からのご意見のまとめ、この辺につきまして何かご質問、この場であればお願いしたいんですが、よろしいでしょうか。これを資料として出していただいておりますので、こういうこともどこか念頭に置いていただきながら、次の議論のときにご参照いただければと思います。
 それでは、ずっと議論してまいりました3つの問題、4つの法案の改正に関する答申案をどういうものにするかということで、きょう、資料3として、答申案の構成についてという概要を示すものを資料として出していただいております。これにつきまして、銭谷初中局長からまずご説明をいただきまして、パートごとに皆さんのご意見をいただいていきたいと思っております。
 それでは、銭谷局長、お願いいたします。

【銭谷初等中等教育局長】
 初中局長でございます。それでは、資料3につきまして、私のほうからご説明をさせていただきます。
 第4期中央教育審議会発足の際の2月6日の総会で、伊吹文部科学大臣のほうから、今回、教育再生会議の第1次報告に示されました緊急4項目のうちの3項目、すなわち3法律案の国会提出に関連をいたしまして、このたび中央教育審議会にご審議をお願いをするというごあいさつがあった際、その審議の期間につきまして、大変取り急ぎになって恐縮ではありますが、2月下旬から3月上旬にご審議をいただいてご報告をいただきたいということをお話しさせていただいたところでございます。
 本日は3月3日でございまして、3月に入ったわけでございますので、私ども事務局当局といたしましても、中教審ではこれまで7回にわたりまして総会、分科会でご審議をいただいてきたわけでございますが、そろそろ最終的なご報告、答申をイメージしていただいてご審議を賜ればということで、ご用意をさせていただいたのが資料3でございます。
 答申案の構成案(イメージ)と記載してございますが、最終的な答申に向けまして、これまでのご審議を踏まえつつ、全体、こんなイメージで答申は構成されるのではないかということについて、委員の先生方にイメージの共有を図っていただきますことを主たる眼目としてこの資料は作成をしたものでございます。
 まず、全体、答申案として私どもがイメージをさせていただきましたのは、資料3の1ページにありますように、今回の3つの法律改正、それぞれの法律改正の意味合いをまず総論として書くということで、第1部 総論とさせていただきました。2ページ以下が各論でございまして、2ページをお開きいただきますと、各法律ごとに、順番は学校教育法から書いておりますけれども、第2部 各論の1.といたしまして学校教育法の改正について、これも2つに分けまして、1つは法案の概要ということで、ご議論をいただきました内容をもとに、大体こういう法案を中教審としては考えてみたといったことを記載していただくということで、(1)は法案の概要ということにいたしました。
 (2)は留意事項といたしまして、これは法案の概要そのものではないわけですけれども、法律改正に当たって、これから内閣として、文部科学省として作業を進めるに当たって留意をしなければいけない点、あるいは審議においてこの点はぜひ今後の運用として留意をすべきだというご意見が出されたこと。さらには、今後さらに中央教育審議会として、今回の法律改正というわけではないけれども、将来に向けて検討していくべき事柄がいろいろ出されておりますので、そういったことを含めまして、法改正に直接かかわる事柄ではないけれども、中教審としてこういう形で意見を言っておこうという部分を留意事項として記してはどうかと構成をしてみました。
 今日、お示ししたのは、学校教育法の改正、それから教育職員免許法の改正それぞれについて、法案の概要と留意事項ということで記載をいただいております。
 3ページでございますが、同じように地方教育行政の組織及び運営に関する法律についても法案の概要と留意事項ということで構成をしようと思っておりますけれども、地方教育行政の組織及び運営に関する法律につきましては、この分科会、総会で最も多く時間を割いてご議論をいただき、法案を作るに当たっての基本的な考え方も他の2法案に比べますと随分ご議論を賜っておりますので、基本的な考え方と法案の概要といったことで地教行法は構成してはどうだろうかと考えてみました。留意事項につきましては、先ほど申し上げましたような趣旨で、これまで、あるいは本日の会議などで出されましたご意見をできるだけ留意事項ということで盛り込んでいきたいと思っております。
 繰り返しになりますけれども、これは答申案のイメージでございまして、内容につきましてはまた本日ご議論をいただいて深めていきたいと思っているところでございます。
 そこで、それぞれの内容に触れさせていただきたいわけでございますが、まず総論でございますけれども、私どもが考えました文章は骨のような文章でございますので、実際の答申案ではもっときちんとしたものになると思いますが、第1部 総論といたしまして、改正教育基本法において示された新しい時代の目指すべき教育の姿を踏まえまして、諸法の見直しを行うことが必要という基本の考えを示した上で、学校教育法、教育職員免許法、そして地方教育行政の組織及び運営に関する法律について、それぞれどういう観点から今回改正案について審議をし、方向性を出したかということをまず記載いたしてございます。
 2枚目に戻っていただきまして恐縮でございますが、第2部の各論で、先ほど申し上げましたように法案の概要ということで、学校教育法については5点概要を記してございます。ただ、これは率直に申し上げまして、先週日曜日の2月25日の分科会で配付をいたしました3つの法律案の改正に関する骨子案、本日も参考資料2から4として配付をしてございますが、例えば学校教育法の改正に関する骨子案(初等中等教育関係)という参考資料2、この骨子案をものすごく縮めて書いたのが法案の概要でございまして、ここに骨子案のような内容が入ってくるという意味で記しているものでございます。本日、ご議論の際、概要のこの文章にはあまりこだわっていただきたくないと思っております。むしろ、法案の概要の部分のご議論をいただくときは、前回お配りをいたしました参考資料2の骨子案に基づいてご議論いただいたほうがありがたいと思っております。これは単に形をつくるために概要として5つ並べただけでございますので、その点はよろしくお願い申し上げたいと存じます。
 留意事項につきましても代表的なものを掲げておりますけれども、学校教育法につきましては、今まで出されたご意見を踏まえますと、そこに4点掲げてございますが、学校教育法の位置づけがどうなるのかということについていろいろご意見ございましたので、究極的には教育基本法、学校教育法の見直しを踏まえた学習指導要領の見直しが今後あるので、その3者の関係を踏まえた学校教育法の見直しに留意する必要があるといったご意見があった。義務教育年限については、今回は9年と規定をするわけでございますが、これは中長期的な検討課題である。学校の第三者評価のあり方についてはさらに検討が必要である。それから、新しい職を設けるわけでございますが、副校長、主幹、指導教諭の職にふさわしい給与体系についてさらに今後検討する必要がある、といったご意見があることを留意事項として記してはどうかと思っております。この点、さらに留意すべき事柄があれば、本日またご意見を賜ればと思っております。
 免許更新制の導入につきましても同様でございまして、法案の概要部分は、先日お配りをし、ご議論を賜りました、本日は参考資料3として配っております教員免許法等の改正に関する骨子案を要約したものが概要のところに記載をしてございます。本日ご議論いただく場合には、また骨子案に基づいてご議論いただければと思っております。
 留意事項については、これまで免許法等の改正について出されましたご意見をここには記載をしてございます。1つは、免許状更新講習の内容の充実と修了認定基準の明確化について随分ご意見が出ております。それから、免許状更新講習の免除の基準の明確化。さらには、指導が不適切な教員につきましては、判定基準等に関する全国的なガイドラインの策定について検討が必要であるといったご意見が出ております。それ以外にも、教員につきましては教員の養成、採用、研修、評価等の施策の一体的な推進をしていくべきであるといったことや、教員の職場環境の改善等による教職の魅力の向上について意見が出ておりますので、留意事項としてこういったことを掲げてございます。本日またご意見いただければ、それを追加して文書化していきたいと思っております。
 最後に、地教行法でございますけれども、これも基本的な考え方は今までここでご議論いただいたことをベースに一応つくってみましたが、法案の概要につきましては、本日、参考資料4でお配りをしております地教行法の改正に関する骨子案の要約したものを、ただ事項としてそこに記載をしてございます。表現等につきましては骨子案に基づいてご議論を賜ればと思っております。
 留意事項としては、これまでのご意見の中から県費負担教職員の人事権を全面的に市区町村に移譲することについては、費用負担のあり方を含め今後引き続き検討。検討課題を残しているという意味で留意事項として掲げておりますけれども、これについてもご意見を賜ればと思っております。
 なお、本日は、参考資料2から4までの改正に関する骨子案につきましては、前回もご議論いただいたわけでございますけれども、前回までのご議論を反映し切れない部分もありますので、骨子案は前回と同じものをお配りをさせていただいております。前回のご議論、そして本日のご議論を踏まえまして、骨子案については今後修文をして、最終的に法案の概要という形で整理をしていくつもりでございます。きょう、お配りをしました参考資料2から4の骨子案、それから答申案の構成案(イメージ)の中に概要と書いてありますのは、そういう性格の資料としてぜひご理解をいただいて、ご議論賜ればと思っております。
 今後、答申に向けて、構成案はこんなイメージでつくっていったらどうかということで、きょうはご提案をさせていただきました。よろしくご審議を賜ればと思う次第でございます。

【梶田分科会長】
 ありがとうございました。
 今、資料3、答申案の構成案(イメージ)についてご説明いただきました。これはイメージということで出してあるところがみそだと私は思っております。まだ内容的には若干詰めなければいけない点もあるでしょうし、また皆さんの本日のご意見によって若干これに手を入れていくことになると思うんですが、こういう感じのものを答申案として出してはどうかということで出されておると私は理解しております。
 そういうことで、この前の日曜日、6日前になりますでしょうか、長時間かけて議論していただいたときの資料、2月25日に提出されました骨子案がそのままの形で参考資料2、3、4として出ております。あのときから大分議論しておりますから、流れが若干はっきりしてきて、骨子案に手を加えなければいけない部分も出てきているのではないかとは思いますけれども、本日のイメージ案を具体的な形でご理解いただくために、6日前の合同会議のときに出された資料が出されております。本日の資料3をメインの資料としながら、しかし具体的なものとしては参考資料2、3、4を見ていただきまして、本日、これで何とか議論の方向を収れんさせていきたいと思いますので、どうかその辺を頭に置いて議論をしていただきたいと思います。
 パートに分けて皆さんにご意見を伺いたいと思います。まず、1ページ目の総論の部分につきまして、皆さんのほうでご意見があればお願いをしたいと思います。内容の問題と、事柄の順序の問題も多分あると思うんです。教育基本法の改正があって、その審議の中で、国会において非常に問題にされたいじめ、未履修、学力低下等々の問題があって、あるいは教員の力量の問題ということもあり、同時に我々がいつも頭に置かなければいけないのは、2001年から長い時間をかけて中教審、特に教育制度分科会等でずっと議論を積み重ねてきました。こうしたほうがもう一歩いい学校教育になるのではないかということで、議論を積み重ねてきたものがあります。こういうことを念頭に置いてといいますか、それを踏まえて今の3つの課題、4つの法律の改正をしていく。そういうことを総論に書いていただくことになるかと思います。
 お気づきの点、どういう点でも結構です。渡久山委員。

【渡久山委員】
 趣旨はおおむねいいと思うんですけれども、1つ非常に気になるのは、最後の地方分権の理念の下から2行目、「改正教育基本法において定められた教育の機会均等」とあります。それと同時に「水準の維持」、それから無償制といいましょうか、国あるい地方の財政措置義務があります。平成17年度の答申では、義務教育を創造するというところでは、義務教育の根幹はやはり機会均等と水準維持と無償制という財政措置があったと思いますので、これは各論のほうにも若干補強で出てくるかもしれませんけれども、ぜひともそういう観点が入っていたらいいのではないかと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 一応、今回、法律改正に直接かかわるところだけが挙げてあるので、教育基本法の内容についても若干そこのところ、何を取り上げるかとなるかと思いますが、今のご意見は事務局のほうで考えておいていただくことにいたします。義務教育の無償制です。
 中村委員。

【中村委員】
 構成はこれでよろしいと思うんですけれども、ちょっと気になりますのは、これは各論とも関係しますけれども、例えば上から4つ目の「昨年秋のいじめや未履修」だとか、一番下の「また……適正に実施されておらず」とか、いかにもネガティブなものが入っています。各論の結果、こういう総論であればいいんですけれども、これを国民にアピールしていかがなものかという感じがしているものですから、これは分科会長にお任せします。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。確かにそういう点があるだろうと思います。
 高倉委員、お願いします。

【高倉委員】
 非常によくおまとめいただいたと思っております。ありがとうございました。
 1点、各学校種の目的や目標というところでございますけれども、一昨日、ヒアリングのときに特殊教育関係の団体の代表の方から、特別支援学校について、昨年6月、学校教育法が改正されたままでいいのか。特に目標というところについて、もう少し書き込みをしていただきたいという意見が述べられました。我々、これまで各学校種の目的等について議論してまいりましたけれども、その中で、昨年改正されたばかりということがあろうかと思いますけれども、特別支援学校について、教育基本法が改正されたことを前提にして、もう少し突っ込んでみてもいいのではなかろうかと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 今、既に学校教育法のほうにもう踏み込んでいただいておりますが、もし総論は大体こういう点でということであれば、次の学校教育法に移りたいと思いますが、総論のほうで何かございますでしょうか。よろしいですか。
 では、総論のほうはこれに少し、今、中村委員からご指摘いただきました、あまりネガティブな感じばかりが出ないように、少しニュアンスの問題、表現として考えるということも含めて検討することにいたしまして、次の2ページにあります学校教育法の関係、各論1.というところになります。ここにつきまして、今、高倉委員、既に特別支援教育のことでご指摘いただきましたけれども、ほかに何かありますでしょうか。大南委員、そして加藤委員。

【大南委員】
 今、高倉委員からお話がありましたし、私も既に申し上げておりますが、学校教育法第71条の中で、特別支援学校は障害のある子供たちに対して幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準じた教育を行うということが書かれております。ですから、幼稚園、小学校、中学校、高等学校の目標を設定するときに、障害のある子供も当然その中には含まれているという配慮といいますか、そういう立場で目標を設定していただければ、具体的には学習指導要領がございますので、幼稚園、小学校、中学校学習指導要領と、現行では盲学校、聾学校、養護学校学習指導要領ですが、新たにつくってまいります特別支援学校の学習指導要領の中で、今度は障害に応じたといいますか、一人一人の教育的ニーズに応じた教育が展開できるのではないかと思います。
 以上でございます。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 では、加藤委員、お願いします。

【加藤委員】
 目標の規定のところで、骨子のほうは今日は参考までにということで、今後、ワーディングや中身については検討されていくことになると思うんですが、前々回も私は申し上げましたけれども、教育基本法の目標に定めてあって、ここでは定められていないこと、あえて記載をされていないこととの関係が、やはりもう少しわかりやすくなるようにする必要がある。それから、旧学校教育法ではもう少し具体的にイメージがしやすかった目標が少しあいまいになっているという点について、具体的にこれから骨子案を練られるときに、できるだけ具体的にわかりやすいものにしていただきたいということをもう一度申し上げます。
 それとともに、目標のところで、ぜひ科学技術の基礎的な理解といいますか、そういうものを加えていただきたいということを申し上げたいと思うんです。これは実は私のところにある方から、現在の学校教育法にはそれと理解できる文言が記載をされているんですけれども、今回の骨子案では、自然現象の科学というものはあるんですが、いわゆる科学技術、我が国の最も国の基本をなす、競争力の基本をなしている科学技術、ものづくりを考えたときに、それはぜひ必要なのではないか。私もそういうふうに思いましたし、パブリックコメント、全部見たわけではないんですが、何人かの方から科学技術について記載をすべきであるという意見が述べられておりまして、私もこれは同感でございます。ぜひその辺について、今後、骨子案を考えられるときに加えていただきたいと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。

【寺崎委員】
 留意事項、それから法案の概要のほうの副校長、主幹、指導教諭の職の設置、そしてふさわしい給与体系等について今後検討ということでございますが、主幹を設置することによって、今、一番厳しいと言われている教頭の負担を軽減することはかなり可能だろうと思うんですが、ここに書いてあるように給与体系等、つまり時数の軽減をしっかり行っていかないと、結果的にはまた主幹にさまざまな仕事がかかってきて、またなり手が出ないという状況が起きてきますので、ぜひ今後、検討のところにそういったことに関する条件整備をしっかり書き込んでいただきたいと思っています。よろしくお願いします。

【梶田分科会長】
 寺崎委員、ありがとうございます。
 そうしたら、植田委員、片山委員、木村委員。

【植田委員】
 前回、前々回欠席をさせていただいて、とんちんかんなことを言わなければいいなと思いながら来ております。
 学校現場、私の中学校では、学年末テストの問題づくり、採点、そして評価ということで、非常に慌ただしく毎日教員は、まずパソコンと格闘しております。絶対評価ということで、80パーセントがどうだ、90パーセントがどうだ、教員が今まで抱えてきた資料に基づいてパソコンと格闘する。私たちは子供づくりが目的であるのに、機械と向かい合わなければいけないという現状がございます。これはなかなか一般の方にはわかっていただけないところではないかと思います。
 2つほど申し上げます。1つは、学校教育法の第2条、それから前文に公共の精神という言葉が盛り込まれました。それから、規範意識、最近は低下してきたと盛んに言われます。学校現場、下関市の小・中学校でも学級崩壊という問題はほんとうに切実な問題でございます。要は、教員の指導、指示に従わない生徒がいる。これをどうするか。授業に行ったときに教科書を出さない、出しなさい、うるせえ、そういう生徒がいるんです。そうすると、そこで時間をとらなくてはいけない。みんなと一緒に勉強するんじゃないか、出しなさい。それでもうるせえと言う。ほかの生徒はその間、一生懸命自分で勉強する子もおります、興味本位でこちらを見る者もおります。いろいろな生徒がおるんですが、時間をとらなくてはいけない。50分の授業が30分になったり、20分になったり、最終的にはある程度で切らなければしようがありません。
 結局、夜、家庭訪問をいたします。親との関係づくりというところに持っていかなければしようがないんです。ですから、我々の一つのポイントは保護者との関係をつくる。先生の言うことだからと保護者が言ってくだされば、本人の指導もマイナスに行くことはないんです。ところが、保護者に学校は何ていうことを言うかと言われれば、もう本当にお手上げでございます。
 そういうことで、先ほど申しました公共の精神、規範意識に関する規定をいただければ、私たちも法的な後ろ盾をいただけるということで、非常に動きやすいということでございます。家庭の教育力の低下、もちろん不適格教員であれば学校の教育力の低下につながるんでありますが、これも一つ、大変申しわけありません、若干お時間とりますが、私の以前勤めていた学校、年末年始に夜になるとガラスが割れるということがありました。どう考えても生徒です。地元の警察署と協力をしまして、男性教員で年末年始、真っ暗になる夕方5時から10時あたりまで張り込みをします。初めてそういう経験をしました。
 刑事さんに言われました。もし生徒が出てきたら、先生は確認をするだけにしておいてくれ、捕まえる捕まえない、後の指導については我々の仕事だから。大変ありがたいお言葉でした。そのときに、先生、学校では善悪の判断をきっちりつけさせるように指導してくれと言われたことは忘れません。善悪の判断、わかりました、学校でやりますと言ったんですが、やはり家庭でまずしつけていただきたい。三つ子の魂百までと申します。小さいうちから、いいことはいい、悪いことは悪い、その辺のしつけがあると学校でも後の指導が非常に楽になります。
 そういうことで、学校が毅然とした態度で、いいことはいい、悪いことは悪いと言えるような法的な後ろ盾、そういう言葉が学校教育法の中に盛り込まれれば、私たちは非常に心強いという思いをしております。
 それから、私は4年前に半年、大学で勉強させていただきました。山口大学の先生がおっしゃいました。最近の生徒は私語をする者が増えてきた。携帯を勝手に出す。小学校、中学校でよくしつけておいてくださいと言われました。これもそれにかかわることだろうと思います。いいことはいい、悪いことは悪い、この辺でぜひお言葉をいただきたい。これが一つでございます。
 2つ目でございますが、今、新しい職についてお話が出ております。副校長、主幹、指導教諭、それはそれでよかろうと思います。ただ、現場においては先生の数が足りません。これは定数法にかかわることで、ちょっとずれることだろうと思うんですが、平成14年度に学校週5日制が導入されたとき私の友達が言いました。先生はいいな、夏休みがある上に土日も休みか、それで給料は安定しておるのかと、うらやましがられました。現実はそうではございません。いろいろなところで声がありますように、ますます忙しくなるということです。
 特に部活、これは教育課程外になりますが、部活を抱えている教員においては土日がありません。もちろん、好きでやるからという指摘もありまして、しなくていいではないか。確かにおっしゃるとおりですが、学校にいれば、年が若ければ当然部活は持たされる、責任を持たされる。試合がある、試合があればある程度の結果を出したい、そうすれば土曜日、日曜日、試合前であれば練習をせざるを得ないということになるわけです。
 そして、土日に試合があれば振り替え休日をとる、基本的に出張命令があればとらなければいけないんですが、我々の宿命としまして、平日に休むとどうしても他の先生方に迷惑をかける。迷惑という言葉が正しいかどうかわかりません。担任が休めば、その代わりに行かなくてはいけない。それから、私たちの近隣の学校では自習をつくらないという方針でおります。自習させるといろいろな問題が起こってくる、自分たちで勉強ができない。だから、代わりの先生の授業に振り替えるわけです。負担が増えるということがあります。部活のこともあります。
 山口県では35人学級に取り組んでおります。そうすると、学級数が増える、授業数が増える。新しい本採の先生を雇っていただければいいんですが、教員の数の関係がございまして、山口県でも今からますます生徒数が減ります。今、臨採、非常勤対応でやっておられるんですが、わかるんですが、我々と同じ立場ではない。授業をしたらお帰りになる。結局、残った者が全部対応しなくてはいけないという現状がございます。
 そういうことで、新しい職ということですが、ぜひ定数ということについてもお考えをいただきたいと思うのでございます。大変お時間をとりました。お願いいたします。

【梶田分科会長】
 ありがとうございました。
 では、片山委員、お願いします。

【片山委員】
 今回、各学校段階別に目的と目標を書かれるということで、これはこれでいいと思うんですが、骨子の中にある内容を見てみますと、これだけだと学校現場のミッションの混乱を解決できないと思うんです。今、学校現場でミッションの混乱があると思うんです。骨子に書かれている目的、目標というのは建前だと思うんです。
 高等学校、中学校もそうですけれども、現実の一番のミッションは受験になっているわけです。したがって、学校の教員は、こういう建前のミッションと、現実の保護者、生徒の持っている目的との狭間で苦しんでいるわけです。この中で未履修の問題が出てきているわけです。今回、高等学校の未履修の問題を教育委員会の落ち度とか、教育委員会の説明責任のなさとか、教育行政体制の問題として整理されようとされていますけれども、実はそうではなくて、現場の学校におけるミッションの混乱が原因だと思うんです。これを解いてやらなければいけないと思うんです。
 ですから、今度、法律に学校段階別の目的、目標を書くということになったら書きにくいと思うんです。書けないかもしれない。ですけれども、現実にミッションの混乱がありますから、これをどうするのかというのは、やはり問題意識としてここで取り上げてあげなければいけないと思うんです。ですから、留意事項でも結構ですけれども、ミッションの混乱を何とかおさめるというか、学校の教員がミッションの混乱に悩まなくても済むような方向づけをしてあげるぐらいはしないと、私は今回の未履修問題の一番の本質を外すことになると思いますので、その点をお願いしたいと思います。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 木村委員、お願いします。

【木村副分科会長】
 参考資料2ですが、そこに学校の評価等に関する事項というものがあって、前からどうしようかと思っていたんですが、私、正委員でありましたときに教育課程部会長を務めまして、学校評価というのは非常に大事だとずっと主張してまいりました。
 そういうことからすると、参考資料2の2番目の学校評価等に関する事項、これはもっと記述が深くされると思いますが、このままでは何をやろうとしているのか全然わからないということで、私は早急に、これはなかなかお金もかかり、どういうシステムでやるかは難しいんですけれども、小学校、中学校、高等学校いずれについても第三者評価制度を入れる必要があろうと思います。しかも、第三者評価制度は国から独立した形でやることが大事で、大学でそれをやっておりまして、この制度をつくったことによる評価は難しいんですけれども、日本の大学はかなり活性化してきたのではないか。しかも、国民に対する透明性、あるいはアカウンタビリティーが増してきたのではないかと思います。
 こういう第三者評価機関をつくることによる学校評価の積み重ねが進んでいくと、今度は、今、問題になっております教育委員会の活動そのものにも評価が及んでくるということで、そういうことから言うと、今、議論されておりますような教育長の任命、承認といういわゆる事前規制が必要なくなるのではないか。評価の結果としてこういうものが出てきたから、教育委員会の活動は云々という議論ができるのではないかと考えます。
 殊に日本の初中教育のうち、公教育に対する国民の信頼が非常に下がっているという状況からしますと、一刻も早くこういうシステムをつくって、アカウンタビリティーを増していく。今、片山委員がおっしゃったミッションにも関係してくることですけれども、評価制度が成熟していけば、それぞれの学校がミッションをはっきり述べなければいけないということで、ごまかしのミッションがきかなくなるわけです。そういうことから言うと、一刻も早くこういう評価制度を国で考える必要があるのではないかと思います。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 学校教育法につきましては、今、伺っておりましても、あるいはこれまでの議論でも、資料3、答申案の構成案に書いてある法案の概要、留意事項のレベルではほとんど皆さん一致しておられるのではないかという気がしております。ただ、骨子案に具体を入れるというところでは、今の目標表現の問題から第三者評価のあり方の問題、あるいはどこかで新しい職をつくったら必要な人員配置、これも繰り返しも出ております。これも相手のある話ですから、なかなか難しい部分はあります。しかし、やはり中教審としては言っておかなければいけないだろうということでありまして、少し工夫したいと思います。
 そういうことで、今日、実は地教行法のほうに少し時間をとりたいと思っておりますので、急ぐようですけれども、申しわけありません、学校教育法の関係につきましてはこのあたりにさせていただきます。どうぞ。

【田村副分科会長】
 簡単に1つだけ申し上げたいんですが、今、片山委員がご指摘になったことにかかわるんですけれども、今、世界の流れは18歳成人論ということで既定路線になっています。ですから、18歳で選挙権を与えるということが近いうちに日本でも起こると思うんです。そのことと今の大学入試の問題というのは、生涯学習とのかかわりでなかなかに難しい問題があるんです。ですから、その辺は1回その辺で整理するというか、留意事項になるのかもしれないんですけれども、その議論はしておく必要があるのではないかと思います。裁判員制度も始まるわけですし、裁判員は18歳以上ということになると、その辺はかなりはっきり書いておかないと、学校教育のミッションを議論するときには外してはいけない要素ではないかと前から思っているものですから、一言申し上げさせていただきました。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 新しい時代へ向けて、学校体系のあり方、義務教育学校をつくったり、いろいろなことが出てくるかもしれませんし、義務教育の年限の問題もあるし、今のご指摘の大学教育の始期等々いろいろとあると思います。これを留意事項、検討事項に入れるどうかについて、ちょっと考えさせていただきたい。いずれこれは議論しなくてはいけない課題だと思っております。
 それでは、次の教育職員免許法等の改正につきまして、皆さんのご意見を伺いたいと思います。ここに概要が書いてあります。つまり、教育職員免許法の問題と、もう一つ教育公務員特例法もあわせて一部改正ということであります。このあたりにつきまして皆さんのほうでご意見があればお願いをしたいと思います。加藤委員、そして天笠委員、その次に渡久山委員。

【加藤委員】
 何度も申し上げていることでありますけれども、10年間の有効期間の問題でございます。私は、立場上も多くの方々に免許更新について意見を伺ってきたんですけれども、やはりこれから優秀な教員がもっと必要なる、あるいはこれから人口減社会、採用するにも民間はとても苦労しておりますけれども、そういう時代になったとき、この厳格な法の導入によって、教員という職業がほんとうに魅力のあるものとして大学生に映るのか、私はやや強い懸念を感じております。
 そういう意味で、申し上げてまいりましたように、原則として10年で失効するという免許ではなくて、留意事項のほうに入れてはいただいているんですけれども、そうではなくて、法案の概要のところの10年間の有効期間の性格というのは、講習や一定の要件を満たさない場合についてのみ失効するものだと。そういう性格づけをしないことには、これはまさしく教員という職業、教員に元気を与える、あるいはこれを目標に10年間頑張っていくというインセンティブにもならないと私は思いますので、ここはぜひ検討していただきたいと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 それでは、天笠委員。

【天笠委員】
 私は、リニューアルということについて改めて申し上げさせていただきたいと思うんですけれども、今回の教育基本法の改正の中には生涯学習時代云々ということが盛り込まれましたけれども、それと更新制というんでしょうか、接点、すり合わせをもう少し深めてもいいと私は考えております。
 それはやはり生涯学習時代、生涯学習社会における新しい専門職像、新しい専門家のあり方をもっと積極的に打ち出してもいいのではないか。その一つのあり方が、みずからの知識を更新していく、新しくしていく。そういう意味では、これからの新しい生涯学習社会における専門職に教育職員がまず先陣に立つというんでしょうか、そういう視点から免許の更新制のあり方もとらえていく必要があるのではないかと思うんです。とかく指導力不足云々という観点だけが論議されがちですけれども、やはりこれからの専門家というのはこうあるべきだ、そういう点では教職に続く他の専門職の人たちもこれに続くべきではないか。そういう制度を開こうとした、開いているという先導的な役割について、もっと目を向けたり、意義づけをすべきではないかと思っております。そういう点で、今日出てきた総論を含めて、若干理念を語る部分があってもよろしいのではないかと全体としては思っております。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 では、渡久山委員、お願いします。

【渡久山委員】
 1つは、現行、日本の教員免許制度の関係から見て、あるいは国際的に見ても、この導入については私は非常に慎重であるべきだという意見でありましたが、もしもこれを導入する場合、やはり優秀な教員をどう確保していくかが一つの課題になってくるのではないかと思います。免許更新制というのは従来と違って一つの職業に対して資格を課すわけですから、それなりの処遇をまた考える必要があるのではないかということが一つです。
 もう一つは、効力を失って失効していきますし、不適格教員の場合は第三者の判定委員会があって、それなりの適切な判定があるということは可能性として十分あるわけですけれども、万々が一そういうことになった場合、やはり身分保全だとか、不服申し立ての権利は保留することを考えていただきたいということが一つです。
 3つ目は、この問題に関しては、例えば時効が10年ということになると、法定研修の10年と更新講習の10年がちょうど重なってくるわけです。そうすると、講習のあり方、あるいは研修のあり方も考えなくてはいけないのは一つなんですが、現場を離れる教員がたくさん出てきた場合、現場の授業を含めて、どういう形で子供たちへの教育活動を保障すべきかが非常に大事になってきます。そういう意味では、この講習に伴って、やはりそれなりの現場に対する条件整備をきちんとやっていただきたいと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 片山委員、次、高橋委員。

【片山委員】
 2つあるんですが、1つは、今回の免許更新が世の中に流布して、私の県でもそうなんですけれども、教員がみんなだめなのではないかという誤ったイメージが流布されてしまうんです。これは教員のモラルにすごく影響すると思うんです。現在の教員にも影響するし、これから後に続く人にも影響すると思うので、これは避けなければいけない。今回問題になっているのはごく一部の不適格な教員ですから、そこが明確になるような表現ぶりが必要だと思うんです。仕組みはおそらくスクリーニングをもう一回するんでしょうから、みんなだめなのかとなってしまわないような書きぶりが必要だと思います。それが一つです。
 もう一つは、前も申し上げたんですけれども、不適格になる教員というのはやはりそれなりの原因があると思うんです。その原因分析が必要だと思いますけれども、その一つに、入ってくるときに品質管理ができていなかったのではないかというのは、私なんか一般職員を見ていてもやはり思うわけです。
 採用試験のあり方、採用のあり方、ここにもうちょっと光を当てる必要があるのではないかということで、非常に言いにくいんですけれども、場合によっては政治的な要素が働いて、公正な採用が弱められている実態がままあるのではないか。それから、政治でなくても、教育界の中の情実はありはしないか。それから、特技とかスポーツ、国体なんかそうですけれども、特技で採用して教える力がない。これは現実にあります。そういう入りのところをチェックするということを、これも多分、留意事項か何かになるんでしょうけれども、そこのところに少し光を当てないといけないのではないか。入りのところをルーズにしておくと必ず出てきますので、いいチャンスですから、入りのところを適正にするということもポイントにしていただければと思います。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 高橋委員、お願いします。次、佐々木委員。

【高橋委員】
 先ほど渡久山委員が言われたことでございますので、それで尽きているところはあるんですが、このことについては私ども重要なことだと思っておりますので、発言をさせていただきました。
 先ほど話題になりましたけれども、同時期に10年経験者研修もあるわけでございまして、そのほかの研修等も予定されているということで、以前、私はこの場において10年経験者研修の廃止、あるいは軽減の検討をぜひお願いしたいと申し上げたことがございました。また、もし実施する場合は、内容的な部分の役割分担もぜひお考えをいただきたいと思っております。こうしたことが留意事項として記載されるものなのか、あるいはその他の項において運用上の検討課題ということで記載されるものなのか。その辺のところは私にはよくわかりませんけれども、何からの形でこのことについては触れていただきたいと思います。現状においても、教員が研修等で学校不在になることが多いわけで、研修栄えて学校滅ぶということがないように、ぜひご配慮をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 佐々木委員、お願いします。

【佐々木委員】
 先ほど出たご意見のように、そもそも免許更新制の導入という声が上がってきたのは、多くの保護者から、学校の先生方に対しての不安や不満が出たということも一つあったかと思うわけですが、採用という意味で、そもそもは大学で教職課程の単位をどういうふうに与えるのかという話と、学校側がどういう採用をするのかというところを今後きちんとしていかない限り、問題が永遠に解決しにくいと思いますので、そこは重要だと思っております。
 それから、免許更新制ということに関しては、理念とか夢のようなビジョンをきちんと明確に書いて、これが今の先生たちを全員テストするものだというネガティブなことではなくて、よりよい先生が増えて保たれるという仕組みをつくっていく明るい教育現場、あるいは先生の品質を高め、自信をつけていただくためのもので、先生の専門性やプロフェッショナルな度合いを評価し、認めていくためのものだという、非常にポジティブなところをきちんと強調した書き方があってこそ、やはり先生たちがそこに臨んでいけると思うんです。
 これは学校の現場でなくても、私どもが普通に社会で働いていれば、日々研修を受け、違う企業の方やいろいろな分野の方と交流をすることによって、その人のプロフェッショナル度が上がるわけです。今、お忙しい職場、学校という現場で、学校の職員以外になかなか会えないという先生たちが10年、20年いるというのは、私、個人的に見れば、それは必ずしもいい先生が育つ現場ではないだろうと思うわけです。
 ですから、免許更新が単なるテストではなくて、ある一定の講習を10年ごとにきちんと受ける。その講習が今までのものではなくて、もう少し考えられて、異業種の方ともきちんと会い、そういったものによって先生方のプロフェッショナル度が上がって、ステータスも上がり、給与や待遇も上がっていくという免許更新制度になっていかないと、ただ試験が10年ごとにあるということでは、全く先生のモチベーションにもならないし、学校というものに対する世間からの尊敬の念も高まっていかないと思いますので、ここでのミッションとビジョンの明確な位置づけや明るい文面が非常に重要だと思います。
 また、講習のあり方がやはり重要だと思います。ただ、どこかの企業に行って説明会を受けて帰ってくるみたいな、そんなものをやっても意味がないと思いますので、現在の10年目の研修も含めて内容を見直す。もしかすると、他の学校の先生が訪問し合って勉強することを講習と見れば、現場を離れなくても済むわけです。そんなさまざまな工夫が重要で、ここはかなり重要なポイントだろうと思います。そうでなければ、ただの免許更新制度で、一定の期間が来たら試験を受けるだけになってしまう。
 それから、先日、ヒアリングのところにもありましたが、講習を受ける期間が前後2年間ぐらいということに関しては、もう少し年数を増やしたほうがいいのではないかというのが私個人の考えであります。妊娠、出産などを考えたりすると、女性は2年間という限定の中では、もしかすると免許更新に関して不都合が出てくることもあるかと思いますので、そのあたりの配慮もお願いしたいと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 そうしたら、押尾委員、そして井上委員。

【押尾委員】
 免許更新につきましては賛成でございまして、教職員がまた新たな気持ちで教職に入るということをぜひお願いしたいと思います。
 ただ一つ、内容の問題でお願いしたいんですけれども、教職員も早い人だと30歳から10年目の講習に入ります。そうすると、30歳から40歳の間の年齢層、またはもうちょっと上の間の年齢層が講習受講者に入る可能性もある。また、途中から持っていて、ぽんと入ろうと思って、教員になろうと思って講習受講者に入るときがある。さまざまな年齢層の免許講習の受講者がいるわけです。学校というのは、やはりライフステージにおいて、職種に応じた研修を日ごろやっているわけなので、そういう研修と免許講習にどういう違いがあるのか、またはどうリンクさせるかということを上手に考えていかないと、若い人も四十幾つの人も全部同じように話を聞いて、はい、講習が終わりましたでは、何で学校を出て30時間勉強しなければいけないのかと現場の教師に思わせてしまう。やはり出てよかった、勉強になったという実のある講習をぜひお願いしたいと思います。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 では、井上委員。

【井上委員】
 免許更新制については、基本的な問題としては、学校の教育をいかに子供たちにわかりやすくして学力を上げるような取り組みをするか、そういう教員をいかに確保していくかという戦略の一環だと思うわけで、そのためにはやはり養成段階から、養成の改善が必要でございます。
 また、先ほど採用の問題について片山委員からお話がありましたように、私も県の教職員課長をやって、人事をやる場合には教育委員、教育長、教職員人事担当者が襟を正して、そういう疑いのないようにすることがまず前提です。それとともに、外部からの政治的な圧力、あるいは縁故関係についてはすべて記録をし、それを場合によっては公開することによって歯どめ措置を講じるようなシステムも、教職員人事の場合には必要ではないかと思っています。今後、そういう点についてもさらに検討していく必要があるのではないかと思います。
 それから、免許の更新については、今度、改正教育基本法でも教員の研修については明確に位置づけられておりますから、教員は絶えざる研修に取り組んでいくことが明確になっております。そういう点で、教員の資質向上策として絶えず研修をし、また10年ごとに研修の成果を講習等でさらに充実させたものにして免許の更新をし、それによってさらに教員の資質向上をさせるという仕組みが免許更新だと思っています。やはり積極的な意味でこれをとられることによって、別に多くの先生がだめだから免許更新制を導入するのではなくて、これから新しい教育を創造していくためには、教員の皆様方に研修で努力をした成果を講習によってさらに高めていただいて、自信を持った教育を展開していただくという意味において、この更新制が機能するのではないかと思っております。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 それでは、荒瀬委員、お願いします。

【荒瀬委員】
 今までおっしゃっていたご意見と基本的に同じでありますけれども、研修が受け身になってはいけないと思います。免許更新制でどういうことをするにしても、それが受け身であってはやはりいけないと思います。それが法律上どう書けるのか私はよくわからないですけれども、先ほどからもご意見が出ていましたように、教員や学校が元気の出るような、元気の出るような法文があるのかどうかよくわかりませんが、そういったものにまとめていただきたいと思います。結局は、信頼のないところに教育はあり得ないと思うんです。教育力というのは求心力だと思うんですけれども、学校が求心力を再び持つために教員が信頼性を得ていく。それが学校の信頼につながっていくことが大切であると思います。
 いろいろな形の講習だとか研修だとか考えられると思うんですけれども、具体的にこれを進めていくときに一つ非常に重要なのは、自己研修計画というものを教員に求めていく。これはとても大切だと思っています。現在、教員評価システムが導入されておりまして、京都市でもやっておりまして、私も教員の評価をしておりますけれども、そのときにはそれぞれの目標設定と、その目標に向かって自分がどんな計画を立てて、どんなことをして、自分がどんなふうになったかを自己評価する。それをまた第三者といいますか、別の角度から教頭や校長が見ていくというシステムをとっています。これであれば、10年目、それから20年目、30年目となったときにもそれぞれの年限のあるべき目標があって、それに向けてどんなふうにやっていくのかということがありますので、何もかも教育委員会なり、あるいは別の機関なりが用意した試験があったり、研修があったりということだけでなくやっていくということで、非常に具体的、実際的だと思っています。
 外発的なものと内発的なものと考えますと、まさに教員の教育を考えていくわけでありますけれども、その点からも外発的にこういうことをしないといけないというのは、先ほど天笠委員がおっしゃっていましたが、専門職としては当然でしょうということで求めていくことは大切だと思いますが、本当に力をつけていくというのは内発だと思います。だから、外発から内発を引き出していくというあり方を具体的にしていくときに、法案とは直接関係ないかもしれませんが、とても重要だと思っております。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 門川委員、お願いします。

【門川委員】
 重なるところもあるんですけれども、やはり教育も教師も「画一と受け身」から「自律と創造」ということが基礎基本の徹底と共に一番大事なので、ポジティブなイメージを強調していただいて教師になろうという人が増える、また教師に対する尊敬の念が高まる、そういう表記もぜひお願いしたいと思います。これが1点、皆さんと同じであります。
 2点目は、メリハリをつけて、必要な人に必要な講習を。今の教員評価システムと現職教員の研修、更に免許更新講習がきちんと有機的に融合されて、かつ地方において、学校教育に責任を負う任命権者も含めていろいろな制度設計が柔軟に対応できるものになるように、また、大学でひたすら画一的な座学を受けるようなことにならないように、これは十分論議されてきたことではございますけれども、お願いしたいと思っています。
 3点目、採用試験の関係の話がございました。大事だと思っています。ただ、40代、50代になって問題の起こる教員が採用試験の成績が悪かったかというと、決してそうではありません。現場の教育実践の中で教師は育つ。絶えず研修や自己研鑽によって育つ教師と、採用のときは学業優秀で「学校秀才」だったけれどもダメな者とありますから、教員養成もきちんとする、採用のところもきちんとする、同時に研修や免許更新制も含めてポジティブに教師が成長していくというすべての過程が大事ではないかと思います。
 採用試験ですけれども、京都市の場合、1次試験で全員面接、2次試験で模擬授業を行う、あるいはPTAや民間企業人事担当者、ボーイ・ガールスカウト指導者など民間人70人にも守秘義務をきちんと担保しながら面接に入っていただくなど、開かれた採用試験になっています。一方、試験の方法と同時に、京都市議会で口きき条例、いわゆるモラル条例が制定されて制度としてもきちんと担保される。そういうことによって地方の自治能力がより一層発揮されるのではないかと思っています。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 それでは、角田委員で一応この議論を終わりにしたいと思います。

【角田委員】
 教員免許更新制の導入というものは、何か不適格教員の排除というところから生まれてきたという印象が非常に強いです。今回、リニューアルという観点を新たに取り入れて、不適格教員と免許の更新制を分ける、この辺が非常に大きなポイントなのではないかと思っています。したがって、今回の法案の概要の中で1、2、3ときちんと分けているわけですけれども、なおかつもっとこの辺のところを明確にして、今回の免許の更新制というものが、あくまでもリニューアルで、今よりも資質の向上に役立つというポジティブなものなのだという表現をもっと強く出していただければありがたい。同時に、そのためには更新講習の内容をいかに充実させるのか。そして、それぞれのライフステージに合った講習をいかに選択できるシステムをつくるか。この辺が非常に大きなことになってくるのではないかと思いますので、ぜひその辺の記述、表現の整理をお願いしたいと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 教員免許更新制、それから不適格、指導力不足の先生の再研修、ともかく教壇から降りてもらうということやら、こういう問題というのは皆さんご承知のように、去年7月に中教審答申で既に考え方を整理して一応出してあります。今回の法案になっているものは大体それに沿っていると私は見ております。
 ポイントは、今、ご指摘いただきましたように、免許更新制というのはリニューアルのためであって、新しい時代の専門職のあり方、これは教育だけではありません。時代の変化に対応して、常にリニューアルしないと資格そのものが内容を表さなくなってしまう。そういうところを一番大きな性格づけにしております。ただ、教員の問題というのは、どうしても一つの問題事例から全部推しはかってしまう。こういう世論ができやすい部分ですので、それに落ち込まないようにということで、これは別途、教育公務員特例法などの改正によって、あるいは免許法の中にも免許の取り上げの改正によって、これはこれで対応する。ですから、リニューアルの問題と不適格教員の教壇から降りてもらうことと分けるということははっきりと打ち出しております。これを今回、法案にするということであります。
 ただし、これを運用にするに当たってはまだまだありますので、法律が成立しましても省令という形で、これは去年7月の答申の中にも書いてあるんですけれども、教員の研修体系との整合性、過大な負担になってしまってはいけません。それから、何度もご指摘ありましたように、この問題は教員養成のあり方も変えなければいけないし、採用のあり方も変えないといけないし、当然、待遇のあり方、あるいはある種の昇進といいますか、中での処遇、リーダーシップの発揮の仕方も考えなければいけない。こういう問題が全部かかわってきます。こういうものは第4期教員養成部会で詳細を詰めていただいて、できるだけ早く省令の形で、運用が非常にスムースに行くように、今、いろいろと皆さんのほうから出ましたご意見がこれに反映するように、何とか持っていかなければいけないと思っております。
 そういうことでこれはご理解をいただきまして、次に地教行法の関係のところにまいりたいと思います。地教行法、25日に出たものと、それから本日、概要で出たもの、これは私の見方ですから当たっていないと言われるかもしれませんが、若干ニュアンスの違う部分がなきにしもあらずと思っております。まだここで議論はオープンでありますので、といっても先ほど山崎会長がおっしゃいましたように、やはり流れの中でこういうところは押さえなければいけないと部分もございます。そういうことも頭に置いていただきながらご意見をいただきたいと思います。
 地教行法の改正については、本日、法案の概要につきましても、それから留意事項的なものにつきましてもいろいろとまとめてありますので、それも見ていただきながら、また6日前のものではありますけれども、皆さん、たたき台にしていただいたこれももう一度参考にしていただきながら、ご意見をいただきたいと思います。
 それでは、お願いいたします。中村委員、お願いします。

【中村委員】
 きょうの参考資料4に基づきましてちょっとご意見申し上げたいんですけれども、まず1番目にあります教育委員会の責任体制の明確化ですけれども、○が3つありますここまではよろしいと思うんですけれども、ただ、運用の問題として、教育委員会がどこまで、何を決めているのか。ほとんどの教育委員会は、教育長に委任事項として権限を結構譲っているんです。この場合、教育長がどこまでどういうことを決めているのか。これをやはり公表なり公開していく必要があるだろう。これは運用の問題だろうと思うんです。
 それから、一番問題は、今回に準ずるかもしれませんけれども、非常時だとか緊急時に教育委員会を開くいとまがない場合、現在、文部科学省の行政実例ですが、教育委員会は持ち回りはまかりならんということになっていますので開けない。では、開けないときにどうするのか。教育長が現実はやらざるを得ないんですけれども、幾分躊躇する向きもあるでしょうから、そういう場合の特例を決めておいていただいて、あとで教育委員会でご追認いただく。こんなことも今後、個人情報保護法までできている時代ですから、何が起こるかわからないという時代ですから、それも必要なのではないかという気がします。
 それから、4つ目の○で、第三者の知見を活用しつつ議会に報告する。これはどうも法令でここまでやる必要があるのかという気がします。といいますのは、予算、決算、事務事業を通じてすべて議会の関与を受けていますし、報告もしています。一般知事部局の決算も監査委員会の認定を受けて、したがって教育委員会の部分も監査委員会の認定を経た上で議会に出すことになっていますので、いかがなものなのかという感じがします。
 次のページの3番にあります地方分権の関係ですけれども、私学に関する関係は、いろいろな団体からもいかがなものかという疑問がありますし、私もやはりこれまでの歴史を考えますと、私学の建学の精神、あるいは自律性、これをどこまで担保すればいいのか。例えば私、東京都ですけれども、東京都の教育委員会が同一レベルで東京都の私学に指導はちょっと難しいです。建学の精神に触れると思います。助言もどの辺までできるのか、これも非常に疑問です。
 あと1点、これはそれぞれの県によって事情は違うんでしょうけれども、私ども東京都の場合、高校で言えば都立学校が210校です。私立の高等学校は238校、私学のほうが多いんです。こういうときに指導主事が回り切れない、現実不可能という点があります。しかも、幼、小、中、高校まで含めますと1,400校あるんです。これに対して私ども教育委員会がというと、これは全然無理な話なのですので、その実情だけちょっとお話ししたいと思います。
 それから、4番目にあります、これはかねてから問題になっておりますけれども、私どもも議論する上では、地方自治法が改正されて現在の状態になっている。その中で第245条の5という規定が現にあって、これを伝家の宝刀というかは別問題として、文部科学省も各省庁もこの伝家の宝刀を抜いたことがない。したがって、伝家の宝刀を新たにもう一本付与すべきなのか、現在持っている伝家の宝刀は実は中身が竹光なので、例えばはがねの刀を欲しいということであれば、今までの地方分権、自治法改正の流れから随分変わった様相になりますので、これは私どもが踏襲しようと、ちょっと無理ではないのか。
 ただ、第245条の5でいっております伝家の宝刀が抜きにくいということは、あの法令の中で、法令違反は明らかですから抜きやすいと思うんですけれども、そのほかに著しく適性を欠くとか、公益に反するとか、こういう抽象的な言葉が入っております。教育の場合、こういう規定があれば地方自治法にいっている伝家の宝刀を抜けるのだということであれば、それはそれで一つの考えではないのかと考えます。
 ただ、現実問題、伝家の宝刀を抜いたときに何ができるのかということを考えると、これはご提案ですけれども、例えば航空機事故調査委員会というものがあって、事件が起こると専門機関が行ってやります。だから、文部科学大臣がこの刀を抜く場合は相当の事件で、原因も相当深い広範囲な問題だろうということになりますと、やはりそういう専門機関をつくっておいてやらないと、実効性のない、ただ行きました、調べました、責任果たしました。これが責任なのかという感じがしますので、そういうことがぜひ必要なのではないか。
 一番最後、教育長の任命につきましては、先ほど申し上げましたとおり全く時代に逆行するものであると考えております。
 それから、全体を通じて、国の責任の果たし方と書いてありますけれども、国がどうやって責任を果たすのか。学校現場がなっていない、だらしない。例えば、携帯電話の問題、それから24時間コンビニに子供がたむろしているから何とかせい。これは学校に言われるわけです。あるいは、ファミリーレストランで子供が真夜中に飯を食べている、親が連れていっている。あるいは、ゲームの問題、テレビの問題、メディアの問題、こういうものに対して私ども都道府県の教育委員会では残念ながら何にもできないんです。私ども考えるのは、これこそ文部科学大臣が各省庁に対して物言う責任があるのではないかと考えておりますので、これは法律にはなじまないと思いますけれども、ぜひその点もご検討いただきたいと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 今、非常に大事な点を幾つもご指摘いただいたと思います。繰り返しになりますけれども、我々、地教行法で細かい制度いじりをしていると、変なラビリンス、迷路に入ってしまいますので、私たちいつでも念頭に置きたいのは、ナショナルミニマムとローカルオプティマム、両方必要だ。それをどう調和させるか。
 つまり、国の責任として教育の水準維持やら教育の諸条件の整備がある。まず都道府県市町村、設置者としての責任があって、特にうちの町の教育をどうするかというローカルオプティマムの問題がある。あるいは、学校そのものの責任がある。そういうローカルとナショナルな問題をどういうふうに調和させながら、最終的には学校一つ一つがどうやったら生き生きするか。それがないと、角を矯めて牛を殺すようなことになりますので、今、中村委員から包括的にいろいろとそういう点についておっしゃっていただきました。例えば、事故調査委員会みたいなものをつくって、ナショナルなものとローカルなものをつなぐ、ストレートにいかない、しかしというご指摘もありました。そういう幾つか法案そのものに関係することも含め、同時に運用といいますか、こういうやり方だったらこれがうまくいくのではないかとか含めてご意見をいただきたいと思います。
 野澤委員、門川委員、石井委員、あと順番をつけます。まず3人の方、お願いいたします。

【野澤委員】
 今、都の教育長がいろいろ言ったので、私は市の行政をやっている立場でお話を少しさせていただきますけれども、参考資料4の一番最初の問題の4番目のところです。これは今、中村委員もおっしゃいましたけれども、議会はかなり細かくいろいろな形で既にチェックをしてくださっていると私は考えておりますし、また教育委員会もそこにはかなり報告をきちんと出していると思っています。ですから、具体的にこれをどういう法文の中に書き込んでやれるようにするのか。要するに、それ以上のことができるような形をどういう形で出せるかが、非常に大きな問題になるのではないかということが一つであります。
 2つ目は、教育委員会の体制強化の問題ですが、国、それから都のほうで教育委員の研修に努めていただくのは結構なことですが、基本的にはやはり教育委員自身が自主的に自分たちで研修しないといけないと思うんです。特に、連合会なんかがありまして、そこでの研修が今でも行われているようですが、そういったものをきちんとやっていくような奨励みたいなことを、いろいろしていただけるような形にしてもらったらどうかという思いが非常に強くいたします。力はそれぞれ非常に持っている委員がいらっしゃいますので、そんな感じがいたします。
 それから、4番目の責任の問題について、今、中村委員もおっしゃっいましたので、結局のところ、自治体、市の行政というのは自主自律に向かって一生懸命それぞれ、特に2000年以降取り組みを始めたところです。自分たちのまちを自分たちでつくらなくてはだめなんだということを、みんなでもって考え合っていく市民をどれだけつくっていくか、そこに来ているわけです。
 教育の問題についても同じはずでありまして、ただ、そのことをちゃんと行うためには、都レベル、あるいは国レベルと、一応基本的には対等の関係という言い方をしておりますけれども、そこでお互いに情報交換をしたり、相談をし合ったりしながらやっていかないと、自分のところだけでできるわけではないわけです。今、一生懸命そのルールづくりを始めている、やり方をつくり出している状況なわけで、特に教育委員会の問題について言えば、幾つかの問題で情報がきちんと相互につながっていないという問題が出てきていた。そのことによって、何か次の手だてを考えなくてはならないという問題が出てきているような感じがいたしますけれども、基本的にはその前の段階でほとんどの問題は処理ができるはずだと私は思っています。そのことを申し上げておきたかったということです。そしてまた、これを置いても、おそらく実際に使うことはないのではないかという感じもいたしますので、そんな感じの話をさせていただきました。
 もう一つは、既に教育長の問題についていろいろ言ってきていますので申し上げませんけれども、教育長というのは義務教育に責任を持っているだけではございません。家庭教育の問題について、あるいは社会教育機関の問題についても責任を持っていまして、そういった意味では、さまざまな形の責任を持った形で教育長は動いているはずであります。
 今、全体的に言うと、義務教育の問題を中心にしてさまざまな問題が出されてきて、そこを中心にして教育長の役割を考えられておりますけれども、私は学校教育の問題というのは、教育委員会あるいは学校だけで考える、そこの中で解決しないと思っています。むしろ、地域、あるいは家庭の問題を連携させ、総体として教育の問題として考えるか。同時に、福祉などとかなり結びついた形で、トータルに子供たちの実態、状況みたいものを押さえながら、特に小学校に入るまでの子供たちの問題をきちんと押さえながら、個別の問題は個別の問題としてきちんと解決ができるようなシステムをつくってやらない限り、学校の先生方のご負担というのは当然、非常に大きくなるだろうと思っています。そんな意味で、ここについては要らないのではないかというお話をさせていただきます。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 では、門川委員、お願いします。

【門川委員】
 地方分権と国の関与の問題が一つの大きな課題ではないかと思うんですけれども、地方分権、さらには組織内分権の理念により、できるだけ子供に近い学校に権限を移譲していくことが大事です。都道府県の教育委員会も、責任感が強くて、なかなか市町村に権限を移譲されない、学校に権限を移譲されないという状況です。本気になって国に地方分権を訴える同時に、自らも大胆に現場に権限を移譲していく努力が必要だと思います。
 分権と同時に、公の教育がきちんと適正に行われることをきちんと担保しておかなければならない。その調和の問題ではないかと思います。
 したがって、民主主義というのは手続と透明性、説明責任、それから客観性の担保が大事ですので、伝家の宝刀が抜かれるときには第三者機関の調査委員会を置いて機能させる。何か知らないけれども事実上の指導をしているようなことがないように、この機会に法令で明確にすることがいいのではないかと思います。国民、市民に非常にわかりやすくしていくことが大事ではないかと思います。
 次に、教育長の任命に国がどう関与するかという部分については否定的な意見が多いですが、教育再生会議でも「意見があった。」という表記であったと思いますし、難しい問題と思います。これは片山委員もおっしゃっていましたけれども、地方自治が有効に機能しているかどうか、つまり議会が、首長が、教育委員会がきちんと機能しているかどうか問われているのではないか。機能していたらこんな問題は全然ないわけです。
 したがって、是正を指示する、あるいは調査委員会を置くときに、文部科学大臣が教育委員、教育長を任命した議会並びに首長に対して通知をする。文部科学省は地方に対してある意味で説明責任を果たす。そして、議会と首長、もっと言えば住民が情報を共有して、そして課題意識を共有して、民主主義による自治能力が発揮されるような仕組みを担保していく。そういうことをしていけばいいのではないか。教育長の人事にまで文部科学省が直接関与するよりも、国が説明責任を果たし、地方に情報を提供し、地方自治能力が発揮できるような制度を新たにつくることで有効に機能するのではないか。もっとも、これも極めて限定的になされるというのは当然であります。
 異常なことはめったにないので、そのこと以上に、地方分権の視点から私は日常の学校評価をどう実施するかが大切だと思います。第三者評価についてですが決して否定するものでもなく、やっていかなければならないし、京都市では実施しています。しかし、国が全国の学校を一つの物差し、一つの価値観で評価していくということは、地方分権の主旨に反し、現場あるいは地方の創造性を萎縮させてしまう、そしてすべての学校、100万人の教職員を萎縮させていくということにつながりかねません。非常に大事に、慎重に運用し、かつ検証されなければならない。やはり、それぞれの地方、地域が当事者意識を持って、当事者評価を大事にしながら、その評価システムが有効に機能しているかどうかということを点検していくことが大事ではないか。先ほど発言できませんでしたので述べておきます。
 最後に、教育委員会の体制強化の中で研修のことが入っています。文部科学大臣が都道府県の教育委員の研修をして、都道府県の教育委員会が市町村の教育委員の研修をするということですけれども、どうも上部機関が下部機関の研修をするという感じが否めません。これは基本的に教育委員の役割とか制度を研修するという意味であり、おかしくないとは思うんですけれども、やはり地方の主体性を尊重し、共に研修する姿勢が大事。実際問題、都道府県・指定都市の教育委員会等と共催することになると思いますし、都道府県の教育委員会は市町村教育委員会と一緒にやるということですので、国と地方が共にやるという上下関係のイメージがない表記にしていただければありがたいと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 では、石井委員、お願いします。

【石井委員】
 私、地方六団体の知事会代表で出席しているものですから、きょう、最後の資料にございます参考資料5、地方六団体として2月27日付でまとめて発表した1枚紙がございますので、これをぜひご覧いただきたいと思っております。
 この中にございますように、今回の地教行法に関します改正点につきまして、地方分権一括法による改正前の教育行政に後戻りするということで、ここで反対を表明と明確に意見を述べているところであります。
 現在の文部科学大臣が持っている関与、権限、手段で何が不十分なのか、運用の問題なのか、こういったことについての検証、分析がなされていないという点。それから、教育委員会の再生は大事な議論で、しっかりと論議を尽くしていかなければいけませんけれども、そのためになぜ国の関与の強化が必要なのか。その説明、立証がなされていないところを強く主張しているところでございまして、これをぜひ参考にしていただきたいと思っております。
 改めてこの2点、指示、勧告の規定と、教育長の任命関与、これに加えて、ここには触れておりませんけれども、私学に関しましての教育委員会の指導、助言、援助につきましても私は異論がありますので、この3点、まとめてお話をさせていただきたいと思っております。
 今回の地教行法の改正の動き、いじめの問題とか、未履修の問題は大変大きな課題でありますけれども、これがなぜ短絡的に法律改正にすぐ結びついていくのかがそもそも理解ができないところであります。と申しますのも、今回起こっておりますいじめとか未履修の問題で、教育現場にいる先生方はこの問題を非常に深刻に、真剣にとらえておりまして、情熱を持ってしっかり対応していかなければいけないということで、教育現場はまさに今、真剣に考えようとしているわけでありますから、そういったことに水を差しかねないのではないか、上のほうに目を向けてしまうようになるのではないか。
 すなわち、教育の受益者は、何度もここで申し上げておりますけれども、児童生徒、それから保護者、そして住民に対して目を向けていくこと、教育委員会がそちらに目を向けていくことが一番大事です。こういう勧告、指示という権限を入れますと、どうしても上のほう、文部科学省のほうばかり見てしまうということで、当事者意識、あるいは責任を持って対応することが希薄化してしまう。無責任体質になりかねないのではないかという懸念を持っております。
 前回は議会の関係で出られませんでしたけれども、前々回、私が質問させていただきました現在の地方自治法、あるいは地教行法に基づく是正、あるいは改善の要求、さらには指導、助言、援助等の規定がありますけれども、これに関しまして適用事例はあるんでしょうかと私は質問させていただきましたけれども、銭谷初等中等教育局長の私の質問に対します回答は、発動例はないとおっしゃいました。では、なぜこのような是正、勧告、指示の規定が要るのかということに対しましては、ラストリゾートといいましょうか、例外中の例外であってという表現を使われました。
 すなわち、最後の切り札としてということでしょうけれども、同時に局長のご発言には、めったに想定されないものについて実例を想定して議論することはなかなか難しいというところまでお話をされておりますから、実例を想定されないような規定を、観念的な議論だけで条文をつくるということはどういう意義があるのか、改めてお聞きしたいと思います。
 中教審の一昨年の答申を見ましても、行政は地方分権化に向かって、教育もそういう方向で行こう、その中で権力的作用よりは非権力的作用を基本にすべきだと、一昨年、当中央教育審議会で答申をされているわけでございますから、そういう方向から見てもこれは非常に逆行しているのではないかと思うわけでございます。現行の制度を最大限に、地方自治法等を最大限に運用して、なおどこに問題があるのかということを明確に検証した上で立証していただきたい。改めてこのことを私は強く要求いたしたいと思っております。
 そういった中で、このような権限を、ここにありますような規定を入れましても、文部科学大臣は具体的にどのような責任をとられようとしているのか。こういう権限を入れるということは、権限を不行使、権限を行使しなかった不作為の責任ということが最近よく行政は問われますけれども、そのときに文部科学大臣はどのような責任をとられるのか。法律違反の場合は皆さん認識はかなり一致されるかと思いますけれども、著しく公益に反するといった非常に裁量性がある規定、要件が合っているのか。そういうこともありますでしょう。そういう行使について問題があったとき、大臣はどのような具体的な責任をとられようとしているのかということについて、明確な回答をぜひいただきたいと思っております。
 いずれにいたしましても、先ほど伝家の宝刀ということで中村委員からお話がございましたけれども、私に言わせれば、今の地教行法あるいは地方自治法があるということ、これがあることで文部科学大臣の指導が今、現場において徹底されていると思います。指導されたということで、事実上行政指導とか、事実上指導されたことに従わなかった教育委員会が今までありますか。それを明確にお答えください。私はないと思います。
 大体、教育委員会は上意下達のシステムになっています。ですから、首長の権限は、教育委員会の人事のこともありますれば予算のことがありますけれども、その他の教育の行政、運営はすべて教育委員会がやっておりますから、そこに何か問題があるというときには必ず上のほうも見てしまう。首長の意見というよりは、どうしても文部科学省、市町村の場合ですと都道府県の教育委員会のほうにお伺いを立てる。それがもう染みついていると思うんです。
 ですから、伝家の宝刀とおっしゃいましたけれども、私に言わせれば今の規定そのものが伝家の宝刀があって、伝家の宝刀というのは抜くものではないんです。それを背景にしてしっかり指導されておりますから、それで私は十分ではないかと思っているわけでございます。さらにこれ以上の伝家の宝刀が要るとおっしゃられても、使うことは全く考えられない宝刀になってしまう。どういう宝刀なのかわかりませんが、それはまさに屋上屋を重ねるような制度でありまして、伝家の宝刀もさびついた宝刀になってしまうのではないかと言わざるを得ないと思います。そのような伝家の宝刀は全く無意味であると、地方から見ますとこのように断じざるを得ないと思います。それが指示、是正に関する私の見解でございます。
 それから、教育長任命についての関与も論外でございまして、地方教育の地方分権の方向に全く相反するものでございまして、ナンセンスと言わざるを得ないと思います。
 それから、私学の関与について、私は前回まで意見を述べておりませんけれども、私、知事として毎日、私学の行政を、そして教育委員会の行政を見ています。私学の行政は自分自身の責務ではございますけれども、その立場から申し上げますと、今までの私学の特性から、自主性、独自性が最大限に尊重されるべきだということことが大前提だと思うんです。私立学校は公立学校にない独自の建学の精神、教育方針を持っておられまして、これが非常にすばらしい特色のある教育活動を展開されておられるわけです。むしろ、私学のほうがどんどんいい教育をなさって、それを参考にして公教育、公立学校のほうが後で見習ったり、あるいは追いかけて制度をつくっていく。教育特区をつくったりして。我が国の教育をリードしてきたのは私学です。
 そのような私学の自主性、独自性は最大限尊重すべきであって、このような指導、助言、援助という規定は全く必要ないと思いますし、これはまた逆に言うと有害だと思うんです。なぜならば、学校の運営、公教育につきましては教育委員会みずからが運営者でもあるわけですから、教育委員会と私学の関係はいわば競合関係に立っているわけです。競合関係の監督権限に関与するというのは、まさに利益相反行為であると言わざるを得ないと思うんです。したがいまして、指導ということは当然あってはならない規定だと思います。
 では、援助、助言はどうかということですけれども、援助、助言も全くおかしいと思います。民主的な統制が、教育委員会にそういう権限を付与しますと、やはり上からの立場で関与するということは残るわけですから、こういう規定は、指導、助言、援助いずれも入れるべきではございません。首長部局が私学の財政的な支援をしっかりやっていく、国もこれを応援してもらう。財政的な支援は当然これからもしっかり充実をしていかなければいけないと思いますけれども、だからといって教育委員会に助言とか援助という規定を入れることは、民主的な統制という立場からもおかしいと思っております。
 一つの具体例として申し上げれば、学習指導要領に関する意見聴取というものが各教育委員会で主催されておるんですけれども、文部科学省にその意見を伝達されるということですけれども、その際、公立学校のみが意見聴取の対象となって、私立学校は対象となっていない。それは教育委員会の仕事ではないとおっしゃるのかもわかりませんけれども、学習指導要領にどういう問題点があるのか、どういう意見を持っているのか、どういうふうに改善してほしいのか。こういう私学の生の意見がしっかり伝わるように、現場、現場で意見を吸い上げるシステムがなされていない。今でも非常に不公平な取り扱いになっているということも認識いただきたいと思っております。
 以上、いろいろ申し上げてまいりましたけれども、今までも上意下達のシステムの中で、現場の教育委員会は上のほう、上のほうを見ているんです。これ以上、文部科学省の言いなりになるような、県の教育委員会はそういう下部機関に成り下がってはいけないと思うんです。教育の地方分権で、むしろ現場にもっと責任を負わせて、自主性、裁量性を持たせて、もっと責任を持って教育を自分自身が自主的に、主体的に展開していく。こういうシステムの構築こそ、今、求められていると思っております。なぜこのような発想が出てきたのかということは、私も非常に疑問に思っているところでございます。
 最後に手続ですけれども、今までの中教審の議論は、こういう大きな異論といいましょうか、いろいろな意見があるときには、教育には多様な意見があるわけですから、しっかりと意見を聴取されまして、時間をかけて議論されておったと思うんです。ですから、9年前の地方分権のときにも1年がかりで議論されておったはずでございます。それから、一昨年、私がこちらに委員として任命をされまして、義務教育費国庫負担制度について意見を述べさせていただきました。あれも2月からスタートして10月まで、少なくとも半年以上かけてじっくり議論して、そして方針を出されたということなんですけれども、今回はわずか1カ月余で一定の方針を出されようとしている。しかも、先ほど来見ておりますと、各団体の方々は非常に異論反論といいましょうか、団体の数から見ると半分ぐらいがこういう改正に容認できないとおっしゃっている。この中であえてこの意見を集約して、答申しようということは、いかにも拙速と言わざるを得ないと思います。
 こういった突貫工事で議論をしてしまいますと、そういうことでつくった建物はやはり手抜き工事になってしまうのではないか。多くの教育関係者の方が納得して、みんなで日本の教育を支えていこうというシステムをつくっていかないと、システムがほんとうに手抜き工事によって崩壊してしまうのではないか。このことを懸念しております。
 以上3点と、今後の手続論に関しまして、まとめて見解を述べさせていただきました。少し長くなりましたけれども、ひとつお許しいただきたいと思います。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 これにつきまして、もし銭谷局長のほうで何かご説明がありましたらお願いいたします。

【銭谷初等中等教育局長】
 それでは、私のほうから少しご説明をさせていただきたいと存じます。委員の皆様の発言の時間をとって恐縮でございますが、お尋ねもございましたので、私のほうから少しご説明をさせていただきたいと存じます。
 まず、現行の地方自治法の是正の要求で十分ではないかというお話がございました。是正の要求は、現在、地方自治法の第245条の5に規定があるわけでございますけれども、著しく適性を欠き、かつ明らかに公益を害しているときに発動できるという要件は一般行政のルールでございます。他省庁の所管の事務につきましては、必要な権限が個別分野ごとに法令で規定をされておりまして、一般制度である地方自治法に基づいて是正の要求を発動する必要がない場合が多いかと思います。
 しかし、教育分野ではこのような個別の定めがない状態でございまして、今日のいじめの自殺、未履修等の問題にかんがみますと、教育分野の特性を踏まえた仕組みが必要ではないかと考えております。すなわち、現行地方自治法の是正の要求につきましては、教育分野での適用が難しいということがございます。
 2点目には、是正の要求につきましては、是正の要求を受けた地方公共団体は、是正のために何らかの措置を講じる義務は負うわけでございますけれども、具体的にどのような措置を講じるかは地方公共団体の裁量に任されております。『逐条地方自治法』の解説等によりますと、是正の指示の場合は地方公共団体は国から指示された具体的な措置内容どおりに行わなければならないと解されておりまして、確実な是正の担保ということを考えましたときには、具体的な指示内容どおりに行わなければならないわけでありますから、効果があるということがあるわけでございます。
 これまで各省庁におきまして、是正の要求が実際に発令をされた事例がないというのは、私どももそう思っております。これは文部科学省に限らず、承知している限りでは他省庁でもそうした事例はないようでございます。それは先ほど申し上げました、発動の要件が抽象的で、各事案への当てはめがなかなか難しいということ、それから是正の要求以外の個別法による対応措置が、他の分野の行政では可能であるといったこともあろうかと思います。
 なお、平成11年の地方自治法の改正に基づく現行制度以前には、旧地教行法におきましては措置要求ということが文部科学大臣はできることになっておりました。また、都道府県の教育委員会は、市町村の教育委員会に対して同様の措置要求ができました。内容的には、現行の是正の要求と効果等はほぼ類似の措置でございますけれども、これにつきましては過去に都道府県から市町村に対しまして幾つか措置要求の事例がございます。過去に14件ほど事例があると承知をいたしております。例えば、勤務評定をやらない市町村に対して措置要求をしたとか、違法な教職員の行為に対する懲戒処分等の内申を行わない市町村に対しまして都道府県教育委員会が内申をするように措置を要求したとか、そういった事例があると承知をいたしております。
 それから、文部科学省の指導に教育委員会が従わないような例はあるのかといったお尋ねもあったかと存じます。これは誤解のないように申し上げておきますけれども、戦後一貫して教育行政は地方分権の考え方に立って実施をされてまいりました。国は都道府県に対しましては、また都道府県は市町村に対しましては、それぞれ指導、助言、援助という非協力的な関係でそれぞれ行政を行ってきたと理解をしておりまして、その考えは今後も私ども大事にしなければならないと思っております。したがって、私ども法令及び法令に基づき基準をつくるわけでございますけれども、その基準の確保につきましては、基本的には指導、助言、援助という考え方に立ちまして事務を実施しております。これは今後も変わらないところでございます。
 最近では、地教行法に基づく再三の指導に対しまして、教育委員会が適切に対応しない事例はございました。これは私どもが現地の調査を行ったり、あるいはお目にかかって助言、指導を申し上げてもなかなか適切に対応いただけないので、最終的には文書による指導を行った事例もございました。その文書の指導によりまして、その後の話し合い等により、かなり時間はかかりましたけれども、結果的に対応していただいたという事例でございます。この例は、児童生徒に直接の危害が加わるような緊急性がなかったために時間をかけて指導することが可能であったわけでございますけれども、早急に対応すべき緊急の案件などではこのような時間をかけた指導では対応できず、別途、私ども法的な手だてが必要ではないかと考えているところでございます。
 それから、今回、こういうことがどうして急に出てきたかということでございますけれども、私ども基本的には平成11年の地方分権一括法の考え方は大切にしなければいけないと思っております。また、今後とも国から県、県から市町村、市町村から学校とできるだけ現場に近いところに権限を持っていただいて、そして生き生きとした教育活動が展開されるということは必要なことでございます。
 そのことを踏まえた上で、昨今の事情を考えますれば、教育という問題についてさまざまな課題が生じていることも事実かと思います。教育というのは、改正教育基本法におきましても示されておりますように、特に義務教育につきましては、国と地方公共団体がその実施に責任を負うことになっておりますし、また改正教育基本法の第16条で国と地方は適切な役割分担と協力によりまして教育を実施することが規定をされております。
 その意味で、国民の付託を受けた国会で議決をされた法律、その一部である政令、告示に違反をし、また著しく不適切な場合には、国としてこれを正すための最後のルールをどのようにするかということは考えていかなければならないことだと思っています。先ほど申し上げましたように、是正の要求につきましては、確実な是正が担保できない場合があるわけでございますので、ただいま骨子案に示したようなやり方についても十分に検討をしていただきたいと思っているところでございます。
 前回の総会でしたか分科会でしたか、私、申し上げましたけれども、何もこれは文部科学省あるいは文部科学大臣の権限を広げたいとかいうことではなくて、教育は国として非常に大事な行政でございまして、国民の代表である国会で議決をされた法律、その一部である政令、告示に違反した場合に、国としてこれにどう対処していくのか、そのルールについてやはりきちんとここでご議論いただきたいということでございます。
 それから、教育長の任命につきまして、どうしてこういう考え方が出るのかというお尋ねがございました。これは基本的には教育再生会議の第1次報告におきまして、教育委員会に対する国の関与について、教育長の任命に関する関与を設けることなどについて検討するということが提言されていることから出てきているわけでございます。教育委員会につきましては、いじめや未履修の問題にかんがみまして、地方における教育の中心的な担い手としてその責任を果たす必要があるわけでございますけれども、その教育委員会のすべての事務を執行する権限を有している教育長というのは、特別な職務と責任を担う職であると考えております。
 ご案内のように、教育長の選任につきましては、戦後、これまで免許制とか資格任用制、あるいは平成11年まで実施をされておりました任命承認制など、いろいろな制度を通じまして、時代によって変わりますけれども、適材を確保するための措置が講じられてきた経緯がございます。このような教育長の職務の重要性と経緯にかんがみまして、教育再生会議の第1次報告を受けて、国としてどのようにかかわっていくのかという観点から検討を行う必要があると考えておって、骨子案等にお示ししているわけでございまして、これも十分ご議論を賜ればと思っているところでございます。
 それから、私立学校につきまして、教育委員会のかかわり方のお話がございました。ご案内のように、現在、地教行法の第24条におきまして、私立学校につきましては都道府県知事の所管ということになっているわけでございます。このことは、私どもも何も変えるとか、そういうことを考えているわけではございません。ただ、現実の都道府県、法律なのかどうかということはちょっと置きまして、これは現実を考えましたときに、都道府県知事のもとで事務を担当いたします部局におきましては、教育課程等についての専門家が必ずしもいるわけではない。一方、教育委員会におきましては、教育課程等について専門的な職員が配置をされており、また全体的な状況についてもよく承知をして仕事をされているのではないかと思われるわけであります。
 そこで、都道府県知事の求めに応じまして、教育課程など専門的な事項につきまして、ある意味では教育委員会のノウハウを私立学校の方々に提供することも考えられるのではないかということで、骨子案にはお示しをしているわけでございます。私立学校も学習指導要領等に基づきまして、法令に基づいた教育を行っていただくことは当然でございますが、同時に私立学校の独自性、自主性というのは建学の精神によりまして尊重されなければならないことも当然であります。その辺を踏まえまして、専門的な分野について教育委員会の知見を私立学校に提供することがよろしいのかどうかということで、またご議論を賜ればと思っております。

【梶田分科会長】
 一応この時点でご説明をいただきました。

【石井委員】
 私がお聞きした、具体的にどういうケースがあるんですかというお答えがなくて、今、最後におっしゃったのは法律に違反したような場合と、法律違反の場合は非常にわかりやすい例なんですけれども、著しく公益に反するとか、教育目的に全く反しているとか、具体的な裁量を持った規定が骨子案に書いてありますが、具体的にどのようなケースを想定されているのかちょっとお答えがなかったと思います。
 それから、私学について教育課程の専門家、それは教育委員会におられます。その方を知事部局に、私学担当の部局に専門家を招いて、例えば私もスポーツなんかはそうやっていますけれども、そういう方法で十分、今のおっしゃったことは達することはできるので、教育委員会に権能として与えるのはいかがかと申し上げたので、ちょっとずれていると思いましたので、ちょっと2点、すみません、お願いしたいと思います。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 それでは、銭谷局長。それから、山本委員、藤井委員、井上委員と行きますので。

【銭谷初等中等教育局長】
 すみません、私のほうで時間をとりまして大変恐縮に存じます。
 前回のときも、具体的な事例は非常に想定しにくいと申し上げました。だからほんとうに、ある意味では伝家の宝刀ということになるんだろうという趣旨のことを申し上げました。通常であれば、教育委員会というのはきちんとした行政を行っていただいていると思っておりますし、また、そうあらねばならないということでございますので、あまり具体的な事例は想定したくないという意味で申し上げたわけでございます。
 明らかに法令違反でない、著しく不適切な場合というのは、ほんとうに想像したくないんですけれども、これは確定的に申し上げるわけではないんですけれども、例えばいじめ、自殺が行っているにもかかわらず教育委員会が調査もしないとか、親の訴えにも耳を傾けないという状況があって、何らの措置も講じていない。これは非常に考えにくいわけでありますけれども、そういう場合、極めて不適切な事例と言えると思っております。ただし、基本の考えは、前回申し上げたとおり、非常に想定しにくい事案であることは間違いないと思います。

【井上委員】
 私は実務に携わっていましたので、実例を申し上げますと、教育行政法は性善説に立っていて、必ずしも違法という明確な規定がないケースがあります。例えば今までの例でも、措置要求14件あったというお話ですが、措置要求は是正の要求と同じで、地方団体側が裁量によって対応するということで、必ずしもそのとおりやっていないという例がかなりございます。
 教職員の違法行為に対して、県教委として措置要求をやっても相手方が内申を上げないというケースがありまして、それに対して県教委から文部科学省に、この場合はどのようにしたらいいかという問い合わせがあった場合、それは法の趣旨から当然、内申をすべきときに内申をしなかった異常な場合には内申をしなくても人事権を行使できる、すなわち教職員を処分できるという指導通知を出します。それに基づいて県教委が処分して、処分を受けた教職員組合のほうで提訴して、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所で実に10年以上時間がかかった実例がございます。この場合、違法行為をした教員についての教育委員会に対する措置要求が有効に働かない。
 したがって、法律の上では、形式的には構成要件として違法行為でないかもしれないけれども、それは極めて不適正ということで処分をしたケースについて、最高裁が合法、妥当であるという判決をして10年。これはある意味で教員に対して信頼を失わせる、あるいは教育に対する信頼を失わせる行為ですから、具体的にそういう是正の要求なり、措置要求というのは相手方に必ずしも従う義務を与えない。相手方の裁量の余地があるというケースがございます。そのために10年もかかるということは、教育界にとっても非常に不幸なことです。
 したがって、今回、改正教育基本法の第16条の規定などから、できるだけ速やかに国民の信頼を得るように迅速な措置が必要ということもあるわけでございまして、著しく不適正というのはそういうケースもあって、必ずも直ちに違法かどうかというのは法律の規定からいうと、それは性善説に立っているから相手を悪者扱いにしていないわけですから、当然そういう行為をするであろうという期待のもとに法律が構成されているということがあって、著しく不適正というケースが具体的にもあるということをご理解いただきたいと思います。

【梶田分科会長】
 現実に、旧地教行法のもとで是正、指導しなければいけなかった場面もあって、なかなか教育の分野、これはいい悪いは別として、特性として、1つは上意下達があり過ぎるという部分もあるし、もう一つは地域によってはいろいろな意味でスムースに関係がいかなかったという面もあり、現状認識といいますか評価といいますか、その辺の違いも若干あるのではないかと思いますので、この辺は念頭に置いていただきたいと思います。
 申しわけありません、山本委員、藤井委員、そして片山委員、小川委員と、こういうふうに行きます。

【山本委員】
 議論が錯綜して、国の関与のあり方について論理的な骨格が問われるところまで来ていると思いますので、意見を申し上げたいと思います。
 これまでもそうなんですけれども、地方分権の一般論的なレベルでの議論と、それから先ほどの児童生徒の生命にかかわるとか、法令違反とか、その他特殊限定的なレベルの議論が仕分けされずに進んでいるんですけれども、今までは単調論理の話だと思うんです。具体的に言いますと、AにBを加えればAにBが加わってハッピーだという話です。ところが、現実には非単調論理であって、AにBを加えるとAがAダッシュになってしまって、そこに問題アルファが生じる。これにどう対処するのかという非単調論理の問題なんです。今、問題にしているのは生ずるところのアルファをどうするんですかという話だと思うんです。
 これについてはずっと意見が出ているんですけれども、繰り返しになりますが、木村委員にしても、田村副分科会長にしても、この前、小川委員もおっしゃっていました。今日も中村委員がおっしゃっていましたけれども、第三者機関を設けたらどうか。ワンクッションちゃんと入れて、専門家の意見を聞いてやったらどうか。これは反対がないんです。意見としては皆さんそうだと。そのほかの方々も、名前は挙げませんけれども、ご意見をおっしゃっている中で必ずその話は出てくるんです。ですから、そこの問題だということをやはり我々はきちんと認識すべきであって、中教審としてはそこのところで見識を示すべきではないのか。したがって、参考資料4でもやむを得ない場合に限りとなっていますから、それについては第三者機関あるいは専門家のチームをつくって、その意見を聞いて動いたらどうかということになっていますので、その点でまとめていただければ。
 もうちょっと言いますと、今日、いただいた資料1-1でもそうですけれども、分科会長は最初から教育の現場がよくなるようにと言っています。そのとおりだと思うんです。それでいくと、今日、いただいた資料1-1の3ページを見れば、全国連合小学校長会から出ている意見というのは重いと思うんです。指導、助言、援助ではなく、国が明確な指示を与えるという規定がぜひ必要と言っているわけです。それから、その下のところで全国市町村教育委員会連合会、これも現場です。まさに重い意見だと思うんですけれども、そこでもやはりそういうことができるようにしたほうがいい。これを私たちはやはり大事にすべきではないか。ですから、一般的な地方分権の話とこれは決して矛盾する話ではなくて、あくまで非単調論理の話であるということで整理すべきだと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 では、藤井委員、お願いします。

【藤井委員】
 きょうの構成案は大分簡潔にまとめられて、大変うれしく思っておるところでございますが、やはり今までも大変議論にされておるわけでございますが、現実、何ができており、何ができていないのかということで、一部だけができていないことを全体に及ぼすということはいかがなものかという部分もありますし、全体ができていなければ、やはりこれはしっかりと法改正をしてやらなければいかんと思っております。
 また、いろいろ改正するときに、これも出ておるところでございますけれども、民主主義というのは手続が非常に大事でございますので、そういった点を明確にしていただければよろしいのではないかと思います。
 また、重複してしまうといけませんので、あと2点お願いしたいと思います。1点は、資料3の教育委員会の共同設置等による広域教育行政体制の推進でございます。教育再生会議のほうでも、小規模市町村の統廃合ということが出ておりました。小さくでも頑張っているところは非常に頑張っておるわけでございますので、表現として共同設置ということを強調してしまうと、小さいところはもうなくなってもいいというようにもとられかねませんので、一部事務における広域行政、広域化というんですが、そういった表現のほうがよろしいのかなと。やはり教育行政については各自治体が住民のニーズにこたえているわけでございますので、そういった点はしっかり担保できなければいけないのではないかと思います。
 2点目は、人事の移譲の件でございます。一定の人事については、より現場に近いところへの移譲を行う。実は、今回議論になっている3法の中でも、例えば学校教育法の中の新しい職の設置、例えば主幹を任命するというのはすべて人事だろうと思うんです。それから、先ほどの免許法の中の養成、あるいは採用、研修、評価という一連のものも、実は免許法のところでは一体的な推進という表現がとられておるわけでございます。ところが、その都度、人事という概念が欠落しているように私は思うんです。すべてが人事ですという中で、縦軸をしっかりと考えながら表現をしていきませんと人事権が分断されるおそれがあるわけです。人事権が分断されるということは、現場に非常に混乱を招くおそれがあると思っておりますので、縦軸をしっかりとお考えいただきながら、混乱が起こらないような仕組みづくり、あるいは法改正が大事だろうと思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 以上でございます。

【梶田分科会長】
 ありがとうございました。
 片山委員、お願いします。

【片山委員】
 私は地方自治をずっとライフワークにしてきていまして、今回の問題は非常に深刻だと思うんです。先ほど銭谷局長が言われましたけれども、いじめ自殺があったときにてきぱきと対応ができない、批判があったときにちゃんとした対応ができない、入れ替えも行われない。何かひたすらマスコミの前で謝ったり、悄然としている、打つ手がない。保護者の皆さんとか世間は、だれが責任をとってくれるのだろうかということだと思うんです。もうガバナンスが問われているわけです。
 実は地方自治というのは2つ要素があって、1つは自前でちゃんとした仕組みをつくることが重要な要素です。もう一つは、自前でつくるんですけれども、確率の問題としても必ず失敗するところがありますから、失敗をしたときにそれを自前の力でリカバリーする、こういう仕組みがビルトインされているのが地方自治なんですが、今回のいじめ自殺の問題を見ていると、一部の教育委員会、一部の自治体においては2つとも機能していないということなんです。
 これは実は一部の教育委員会だけの問題ではなくて、例えば夕張市の財政破綻だとか、福島県とか和歌山県の官製談合の問題、これも同じような失敗の事例です。最近の官製談合とか財政破綻とか一部の教育委員会などは、実は通底した問題があるわけです。自治体のガバナンスが問われている、自治制度の根幹が問われているんです。こういう光の当て方をしないといけないと思うんです。
 最初の自前でちゃんとした仕組みをつくるというところは、実は教育委員会がちゃんとしていないということなんです。ここで問題がありますのは、教育委員のミッションがちょっと揺らいでいるといいますか明確でないんです。教育委員というのはレイマンだと言われています。レイマンコントロールだと言われています。そうすると、レイマンを選ぶわけです。特に保護者を入れなさいということになっています。ところが、法の建前は、レイマンの集合体の教育委員会がマネジメントをちゃんとやるという建前になっているんです。ここは非常に大きな矛盾があるわけです。
 一人一人のレイマンを選んで、数人選んだら途端に管理能力が出て、説明責任能力も持つというフィクションになっているわけです。法律は、マネジメントを教育委員会に要求するという建前です。だったら、教育委員のあり方も見直す必要があるんです。レイマンだったら、その集合体の教育委員会に説明責任とか管理能力を求め過ぎだと思うんです。ですから、ここをどうするかということがあります。実際には、その矛盾、すなわちレイマンであるのに集合体がマネジメントを要求されている。その隙間を教育長かとか教育委員会の職員が埋めているわけです。政治責任を持っていない人たちが埋めるわけですから、そこが非常に弱くなるのは当たり前なんです。ですから、ここを解消してあげなければいけないということが一つあります。
 それから、失敗をしたところをどうリカバリーするか、自前でリカバリーするか。今回、教育再生会議は、一足飛びに国がチェックするように話を持っていこうとしていますけれども、これはちょっと早計だと思うんです。やはりできるだけ自前でリカバリーする仕組みを考えなければいけない。それにはどうするかというと、教育委員会が失敗した場合には、それを構成した人、つくった人たちがリカバリーしなくていけないです。それは首長と議会です。ここが作動していない。本来ならば、教育委員がちゃんとしていなかったら、罷免して入れ替えなければいけないんです。ブッシュ大統領がラムズフェルドを入れ替えたと同じことをしなければいけないんですけれども、そこが作動していない。そこをどうさせるかということです。
 例えば、地方自治法の中でもうちょっと明解に長が教育委員を入れ替える、もしくは議会が教育委員を差し替えるという発意をするような仕組みをビルトインする。実は、住民が直接請求をして入れ替えるというイニシアチブ、リコールはあるんですけれども、これはとっさには作動しません。だから、とっさに入れ替える仕組みがもっと円滑に行くような仕組みを自治制度に入れる。これは一つの案だと思うんです。
 ただし、現実に言いますと、世の中の議会の大半がちゃんとしていません。ここに問題がありまして、そうするとこれはちょっと息の長い話になりまして、今日、明日の話になりませんけれども、自治体の議会が作動するようにすることが求められるんです。これは教育の分野だけではなくて夕張市のケースもそうです。夕張市のケースも議会がちゃんとしていないんです。
 したがって、議会がちゃんとするという仕組みをどうすればいいのか。これは教育のフィールドから問題提起したらいいと思うんです。教育というのは自治体の行政の一番大きな分野ですから、その分野から見て自治の最後の砦である議会がちゃんとしていないということであれば、教育のフィールドから自治制度の根幹である議会制度の見直しをしようということを問題提起したらいいと思うんです。
 実は夕張市のケースも、教育再生会議と同じような文脈を総務省はやろうとしているんです。問題は、一番は議会がちゃんとしなければいけない、そういう仕組みにしなければいけないのに、総務省が財政問題についてはモニターして、あなたは黄信号だ、赤信号だといって管理していく。実は同じようなことをやろうとしているんです。それはいけないんです。だけど、六団体はそれでもいいと言っているので、ちょっと石井委員は矛盾しているんですけれども、この問題も夕張市の問題も、どちらもやはり原点に戻らなければいけないということをぜひご認識いただきたいと思います。
 それから、先ほど藤井委員が言われた小規模町村の共同設置もやはり早計だと思います。共同設置したら、やはりガバナンスは弱くなるんです。組合とかというのは。本来ならば原則に戻って、小規模町村で教育がやれないというなら合併したらいいんです。政府は合併が得だとかいって無造作に合併させましたけれども、あんなものではなしに、教育ができないから合併しなければいけない。これは必然性があるわけです。だから、合併をするように慫慂するか、もしくは私のようなところで見ると、県で引き取ってもいいというところがあるんです。だったら県に委託してもらってもいいです。自治体間の委託は、県から市町村だけではなくて逆もまたあるわけですから、県への委託も視野に入れていただいたらいいと思うんです。
 最後に、これは蛇足ですけれども、先ほど石井委員が全国の教育委員会はみんな文部科学省の言いなりだと言われましたけれども、そういうところもあると思います。現実にはあります。だけど、少なくとも私のところは言いなりになっていませんので、どちらかというと自治体の教育委員会も含めた統括者であります知事のほうをちゃんと見てくれて、私もあれこれ細かいことは言いませんけれども、根幹についてはちゃんとこちらのほうを見てくれています。先ほど聞いたら京都市もそうだそうですけれども、決してすべての自治体が文部科学省の言いなりで、自主性がないということではありません。これは自治体の名誉のために申し上げておきます。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 地教行法をめぐることでどうしても落とし穴があって、執行機関同士の上下関係、地方分権一括法からは上下とは言いませんけれども、文部科学省と都道府県教育委員会と市町村教育委員会と学校というラインばかり見て、実は地方自治では、これはもう片山委員が繰り返しおっしゃっているように、それぞれの市町村には議会がある、都道府県には議会がある。実はそこで教育委員の選任をやっているんです。それから、最近、細かい話が出過ぎですけれども、必ず市町村議会でも都道府県議会でも細かい教育論議をして、それを教育委員会がどう受けとめてということをやっている。この視点を少し忘れがちなので、どういう形で中教審の報告に書くかは別ですが、ただ単に国の関与という大ざっぱな話でないことを何にか考えないといけないと、今、伺いながら思いました。
 それでは、小川委員。

【小川委員】
 もう皆さんお話しして、かなりダブるところがあるので、そういうところは省いて、簡単に2点なしいは3点お話しさせてください。
 1つは、国の関与のところで、4.の3つ目の○の教育長の任命に一定の関与を行うということですけれども、実はこれを読んだとき、僕自身は旧地教行法の教育長の任命承認制というイメージで、これはけしからんということで考えたんですけれども、これをよく読んでみると、別に教育長の任命承認制を復活すると書いているわけでもないんですよね。基本的に教育長の任命承認制について、中教審ないしはヒアリングでも賛成、賛同を示す方は1人もおりませんでしたので、そういう意味ではやはり同意を得られないと思います。そしてまた、教育長任命承認制というイメージを誘うような書きぶりをこの答申案にずっと盛っていること自体、問題だと思いますので、私は今日の段階で4.の3つ目の○については削除していただきたいと思います。
 しかし、先ほど銭谷局長もお話しされたように、教育長に優秀で適切な人材をどう確保するかという方策については非常に重要な問題です。実際、2000年の地教行法改正以降、中教審で教育長の選任のあり方というのは、非常に重要なテーマとして何度か議論されてきましたし、これまでの2つないし3つの中教審の関係する答申でも、教育長の選任のあり方をどうするかということは常に検討課題として記載されてきているわけです。そういう視点で教育長に優秀な人材をどう確保するか、その方策とあり方については今後の重要な検討課題ですので、留意事項で記載していくべきではないかという感じもします。
 実際、任命承認制については同意は得られないんですけれども、例えば戦後初期の資格職とか、その後の任用資格という制度、そういう議論は当然あっていいと思いますし、実際アメリカでは教育長は専門資格職ですし、教育委員会のある韓国では、教育行政とか教師経験5年以上の者の中から選挙で教育長を選ぶという規定もあるわけですから、そういう方策をどう考えるかということはやはり重要な課題ですので、そういう視点で検討課題として今後残していくということは私はあっていいと思います。
 それと、国の関与のところで、先ほどから今の地方自治法の措置要求でいいのではないかとか、是正の指示を盛り込んだとしてもほとんど使われないのではないかという話があったんですけれども、これは使う使わないという話ではなくて、地方自治法の中で教育行政における危機管理の法制度の仕組みを今、どう整えるかという話だと思うんです。
 例えば、国の意向を非常に強く出している法定受託事務においても、本来、自治体は法定受託事務ですので、それを国の基準に従って執行しなければならないんですけれども、法定受託事務においてすら自治体が守らないことを想定して是正指示をできるような規定が盛られています。法定受託事務においてすら、地方自治体が守らないことを想定して是正指示を規定しているわけですから、いわんや自治事務だと言われている教育の分野において、国の法令に違反して、文部科学省から是正要求をされても、先ほど銭谷局長からお話しあったように、対応するけれども、どのように対応するかは自治体の裁量ですから、国の是正要求に沿った形できちんと対応しないような状況は法定受託事務以上に想定されるわけです。
 そのような事態を考えた上で、前から言っているとおり、緊急の場合、自治事務であれ国は是正の指示ができるという規定があるわけですから、その規定に基づいて、それを教育行政の分野で実際運用する場合、ないしは発動する場合にはどのような要件が必要なのかということを検討しているわけであって、何も地方自治法の精神に反するものでもないと私は思っていますので、この際、きちんと教育行政における危機管理の国の法制度をどう整備するかという視点で、地方自治法でできるわけですから、発動要件をきちんとルール化して、それを地教行法にきちんと明記することはやるべきだと思います。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 山極委員、宮城委員、市川委員、安西委員、この辺でまずご意見をお願いいたします。

【山極委員】
 国の関与についての第1点目ですけれども、これは前回、私が言いましたように、改正教育基本法によって国、地方公共団体が責任を負うということであります。ですから、いじめ問題においても見て見ぬふりをしてはならないとはっきり言っているはずです。こういった重大ないろいろな問題が起きたときに、地方が国に対して見て見ぬふりをしてくれということは許されないわけでありまして、やはり国がきちんと責任を持って最後は始末する、確実に実施されるようにきちんと責任を負う、これが第1点の考えです。
 3番目の教育長の任命ですけれども、ご存じのように、今、学校で学校評価とか説明責任は何のためにやっているかというと、学校の教育活動の結果についてきちんと出して、それを説明する事後チェックをしようとしているわけです。結果について責任を持つというアウトカムベースの考え方に立っているわけです。であれば、教育長の任命関与といった場合、ただそれを事前チェックと考えるから規制だとされるのであって、教育長の事後チェックに問題を焦点化すればいいわけです。教育委員会は学校でやっていることをもうちょっと見習うべきです。事後チェックで問題があったとき、その問題に対してどう対処すべきかを考えるべきです。
 例えば、重大な問題が起きたら、先ほど山本委員等からもお話がありましたように、専門家による派遣等を行って処方せんを書いていただき、その上で国が勧告や指示を行えばいいのであって、そういうことはあり得ないと思いますけれども、それでも何度も勧告や指示を受けるような教育長がいたら、筑波の研修センター等で研修をしっかりしてもらう。それも一定の関与なんです。関与というと、すぐ事前チェック、規制、そして任命、承認と考えるからいけないのであって、こういう事後チェックをしっかりしていくという関与の仕方、これをやはりきちんと考えていただきたい。そして、再発を防止するという考え方に立つべきだと思うんです。99パーセント以上の教育長は決してそんなことはなくて、立派な教育長ばかりですのでほとんど問題はないと思いますけれども、そういう感じかと思っています。
 私学については、確かに私学の独自性というのは当然でありますけれども、これも公教育の一翼を担っている大切な学校です。であれば、単なる指導主事が指導ということではなくて、法令違反等々に限って、場合によってはあり得るべきかと思っています。
 私学は、この間の未履修問題で見たように、大学進学をもっと強調するなら、大学準備教育をもっとしっかりやれということです。大学準備教育というのはどういうことかというと、大学で必要な資質能力の基礎を高等学校できちんと身につけるということです。であれば、世界史だって情報科学だって必要なんです。その大学準備教育をしっかりやるというミッションがなくて、今、何をやっているかというと、大学入試準備教育に徹しているということです。私学でもスーパーサイエンスハイスクールに参加している学校を見ると、そのような学校が本物の学問を追求しているんです。僕は非常に感激します。ああいう人材をこれから育てていかないと、ほんとうに先行き心配かと思います。もちろん、私学の独自性を尊重しなければいけないということは言うまでもありません。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 申し訳ありません、あと数人ご発言いただきますけれども、時間が来てしまいまして、もうちょっとだけ皆さん我慢してください。あと、数人ご発言いただきまして、きょうのまとめをしたいと思っております。
 では、宮城委員、お願いいたします。

【宮城委員】
 マイクを渡していただきましてありがとうございます。町村会の宮城です。
 今日、実は初めて審議に参加させていただきまして、これまで欠席したこと、おわび申し上げます。ただ、ここに参加いたしまして驚いているんですが、多くの専門家の方々が教育問題に関してかくも熱心に議論をしておられる。私はただうなずくばかりでありますが、うなずくばかりでは立場がありませんので一言。
 例えば、審議のテーブルつくり方はこれでいいのかという感じもするわけです。せっかく皆さんがこれだけ専門の立場から議論しておられるのに、なかなか顔が見えない。特に分科会長に至っては、はるかかすんでしか私のほうからは見えない。今の時代、マイク、あるいは映像等が設置される中で、審議の委員以外の事務次官をはじめ審議官、課長の皆さん、こういうふうに同じテーブルについているわけでありますが、ここはむしろ代表の方が座っていただいて、また後ろにも相当控えている。今の時代、国の審議というのはみんな同じですが、こういう形で教育問題の審議がやられているのか。私は、まずここの場を改善したらいかがかと思うんですが、この問題は別の問題です。
 具体的な問題で、地方六団体から意見書を出してあります。私も出席できないかわりに文書で出してありますけれども、ほぼ石井委員が述べておられますので、同じことは申し上げありません。
 ただ、この中で、参考資料4の教育長の任命に関することでありますが、教育長の任命等々の問題についてはともかくとして、京都の門川委員、それから片山委員からご発言ありましたけれども、特に教育委員の問題です。地方の実態は一体どうなっているのか。もちろん、県の教育委員と大きな市の委員、また極めて小さな自治体、町村の教育委員、任命のあり方はかなり違うと思うんです。場合によっては、地方の弱小自治体は教育委員の適任者がいなくて、もうだれでもいいという形で選ばれる方もあるかもわかりませんし、地方自治体の首長の選挙対策として、一つの集落とか地区から適当に選んでおけば身の安泰につながるということで配分をし、人材、人物ほとんど関係なくやってしまう。これはすべてではありませんけれども、そういうこともあるわけです。
 そういう状況の中から、今回、資料3に保護者を加えるという具体的な例が出ていたと思うんですが、私は教育委員の構成をどうするかということを考えないと、弱小自治体、小規模自治体の教育委員会は決して適正に運営されないだろうと思っています。この面は基準を決めていいかどうかという議論も含めて、これからご検討いただければありがたいと思います。
 ただ、いずれにしても今日の議論を聞いておりますと、多くの皆さんがたくさんの意見を言いたいんです。しかしながら、わずか10回程度で成案にしてしまおうということはいかにも乱暴な感じがするわけであります。やはりこういうものに対しては、すべて納得はいかないにしても、いわゆる腹膨るる思いをしないようにと、冒頭、分科会長からご発言がありましたけれども、そのような形で議論が十分尽くされるような時間もぜひ欲しいと思います。
 あと一つですが、教育行政、教育委員会の統廃合の問題であります。基本的には分権の時代でありますから、すべて広域化すればいいというものではありません。しかし、地域によっては、小さな自治体が単独で教育行政をしっかりやったために、もちろん学力の問題であるとか、スポーツの問題であるとか、そのほか極めて効果的な内容を発揮しているところもあります。しかし、場合によっては、人口規模にかかわらず、町村が一くくりというか、3つも4つも一緒になって教育委員会をつくったほうが適切な場合もあるわけです。
 例えば、A、B、C市町村がありましたら、子供たちの集まる場所がA市に集中していて、そこが問題になっている。ところが、A市の子供たちだけではない、ここにはB、Cの子供たちがまざっているということが日常的に繰り返されている地域においては、むしろ教育委員会は広域化してしまって、連携をとりながらやったほうが望ましいことだってあるわけです。
 そういうことから、多くは申し上げませんけれども、私は教育委員会の任命制の問題にしても、あるいは運用の問題にしても、もっともっと弾力的に地域がかかわれるような組織はできないのか、提言ができないのか、あるいは文章化できないのか。これをぜひお考えいただきたいと思います。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 それでは、市川委員。

【市川委員】
 私のほうから、私学の問題だけに絞って意見と、質問のようなこともあるんですが、させていただきたいと思います。
 意見発表団体概要の29ページ、この分厚い資料ですが、日本私立中学高等学校連合会からの意見書が出ています。これを参照しながら改めて考えたんですが、前回、安西委員のほうからもご発言があって、まずこの議論のときに前提となっていることは何なのかを確認したほうがいいと思いました。
 前回、安西委員のご意見、もし私の聞き違いでしたら修正していただけるとありがたいんですが、そもそも学習指導要領を一律に子供たちに適用すること自体がおかしいというご発言がありました。それと、今回の29ページを見比べてみますと少し齟齬があるように感じています。
 どういうところかと申しますと、安西委員のご意見は、公立、私立を問わず日本の子供たち全体に対して学習指導要領を一律に適用するのはおかしいという話なのか、公立はいい、私立に関しては一律に適用するべきではないという話なのか、どちらかをちょっと伺いたいと思いました。どちらと解釈してもそれなりにいろいろな難しい問題が出てくると思います。
 まず、日本の子供たち全体に対して一律に学習指導要領を適用するのはおかしい、もしこれを議論し出すと大変なことになるかと思います。そもそも学習指導要領は何のためにあるのか。そこから議論するということもあり得るとは思いますが、そこから議論しようという話なのかどうか。
 それから、公立は適用するが、私立に対して適用することはおかしいという話だとしますと、なぜ私立の子供たちだけは適用しないでいいのかということが問題になります。日本の子供たちには、近くには私立がないという地域の問題もあります。それから、学力や経済力の問題で私立には行けないという子供たちもいます。こういう子供たちには一律でよいけれども、そういう条件をクリアして私立に行ける子供に対しては一律を適用しないで、変な言葉ですが、学習指導要領の適用を免れることができる。これはある種の不公平ではないかという議論もあると思います。ですから、それぞれの場合につき、学習指導要領を一律に適用するのはおかしいというのはどういう範囲でおっしゃっているのか、ということが伺いたかった点です。
 29ページを見ますと、これを読んだ限りでは、学習指導要領というのは私立にもおいても前提だと読めます。第1段落の3行目ですが、「学習指導要領を基準として私立の公教育学校に相応しい教育課程を編成し実施している」とあります。それから、第2段落の3行目、「私立学校は、公教育を担う学校として維持すべき教育内容・教育環境等の水準は公立学校と同じでも、それに至る方法は公立学校とは異なり、私立学校でも一様ではない」。
 少なくとも教育内容、教育環境等の水準は公立学校だと同じだと。これは学習指導要領を指しているように見えます。少なくともベースラインとしては、学習指導要領にあることを内容として、同じように教えていくということのように見えます。先ほどの銭谷局長は、もちろんとおっしゃったんですが、学習指導要領は私立も遵守していくと伺いました。
 一応そう考えた上で、私の今のところの意見ですが、教育委員会が指導、助言、援助を行うということに関しては、これはあくまでも首長の求めに応じてと書いてあります。首長というのは私立学校を所管しているところです。そこが教育委員会にこういうことを託すというのは、ある制限つきで認めるほうがいいのではないかと私は思っています。
 制限というのはどういうことかというと、まず学習指導要領を守るということであれば、本当に守られているのかどうか。これが指導に当たる部分です。指導というのは、学習指導要領にある各教科、科目の時間数です。授業時数、それから内容としてふさわしいものが行われているか。これはある種のチェックとして指導に値する部分だと思います。指導と援助については一種のサービスだろうと思っています。
 先ほど東京都のほうからご発言ありましたが、公立学校と同じようなことを私立学校すべてにやるのは無理だろうと思います。何も今回の趣旨は、公立学校と全く同じ指導、援助、助言などをしてほしいということではないと思います。当然、私学の自主性、独立性を重視して、そしてあまり干渉しないようなことを考えていらっしゃるのだと思います。例えば、教育委員会が行う研修に参加できるとか、場合によって指導主事が入って授業についてのいろいろなコメントをする。そういうことが援助、助言に当たるところで、そういうことについては首長の求めに応じてやることもできる。それをどのように生かすかは私学の裁量だろうと思います。しかし、今の指導の部分については、学習指導要領を遵守することが一応前提であるならばそこに入っていくほうがいいのではないか。
 確かに、第1段落に書いてありますが、中高一貫教育、国際理解教育、体験学習等の先駆的な実践をしている、これはそのとおりだろうと思います。私学のおかげでこういうものがかなり開発されたという面もありますが、マイナス面と言っては失礼ですけれども、先ほど山極委員からもご意見ありましたが、マイナス面に当たることも見る必要はあるだろうと思います。マイナス面をずばり言ってしまえば受験教育への過剰適応です。もちろんすべての私立ではありません。一部についてそういうものがあって、それが今回の履修問題への一つのあらわれにもなった。公立に比べてはるかに多かったということも、そのチェックの甘さが出てきた。
 今回、教育委員会がそれをするのは適当ではないということがもしご意見としてあるならば、ではそういうチェックをだれがどういう形で行うのか。よほどよい代案が出なければ、私は首長が教育委員会にそれを託すということが一つのルートしてあり得ることではないかと思っています。
 以上です。

【梶田分科会長】
 一部に誤解があるようですけれども、私立学校であろうと学習指導要領は全部守らなければいけない。学校教育法、私立学校法等々によって法令はきちんと守らなければいけない、勝手にやってはいけないということがあります。これを前提に。
 それで、最後、どんなにおくれても5時半にはと思います。あと、安西委員、天笠委員、岩崎委員、佐々木委員、田村委員、すみません、ごく短くお願いいたします。

【安西委員】
 名前が出ましたので、安西でございますが、まず全国私立中高連合会の団体意見と私の意見とは独立でございますので、そこのことはまず申し上げておきたい。
 それから、学習指導要領等の法令、条例を守ることは当然でございまして、法令遵守は当たり前のことであります。守るのはおかしいなんていうことは全く言っておりません。私が申し上げたのは、学習指導要領を厳密に守っていくということが、これからの子供たちの多様性を考えると間尺に合わなくなっていく、そういうことがあるのではないかということを申し上げたわけであります。この辺については、先般の会議のときに、別途議論していただければありがたいということも申し上げたわけでございます。ですから、私立、公立等々を問わず、学習指導要領を遵守することは当たり前のこと、当然のことだということは改めて申し上げたいと思います。
 その上で、私学はもちろん公教育を担っているものでありますから、いじめの問題、不登校の問題、法令遵守の問題等々、公立と私立全部に係ることでございますが、首長部局の求めに応じて、教育委員会が私立学校に対して専門的な指導、助言云々ということについては、これは私の見方でありますけれども、どちらかというと私学が法令遵守をしていない、あまり守っていないのではないかというところから来ているという理解をしております。
 そうだとすれば、私学も、公立ももちろんそうでありますけれども、法令遵守をきちんとこれからやっていくのは当然のことでありますが、その法令遵守の仕方についてはいろいろな方法があり得るわけで、今、首長の権限のもとで監督下にあるわけでありますから、先ほどから意見が出ておりますように、首長のもとに専門家を呼ばれて、それできちんとコンプライアンスをやっていかれればいいのではないか。それができないぐらいであれば、これは国全体がやろうとしてもなかなか難しいのではないかと思いますので、市川委員が代案を出せということでありましたら、首長がおやりになればいいのではないか。
 ただし、私は、いろいろな法律でもって、取り締まりとは言いませんけれども、そういうことはできるように思います。そういうことをきちんと洗い出してシステムをつくっていけば、現場に近いところで私学、公立もですけれども、法令遵守をきちんとしていくような風土は十分つくっていけるのではないかと思っております。
 大体以上でありますけれども、先ほど市川委員が指導というのは制限つきでいいのではないかと言われまして、学習指導要領を守っているかどうかがその指導の対象になるのだと言われましたけれども、そのことについては、今、申し上げたのは私自身の意見であります。指導というときに、こういう単純な文章ですけれども、非常に広くとらえられがちで、何が何でも指導に係るのかとどうしてもとられてしまいます。また、制限つきということで学習指導要領だけに特化するのであれば、それは指導と言わなくても十分に首長のもとでコントロールすることは可能であろう。もちろん、私学がモラル的にも、あるいは法律的にきちんとした行動をするということは当たり前のことで、してこなかったんだと言われればそうかとも思いますけれども、これは私学、国公立等々を問わず、これから日本のいろいろなところで、それぞれの地域が基盤になってきちんとしていくということがこれからの日本の未来をつくると思います。
 以上でございます。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 それでは、天笠委員、短くお願いします。

【天笠委員】
 短く申し上げます。
 私は「教育現場に近いところ」という言葉がずっと気になっています。学校への権限移譲ですとか、裁量権の拡大ですとか、そういう言葉として使うべき、あるいはそういう言葉を用いるべきではないかと思っています。その認識は、どうも学校まで届かない、教育委員会でとまっているところがあるのではないかという認識を持っていまして、実は教育委員会と学校の間こそ丁寧に議論し、より学校を活性化させるということをもう少し突き詰めないといけないのではないか。どうも教育委員会と国との関係だけの議論にとどまりがちですけれども、学校をセットしてこの議論を深めていくことが必要なのではないかと思います。そういう意味で、私は学校にマネジメントを促すことが基本的に大切だと思っていまして、権限の拡大や、裁量幅の拡大等々をもう少しこの文脈の中で議論していくべきではないかと考えています。
 そういう点では、学校教育法改正の中に学校評価が入ったのは、この文脈の中で入ったということで意義を感じております。一方において地教行法については、この点が十分位置づけられていないと私は認識しておりまして、もう少し学校と教育委員会の関係等々も突き詰めるべきではないかと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 岩崎委員、佐々木委員、最後に田村副分科会長。

【岩崎委員】
 人事権の移譲につきまして、今、まさに人事異動の時期でございますので、感じましたことを申し上げたいと思います。
 きょうの答申案の構成案(イメージ)につきまして、留意事項として挙げていただいておりますけれども、この中に「全面的に市町村に移譲することについては」という文言がございますが、今、随分論議がされたところでございます。人材の偏在化とか、教育水準の格差の問題、承認の問題、懲戒の問題等、随分議論されたところでございますけれども、私、現場におります中で、全面的に市町村に移譲されることが適切なのかどうかということを申し上げたいと思います。
 まず1点目、中学校の人事異動をするときは教科によって異動するわけです。小学校ではないんです。そうしますと、教科の時間数の少ない職員の異動につきましては大変難しいものがございます。1人が希望しても、相手が希望しなければ動かせないわけでございます。これについては一つ問題があると思います。
 それから、生徒が増えているところと減少しているところがあるわけですけれども、私たちの県の場合は、減少しているところは増加しているところへ3年間の契約で異動してくるわけです。増加しているところは初任者を必ずもらうということになりますと、全面的に移譲されることは課題だと思っております。
 このように考えていきますと、やはり柔軟的に市町村と県教委がいろいろな課題をクリアしながら、協働して改革していくことが大事だと思います。このように考えますと、留意事項の中に全面的にと文言を入れていただきますと困ることがございますので、ご検討の際にご考慮いただきたいと思います。

【梶田分科会長】
 ありがとうございます。
 佐々木委員。

【佐々木委員】
 地方分権と国の関与についてですが、現場に裁量がきちんと与えられることが理想であり、理想の教育環境をつくるために地方に力をということで、皆さんとご意見は一緒です。教育長の任命など国が関与することは全く逆行していると思います。
 では、どういうふうに国が関与したらいいのかと考えたとき、私は情報公開をきちんと命令、要求できることに関しての関与がいいのではないかと思うんです。どんなふうにしなさいという関与ではなくて、問題が起きているところにすばやく、正しく情報公開させるというパワーがもし国にあるならば、それは役に立つのではないか。つまり、市民や国民の目にさらされる形で、教育委員会や地方自治体が方向性を正しく尽くしていくということだと思います。
 2つ目は、教育委員会の責任体制の明確化というところにかかわると思うんですが、今回の改正教育基本法の中で家庭の役割というものが出たわけですが、そうすると家庭は教育委員会とどういう関係を持っていくのか、あるいは教育委員会は家庭に対してどういうふうに責任を持ったり、ミッションがあるのかということに関して、もう少し明確に書いていただけると、一保護者が何か学校に対して不満があった、あるいは疑問があったときにどういうふうに教育委員会を活用できるのかということにつながると思いますし、こういう件に関して教育委員会は、家庭が望まない場合以外はすべての質問や回答を即時情報公開していって、どういうふうに対応したということがなされていったらいいと思っております。
 3つ目は、私立学校に関してですが、私はやはり教育委員会が関与するべきではなく、私立が今までどおり独自にやっていったらいいのではないかと思います。
 最後に、質問だけしようとしていたんですが、学校教育法の改正の骨子案の中で国と郷土を愛する態度も入れ込もうということになっておりますが、これはピュアに質問なんですが、つまりこれが法律に入ることによって国歌を歌わない、起立しない職員が罰せられるという方向になっていくというのは、一般の市民やメディアがもしかすると気にすることかと思ったので、いつの時点かで回答があればいいなと思います。
 以上です。

【梶田分科会長】
 最後のところは教育基本法にあるんです。教育基本法にあって、それを今度、学校教育法におろして、それで学習指導要領にあってという流れですから、これだけを取り出してやると、特に後ろのほうにメディアの方がおられますから、ぜひこれだけをクローズアップしないでください。教育基本法にあって、ご存じのように政府案にも民主党案にもあるんです。どうぞその辺はご理解いただいて、そういう流れの中で入っているということにぜひご理解をお願いしたいと思います。
 では、田村副分科会長。

【田村副分科会長】
 すみません、ありがとうございます。地方教育行政の分野、いろいろほかに意見があるんですけれども、時間がありませんので、私立学校関係のことだけちょっと申し上げさせていただきます。
 どうも私立学校は教育課程を守っていないのではないか、勝手にやっているのではないかという誤解があるようでございまして、市川委員のご発言にはそういうことがちらちら伺えるんですけれども、結果としては、確かに履修漏れが私立は2割、公立は1割という形で、両方とも相当の数の履修漏れですから、これは本当は反省をしなければいけない。それは確かに大前提でございます。
 それを前提として、ではそれに対してどうやったらいいのかという議論です。石井委員がおっしゃったように、私学としては従来どおりでちゃんと2割をゼロにすることはできるという自信はあるんですけれども、こういう情勢の中で何にもやらないわけにはいかないだろうということもあって、それでは教育委員会の力をお借りすることもあっていいだろうということで、実は団体の中では話をしているわけです。
 本来、私立というのは、ご存じだと思いますが、自分たちでお金を寄附して始めた学校なんです。現実には大変な学費の差があるけれども、それは自分たちの努力でカバーしている。なおかつ、今回の履修漏れでも、公立というのは運営費は全然変わらないんです、減らないんです。当たり前といったら当たり前です。でも、私立は助成金が減らされるところが県で出ているわけです。運営費は減っているわけです。それだけの危険を侵して、なおかつ独自の教育、建学の精神を守って教育しようという意気込みがあってなされている学校なんです。ですから、その部分が、これは市川委員もお認めいただいたんですけれども、新しい教育を生み出した活力になっているわけです。これは日本の教育全体にプラスになるところですから、その部分は十分に気をつけて、今回いろいろな案をお考えいただきたいと思っております。
 基本的に、私どもいろいろ話し合って考えていることは、まず教育委員会に何かアドバイスしてもらう必要が出てきた場合、私立学校がそういうことを求めるということがまず第一に必要だろうと思います。どんどん強権的にやる、もともと強権ではないとおっしゃっているんですから、強権的にやるのではなくて、私学が求めることがまず第一。それに対して、首長部局、知事部局がいいだろうとお考えになったら教育委員会にお願いする。教育委員会は、私学の独自性に十分配慮して、従来、公立学校にやっている指導、助言、援助ではない表現でお願いしたい。指導という言い方は非常に反発がありますので、できれば支援とか、せいぜい助言というところでその部分をカバーしていただく。こういうことが私たち私学の希望というか望みであります。それこそがまさに私学の独自性、自主性を保障する基本の姿勢ではないか。
 そのことは文部科学省にとっても、日本の教育全体をご覧になっている文部科学省にとってもマイナスではない。私立学校が活力ある独自な教育をいろいろ工夫してつくり出すということは、日本の教育全体の力になるわけですから、ぜひその辺のご配慮をお願いしたいというのがお願いでございます。
 以上でございます。

【梶田分科会長】
 ありがとうございました。
 きょう、本当に長い間、また熱心なご討議をいただきまして、ありがとうございました。ほぼ皆さん見解をそれぞれ披露していただいたという感じがいたします。本当は、今日、答申までしようと思ったんですけれども、なお議論を尽くしたほうがいいという判断で1回延ばしたわけです。そういうことで、一応、次回には、これまでの審議経過を踏まえまして答申案を皆さんに出していただいて、それを検討していただいて、若干その場で修正して、答申の提出まで行けたらと考えております。どういう答申案にするかということにつきましては、申し訳ありませんが、山崎会長とご相談しながら、田村副分科会長、木村副分科会長いらっしゃいますが、私どものほうで少し準備させていただきたいと思いますが、ご了承いただけますでしょうか。ありがとうございます。
 きょう、石井委員からもお話がありましたように、こういう大事な問題をこれだけ短い時間でやるのは無茶と言えば無茶です。ただし、これがなかったらどうなっているかということをぜひお考えください。これがなしに、中教審という公の場で、いろいろな立場の人が、特にいろいろなバックグラウンド、専門を持っている人が、本当に国民注視のもとで議論をして、そしていろいろと問題点を詰めていく。このプロセスを抜いて法案が国会に提出されて、そこで成立した新しい仕組みだ、それ行けということになれば、私はまさに日本の民主主義が根幹から脅かされると思います。
 短い間ですけれども、諸条件、時間的には限られておりましたけれども、私はこういう中でもこれだけの中教審の委員の方々がお集まりいただきまして、それぞれの立場からほんとうに忌憚のないご意見をいただいて、最終報告はなかなか一本化できないところもできてくるかもしれません。若干こういう意見もあったということを書かなければいけない部分も出てくるかもしれませんが、いずれにせよ一つの大きな流れ、幾つかの論点については、皆さん表現は違うけれども、ほぼ一致した方向でご発言のあった部分もたくさんございますので、そういうことを含めて報告できれば、中教審としての一つの責任が果たせたのではないかと思っております。
 最後に、山崎会長、体調があまり十分でない中、最後までおいでいただきましたけれども、ちょっとごあいさつをお願いいたします。

【山崎中央教育審議会会長】
 皆さん、本当にどうもありがとうございました。お疲れさまでした。かじ取りをしていただいた梶田分科会長、田村、木村両副分科会長にも心からお礼を申し上げます。
 今日のご議論、私なりに大変印象にとまりました。例えば、第1項、教育基本法の改正をめぐる問題につきまして、教育のミッションを改めて考え直す必要があるだろう、受験教育と一般の高校教育、義務教育、初等中等教育の関係について考えるべきだというご意見はまことにありがたいご意見で、しかし今後とも中教審は続いてまいります。2年かけてじっくり議論したいと思います。
 また、少し技術的な問題ですが、副校長や主幹その他を決めた場合、この労力に対して報酬をもって対応すべきだ、あるいはこういうところに人材が動いた場合、つまり一般の教育現場が手薄にならないように配慮せよというご意見も大変うれしいところでありました。これは文部科学省当局と私たちが手を組んで、内閣に要求していく問題だろうと思っております。
 2番目の教育職員免許法改正の問題に関しましても、これは単にだめな先生を切り落とすための手段ではなくて、むしろ向上心を持った人たちに機会を与える、励ます機会にせよというお言葉も大変うれしく伺いました。平たく言えば、むちを振るうならあめもつけ加えろということかと思っております。
 最後、一番大変もめたところは、地方自治の精神と教育の全国的な平等性、あるいは均等性との関係の問題であります。これは私も頭を悩ませているところではございますが、私は何となく意見が集約してきているのではないと思うのです。具体的に申しますと、地方自治法第245条の5で足りるか足りないかというところだろうと思いますが、今後、議論いただく上でぜひとも念頭に置いていただきたいのは、教育というのは国民の権利であるばかりか義務であるということであります。
 現在、日本国で国民の義務とされているものは、納税と義務教育を受けることの2つしかありません。これから例の裁判員になる義務が生じます。幸せなことに日本には兵役の義務がありませんから、義務教育を受けるという義務は極めて大きいものがあります。そうしますと、当然その裏返しに国民が平等に教育を受ける権利を持つ。これは他の法律のかかわる問題とは少し違っているだろう。例えば、宅建法というものがあって、一級建築士がいいかげんなことをするのをどう取り締まるかということはもちろん大事ですが、一級建築士がどうであっても、家を建てるということは私たちの義務ではないわけです。しかし、教育を受けるのは義務でありますから、その点、国民の平等を担保するために、私は文部科学大臣による何らかの配慮が必要であろうと思うのであります。それは、多分、一般的な地方自治法の定めるところよりも踏み込んだことが必要だろう。
 ちなみに、地方自治法の精神というのは、民主主義のもとにおいて権力を分散することにあるのだと思っております。ただ、国民の身辺に権力を置くのが正しい、身近であればあるほどいい権力だという考え方は成り立たないのは明らかであります。なぜならば、県よりも市町村が上か、もし村が一番上なら、その下にある町内会はどうなるか、マンションの自治組合はどうなるか。これが一番の権力を持つことになってしまいますと、最終的には個人の自治権ということになりまして、政府というか日本の法体系全部が崩壊するわけです。ですから、どのみち地方自治は大切ですが、これは国の国民に対する義務とバランスをとらなければならないものであろうと思っております。
 もう一つ、最後に皆さんのご注意を喚起したいのは、この席の後ろ側に座っている方々です。つまりはジャーナリストです。この人たちが、今、情報公開の時代ですから、あらゆる行政の段階に目を光らせているわけです。いわば、この第4の権力というものを私たちは常に念頭に置いておくべきだと思います。例えば、教育長の任命権を国がとるかとらないか、あるいは大臣が無意味な権力を行使して事後規制を行うか。いずれにせよ、これはジャーナリズムを通して国民の前に公開されているわけですから、私は決して極端なことに相渡らないだろうと確信しております。
 これからもう一回の分科会と総会になります。そのための準備をもちろん私も加わってさせていただきますが、結局、私の念頭にあるのは権力を分散すること、どういう形で分散するか。例えば、教育長、教育委員会の任命権は全面的に自治体にお願いする。そのかわり、かなり強力な大臣の事後的なチェック機能を加える。その辺が落としどころではないかと考えております。
 私の言いっぱなしでこの会が終わるのは大変失礼ですが、次回の分科会、短い時間ではございますが、どうぞご議論ください。
 以上をもって感謝の言葉にかえさせていただきます。どうもありがとうございました。

【梶田分科会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、次回のことにつきまして事務局からお願いいたします。

【淵上教育制度改革室長】
 次回の開催予定につきましては、決定し次第ご連絡させていただきます。
 以上でございます。

【梶田分科会長】
 最後ですので、まだ最終調整ということですので、決定次第、皆さんにお知らせするということであります。そういうことでよろしくお願いしたいと思います。
 遅くまでどうもありがとうございました。これで終わります。

─了─

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